説明

遠心脱泡機

【課題】脱泡液中にサイズの大きな気泡が混入することを抑えるとともに、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができる遠心脱泡機を提供する。
【解決手段】回転軸を中心として回転可能に構成された円筒形箱体のロータを有し、ロータ内の脱泡処理室に存在する原液に遠心力を与えることにより脱泡液と泡液とに分離する遠心脱泡機であって、脱泡処理室内から外部へ延在し且つ回転軸が内側に位置するように配置された外筒と内筒とを有する中空シャフトと、内筒の周りに放射状に延在する面を有する規制板とを備え、外筒は、外周面と開口とによって原液供給口を画定するとともに規制板よりも開口側に位置する周壁に泡液取込口が設けられ、内筒は、外周面と外筒の内周面とによって泡液が通過する泡液通路を形成し、規制板よりも開口から離れて位置する周壁に脱泡液取込口が設けられ、内周面によって脱泡液が通過する脱泡液通路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中に散在する泡を除去するための脱泡機に関し、特に、化学、医薬、製紙、繊維、印刷、電子材料、油製品などの工業分野や、化粧品、食品、樹脂、塗料、接着剤、シール材などの製品の製造過程において、液中に混入した泡を連続的に除去するための脱泡機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液中に混入した気泡を除去する方法としては、当該液中に消泡剤などを利用する化学的方法と以下に示す物理的方法とがある。物理的脱泡方法としては、例えば、自然圧力下又は減圧下において自然に気泡と液体とが分離するまで液体を放置する方法や加圧ロール方式、回転スクリーン方式、減圧薄膜方式を用いた方法が開示されている。
【0003】
しかし、化学的方法は、液中に消泡剤などを添加することにより液中成分が変化するため、用途によっては好ましくない場合がある。また、物理的方法では、上記いずれの方法においても粘度が高い液体の脱泡が難しく、脱泡に長時間を有する等の問題がある。また、例えば、減圧下において処理を行うものは、液体の中に香料や溶剤などの揮発しやすい成分が蒸発しやすくなり、液の物性が不安定になる。さらに、高真空度対応の精密ポンプが必要であり、設備費が高くなる等の問題がある。
【0004】
このような問題点を解決する遠心式の脱泡機が、例えば特開2005−131600号公報に開示されている。図7は、この従来例の遠心脱泡機の構成を示す断面図である。従来例の遠心脱泡機101は、上下方向に延びる回転軸AX1を中心に回転可能に構成される有底円筒形状の容器102と、容器102の底壁102dの内面中心部に回転軸AX1と同軸となるように固定され、上下方向に立設された中空シャフト103とを備えている。
【0005】
容器102の上部開口には、中空シャフト103が貫通する開口108aを有する蓋部108が設けられている。容器102と蓋部108とで略円筒形箱体のロータが構成されている。当該ロータの内部が、原液の脱泡処理を行う脱泡処理室102aとなる。蓋部108の開口108aの周囲には、シリンダ部108bが立設されている。
【0006】
容器102の底壁102dの外面中心部には、容器102の回転軸AX1と同軸となるように回転シャフト107が固定されている。回転シャフト107が図示しないモーター等から動力を受けてR1方向に回転することにより、脱泡処理室102a内に供給された原液中の気泡が回転軸AX1側へ移動され、気泡を含まない脱泡液が脱泡処理室102a内の外側領域へ移動される。これにより、原液が、気泡が集められた泡液と脱泡液とに分離される。
【0007】
中空シャフト103は、内筒104と、内筒104よりも長さが短く、内径が大きい外筒105とを備えた2重管構造で構成されている。
外筒105は、最下端に設けられた外筒固定部材106によって内筒104に固定され、内筒104の両端を除く中間部分のみを覆うように設けられている。外筒105と内筒104との間には、原液が通過する原液通路112が形成されている。脱泡処理室102aの外部に位置する原液通路112の上端開口は、原液ケーシング122の内部と連通している。原液ケーシング122は、外筒105に覆われていない内筒104の上部外周面を回転可能に支持している。原液ケーシング122には、側壁に設けられた図示しない供給口より原液が供給される。
脱泡処理室102a内に位置する外筒105の下端部には、原液ケーシング122から原液通路112を通じて供給される原液を脱泡処理室102a内に供給するための原液供給口105aが設けられている。
