説明

過酸化水素・アンモニア混合液の成分濃度測定方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、過酸化水素・アンモニア混合液中の各成分の濃度を測定する成分濃度測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、過酸化水素・アンモニア混合液中の各成分の濃度を測定する方法として、紫外吸収−イオン電極法や近赤外吸収法などが提案されている。そのうち、前者の紫外吸収−イオン電極法は、過酸化水素の濃度を吸光法を用いて、アンモニアの濃度をイオン電極を用いてそれぞれ測定するものである。この測定方法では、各成分間の相互作用に起因して測定誤差が大きくなるのを回避するために、測定する濃度範囲を、各成分間の相互作用が比較的数値化されやすい範囲に限定して行われる。
【0003】また、後者の近赤外吸収法は、近赤外線を混合液に照射して、その吸光度から各成分の濃度を測定するものである。この測定方法では、各成分間の相互作用に起因して測定誤差が大きくなるのを回避するために、最高6種類の波長光を用いて測定が行われ、濃度換算式は主成分回帰法によって求められる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来例のうち、前者の紫外吸収−イオン電極法では、各成分の相互作用による誤差を回避するために測定する濃度範囲が大幅に限定されており、広い濃度にわたって高精度に測定できない。
【0005】また、後者の近赤外吸収法では、多種類の波長光を用いているので広い濃度範囲にわたって測定できるけれども、光学素子を多く使用しなければならないので、測定装置のコストが高くなるという問題点を有する。
【0006】上記の従来欠点に鑑み、本発明は、測定系の構成が簡単で、広い濃度範囲にわたって各成分の濃度を簡単かつ正確に測定できる過酸化水素・アンモニア混合液の成分濃度測定方法を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、過酸化水素・アンモニア混合液中の各成分の濃度を、その混合液に照射した特定波長光の吸光度から求める成分濃度測定方法において、アンモニア濃度については、特定波長の紫外線の吸光度および特定波長の近赤外線の吸光度をそれぞれ説明変数として得られる重回帰式をアンモニア濃度換算式として求め、過酸化水素濃度については、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が予め定めた値α(ただし、αは1.7から2.3までの範囲内の値)wt%以上でかつ特定波長の紫外線の吸光度が予め定めた値β以上である第1の条件、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が前記値αwt%以上でかつ特定波長の紫外線の吸光度が前記値β未満である第2の条件、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が前記値αwt%未満でかつ特定波長の紫外線の吸光度が前記値β以上である第3の条件、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が前記値αwt%未満でかつ特定波長の紫外線の吸光度が前記値β未満である第4の条件の各場合に分け、第1、第2、第3の条件の場合には前記紫外線の吸光度および近赤外線の吸光度をそれぞれ説明変数として各条件で得られる重回帰式をそれぞれ第1,第2,第3の過酸化水素濃度換算式として求め、第4の条件の場合には前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度および前記紫外線の吸光度をそれぞれ説明変数として非線型最小2乗処理から得られる回帰式を第4の過酸化水素濃度換算式として求めることを特徴としている。
【0008】
【作用】上記の構成によれば、特定波長の紫外線の吸光度を第1の説明変数、特定波長の近赤外線の吸光度を第2の説明変数として得られているアンモニア濃度換算式に実測された各波長光の吸光度を当てはめることによって、先ず過酸化水素・アンモニア混合液中のアンモニア濃度が求められる。次に、求められたアンモニア濃度が予め定めた値αwt%以上で、このときの紫外線の吸光度が予め定めた値β以上の場合には、これに対応付けて得られている第1の過酸化水素濃度換算式に上記各波長光の吸光度を当てはめることによって、また、求められたアンモニア濃度が前記値αwt%以上で、このときの紫外線の吸光度が前記値β未満の場合には、これに対応付けて得られている第2の過酸化水素濃度換算式に上記各波長光の吸光度を当てはめることによって、また、求められたアンモニア濃度が前記値αwt%未満で、このときの紫外線の吸光度が前記値β以上の場合には、これに対応付けて得られている第3の過酸化水素濃度換算式に上記各波長光の吸光度を当てはめることによって、さらに、求められたアンモニア濃度が前記値αwt%未満で、このときの紫外線の吸光度が前記値β未満の場合には、これに対応付けて非線型最小2乗処理により導かれている第4の過酸化水素濃度換算式にアンモニア濃度および上記紫外線の吸光度を当てはめることによって、それぞれの場合に分けて過酸化水素・アンモニア混合液中の過酸化水素濃度が求められる。
【0009】
【実施例】この発明の実施例の説明に入る前に、過酸化水素・アンモニア混合液中の各成分の濃度と照射光の吸光度の関係に関して、発明者が行った実験結果から説明する。
