説明

道床搗固め装置

【目的】 連続して長時間搗固め作業を続けても油圧シリンダーのピストン摺動部から油漏れ等の故障が生じにくい道床搗固め装置を提供する。
【構成】 縦長穴状案内溝および軸穴を順に連設してなる短冊状板の中央軸線に沿って油圧シリンダーを配設し、該縦長穴状案内溝に軸を挿通して該油圧シリンダーの反ピストン側端部を節合し、該軸穴に軸を挿通して油圧シリンダーのピストン先端部を節合し、各々の端部を節合してなる一対の腕を該シリンダーを介して対向してそれぞれ設け、各々の一対の該腕のそれぞれの片側端部を、該案内溝に挿通してなる該軸と他側端部を該軸穴に挿通してなる該軸とにそれぞれ節合し、該軸に節合してなる各々の腕にビータ付き加振機を具備してなる道床搗固め装置。
【効果】 道床搗固め作業は道床搗固め装置の故障が原因で遅延することがなくなった。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄道線路にバラストを搗固める装置に関するものであって、バラスト内に挿入するビータを開閉させるための機構および該ビータの切損を招くような衝動力を緩和するための機構に係る。
【0002】
【従来の技術】鉄道線路の路盤と枕木間に挟まれた部分は、砂利、砕石等のバラストによる道床として形成されており、この道床は、枕木を介して列車荷重を該道床の弾性力で支えるため、上下動しながら走行する列車車輪は線路から離反することなく該線路に接触し続け脱輪することなく走行することができる。このようなことから損傷した枕木を新品と交換した場合、道床が弾性力を喪失しバラストを入換えた場合等においては、枕木下のバラストに適当な弾性力を保持させるべく該バラストを搗固める。
【0003】昨今における道床バラストの搗固め作業は、その作業範囲が広い場合には、ショベルを外したパワーショベル等のアーム先端にビータ付き加振機を取付けた搗固め装置、又はこれに類似した搗固め装置が用いられている。搗固め装置は前後一対のビータを具備し、バラスト内に突き立てて振動させながらビータを枕木を挟むようにして開閉させることによりバラストを枕木の下側に押し込み搗固めるものである。図15は、実開平1−167402号公報に開示されたビータの開閉機構を示すもので、油圧シリンダーを用いてリンクを駆動させる機構のものであり、該開閉機構に類似したものが特開昭59−8803号、特開昭60−3301号、特開平3−36301号、特開平3−47301号、実開平3−89702号公報において開示されている。
【0004】これらの開閉機構は、ビータと連結した加振機と油圧シリンダーとをリンクで連設した機構である点で共通しており、ビータの先端がバラストに突き刺す際の衝撃力やバラスト内に差し込まれたビータを開閉する場合の開閉抵抗力は油圧シリンダーの連設部をこねる力として作用する構造であるため油圧シリンダーの摺動部シールを損傷するおそれがあり、ひいては油圧シリンダーの作動油漏れ故障の発生が生ずるおそれがあるという欠点があった。
【0005】バラスに突き刺された一対のビータは、バラスト内部で対向する各々のビータの先端間に介在するバラストを挟圧しながら閉じ、又はビータ先端間の外側のバラスを押しのけながら開くものであるから、ビータを開閉する力は大変大きなものである。このためビータを開閉する動力源として通常油圧が用いられている。一対のビータは振動しているため共振現象が生じることがあり、この共振現象がビータの開閉時に生じた場合にはもともとビータに大きな力が作用しているところにもって、共振現象によって派生する力が加わるのでビータに作用する力は極めて大きくなる場合がある。