【0008】
脱泡処理室102a内で且つ外筒105の原液供給口105aの上位には、前記分離された脱泡液中に残存する気泡が脱泡液通路113側に移動するのを規制する規制板109が設けられている。規制板109は、外筒105の周りに回転軸AX1と交差する方向に放射状に突出するように設けられている。
【0009】
外筒105とシリンダ108bとの間には、脱泡処理室102aで脱泡処理された脱泡液を排出するための脱泡液通路113が形成されている。脱泡液通路113の上端開口は、脱泡液を排出するための脱泡液ケーシング123の内部と連通している。脱泡液ケーシング123は、外筒105の上部外周面を回転可能に支持している。
【0010】
内筒104の下端は、容器102の底壁102dに回転軸AX1と同軸となるように固定されている。外筒固定部材106より下位で且つ内筒104の下端近傍には、脱泡処理室102aと内筒104の内部とを連通する泡液取込口104aが設けられている。内筒104の内部には、泡液取込口104aから取り込まれた泡液を内筒104の上端開口から排出するための泡液通路111が形成されている。脱泡処理室102aの外部に位置する泡液通路111の上端開口は、泡液を排出するための泡液ケーシング121の内部と連通している。泡液ケーシング121は、原液ケーシング122に固定され、原液ケーシング122は、脱泡液ケーシング123に固定されている。すなわち、泡液ケーシング121と原液ケーシング122と脱泡液ケーシング123とは、一体的に固定されており、それぞれ回転しない構成である。
【0011】
なお、容器102及び中空シャフト103の回転をスムーズにするために、内筒104、外筒105、及びシリンダ部108bの上端近傍にはベアリング131〜133が設けられるとともに、各ケーシング間の液の漏出を防止するために、O−リング等のシール部材134〜138が備えられている。
【0012】
従来例の遠心脱泡機101は、気泡と液とを分離するために規制板109を設けるなどの構成により、比較的高粘度の原液でも脱泡処理することが可能である。また、容器102に鉛直方向に原液が供給されるとともに、鉛直方向に泡液及び脱泡液が排出されるため、中空シャフト103内での原液の分離などの問題が生じることなく、供給された原液が容器102内に移動してから分離が行われるため、分離の効率も高い。
【特許文献1】特開2005−131600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来例の遠心脱泡機101においては、比較的高粘度の原液でも脱泡処理することが可能であるものの、原液中から完全に気泡を分離することはできない。このため、脱泡液ケーシング123に送られる脱泡液中にも、僅かながらも気泡が残存する。脱泡液ケーシング123内においても、ロータの回転による遠心力の影響を受けて脱泡液の一部に脱泡処理が行われるため、脱泡液ケーシング123に送られた気泡は、回転軸AX1側に移動しようとする。このとき、脱泡液ケーシング123に送られる脱泡液と当該気泡との移動方向が互いに逆向きで釣り合い、泡溜まり領域X100(図7参照)が発生する恐れがある。
【0014】
脱泡液ケーシング123に送られる気泡は、従来例の遠心脱泡機101の脱泡効果により、目視では確認できない程にサイズが小さくされるが、泡溜まり領域X100にて滞留することで、脱泡処理が進行するに連れて隣接する気泡が互いに連結してサイズが徐々に大きくなる。当該気泡は、ある程度のサイズになるとせん断され、脱泡液ケーシング123に設けられた脱泡液排出口より矢印123Aの方向に排出される。
したがって、従来例の遠心脱泡機101においては、脱泡処理した脱泡液中に比較的サイズ(例えば200μm以上)の大きな気泡が混入するという課題がある。
【0015】
一方、原液の粘度が高いもの程、気泡が分離されにくいことが一般に知られている。従来例の遠心脱泡機101において脱泡効果を向上させるには、ロータの回転数を上げることが効果的であると考えられる。しかしながら、ロータの回転数を上げれば上げるほど、脱泡液ケーシング123内の脱泡液及び気泡にロータの回転による遠心力の影響が強く働くため、泡溜まり領域X100が発生しやすくなる。このため、従来例の遠心脱泡機101においては、高粘度の原液に対して、脱泡処理後の脱泡液中に比較的サイズの大きな気泡が混入しないようにして、脱泡効果を向上させることは困難である。
【0016】
