説明

過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法

【課題】饅頭の生地に餡を包み、加熱加工し、冷却する焼きかりんとうの製法において、加熱加工の際に表面にオイルを塗り、過熱水蒸気により焼成する、過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法を提供する。
【解決手段】小麦粉を主成分とする饅頭の生地に餡を入れて包餡成形30し、成形された饅頭に熱を加えて加熱加工し、冷却して製造するかりんとう饅頭の製造方法において、加熱加工する饅頭の外表面の全体に未使用のオイルを塗る油塗布工程40と、饅頭の周表面を焼きあげるために饅頭を過熱水蒸気の充満した蒸気加熱装置の中に導入して加熱する焼成工程50とからなる過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼きかりんとう饅頭の製造方法に関し、特に、饅頭の外表面の全体に未使用のオイルを塗って、100℃以上の過熱水蒸気で加熱製造する、表面がかりんとうと同様の歯ごたえがある過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のかりんとう饅頭の製造方法としては、小麦粉等を主成分とする饅頭生地を生成し、生地に餡を包み込み、饅頭を油で揚げる方法が一般的であった。油で全体を揚げることにより表面がカリッとした食感になり、かりんとうと同様の食感を有する饅頭からなる饅頭菓子が開発製造されていた。このかりんとう饅頭は、昔から親しまれてきた蒸し饅頭よりは歴史が浅いものの、2001年には「かりんとう饅頭」の商品名で全国的に販売が開始されていた。饅頭やかりんとうは子供からお年寄りまで広く親しまれた和菓子の1つである。従来、饅頭は蒸した菓子として一般的であったが、近年は揚げ菓子、焼き菓子、冷菓子等の生成方法も種類も豊富になり、饅頭生地に山芋、酒母、くず、生麩などを練込した様々なものが存在している。
【0003】
従来、かりんとう饅頭は、油で揚げる工程があるため、饅頭の生地全体に油が浸透するため、カロリーが高い菓子とされていた。また、油を使用しているため、保存方法、保存期間、保存温度によっては油の劣化を招き、菓子の風味が損なわれる可能性もあり賞味期間が限られるという問題点が指摘されていた。
一方、近年の生活習慣病予防の面から、健康志向に高い関心が払われ、お菓子のパッケージやファミリーレストラン、ファーストフード、コンビニエンスストアのお弁当などにもカロリーが表示されている事が多く、カロリーを気にする人が増加してきている。
【0004】
大衆に親しまれてきた饅頭と同様であって、外側がかりんとうと同様の歯ごたえで、程良い食感を合わせ持つ菓子であり、かりんとう饅頭は現代的菓子として評価されているが、更に従来のかりんとう饅頭と比較してヘルシーであり、油の酸化や劣化の可能性が低く、かつ総カロリーが抑えるとともに、手軽に味わえ、風味の優れたかりんとう饅頭の開発が望まれていた。
【0005】
特開2006−191871、特表平11−502726には、お菓子の製造に過熱水蒸気を使用し、菓子の生地の膨化または過熱するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−191871公報
【特許文献2】特表平11−502726公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を解決するために、小麦粉を主成分とする饅頭の生地の中央に餡を入れた饅頭に熱を加えて加熱加工し、冷却して製造するかりんとう饅頭であって、外表面に未使用のオイルを塗って、100℃以上の過熱水蒸気で加熱製造する過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明に係る過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法は、小麦粉を主成分とする饅頭の生地の中央に餡を入れて饅頭形に包餡成形し、成形された饅頭に熱を加えて加熱加工し、加熱加工した饅頭を冷却して製造するかりんとう饅頭の製造方法であって、加熱加工する饅頭の外表面の全体に未使用のオイルを塗る油塗布工程と、該饅頭を加熱するとともに饅頭の周表面を焼きあげるために饅頭を100℃以上の過熱水蒸気の充満した蒸気加熱装置の中に導入して加熱する焼成工程とからなる構成である。
【0009】
過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の生地は、小麦粉を主原料とした混練体からなり、黒糖、米粉、卵、砂糖、ココア、よもぎ、その他の練込可能な食材を添加して混練したペースト状の練り物からなる構成である。
