説明

過給機付きエンジンの吸気構造

【課題】過給機付きエンジンの上下方向の寸法を抑制できると共に、部品点数を増やすことなくインタークーラを強固に支持でき、且つ、コンパクトなレイアウトが可能な過給機付きエンジンの吸気構造を提供する。
【解決手段】インタークーラは、吸気マニホールド3の4本目の分岐支管31bに対し、エンジンと反対側に配置され、I/Cケース71が吸気マニホールド3と一体に樹脂成形され、ケース上端部がプレート状の結合部16を介して吸気マニホールド3に結合されている。また、インタークーラは、I/Cケース71の挿入口71aからケース内部へ熱交換コア部を挿入する方向が、I/Cケース71の底部に向かってエンジン側へ近づく方向に傾いた状態で配置され、インタークーラの底部側が、I/Cケース71と一体に設けられたステーによってエンジンブロックに支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサで圧縮された空気を冷却するためのインタークーラを備える過給機付きエンジンの吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸入空気をコンプレッサにより圧縮して燃焼室に圧送する過給機付きエンジンが知られている。この過給機付きエンジンでは、過給された空気の温度が上昇して過給効率が低下することを防止するために、コンプレッサで圧縮された空気を冷却するためのインタークーラを備えたものがある。
このインタークーラを備える過給機付きエンジンの吸気構造に係る従来技術として特許文献1がある。この特許文献1では、エアクリーナと過給機のコンプレッサとを接続する第1吸気管と、コンプレッサとインタークーラとを接続する第2吸気管と、インタークーラとスロットルボディとを接続する第3吸気管とを有し、第3吸気管が第1吸気管の上側を通過するように配設する、つまり、第1吸気管と第3吸気管とを交差させることにより、過給機付きエンジンの吸気構造をコンパクトにできる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−213031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示された過給機付きエンジンの吸気構造では、インタークーラをエンジンの上方に配設して、インタークーラの両端に接続される第2吸気管と第3吸気管をそれぞれ短く形成することにより、過給機からスロットルボディまでの通路長を短縮している。しかし、上記の吸気構造では、インタークーラを含めたエンジンの上下方向の寸法が増大するため、エンジンの搭載性が悪化することは避けられない。
また、短く形成された第2吸気管と第3吸気管とでインタークーラの両端を支持することにより、インタークーラ用支持部材を不要にできると記載されているが、ステー等の支持部材を使用することなく、重量物であるインタークーラを第2吸気管と第3吸気管だけで支持することには無理がある。
【0005】
さらに、第2吸気管と第3吸気管だけでインタークーラを支持する構成であるため、第2吸気管および第3吸気管を介してインタークーラに振動が伝わりやすく、且つ、振動に対してインタークーラを強固に支持することは困難である。その結果、エンジンの振動や走行中の振動等がインタークーラに伝わると、第2、第3吸気管とインタークーラとの接続部に緩みが生じて空気漏れが発生する恐れがあり、信頼性の点で問題がある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、過給機付きエンジンの上下方向の寸法を抑制できると共に、部品点数を増やすことなくインタークーラを強固に支持でき、且つ、コンパクトなレイアウトが可能な過給機付きエンジンの吸気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1に係る発明)
本発明は、吸気通路に配置されるコンプレッサの回転によって吸入空気を過給する過給機を備えたエンジンの吸気構造であって、コンプレッサで圧縮された空気を冷却するインタークーラと、このインタークーラで冷却された空気の流量を調整するスロットルボディと、このスロットルボディで流量調整された空気をエンジンの各気筒に分配する吸気マニホールドとを備える。
