説明

過敏性腸症候群(IBS)の治療方法

本発明は、IBSを治療するための;女性のIBSを治療するための;高齢被験体のIBSを治療するための;ならびに非白人被験体のIBSを治療するための新規方法およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IBSを治療するための;女性のIBSを治療するための;高齢被験体のIBSを治療するための;ならびに非白人被験体のIBSを治療するための新規方法およびキットを提供する。
【0002】
関連出願
本出願は、US 61/241,945(2009年9月13日出願);US 61/262,475(2009年11月18日出願);およびUS 61/329,511(2010年4月29日出願)の利益を主張し;かつ、US 12/393,979(2009年2月26日出願)の部分継続出願である(それらの全内容が参照により本明細書中に明示的に組み入れられる)。
【背景技術】
【0003】
リファキシミン(INN;Merck Index, 第XIII版, 8304頁を参照されたい)は、リファマイシン系抗生物質(例えば、ピリド-イミダゾリファマイシン)に属する抗生物質である。リファキシミンは、例えば、胃腸管において、感染性下痢症、過敏性腸症候群、小腸細菌異常増殖、クローン病、および/または膵不全を引き起こす局在性胃腸細菌に対して広範囲の抗細菌活性を発揮する。リファキシミンは、その化学的および物理学的特性により、ごくわずかな全身吸収率を特徴とすることが報告されている(Descombe J.J. et al. Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers. Int J Clin Pharmacol Res, 14 (2), 51-56, (1994))。
【発明の概要】
【0004】
本明細書中に、腸疾患(BD)を予防する、向上させる、および/または治療する方法が開示される。一般的に、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)を用いた治療から恩恵を受ける被験体としては、BDに罹患し易い被験体、活動性疾患または急性疾患を有する被験体、および1種以上のBDの寛解期にある被験体が挙げられる。BDとしては、例えば、過敏性腸症候群(IBS)、下痢型過敏性腸症候群(dIBS)、クローン病、旅行者下痢、潰瘍性大腸炎、腸炎、小腸細菌異常増殖、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、憩室疾患および/または肝性脳症が挙げられる。この治療から特に恩恵を受ける被験体としては、IBSに罹患しているかまたは罹患し易い被験体が挙げられる。
【0005】
一態様では、本明細書中に、持続性の抗生物質応答を含む腸疾患(BD)の治療方法が提示され、該方法は、それを必要とする被験体に治療上有効量のリファマイシン系抗生物質を投与すること、約1〜約24週間治療された後に治療に応答した被験体を選択すること、および応答した被験体を治療からはずし、治療の中断後に持続性応答が見られることを含む。
【0006】
一態様では、本明細書中に、腸疾患(BD)の治療方法が提示され、該方法は、それを必要とする被験体に550mgのリファキシミンTIDを投与し、それによりBDを治療することを含む。
【0007】
一実施形態では、腸疾患は、過敏性腸症候群(IBS)を含む。
【0008】
一実施形態では、腸疾患は、下痢型過敏性腸症候群(dIBS)を含む。
【0009】
一実施形態では、腸疾患は、肝性脳症を含む。
【0010】
別の実施形態では、肝性脳症(HE)には、約28日/4週〜24ヵ月間、リファマイシン系抗生物質が投与される。HEの治療では、リファマイシン系抗生物質は、例えば、HEを有すると疑われたかまたは診断された後、必要な期間、例えば、12ヵ月以上、または患者の全生涯にわたって投与することができる。
【0011】
一実施形態では、少なくとも50%の患者が応答する。
【0012】
一実施形態では、治療上有効量は、約25mg〜約6000mgを含む。
【0013】
一実施形態では、治療上有効量は、550mg TIDを含む。
【0014】
一実施形態では、治療上有効量は、550mg BIDを含む。
【0015】
一実施形態では、治療上有効量は、600mg TIDを含む。
【0016】
一実施形態では、治療上有効量は、600mg BIDを含む。
【0017】
一実施形態では、治療上有効量は、1650mg/日を含む。
【0018】
一実施形態では、BDは、下痢型過敏性腸症候群(dIBS)を含む。一実施形態では、BDは、交代型過敏性腸症候群を含む。
【0019】
一実施形態では、リファマイシン系抗生物質は、式Iの化合物を含む。
【0020】
一実施形態では、リファマイシン系抗生物質は、リファキシミンを含む。一実施形態では、BDは、交代型過敏性腸症候群を含む。
【0021】
一実施形態では、被験体を、選択前に約7日〜約4週間治療する。
【0022】
一実施形態では、被験体を、リファマイシン系抗生物質に対する応答に基づいて選択する。
【0023】
一実施形態では、被験体を、リファマイシン系抗生物質に対する応答が認められたときに選択する。
【0024】
一実施形態では、持続性の応答は、少なくとも約1〜約24週間にわたる症状の十分な軽減を含む。
【0025】
一実施形態では、持続性の応答は、少なくとも約1〜約5週間にわたる症状の十分な軽減を含む。
【0026】
一実施形態では、症状は、全般的BD症状または腹部膨満感のうち1以上を含む。
【0027】
一実施形態では、BD症状の十分な軽減は、BD症状の減少を含む。
【0028】
一実施形態では、BD症状の減少は、ベースライン症状からの減少である。
【0029】
一実施形態では、治療前にベースライン症状を確認する。
【0030】
一実施形態では、BD症状の十分な軽減は、「過去7日間で、BD症状の十分な軽減がありましたか?」という文言を含むかそれに類似する質問を尋ねたときの、被験体からの「はい」との応答を含む。一実施形態では、BD症状の十分な軽減は、BD症状の十分な軽減があったか否かを尋ねた場合の、被験体からの肯定的な応答(例えば、「はい」)を含む。
【0031】
一実施形態では、BD症状は、けいれん、疼痛、下痢、便秘、塊様便、水様便、頻回便、腹痛、腹部不快感、および/または排便切迫のうち1以上を含む。
【0032】
一実施形態では、腹部膨満感症状の十分な軽減は、腹部膨満感症状の減少を含む。
【0033】
一実施形態では、腹部膨満感症状の減少は、ベースライン症状からの減少である。
【0034】
一実施形態では、治療前にベースライン症状を確認する。
【0035】
一実施形態では、腹部膨満感症状の十分な軽減は、「過去7日間で、腹部膨満感症状の十分な軽減がありましたか?」という文言を含むかそれに類似する質問を尋ねたときの、被験体からの「はい」との応答を含む。一実施形態では、BD症状の十分な軽減は、腹部膨満感症状の十分な軽減があったか否かを尋ねた場合の、被験体からの肯定的な応答(例えば、「はい」)を含む。
【0036】
一実施形態では、腹部膨満感症状は、腹部充満感、腹部膨満感、ガス、または腫脹の症状のうち1以上を含む。
【0037】
一実施形態では、BDは、過敏性腸症候群(IBS)、制御不良下痢型過敏性腸症候群(dIBS)、クローン病、旅行者下痢、潰瘍性大腸炎、腸炎、小腸細菌異常増殖、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、憩室疾患、肝性脳症、および/または回腸嚢炎のうち1以上を含む。
【0038】
一実施形態では、BDはまた、線維筋痛(FM)、慢性疲労性症候群(CFS)、抑うつ、注意欠陥多動性障害(ADHD)、多発性硬化症(MS)、および/または全身性エリテマトーデス(SLE)のうち1以上も含みうる。
【0039】
一態様では、本明細書中に、男性の腸疾患(BD)の治療方法が提示され、該方法は、それを必要とする男性への治療上有効量のリファキシミンの投与を含む。
【0040】
一態様では、本明細書中に、女性の腸疾患(BD)の治療方法が提示され、該方法は、それを必要とする女性への治療上有効量のリファキシミンの投与を含む。
【0041】
一実施形態では、該方法は、被験体の性別の決定および男性被験体への治療上有効量の投与をさらに含む。
【0042】
一実施形態では、該方法は、被験体の性別の決定および女性被験体への治療上有効量の投与をさらに含む。
【0043】
一実施形態では、該方法は、男性被験体の症状軽減の測定および症状が解消されないままである場合の、リファキシミン治療の第2コースの投与をさらに含む。
【0044】
一態様では、本明細書中に、男性のBDによる腹部膨満感の治療方法が提示され、該方法は、それを必要とする男性への治療上有効量のリファキシミンの投与を含む。
【0045】
一態様では、本明細書中に、高齢被験体のBDの治療方法が提示され、該方法は、それを必要とする高齢被験体への治療上有効量のリファキシミンの投与、該高齢被験体での症状軽減の測定、および症状が解消しなかった場合の、リファキシミン治療の第2コースの投与を含む。本明細書中で用いる場合、高齢被験体とは、例えば、65歳超の被験体、約50歳以上の被験体、約55歳以上の被験体、約60歳以上の被験体、または約70歳以上の被験体を意味する。本明細書中で用いる場合、「長期疾患」とは、例えば、約4〜約10年間以上疾患に罹患している被験体、または約5〜約10年間以上疾患に罹患している被験体、または約5〜約20年間以上疾患に罹患している被験体を意味する。
【0046】
一態様では、本明細書中に、BDのリファキシミン治療に対する応答を予測する方法が提示され、該方法は、BDに罹患した被験体の評価、および高齢であると決定された被験体、長期BDを有する被験体、男性または軽度〜中等度のベースライン重症度を有する被験体のうち1以上への治療上有効量のリファキシミンの投与を含む。
【0047】
一態様では、本明細書中に、高齢被験体のBDの治療方法が提示され、該方法は、それを必要とする高齢被験体への治療上有効量のリファキシミンの投与を含む。本明細書中で用いる場合、高齢被験体とは、例えば、65歳以上の被験体を意味する。
【0048】
一実施形態では、該方法は、臨床データに基く、被験体が治療に対して陽性応答を有するであろうか否かの決定をさらに含む。一実施形態では、被験体の年齢、被験体のBDの継続期間、性別、またはBDのベースライン重症度のうち1以上に基づいて決定を行う。一実施形態では、臨床データは、医薬品のラベルに提示される。
【0049】
一実施形態では、該方法は、臨床データに基づく、被験体が治療に対して陽性応答を有するであろうか否かの決定をさらに含む。一実施形態では、被験体の年齢、人種または性別のうち1以上に基づいて決定を行う。一実施形態では、臨床データは、医薬品のラベルに提示される。
【0050】
一実施形態では、被験体が男性である場合、応答が予測される。
【0051】
一実施形態では、被験体が高齢である場合、応答が予測される。
【0052】
一実施形態では、被験体が長期疾患を有している場合、応答が予測される。
【0053】
一実施形態では、該方法は、臨床データに基づく、被験体が治療に対して陽性応答を有するであろうか否かの決定をさらに含む。一実施形態では、被験体の年齢、人種または性別のうち1以上に基づいて決定を行う。一実施形態では、臨床データは、医薬品のラベルに提示される。
【0054】
一実施形態では、ベースライン重症度の決定は、7段階リッカート尺度を含む。
【0055】
一実施形態では、該方法は、応答の尤度の被験体への通知をさらに含む。
【0056】
一実施形態では、被験体の応答の尤度は、年齢およびBDの継続期間の長さに伴って増大する。
【0057】
一実施形態では、治療上有効量は、約100mg〜約6000mg;550mg TID;550mg BID;600mg TID;600mg BID;または1650mgを含む。
【0058】
一態様では、本明細書中にBDの治療方法が提示され、該方法は、リファマイシン系抗生物質を含む容器を提供することを含み、該容器が、持続性抗生物質応答について記載し、かつ治療に対して応答する被験者を選択することにより治療の中断後に持続性の応答が得られることを示唆する印刷されたラベルを有し;および被験体に該容器からリファキシミンを投与することを含む。
【0059】
一態様では、本明細書中にBDの治療方法が提示され、該方法は、リファキシミンを含む容器を提供することを含み、該容器が、投与指示が記載された印刷されたラベルを有し;およびBDを治療するために被験体に該容器からリファキシミンを投与することを含む。
【0060】
一実施形態では、リファマイシン系抗生物質は、リファキシミンを含む。
【0061】
一態様では、本明細書中に、BDを治療するためのキットが提示され、該キットは、リファマイシン系抗生物質を含む容器および治療上有効量の該抗生物質の投与が該治療に対して応答する被験体での持続性の応答をもたらすことが記載されたラベルを含む。一実施形態では、リファマイシン系抗生物質は、リファキシミンである。
【0062】
一実施形態では、該ラベルには、感染および寄生、消化器障害、神経系障害、ならびに筋骨格および結合組織障害のうち1以上を含む有害事象が記載される。
【0063】
一実施形態では、該ラベルには、リファマイシン系抗生物質を用いる治療期間が記載され、それにより、該ラベルの指示に従って医療専門家がリファマイシン系抗生物質を処方した場合に、治療に対して応答する被験体が選択される。
【0064】
一実施形態では、該ラベルには、リファキシミンを用いる治療期間が記載され、それにより、該ラベルの指示に従って医療専門家がリファマイシン系抗生物質を処方した場合に、治療に対して応答する被験体が選択される。
【0065】
一実施形態では、該ラベルには、リファマイシン系抗生物質を用いる治療期間が記載され、それにより、該ラベルの指示に従って医療専門家がリファマイシン系抗生物質を処方した場合に、被験体が治療からはずされる。
【0066】
一実施形態では、該ラベルには、リファキシミンを用いる治療期間が記載され、それにより、該ラベルの指示に従って医療専門家がリファマイシン系抗生物質を処方した場合に、被験体が治療からはずされる。
【0067】
一態様では、リファマイシン系抗生物質は、リファキシミンまたはリファキシミンのα型、β型、γ型、δ型、ε型、ζ型、η型、無水α型、ι型、β-1型、β-2型、無水ε型、メシレート型もしくは無晶形のうち1種以上および製薬上許容される担体を含む。リファキシミンは、医薬組成物として製剤化することができる。一実施形態では、リファマイシン系抗生物質は、リファキシミンを含む。
【0068】
一実施形態では、医薬組成物は、賦形剤をさらに含む。
【0069】
別の実施形態に従えば、賦形剤は、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤または甘味料のうち1種以上を含む。
【0070】
別の実施形態では、組成物は、選択されたコーティング錠剤および非コーティング錠剤、硬ゼラチンおよび軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ錠、ウエハーシート剤、ペレット剤ならびに密閉パック中の散剤のために製剤化される。一実施形態では、組成物は、局所使用のために製剤化される。
【0071】
別の実施形態に従えば、腸関連障害は、過敏性腸症候群(IBS)、下痢型過敏性腸症候群(dIBS)、クローン病、旅行者下痢、潰瘍性大腸炎、腸炎、小腸細菌異常増殖、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、憩室疾患、肝性脳症、および/または回腸嚢炎のうち1種以上である。
【0072】
一態様に従えば、本明細書中に、リファキシミンの投与を含む、BD被験体のQOL尺度を改善する方法が提示される。
【0073】
一態様に従えば、本明細書中に、リファマイシン系抗生物質の投与を含む、BD被験体のQOL尺度を改善する方法が提示される。
【0074】
一実施形態では、リファキシミンを14日間投与する。
【0075】
一実施形態では、リファキシミンを投与すると、情動不安、身体イメージ、健康不安、社会的反応、および人間関係を含むQOL尺度のうち1以上が改善される。
【0076】
一実施形態では、選択は、医薬品の添付文書に記載された投与指示に従うことを含む。
【0077】
一実施形態では、添付文書は、リファマイシン系抗生物質を14日間投与することを指示する。
【0078】
一実施形態では、添付文書は、リファキシミンを14日間投与することを指示する。
【0079】
一実施形態では、治療からはずす工程は、医薬品の添付文書に記載された投与指示に従って被験体に指示することを含む。
【0080】
一実施形態では、添付文書は、リファマイシン系抗生物質を14日間投与することを指示する。
【0081】
一実施形態では、医薬品は、550mgのリファキシミンを含み、過敏性腸症候群の治療用とラベルされる。
【0082】
一実施形態では、医薬品は、550mgのリファキシミンを含み、肝性脳症の治療用とラベルされる。
【0083】
一実施形態では、医薬品は、600mgのリファキシミンを含み、過敏性腸症候群の治療用とラベルされる。
【0084】
一実施形態では、医薬品は、600mgのリファキシミンを含み、肝性脳症の治療用とラベルされる。
【0085】
一実施形態では、医薬品は、550mgのリファキシミンを含み、過敏性腸症候群、旅行者下痢または肝性脳症のうち1種以上の治療用とラベルされる。
【0086】
一実施形態では、医薬品は、550mgのリファキシミンを含む。
【0087】
一実施形態では、医薬品は、600mgのリファキシミンを含む。
【0088】
一実施形態では、医薬品は、200mgのリファキシミンを含む。
【0089】
一実施形態では、医薬品は、400mgのリファキシミンを含む。
【0090】
一実施形態では、医薬品は、400mgのリファキシミンBIDを含む。
【0091】
一実施形態では、医薬品は、400mgのリファキシミンTIDを含む。
【0092】
一実施形態では、該方法は、被験体のBDリスクの遺伝学的プロファイリングよる、リファマイシン系抗生物質投与前の被験体のBDリスクの決定、およびリスク被験体へのリファマイシン系抗生物質の投与の選択をさらに含む。
【0093】
一実施形態では、リスクの判定は、Nod2、CFTR、CARD15、rs6822844、rs2305767、rs6822844、8q24領域;マーカー:rs6983267、LOC727677、IL23R(1)、NKX2-3、5p13領域、PTPN2、MST1、IRGM、IL23R(2)、または10q21領域の1箇所以上での多型の測定を含む。
【0094】
一態様に従えば、本明細書中に、症候性下痢型過敏性腸症候群(dIBS)のための急性治療を提供する方法が提示され、該方法は、それを必要とする被験体に、14日間、1650mg/日のリファキシミンを投与することを含み、14日後に被験体を治療からはずしても、持続性の応答がもたらされる。
【0095】
一実施形態では、1650mgは、550mgを1日3回として投与される。
【0096】
一態様に従えば、本明細書中に、制御不全下痢型過敏性腸症候群(dIBS)のための急性治療を提供する方法が提示され、該方法は、それを必要とする被験体に、2週間にわたって1日2〜3回、550mgのリファキシミンを投与することを含み、2週間後に被験体を治療からはずしても、持続性の応答がもたらされる。
【0097】
一実施形態では、該治療は、dIBSの症状軽減をもたらす。
【0098】
一実施形態では、医薬品の添付文書は有害事象を警告し、有害事象としては、例えば、感染および寄生、消化器障害、神経系障害、ならびに筋骨格および結合組織障害が挙げられる。
【0099】
別の実施形態では、本発明は、過敏性腸症候群(IBS)に伴う腹痛の治療方法を提供し、該方法は、それを必要とする被験体に550mgのリファキシミンTIDを投与することにより、過敏性腸症候群(IBS)に伴う腹痛を治療する。
【0100】
一実施形態では、IBSは、下痢型IBSである。別の実施形態では、IBSは、交代型IBSである。
【0101】
一実施形態では、IBSの治療は、IBSの疼痛症状の治療を含む。
【0102】
一実施形態では、IBSの疼痛症状は、腹痛を含む。
【0103】
一実施形態では、IBSの疼痛症状の治療は、疼痛の十分な軽減を含む。
【0104】
一実施形態では、疼痛の十分な軽減は、疼痛症状の減少を含む。
【0105】
一実施形態では、疼痛の減少は、ベースライン症状からの減少を含む。
【0106】
一実施形態では、治療前にベースライン症状を確認する。
【0107】
一実施形態では、20年超の糖尿病既往歴を有する被験体は、リファキシミンを用いた治療に応答すると予測される。
【0108】
本発明の他の実施形態を、下記に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】非治療追跡期間でのIBS症状の継続的で十分な軽減を表すグラフである。
【図2】非治療追跡期間での腹部膨満感症状の継続的で十分な軽減を表すグラフである。
【図3】持続性応答を示すためのリファキシミンを用いた治療についての提案される試験設計を表す図である。
【図4】IBS症状の十分な軽減の結果を表すグラフである。
【図5】腹部膨満感症状の十分な軽減の結果を表すグラフである。
【図6】リファキシミンを用いた治療後の腹部膨満感症状のベースラインからの変化の結果を表すグラフである。
【図7】第3週〜第6週のIBSの解析を表すグラフである。
【図8】第3週〜第6週のIBS腹部膨満感データを表すグラフである。
【図9】第3週〜第6週のIBS一貫性データを表す図である。
【図10】3ヵ月の試験全体についてのIBSデータを表す図である。
【図11】最初の4週間でのIBS症状の軽減を表す図である。
【図12】最初の2ヵ月でのIBS症状の軽減を表す図である。
【図13】第1週〜第12週での一日IBS症状を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
リファキシミン(USAN、INN;Merck Index, 第XIII版, 8304頁を参照されたい, CAS番号80621-81-4)((2S,16Z,18E,20S,21S,22R,23R,24R,25S,26S,27S,28E)-5,6,21,23,25ペンタヒドロキシ-27-メトキシ-2,4,11,16,20,22,24,26-オクタメチル-2,7-(エポキシペンタデカ-(1,11,13)トリエンイミノ)ベンゾフロ(4,5-e)ピリド(1,2,-a)ベンズイミダゾール-1,15(2H)-ジオン,25-酢酸)は、リファマイシンOから生成された半合成抗生物質である。リファキシミンは、リファマイシン系抗生物質(例えば、ピリド-イミダゾリファマイシン)に属する分子である。リファキシミンは、例えば、胃腸管において、感染性下痢、過敏性腸症候群、小腸細菌異常増殖、クローン病、および/または膵不全を引き起こす局在性胃腸細菌に対する広範な抗細菌活性を発揮する。
【0111】
リファキシミンはまた、伊国特許第1154655号および欧州特許第0161534号にも記載されている。欧州特許第0161534号には、出発物質としてリファマイシンOを用いたリファキシミンの製造方法が開示されている(Merck Index, 第XIII版, 8301頁)。US 7,045,620 B1には、リファキシミンの多形形態が開示されている(USSN 11/658,702;USSN 61/031,329;USSN 12/119,622;USSN 12/119,630;USSN 12/119,612;USSN 12/119,600;USSN 11/873,841;公開公報WO 2006/094662;およびUSSN 12/393012)。本明細書中で引用した特許出願および特許は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0112】
リファマイシン系抗生物質は、例えば、式I:
【化1】