【0006】従って該作用力の反力もまた極めて大きなものとなり該反力はビータの上部固定部に作用し、ビータの破損をきたす原因となったり、搗固め装置を吊設しているパワーショベルのアームの該吊設部、アーム連結部、油圧シリンダー等の損傷の原因ともなるという問題があった。道床搗固め作業は、枕木が通常約500mmピッチ前後に並んでいるため、その作業量が大変多くまた、作業は極めて長時間に及び、更に列車運行上から道床作業時間の制限もあるため、かねてから故障が発生しない搗固め装置の出現が切望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来の問題点を解消し、長時間連続して搗固め作業を続けても故障が生じにくい道床搗固め装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は次の通りである。
(1)縦長穴状案内溝および軸穴を順に連設してなる短冊状板の中央軸線に沿って油圧シリンダーを配設し、該縦長穴状案内溝に軸を挿通して該油圧シリンダーの反ピストン側端部を節合し、該軸穴に軸を挿通して油圧シリンダーのピストン先端部を節合し、各々の端部を節合してなる一対の腕を該シリンダーを介して対向してそれぞれ設け、各々の一対の該腕のそれぞれの片側端部を、該案内溝に挿通してなる該軸と、他側端部を該軸穴に挿通してなる該軸とにそれぞれ節合し、該軸に節合してなる各々の腕にビータ付き加振機を具備してなる道床搗固め装置。
【0009】(2)内部に油圧シリンダーを配設した筒に対向した軸穴に軸を挿通して、該油圧シリンダーの反ピストン側端部を節合し、該軸穴と直角にかつ該軸を介して対向して該筒のそれぞれの面に軸受を具備し、各々の端部を節合してなる一対の腕を該シリンダーを介して対向してそれぞれ配設し、各々の該一対の腕のそれぞれの片側端部を該筒面のそれぞれの軸受に軸支し、それぞれの他側端部を、該ピストン先端部と節合したホルダーに節合し、それぞれのホルダーにビータ付き加振機を具備してなる道床搗固め装置。
【0010】(3)縦長穴状案内溝を有してなる短冊状板の中央軸線に沿って油圧シリンダーを配設し、該縦長穴状案内溝に軸を上部、下部それぞれに挿通し、各々の該軸に油圧シリンダーの反ピストン側端部およびピストン端部をそれぞれ節合し、各々の端部を節合してなる一対の腕を該シリンダーを介して対向してそれぞれ配設し、各々の該一対の腕の端部を該案内溝に挿通してなる上部の該軸と節合し、片側端部をピストン端部と節合したホルダーと節合し、各々のホルダーにビータ付き加振機を具備してなる道床搗固め装置。
(4)加振機のビータ取付面側に該加振機組付用基盤を防振板を介してビータ面に押圧して組付けた前記(1),(2)又は(3)記載の道床搗固め装置。
【0011】
【作用】この発明の装置を使用するに当っては図14に示すように、パワーショベル52のアーム53先端にショベルの代りにこの発明における道床搗固め装置1をその吊持部材2を介して垂下取付ける。アーム53先端を下降して該道床搗固め装置1のビータ21を該ビータの下端が枕木を挟むように道床のバラスト表面に降ろし、該装置1の上端を押圧しながら加振機を駆動すれば、図5R>5に示す如く、振動と搗固め装置の押圧によりビータ先端は次第にバラス内に沈下する。ビータ21先端が所定の深さに沈下してから、油圧シリンダーのピストンを縮めることによりビータ先端の間隔を狭める。
【0012】このとき枕木下部のバラストはビータによって振動しながら挟持されるため、図4,図5に示す如く該枕木下部に存在していた空洞59は振動しながら流動してくるバラストで充填され、次いで該枕木下部のバラスは締め固められる。該締め固め後、ビータ21先端の間隔を振動させながら開いてアーム53を上昇して道床内からビータ21を抜き取る。次いでパワーショベル52の操作によりアーム53先端を次の搗固め位置に移動して搗固める。これを順次繰り返して所定の搗固めを行うことができる。
【0013】
【実施例】
〔実施例1〕図1は、パワーショベル52のアーム53先端に取付けた吊持部材2にて防振板4を介在して本発明の道床搗固め装置1をボルトナット5を用いて組付けた状態を示す部分破断斜視図である。図1に示す本発明の道床搗固め装置1は、図3に示す如く上方部から中央付近に亘る縦長穴状の案内溝26および下部付近に軸穴27を有してなる一対の短冊状案内板25を適当な間隔をおいて対向して配列し、その上端部をフランジ6、下端部を底板28にそれぞれ固着してなるボックス10に、油圧シリンダー29の反ピストン側端部32に設けた軸9を各々の該案内溝26a,26bに遊嵌すると共に油圧シリンダー29のピストン30の先端部31を各々の軸穴27a,27bに挿通した軸33に軸支して、油圧シリンダー29を節合し、該案内溝26a,26bに遊嵌してなる軸9の両端のそれぞれに両先端部に軸穴を有する等長の腕7a,8a、腕7b,8bの片側端部を節合する。