インタークーラは、コンプレッサで圧縮された空気を冷却媒体と熱交換させる熱交換コア部と、この熱交換コア部を内部に収容するインタークーラケースとで構成され、このインタークーラケースが吸気マニホールドと一体に成形されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、インタークーラケースが吸気マニホールドと一体に成形されているので、重量物であるインタークーラを強固に支持でき、耐振動性等の信頼性が向上する。なお、インタークーラケースと吸気マニホールドに使用される材料は、樹脂あるいはアルミニウムが好適である。
また、インタークーラケースを吸気マニホールドと別体に形成する場合は、インタークーラと吸気マニホールドとの間に両者の干渉を避けるための隙間が必要不可欠となるため、その分、搭載スペースが増大する。これに対し、本発明では、インタークーラケースを吸気マニホールドと一体に成形することで、両者の干渉を避けるための隙間が不要となるので、インタークーラを吸気マニホールドに近接して配置できる。
さらに、本発明では、吸入空気の流れ方向において、インタークーラの下流側にスロットルボディを配置しているので、コンプレッサでの過給により高温となった空気が直接スロットルボディに供給されることはなく、インタークーラで冷却された空気がスロットルボディに供給されるので、スロットルボディの熱害対策も不要である。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項1に記載した過給機付きエンジンの吸気構造において、吸気マニホールドは、スロットルボディが接続される接続口と、この接続口より流入する吸入空気をエンジンの各気筒に分配するn本の分岐支管とを有し、このn本の分岐支管のうち、最も両外側に配置される1本目の分岐支管とn本目の分岐支管とが接続口に対し互いに反対側へ延びて設けられている。
インタークーラは、1本目の分岐支管またはn本目の分岐支管に対しエンジンと反対側に配置され、且つ、インタークーラケースの内部へ熱交換コア部を挿入する方向が、インタークーラケースの底部に向かってエンジン側へ近づく方向に傾いていることを特徴とする。
【0009】
本発明の吸気マニホールドは、n本の分岐支管のうち、最も両外側に配置される1本目の分岐支管とn本目の分岐支管とが接続口に対し互いに反対側へ延びて設けられているので、接続口から1本目およびn本目の分岐支管にかけて、吸気マニホールドの外側にスペースが生じる。このスペースを利用してインタークーラを配置することにより、インタークーラを吸気マニホールドに近接して配置できる。
また、インタークーラは、インタークーラケースの内部へ熱交換コア部を挿入する方向がインタークーラケースの底部に向かってエンジン側へ近づく方向に傾いているので、吸気マニホールドの通路断面積を減らすことなく、インタークーラとエンジンとの間に生じるデッドスペースを小さくできる。
【0010】
(請求項3に係る発明)
請求項1または2に記載した過給機付きエンジンの吸気構造において、インタークーラとスロットルボディとの間を接続するエアホースを有し、インタークーラケースには、円筒状の金属スリーブを介してエアホースの一端側が接続されるホース接続口が形成されると共に、ホース接続口の周囲に金属スリーブを固定するための固定座が設けられている。 金属スリーブは、一端側の端部に径方向の外側へ延設されるフランジ部を有し、他端側がエアホースの内周に挿入され、且つ、エアホースの外周に装着されるホースバンドを締め付けてエアホースに固定され、エアホースは、金属スリーブのフランジ部をインタークーラケースの固定座にスクリュを締め付けて固定されることを特徴とする。
【0011】
本発明では、インタークーラケースと吸気マニホールドとが一体に成形されているため、エアホースを接続する際に、スロットルボディの組み付け性および市場での交換作業性ついて考慮する必要がある。つまり、インタークーラとスロットルボディとの間をエアホースにより接続する工程は、a)スロットルボディにエアホースの出口側を装着する→b)スロットルボディを吸気マニホールドに固定する→c)エアホースの入口側をインタークーラケースのホース接続口に接続する。ここで、インタークーラケースが吸気マニホールドと別体に設けられている従来の吸気構造であれば、上記a)→b)→c)の工程順でエアホースを接続できるので、スロットルボディの組み付け性および市場での交換作業性に支障が生じることはない。
