説明

過硫酸製造装置及び過硫酸製造方法

【課題】硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を製造することが可能な過硫酸製造装置及び過硫酸製造方法を提供する。
【解決手段】陽極30と、陰極32と、陽極30側に硫酸アンモニウムを含む硫酸溶液を供給する硫酸溶液供給手段16と、を備え、陽極30と陰極32との間に電流を流し、前記硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置1であって、前記硫酸溶液供給手段16により供給される前記硫酸溶液の全硫酸濃度は、6.5〜12mol/Lの範囲であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、硫酸アンモニウム由来によるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤等として有用な過硫酸の溶解水を電気化学的手法により製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程におけるウエハ洗浄は、レジスト残渣、微粒子、金属及び自然酸化膜等を剥離洗浄するプロセスであり、例えば、濃硫酸と過酸化水素との混合溶液(SPM)、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)等を用いてウエハを洗浄する方法が多用されている。このように、(高濃度)硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると、硫酸が酸化されて過硫酸が生成される。そして、過硫酸は、自己分解する際に強い酸化力を発するため、上記ウエハ等の洗浄に役立つことが知られている。
【0003】
SPMを用いる洗浄方法では、生成した過硫酸は自己分解等によって、使用とともに酸化力が低下してしまう。そのため、洗浄時には過酸化水素水の補給を繰り返す必要がある。また、過酸化水素水を補給すると、SPM中の硫酸濃度が低減するため、硫酸濃度が所定の濃度を下回ると、新しい高濃度硫酸と交換する必要がある。
【0004】
また、SPMを用いる洗浄方法では、一回洗浄槽を満たした高濃度硫酸と数回の過酸化水素水添加により発生する過硫酸量は少ない。また、SOMを用いる洗浄方法では、オゾン吹き込み量に対する過硫酸の発生効率が非常に低い。したがって、これらの方法では、生成する過硫酸の濃度に限界があるため、洗浄効果にも限界がある。
【0005】
過硫酸を生成する方法としては、上記方法の他に、硫酸溶液を電解して過硫酸を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。このような電気化学的手法は、上記方法より過硫酸濃度を高めることができ、薬品使用量を低減することもできる。
【0006】
また、硫酸溶液を電解して過硫酸を製造する方法においては、硫酸溶液中にアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンを共存させることで、過硫酸の生成効率を高める方法が知られている(例えば、特許文献5、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−192874号公報
【特許文献2】特表2003−511555号公報
【特許文献3】特表2006−111943号公報
【特許文献4】特開2008−19507号公報
【特許文献5】特開昭55−34700号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Balej J, et al., Collect. Czech. Chem. Commun. 1980, vol. 45, 8, p2272-2282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ウエハ上に形成されるレジスト膜の剥離効果を高めるためには、過硫酸濃度のみならず硫酸濃度も高濃度であることが望まれる。しかし、上記のような従来の電気化学的手法では、硫酸濃度が高いと、過硫酸生成のための電流効率が低下してしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を製造することが可能な過硫酸製造装置及び過硫酸製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、陽極と、陰極と、陽極側に硫酸アンモニウムを含む硫酸溶液を供給する硫酸溶液供給手段と、を備え、前記陽極と前記陰極との間に電流を流し、前記硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置であって、前記硫酸溶液供給手段により供給される前記硫酸溶液の全硫酸濃度は、6.5〜12mol/Lの範囲であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、硫酸アンモニウム由来によるものである。