【0014】次に図2に示すような矩形状の組付盤14の背面に、上方に適宜間隔をおいて設けた軸穴2個を有する一対のブラケット13を該腕を遊嵌する間隔を設けて固着してなるホルダー12を、組付盤14の組付面を外側にしてボックス10の下方に対向して設け、ブラケット13の軸穴2個のうち反組付盤14側のそれぞれの軸穴にピストン30の先端部31を挿通した軸33の両端のそれぞれに節合し、残りのブラケット13の軸穴2個のうち組付盤14側のそれぞれの軸穴を軸34a,34bを介して腕7a,7b、腕8a,8bの他側端部と節合し、それぞれの該ホルダー12の組付盤14にビータ21付き加振機11を組付けたものである。
【0015】本発明の道床搗固め装置1は、以上の構成であるからピストン30を縮長すれば、シリンダー29の端部32に設けた軸9はピストン30の先端部31がボックス10の軸穴27に軸支されているため、縮長した長さの分だけ案内溝26内を下降し、該軸9に節合されたそれぞれ一対の腕7a,7b、腕8a,8bは軸34a,34bを介してホルダー12a,12bのブラケット13a,13bの組付盤14側に軸穴を押し下げ、ホルダー12a,12bは軸33を中心にそれぞれ反対方向に傾動し、該ホルダーに組付けられた加振機11a,11bも同様に傾動し、該加振機11a,11bに組付けられたビータ21a,21bもまた同様に傾動し、ビータ21a,21bの先端23a,23bの間隔が狭くなる。またピストン30を伸長すればホルダー12a,12bは腕7a,7b、腕8a,8bによって前記とは反対方向に傾動しビータ21a,21bの先端23a,23bの間隔は開いて広くなる。従って、ビータ21の先端23が道床バラスト内の所定の深さに沈下してから図4に示す如く、油圧シリンダー29のピストン30を縮小することによりビータ21の先端間をバラスト内で狭め、ビータ21a,21b間のバラストを締め固めることができる。また、締め固めた後ピストン30を伸長しビータ21の先端間をバラスト内で広めてからパワーショベル52のアーム53を上昇させたことにより、ビータ21を枕木57に接触することなくバラスト58内から抜き出すことができる。
【0016】アーム53先端を降下しビータ21先端が固結したバラスト表面に到着した瞬間、若しくはビータ21先端を枕木やレールに誤って衝突させた時、又はビータ21先端をバラス内に差し込んで振動搗固めしている最中に共振現象が発生した時等においては、ビータに大きな衝撃力が発生するが、その衝撃力はホルダー12を介して軸33とシリンダー端部32に節合してなる腕7a,7b、腕8a,8bに作用する。軸33に作用した衝撃力は、前記軸33をボックス10に十分な強度で軸支しておくことによってピストン先端部に直接作用せず、更にピストン先端部を揺動させることもない。
【0017】従って、軸33に作用した衝撃力によってシリンダー29とピストン30との摺動部が損傷し、油漏れ等の故障が生じることがない。前記腕の片側節合部である軸34に作用した力は、他側節合部である軸9に伝播するが、該軸9はボックス10の案内溝26内を上下に遊嵌できる構造であるため、該軸9を軸支してなる油圧シリンダー30を引き上げる力として作用する。
【0018】前記油圧シリンダーを引き上げる力は、ピストンを伸長させる方向の力即ちピストンを伸長させる側のシリンダー内油圧を低下させる方向の力であるため、該引き上げる力がピストンを伸長させ得る力以上の力であれば、油圧シリンダーがショックアブソーバの役割を果たして緩和されるという特徴を有する。前述の如くビータ開閉用油圧シリンダーに、衝撃力緩和機能を併用させた道床搗固め装置は従来なかったものである。