【0010】
また、餡は、小豆使用したこしあん、つぶあん、白あん、カスタード、その他の被包可能な食材からなる構成である。
【0011】
また、オイルは、未使用の新鮮な食用油からなる構成である。
【0012】
また、過熱水蒸気は、素早く饅頭の表面を焼成するように高温の空気と比べて約4倍の熱容量の強力な熱エネルギーをもつ100℃以上に加熱された水蒸気からなる構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.小麦粉を主成分とする饅頭の生地の中央に餡を入れた饅頭の外表面の全体に未使用のオイルを塗るだけで焼成工程に油を使用しないため、従来の製造方法で油揚工程を経て形成されたかりんとう饅頭に比べて饅頭自体に含まれる油の量が少なく、製品の油の酸化による劣化が抑えられる。
【0014】
2.饅頭の生地は小麦粉を主原料とした混練体からなり、黒糖、米粉、卵、砂糖、ココア、よもぎ、その他の練込可能な食材を添加して練り込むことが可能なため、様々な風味、嗜好、形に合わせて豊富な種類の焼きかりんとう饅頭の製造が可能である。
3.餡は、小豆使用したこしあん、つぶあん、白あん、カスタード、その他の被包可能な多く食材を使用することが可能であるため、カロリーが少なく、様々な栄養価が得られる過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭を提供できる。
【0015】
4.オイルは、未使用の新鮮な食用油を塗るだけで焼成工程に油は使用しないため、饅頭自体に浸透する油量が少なく、従来の油揚工程を経て形成されたかりんとう饅頭と比較して余計な油がないためヘルシーである。また、新鮮な食用油を使用しているため、油の酸化による劣化や製品の賞味期限についても利点が多く、風味を維持し、かつ、鮮度を保つことができる。
【0016】
5.過熱水蒸気は、100℃以上に過熱された水蒸気であり、素早く饅頭の周表面を焼きあげるため短時間で製品の内部まで加熱が可能である。周表面をカリッと瞬時に焼成ができるので、饅頭自体が低温である時間が短く、食品が低温度の際におきる結露がないため、水っぽくなることがない。また油で揚げることにより生じる火の通りの偏在も回避でき、酸化に弱いビタミンCやビタミンEを失うことなく栄養素を維持しながら焼成調理が可能である。従来の油揚工程(フライヤーの使用)がないため、大量の油を使用せずに焼成が可能であり、廃油の発生が抑えられるので環境にもよい。保存方法、保存温度また保存期間等の品質保持、油の劣化にともなう賞味期限の短期限定についても回避でき、長期に亘り風味を維持し、かつ、鮮度を保つことができる。
また、無酸素状態で焼成が可能であるため、酸化抑制効果があり食品の焼成や焙煎の際に発がん性物質や過酸化脂質の発生の恐れがほとんどなく、ダイオキシンの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法を詳細に説明する。
図1は、過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法の工程を示した図である。
本発明に係る過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法10は、生地生成工程20と、包餡工程30と、油塗布工程40と、焼成工程50と、冷却工程60とからなり、既存の油揚工程をなくして新しく油塗布工程と焼成工程を加えた構成である。
【0018】
生地生成工程20は、従来と同様の小麦粉を主原料とする饅頭の生地を生成する工程である。饅頭の生地として主に小麦粉を混練したものを用いるが、小麦粉の他に黒糖、米粉、卵、砂糖、ココアやよもぎのような混練可能な食材を添付混入することが可能である。その他に添加可能な材料としてはゴマ、抹茶、大豆、蕎麦粉、ピーナッツなどを適宜に粉状にして生地に混ぜることが可能であり、これにより多種多様な饅頭の生地を生成することができる。混合の分量は所望する味によって、適宜調整することが可能であり、特に比率や添加量を特定するものではない。
【0019】
包餡工程30は、従来の工法と同様であり、生地生成工程20で作られた生地の中に餡を入れ、団子状の球形に形成するものであり外周面を饅頭生地とし中央に餡を包み込んだ饅頭を形成する工程である。生地の中央部に包み込む餡としては、主に小豆使用したこしあん、つぶあん、白あん、カスタード、その他甘いものに限らず辛いもの、嗜好に合った被包可能な食材を包むことが可能である。また、餡の主原料は小豆に限定される事はなく、ささげ、その他の豆類で作成することも可能である。
【0020】