【0012】
しかし、インタークーラケースと吸気マニホールドとが一体に成形されていると、吸気マニホールドの接続口とインタークーラケースのホース接続口との相対位置が一定であるため、スロットルボディを吸気マニホールドに取り付けた後、エアホースの入口側をインタークーラケースのホース接続口に接続することは極めて困難である。つまり、インタークーラケースのホース接続口がパイプ状に突き出ているため、エアホースの出口側がスロットルボディに接続された状態で、パイプ状に突き出たインタークーラケースのホース接続口にエアホースの入口側を接続するためには、エアホースを大きく曲げる必要があり、作業性は極めて悪い。
【0013】
これに対し、請求項3に係る発明では、エアホースの内周に金属スリーブが挿入され、その金属スリーブのフランジ部をインタークーラケースの固定座にスクリュを締め付けて固定することで、インタークーラケースのホース接続口にエアホースを接続できる。
上記の構成であれば、インタークーラケースのホース接続口をパイプ状に突き出た形状にする必要はないので、エアホースを大きく曲げなくても、エアホースの入口側(一端側)をホース接続口に容易に接続できる。
また、インタークーラケースの固定座にガスケットを装着しておくことで、金属スリーブのフランジ部を固定座にスクリュで締め付け固定した時に、フランジ部と固定座との間の気密性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一体成形されたI/Cケースと吸気マニホールドの斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】上方側から見たインタークーラと吸気マニホールドの斜視図である。
【図4】正面側から見たインタークーラと吸気マニホールドの斜視図である。
【図5】I/Cケースのホース接続口側から見たインタークーラと吸気マニホールドの側面図である。
【図6】(a)本発明に係る過給機付きエンジンの吸気構造を正面側から見た斜視図、(b)同吸気構造をエアホース側から見た側面図である。
【図7】エアホースの接続状態を示す断面図である。
【図8】過給機付きエンジンの吸排気系を模式的に示した平面図である。
【図9】一般的な樹脂ダクトとエアホースとの接続状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
この実施例1に示すエンジン1は、例えば、燃料にガソリンを使用する直列4気筒のガソリンエンジン、あるいは、燃料に軽油を使用するディーゼルエンジンであり、図8に示す様に、吸入空気をエンジン1の気筒内に導入する吸気通路と、気筒内で燃料の燃焼によって発生した排気ガスを大気に排出する排気通路とを備え、その吸排気系に過給機2を搭載している。
過給機2は、例えば、エンジン1より排出される排気ガスのエネルギを回転力に変換する排気タービン2aと、この排気タービン2aと同軸に連結されるコンプレッサ2bとを有し、このコンプレッサ2bの回転によって吸入空気を圧縮してエンジン1に供給するターボチャージャである。
【0017】
吸気通路は、エンジン1のシリンダヘッドに形成される各気筒の吸気ポート(図示せず)と、この吸気ポートを通じて吸入空気を各気筒に分配する吸気マニホールド3と、この吸気マニホールド3の上流に配置されるスロットルボディ4と、吸入空気として取り入れた外気をスロットルボディ4まで供給する吸気ダクト5等より構成される。
吸気ダクト5には、外気に含まれる砂埃などの異物を取り除くエアクリーナ6、吸気量を測定する吸気量センサ(図示せず)、過給機2のコンプレッサ2b、このコンプレッサ2bで圧縮された空気を冷却するインタークーラ7等が配設されている。
スロットルボディ4は、アクセルペダルに連動するスロットルバルブ8(図7、図8参照)を備え、このスロットルバルブ8の開度に応じて吸気量を調整する。また、スロットルボディ4には、スロットルバルブ8の開度を検出して、外部のECU(エンジン1の運転状態を制御する電子制御装置)へ出力するスロットルポジションセンサ9(図6、図7参照)が取り付けられている。
【0018】
排気通路は、シリンダヘッドに形成される各気筒の排気ポート(図示せず)と、この排気ポートに接続される排気マニホールド10と、各気筒の排気ポートを通じて排気マニホールド10に排出された排気ガスを大気に放出する排気管11等より構成される。