【0019】前述の衝撃力は、その一部がホルダー12を介してピストン30の先端部を軸支してなる軸33に作用するが、該軸33は前記ボックス10に軸支されているため、該ボックス10を押し上げる力となり、シリンダーに伝播されて緩和された残りの力は軸33に作用し、ボックス10を引き上げる力となるが、これらのボックス10を押し上げる力および引き上げる力は、吊持部材2と該ボックス上端部に固着したフランジ6の間に介在してなる防振材4によって緩和される。
【0020】即ち、防振材4によって緩和された力は既に油圧シリンダー29によって緩和されている力を更に緩和したものである。従って本発明の道床搗固め装置を吊設しているパワーショベル52のアーム53およびこれに付属する機具類の故障は従前のものより少なくなる。油圧シリンダーの配設方向は、前述にこだわるものでなく逆方向に配設しても良いが、逆方向に配設した場合はピストンに及ぼす力が、案内溝26部のガタツキによって前述の場合よりも大きくなりがちである。
【0021】なお、図14に示す如く、道床搗固め装置1と吊持部材2との間にスペーサ54を介在し、吊持部材2とスペーサ54との間およびスペーサ54と道床搗固め装置1との間にそれぞれ防振板55,56を介在させれば、防振効果は更に大きくなり前記衝撃力は更に緩和される。スペーサ54を介在せずに防振板の厚さのみを厚くした場合には、道床搗固め装置1を吊持部材と連結してなるボルトナットが緩み易くなるが、前述の如くスペーサ54を介在させることにより、防振板の総厚さを増大しても強固な締結が可能となる。
【0022】また、吊持部材2と道床搗固め装置1との接合部を枢軸構造で連結しかつ防振板を介在させ、吊持部材2のフランジ3と道床搗固め装置1のフランジ6とをボルトナット5で締結する構造を採用すれば、道床搗固め装置1は、吊設したままボルトナットを撤去し、該装置1の向きを廻して変え、再びボルトナット5を用いて該フランジ3,6を締結することにより、その向きを容易に変えることができる。
【0023】〔実施例2〕図6に示す本発明の道床搗固め装置36は、上部にフランジ6を固定してなる筒37に該筒37を貫通する軸穴43を設けると共に、該筒37の外面に該軸穴43と直角に、先端に軸穴40を有する強固な軸受38を固着する。該軸穴43に軸42を介して油圧シリンダー29の反ピストン側端部32を軸支して節合し、それぞれの軸穴40に先端部の軸穴35を有する腕7a,7b、腕8a,8bの他端部を節合する。矩形状の組付盤14の背面に、上方に適宜間隔をおいて設けた軸穴2個を有する一対のブラケット13を、該腕を遊嵌する間隔を設け固着してホルダー12を形成する。組付盤14の組付面を外面にして対向し、該軸穴2個のうち反組付盤14側のそれぞれの穴をピストン30の先端部31を挿通した軸33の両端のそれぞれに節合し、該軸穴2個のうち組付盤14側穴のそれぞれの穴を軸34a,34bを介して腕7a,7b、腕8a,8bの他側端部と節合し、それぞれの該ホルダー12の組付盤14にビータ21付き加振機11を組付けたものである。
【0024】道床搗固め装置36は、以上の構成であるからピストン30を縮長すれば図7に示すようにシリンダー29の端部32に設けた軸42は筒37に軸支されているため、縮長した長さの分だけピストン30の先端と節合しているホルダー12のブラケット13先端部を引き上げ、ホルダー12a,12bは軸33を中心にそれぞれ反対方向に傾動し、該ホルダーに組付けられた加振機11と同様に傾動し、該加振機に組付けられたビータ21a,21bもまた同様に傾動し、ビータ21a,21bの先端23a,23bの間隔が狭くなる。
【0025】またピストン30を伸長すればホルダー12a,12bは腕7a,7b、腕8a,8bによって前記とは反対方向に傾動しビータ21a,21bの先端23a,23bの間隔は開いて広くなる。従って、実施例1と同様にバラスト内においても、油圧シリンダーのピストン30を伸縮することにより、ビータ21を開閉することができるため、ビータ21が挟んでいる枕木57に接触することなく、ビータ21をバラスト内から取り外すことができる。油圧シリンダーの配設方向は、前述にこだわるものでなく、逆方向に配設しても良い。