【0012】
また、本発明は、陽極と、陰極と、陽極側に硫酸溶液を供給する硫酸溶液供給手段と、前記硫酸溶液にアンモニアを含有するガスを供給して、硫酸アンモニウムを生成するアンモニア供給手段と、を備え、前記陽極と前記陰極との間に電流を流し、前記硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置であって、前記硫酸溶液供給手段により供給される前記硫酸溶液の全硫酸濃度は、6.5〜12mol/Lの範囲であって、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、前記アンモニア供給手段のアンモニアを含有するガス供給により生成した硫酸アンモニウム由来によるものである。
【0013】
また、前記過硫酸製造装置において、前記硫酸アンモニウム濃度の上限値は3〜5.5mol/Lの範囲であって、下限値は0.01mol/Lであることが好ましい。
【0014】
また、前記過硫酸製造装置において、前記硫酸アンモニウム濃度は、0.01〜3mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、少なくとも陽極側に硫酸アンモニウムを含む硫酸溶液を供給し、陽極と陰極との間に電流を流し、前記硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造方法であって、前記硫酸溶液の全硫酸濃度は、6.5〜12mol/Lの範囲であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、硫酸アンモニウム由来によるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【図4】実施例1及び比較例1における通電量と過硫酸(H)濃度との関係を示す図である。
【図5】実施例2及び比較例2における通電量と過硫酸(H)濃度との関係を示す図である。
【図6】実施例3及び比較例3における通電量と過硫酸(H)濃度との関係を示す図である。
【図7】実施例4〜実施例8における通電量と過硫酸(H)濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、過硫酸製造装置1は、電解槽10、陽極液タンク12と陽極液ポンプ14と陽極液供給ライン16とを備える硫酸溶液供給手段、過硫酸排出ライン18、陰極液タンク20、陰極液ポンプ22、陰極液供給ライン24、陰極液排出ライン26、を備えるものである。
【0020】
電解槽10は、イオン交換膜等の隔膜28、陽極30、陰極32、を備えている。電解槽10は、隔膜28により陽極室34及び陰極室36に区画されている。そして、陽極室34には陽極30が配置され、陰極室36には陰極32が配置されている。陽極30及び陰極32は、導線により電解槽10外の電源40に接続されている。
【0021】
本実施形態において、硫酸溶液供給手段は、陽極液タンク12と陽極液ポンプ14と陽極液供給ライン16とにより構成されているが、陽極側に、以下説明する硫酸アンモニウム含有の硫酸溶液(陽極液)を供給することができる構成であれば、必ずしも上記構成に制限されるものではない。
【0022】
電解槽10の陽極室34側には、陽極液入口及び陽極液出口が設けられている。電解槽10の陽極液入口と陽極液タンク12とは、陽極液供給ライン16により接続されている。また、陽極液供給ライン16には、陽極液ポンプ14が設けられている。電解槽10の陽極液出口には、過硫酸排出ライン18が接続されている。一方、電解槽10の陰極室36側には、陰極液入口及び陰極液出口が設けられている。電解槽10の陰極液入口と陰極液タンク20とは、陰極液供給ライン24により接続されている。また、陰極液供給ライン24には、陰極液ポンプ22が設けられている。電解槽10の陰極液出口には、陰極液排出ライン26が接続されている。なお、本実施形態では、陽極液の一部が循環するように、過硫酸排出ライン18を分岐させ、その分岐ライン18aが陽極液タンク12に接続され、また、陰極液が循環するように、陰極液排出ライン26が陰極液タンク20に接続されている。
【0023】
以下に、本実施形態に係る過硫酸製造装置1の動作について説明する。
【0024】
まず、陽極液ポンプ14を稼働させ、陽極液タンク12から陽極液供給ライン16を通して、陽極液を電解槽10の陽極室34に供給する。また、陰極液ポンプ22を稼働させ、陰極液タンク20から陰極液供給ライン24を通して、陰極液を電解槽10の陰極室36に供給する。ここで、陽極液には、硫酸アンモニウム含有の硫酸溶液を用いている。その後、電源40から陽極30に正電圧、陰極32に負電圧を印加し、陽極30及び陰極32間に電流を流すと、陽極室34では、主に下式のような反応が起こる。
【0025】
2SO2− → S2− + 2e (1)
2HSO → S2− + 2H + 2e (2)