【0113】
[式中、
Aは、構造A1
【化2】

【0114】
または構造A2
【化3】

【0115】
であってもよく、
-x-は共有化学結合または存在せず;Rは水素またはアセチルであり;
R1およびR2は独立に、水素、(C1〜4)アルキル、ベンジルオキシ、モノおよびジ(C1〜3)アルキルアミノ-(C1〜4)アルキル、(C1〜3)アルコキシ-(C1〜4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2〜4)-アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2は、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と一緒になって、非置換または1個もしくは2個のメチル基もしくはエチル基により置換されたベンゼン環を形成し;R3は水素原子または存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、R3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、R3は存在しない]
の構造を有する化合物である。
【0116】
本明細書中にはまた、式中、Aが上記のA1またはA2であり、-x-は共有化学結合または存在せず、Rは水素またはアセチルであり、R1およびR2は独立に、水素、(C1〜4)アルキル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ-(C2〜4)アルキル、ジ-(C1〜3)アルキルアミノ-(C1〜4)アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2は、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と一緒になって、ベンゼン環を形成し、R3は水素原子または存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、R3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、R3は存在しない、上記で定義された化合物も記載される。
【0117】
本明細書中にはまた、式中、Aが上記のA1またはA2であり、-x-は共有化学結合または存在せず、Rはアセチルであり、R1およびR2は独立に、水素、(C1〜4)アルキルを表すか、またはR1およびR2は、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成し、R3は水素原子または存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、R3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、R3は存在しない、上記で定義された化合物も記載される。
【0118】
本明細書中にはまた、4-デオキシ-4’-メチル-ピリド[1’,2’-1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、上記で定義された化合物も記載される。本明細書中にはまた、4-デオキシ-ピリド[1’,2’-1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、上記で定義された化合物も記載される。
【0119】
本明細書中にはまた、式中、Aが上記で記載されたものであり、-x-は共有化学結合または存在せず;Rは水素またはアセチルであり;R1およびR2は独立に、水素、(C1〜4)アルキル、ベンジルオキシ、モノおよびジ(C1〜3)アルキルアミノ (C1〜4)アルキル、(C1〜3)アルコキシ-(C1〜4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2〜4)-アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2は、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と一緒になって、非置換または1個もしくは2個のメチル基もしくはエチル基により置換されたベンゼン環を形成し;R3は水素原子または存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、R3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、R3は存在しない、上記で定義された化合物も記載される。
【0120】
リファキシミンは、式II:
【化4】