【0026】逆方向に配設した場合、ピストン30の先端部が筒37と軸支されるため、前述の場合に比してピストン30の先端部の揺動が小さくなり、シリンダーとピストンとの摺動部の損傷がより生じにくくなく従って、これに帰因する油漏れ等の故障も少なくなる。一見したところ本発明の道床搗固め装置に類して見える装置、即ちリンク機械構造を用いて油圧シリンダーによりビータ付き加振機を揺動させる構造の搗固め装置が、実開平2−78608号公報および実開昭63−145903号公報に開示されている。
【0027】図8は、前述の実開平2−78608号公報に開示された道床搗固め装置の概略図であり該道床搗固め装置は、加振機が油圧シリンダーのピストン先端部と軸支されて交叉してなるリンクのそれぞれの端部に組付けられているため、ビータに前述のような衝動力が発生した場合、該衝撃力はリンク交叉部の軸に集中すると共にピストン先端部を揺動させ、この揺動によって油圧シリンダーとピストンとの摺動部が損傷され易く、油漏れ等の故障が発生し易くなるという問題があった。
【0028】図6に示す本発明の道床搗固め装置36は、加振機が交叉してなるリンクの端部ではなく、リンク両端の節合部間に組付けられているため、ビータ21とリンク即ち、腕7,8とが略直列することとなり、ビータ21に生じた衝動力は腕7,8を伝播して腕と節合してなる強固な軸受38で受けることとなるので、シリンダー29のピストン30の先端部には該先端部を揺動させる程の力は作用せず、従ってシリンダーとピストンとの摺動を傷めることもなく、油漏れ等の故障も発生しないという特徴がある。
【0029】図16は前述の実開昭63−145903号公報に開示された道床搗固め装置の概略図であり、該道床搗固め装置は、加振機に油圧シリンダーが節合され、該加振機の振動が油圧シリンダーに直接伝導するため、油圧シリンダーとピストンとの摺動部が損傷され易く、油漏れ等の故障が発生し易くなるという問題があった。本発明の道床搗固め装置36は、油圧シリンダー29若しくはピストン30が加振機11に節合した構造ではないため、該加振機11の振動が油圧シリンダー29若しくはピストン30に直接伝導しないので、前述のように摺動部が損傷することがなくまた、その損傷に帰因する油漏れも発生しない。
【0030】〔実施例3〕図9は本発明の道床搗固め装置44の縦半断面図を示し、該道床搗固め装置44は、上方部から下方部に亘る縦長穴状の案内溝47を有してなる一対の短冊状板を適当な間隔をおいて対向して配列し、その上端部をフランジ6、下端部を底板28にそれぞれ固着してなるボックス45を有する。ボックス45に油圧シリンダー29の反ピストン側端部32に設けた軸9を各々の該案内溝47に遊嵌すると共に、適当に伸長した該油圧シリンダー29のピストン30の先端部31に設けた軸46を各々の該案内溝47に遊嵌する。該軸9の両端のそれぞれに、先端部に軸穴35を有する腕7a,8a、腕7b,8bの他端部を節合する。一方矩形状の組付盤14の背面上に、上方に適宜間隔をおいて設けた軸穴2個を有する一対のブラケット13を該腕7を遊嵌する間隔を設けて固着してなるホルダー12を形成する。組付盤14の組付面を外面にして対向し、該軸穴2個のうち組付盤14側の軸穴のそれぞれを軸34a,34bを介して腕7a,7b、腕8a,8bと節合し、それぞれの該ホルダー12にビータ21付き加振機11を組付けたものである。
【0031】道床搗固め装置44は、以上の構成であるからピストン30はシリンダー29の端部32に設けた軸9とピストン30の先端部31に設けた軸46とは案内溝47を上下に揺動し得るため縮長することができる。ピストン30が縮長すれば前記軸9に節合されたそれぞれ一対の腕7a,7b、腕8a,8bは軸34a,34bを介してホルダー12a,12bを軸46を中心にそれぞれ反対方向に傾動し該ホルダーに組付けられた加振機11a,11bを同様に傾動し、該加振機11a,11bに組付けられたビータ21a,21bもまた同様に傾動し、ビータ21a,21bの先端23a,23bの間隔が狭くなる。またピストン30を伸長すれば前記軸9、軸46は案内溝47を移動しながらホルダー12a,12bは腕7a,7b、腕8a,8bによって前記とは反対方向に傾動し、ビータ21a,21bの先端23a,23bの間隔は開いて広くなる。