さらに、従来例の遠心脱泡機101においては、装置への原液の初期充填の際(原液に遠心力がかけられない状態)、気泡を含む液が脱泡液ケーシング123内に入り込む。この状態でロータが回転して当該液に遠心力がかかると、液中の気泡は、回転軸AX1方向に移動するため泡溜まり領域X100で滞留することになる。すなわち、脱泡液ケーシング123内から気泡を完全に無くすことは困難である。また、泡溜まり領域X100においてサイズの大きな気泡が存在するときにロータが高速回転すると、当該気泡はせん断されて脱泡液ケーシング123の脱泡液排出口より排出されやすくなる。すなわち、ロータの回転数を上げると、脱泡液中に気泡が混入する恐れが高くなる。このため、従来例の遠心脱泡機101においては、ロータの回転数を上げても気泡の混入を抑制することは困難である。
【0017】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決することにあって、原液に回転により遠心力を与えることによって脱泡液と泡液とに分離する遠心脱泡機において、脱泡処理後の脱泡液中に比較的サイズの大きな気泡が混入することを抑えるとともに、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができる遠心脱泡機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、回転軸を中心として回転可能に構成された円筒形箱体のロータを有し、前記ロータ内の脱泡処理室に存在しかつ気泡が含まれる原液に、回転により遠心力を与えることによって前記気泡を前記回転軸近傍に集める脱泡処理を行い、処理後の脱泡液と前記気泡が集められた泡液とに分離する遠心脱泡機であって、
前記脱泡処理室内から、前記回転軸を含むように前記ロータの一方の端部壁に形成された開口を通過して前記脱泡処理室の外部へ、前記回転軸と同軸で且つ前記ロータの回転軸方向に延在するようにそれぞれ配置された、外筒と内筒とを有する中空シャフトと、
前記脱泡処理室内において、前記ロータの一方の端部壁と対向するように設けられ、前記回転軸に交差する方向で且つ前記中空シャフトの周りに放射状に延在する面を有する規制板とを備え、
前記外筒は、
前記外筒の外周面と前記開口とによって原液供給口を画定するとともに、前記脱泡処理室内に位置し且つ前記規制板よりも前記開口側に位置する外筒周壁の一部に前記脱泡処理室に連通する泡液取込口が設けられ、
前記内筒は、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とによって前記泡液取込口を通じて前記脱泡処理室より取り込まれた泡液が通過する泡液通路を形成し、前記脱泡処理室内に位置し且つ前記規制板よりも前記開口から離れて位置する内筒周壁の一部に前記脱泡処理室に連通する脱泡液取込口が設けられ、前記内筒の内周面によって前記脱泡液取込口を通じて前記脱泡処理室より取り込まれた脱泡液が通過する脱泡液通路を形成する、遠心脱泡機を提供する。
【0019】
本発明の第2態様によれば、前記中空シャフトは、前記ロータと一体的に回転するように、前記脱泡処理室内に位置する前記内筒の端部が前記ロータの他方の端部壁に固着され、
前記遠心脱泡機は、さらに、前記脱泡処理室の外部に位置する前記内筒の端部開口と連通する脱泡液ケーシングを備え、
前記脱泡液ケーシングは、
前記内筒の前記端部開口に対向する壁に、前記脱泡液を排出するための脱泡液排出口が設けられている、第1態様に記載の遠心脱泡機を提供する。
【0020】
本発明の第3態様によれば、前記脱泡液排出口は、前記回転軸を含むように設けられている、第2態様に記載の遠心脱泡機を提供する。
【0021】
本発明の第4態様によれば、前記脱泡液ケーシングは、内面に、前記内筒の前記端部開口から前記脱泡液排出口に向かうに従い収束するテーパ部が形成されている、第2又は3態様に記載の遠心脱泡機を提供する。
【0022】
本発明の第5態様によれば、前記脱泡液ケーシングは、前記回転軸と直交する方向における前記回転軸から内面までの最大距離が前記外筒の外半径よりも短く構成されている、第2〜4態様のいずれか1つに記載の遠心脱泡機を提供する。
【0023】
