説明

遠心分離機

【課題】ロータを回転させる際に生じる風損の影響を低減して省エネルギー化を図ることができる遠心分離機を提供すること。
【解決手段】試料を収容してロータ室11内で回転するロータ12と、前記ロータ室11を開閉するドア9と、前記ロータ12を回転駆動する駆動装置4と、該駆動装置4の駆動を制御する制御装置5を備えた遠心分離機1において、前記ロータ室11の内部に、外径がロータ室11の内径よりも小さな内蓋15を昇降動可能に設け、少なくとも運転時には前記内蓋15を下降させ、該内蓋15によって区画されるロータ12の回転空間11aの容積を減少させるようにする。又、前記内蓋15を昇降動させる昇降手段16を前記ドア9に取り付け、前記内蓋15が上限の原点位置にあるときに前記ドア9の開閉が可能となるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを回転させる際に生じる風損の影響を低減して省エネルギー化を図った遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機において、ロータ室内でロータを回転させる際に生じる風損の影響を避けるため、ロータ室内を真空引きして負圧に保つ手法が従来から知られている。この手法を実現するためには、ロータ室内をシールして密閉状態とし、真空ポンプ等でロータ室内の空気を吸い込んで負圧環境を作り出す必要がある。この方法では、真空ポンプ等の高価な吸引装置が必要であり、ロータ室を負圧にするために真空ポンプを駆動するための電力エネルギーが必要となる。
【0003】
他方、負圧を用いない遠心分離機としては、レールに沿って移動してロータ室の開口部を塞ぐドアの底部に凸部を設け、ロータ室内の天井面の凹凸を少なくして平らにすることによって風損を低減させるものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−142181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において提案された技術は、自動遠心分離装置等が有する開閉スライドドアにおけるロータ室内天井面の凹凸を減らす手法であって、風損低減化を図ったものであるが、自動遠心分離装置等の特殊な遠心分離機の場合は、使用するロータが限定・固定されている。
【0005】
一方、通常の遠心分離機の場合は、大きさの異なる様々なロータを使用するのが一般的であり、各ロータ毎に発生する風損はロータの周囲空間、つまり、ロータ室内の空間に左右される。
【0006】
ところで、地球温暖化が進んでいる昨今、省エネルギー化は重要な課題であって、ロータを回転させる際に生じる風損の影響を低減して電力エネルギーの省力化を図ることが望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ロータを回転させる際に生じる風損の影響を低減して省エネルギー化を図ることができる遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、試料を収容してロータ室内で回転するロータと、前記ロータ室を開閉するドアと、前記ロータを回転駆動する駆動装置と、該駆動装置の駆動を制御する制御装置を備えた遠心分離機において、前記ロータ室の内部に、外径がロータ室の内径よりも小さな内蓋を昇降動可能に設け、少なくとも運転時には前記内蓋を下降させ、該内蓋によって区画されるロータの回転空間の容積を減少させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記内蓋を昇降動させる昇降手段を前記ドアに取り付け、前記内蓋が上限の原点位置にあるときに前記ドアの開閉が可能となるよう構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記内蓋と前記ロータとの間の距離を測定するための距離センサを前記内蓋に設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記距離センサによって前記内蓋と前記ロータとの間の距離を測定しながら前記内蓋の移動を制御し、所定時間内に前記内蓋と前記ロータとの間の距離が所定の範囲内にあるときに内蓋が所定の位置まで移動したものと判断することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、使用されるロータの種別によって前記内蓋の移動距離を算出し、算出された移動距離だけ前記内蓋を移動させることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項3記載の発明において、使用されるロータの種別によって前記内蓋の移動距離を算出し、算出された移動距離だけ前記内蓋を移動させた後、前記距離センサによって前記内蓋と前記ロータとの間の距離を測定し、測定された距離が所定の範囲内にあるときに内蓋が所定の位置まで移動したものと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、ロータ室の内部に、外径がロータ室の内径よりも小さな内蓋を昇降動可能に設け、少なくとも運転時には内蓋を下降させ、該内蓋によって区画されるロータの回転空間の容積を減少させるようにしたため、ロータの回転空間内でのロータの回転に伴う空気の掻き回しによる風損が低く抑えられる。