【0121】
の構造を有する化合物である。
【0122】
一部の実施形態では、抗生物質は、リファマイシン系、アミノグリコシド系、アンフェニコール系(amphenicol)、アンサマイシン系、β-ラクタム系、カルバペネム系、セファロスポリン系、セファマイシン系、モノバクタム系、オキサセフェム系、リンコサミド系、マクロライド系、ポリペプチド、テトラサイクリン系、または2,4-ジアミノピリミジン系抗生物質のうち1種以上を含む。これらのクラスの例示的な抗生物質を、以下に列記する。
【0123】
いかなる特定の科学的理論に束縛されることも望まないが、リファキシミンは、細菌性デオキシリボ核酸依存的リボ核酸(RNA)ポリメラーゼのβサブユニットに結合することにより作用し、細菌RNA合成の阻害をもたらす。リファミキシンは、多数のグラム陽性および陰性細菌(好気性および嫌気性の両方)に対して活性である。in vitroデータにより、リファミキンは、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属および腸内細菌科に対して活性であることが示されている。
【0124】
本明細書中で用いる場合、「リファキシミン」は、該分子の溶媒和物および多形形態を含み、例えば、リファキシミンのα型、β型、γ型、δ型、ε型、ζ型、η型、無水α型、ι型、β-1型、β-2型、無水ε型、メシレート型または無晶形が挙げられる。これらの形態は、例えば、USSN 11/873,841;USSN 11/658,702;EP 05 004 635.2(2005年5月3日出願);USPN 7,045,620;US 61/031,329;G. C. Viscomi, et al., CrystEngComm, 2008, 10, 1074-1081 (2008年4月)、米国特許公開第2010/0174064号、同第2009/0234114号;同第2009/0262012号、同第2009/0130201号、同第2009/0082558号、同第2009/0028940号、同第2005/0272754号に、より詳細に記載されている。これらの引用文献はそれぞれその全体が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0125】
医薬製剤は、消化器特異的抗生物質を、下記で論じる通常の賦形剤と共に含有することができる。
【0126】
本明細書中で用いる場合、「多形体」または「多形形態」とは、異なる水和状態での1種類の化合物の種々の結晶形態の存在を意味する(例えば、一部の化合物および複合体の特性)。つまり、多形体は、同じ分子式を有する異なる固体であり、それぞれの多形体は異なる物性を有する場合がある。したがって、1種類の化合物が、様々な多形形態をもたらす場合があり、それぞれの形態は、異なる特有の物性(溶解特性、融点温度、吸湿性、粒子形状、密度、流動性、相溶性および/またはX線回折ピークなど)を有する。それぞれの多形体の溶解性は異なる場合があるので、製薬的多形体の存在を特定することは、予測可能な溶解特性を有する医薬品を提供するために必須である。薬物のすべての多形形態を含むすべての固体形態を調べること、ならびに各多形形態の安定性、溶解性および流動性を測定することが望ましい。化合物の多形形態は、X線回折分光法および赤外分光法などの他の方法により、実験室で区別することができる。多形体の一般的な総説および多形体の医薬用途については、G. M. Wall, Pharm Manuf. 3, 33 (1986);J. K. Haleblian and W. McCrone, J Pharm. Sci., 58, 911 (1969);およびJ. K. Haleblian, J. Pharm. Sci., 64, 1269 (1975)を参照されたい(これらのすべてが参照により本明細書中に組み入れられる)。本明細書中で用いる場合、多形体との用語は、ときには、リファキシミンの複数の形態を指す一般的用語として用いられ、文脈中で、本明細書中に開示されるリファキシミンの塩、水和物、多形体および無晶形を含む。この使用は、文脈に依存し、当業者には明らかである。本発明の方法およびキットで有用なリファキシミン多形形態の例は、上記の公開された特許出願で説明されている。
【0127】
本明細書中で用いる場合、「GI(消化器)特異的抗生物質」および「GI抗生物質」としては、GI疾患に対して効果を有することが知られている抗生物質が挙げられる。例えば、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)、ネオマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、オーグメンチン、セファレキシン、ペニシリン、アンピシリン、カナマイシン、リファマイシン、バンコマイシン、およびそれらの組み合わせが、有用なGI特異的抗生物質である。低い全身吸収率を有するGI特異的抗生物質(例えば、リファキシミン)が、より好ましい。低い全身吸収率としては、例えば、10%未満の吸収率、5%未満の吸収率、1%未満の吸収率および0.5%未満の吸収率が挙げられる。低い全身吸収率としてはまた、例えば、約0.01〜1%の吸収率、約0.05〜1%の吸収率、約0.1〜1%の吸収率、約1〜10%の吸収率、または約5〜20%の吸収率も挙げられる。
【0128】
「向上させる」、「向上」、「改善」などは、例えば、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%もしくはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の、1名の被験体で、または少なくとも一部の被験体で生じる検出可能な改善あるいは改善に一致する検出可能な変化を意味する。そのような改善または変化は、リファキシミンを用いて治療していない被験体と比較して治療された被験体で観察することができ、ここで、非治療被験体は、同じかもしくは類似の疾患、状態、症状などを有するか、または発症しつつある。疾患、状態、症状またはアッセイパラメータの向上は、主観的または客観的に、例えば、被験体の自己評価により、医師の評価により、または適切なアッセイもしくは測定(例えば、QOL評価、疾患もしくは状態の進行遅延、疾患もしくは状態の重症度の低下、または生体分子、細胞のレベルもしくは活性についての好適なアッセイ)を行うことにより、または被験体でのBDエピソードの検出により、測定することができる。向上は、一時的、長期的または永続的であり得、あるいはGI特異的抗生物質を被験体に投与するかまたは本明細書中もしくは引用文献に記載されたアッセイその他の方法で用いている途中またはその後の対応する時間(例えば、下記の時間フレームの範囲内で、またはGI特異的抗生物質の投与もしくは使用の約1時間後から被験体がそのような治療を受けた約7日後、2週間後、28日後、もしくは1、3、6、9ヵ月後以上)で異なる場合がある。
【0129】
例えば、症状、分子のレベルまたは生物学的活性などの「変化」とは、例えば、症状または活性などが、検出可能な程に増大または減少することを意味する。そのような増大または減少は、GI特異的抗生物質を用いて治療していない被験体と比較して治療された被験体で観察することができ、ここで、非治療被験体は、同じかもしくは類似の疾患、状態、症状などを有するか、または発症しつつある。そのような増大または減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%以上またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内であり得る。変化は、主観的または客観的に、例えば、被験体の自己評価により、医師の評価により、または適切なアッセイもしくは測定(例えば、QOL評価または被験体体内の分子のレベルもしくは活性についての好適なアッセイを含む)を行うことにより、測定することができる。変化は、一時的、長期的または永続的であり得、あるいはGI特異的抗生物質を被験体に投与するかまたは本明細書中もしくは引用文献に記載されたアッセイその他の方法で用いている途中またはその後の対応する時間(例えば、下記の時間の範囲内で、またはGI特異的抗生物質の投与もしくは使用の約1時間後から被験体がGI特異的抗生物質を投与されてから約2週間後、28日後、3、6、9ヵ月後以上)で異なる場合がある。
【0130】
「変化させる」との用語はまた、GI特異的抗生物質に対する曝露に応答した細胞の活性の増大または減少も意味する場合があり(例えば、動物での細胞の少なくとも部分集団の増殖阻害および/または分化誘導)、それにより、所望の最終結果が達成される(例えば、治療に用いたGI特異的抗生物質の治療的効果が、特定の治療の間に増大または減少し得る)。
【0131】
化合物の「予防上有効量」との文言は、被験体に単一用量もしくは複数用量で投与した場合にBDの予防または治療において有効な、式I、式IIまたは本明細書中に別途記載した本発明の化合物の量を意味する。
【0132】
本明細書中で用いる場合、「被験体」としては、腸疾患もしくはリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)により治療可能な他の障害に罹患しうる生物または本明細書中に記載されるようにリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)の投与により恩恵を受けることができる生物(ヒトおよび非ヒト動物など)が挙げられる。好ましいヒト動物は、ヒト被験体を含む。本発明の「非ヒト動物」との用語は、すべての脊椎動物を含み、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)、および非哺乳動物、非ヒト霊長類など、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが挙げられる。腸疾患に罹患し易いとは、腸疾患を発症するリスクがある被験体またはBDの寛解期にある被験体またはBDが再発する可能性がある被験体、例えば、免疫抑制に罹患している被験体、細菌感染に曝露された被験体、医師、看護師、旅行者下痢を引き起こす細菌が生息していることが知られる遠隔地に旅行する被験体、BDの家族歴を有する被験体、高齢者、肝傷害を有する被験体、IBSの寛解期にある被験体、過去にHE(肝性脳症)エピソードを有したことがある被験体、軽症HE(mind HE)を有する被験体、制御不全下痢を有する被験体、dIBSを有する被験体などを含むことを意味する。
【0133】
化合物の「予防上有効量」との文言は、被験体に単一用量もしくは複数用量で投与した場合にBDまたはIBSの予防または治療において有効な、式I、式IIまたは本明細書中に別途記載した本発明の化合物の量を意味する。
【0134】
「投与」または「投与すること」との用語は、意図した機能を発揮させるために、被験体にGI特異的抗生物質を導入する経路を含む。用いることができる投与経路の例としては、注入投与、経口投与、吸入投与、膣内投与、直腸投与および経皮投与が挙げられる。医薬製剤は、それぞれの投与経路に好適な剤形により提供することができる。例えば、これらの製剤は、錠剤またはカプセル剤の剤形で、注入、吸入により、洗眼液、点眼液、軟膏、坐剤などとして投与され、注入、点滴または吸入による投与;ローション剤または軟膏による局所投与;および坐剤による直腸投与により投与される。経口投与が好ましい。注入は、ボーラス注入または持続注入であり得る。投与経路に応じて、GI特異的抗生物質は、選択された材料でコーティングするかまたはその中に配置して、意図した機能を発揮する能力に悪影響を与える可能性のある自然条件から該抗生物質を保護することができる。GI特異的抗生物質は、単独で投与することができ、あるいは上記の別の薬剤もしくは製薬上許容される担体またはその両方と組み合わせて投与することができる。GI特異的抗生物質は、他の薬剤の投与前に、該薬剤と同時に、または該薬剤の投与後に投与することができる。さらに、GI特異的抗生物質はまた、in vivoで活性な代謝型またはより活性な代謝型に変換されるプロ型で投与することもできる。
【0135】
1種以上のさらなる治療薬と「組み合わせて」の投与は、同時(併用)投与およびいずれかの順序での連続投与を含む。
【0136】
当業者には明らかな通り、投与対象の有用なin vivo投与量および特定の投与様式は、年齢、体重および治療される哺乳動物種、用いる特定の化合物、および/またはこれらの化合物が用いられる具体的用途に応じて変わることになる。所望の結果を達成するのに必要な投与量レベルである有効投与量レベルの決定は、慣用の製薬学の方法を用いて、当業者により実現することができる。典型的には、製剤のヒト医療用途は、比較的低い投与量レベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投与量レベルを増加させる。
【0137】
「GI特異的抗生物質を取得すること」における「取得すること」との用語は、GI特異的抗生物質を購入する、合成する、またはそれ以外の方法で入手することを含むと意図される。
【0138】
化合物の「予防上有効量」との文言は、被験体に単一用量もしくは複数用量で投与した場合にIBSの予防または治療において有効な、GI特異的抗生物質の量を意味する。
【0139】
本明細書中で用いる場合、「医薬品組成物」(または薬剤もしくは薬物)との用語は、患者に適切に投与した場合に、所望の治療効果を誘導することが可能な化合物、組成物、薬剤または薬物を意味する。2種類以上の成分は必ずしも必要でない。
【0140】
本明細書中で用いる場合、「持続性の応答」は、例えば、治療の中断後の症状の十分な軽減、治療の中断後の症状の継続的で十分な軽減、またはプラセボ応答よりも大きいかもしくはそれを上回る応答を含む。被験体による応答は、例えば、治療の中断後にリファマイシン系抗生物質に対する応答を有する場合、持続的であると考えることができる。持続性の応答は、例えば、2日間、7日間、2週間、3週間、4週間、12週間、約1週間〜約24週間以上であり得る。応答は、例えば、下記に概要を示す方法のうち1以上を用いて測定することができ、そのような方法としては、例えば、被験体による症状の主観的評価または医療サービス提供者もしくは介護者による被験体の症状の評価が挙げられる。
【0141】
本明細書中で用いる場合、「応答する被験体を選択すること」、「応答する被験体の選択」などは、例えば、BDもしくはIBS症状の減少に基づいて被験体が治療に応答したことを判定すること、および/または一定期間にわたり製剤(例えば、リファマイシン系抗生物質)を投与する旨のラベルの指示に従うことなどを含む。決定または選択は、ラベル(例えば、包装または添付文書)の指示に基づくか、または被験体による症状の主観的評価もしくは医療サービス提供者もしくは介護者による被験体の症状の評価に基づくことができる。
【0142】
治療方法
本明細書中には、腸関連障害を治療する、予防するかまたは向上させる方法が提供され、該方法は、それを必要とする被験体への有効量のリファキシミンの投与を含む。腸関連障害(例えば、腸疾患)としては、過敏性腸症候群(IBS)、交代型IBS、下痢型過敏性腸症候群(dIBS)、クローン病、旅行者下痢、潰瘍性大腸炎、腸炎、小腸細菌異常増殖、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、憩室疾患、肝性脳症、IBSに伴う腹痛および/または回腸嚢炎のうち1種以上が挙げられる。
【0143】
以下の表1は、性別、年齢およびIBSタイプに基づいた、リファキシミンを用いた治療に対する応答の差異を表す。表2は、治療に対する応答が疾患の継続期間と相関することを表す。
【表1】