本発明の第6態様によれば、前記内筒と前記脱泡液ケーシングとの間に、前記脱泡液の漏出を防止するメカニカルシールが設けられている、第2〜5態様のいずれか1つに記載の遠心脱泡機を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の遠心脱泡機によれば、中空シャフトの内筒をロータの回転軸と同軸となるように配置するとともに、当該内筒の内側に形成された脱泡液通路を通じて脱泡処理後の脱泡液が排出されるようにしている。これにより、脱泡液中に気泡が残存したとしても、当該気泡は従来例よりも回転軸近傍に位置することになり、当該気泡に加わるロータの回転による遠心力の影響を小さくすることができる。また、脱泡液の移動方向は回転軸と平行であり、上記気泡の移動方向は、上記気泡が回転軸に向かって移動するため、回転軸に対して交差(例えば直交)方向である。すなわち、脱泡液と上記気泡との移動方向は互いに相違する。したがって、泡溜まり領域の発生を抑えることができ、脱泡処理後の脱泡液中に比較的サイズの大きな気泡が混入することを抑えることができる。また、泡溜まり領域の発生を抑えることができるので、ロータの回転数を上げることができ、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る遠心脱泡機1について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1の構成を示す断面図である。遠心脱泡機1は、多数の気泡が分散された原液に遠心力を与えることによって脱泡液と泡液とに分離し、原液中の気泡を取り除くための装置である。なお、遠心脱泡機1の各構成部品は、特にことわりの無い限り、回転軸AXを中心として線対称に形成されている。
【0027】
図1において、遠心脱泡機1は、概ね円筒形箱体で構成され、上下方向に延在する回転軸AXを中心に回転可能に構成されるロータ2を備えている。ロータ2の内部には、気泡が含まれる原液に回転により遠心力を与えて、気泡が集められた泡液と気泡が取り除かれた脱泡液とに分離するための脱泡処理室2aが形成されている。
【0028】
ロータ2は、有底円筒形状の容器21と、「一方の端部壁」の一例である蓋部22とを備えている。蓋部22には、回転軸AXと交差する部分を含むように開口22aが形成されている。蓋部22の開口22aの周囲には、シリンダ部22bが脱泡処理室2aから離れる方向に立設されている。
【0029】
ロータ2の「他方の端部壁」の一例である底壁21aの外面中心部には、回転軸AXと同軸となるように回転シャフト23が固定されている。なお、回転シャフト23は、底壁21aの中心部を貫通して内筒31の下端に固定されてもよい。回転シャフト23が図示しないモーター等から動力を受けてR方向又はその逆方向に回転することにより、ロータ2がR方向又はその逆方向に回転する。このロータ2の回転により、脱泡処理室2a内に遠心力が発生し、脱泡処理室2a内に供給された原液中の気泡が回転軸AX側へ移動され、気泡を含まない脱泡液が脱泡処理室2a内の外側領域へ移動される。これにより、原液が泡液と脱泡液とに分離される。
【0030】
ロータ2の底壁21aの内面中心部には、回転軸AX方向に延在するように中空シャフト3が固定されている。中空シャフト3は、内筒31と、内筒31よりも長さが短く且つ内径が大きく形成され、内筒31の両端部を除く中間部分のみを覆うように配置された外筒32と、を備えた2重管構造で構成されている。内筒31と外筒32とはそれぞれ、脱泡処理室2a内から開口22aを通過して脱泡処理室2aの外部へ、回転軸AXと略同軸で且つ回転軸AX方向に延在するように配置されている。
【0031】
脱泡処理室2a内に位置する内筒31の下端は、底壁21aの内面中心部に固定されている。なお、内筒31の下端は、上記したように底壁21aの中心部を貫通する回転シャフトの上端に固定されてもよい。脱泡処理室2a内において、内筒2aの周りには、蓋部22と対向し且つ回転軸AXに交差(例えば直交)する方向に放射状(例えば円形状)に延在する面33aを有し、脱泡処理室2a内の気泡の移動を規制する規制板33が固定されている。規制板33の面33aに外筒32の一端部が固定されている。これにより、内筒31と外筒32と規制板33とが、ロータ2と一体的に回転可能に構成されている。
【0032】
外筒32とシリンダ22bとの間には、脱泡処理室102aに原液を供給するための原液通路41が、外筒32の内周面とシリンダ22bの外周面とにより形成されている。また、外筒32の外周面と開口22aとにより、原液通路41と脱泡処理室2aとを連通する原液供給口41aが画定されている。脱泡液処理室102aの外部に位置する原液通路41の上端開口41bは、原液を受け入れ、排出するための原液ケーシング51の内部と連通している。原液ケーシング51には、図示しない供給口が設けられており、当該供給口より矢印51Aに示すように遠心脱泡機1の外部から原液が供給される。また、原液ケーシング51には、図示しない空気抜きバルブが接続されており、矢印86に示すように内部の空気を排出可能になっている。