HSO + HO → HSO + 2H + 2e (3)
【0026】
また、陰極室36では、主に下式のような反応が起こる。
2H + 2e → H
【0027】
そして、このように硫酸溶液を電解することによって、ペルオキソ一硫酸(HSO)、ペルオキソ二硫酸(H)等の過硫酸を含む過硫酸溶解水が得られる。過硫酸溶解水は、過硫酸排出ライン18を通り、ウエハ等の洗浄に用いられる。また、過硫酸溶解水の一部は、分岐ライン18aを通り、陽極液タンク12に戻される。一方、陰極室36を通過した陰極液は、陰極液排出ライン26を通り、陰極液タンク20に戻される。
【0028】
高濃度の硫酸を電解する場合、通常、陽極30に正電圧、陰極32に負電圧を印加し、陽極30及び陰極32間に電流を通電し続けると、電解電圧が上昇し、過硫酸生成のための電流効率が低下して、過硫酸の生成量が低下してしまう。
【0029】
ここで、本実施形態では、硫酸溶液中の全硫酸濃度が6.5〜12mol/Lの範囲であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、硫酸アンモニウムを由来とする硫酸溶液を用いることにより、電流効率の低下を抑制している。また、水の電解によるオゾン発生も抑制している。その結果、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を得ることができる。特に、硫酸溶液中の全硫酸濃度は、9〜12mol/Lの範囲が好ましい。硫酸溶液中の全硫酸濃度が6.5mol/L未満であると、本実施形態により得られた過硫酸溶解水中の硫酸濃度が低く、ウエハ上に形成されるレジスト膜の剥離効果が低下する場合がある。また、硫酸溶液中の全硫酸濃度が12mol/L超であると、硫酸電解中に電解電圧の上昇が起こり易く、過硫酸生成量が低下する場合がある。また、硫酸アンモニウム由来の硫酸濃度が、0.01mol/L未満では、硫酸アンモニウム添加効果が弱く、硫酸電解中に電解電圧の上昇が起こり、過硫酸生成量が低下する場合がある。また、硫酸アンモニウム由来の硫酸濃度が、3mol/L超にしても、硫酸アンモニウムの添加量に対する過硫酸生成量の増加は僅かであるため、製造コストが高くなる。
【0030】
陽極液として用いる硫酸アンモニウム含有の硫酸溶液は、全硫酸濃度が6.5〜12mol/Lの範囲であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲が硫酸アンモニウム由来となるように、硫酸溶液に硫酸アンモニウム塩を溶解させることにより調製される。また、硫酸アンモニウム濃度の上限値は3〜5.5mol/Lの範囲であって、下限値は0.01mol/Lであることが好ましい。さらに、硫酸アンモニウムの濃度は0.01〜3mol/Lの範囲であることがより好ましい。また、陽極液として用いる硫酸アンモニウム含有の硫酸溶液の温度は、本実施形態の電解方法により得られる過硫酸の自己分解を抑制することができる点で、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、40℃以下がさらにより好ましい。硫酸溶液の温度制御方法は、特に制限されるものではないが、例えば、陽極液タンク12にヒータを設置したり、陽極液供給ライン16に冷却器を設置することによって、行われる。
【0031】
本実施形態に用いる陰極液としては、陽極液と同じ硫酸溶液であっても、陽極液と異なるような導電性物質を溶解した溶液であってもよい。また、陰極液として硫酸溶液を用いた場合、陽極液としての硫酸溶液と同程度の濃度の硫酸溶液を用いる方が、より多くの過硫酸を生成することができる点で好ましいが、陽極液の硫酸濃度より低い濃度、例えば10重量%以下の硫酸溶液であってもよい。
【0032】
本実施形態に用いる電解槽10は、図1に示すように隔膜28で陽極室34及び陰極室36に区画された2室型電解槽でもよいし、隔膜28を設けない無隔膜型電解槽でもよい。しかし、無隔膜型電解槽では、陽極30で一旦生成したペルオキソ一硫酸イオン(HSO)、ペルオキソ二硫酸イオン(S2−)等の過硫酸イオンが陰極32に接触して硫酸イオンに還元される可能性があるため、2室型電解槽を使用することが好ましい。また、電解槽10は単極式でも複極式でも特に制限されるものではない。
【0033】
本実施形態に用いる隔膜28としては、例えば、商品名Poreflon等の中性膜や商品名Nafion,Aciplex,Flemion等の陽イオン交換膜等が使用できるが、耐食性の点で、陽イオン交換膜を使用することが好ましい。
【0034】
本実施形態に用いる陽極30及び陰極32としては、例えば、白金、ダイアモンド被覆電極等を使用するが、陰極32はその他に、カーボン、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム電極等を使用することができる。隔膜28を有することで、陰極32側に供給する硫酸溶液を低濃度にすることができる場合には、白金、ダイアモンド被覆電極等より、カーボン、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム電極等を使用することが、耐食性、コストの点で好ましい。