【0010】図3は、測定セル中の過酸化水素・アンモニア混合液に波長2209.8nmの近赤外線を照射したときのアンモニア濃度と近赤外線の吸光度との関係を、混合液中の過酸化水素の濃度をパラメータとして測定した結果を示すグラフである。同図において、I,II,III は、それぞれ過酸化水素の濃度が0%,1%,5%のときのグラフを示している。ただし、このときの測定セルの長さ、つまり近赤外線の光路長は1mmである。また、このとき使用した近赤外線の波長2209.8nmはアンモニアの特性吸収波長、つまりアンモニアに対して吸光度がピークとなる波長であり、分光光度計を用いて測定している。
【0011】同図の測定結果から、波長2209.8nmの近赤外線を用いた場合、近赤外線の吸光度とアンモニア濃度との間には、ほぼ直線関係が成り立ち、若干、過酸化水素濃度の影響を受けることが分かる。
【0012】図4は、測定セル中の過酸化水素・アンモニア混合液に波長312.6nmの紫外線を照射したときのアンモニア濃度と紫外線の吸光度との関係を、混合液中の過酸化水素の濃度をパラメータとして測定した結果を示すグラフである。同図において、■,■,■,■,■,■は、それぞれ過酸化水素の濃度が0%,1.33%,4.00%,5.34%,8.00%のときのグラフを示している。ただし、このときの測定セルの長さ、つまり紫外線の光路長は2mmであり、分光光度計を用いて測定している。また、このとき使用した紫外線の波長312.6nmは、過酸化水素の特性吸収波長から少し外れた波長であり、このよう波長を設定することによって、測定値が分光光度計の測定レンジ内に収まるようにしている。
【0013】同図の測定結果から、過酸化水素濃度と紫外線の吸光度との関係に、アンモニア濃度がかなりな影響を与えていることが分かる。特にアンモニア濃度が2.0%から5.0%までの範囲と2.0%以下の範囲との間では、過酸化水素濃度と紫外線の吸光度と関係に明らかな相違が有ることが分かる。
【0014】つまり、図3および図4のグラフから明らかなことは、アンモニア濃度については、波長2209.8nmの近赤外線の吸光度を説明変数とする回帰直線を濃度換算式として、誤差の少ない濃度を求めることができるが、若干、過酸化水素濃度の影響を受けるので、過酸化水素濃度を良く反映する紫外線の吸光度を別の説明変数として加味することによって、過酸化水素濃度による影響分を補正すれば、アンモニア濃度を精度よく求めることができるということである。すなわち、アンモニア濃度については、波長2209.8nmの近赤外線の吸光度と、波長312.6nmの紫外線の吸光度とを説明変数とする重回帰式を濃度換算式として導出して置けば、この濃度換算式からアンモニア濃度を、少なくとも0〜5wt%の濃度範囲について正確に測定できるということである。
【0015】一方、図4のグラフから明らかなことは、過酸化水素の濃度と紫外線の吸光度との関係は、アンモニア濃度が2.0%以上のときと、2.0%未満のときとで異なるので、これらの場合に分けて過酸化水素濃度の濃度換算式を求めておけば、かなり誤差の少ない測定が可能であるということである。
【0016】これとは別に、過酸化水素濃度の場合には、さらに上記紫外線の吸光度が0.15以上のときと、0.15未満のときとの間でも、紫外線の吸光度との関係が異なること、およびこれらの各条件の中で、アンモニア濃度が2.0wt%未満で、かつ紫外線の吸光度が0.15未満の条件の場合には、アンモニア濃度および上記紫外線の吸光度を説明変数として、非線型最小2乗処理により導出される濃度換算式が実際の関係を良く説明し、その他の条件では、それぞれの条件ごとに重回帰分析により導出される濃度換算式、つまり上記紫外線の吸光度と上記近赤外線の吸光度とを説明変数とする重回帰式が関係を良く説明していることを、本発明の発明者は見出した。
【0017】この発明の過酸化水素・アンモニア混合液の成分濃度測定方法は、以上の測定結果から得られた知見に基づいて導かれたものであり、以下にその実施例について説明する。
【0018】図1は、本発明による測定方法が行われる測定系の概略的な構成を示す模式図である。図において、フローセル1は測定試料である過酸化水素・アンモニア混合液2を流通させる管路であり、途中を2つの流路1a,1bに分岐させてある。このフローセル1の一方の流路1aには、第1の光源3から干渉フィルタ4を経て得られる特定の波長313nmの紫外線UVが照射され、流路1aを透過した紫外線UVは第1の検出器5で受光される。また、フローセル1の他方の流路1bには、第2の光源6から回折格子7を経て得られる特定の波長2209.8nmの近赤外線NIR が照射され、流路1bを透過した近赤外線NIR は第2の検出器8で受光される。第1の検出器5で受光される紫外線UVの光量は電気信号に変換され第1のアンプ9で増幅された後、第1のA/D変換器10でデジタル信号に変換されて演算処理装置13に入力される。また、第2の検出器8で受光される近赤外線NIR の光量も電気信号に変換され第2のアンプ11で増幅された後、第2のA/D変換器12でデジタル信号に変換されて演算処理装置13に入力される。演算処理装置13に入力される信号は、上記紫外線UVおよび近赤外線NIR の過酸化水素・アンモニア混合液2における透過光量を示すデータであり、演算処理装置13ではこれらのデータを吸光度x1,x2に変換した後、後述するアンモニア濃度換算式および過酸化水素濃度換算式に当てはめる演算処理が行われ、その演算結果から過酸化水素・アンモニア混合液中の各成分の濃度が求められる。ここでは、アンモニア濃度y(NH3) を求める濃度換算式として、重回帰分析により導出された重回帰式
【0019】
【数1】