【0033】
原液ケーシング51は、外筒32の上部外周面とシリンダ22bの外周面とを、ベアリングなどの軸受部材61,62を介して回転可能に支持している。軸受部材61の上部には、原液ケーシング51内の原液が軸受部材61に漏出するのを防止するためにO−リング等のシール部材71が設けられている。軸受部材62の下部には、原液ケーシング51内の原液が軸受部材62に漏出するのを防止するためにO−リング等のシール部材72が設けられている。
【0034】
脱泡液処理室2a内で且つ規制板33よりも開口22a側に位置する外筒32の外筒周壁には、脱泡処理室2a内で分離された泡液を取り込むための泡液取込口32aが設けられている。外筒32と内筒31との間には、泡液取込口32aより取り込まれた泡液が通過する泡液通路42が、外筒32の内周面と内筒31の外周面とにより形成されている。
【0035】
泡液通路42の上端開口42aは、泡液を受け入れ、排出するための泡液ケーシング52の内部と連通している。泡液ケーシング52には、図示しない排出口が設けられており、当該排出口より矢印52Aに示すように遠心脱泡機1の外部に泡液が排出される。また、泡液ケーシング52には、図示しない空気抜きバルブが接続されており、矢印87に示すように内部の空気を排出可能になっている。
【0036】
泡液ケーシング52は、外筒32に覆われていない内筒31の上部外周面を、ベアリングなどの軸受部材63を介して回転可能に支持している。泡液ケーシング52の下端部は、原液ケーシング51の上面に一体的に固定されている。軸受部材62の上部には、泡液ケーシング52内の泡液が軸受部材62に漏出するのを防止するためにO−リング等のシール部材73が設けられている。軸受部材63の下部には、泡液ケーシング52内の泡液が軸受部材63に漏出するのを防止するためにO−リング等のシール部材74が設けられている。
【0037】
脱泡液処理室2a内で且つ規制板33よりも開口22aから離れて位置する内筒31の内筒周壁には、脱泡処理室2a内で分離された脱泡液を取り込むための脱泡液取込口31aが設けられている。内筒31の内側には、脱泡液取込口31aより取り込まれた脱泡液が通過する脱泡液通路43が、内筒31の内周面により形成されている。
【0038】
内筒31の上端開口(端部開口)31bは、脱泡液を受け入れ、排出するための脱泡液ケーシング53の内部と連通している。上端開口43aと対向する脱泡液ケーシング53の壁には、矢印53Aに示すように脱泡液を遠心脱泡機1の外部に排出するための脱泡液排出口53aが設けられている。脱泡液排出口53aは、回転軸AXを含むように、すなわち回転軸AX上に位置するように設けられている。
【0039】
脱泡液ケーシング53の内面には、上端開口31bから脱泡液排出口53aに向かうに従い収束するテーパ部53bが形成されている。このテーパ部53bにより、脱泡液中に残存する気泡が脱泡液排出口53aから排出されやすくなっている。
【0040】
脱泡液ケーシング53の下端部は、泡液ケーシング52の上面に一体的に固定されている。すなわち、原液ケーシング51と泡液ケーシング52と脱泡液ケーシング53とは回転しない構成であり、それらはロータ2及び中空シャフト3を回転可能に支持している。言い換えれば、ロータ2の回転中において、原液ケーシング51と泡液ケーシング52と脱泡液ケーシング53とは静止状態にある。
【0041】
軸受部材63の上部には、脱泡液ケーシング53内の脱泡液が軸受部材63に漏出するのを防止するためのシール部材として、メカニカルシール75が配置されている。メカニカルシール75は、シール部材の中でも気密性に優れたシール部材である。このメカニカルシール75としては、例えば、日本ピラー製のメカニカルシール(品番:PEU−025)、イーグル工業製のメカニカルシール(品番:LA200−025)などが挙げられる。なお、メカニカルシール75は、内筒31が回転することにより発熱する恐れがあるので、脱泡液ケーシング53とは接触しないように配置されることが好ましい。このように配置することで、脱泡液の温度がメカニカルシールの発熱温度より低いとき(例えば常温のとき)、メカニカルシール75を脱泡液と接触させて冷却することができる。
【0042】