又、空間内でのロータの回転に伴って空気が掻き回され、内蓋の外周とロータ室の内周との間に形成された環状隙間を通過して空気が内蓋の上方へと移動するため、ロータの回転空間の圧力上昇が低く抑えられ、これによってもロータの回転時の風損を減らすことができ、結果的に駆動装置の消費エネルギーが減少して省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、内蓋を昇降動させる昇降手段をドアに取り付け、内蓋が上限の原点位置にあるときにドアの開閉が可能となるよう構成したため、ドアの開閉時に内蓋が障害になることがなく、ドアの開閉をスムーズに行うことができる。
【0016】
請求項3及び4記載の発明によれば、内蓋に設けられた距離センサによって内蓋とロータとの間の距離を測定しながら内蓋の移動を制御し、所定時間内に内蓋とロータとの間の距離が所定の範囲内にあるときに内蓋が所定の位置まで移動したものと判断するようにしたため、内蓋を所定の位置まで高精度に移動(下降)させることができ、遠心分離機の信頼性を高めることができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、使用されるロータの種別によって内蓋の移動距離を算出し、算出された移動距離だけ内蓋を移動させるようにし、請求項6記載の発明によれば、算出された移動距離だけ内蓋を移動させた後、距離センサによって内蓋とロータとの間の距離を測定し、測定された距離が所定の範囲内にあるときに内蓋が所定の位置まで移動したものと判断するようにしたため、内蓋を所定の位置まで高精度に移動(下降)させることができ、遠心分離機の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る遠心分離機の正断面図であり、図示の遠心分離機1は、筐体2内にボウル3、駆動装置4、制御装置5、冷凍機6等を収納するとともに、筐体2上に操作パネル7を設置して構成されている。
【0020】
上記ボウル3は、有底円筒状に成形されており、その周囲は断熱材8によって覆われている。又、このボウル3の上面開口部は、筐体2の上部に設けられたドア9によって開閉される。
【0021】
上記ボウル3の下方にはモータを含む前記駆動装置4が配されており、該駆動装置4の垂直上方へと延びるシャフトケース10は、ボウル3の底部中心を貫通してボウル3内のロータ室11に臨んでおり、シャフトケース10内にはモータに結合された不図示のシャフトが設けられており、該シャフトの上端にはロータ12が着脱可能に装着されている。ここで、ロータ12の底部中心には嵌合穴12aが形成されており、この嵌合穴12aを不図示の前記シャフトの先端部に形成された先細状の嵌合部10aに嵌め込むことによってロータ12が不図示のシャフトの上端に装着される。尚、図示しないが、シャフトの嵌合部10aとロータ12の嵌合穴12aにはピンがそれぞれ設けられており、駆動装置4によって回転駆動されるシャフトの回転はピンを介してロータ12に伝達され、該ロータ12がロータ室11内で回転駆動される。尚、ロータ12を固定する方法としては、該ロータ12とシャフトの嵌合部10aとをネジで締結する方法もある。
【0022】
又、ロータ12の底部には金属製のロータアダプタ13が設けられており、このロータアダプタ13の底面部には識別子となる凹凸が設けられている。そして、この凹凸を渦電流センサ等を用いたロータ識別センサ14によって検出し、その凹凸の配置パターンによってロータ12が識別される(この手法の詳細は例えば特許第3780670号公報等に開示されている)。
【0023】
前記操作パネル7は、遠心回転数、遠心時間、温度等の運転条件を入力するための入力部と、それらの運転条件を表示する表示部を備えている。遠心分離される試料はロータ12内に収容されるが、この試料の温度は、制御装置5によって冷凍機6を制御することによって、操作パネル7の入力部から入力された設定温度に制御される。ここで、ロータ室11を形成する前記ボウル3の外周には不図示の冷凍配管が巻かれており、この冷凍配管は前記断熱材8によって覆われている。
【0024】
而して、本実施の形態に係る遠心分離機1においては、ボウル3内にはロータ室11内を上下に移動可能な円板状の内蓋15が設けられており、この内蓋15はドア9の中心部に設置された昇降手段16によって上下動せしめられる。ここで、内蓋15の外径はロータ室11の内径よりもやや小さく設定されている。又、昇降手段16としては、不図示のステッピングモータ等を回転させてラック&ピニオンやボールネジ等を駆動する機構が採用されている。