排気管11には、過給機2の排気タービン2aと、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を補集するDPF12(ディーゼルパティキュレートフィルターの略)と、このDPF12の排気上流および排気下流の排気温度を検出する排気温度センサ13等が設けられている。
【0019】
次に、本発明に係る過給機付きエンジン1の吸気構造について詳述する。
実施例1に示す過給機付きエンジン1の吸気系には、上述した様に、吸気流れ方向の上流から下流に向かって、コンプレッサ2b→インタークーラ7→スロットルボディ4→吸気マニホールド3が順に配置される。
吸気マニホールド3は、スロットルボディ4が接続される接続口3a(図7参照)と、この接続口3aに連通する容積室30と、この容積室30から分岐する4本の分岐支管31とを有し、この4本の分岐支管31が、それぞれ各気筒の吸気ポートに接続される。
【0020】
この吸気マニホールド3は、図1および図3に示す様に、4本の分岐支管31のうち、最も両外側に配置される2本の分岐支管31、つまり、エンジン1の第1気筒と第4気筒に吸入空気を供給する1本目の分岐支管31aと4本目の分岐支管31bとが、容積室30に対し互いに反対側(図示両側)へ延びて設けられている。
なお、実施例1に示す吸気マニホールド3は、エンジン1のシリンダヘッド(図示せず)に装着された状態で、スロットルボディ4との接続口3aが下向きに形成されている(図6参照)。また、接続口3aの周囲には、図7に示す様に、スロットルボディ4を固定するための固定座3bが設けられ、この固定座3bには、複数(例えば4個所)の螺子孔が形成されている。
【0021】
インタークーラ7は、図3〜図5に示す様に、コンプレッサ2bで圧縮された高温の空気を冷却水と熱交換させる熱交換コア部70と、この熱交換コア部70を内部に収容するインタークーラケース(以下I/Cケース71と呼ぶ)とで構成される。なお、図3〜図5は、I/Cケース71に熱交換コア部70が挿入された状態を示している。
このインタークーラ7は、吸気マニホールド3の容積室30と、最も外側の分岐支管31(1本目または4本目の分岐支管31a、31b)との間で吸気マニホールド3の外側に形成される凹スペースを利用して吸気マニホールド3に近接して配置される。具体的には、吸気マニホールド3の最も両外側に配置される2本の分岐支管31のうち、どちらか一方の分岐支管31、例えば、図示左方向へ延びる4本目の分岐支管31bに対し、エンジン1と反対側(図示下側)に配置される。
【0022】
I/Cケース71は、図1に示す様に、略直方体形状に設けられ、ケース上端には、熱交換コア部70をケース内部へ挿入するための挿入口71aが全面的に開口している。また、I/Cケース71は、図4に示す様に、吸気マニホールド3の固定座3bから遠い方のケース側面(図示左側の側面)には、コンプレッサ2bで圧縮された空気が流入するパイプ状の流入口71bが形成され、この流入口71bとコンプレッサ2bの出口部とがターボダクト(図示せず)によって接続される。一方、吸気マニホールド3の固定座3bに近接する方のケース側面には、後述するエアホース14(図6、図7参照)が接続されるホース接続口71cが形成されている。このホース接続口71cは、熱交換コア部70で冷却された吸入空気が流出する流出口であり、ホース接続口71cの周囲には、図7に示す金属スリーブ15を介してエアホース14を固定するための固定座71dが設けられ、この固定座71dには、図5に示す様に、複数(例えば4個所)の螺子孔71eが形成されている。
【0023】
本実施例のI/Cケース71は、図1に示す様に、挿入口71aが開口するケース上端部において、吸気マニホールド3の4本目の分岐支管31bに近接するケース長手方向の側面と、吸気マニホールド3の接続口3aに近接するケース短手方向の側面とが、プレート状の結合部16を介して吸気マニホールド3に結合されている。つまり、I/Cケース71と吸気マニホールド3は、両者が一体に樹脂成形され、結合部16によって強固に結合されている。