【表2】

【0144】
驚くべきことに、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)は、IBSの治療に対して男性で特に有効であることが示された。
【0145】
持続性の応答
本発明の実施形態は、本明細書中に記載されたリファキシミンの投与レジメンが、それを必要とする被験体での持続性の応答およびIBS症状の向上をもたらすという知見に関連する。本発明の一実施形態は、持続性の抗生物質応答を含む腸疾患(BD)の治療方法であり、該方法は、それを必要とする被験体に治療上有効量のリファマイシン系抗生物質を投与すること、約1〜約24週間治療した後に、治療に対して応答する被験体を選択すること、および応答被験体を治療からはずすことによるものであり、治療の中断後に、持続性の応答が見られる。選択は、医療専門家により、自己選択により、あるいは症状を判定もしくは鑑別するかまたは抗生物質に対する応答を診断する立場にある人物の選択により行うことができる。治療の中断は、例えば、投与を中止すること、抗生物質の投与を勧めることを中止すること、および/または抗生物質の摂取を止めるように応答被験体に助言することを含む。
【0146】
一実施形態では、製剤を14日間(例えば、2週間)投与するべきであることを示す医薬製剤のラベルに基づいて推奨(例えば、選択)を行う。例えば、ラベルに指示される通りに、治療を必要とする被験体に、2週間、リファキシミン550mg TIDを投与する。一実施形態では、製剤を2週間投与するべきであることを示す医薬製剤のラベルに基づいて推奨(例えば、選択)を行う。例えば、ラベルに指示される通りに、治療を必要とする被験体に、2週間、リファキシミン550mg TIDを投与する。一実施形態では、選択は、医薬製剤の添付文書の投与指示に従う。
【0147】
本明細書中にはまた、被験体での腸疾患の寛解を維持するための方法も記載され、該方法は、それを必要とする被験体に少なくとも25週間、治療上有効量のリファキシミンを投与することを含む。
【0148】
本発明のまた別の態様は、リファキシミンを用いて、それを必要とする被験体(例えば、哺乳動物、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ)を治療する方法に関する。そのような治療を必要とする被験体の特定は、被験体または医療専門家の判断で行うことができ、主観的(例えば、私見)または客観的(例えば、試験または診断方法により測定可能)であり得る。
【0149】
リファキシミンは、種々の治療レジメンで用いることができる。これらのレジメンは、被験体および治療のタイプに応じて変わり得る。
【0150】
リファキシミンは、例えば、1日2回、1日3回、もしくは1日4回または必要なだけ頻繁にそれ以上、投与することができる。リファキシミンは、例えば、約25mg BID〜約3000mg TIDの複数用量で投与することができる。別の例は、約4.0g/日〜約7.25g/日のリファキシミンの投与である。リファキシミンは、例えば、錠剤、散剤、カプセル用またはカプセル中の液剤で投与することができる。
【0151】
治療を必要とする被験体としては、下記でさらに開示する通り、BDを有するかもしくはBDに罹患しやすい被験体、BDの寛解期にある被験体、長期継続する疾患を有する男性および/または高齢被験体が挙げられる。
【0152】
本明細書中で用いる場合、治療上有効量とは、ヒトまたは非ヒト被験体に投与した場合に、症状の向上などの治療上の利益をもたらすのに有効な量、例えば、IBSの症状の減少またはIBSの寛解の維持に有効な量を意味する。
【0153】
一部の実施形態では、約1週間〜約6週間の継続期間、約8週間〜約12週間の継続期間、または1日〜約7日間、被験体にリファキシミンを投与する。リファキシミンは、約1日〜約1年間、または1週間〜約24週間、投与することができる。リファキシミンは、例えば、被験体の残りの生涯にわたって、投与することができる。リファキシミンは、治療期間中、断続的または連続的に投与することができる。治療期間は疾患のタイプおよび長さに応じて異なる場合があり、適切な治療期間は、本明細書の開示を役立てる当業者により容易に決定することができる。
【0154】
いずれかの実施形態のために、リファキシミンは、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回(または特定の被験体に必要なだけ頻繁にそれ以上)、被験体に投与することができる。例えば、副作用を最小限に抑え、患者コンプライアンスを増大させることができる可能性があるので、本発明の一部の方法は、被験体への1日1回のリファキシミンの投与を含む。リファキシミンの1日2回および1日3回の投与も好ましい。
【0155】
一部の好ましい実施形態に従えば、投与量は、1日に投与される約50〜約6000mgのリファキシミンである。例えば、550mgの用量を、1日2回被験体に投与することができる。本発明の方法のための他の適切な投与量は、医療専門家により、または被験体により決定することができる。1日に投与されるリファキシミンの量は、被験体の体重、年齢、健康状態、性別もしくは病状に基づいて、増加または減少させることができる。当業者は、本明細書の開示に基づいて、被験体のための適正な用量を決定することができる。
【0156】
一部の実施形態に従えば、リファキシミンは、他の化合物と組み合わせて投与することができ、そのような化合物としては、例えば、化学療法剤、抗炎症剤、解熱剤、放射線増感剤、放射線防護剤、泌尿器剤(urologic agent)、制吐剤、および/または止瀉薬が挙げられる。例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、マイトマイシン、ゲフィチニブ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アセトアミノフェン、ミソニダゾール、アミホスチン、タムスロシン、フェナゾピリジン、オンダンセトロン、グラニセトロン、アロセトロン、パロノセトロン、プロメタジン、プロクロルペラジン、トリメトベンズアミド、アプレピタント、アトロピンを含むジフェノキシレート、および/またはロペラミドである。
【0157】
リスク選択法
本明細書中に記載された方法はまた、BDの遺伝的リスクの遺伝学的プロファイリングおよびリスク被験体の治療のための選択をさらに含むことができる。例えば、リスク被験体は、遺伝学的スクリーニング、家族歴、生活習慣、旅行計画などにより、腸疾患のリスクがあると判定することができる。遺伝学的スクリーニングは、例えば、腸疾患または腸疾患に対する感受性に影響するかまたはこれを予測することが示されている遺伝子および発現プロフィールまたはエピジェネティックな修飾因子についてのものであり得る。スクリーニングすることができる突然変異としては、例えば、Nod2、CFTR、もしくはCARD15の突然変異または多型が挙げられる。Nod2は、細菌感染に対する免疫系の初期応答に関与する遺伝子であり、クローン病のリスクを顕著に増大させる。CFTRタンパク質は、消化器系、肺および汗腺の内面を形成する細胞の表面に局在する。正常細胞では、このタンパク質は、細胞内外に塩化物イオンを輸送するイオンチャネルとして機能する。このタンパク質はまた、他の輸送経路の調節を制御して、細胞膜を通る体液および重炭酸塩の通過を調節する。DNA配列変異(または突然変異)単独では、CFTR関連消化器疾患パターンは説明されないが、むしろ、エピジェネティックな修飾因子、またはこの遺伝子のDNA配列を完全なままに保つ変化が、CFTR発現に影響を及ぼす。
【0158】
例えば、被験体を、rs6822844および/またはrs2305767について遺伝子型決定して、セリアック病のリスクを示すことができる。ある研究では、セリアック病を有する778名の個体および1422名の健常対照を検査した。著者らは、rs6822844でのそれぞれのTが、被験体のセリアック病のリスクを約1.6倍低下させることを見出した。Zhernakova A et al. (2007) “Novel association in chromosome 4q27 region with rheumatoid arthritis and confirmation of type 1 diabetes point to a general risk locus for autoimmune diseases.” Am J Hum Genet 81(6):1284-8;およびvan Heel DA et al. (2007) “A genome-wide association study for celiac disease identifies risk variants in the region harboring IL2 and IL21.” Nat Genet 39(7):827-9を参照されたい。別の研究では、セリアック病を有する463名の個体および686名の健常対照を検査した。著者らは、両方のコピーにCを有する被験者は、TT遺伝子型を有する被験体よりも、2.3倍低いセリアック病の確率を有することを見出した。Hunt KA et al. (2006) “Lack of association of MYO9B genetic variants with coeliac disease in a British cohort.” Gut 55(7):969-72;Nunez C et al. (2006) “No evidence of association of the MYO9B polymorphisms with celiac disease in the Spanish population.” Tissue Antigens 68(6):489-92;Cirillo G et al. (2007) “Do MYO9B genetic variants predispose to coeliac disease? An association study in a cohort of South Italian children.” Dig Liver Dis 39(3):228-31;Cirillo G et al. (2007) “Do MYO9B genetic variants predispose to coeliac disease? An association study in a cohort of South Italian children.” Dig Liver Dis 39(3):228-31;Cirillo G et al. (2007) “Do MYO9B genetic variants predispose to coeliac disease? An association study in a cohort of South Italian children.” Dig Liver Dis 39(3):228-31を参照されたい。
【0159】
例えば、被験体を、8q24領域;マーカー:rs6983267について遺伝子型決定して、大腸癌のリスクを決定することができる。このSNPは、LOC727677と称される仮想的遺伝子である。このSNPの高リスク型は、結腸直腸癌のリスクの増大のみならず、前癌状態の腺腫性ポリープの形成とも関連することが示唆されている。このSNPの高リスク型はまた、一部の研究では、前立腺癌とも関連付けられているが、この関連を確認するためにはさらなる研究が必要である。Haiman et al. (2007) “A common genetic risk factor colorectal and prostate cancer.” Nat Genet 39(8):954-6;およびTomlinson et al. (2007) “A genome-wide association scan of tag SNPs identifies a susceptibility variant for colorectal cancer at 8q24.21.” Nat Genet 39(8):984-988;およびZanke et al. (2007) “Genome-wide association scan identifies a colorectal cancer susceptibility locus on chromosome 8q24.” Nat Genet 39(8):989-994を参照されたい。
【0160】
例えば、被験体を、NOD2(1) SNP:rs2066844;NOD2(2) SNP:rs2066845;NOD2(3) SNP:rs2066847;IL23R(1) SNP:rs11209026;NKX2-3 SNP:rs11190140;5p13領域 SNP:rs17234657;PTPN2 SNP:rs1893217;MST1 SNP:rs3197999;:IRGM SNP:rs7714584;IL23R(2) SNP:rs11805303;および/または10q21領域 SNP:rs10761659について遺伝子型決定して、クローン病のリスクを決定することができる。Hugot et al. (2001) “Association of NOD2 leucine-rich repeat variants with susceptibility to Crohn's disease.” Nature 411(6837):599-603;Ogura et al. (2001) “A frameshift mutation in NOD2 associated with susceptibility to Crohn's disease.” Nature 411(6837):603-6;Rioux et al. (2007) “Genome-wide association study identifies new susceptibility loci for Crohn disease and implicates autophagy in disease pathogenesis.” Nat Genet 39(5):596-604;Libioulle et al. (2007) “Novel Crohn's disease locus identified by genome-wide association maps to a gene desert on 5p13.1 and modulates expression of PTGER4.” PLoS Genet 3(4):e58;Hampe et al. (2007) “A genome-wide association scan of non-synonymous SNPs identifies a susceptibility variant for Crohn disease in ATG16L1.” Nat Genet 39(2):207-11;Duerr et al. (2006) “A genome-wide association study identifies IL23R as an inflammatory bowel disease gene.” Science 314(5804):1461-1463;van Limbergen et al. (2007) “IL23R Arg381Gln is associated with childhood onset inflammatory bowel disease in Scotland.” Gut 56(8):1173-4;Wellcome Trust Case Control Consortium (2007) “Genome-wide association study of 14,000 cases of seven common diseases and 3,000 shared controls.” Nature 447(7145):661-78;Parkes et al. (2007) “Sequence variants in the autophagy gene IRGM and multiple other replicating loci contribute to Crohn's disease susceptibility.” Nat Genet 39(7):830-2;Sheibanie et al. (2007) “The proinflammatory effect of prostaglandin E2 in experimental inflammatory bowel disease is mediated through the IL-23-->IL-17 axis.” J Immunol 178(12):8138-47;Simoncic et al. (2007) “The T cell protein tyrosine phosphatase is a negative regulator of janus family kinases 1 and 3.” Curr Biol 12(6):446-53;You-Ten et al. (1997) “Impaired bone marrow microenvironment and immune function in T cell protein tyrosine phosphatase-deficient mice.” J Exp Med 22(16):5662-8;Barrett et al. (2008) “Genome-wide association defines more than 30 distinct susceptibility loci for Crohn's disease.” Nat Genet 40(8):955-62;Goyette er al. (2008) “Gene-centric association mapping of chromosome 3p implicates MST1 in IBD pathogenesis” Mucosal Immunology 1:131-138;Barrett et al. (2008) . “Genome-wide association defines more than 30 distinct susceptibility loci for Crohn's disease.” Nat Genet 40(8):955-62;McCarroll et al (2008) “Deletion polymorphism upstream of IRGM associated with altered IRGM expression and Crohn's disease.” Nat Genet 40(9):1107-1112;およびSingh et al. (2006) “Human IRGM induces autophagy to eliminate intracellular mycobacteria.” Science 313(5792):1438-41を参照されたい。
【0161】
医薬製剤
本発明はまた、本明細書中に記載された有効量のリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミンまたはリファキシミン多形体)および製薬上許容される担体を含む医薬組成物も提供する。さらなる実施形態では、有効量は、細菌感染(例えば、小腸細菌異常増殖)、クローン病、肝性脳症、抗生物質関連大腸炎、および/または憩室疾患を治療するのに有効である。
【0162】
旅行者下痢を治療するためのリファキシミンの使用およびその製剤の例について、Infante RM, Ericsson CD, Zhi-Dong J, Ke S, Steffen R, Riopel L, Sack DA, DuPont, HL. Enteroaggregative Escherichia coli Diarrhea in Travelers: Response to Rifaximin Therapy. Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2004;2:135-138;およびSteffen R, M.D., Sack DA, M.D., Riopel L, Ph.D., Zhi-Dong J, Ph.D., Sturchler M, M.D., Ericsson CD, M.D., Lowe B, M.Phil., Waiyaki P, Ph.D., White M, Ph.D., DuPont HL, M.D. Therapy of Travelers’ Diarrhea With Rifaximin on Various Continents. The American Journal of Gastroenterology. May 2003, Volume 98, Number 5を参照されたい(これらのすべてがその全体で参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0163】
一実施形態は、リファキシミンまたはそのいずれかの多形形態および製薬上許容される担体を含む医薬組成物である。つまり、製剤は、1種類の多形体のみを含有することができ、または2種類以上の多形体の混合物を含有することができる。この文脈では、多形体とは、リファキシミンのいずれかの物理的形状、水和物、酸、塩などを意味する。混合物は、例えば、所望の量の全身吸収、溶解プロフィール、治療対象の消化管内での所望の位置等に基づいて選択することができる。医薬組成物は、賦形剤、例えば、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤または甘味料のうち1種以上をさらに含む。組成物は、選択されたコーティング錠剤および非コーティング錠剤、硬ゼラチンおよび軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ錠、ウエハーシート剤、ペレット剤ならびに密閉パック中の散剤のために製剤化することができる。例えば、組成物は、局所使用のために、例えば、軟膏、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤およびローション剤として製剤化することができる。
【0164】
一実施形態では、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)は、製薬上許容される製剤を用いて被験体に投与される。該製剤は、例えば、該製薬上許容される製剤を被験体に投与した後、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、1週間、2週間、3週間、または4週間、被験体へのリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)の持続送達をもたらす、製薬上許容される製剤である。
【0165】