【0020】が適用される。数1で表されるアンモニア濃度換算式は上記フローセル1における紫外線UVの吸光度x1および近赤外線NIR の吸光度x2をそれぞれ説明変数、アンモニア濃度y(NH3) を目的変数とする重回帰式であって、次の表1に示す重回帰分析の結果、
【0021】
【表1】


【0022】説明変数x1の回帰係数a1として−1.369、説明変数x2の回帰係数a2として10.207、定数項にあたる回帰係数a0として0.040がそれぞれ導出されている。また、過酸化水素濃度y(H2O2)を求める濃度換算式として、次の4つの数式が適用される。
【0023】
【数2】


【0024】
【数3】


【0025】
【数4】


【0026】
【数5】


【0027】このうち数2で表される第1の過酸化水素濃度換算式は、上記フローセル1における紫外線の吸光度x1および近赤外線の吸光度x2をそれぞれ説明変数、過酸化水素濃度y1(H2O2)を目的変数として重回帰分析により得られた重回帰式であって、次の表2に示す重回帰分析の結果、
【0028】
【表2】


【0029】説明変数x1の回帰係数a1として18.273、説明変数x2の回帰係数a2として−2.427、定数項にあたる回帰係数a0として−0.107がそれぞれ導出されている。
【0030】この第1の過酸化水素濃度換算式は、上記アンモニア濃度換算式で求められたアンモニア濃度が2wt%以上で、かつ上記紫外線の吸光度つまり説明変数x1が0.15以上のときに適用される。
【0031】また、数3で表される第2の過酸化水素濃度換算式は、上記紫外線の吸光度x1および近赤外線の吸光度x2をそれぞれ説明変数、過酸化水素濃度y2(H2O2)を目的変数として重回帰分析により得られた重回帰式であって、次の表3に示す重回帰分析の結果、
【0032】
【表3】


【0033】説明変数x1の回帰係数a1として11.529、説明変数x2の回帰係数a2として−0.654、定数項にあたる回帰係数a0として0.196がそれぞれ導出されている。
【0034】この第2の過酸化水素濃度換算式は、上記アンモニア濃度換算式で求められたアンモニア濃度が2wt%以上で、かつ上記紫外線の吸光度つまり説明変数x1が0.15未満のときに適用される。
【0035】また、数4で表される第3の過酸化水素濃度換算式は、上記紫外線の吸光度x1および近赤外線の吸光度x2をそれぞれ説明変数、過酸化水素濃度y3(H2O2)を目的変数として重回帰分析により得られた重回帰式であって、次の表4に示す重回帰分析の結果、
【0036】
【表4】