また、インタークーラ7は、図2に示す様に、I/Cケース71の挿入口71aからケース内部へ熱交換コア部70を挿入する方向が、I/Cケース71の底部に向かってエンジン側(図示右側)へ近づく方向に傾いた状態で配置され、インタークーラ7の底部側が、I/Cケース71と一体に設けられたステー17によってエンジンブロックに支持されている。
【0024】
スロットルボディ4は、図6に示す様に、吸気マニホールド3の固定座3bに形成された複数の螺子孔にそれぞれスルーボルト(図示せず)を結合して固定される。このスロットルボディ4は、図7に示す様に、スロットルバルブ8より吸気流れの下流側(図示上側)に開口する出口側の開口端が吸気マニホールド3の接続口3aに接続され、スロットルバルブ8より吸気流れの上流側に開口する入口側の開口端が、前述のエアホース14を介してI/Cケース71のホース接続口71cに連結される。なお、スロットルボディ4の入口側は、吸気流れの上流側に向かって円筒状に延びる通路部を形成している。以下、この円筒状の通路部を入口パイプ4aと呼ぶ。
【0025】
エアホース14は、例えば、ゴム製であり、図7に示す様に、スロットルボディ4の入口パイプ4aとI/Cケース71のホース接続口71cとの間を接続する湾曲した形状に設けられている。なお、本実施例のエアホース14は、ゴム製であっても、図7に示す湾曲した形状を保持できるだけの剛性を有している。
このエアホース14は、吸入空気の流出側である他端側をスロットルボディ4の入口パイプ4aの外周に嵌め合わせ、エアホース14の外周に装着されるホースバンド(図示せず)によって入口パイプ4aに締め付け固定される。
吸入空気の流入側であるエアホース14の一端側は、円筒状の金属スリーブ15を介してI/Cケース71のホース接続口71cに接続される。
【0026】
金属スリーブ15は、図7に示す様に、一端側の端部に径方向の外側へ延設されたフランジ部15aを有し、このフランジ部15aより他端側がエアホース14の内周に挿入され、エアホース14の外周に装着されるホースバンド18を締め付けてエアホース14に固定される。
エアホース14の一端側に取り付けられた金属スリーブ15は、I/Cケース71に設けられた固定座71dの螺子孔71eにスクリュ19(図6参照)を結合して固定される。また、I/Cケース71の固定座71dには、図7に示す様に、金属スリーブ15のフランジ部15aと固定座71dとの間を気密に保つための手段として、ガスケット20が装着されている。
【0027】
(実施例1の作用および効果)
実施例1に記載した過給機付きエンジン1の吸気構造は、I/Cケース71が吸気マニホールド3と一体に樹脂成形されることで、ケース上端部が結合部16を介して吸気マニホールド3に結合されている。また、インタークーラ7の底部側は、I/Cケース71と一体に設けられたステー17を介してエンジンブロックに支持されている。
上記の構成によれば、重量物であるインタークーラ7を強固に支持できるので、エンジン1の振動や走行中の振動等に対して強い吸気構造を実現でき、信頼性が向上する。
また、図6に示す様に、インタークーラ7の下流側にスロットルボディ4を配置しているので、コンプレッサ2bでの過給により高温となった空気が直接スロットルボディ4に供給されることはなく、インタークーラ7で冷却された空気がスロットルボディ4に供給されるので、スロットルボディ4の熱害対策も不要である。
【0028】
インタークーラ7は、I/Cケース71を吸気マニホールド3と一体に成形することで、吸気マニホールド3の外側に形成される凹スペースを利用して吸気マニホールド3に近接して配置できる。つまり、図3に示す様に、吸気マニホールド3の4本目の分岐支管31に対し反エンジン側(図示下側)に配置できるので、インタークーラ7をエンジン1の上方に配置する特許文献1と比較して、エンジン1の上下方向の寸法が増大することはない。
さらに、実施例1に示すインタークーラ7は、I/Cケース71の内部へ熱交換コア部70を挿入する方向が、I/Cケース71の底部に向かってエンジン側へ近づく方向に傾いた状態で配置される。これに対し、インタークーラ7を垂直に配置することも考えられる。例えば、図2において、吸気マニホールド3の通路断面積Sを確保するために、図中の二点鎖線の枠Aで示す位置にインタークーラ7を配置すると、インタークーラ7とエンジンブロックとの間に生じるデッドスペース(図中二点鎖線の楕円Cで示す領域)が大きくなるため、インタークーラ7の飛び出し量が大きくなり、搭載上不利である。