次に、図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1を用いて原液を処理するシステムについて説明する。図2は、本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1のシステム構成図である。なお、遠心脱泡機1を用いて原液を処理するシステムの各動作は、図示しない記憶部に予め記憶された動作プログラムに基づいて各装置の動作を制御するように構成された図示しない制御部にて制御される。
【0043】
脱泡処理を行う原液は、原液タンク81に蓄積されている。原液タンク81からの原液は、ポンプ82により配管83を通って遠心脱泡機1の原液ケーシング51に送りこまれる。原液ケーシング51に送りこまれた原液は、上述したようにロータ2の脱泡処理室2a内に送られて泡液と脱泡液とに分離される。原液から分離された泡液は、配管84を通じて遠心脱泡機1の外部に排出され、その一部は原料タンク40に戻され、残りの一部は排出される。一方、原液から分離された脱泡液は、配管85を通って遠心脱泡機1の外部に排出される。
【0044】
なお、各配管83〜85には、当該配管を通過する給送量を調整するための図示しないバルブが設けられている。また、配管83には、配管内に存在する空気が遠心脱泡機1内に送りこまれないようにするために、図示しない空気抜きバルブが設けられている。
【0045】
次に、図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1の動作を説明する。
【0046】
上記システムにおいてポンプ82を駆動すると、原料タンク81から遠心脱泡機1へ原液の供給が行われる。
遠心脱泡機1への原液の供給により遠心脱泡機1の空気抜きバルブから矢印86、87に示すように原液が出てきたら、各空気抜きバルブを閉じる。
この後、図示しないモーター等を駆動して回転シャフト23を回転させ、所定の回転数でロータ2の回転を開始させる。ロータ2の回転数は、原料や遠心脱泡機1の仕様などの運転条件により適宜調整することができる。
【0047】
配管83を通って、図1の矢印51Aに示すように原液ケーシング51に送りこまれた原液は、原液通路41を通過し、脱泡処理室2a内に送られる。
脱泡処理室2a内に送られた原液は、ロータ2が回転することにより、ロータ2の回転に伴う遠心力を受ける。これにより、原液は、単位体積あたりの比重が大きい液体部分がロータ2の周壁側(外側領域)に移動し、単位体積あたりの比重が小さい気泡部分がロータ2の回転軸AX側へ移動する。このとき、規制板33が回転軸AXに対して交差する方向に放射状に延在するよう設けられているので、原液中の気泡の大部分又は全部は、規制板33を越えて脱泡液取込口31aまで移動することができない。したがって、原液が泡液と脱泡液とに分離される。
【0048】
規制板33を越えることなく回転軸AX側に集められた気泡を含む泡液は、泡液取込口32a、泡液通路42を通じて泡液ケーシング52に送られる。
この後、泡液は、図示しない排出口より、図1の矢印52Aに示すように遠心脱泡機1の外部(配管84)に排出される。一方、脱泡処理されてロータ2の周壁側に移動した脱泡液は、原液供給口41aを通じて送られてくる原液の供給圧力により押されて、規制板33を越えて脱泡液取込口31aへと送られる。
【0049】
この後、脱泡液は、脱泡液取込口31a、脱泡液通路43を通じて脱泡液ケーシング53に送られ、脱泡液排出口53aより矢印53Aに示すように遠心脱泡機1の外部(配管85)に排出される。このとき、メカニカルシール75により脱泡液ケーシング53内の気密性が高くされるとともに、脱泡液ケーシング53の内面にテーパ部53bが形成されているので、脱泡液ケーシング53内の脱泡液中に気泡が残存していたとしても、当該気泡は、複数が連結してサイズが大きくなることなく、脱泡液排出口53aより排出される。
【0050】
本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1によれば、内筒31をロータ2の回転軸と同軸となるように配置するとともに、内筒31の内側に形成された脱泡液通路42を通じて脱泡処理後の脱泡液が排出されるようにしている。これにより、脱泡液中に気泡が残存したとしても、当該気泡は従来例よりも回転軸近傍に位置することになり、当該気泡に加わるロータ2及び中空シャフト3の回転による遠心力の影響を小さくすることができる。また、脱泡液の移動方向は回転軸AXと平行であり、上記気泡の移動方向は、上記気泡が回転軸AXに向かって移動するため、回転軸AXに対して交差(例えば直交)方向である。すなわち、脱泡液と上記気泡との移動方向は互いに相違する。したがって、泡溜まり領域の発生を抑えることができ、脱泡処理後の脱泡液中に比較的サイズの大きな気泡が混入することを抑えることができる。また、泡溜まり領域の発生を抑えることができるので、装置への原液の初期充填時に脱泡液ケーシング53内に入り込んだ気泡も、脱泡液ケーシング53内に溜まらずに排出される。したがって、ロータ2の回転数を上げることができ、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができる。