【0037】説明変数x1の回帰係数a1として24.270、説明変数x2の回帰係数a2として−20.547、定数項にあたる回帰係数a0として1.673がそれぞれ導出されている。
【0038】この第3の過酸化水素濃度換算式は、上記アンモニア濃度換算式で求められたアンモニア濃度が2wt%未満で、かつ上記紫外線の吸光度つまり説明変数x1が0.15以上のときに適用される。
【0039】さらに、数5で表される第4の過酸化水素濃度換算式は、上記紫外線の吸光度x1および上記アンモニア濃度換算式で求められたアンモニア濃度y(NH3) をそれぞれ説明変数、過酸化水素濃度y3(H2O2)を目的変数として非線型最小2乗法により得られた回帰式であって、この式の各パラメータp1,p2,p3,p4は次のように導出されている。
【0040】p1: 0.1523p2: 0.0080442p3: 1.39488p4: 0.0449232
【0041】この第4の過酸化水素濃度換算式は、上記アンモニア濃度換算式で求められたアンモニア濃度が2wt%未満で、かつ上記紫外線UVの吸光度つまり説明変数x1が0.15未満のときに適用される。
【0042】すなわち、この測定方法では、過酸化水素濃度y(H2O2)については、図2に示す4つの条件の場合ごとに、数2,数3,数4,数5で表される互いに異なる濃度換算式を適用することによって求められる。
【0043】表5は、アンモニア濃度Y(NH3) および過酸化水素濃度Y(H2O2)を調整して得た過酸化水素・アンモニア混合液2の各サンプルと、これらのサンプルに照射したときの上記紫外線UVの吸光度x1および上記近赤外線NIR の吸光度x2のデータとを対応付けて示したものである。ただし、この場合の紫外線UVおよび近赤外線NIR の吸光度x1,x2は、水の透過率を100%、光路長を1mmとして測定している。
【0044】
【表5】


【0045】表6は、調整されたサンプルのアンモニア濃度Y(NH3) と、実測された紫外線UVおよび近赤外線NIR の吸光度x1,x2を数1で表されるアンモニア濃度換算式に当てはめて求めたアンモニア濃度の試算値y(NH3) と、その誤差Δyとを示したものである。
【0046】
【表6】


【0047】この表6から明らかなように、上記アンモニア濃度換算式は実際のアンモニア濃度をよく表していることが分かる。
【0048】表7は、調整されたサンプルの過酸化水素濃度Y1(H2O2)と、実測された紫外線UVおよび近赤外線NIR の吸光度x1,x2を第1の過酸化水素濃度換算式に当てはめて求めた過酸化水素濃度の試算値y1(H202)と、その誤差Δy1とを示したものである。
【0049】
【表7】


この表7から明らかなように、上記第1の過酸化水素濃度換算式は実際の過酸化水素濃度をよく表していることが分かる。
【0050】表8は、調整されたサンプルの酸化水素濃度Y2(H2O2)と、実測された紫外線UVおよび近赤外線NIR の吸光度x1,x2を第2の過酸化水素濃度換算式に当てはめて求めた過酸化水素濃度の試算値y2(H2O2)と、その誤差Δy2とを示したものである。
【0051】
【表8】


この表8から明らかなように、上記第2の過酸化水素濃度換算式は実際の過酸化水素濃度をよく表していることが分かる。
【0052】表9は、実測された紫外線および近赤外線の吸光度x1,x2を第3の過酸化水素濃度換算式に当てはめて求めた過酸化水素濃度の試算値y3(H2O2)と、調整されたサンプルの過酸化水素濃度Y3(H2O2)と、その誤差Δy3とを示したものである。
【0053】
【表9】


【0054】この表9から明らかなように、上記第3の過酸化水素濃度換算式は実際の過酸化水素濃度をよく表していることが分かる。
【0055】表10は、実測された紫外線の吸光度x1と数1で表される濃度換算式で求められたアンモニア濃度y(NH3) とを、第4の過酸化水素濃度換算式に当てはめて求めた過酸化水素濃度の試算値y4(H2O2)と、調整されたサンプルの過酸化水素濃度Y4(H2O2)とを比較して示したものである。
【0056】
【表10】