【0032】本発明の道床搗固め装置44のビータ先端をバラスト内に差し込む作業は、パワーショベル52のアーム53先端で吊持部材2を介してボックス45を押圧し、図10に示す如く案内溝47の上端部を介して軸9を押圧しビータを沈下させ、また図11に示す如く軸9と案内溝47の上端部間に空隙を持たせた状態でビータ先端をバラストに接地させ、その時のボックス45の吊持高さをアーム53によって保持しておくことによって、加振機11の振動と加振機11、ビータ21a,21b、リンク7a,7b、ホルダー12a,12b、油圧シリンダー29等の自重とでビータ21a,21b先端を沈下させることによって行うことができる。
【0033】実公平4−19045号公報に開示された軌道バラス搗固め装置は、へら状ビータを具備していることを特徴とし、通常は人力操作で使用されるものであり、鉄枕木1本当りの搗固め作業時間は従来のそれよりも約半分で済むという効果を発揮するものである。前述のへら状ビータの上反り角度の範囲は160〜165°であり、これは前述の効果を発揮するための主要な条件の一つである。
【0034】実公平4−19045号公報に開示された搗固め装置は、パワーショベル52等のアーム53先端に組付けて搗固め作業がされた場合、該アーム53を下降させる油圧の力がビータの先端に伝わって、該ビータの上反り部が曲げられ該上反り角度が大きくなり、このため前述の効果が発揮できなくなるという問題があるため、パワーショベル等に組付けて使用されることがなかった。しかしながら、実公平4−19045号公報に示す搗固め装置を具備した本発明の道床搗固め装置を、図1111に示す方法でビータ21a,21bの先端23a,23bをバラスト58内に自重沈下させてバラスを搗固めれば、へら状ビータはアームを下降する油圧の力によって変形されることなく、従って該ビータの上反り角度は適正な角度で搗固めができるという特徴がある。また、搗固め時間は前記へら状ビータが対向して一対あるため、該ビータを用いた従来の人力操作による搗固め作業時間よりも更に半減化することができるという効果がある。
【0035】〔実施例4〕図1に示す道床搗固め装置1に組付けられてなるビータ付加振機は本発明の加振装置48の一例であり、該加振装置48は道床搗固め装置を構成するホルダー12の組付盤14に、防振板51を介して該加振装置を構成してなる基盤15にボルトナット50で締結されている。図12は図1における前記加振装置48を分解した該加振装置48の概略部品構成を示す斜視図であり、該加振装置48は該基盤15、防振板20、ビータ21、加振機11のそれぞれにボルトを上下方向2箇所に挿通し、該ボルトナット49を用いて加振機取付用基盤15を、防振板20を介しビータ21面に押圧して加振機11に組付けたものである。
【0036】前記防振板51は、その中央部に前記ボルトナット49のボルトの頭を遊嵌する穴があり、該ボルトの頭の高さが該加振装置48を前記ホルダー2に締結した時の該防振板48の厚さより低いため、該ボルトの頭に邪魔されることなく防振機能を発揮できる。前記基盤15の上方の突起16は、該突起16の囲い部17に嵌入している防振板20を適宜な厚さに圧縮するためのもので、該突起16の高さを適宜の高さにしておくことにより前記ボルトナット49を締め過ぎても適宜な厚さが確保できる。但し、前記突起16は必要不可欠なものでなく、該突起16がない場合には前記ボルトナット49を適切なトルクで締結すれば良い。前記基盤15の下方の突起19はビータ表面を横架する保護板24の架台であり、該保護板24はビータ先端部をレールや枕木等に衝突させた場合、共振現象が発生した場合等に過大な曲げ力が、ビータに及ばないように該ビータの過度の揺動を妨げる。