【0025】
上記内蓋15の昇降動作の原点(上限)停止位置は、図1に鎖線にて示すように該内蓋15を上方に移動させた位置であって、その位置はマイクロスイッチ等の不図示のセンサによって検出され、その検出信号が前記制御装置5へと送信され、制御装置5はその検出信号に基づいて位置決め制御を実行する。
【0026】
昇降手段16はドア9の中心部に固定されており、内蓋15が図1に鎖線にて示すように原点位置にある場合にドア9が開閉可能となり、ドア9を閉じたときにはロータ室11の上部開口部が塞がれる。又、内蓋15には、該内蓋15からロータ12までの距離を検出するための距離センサ17が埋設されている。ここで、距離センサ17には、例えば近接センサ、超音波センサ、光学式変位センサ等が用いられる。
【0027】
次に、以上のように構成された遠心分離機1における内蓋15の2種類の昇降動作を図2と図3に示すフローチャートに基づいてそれぞれ説明する。
【0028】
図2に示すフローチャートに従った内蓋15の昇降動作においては、ロータ12の種類を特定せず、距離センサ17によって内蓋15とロータ12間の距離を測定しながら制御装置5によって昇降手段16を制御することによって内蓋15の高さ位置を制御する方法である。
【0029】
この方法においては、オペレータは、ドア9を開いてロータ12の嵌合穴12aをシャフトの嵌合部10aに嵌合させることによってロータ12をシャフトに装着してドア9を閉じ、操作パネル7を操作して昇降手段16を駆動して内蓋15の移動を開始する(ステップS1)。
【0030】
上述のように昇降手段16が駆動されて内蓋15の移動が開始されると、該内蓋15がボウル3内のロータ室11を下降し始めるとともに、該内蓋15とロータ12の上面との間の距離が距離センサ17によって測定される(ステップS2)。そして、この距離センサ17によって測定された距離は検出信号として制御装置5へと送信される。
【0031】
すると、制御装置5は、内蓋15とロータ12の上面との間の距離が予め設定した所定の範囲であるか否かを判断し(ステップS3)、測定された距離が所定の範囲内である場合には、内蓋15の移動が正常に行われたものとして昇降手段16による内蓋15の移動(下降)を停止し(ステップS4)、内蓋15の制御動作を終了させる(ステップS5)。
【0032】
他方、内蓋15とロータ12の上面との間の距離が予め設定した所定の範囲外である場合には、移動時間が所定の範囲をオーバーしたか否かを判断し(ステップS6)、移動時間が所定の範囲内である場合(ステップS6での判断結果がNoである場合)には、内蓋15とロータ12の上面との間の距離が所定の範囲内となるまでステップS2→ステップS3→ステップS6の処理が繰り返される。又、内蓋15とロータ12の上面との間の距離が所定範囲外である状態で内蓋15の移動時間が所定時間をオーバーした場合(ステップS6での判断結果がYseの場合)には、何らかの異常が発生したものとして警報(アラーム)を発してオペレータに異常を知らせる異常処理を行い(ステップS7)、内蓋15の制御動作を終了させる(ステップS5)。
【0033】
而して、以上の動作によって内蓋15が正常に移動(下降)し、該内蓋15とロータ12の上面との距離が所定の範囲内に設定されると、ロータ室11内が図1に実線にて示す内蓋15によって上下に区画され、ロータ12が回転する下方の空間11aの容積(空気量)が縮小する。
【0034】
以上のようにして内蓋15の動作工程が終了すると、制御装置5は駆動装置4を駆動してロータ12をロータ室11の内蓋15によって区画された空間11a内で回転させ、オペレータによって設定された運転条件に従って遠心分離動作を実行する。尚、遠心回転数、遠心時間、温度等の運転条件はオペレータによって操作パネル7から入力される。
【0035】
又、制御装置5は、分離すべき試料の温度が設定された温度になるように冷凍機6をオン/オフ制御する。そして、所定の遠心時間が経過すると、制御装置5は、駆動装置4を減速制御してロータ12の回転を所定のカーブに沿って減速させて停止させる。ロータ12の回転が停止すると、制御装置5は、運転が終了したことをメロディやブザー等で報知してオペレータに知らせるとともに、昇降手段16を逆方向に駆動して内蓋15をロータ室11内でドア9に向かって上昇させ、図1に鎖線にて示す原点位置に復帰させる。尚、内蓋15の原点位置はマイクロスイッチ等の不図示のセンサによって検出され、その検出信号が制御装置5へと送信されると、制御装置5は昇降手段16の駆動を停止して内蓋15を原点位置で停止させる。
【0036】