【0057】この表10から明らかなように、上記第4の過酸化水素濃度換算式は実際の過酸化水素濃度をよく表していることが分かる。
【0058】なお、上記実施例では、過酸化水素濃度を求める濃度換算式を差し替えて使用するための境界値として、アンモニア濃度を2wt%,紫外線UVの吸光度を0.15としたが、アンモニア濃度については1.7wt%から2.3wt%までの範囲内の値であれば、ほぼ同等の結果を得ることができる。また、紫外線UVの吸光度については、フローセル1のセル長など他の条件によって値が異なるので、条件に応じて適当な値を境界値として設定すればよい。
【0059】また、上記実施例では紫外線UVとして、波長が313nmのものを使用した場合を示したが、図5に示す実験結果から明らかなように、300nm付近であれば多少波長が異なっても同様の結果を得ることができる。すなわち、図5のグラフは過酸化水素・アンモニア混合液の各成分比の4つのサンプルについて、紫外線の吸収スペクトルを示したものであり、■のグラフは過酸化水素濃度が1.00wt%でアンモニア濃度が1.01wt%の場合、■のグラフは過酸化水素濃度が1.00wt%でアンモニア濃度が5.03wt%の場合、■のグラフは過酸化水素濃度が5.00wt%でアンモニア濃度が1.01wt%の場合、■のグラフは過酸化水素濃度が5.00wt%でアンモニア濃度が5.03の場合をそれぞれ示している。ただし、このときの測定セルの長さ、つまり吸光度測定の光路長は2nmで、分光光度計を用いて測定したものである。近赤外線NIR の波長の場合も、実施例の波長2209.8nmの他に、例えば1530nmの波長を用いて同様の結果を得ることができる。
【発明の効果】本発明は、上述した構成より成り、アンモニア濃度については、特定波長の紫外線の吸光度および特定波長の近赤外線の吸光度をそれぞれ説明変数とする重回帰式の濃度換算式から求め、過酸化水素濃度については、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が予め定めた値α(ただし、αは1.7から2.3までの範囲内の値)wt%以上で紫外線の吸光度が予め定めた値β以上の条件、アンモニア濃度換算式による濃度が上記値αwt%以上で紫外線の吸光度が上記値β未満の条件、アンモニア濃度換算式による濃度が上記値αwt%未満で紫外線の吸光度が上記値β以上の条件、アンモニア濃度換算式による濃度が上記値αwt%未満で紫外線の吸光度が上記値β未満の条件の各場合に分け、各条件ごとに別々の回帰式の過酸化水素濃度換算式を導出してそれぞれの換算式から求めるようにしているので、簡単な構成の測定系により、広い濃度範囲にわたって各成分の濃度を簡単かつ正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いられる測定系の概略的な構成を示す模式図である。
【図2】各過酸化水素濃度換算式に対応付けられる条件の領域区分を模式的に示す図である。
【図3】過酸化水素・アンモニア混合液に波長2209.8nmの近赤外線を照射したときのアンモニア濃度と近赤外線の吸光度との関係を示すグラフである。
【図4】過酸化水素・アンモニア混合液に波長312.6nmの紫外線を照射したときのアンモニア濃度と紫外線の吸光度との関係を示すグラフである。
【図5】成分比の異なる過酸化水素・アンモニア混合液の各サンプルについて、紫外線の吸収スペクトルを示した図である。
【符号の説明】
2 過酸化水素・アンモニア混合液
UV 紫外線
NIR 近赤外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 過酸化水素・アンモニア混合液中の各成分の濃度を、その混合液に照射した特定波長光の吸光度から求める成分濃度測定方法において、アンモニア濃度については、特定波長の紫外線の吸光度および特定波長の近赤外線の吸光度をそれぞれ説明変数として得られる重回帰式をアンモニア濃度換算式として求め、過酸化水素濃度については、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が予め定めた値α(ただし、αは1.7から2.3までの範囲内の値)wt%以上でかつ特定波長の紫外線の吸光度が予め定めた値β以上である第1の条件、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が前記値αwt%以上でかつ特定波長の紫外線の吸光度が前記値β未満である第2の条件、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が前記値αwt%未満でかつ特定波長の紫外線の吸光度が前記値β以上である第3の条件、前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度が前記値αwt%未満でかつ特定波長の紫外線の吸光度が前記値β未満である第4の条件の各場合に分け、第1、第2、第3の条件の場合には前記紫外線の吸光度および近赤外線の吸光度をそれぞれ説明変数として各条件で得られる重回帰式をそれぞれ第1,第2,第3の過酸化水素濃度換算式として求め、第4の条件の場合には前記アンモニア濃度換算式から求めた濃度および前記紫外線の吸光度をそれぞれ説明変数として非線型最小2乗処理から得られる回帰式を第4の過酸化水素濃度換算式として求めることを特徴とする過酸化水素・アンモニア混合液の成分濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2838235号
【登録日】平成10年(1998)10月16日
【発行日】平成10年(1998)12月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−416075
【出願日】平成2年(1990)12月29日
【公開番号】特開平4−249748
【公開日】平成4年(1992)9月4日
【審査請求日】平成9年(1997)2月15日
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【参考文献】
【文献】特開 平3−231139(JP,A)
【文献】特開 平3−175341(JP,A)
【文献】特開 昭62−8040(JP,A)