【0037】図13は本発明の加振装置48の縦断面図を示し、加振機11とホルダー12を構成する組付盤14との間には防振板51と防振板20とが介在しており、防振板20は防振板51よりも剛性が大であり、通常の加振時においては加振機と略一体に揺動し防振板の機能をほとんど発揮しないが、ビータ先端をレールや枕木等に衝突させた場合や、共振現象が発生した場合等にビータに発生する過大な曲げ力により該ビータが大きく揺動した場合に、その揺動に対して防振機能を発揮する。
【0038】防振板51は、本発明の加振装置の振動がホルダー12に伝導し、油圧シリンダーのシール部、軸嵌合部等を損傷の原因となることを緩和するものであり、このような防振機能は日常使用されているものであるが、本発明の特徴は該防振板51の他に、更に防振板20を具備したことにあり、該防振板20は、通常の振動に対しては若干の振動しかせず、防振板51が振動伝導緩和機能し、過大な振動に対しては防振板51と共に振動伝導緩和機能を発揮するものである。加振機11の振動は若干緩和されてバラスを振動させることとなるが、該若干緩和の程度は搗固め作業の能率の面では全く無視し得るものであり、何等搗固め作業に支障を生じないばかりか、搗固め作業時においてしばしば発生するビータ先端のレールや枕木との衝突、共振現象等によって生じる過大な振動によってビータが折損するという事故が防止される。
【0039】また、本発明の加振装置48が組付盤14を介して押圧され、該加振装置48のビータ21の先端23がバラスト58を貫通し、該バラスト58下の路盤を押圧した場合、ビータ21には過大な座屈力が生じるが、この時のビータ21は加振機により振動されているため、ビータ21の先端部は路盤に押圧されて振動が緩和され、ビータ21の上方部は該振動が緩和された分に相当する反力が作用する。
【0040】前記反力は、大きな力であるため防振板20は前述の如く防振機能を発揮し、該座圧力は防振板20、防振板51によって吸収され緩和される。本発明の加振装置48をパワーショベルのアーム先端に取付けて道床を搗固めする作業においては、ビータの先端がバラスト下の路盤を押圧してビータが折損するということがない。防振板20は一見したところ加振機11の振動を緩和するかの如く見えるが、前述の如くビータの搗固め作業に何ら支障ないばかりか、ビータの切損、ビータ取付部の損傷、油圧シリンダーのシール部や軸嵌合部の損傷を招く力が作業した時にこれらの切損や損傷を妨げる機能を有するもので、従来の搗固め装置にはなかった機能を有するものである。
【0041】
【発明の効果】道床のバラスを交換する場合、枕木を広範囲に亘って交換する場合においては連続した搗固め作業が余儀なくされるが、搗固め装置は振動機械であるため故障が生じ易い。しかるに、今日の経済・産業の発展下においては列車ダイヤが過密化しており、線路の補修作業は列車通過の間隔をぬった短い時間に迅速にしなければならないので、道床バラス搗固め作業においても搗固め装置の故障によって搗固め作業が遅延するようなことはあってはならないことである。
【0042】ところが本発明の道床搗固め装置、加振装置および該加振装置を組付けた該道床搗固め装置は、通常故障の原因となるビータに発生した衝撃力や共振現象によって生じた力によっては上述の如く故障しないものであるから、該装置が故障したために道床搗固め作業が遅延することがないばかりか、列車運行の維持に大きく寄与すると共にこの寄与によって受ける経済的効果は絶大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の斜視図である。
【図2】本発明の一部分を構成するホルダーの斜視図である。
【図3】本発明のボックスの斜視図である。
【図4】本発明の作用の説明図である。
【図5】本発明の他の作用の説明図である。
【図6】本発明の他の実施例の説明図である。
【図7】図6の作用の説明図である。
【図8】従来例の道床搗固め装置の説明図である。