上述のように内蓋15がロータ室11内の原点位置に復帰すると、ドア9を開けることが可能となるため、オペレータは、ドア9を開けてロータ室11内のロータ12から試料を取り出すことができる。
【0037】
而して、本実施の形態に係る遠心分離機1においては、運転に際して昇降手段16によって内蓋15を図1に鎖線にて示す原点位置から下降させ、図1に実線にて示すように内蓋15がロータ12に当接しない所定の位置まで移動させるようにしたため、ロータ室11内のロータ12が回転する空間11aが内蓋15によって仕切られ、該空間11aの容積(空気量)が減少する。このようにロータ室11内でロータ12が回転する空間11aの容積が減少し、その内部の空気量も減少するため、空間11a内でのロータ12の回転に伴う空気の掻き回しによる風損が低く抑えられる。又、空間11a内でのロータ12の回転に伴って空気が掻き回され、内蓋15の外周とボウル3の内周との間に形成された環状隙間を通過して空気が内蓋15の上方へと移動するため、ロータ12が回転する空間11aの圧力上昇が低く抑えられ、これによってもロータ12の回転時の風損を減らすことができ、結果的に駆動装置4の消費エネルギーが減少して省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
又、本実施の形態では、内蓋15に距離センサ17を設けて内蓋15からロータ12までの距離を測定しながら昇降手段16を制御して内蓋15を所定の位置まで下降させるようにしたため、内蓋15を所定の位置まで高精度に移動(下降)させることができ、遠心分離機1の信頼性を高めることができる。
【0039】
又、本実施の形態では、内蓋を昇降動させる昇降手段16をドアに9取り付け、内蓋15が上限の原点位置にあるときにドア9の開閉が可能となるよう構成したため、ドア9の開閉時に内蓋15がボウル3等と干渉してドア9の開閉の障害になることがなく、ドア9の開閉をスムーズに行うことができる。
【0040】
次に、図3に示すフローチャートに従った内蓋15の昇降動作について説明する。
【0041】
本昇降動作においては、ロータ識別センサ14によってロータ12を識別し、或いは操作パネル7からオペレータによって入力されたロータ12の種別によって該ロータ12を特定し、該ロータ12の高さ寸法から内蓋15の移動距離を算出し、その算出結果に基づいて昇降手段16を駆動して内蓋15を所定距離だけ移動させる手法が採用されている。
【0042】
即ち、オペレータは、ドア9を開いてロータ12の嵌合穴12aをシャフトの嵌合部10aに嵌合させることによってロータ12をシャフトに装着してドア9を閉じる。そして、オペレータがロータ12の種別を操作パネル7から入力するか、或いはロータ識別センサ14によって検出されたロータ12の種別を示す信号が制御装置5に入力されると、制御装置5は、そのロータ12の種別(つまりは、ロータ12の高さ寸法)に基づいて内蓋15の移動距離(内蓋15が図1に実線にて示す所定の位置まで達するまでの移動距離)を算出する(ステップS11)。そして、制御装置5は、昇降手段16を駆動して内蓋15を算出された移動距離だけ移動(下降)させた後(ステップS12)、距離センサ17によって内蓋15とロータ12の上面との間の距離を測定し(ステップS13)、その距離が所望の範囲内か否かを判断する(ステップS14)。その判断の結果、測定された距離が所定の範囲内である場合には、内蓋15の移動が正常に行われたものとして昇降手段16による内蓋15の移動(下降)を停止して該内蓋15の制御動作を終了させる(ステップS15)。
【0043】
他方、内蓋15とロータ12の上面との間の距離が所望の範囲外である場合には、何らかの異常が発生したものとして警報(アラーム)を発してオペレータに異常を知らせる異常処理を行い(ステップS16)、内蓋15の制御動作を終了させる(ステップS15)。
【0044】
而して、以上の動作によって内蓋15が正常に移動(下降)し、該内蓋15とロータ12の上面との距離が所定の範囲内に設定されると、ロータ室11内が図1に実線にて示す内蓋15によって上下に区画され、ロータ12が回転する下方の空間11aの容積(空気量)が縮小する。
【0045】
従って、本手法によっても前記と同様の効果が得られ、ロータ12を回転させる際に生じる風損の影響を低減して省エネルギー化を図ることができる。
【0046】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図4に基づいて説明する。
【0047】
図4は本発明の実施の形態2に係る遠心分離機の正断面図であり、本図においては図1に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0048】