油塗布工程40は、包餡工程30で形成された饅頭の外表面の全体に未使用のオイルを塗る工程である。表面がカリっと仕上がりかりんとうと同様の食感を出すために饅頭の外表面に1個ずつ未使用の新鮮な食用油を塗ることが望ましい。また、使用する油については、食用油であれば未使用のものでなくても使用可能であるが、果実や種子を非加熱処理して遠心分離等により直接得られる品質の高い油を使用することにより油の劣化を防ぐことが可能である。また、未使用の新鮮な食用油であれば使用量が少なくても充分に効果があり、また使用後の油についても再利用の用途が広くなるという利点がある。
【0021】
焼成工程50は、油塗布工程40で饅頭の外表面の全体にオイルが塗られた饅頭を加熱装置の中に導入し、焼きあげる焼成工程である。従来とは異なり、油を使用しない工法が採用されている。焼成装置には、焼きあがった饅頭の外表面がよりカリッと仕上がるように、装置内に100℃以上の過熱水蒸気を充満させ、饅頭の表面全体を短時間で高温加熱して焼きあげている。本実施例では100℃以上の過熱水蒸気(130℃程度)を使用して焼いているが、焼成条件は、本実施例に記載されている諸条件に限定されるものではなく、焼成する饅頭の量、表面の仕上がりの色の好みや程度によって任意に過熱水蒸気の温度や焼成時間を選択することが可能である。
【0022】
冷却工程60は、従来のかりんとう饅頭製造工程と同様であり、焼成工程50で焼きあがった饅頭を冷却室で冷やす工程である。饅頭の食感を維持する必要があり、また、焼成された饅頭の底がべとつくことを防止するため、時間をかけずに即冷することが望ましい。ただし、機械による冷却でなくて自然のままで自然放熱させることも可能である。
【0023】
本発明にかかる過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭は、表面がかりんとうの食感で中がふわふわの饅頭という焼きかりんとう饅頭の全体の食感を有しており、製造工程として従来必要とされていた油で揚げる工程を回避した画期的な工法である。これにより出来た製品は使用する油が少ないので、カリッとした食感を長期間保つことが出来、かつ賞味期限が大幅に延びるという効果がある。更に、従来問題をなっていた油で揚げる工程で使用した廃油の処理という問題から解放された点でも画期的と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造過程を示した図である。
【符号の説明】
【0025】
10 過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法
20 生地生成工程
30 包餡工程
40 油塗布工程
50 焼成工程(過熱水蒸気)
60 冷却工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を主成分とする饅頭の生地の中央に餡を入れて饅頭形に包餡成形し、成形された饅頭に熱を加えて加熱加工し、加熱加工した饅頭を冷却して製造するかりんとう饅頭の製造方法において、
加熱加工する饅頭の外表面の全体に未使用のオイルを塗る油塗布工程と、
該饅頭を内部まで加熱するとともに饅頭の周表面を焼きあげるために饅頭を100℃以上の過熱水蒸気の充満した蒸気加熱装置の中に導入して加熱製造する焼成工程と、
からなることを特徴とする過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法。

【請求項2】
前記饅頭の生地は、小麦粉を主原料とした混練体からなり、黒糖、米粉、卵、砂糖、ココア、よもぎ、その他の練込可能な食材を添加して混練したペースト状の練り物からなることを特徴とする請求項1に記載の過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法。

【請求項3】
前記餡は、小豆使用したこしあん、つぶあん、白あん、カスタード、その他の被包可能な食材であることを特徴とする請求項1に記載の過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法。

【請求項4】
前記オイルは、未使用の新鮮な食用油であることを特徴とする請求項1に記載の過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法。

【請求項5】
前記過熱水蒸気は、素早く饅頭の表面を焼成するように高温の空気と比べて約4倍の熱容量の強力な熱エネルギーをもつ100℃以上に加熱された水蒸気であることを特徴とする請求項1に記載の過熱水蒸気で焼成する焼きかりんとう饅頭の製造方法。

【図1】
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