【図9】本発明の更に他の実施例の説明図である。
【図10】図9の作用の説明図である。
【図11】図9の他の作用の説明図である。
【図12】本発明の加振機の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の加振装置の縦断面図である。
【図14】本発明の道床搗固め装置を組付けた状態の斜視図である。
【図15】他の従来例のビータの開閉機構の説明図である。
【図16】更に他の従来例の説明図である。
【符号の説明】
1 道床搗固め装置
2 吊持部材
3 フランジ
4 防振板
5 ボルトナット
6 フランジ
7 腕
7a 腕
7b 腕
8 腕
8a 腕
8b 腕
9 軸
10 ボックス
11 加振機
11a 加振機
11b 加振機
12 ホルダー
13 ブラケット
14 組付盤
15 基盤
16 突起
17 囲い部
19 突起
20 防振板
21 ビータ
21a ビータ
21b ビータ
22 曲がり部
22a 曲がり部
22b 曲がり部
23 先端
24 保護板
25a 案内板
25b 案内板
26a 案内溝
26b 案内溝
27a 軸穴
27b 軸穴
28 底板
29 油圧シリンダー
30 ピストン
31 先端部
32 端部
33 軸
34 軸
35 軸穴
36 道床搗固め装置
37 筒
38 軸受
39 軸
40 軸穴
41 軸
42 軸
43 軸穴
44 道床搗固め装置
45 ボックス
46 軸
47 案内溝
48 加振装置
49 ボルトナット
50 ボルトナット
51 防振板
52 パワーショベル
53 アーム
54 スペーサ
55 防振板
56 防振板
57 枕木
58 バラスト
59 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】 縦長穴状案内溝および軸穴を順に連設してなる短冊状板の中央軸線に沿って油圧シリンダーを配設し、該縦長穴状案内溝に軸を挿通して該油圧シリンダーの反ピストン側端部を節合し、該軸穴に軸を挿通して油圧シリンダーのピストン先端部を節合し、各々の端部を節合してなる一対の腕を該シリンダーを介して対向してそれぞれ設け、各々の一対の該腕のそれぞれの片側端部を、該案内溝に挿通してなる該軸と、他側端部を該軸穴に挿通してなる該軸とにそれぞれ節合し、該軸に節合してなる各々の腕にビータ付き加振機を具備してなる道床搗固め装置。
【請求項2】 内部に油圧シリンダーを配設した筒に対向した軸穴に軸を挿通して、該油圧シリンダーの反ピストン側端部を節合し、該軸穴と直角にかつ該軸を介して対向して該筒のそれぞれの面に軸受を具備し、各々の端部を節合してなる一対の腕を該シリンダーを介して対向してそれぞれ配設し、各々の該一対の腕のそれぞれの片側端部を該筒面のそれぞれの軸受に軸支し、それぞれの他側端部を、該ピストン先端部と節合したホルダーに節合し、それぞれのホルダーにビータ付き加振機を具備してなる道床搗固め装置。
【請求項3】 縦長穴状案内溝を有してなる短冊状板の中央軸線に沿って油圧シリンダーを配設し、該縦長穴状案内溝に軸を上部、下部それぞれに挿通し、各々の該軸に油圧シリンダーの反ピストン側端部およびピストン端部をそれぞれ節合し、各々の端部を節合してなる一対の腕を該シリンダーを介して対向してそれぞれ配設し、各々の該一対の腕の端部を該案内溝に挿通してなる上部の該軸と節合し、片側端部をピストン端部と節合したホルダーと節合し、各々のホルダーにビータ付き加振機を具備してなる道床搗固め装置。
【請求項4】 加振機のビータ取付面側に該加振機組付用基盤を防振板を介してビータ面に押圧して組付けた請求項1,2又は3記載の道床搗固め装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図15】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図13】
image rotate


【図12】
image rotate


【図14】
image rotate


【図16】
image rotate