【0029】
また、インタークーラ7とエンジンブロックとの間に生じるデッドスペースを小さくするために、図中の一点鎖線の枠Bで示す位置にインタークーラ7を配置すると、二点鎖線の枠Aで示す位置に配置した場合と比較して搭載上は有利であるが、インタークーラ7が吸気マニホールド3と干渉して吸気マニホールド3の通路断面積Sが減少するため、現実的には無理な配置である。
これに対し、本実施例のインタークーラ7は、上記のように、I/Cケース71の底部側がエンジン側へ近づく方向に傾いた状態で配置されるので、吸気マニホールド3の通路断面積Sが減少することはなく、且つ、エンジンブロックとの間に生じるデッドスペースも小さくできる。これにより、インタークーラ7を垂直に配置した場合と比較して、よりコンパクトなレイアウトが可能となり、搭載性が向上する。
【0030】
実施例1に示す過給機付きエンジン1は、I/Cケース71と吸気マニホールド3が一体に成形されているため、エアホース14を接続する際に、スロットルボディ4の組み付け性および市場での交換作業性について考慮する必要がある。
なお、エアホース14の接続工程は、a)スロットルボディ4の入口パイプ4aにエアホース14の他端側(出口側)を装着する→b)スロットルボディ4を吸気マニホールド3に固定する→c)エアホース14の一端側(入口側)をI/Cケース71のホース接続口71cに接続する。
上記の工程順a)→b)→c)にエアホース14を接続する場合、I/Cケース71のホース接続口71cがパイプ状に突き出た形状であると、エアホース14の接続作業が困難である。
【0031】
本実施例では、I/Cケース71と吸気マニホールド3が一体に成形されているため、吸気マニホールド3の接続口3aとI/Cケース71のホース接続口71cとの相対位置が一定である。このため、ホース接続口71cがパイプ状に突き出た形状であると、スロットルボディ4を吸気マニホールド3に固定した後、エアホース14の一端側をI/Cケース71のホース接続口71cに接続する(エアホース14の内周にパイプ状に突き出たホース接続口71cを挿入する)際に、エアホース14を大きく曲げる必要があるため、ホース接続口71cに対するエアホース14の接続作業が極めて困難となる。
【0032】
これに対し、実施例1に記載したI/Cケース71のホース接続口71cは、パイプ状に突き出た形状ではなく、固定座71dの内周に開口する孔形状であり、エアホース14の内周にパイプ状のホース接続口71cを挿入する構成ではない。つまり、ホース接続口71cとエアホース14との接続は、金属スリーブ15を介して行うため、エアホース14を大きく曲げながら接続する必要はない。具体的には、エアホース14の一端側の内周に円筒状の金属スリーブ15を挿入し、この金属スリーブ15に設けられたフランジ部15aをI/Cケース71の固定座71dに当ててスクリュ19により固定することで、ホース接続口71cとエアホース14との接続を行うことができる。これにより、エアホース14を無理に曲げなくても、エアホース14の一端側をホース接続口71cに容易に接続できるので、スロットルボディ4の組み付け性および市場での交換作業性に支障が生じることはない。
【0033】
また、I/Cケース71の固定座71dには、ガスケット20が装着されているので、金属スリーブ15のフランジ部15aを固定座71dにスクリュ19で締め付け固定した時に、ガスケット20が圧縮されることで、フランジ部15aと固定座71dとの間の気密性が確保される。
ところで、一般的な過給機用の樹脂ダクト21とエアホース14との接続は、図9に示す様に、樹脂のクリープによるシール性の低下を考慮して、樹脂ダクト21の内周に金属管22を挿入し、且つ、エアホース14の外周をホースバンド18で締め付ける必要がある。しかし、本実施例は、図9に示す様な、エアホース14の内周に樹脂ダクト21を挿入する構成ではないので、樹脂のクリープによりシール性が低下することはない。また、金属管22の代わりに金属スリーブ15を使用するので、コストアップを最小限に抑えることが可能である。
【0034】
(変形例)
実施例1では、I/Cケース71を吸気マニホールド3と一体に樹脂成形した一例を説明したが、樹脂成形に限定するものではなく、例えば、I/Cケース71と吸気マニホールド3をアルミダイカストにより一体成形することもできる。