一部の実施形態では、これらの医薬組成物は、被験体への局所投与または経口投与に好適である。他の実施形態では、下記で詳細に記載する通り、本発明の医薬組成物は、以下の投与経路のためにつくられたものをはじめとする固体または液体剤形での投与のために特別に製剤化することができる:(1)経口投与、例えば、ドレンチ剤(drenche)(水性もしくは非水性溶液剤または懸濁液剤)、錠剤、ボーラス剤、散剤、顆粒剤、パスタ剤;(2)非経口投与、例えば、無菌溶液剤もしくは懸濁液剤としての皮下注射、筋内注射または静脈内注射による;(3)局所塗布、例えば、皮膚に塗布するクリーム剤、軟膏またはスプレー剤として;(4)膣内投与または直腸内投与、例えば、ペッサリー、クリーム剤またはフォーム剤として;あるいは(5)エアロゾル剤、例えば、化合物を含有する水性エアロゾル剤、リポソーム製剤または固体粒子剤として。
【0166】
「製薬上許容される」との文言は、適正な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に対応し、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応その他の問題または合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織と接触する使用に好適である、本明細書中に記載されたリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)、該化合物を含有する組成物、および/または投与剤形を意味する。
【0167】
「製薬上許容される担体」との文言は、1つの臓器もしくは身体の一部分から別の臓器もしくは身体の一部分への対象化学物質の運搬または輸送に関与する、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化物質などの製薬上許容される物質、組成物またはビヒクルを含む。それぞれの担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ患者に対して有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。製薬上許容される担体として機能し得る物質の一部の例としては、以下のものが挙げられる:(1)糖(ラクトース、グルコースおよびスクロースなど);(2)デンプン(コーンスターチおよびバレイショデンプンなど);(3)セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど);(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤(カカオバターおよび坐剤用ワックスなど);(9)油(ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油など);(10)グリコール(プロピレングリコールなど);(11)ポリオール(グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど);(12)エステル(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);(13)寒天;(14)緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);(15)アルギン酸;(16)パイロジェン不含水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)医薬製剤で用いられる他の非毒性適合性物質。
【0168】
湿潤化剤、乳化剤および滑沢剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味剤および香料、保存料および抗酸化剤も、組成物中に存在させることができる。
【0169】
製薬上許容される抗酸化剤の例としては、以下のものが挙げられる:(1)水溶性抗酸化剤(アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性抗酸化剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど);および(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。
【0170】
リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)を含有する組成物としては、経口投与、鼻内投与、局所投与(頬内投与および舌下投与を含む)、直腸投与、膣内投与、エアロゾル投与および/または非経口投与に好適なものが挙げられる。組成物は、便利なことに、単一投与剤形で存在することができ、薬学分野で周知のいずれかの方法により調製することができる。単一投与剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて異なる。担体材料と組み合わせて単一投与剤形を製造することができる有効成分の量は、一般的に、治療効果をもたらす化合物の量となる。一般的に、100%のうち、この量は、約1%〜約99%の有効成分、好ましくは約5%〜約70%の有効成分、最も好ましくは約10%〜約30%の有効成分となる。
【0171】
リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)の経口投与または直腸投与用の液体投与剤形としては、製薬上許容されるエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。有効成分に加えて、液体投与剤形は、当技術分野で一般的に用いられる不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒など、溶解剤および乳化剤など(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなど)、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などを含有することができる。
【0172】
不活性希釈剤に加えて、経口投与用組成物は、湿潤化剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、香味剤、着色剤、香料ならびに保存料などの添加剤を含有することができる。
【0173】
活性なリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)に加えて、懸濁液剤は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁化剤を含有することができる。
【0174】
直腸投与または膣内投与のための本発明の医薬組成物は、坐剤として提示することができ、坐剤は、1種以上のリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)と1種以上の好適な非刺激性賦形剤または担体とを混合することにより製造することができ、賦形剤または担体は、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックスまたはサリチル酸塩を含み、室温で固体であるが体温で液体であり、したがって、直腸または膣腔内で融解し、活性薬剤を放出する。膣内投与に好適な組成物としては、適切であることが当技術分野で知られている担体を含有するペッサリー、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、パスタ剤、フォーム剤またはスプレー製剤が挙げられる。
【0175】
リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)の局所投与または経皮投与のための剤形としては、散剤、スプレー剤、軟膏、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤および吸入剤が挙げられる。活性なリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)は、無菌条件下で、製薬上許容される担体、および必要であり得るいずれかの保存料、緩衝剤、または噴射剤と混合することができる。
【0176】
軟膏、パスタ剤、クリーム剤およびゲル剤は、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)に加えて、動物および植物油脂、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有することができる。
【0177】
散剤およびスプレー剤は、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレー剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素および揮発性非置換炭化水素(ブタンおよびプロパンなど)などの慣用の噴射剤を含有することができる。
【0178】
あるいは、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)は、エアロゾル剤によって投与してもよい。これは、例えば、該化合物を含有する水性エアロゾル剤、リポソーム製剤または固体粒子剤を調製することにより実現することができる。非水性(例えば、フッ化炭素噴射剤)懸濁液を用いることができる。化合物の分解をもたらし得るせん断への薬剤の曝露を最小限に抑えることができるので、音波ネブライザーが好ましい。
【0179】
医薬組成物に用いることができる好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、および注入用有機エステル(オレイン酸エチルなど)が挙げられる。例えば、コーティング材料(レシチンなど)の使用により、分散物の場合は必要な粒径を維持することにより、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。
【0180】
これらの組成物はまた、保存料、湿潤化剤、乳化剤および分散剤などの添加剤を含有することもできる。種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)を含めることにより、微生物の活動を確実に防止することができる。組成物に等張剤(糖、塩化ナトリウムなど)を含めることも望ましい場合がある。また、吸収を遅らせる薬剤(モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど)を含めることにより、注入用医薬剤形の長期の吸収をもたらすことができる。
【0181】
一部のケースでは、薬物の作用を延長させるために、薬物の吸収率を変化させることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶、塩または無晶形物質の懸濁液の使用により実現することができる。そうすると、薬物の吸収速度は溶解速度に依存する可能性があり、溶解速度は、結晶サイズおよび結晶形態に依存する場合がある。あるいは、薬物剤形の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することにより実現することができる。
【0182】
リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)を医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、それをそのまま投与するか、または製薬上許容される担体と組み合わせて、例えば0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の有効成分を含有する医薬組成物として投与することができる。
【0183】
選択した投与経路にかかわらず、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)(好適な水和形態で用いることができる)および/または本発明の医薬組成物を、当業者に公知の慣用の方法により、製薬上許容される剤形に製剤化する。
【0184】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルおよび投与のタイムコースは、患者に対して毒性でなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療効果を達成するのに有効な有効成分の量をもたらすように変えることができる。例示的な用量範囲は、25〜3000mg/日である。
【0185】
併用療法では、本発明の化合物と他の薬剤の両方を、慣用の方法により哺乳動物(例えば、ヒト、男性または女性)に投与する。それらの薬剤は、単一投与剤形または別々の投与剤形で投与することができる。他の治療剤の有効量は、当業者に周知である。しかしながら、他の治療剤の最適な有効量範囲を決定することは、十分に当業者の視野の範囲内に入る。別の治療剤を動物に投与する本発明の一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、他の治療剤を投与しない場合のその有効量未満である。別の実施形態では、慣用の薬剤の有効量は、本発明の化合物を投与しない場合のその有効量よりも少ない。このようにすると、いずれかの薬剤の高用量に伴う望ましくない副作用を最小限に抑えることができる。他の考えられる利点(限定するものではないが、投与レジメンの改善および/または薬物コストの低減を含む)は、当業者に明らかであろう。
【0186】
種々の実施形態において、複数の療法(例えば、予防剤または治療剤)は、5分未満の差で、30分未満の差で、1時間差で、約1時間差で、約1〜約2時間差で、約2〜約3時間差で、約3〜約4時間差で、約4〜約5時間差で、約5〜約6時間差で、約6〜約7時間差で、約7〜約8時間差で、約8〜約9時間差で、約9〜約10時間差で、約10〜約11時間差で、約11〜約12時間差で、約12〜18時間差で、18〜24時間差で、24〜36時間差で、36〜48時間差で、48〜52時間差で、52〜60時間差で、60〜72時間差で、72〜84時間差で、84〜96時間差で、または96〜120時間差で投与する。好ましい実施形態では、2種類以上の治療剤を、同じ患者通院の際に投与する。
【0187】
一部の実施形態では、1種以上のリファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)および1種以上の他の療法(例えば、予防剤または治療剤)を、周期的に投与する。周期的療法は、一定期間にわたる第1療法(例えば、第1の予防剤または治療剤)の投与、およびそれに続く一定期間にわたる第2療法(例えば、第2の予防剤または治療剤)の投与、場合によりそれに続く一定期間にわたる第3療法(例えば、予防剤または治療剤)の投与など、ならびにこの連続的投与(すなわち、サイクル)の繰り返しを含み、これは、療法のうち1種への耐性の形成を減少させ、療法のうち1種の副作用を回避するかもしくは減少させ、かつ/または療法の有効性を改善するために行う。
【0188】
一部の実施形態では、同じ化合物の投与を繰り返すことができ、複数回の投与同士が、少なくとも約1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、3週、4週、5週、6週、12週、2ヵ月、75日、3ヵ月、または少なくとも6ヵ月隔たっている場合がある。他の実施形態では、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)以外の同じ療法(例えば、予防剤または治療剤)の投与を繰り返すことができ、複数回の投与同士が、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月、または少なくとも6ヵ月隔たっている場合がある。一実施形態では、リファマイシン系抗生物質のラベルは、例えば、6週毎よりも高頻度に繰り返してはならないと指示することができる。別の実施形態では、リファマイシン系抗生物質のラベルは、例えば、3週毎よりも高頻度に繰り返してはならないと指示することができる。別の実施形態では、リファマイシン系抗生物質のラベルは、例えば、3〜12週毎よりも高頻度に繰り返してはならないと指示することができる。投与量または投与について本明細書中で記載する範囲内のいずれの値も、該範囲内に含まれる。
【0189】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される方法と組み合わせた再治療が有効である。例えば、Rifaximin versus Other Antibiotics in the Primary Treatment and Retreatment of Bacterial Overgrowth in IBS, Janet Yang, Hyo-Rang Lee, Kimberly Low, Soumya Chatterjee, and Mark Pimentel, Dig Dis Sci (2008) 53:169-174を参照されたい。例えば、本明細書中に記載された方法は、被験体の症状の軽減を測定すること、および症状が軽減しない場合に、リファキシミン治療の第2コースを施すことをさらに含むことができる。方法はまた、例えば、被験体の性別の決定および男性被験体への治療上有効量の投与もさらに含むことができる。
【0190】
一部の適応は、比較的長い治療期間を必要とする場合がある。例えば、旅行者下痢の治療は、約12時間〜約72時間しか続かない場合がある一方、クローン病に対する治療は約1日〜約3ヵ月である場合があり、肝性脳症に対する治療は1日〜12ヵ月である場合がある。例えば、HEは、被験体の残りの生涯にわたる慢性治療を必要とする場合がある。クローン病もまた、慢性治療を必要とする場合がある。
【0191】
キット
本明細書中には、キットも提供される。例えば、被験体の腸疾患を治療するためのキット、持続性抗生物質応答を有する腸疾患(BD)を治療するためのキット;女性の腸疾患(BD)の治療方法、男性の腸疾患(BD)の治療方法;男性のBDによる腹部膨満感の治療方法;BDによる腹部膨満感の治療方法;BDを有する非白人被験体の治療方法;および/または高齢被験体のBDの治療方法;長期疾患を有する高齢被験体のBDの治療方法;および/またはBDのためのリファキシミン治療に対する応答を予測する方法が提供される。キットは、例えば、リファキシミンの多形体または無晶形および使用説明書を含むことができる。使用説明書は、処方情報、投与量情報、保存情報などを含むことができる。
【0192】
一実施形態では、ラベルには、感染および寄生、消化器障害、神経系障害、ならびに筋骨格および結合組織障害を含む有害事象が記載される。
【0193】
一実施形態では、該ラベルには、リファマイシン系抗生物質を用いる治療期間が記載され、それにより、該ラベルの指示に従って医療専門家がリファマイシン系抗生物質を処方した場合に、治療に対して応答する被験体が選択される。
【0194】
一実施形態では、該ラベルには、リファマイシン系抗生物質を用いる治療期間が記載され、それにより、該ラベルの指示に従って医療専門家がリファマイシン系抗生物質を処方した場合に、被験体が治療からはずされる。
【0195】
ラベルの指示は、例えば、IBSの治療のために14日間、リファマイシン系抗生物質を摂取することの指示を含む。指示書はまた、過敏性腸症候群(IBS)の急性治療のために14日間、1650mg/日のリファキシミンを摂取することを表示することもできる。
【0196】
ラベルの指示はまた、高い割合の非白人被験体、女性被験体および65歳以上の被験体は、IBS症状の十分な軽減、および/またはIBSの腹部膨満感症状の十分の軽減を示すとの指示も含むことができる。
【0197】
包装済み組成物も提供され、これは、治療上有効量のリファキシミンの無晶形、α型、β型、γ型、δ型、ε型、ζ型、またはη型多形体のうち1種以上および製薬上許容される担体または希釈剤を含むことができ、該組成物は、腸疾患に罹患しているかまたは罹患し易い被験体を治療するために製剤化され、腸疾患に罹患しているかまたは罹患し易い被験体を治療する旨の指示書と同梱される。
【実施例】
【0198】
本発明は、以下に記載される実施例に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、本発明は、本明細書に記載されたいずれかのすべての適用および当業者の技能の範囲内に入るすべての等価な変形を含むと解釈しなければならないことが理解されるはずである。
【0199】
実施例1
本実施例は、dIBSを有する被験者でのリファキシミンの研究に関する。被験者は、プラセボ、リファキシミン275mg、550mg、または1100mgのBID用量のうち1種を、14日間毎日投与された。第5群の被験者は、28日間にわたって、リファキシミン550mg BIDを投与された。2種類の有効性尺度を評価した。被験者は、全般的IBS症状および腹部膨満感の軽減について質問された。IBS関連症状(SGA)およびIBS関連腹部膨満感(IBS-B)の十分な軽減を評価したところ、2週間の550mg BIDの投与が、統計学的に有意な軽減を示した。解析では、成功を、十分な軽減に関する質問に対する「はい」との応答と定義した。
【0200】
応答予測因子解析は、一部のサブグループでは応答は似通っていたが、差異があったことを示した。応答予測因子の解析により、年齢(比較的高齢の被験者および長期IBS継続期間を有する被験者);性別(男性)およびベースライン重症度(軽度〜中等度の症状)が応答予測因子であることが示された。試験のすべての部分集団が、治療に応答した。ベースライン重症度は、腹痛/不快感および腹部膨満感、ならびに排便の回数、タイプ(正常、硬い、軟らかい)および緊急性についてのスクリーニングにより、7段階リッカート尺度を用いて決定した。
【0201】
効果の持続期間は、追跡期に評価した。4週間の治療期間に応答した被験者を、追加の3ヵ月間、追跡した。プラセボ群の被験者は、550mg BID 2週間群よりも応答の減少速度が大きく、このことは、リファキシミンを用いて治療した被験者が、対応するプラセボ治療群よりも症状の軽減を維持できる確率が高かったことを実証している。
【0202】
IBS症状および腹部膨満感症状の十分な軽減を有する被験者の割合
治療期(第1週〜第4週)での最後の3週のうち少なくとも2週で、IBS症状および腹部膨満感症状の十分な軽減を報告した被験者の割合(%)を、以下の表3〜5および図4〜6に示す。
【0203】
治療期では、RFX 550mg BID群の被験者のうち52.4%がIBS症状応答者基準を満たし、プラセボ群被験者では44.2%であった(確率比=1.6、p値=0.0314)。同様に、550mg BID群被験者のうち46.1%が腹部膨満感症状応答者基準を満たし、プラセボ群では39.6%であった(確率比=1.6、p値=0.0402)。
【表3】