【0035】
陽極30及び陰極32間の距離は、特に制限されるものではないが、短い方が好ましい。陽極30及び陰極32間の距離を短くすることにより、溶液抵抗によるジュール熱の発生が抑えられ、生成した過硫酸の自己分解を抑制することができるからである。陽極30及び陰極32間の距離は、例えば、1〜100mmの範囲であることが好ましい。また、陽極30及び陰極32間の電流密度は、特に制限されるものではないが、例えば10〜2000mA/cmの範囲であることが好ましい。
【0036】
図2は、本発明の他の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。図2に示す過硫酸製造装置2において、図1に示す過硫酸製造装置1と同様の構成については同一の符合を付している。
【0037】
図1に示す装置では、硫酸アンモニウム含有の硫酸溶液は、硫酸に硫酸アンモニウムを溶解させることにより調製されている。しかし、この方法では、硫酸アンモニウムの一部が溶解残渣として、硫酸溶液中に固形状で存在している場合がある。そこで、以下の本実施形態では、硫酸溶液にアンモニアを含有するガスを供給して、硫酸アンモニウム含有の硫酸溶液を調製した上で、該溶液を電解し過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置の一例を説明する。以下の実施形態の方が、硫酸溶液中に硫酸アンモニウムが固形状で存在することを抑制することができるため、ウエハ洗浄における歩留まりの点で好ましい。
【0038】
図2に示す過硫酸製造装置2は、電解槽10、陽極液タンク12と陽極液ポンプ14と陽極液供給ライン16とを備える硫酸溶液供給手段、過硫酸排出ライン18、陰極液タンク20、陰極液ポンプ22、陰極液供給ライン24、陰極液排出ライン26、散気板42とアンモニアガスタンク44とアンモニアガス供給ライン46とを備えるアンモニア供給手段、を備えるものである。散気板42は、陽極液タンク12内に設置され、アンモニアガスタンク44と散気板42とはアンモニアガス供給ライン46により接続されている。
【0039】
本実施形態では、アンモニア含有ガスが、アンモニアガスタンク44からアンモニアガス供給ライン46を通り、散気板42から陽極液タンク12に放出される。散気板42から陽極液タンク12中に放出されたアンモニア含有ガスは気泡となって硫酸溶液と接触し、硫酸溶液中に溶解して硫酸アンモニウムとなる。なお、上記方法は、気泡塔式によるアンモニアガス溶解方法の一例であって、気泡塔式の構成はこれに制限されるものではない。
【0040】
本実施形態では、6.5〜12mol/Lの硫酸を充填した陽極液タンク12内に、アンモニア含有ガスを放出して、6.5〜12mol/Lの硫酸のうち0.01〜3mol/Lの硫酸が、アンモニア含有ガスの供給により生成する硫酸アンモニウム由来のものとする。このような方法によって調製した硫酸溶液を電解することによっても、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を得ることができる。
【0041】
図3は、本発明の他の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。図3に示す過硫酸製造装置3において、図1に示す過硫酸製造装置1と同様の構成については同一の符合を付している。図3に示すように、過硫酸製造装置3は、電解槽10、陽極液タンク12と陽極液ポンプ14と陽極液供給ライン16とを備える硫酸溶液供給手段、過硫酸排出ライン18、陰極液タンク20、陰極液ポンプ22、陰極液供給ライン24、陰極液排出ライン26、充填塔48とアンモニアガス供給ライン50とアンモニアガス排出ライン52とを有するアンモニア供給手段、を備えるものである。過硫酸排出ライン18から分岐した分岐ライン18aには、充填塔48が設置され、充填塔48のガス供給口にはアンモニアガス供給ライン50が接続され、充填塔48のガス排出口にはアンモニアガス排出ライン52が接続されている。
【0042】
本実施形態では、分岐ライン18aから充填塔48に供給された硫酸溶液が、アンモニアガス供給ライン50から供給されるアンモニア含有ガスと接触し、硫酸溶液中にアンモニア含有ガスが溶解して硫酸アンモニウムとなる。なお、上記方法は、充填塔式によるアンモニアガス溶解方法の一例であって、充填塔式の構成はこれに制限されるものではない。
【0043】
本実施形態では、6.5〜12mol/Lの硫酸を充填した陽極液タンク12内に、充填塔48内で生成された硫酸アンモニウムを供給する。本実施形態も上記同様に、6.5〜12mol/Lの硫酸のうち0.01〜3mol/Lの硫酸が、アンモニア含有ガスの供給により生成する硫酸アンモニウム由来のものとなる。このような方法によって調製した硫酸溶液を電解することによっても、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を得ることができる。