また、スロットルボディ4とI/Cケース71との間を接続するエアホース14は、実施例1に例示したゴム製に限定されるものではなく、例えば、樹脂成形品のエアホース14を使用することも可能である。
【0035】
実施例1では、本発明に係る吸気構造を直列4気筒エンジン1に適用しているが、4気筒以外の多気筒エンジンにも適用できることは言うまでもない。
実施例1では、吸排気系にターボチャージャ(過給機2)を搭載したエンジン1の吸気構造を記載しているが、本発明の過給機2は、ターボチャージャに限定する必要はなく、例えば、吸気ダクト5に配置されるコンプレッサ2bをエンジン1によって駆動するスーパーチャージャであっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 エンジン
2 過給機(ターボチャージャ)
2a 排気タービン
2b コンプレッサ
3 吸気マニホールド
3a 吸気マニホールドの接続口
4 スロットルボディ
5 吸気ダクト(吸気通路)
7 インタークーラ
14 エアホース
15 金属スリーブ
15a 金属スリーブのフランジ部
18 ホースバンド
19 スクリュ
20 ガスケット
31 吸気マニホールドの分岐支管
31a 1本目の分岐支管
31b 4本目の分岐支管(n本目の分岐支管)
70 熱交換コア部
71 I/Cケース(インタークーラケース)
71c I/Cケースのホース接続口
71d I/Cケースの固定座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に配置されるコンプレッサの回転によって吸入空気を過給する過給機を備えたエンジンの吸気構造であって、
前記コンプレッサで圧縮された空気を冷却するインタークーラと、
このインタークーラで冷却された空気の流量を調整するスロットルボディと、
このスロットルボディで流量調整された空気を前記エンジンの各気筒に分配する吸気マニホールドとを備え、
前記インタークーラは、前記コンプレッサで圧縮された空気を冷却媒体と熱交換させる熱交換コア部と、この熱交換コア部を内部に収容するインタークーラケースとで構成され、このインタークーラケースが前記吸気マニホールドと一体に成形されていることを特徴とする過給機付きエンジンの吸気構造。
【請求項2】
請求項1に記載した過給機付きエンジンの吸気構造において、
前記吸気マニホールドは、前記スロットルボディが接続される接続口と、この接続口より流入する吸入空気を前記エンジンの各気筒に分配するn本の分岐支管とを有し、このn本の分岐支管のうち、最も両外側に配置される1本目の分岐支管とn本目の分岐支管とが前記接続口に対し互いに反対側へ延びて設けられ、
前記インタークーラは、前記1本目の分岐支管または前記n本目の分岐支管に対し前記エンジンと反対側に配置され、且つ、前記インタークーラケースの内部へ前記熱交換コア部を挿入する方向が、前記インタークーラケースの底部に向かって前記エンジン側へ近づく方向に傾いていることを特徴とする過給機付きエンジンの吸気構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載した過給機付きエンジンの吸気構造において、
前記インタークーラと前記スロットルボディとの間を接続するエアホースを有し、
前記インタークーラケースには、円筒状の金属スリーブを介して前記エアホースの一端側が接続されるホース接続口が形成されると共に、前記ホース接続口の周囲に前記金属スリーブを固定するための固定座が設けられ、
前記金属スリーブは、一端側の端部に径方向の外側へ延設されるフランジ部を有し、他端側が前記エアホースの内周に挿入され、且つ、前記エアホースの外周に装着されるホースバンドを締め付けて前記エアホースに固定され、
前記エアホースは、前記金属スリーブのフランジ部を前記インタークーラケースの固定座にスクリュを締め付けて固定されることを特徴とする過給機付きエンジンの吸気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−251533(P2012−251533A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127131(P2011−127131)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)