【表4】

【表5】

【0204】
一日症状スコア
被験者は、試験の継続期間を通して、dIBS症状についての以下の情報を毎日記録した:
・正常便の回数/日;
・硬い便または塊様便の回数/日;
・軟らかい便または水様便の回数/日;
・緊急性の症状を有する軟らかい便または水様便の回数/日;
・腹痛および不快感のひどさ[7段階応答尺度:0(まったくなし)〜6(極めて大きい)];
・腹部膨満感のひどさ[7段階応答尺度:0(まったくなし)〜6(極めて大きい)]。
【0205】
ベースライン変数からの変化を、各週集計スコアについて算出した。
【0206】
十分な軽減の長期追跡
試験では、長期的な十分な軽減について、12週の追跡期間にわたって、効果を評価した。第4週までに十分な軽減を示し、第5週で無症状となった被験者を、治療後に追跡し、図1および2に示す。12週の治療後追跡期間で、プラセボと比較した優位性が維持された。第16週まで、IBS症状についての結果はRFX 550mg BID 62.3%に対してプラセボ49.2%、腹部膨満感症状についてはRFX 550mg BID 59.3%に対してプラセボ50.9%であった。追跡データの評価では、RFX 550mg BIDとプラセボで、腹部膨満感症状およびIBS症状について統計学的有意性(p<0.05)があった。
【表6】

【表7】

【表8】

【0207】
有効性の2種類の尺度を独立に評価した。第1の評価項目は、毎週のSGA質問「過去7日間で、IBS症状の十分な軽減がありましたか?(はい/いいえ)」に対して「はい」と応答した被験者の割合とした。第2の評価項目は、毎週の個別の症状についての質問「過去7日間で、腹部膨満感症状の十分な軽減がありましたか?(はい/いいえ)」に対して「はい」と応答した被験者の割合とした。持続性は、治療期間全体にわたって十分な軽減を示した被験体の割合に基づいた。
【表9】