【0044】
図2,3では、気泡塔式、充填塔式を例に、硫酸へのアンモニアガス溶解方法を説明したが、硫酸へのアンモニアガス溶解方法はこれに制限されるものではなく、例えば、スプレー塔式等であってもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1に示す過硫酸製造装置を用いて、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。陽極液には、全硫酸濃度は6.5mol/Lであり、そのうちの1mol/Lが硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いた。陰極液には、濃度1mol/Lの硫酸溶液を用いた。過硫酸製造装置で使用した陽極はダイアモンド被覆電極、陰極はジルコニウム電極であった。
【0047】
(比較例1)
比較例1では、全硫酸濃度が6.5mol/Lであるが、硫酸アンモニウムが含有していない硫酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、過硫酸溶解水を製造した。
【0048】
(実施例2)
実施例2では、全硫酸濃度は9mol/Lであり、そのうちの1mol/Lが硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0049】
(比較例2)
比較例2では、全硫酸濃度が9mol/Lであるが、硫酸アンモニウムが含有していない硫酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0050】
(実施例3)
実施例3では、全硫酸濃度は12mol/Lであり、そのうちの1mol/Lが硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0051】
(比較例3〜7)
比較例3〜5では、全硫酸濃度が12,13,14mol/Lであるが、硫酸アンモニウムが含有していない硫酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。比較例6,7では、全硫酸濃度は13,14mol/Lであり、そのうちの1mol/Lが硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0052】
表1に、通電量10Ah/Lでの実施例1及び比較例1の電流効率をまとめた。また、図4に、実施例1及び比較例1における通電量と過硫酸(H)濃度との関係をまとめた。また、表2に、通電量10Ah/Lでの実施例2及び比較例2の電流効率をまとめた。また、図5に、実施例2及び比較例2における通電量と過硫酸(H)濃度との関係をまとめた。また、表3に通電量10Ah/Lでの実施例3及び比較例3〜7の電流効率をまとめた。また、図6に実施例3及び比較例3における通電量と過硫酸(H)濃度との関係をまとめた。
【0053】
【表1】

【表2】

【表3】

【0054】
表1から判るように、全硫酸濃度6.5mol/Lのうちの1mol/Lの硫酸が硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いた実施例1の方が、硫酸アンモニウム未含有で、硫酸濃度6.5mol/Lの硫酸溶液を用いた比較例1より、高い電流効率を示した。また、図4から判るように、比較例1では、通電量の増加と共に過硫酸濃度は増加するが、その増加率は減少するのに対し、実施例1では、通電量を増加させてもその増加率はほとんど減少しなかった。同様に、表2,3及び図5,6から判るように、全硫酸濃度9mol/Lのうちの1mol/Lの硫酸が硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いた実施例2と硫酸アンモニウム未含有で、硫酸濃度9mol/Lの硫酸溶液を用いた比較例2との比較、及び全硫酸濃度12mol/Lのうちの1mol/Lの硫酸が硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いた実施例3と硫酸アンモニウム未含有で、硫酸濃度12mol/Lの硫酸溶液を用いた比較例3との比較でも同様の結果を示した。また、表3から判るように、全硫酸濃度12mol/L超の硫酸溶液を用いた比較例6,7では、硫酸アンモニウムを添加しても、過硫酸製造中に電解電圧の上昇が起こることがわかった。
【0055】
(実施例4〜8)
実施例4〜8では、全硫酸濃度は12mol/Lであり、そのうちの0.01,0.05,0.2,2,3mol/Lが硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0056】
表4に、通電量10Ah/Lでの実施例4〜8の電流効率をまとめた。また、図7に実施例4〜実施例8における通電量と過硫酸(H)濃度との関係をまとめた。