本実施の形態に係る遠心分離機1においても、昇降手段16によってロータ室11内を昇降動する内蓋15を設け、運転に際しては内蓋15を図4に実線にて示す所定の位置まで下降させ、ロータ室11内でロータ12が回転する空間11aを内蓋15によって仕切って該空間11aの容積(空気量)を減少させるようにしているが、内蓋15とロータ12の上面との間の距離を測定するための距離センサを設けていない点が前記実施の形態1と異なる。
【0049】
而して、本実施の形態に係る遠心分離機1においては、ロータ識別センサ14によってロータ12を識別し、或いは操作パネル7からオペレータによって入力されたロータ12の種別によって該ロータ12を特定し、該ロータ12の高さ寸法から内蓋15の移動距離を算出し、その算出結果に基づいて昇降手段16を駆動して内蓋15を所定距離だけ移動させる手法が採用される点は図3に示すフローチャートに示したものと同様であるが、ロータ12の種別によって算出された移動距離だけ内蓋15を移動させた後は、該内蓋15とロータ12との間の距離の測定と距離が所望の範囲内であるか否かの判断を行わない点が図3に示すフローチャートに示したものと異なる。
【0050】
而して、本実施の形態に係る遠心分離機1においても、前記実施の形態1にて得られたと同様の効果が得られるが、実施の形態1において用いた距離センサ17を省略したため、構造及び制御動作が簡略化してコストダウンを図ることができる。
【0051】
尚、以上は本発明の最良の形態について具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る遠心分離機の正断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る遠心分離機の内蓋の動作工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1に係る遠心分離機の内蓋の動作工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2に係る遠心分離機の正断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 遠心分離機
2 筐体
3 ボウル
4 駆動装置
5 制御装置
6 冷凍機
7 操作パネル
8 断熱材
9 ドア
10 シャフトケース
10a シャフトの嵌合部
11 ロータ室
11a ロータ室のロータが回転する空間
12 ロータ
12a ロータの嵌合穴
13 ロータアダプタ
14 ロータ識別センサ
15 内蓋
16 昇降手段
17 距離センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容してロータ室内で回転するロータと、前記ロータ室を開閉するドアと、前記ロータを回転駆動する駆動装置と、該駆動装置の駆動を制御する制御装置を備えた遠心分離機において、
前記ロータ室の内部に、外径がロータ室の内径よりも小さな内蓋を昇降動可能に設け、少なくとも運転時には前記内蓋を下降させ、該内蓋によって区画されるロータの回転空間の容積を減少させるようにしたことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記内蓋を昇降動させる昇降手段を前記ドアに取り付け、前記内蓋が上限の原点位置にあるときに前記ドアの開閉が可能となるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記内蓋と前記ロータとの間の距離を測定するための距離センサを前記内蓋に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記距離センサによって前記内蓋と前記ロータとの間の距離を測定しながら前記内蓋の移動を制御し、所定時間内に前記内蓋と前記ロータとの間の距離が所定の範囲内にあるときに内蓋が所定の位置まで移動したものと判断することを特徴とする請求項3記載の遠心分離機。
【請求項5】
使用されるロータの種別によって前記内蓋の移動距離を算出し、算出された移動距離だけ前記内蓋を移動させることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の遠心分離機。
【請求項6】
使用されるロータの種別によって前記内蓋の移動距離を算出し、算出された移動距離だけ前記内蓋を移動させた後、前記距離センサによって前記内蓋と前記ロータとの間の距離を測定し、測定された距離が所定の範囲内にあるときに内蓋が所定の位置まで移動したものと判断することを特徴とする請求項3記載の遠心分離機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−189940(P2009−189940A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32680(P2008−32680)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】