【表10】

【0208】
より軽度の疾患重症度(すなわち、腹部膨満感、腹痛/不快感および排便)を考慮に入れた場合、治療効果はより顕著である。
【0209】
実施例2
4週間にわたって下痢型IBS(dIBS)症状を十分に軽減させることに対する、550mg TIDの経口投与リファキシミンの14日治療の有効性を評価するために、試験(図3)を設計する。有効性の1つの尺度は、4週間の試験期間にわたるIBS症状に関する毎週の主観的包括的評価(SGA)質問に対する被験者の回答に基づく。SGA質問は、以下のように毎週尋ねる:「過去7日間で、IBS症状の十分な軽減がありましたか?」(はい/いいえ)。経口投与リファキシミンを摂取した治療群の被験者は、経口投与リファキシミンを摂取していない被験者よりも「はい」と応答することが多い。有効性の別の尺度は、4週間の試験期間にわたるIBSの腹部膨満感症状に関する毎週の主観的包括的評価(SGA)質問に対する被験者の回答に基づく。SGA質問は、以下のように毎週尋ねる:「過去7日間で、IBSの腹部膨満感症状の十分な軽減がありましたか?」(はい/いいえ)。経口投与リファキシミンを摂取した治療群の被験者は、経口投与リファキシミンを摂取していない被験者よりも「はい」と応答することが多い。有効性の他の指標としては、試験の4週間のうちの各週までのベースラインからのdIBS症状の変化が挙げられる(例えば、腹痛および腹部不快感、腹部膨満感、1日当たりの排便回数、便の硬さ、軟らかい便または水様便の緊急性)。
【0210】
実施例3
QOLの改善
試験により、下痢型IBS(dIBS)を有する患者で、1日2回(BID)のリファキシミン550mgが、プラセボよりも顕著にIBS症状を改善することが示された。この試験の解析により、dIBSを有する患者のQOL尺度を改善することに対するリファキシミンの有効性を評価した。
【0211】
dIBS(ローマII基準)と診断された成人に、14日間、リファキシミン550mg BIDまたはプラセボを投与した。両方の群に、最初の2週間の治療後、さらに14日間、プラセボを投与した。QOLは、ベースラインおよび治療開始後4週間で、34項目のIBS-QOL質問票を用いて評価した。各項目は、5段階尺度でスコア付けした(1=まったくない;2=若干ある;3=中程度;4=かなり大きい;5=極めて大きいまたは非常に大きい)。複合スコアおよび下位尺度スコアの結果を、0〜100の尺度に変換した(高いスコアが良好なQOLを示す)。
【0212】
合計388名の患者を治療した;2週間の最初の治療期間の間、191名の患者にはリファキシミンを投与し、197名の患者にはプラセボを投与した。第4週における全般的QOLスコアのベースラインからの平均改善は、プラセボと比較して、リファキシミンで有意に大きかった(表11)。リファキシミン群の患者は、プラセボと比較して、情動不安、身体イメージ、健康不安、社会的反応、および人間関係といった下位尺度に対するQOLスコアにおいてベースラインからの有意に大きな平均改善を報告した(表11)。リファキシミンは忍容性が高く、プラセボと比較して同様の有害事象の発生率を示した。
【0213】
IBS-Dを有する患者で、14日間のリファキシミン1100mg/日は、プラセボと比較してQOL尺度を顕著に改善した。これらの知見は、IBS-Dを有する患者における症状およびQOLを改善することに対するリファキシミン550mg BIDの潜在的な治療効果を示唆する。知見を表11にまとめる。
【表11】

【0214】
2週間のリファキシミン治療(1100mg/日)は、プラセボと比較して、QOL尺度を有意に改善した。
【0215】
試験では、ローマII基準により下痢型IBS(dIBS)と診断された人のうち、191名の成人患者を無作為に選んで1日2回リファキシミン550mg(BID)を投与し、197名の患者を無作為にプラセボ群とした。2週間の最初の治療期間に続いて、両方の群の患者に、さらに14日間、プラセボを投与した。ベースラインおよび治療開始後4週間で、34項目のIBS-QOL質問票を用いてQOLを評価した。各項目は、5段階尺度でスコア付けした(1=まったくない;2=若干ある;3=中程度;4=かなり大きい;5=極めて大きいまたは非常に大きい)。複合スコアおよび下位尺度スコアの結果を、0〜100の尺度に変換した(高いスコアが良好なQOLを示す)。
【0216】
第4週で、全般的QOLスコアのベースラインからの平均改善は、プラセボと比較してリファキシミンで有意に大きかった(それぞれ、20.4(リファキシミン)および15.8(プラセボ);p=0.020)。リファキシミン群の患者はまた、プラセボと比較して、情動不安(不穏状態または動揺、24.8および19.8;p=0.027)、身体イメージ(20.1および14.6;p=0.012)、健康不安(16.0および12.2;p=0.047)、社会的反応(17.3および13.2;p=0.047)、および人間関係(14.9および10.7;p=0.030)についてのQOL下位尺度スコアのベースラインからの有意に大きな平均改善も報告された。リファキシミンは忍容性が高く、有害事象の発生率はプラセボと同等であった。
【0217】
実施例4
臨床的応答予測因子としてのベースライン症状の重症度
腹痛および腹部膨満感のベースライン症状の重症度がリファキシミン治療に対する応答に影響を及ぼしたことを、本明細書中に報告する。本解析の2つの一次評価項目(co-primary endpoints)では、包括的IBS症状およびIBS関連腹部膨満感の十分な軽減に関する質問に対する毎週のはい/いいえ応答を評価した。臨床的応答の潜在的交絡因子としてベースラインIBS症状の重症度を評価し、腹部膨満感および腹痛についての平均スコアが≦4であるかまたは>4であるか(7段階尺度により)に基づいて、軽度/中等度または重度に分類した。
【0218】
リファキシミンを用いて治療した患者では、プラセボ治療群と比較して、有意に高い割合(%)の患者が包括的IBS症状(52%およびプラセボで44%;p=0.03)および腹部膨満感(46%および40%;p=0.04)の十分な軽減を報告した。軽度/中等度の腹痛を有する患者では、リファキシミンは、プラセボと比較して、IBSの包括的症状(それぞれ、50%および39%;p=0.04)および腹部膨満感(44%および35%;p=0.09)での大きな改善度をもたらした。同様に、軽度/中等度の腹部膨満感を有する患者では、リファキシミン治療は、プラセボと比較して、包括的IBS症状(それぞれ、56%および41%;p=0.006)および腹部膨満感(47%および36%;p=0.03)での大きな改善を伴った。このことは、軽度/中等度IBS症状を有する患者は、重度の疾患を有する患者よりも、リファキシミンを用いて症状の軽減を実現しやすいことが示されている。
【0219】
これらの結果は、リファキシミンが、IBSに伴う消化器(GI)症状を改善することを示す。リファキシミンとプラセボを比較した本試験では、下痢型IBS(IBS-D)の患者を試験し、補足解析では、ベースラインIBS症状の重症度とリファキシミンに対する臨床的応答との関連を調べた。
【0220】
比較には、IBS-D(ローマII)を有する成人患者の2群を含め、これらの群には、リファキシミン550mgを1日2回またはプラセボを14日間投与し、続いて両方の群で追加の14日間、プラセボを投与した。包括的IBS症状およびIBS関連腹部膨満感の十分な軽減に関する質問に対する毎週のはい/いいえ応答を評価した。臨床的応答は、最後の3週間の治療週間(第2週、第3週、または第4週)のうち2週での十分な軽減と定義した。臨床的応答の潜在的交絡因子としてベースラインIBS症状の重症度を評価し、腹部膨満感および腹痛についての平均スコアが≦4であるかまたは>4であるか(7段階尺度により(0=ひどくない;6=非常にひどい))に基づいて、軽度/中等度または重度に分類した。
【0221】
リファキシミンを投与された患者では、プラセボと比較して、有意に高い割合(%)の患者が包括的IBS症状(それぞれ、52%およびプラセボで44%;p=0.03)および腹部膨満感(それぞれ、46%および40%;p=0.04)の十分な軽減を報告した。軽度/中等度の腹痛を有する患者では、リファキシミンは、プラセボと比較して、IBS症状(それぞれ、50%および39%;p=0.04)および腹部膨満感(それぞれ、44%および35%;p=0.09)での大きな改善度をもたらした。軽度/中等度の腹部膨満感を有する患者でも、リファキシミンは、プラセボと比較して、包括的IBS症状(それぞれ、56%および41%;p=0.006)および腹部膨満感(それぞれ、47%および36%;p=0.03)での大きな改善を実現した。腹痛および腹部膨満感のベースライン症状の重症度が、14日間のリファキシミン1100mg/日に対する応答に影響を及ぼした。軽度/中等度IBS症状を有する患者は、重度IBS症状を有する個体よりも、リファキシミン治療を用いた包括的IBS関連症状の軽減の尤度が高かった。
【0222】
実施例5
4週間にわたって下痢型IBS(dIBS)症状を十分に軽減させることに対する、550mg TIDの経口投与リファキシミンの14日治療の有効性を評価するために、試験を設計した。有効性の1つの尺度は、4週間の試験期間にわたるIBS症状に関する毎週の主観的包括的評価(SGA)質問に対する被験者の回答に基づく。SGA質問は、以下のように毎週尋ねる:「過去7日間で、IBS症状の十分な軽減がありましたか?」(はい/いいえ)。経口投与リファキシミンを摂取した治療群の被験者は、経口投与リファキシミンを摂取していない被験者よりも「はい」と応答することが多い。有効性の別の尺度は、4週間の試験期間にわたるIBSの腹部膨満感症状に関する毎週の主観的包括的評価(SGA)質問に対する被験者の回答に基づく。SGA質問は、以下のように毎週尋ねる:「過去7日間で、IBSの腹部膨満感症状の十分な軽減がありましたか?」(はい/いいえ)。経口投与リファキシミンを摂取した治療群の被験者は、経口投与リファキシミンを摂取していない被験者よりも「はい」と応答することが多い。有効性の他の指標としては、試験の4週間のうちの各週までのベースラインからのdIBS症状の変化が挙げられる(例えば、腹痛および腹部不快感、腹部膨満感、1日当たりの排便回数、便の硬さ、軟らかい便または水様便の緊急性)。
【0223】
非便秘型過敏性腸症候群(non-C IBS)の患者の治療でのリファキシミン550mg TIDの有効性および安全性を評価するために、無作為化二重盲検プラセボ対照多施設臨床試験を設計した。該試験では、14日治療(第1週および第2週)の完了後の1ヵ月(第3週、第4週、第5週および第6週)にわたって評価した場合に、リファキシミン治療患者は、プラセボ治療患者と比較して、IBS症状の十分な軽減の一次評価項目に対して統計学的に有意な改善を示した。各試験での一次評価項目と一致して、IBS関連腹部膨満感の軽減の主要二次評価項目でも、各試験でプラセボと比較してリファキシミンの統計学的有意性が示された。
【0224】
非便秘型IBS(例えば、下痢型IBSまたは交代型IBS)と診断された18歳以上の男性および女性からなる広範な集団で、プラセボと比較して、リファキシミンの550mg TID(1650mg/日)の臨床的有効性および安全性を評価するために、試験を設計した。該試験の一次有効性評価項目は、10週間の追跡期の最初の4週間のうち少なくとも2週でIBS症状の十分な軽減に達する被験者の割合とした。
【0225】
被験者には、12週の試験期間の間、550mgリファキシミンを1日3回(TID)、14日間投与し、続いて10週間追跡した。
【0226】
被験者に、全般的IBS症状および腹部膨満感の軽減について質問した。IBS関連症状(SGA)およびIBS関連腹部膨満感(IBS-B)の十分な軽減を評価し、2週間の550mg TID用量は、統計学的に有意な軽減を示した。解析では、成功を、十分な軽減に関する質問に対する「はい」との応答と定義した。
【0227】
有効性の1つの尺度は、4週間の試験期間にわたるIBS症状に関する毎週の主観的包括的評価(SGA)質問に対する被験者の回答に基づく。SGA質問は、以下のように毎週尋ねる:「過去7日間で、IBS症状の十分な軽減がありましたか?」(はい/いいえ)。経口投与リファキシミンを摂取した治療群の被験者は、経口投与リファキシミンを摂取していない被験者よりも「はい」と応答することが多い。有効性の別の尺度は、4週間の試験期間にわたるIBSの腹部膨満感症状に関する毎週の主観的包括的評価(SGA)質問に対する被験者の回答に基づく。SGA質問は、以下のように毎週尋ねる:「過去7日間で、IBSの腹部膨満感症状の十分な軽減がありましたか?」(はい/いいえ)。経口投与リファキシミンを摂取した治療群の被験者は、経口投与リファキシミンを摂取していない被験者よりも「はい」と応答することが多い。
【0228】
試験のすべての部分集団が、治療に応答した。ベースライン重症度は、腹痛/不快感および腹部膨満感、ならびに排便の回数、タイプ(正常、硬い、軟らかい)および緊急性についてのスクリーニングにより決定した。効果の持続期間は、10週間の追跡期間で評価した。
【0229】
試験の人口統計学データ
試験に参加した被験者について、表13に詳細を記載する。集団の人口統計学データは、表14、15および16に記載する。
【0230】
リファキシミン曝露
IBSを有する被験者でのリファキシミン曝露は、健常被験者での曝露レベルと同様であり、リファンピン曝露よりも520倍超少なく、ネオマイシン曝露よりも66倍超少ない。本出願人らにより以前に開示されている通り、健常被験者でのリファキシミン曝露は、肝性脳症の被験者での曝露レベルよりも顕著に少ない。
【0231】
IBS症状および腹部膨満感症状の十分な軽減を示した被験者の割合(%)
本試験で評価した一次評価項目および二次評価項目は、IBS症状の十分な軽減およびIBSの腹部膨満感症状の十分な軽減を報告した被験者の割合(%)に治療が及ぼす影響であった。これらの結果を、表17、18、19および20に示す。データにより、リファキシミンを摂取した被験者ではより多くが、IBS症状および腹部膨満感症状の十分な軽減を有したことが実証されている。
【0232】
試験結果をさらに評価するために、試験参加者の部分集団に対するリファキシミン治療の有効性を評価した。
【0233】
男性および女性集団について独立に、一次評価項目および二次評価項目を評価した。この解析により、リファキシミンを摂取した女性被験者ではより高い割合の被験者が、IBS症状およびIBSの腹部膨満感症状の十分な軽減を有することが示された。表21を参照されたい。
【0234】
年齢に基づく試験参加者の部分集団について、一次評価項目および二次評価項目を評価した。65歳未満の被験者および65歳以上の被験者の解析により、リファキシミンを投与された65歳以上の被験者では、より高い割合の被験者が、IBSの腹部膨満感症状の十分な軽減を有することが示された。表22を参照されたい。
【0235】
白人試験参加者および非白人試験参加者のリファキシミン治療の有効性により、リファキシミンを投与された非白人参加者では、より高い割合の被験者がIBS症状の十分な軽減を有することが示された。表23を参照されたい。
【0236】
リファキシミン治療の有効性はまた、下痢型IBSを有する被験者および交代型IBSを有する被験者についても評価した。データにより、交代型IBSを有する被験者では、下痢型IBSを有する被験者よりも高い割合の被験者が、IBS症状の十分な軽減およびIBSの腹部膨満感症状の十分な軽減を有したことが示されている。表24を参照されたい。
【0237】
本試験ではまた、各被験者についてのベースライン値からの1日当たりの平均排便回数に対するリファキシミン投与の効果も評価した。データにより、リファキシミンは、試験の被験者について、排便頻度の週間平均を少なくとも1回、効果的に減少させたことが示されている。特に、試験の最後の4週間では、リファキシミンを投与された被験者について、プラセボを投与された被験者と比較して、排便頻度の顕著な減少が示されている。表25を参照されたい。
【表12】