【0057】
【表4】

【0058】
表3及び4から判るように、全硫酸濃度12mol/Lのうち0.01〜3mol/Lの硫酸が硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いた実施例4〜8の方が、硫酸アンモニウム未含有で、硫酸濃度12mol/Lの硫酸溶液を用いた比較例3より、高い電流効率を示した。また、実施例4〜8を比較すると、硫酸アンモニウムの添加量を増加させることにより、高い電流効率を示した。さらに、図7から判るように、硫酸アンモニウムの添加量を増加させることにより、過硫酸生成量も増加した。但し、全硫酸濃度12mol/Lのうちの2mol/Lの硫酸が硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いた実施例7と全硫酸濃度12mol/Lのうちの3mol/Lの硫酸が硫酸アンモニウム由来である硫酸溶液を用いた実施例8とは、電流効率、過硫酸生成量において、ほとんど同じ値であった。すなわち、これ以上硫酸アンモニウムを添加しても、電流効率、過硫酸生成量の向上はみられないことがわかった。
【0059】
以上のことから、過硫酸製造時において、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を得るためには、硫酸溶液の全硫酸濃度を6.5〜12mol/Lの範囲とすることが適切であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲の硫酸を硫酸アンモニウム由来とすることが適切であると云える。
【符号の説明】
【0060】
1〜3 過硫酸製造装置、10 電解槽、12 陽極液タンク、14 陽極液ポンプ、16 陽極液供給ライン、18 過硫酸排出ライン、18a 分岐ライン、20 陰極液タンク、22 陰極液ポンプ、24 陰極液供給ライン、26 陰極液排出ライン、28隔膜、30 陽極、32 陰極、34 陽極室、36 陰極室、40 電源、42 散気板、44 アンモニアガスタンク、46 アンモニアガス供給ライン、48 充填塔、50 アンモニアガス供給ライン、52 アンモニアガス排出ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、陽極側に硫酸アンモニウムを含む硫酸溶液を供給する硫酸溶液供給手段と、を備え、前記陽極と前記陰極との間に電流を流し、前記硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置であって、
前記硫酸溶液供給手段により供給される前記硫酸溶液の全硫酸濃度は、6.5〜12mol/Lの範囲であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、硫酸アンモニウム由来によるものであることを特徴とする過硫酸製造装置。
【請求項2】
陽極と、陰極と、陽極側に硫酸溶液を供給する硫酸溶液供給手段と、前記硫酸溶液にアンモニアを含有するガスを供給して、硫酸アンモニウムを生成するアンモニア供給手段と、を備え、前記陽極と前記陰極との間に電流を流し、前記硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置であって、
前記硫酸溶液供給手段により供給される前記硫酸溶液の全硫酸濃度は、6.5〜12mol/Lの範囲であって、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、前記アンモニア供給手段のアンモニアを含有するガス供給により生成した硫酸アンモニウム由来によるものであることを特徴とする過硫酸製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の過硫酸製造装置であって、前記硫酸アンモニウム濃度の上限値は3〜5.5mol/Lの範囲であって、下限値は0.01mol/Lであることを特徴とする過硫酸製造装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の過硫酸製造装置であって、前記硫酸アンモニウム濃度は0.01〜3mol/Lの範囲であることを特徴とする過硫酸製造装置。
【請求項5】
少なくとも陽極側に硫酸アンモニウムを含む硫酸溶液を供給し、陽極と陰極との間に電流を流し、前記硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造方法であって、
前記硫酸溶液の全硫酸濃度は、6.5〜12mol/Lの範囲であり、そのうちの0.01〜3mol/Lの範囲は、硫酸アンモニウム由来によるものであることを特徴とする過硫酸製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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