【0238】
興味深いことに、550mgリファキシミンTIDを投与された被験者は、プラセボ群と比較して、皮膚および皮下組織障害の減少を示した。プラセボ群では3.8%が皮膚または皮下組織障害を有し、リファキシミン治療群では1.3%であった。
【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【0239】
各臨床試験の結果は、IBS関連症状、腹部膨満感および腹痛の一日尺度のそれぞれが、一次評価期間(第3週〜第6週)での顕著な軽減ならびにすべての期間を通して一貫した結果を示すことを実証している。この知見は、IBSに対するリファキシミンの持続的効果についてわかっていることにいくつかの重要な観察を加える。すなわち、一次評価項目および主要二次評価項目の一部であると考えられる思いだしバイアスを減少させる毎日の質問が、顕著かつ堅牢な知見を示す。第2に、これらの知見は、一次評価項目および主要二次評価項目の結果と著しく相関して、非常に強い級内相関をもたらし、これは、妥当性を示唆する(例えば、一日尺度が、IBSについての疾患活動性の有効な尺度である週間SGAとの強い関連性を示す)。第3に、一日尺度は、すべてが互いに強く相関していた(少なくとも80%の相関係数)。考え合わせると、一次評価項目、主要二次評価項目、症状(腹部膨満感および腹痛)の一日尺度の結果は、本試験で評価項目として用いたこれらの結果の信頼性、妥当性、反応性、および有用性を強く支持し、これらの質問票のそれぞれが他の質問票の結果の正当性を確認することを示す。
【0240】
さらに、3ヵ月の臨床試験全体にわたる効果を評価するために一次評価項目を用いると、包括的IBS症状の十分な軽減は、それぞれの臨床試験で、プラセボ治療患者と比較してリファキシミン治療患者の方が上回っていた。この評価項目は、具体的にはロトロネックス(lotronex)について、以前に試験し、審査部門に許可されており、つまり、試験継続期間全体でのIBS症状の十分な軽減を有した月数であった(典型的には、応答は、0ヵ月、1ヵ月、2ヵ月、または3ヵ月の十分な軽減を含む)。このアプローチは、試験期間(12週/3ヵ月)を通した全データを用い、2週間の治療が3ヵ月間の軽減をもたらすことを実証する。
【0241】
2回の試験は、独立に、14日間のリファキシミン550mg TIDが、以下の項目で測定した場合に一次評価期間(第15日〜第42日)でのIBS症状の統計学的に有意な軽減をもたらすことを実証する:
毎週のIBS包括的症状(一次評価項目);
毎週のIBSの腹部膨満感症状(主要二次評価項目);
IBS症状の一日評価;
一日のIBSの包括的症状;
一日のIBSの腹部膨満感症状:および
一日のIBSの腹痛症状。
【0242】
2回の試験は、独立に、14日間のリファキシミン550mg TIDが、以下の項目により示した場合に全3ヵ月でのIBS症状の統計学的に有意な軽減をもたらすことを実証する:
毎週の包括的IBS症状;および
一日の包括的IBS症状。
【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【0243】
実施例6:3ヵ月後の2回の試験の解析
3ヵ月にわたり下痢型IBS(dIBS)症状を十分に軽減することに対する550mg TIDでの経口投与リファキシミンの有効性を評価するために、試験を設計した。有効性の尺度は、IBS症状に関する試験継続期間にわたる毎週の主観的包括的評価(SGA)質問に対する被験者の回答に基づく。
【0244】
2回の試験は、独立に、14日間のリファキシミン550mg TIDが、一次評価期間および投与期間終了後10週間のモニタリングでIBS症状の統計学的に有意な軽減をもたらすことを実証する。結果を、以下の表25に示す。
【表25A】

【表25B】

【0245】

【表25C】

【0246】
これらの試験の試験評価項目は、試験中の包括的IBS症状および腹痛のAUCであった。
【0247】
測定された他の評価項目は、以下の項目である:
平均でのベースラインからの1ポイントの腹痛スコアの減少;
平均でのベースラインからの2ポイントの腹痛スコアの減少;
平均でのベースラインからの3ポイントの腹痛スコアの減少;
平均でのベースラインからの2未満の一日腹痛スコア;
平均でのベースラインからの25%以上の週間腹痛スコア中央値の全般的減少;
平均でのベースラインからの50%以上の週間腹痛スコア中央値の全般的減少;
平均でのベースラインからの75%以上の週間腹痛スコア中央値の全般的減少;
平均でのベースラインからの1ポイントの腹痛スコアの減少;
平均でのベースラインからの2ポイントの腹痛スコアの減少;
平均でのベースラインからの3ポイントの腹痛スコアの減少;
平均でのベースラインからの2未満の一日腹痛スコア;
平均でのベースラインからの25%以上の週間腹痛スコア中央値の全般的減少;
平均でのベースラインからの50%以上の週間腹痛スコア中央値の全般的減少;
平均でのベースラインからの75%以上の週間腹痛スコア中央値の全般的減少;
IBSの腹部膨満感症状;
3ヵ月の試験中の持続性応答
包括的IBS症状(毎週);
IBSの腹部膨満感症状(毎週);
腹痛(毎週)。
【0248】
また、十分な軽減を示した被験者の割合を、表25、25Aおよび25Bに示す。
【0249】
一次評価項目および二次評価項目を評価することにより実証されたように、2回の試験により、14日間のリファキシミン550mg TIDが、3ヵ月間にわたるIBS症状の統計学的に有意な軽減をもたらすことが示されている。
【0250】
本試験で評価した一次評価項目および二次評価項目は、包括的IBS症状の十分な軽減、腹痛の減少およびIBSの腹部膨満感症状の十分な軽減を報告した被験者の割合(%)に対する治療の効果であった。これらの結果は、別表に示す。データにより、リファキシミンを摂取した被験者でより多い被験者が、包括的IBS症状、腹痛および腹部膨満感の十分な軽減を有したことが実証されている。
【0251】
引用文献の組み込み
本出願を通して引用されたすべての引用文献、特許、係属中の特許出願および公開された特許の内容は、参照により本明細書中に明示的に組み入れられる。
【0252】
等価物
当業者であれば、日常的な実験以上のものを用いずに、本明細書中に記載した本発明の具体的実施形態の多数の等価物を認識し、または解明することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過敏性腸症候群(IBS)の治療方法であって、それを必要とする被験体に550mgのリファキシミンTIDを投与することにより、過敏性腸症候群(IBS)を治療することを含む、前記方法。
【請求項2】
IBSが下痢型IBSである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IBSが交代型IBSである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
約14日間〜約24ヵ月間、被験体にリファキシミンを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
IBSの治療が、IBS症状またはIBSの腹部膨満感症状のうちの1以上の治療を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1以上のIBS症状の治療が、ベースライン症状からの減少である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療前にベースライン症状を確認する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
IBS症状の十分な軽減が、「過去7日間で、IBS症状の十分な軽減がありましたか?」を含む質問をしたときの被験体からの「はい」との応答を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
IBS症状の十分な軽減が、IBS症状の十分な軽減を有したか否かを質問した場合の被験体からの肯定的な応答を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
IBS症状が、けいれん、疼痛、下痢、便秘、塊様便、水様便、頻回便、腹痛、腹部不快感、排便切迫、またはテネスムスのうち1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
腹部膨満感症状の十分な軽減が、腹部膨満感症状の減少を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
腹部膨満感症状の減少が、ベースライン症状からの減少である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
治療前にベースライン症状を確認する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
腹部膨満感症状の十分な軽減が、「過去7日間で、IBSの腹部膨満感症状の十分な軽減がありましたか?」を含む質問をしたときの被験体からの「はい」との応答を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
IBS症状の十分な軽減が、IBSの腹部膨満感症状の十分な軽減を有したか否かを質問した場合の被験体からの肯定的な応答を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
女性でのIBSの治療方法であって、それを必要とする女性への治療上有効量のリファキシミンの投与を含む、前記方法。
【請求項17】
被験体の性別の決定および女性被験体への治療上有効量の投与をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
女性でのIBSによる腹部膨満感の治療方法であって、それを必要とする女性への550mgのリファキシミンTIDの投与を含む、前記方法。
【請求項19】
高齢被験者でのIBSの治療方法であって、それを必要とする高齢被験体に550mgのリファキシミンTIDを投与し、それにより高齢被験体でのIBSを治療することを含む、前記方法。
【請求項20】
高齢被験体が、65歳以上の被験体を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項21】
被験体でのIBSの治療方法であって、それを必要とする被験体への550mgのリファキシミンTIDの投与を含み、被験体の人種の決定をさらに含む、前記方法。
【請求項22】
被験体が非白人であると決定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
IBSを治療するためのキットであって、リファキシミンを含む容器および治療上有効量のリファキシミンの投与がIBSの治療をもたらすことが記載されたラベルを含む、前記キット。
【請求項24】
前記ラベルが、年齢、性別または人種に基づくリファキシミンの処方に関する指示をさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
皮膚または皮下組織障害を有する被験体の治療方法であって、
有効量のリファキシミンの被験体への投与
を含む、前記方法。
【請求項26】
週間IBS包括的症状、週間IBS腹部膨満感症状、IBS一日症状評価、一日IBS包括的症状、一日IBS腹部膨満感症状、または一日IBS腹痛症状のうちいずれか1つの改善により、治療を判定する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
過敏性腸症候群(IBS)に伴う腹痛の治療方法であって、
それを必要とする被験体への550mgのリファキシミンTIDの投与、
それによる過敏性腸症候群(IBS)の腹痛の治療
を含む、前記方法。
【請求項28】
IBSが下痢型IBSである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
IBSが交代型IBSである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
IBSの治療が、IBSの疼痛症状の治療を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
IBSの疼痛症状が腹痛を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
IBSの疼痛症状の治療が、疼痛の十分な軽減を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
疼痛の十分な軽減が、疼痛症状の減少を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
疼痛の減少が、ベースライン症状からの減少を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
治療前にベースライン症状を確認する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
20年を超える糖尿病既往歴を有する被験体が、リファキシミンを用いた治療に応答すると予測される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−504597(P2013−504597A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528956(P2012−528956)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/048624
【国際公開番号】WO2011/032085
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511232204)サリックス ファーマスーティカルズ,リミテッド (2)
【Fターム(参考)】