【0051】
また、本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1によれば、泡液取込口32aを規制板33よりも開口22a側の位置に設けるとともに、脱泡液取込口31aを開口22aから離れた位置に設けている。これにより、脱泡処理室2a内の気泡は、規制板33に移動を規制されて脱泡液取込口31a側に移動できず、より確実に泡液取込口32a側に誘導されることになる。したがって、脱泡効果を向上させることができる。
【0052】
また、本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1によれば、脱泡液ケーシング53の内筒31の端部開口31bに対向する壁に、脱泡液排出口53aを設けている。さらに、当該脱泡液排出口53aを回転軸AX上に位置するように設けている。これにより、脱泡液中に残存する気泡が脱泡液排出口53aに向けて移動するときにおいても、当該気泡に加わるロータ2及び中空シャフト3の回転による遠心力の影響を小さくすることができる。なお、これに対して、例えば脱泡液排出口53aを脱泡液ケーシング53の側壁のみに設けた場合には、脱泡液排出口53aが回転軸AXから離れて位置することになるため、脱泡液中に残存する気泡に加わるロータ2及び中空シャフト3の回転による遠心力の影響が大きくなる。このため、泡溜まり領域が発生する恐れが高くなる。
【0053】
なお、脱泡液排出口53aは、脱泡液ケーシング53の内筒31の端部開口31bに対向する壁と脱泡液ケーシング53の側壁の両方に設けてもよい。これにより、脱泡液排出口53aを脱泡液ケーシング53の側壁のみに設ける場合よりも高い脱泡効果を得ることができる。また、脱泡液排出口53aを脱泡液ケーシング53の側壁にも設けることで、メカニカルシール75と脱泡液ケーシング53との間への脱泡液の流れを発生させることができる。これにより、内筒31の回転により発熱したメカニカルシール75と脱泡液とを確実に接触させて、メカニカルシール75を冷却できるという効果も得られる。
【0054】
また、本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機1によれば、脱泡液ケーシング53の内面に、脱泡液排出口53aに向かうに従い収束するテーパ部53bが形成されている。これにより、脱泡液ケーシング53内の気泡は、脱泡液通路43を通じて供給される脱泡液に押されて、テーパ53bに沿って脱泡液排出口53aに誘導されることになる。したがって、泡溜まり領域の発生をさらに抑えることができる。
【0055】
《第2実施形態》
図3を参照しつつ、本発明の第2実施形態にかかる遠心脱泡機1Aの構成を説明する。図3は、本発明の第2実施形態にかかる遠心脱泡機1Aの構成を示す断面図である。本発明の第2実施形態にかかる遠心脱泡機1Aは、脱泡液ケーシング53及びメカニカルシール75に代えて脱泡液ケーシング91、スペーサ92及びオイルシール93を備える点で本第1実施形態にかかる遠心脱泡機1と異なる。それ以外の点は同様であるので重複する説明は省略し、以下、主に相違点について説明する。
【0056】
図3において、脱泡液ケーシング91は、概ね有底円筒形状に形成され、下端部が泡液ケーシング52の上面に一体的に固定されている。すなわち、原液ケーシング51と泡液ケーシング52と脱泡液ケーシング91とは、回転しない構成であり、それらはロータ2及び中空シャフト3を回転可能に支持している。脱泡液ケーシング91の内部には、内筒31の上端開口31bが連通している。内筒31の上端開口31bと対向する脱泡液ケーシング91の壁には、矢印91Aに示すように脱泡液を遠心脱泡機1Aの外部に排出するための脱泡液排出口91aが設けられている。脱泡液排出口91aは、回転軸AXを含むように、すなわち回転軸AX上に位置するように設けられている。
【0057】
脱泡液ケーシング91の内半径r1は、外筒32の外半径r2よりも大きく形成されている。脱泡液ケーシング91の内側には、リング状のスペーサ92が配置されている。スペーサ92は、脱泡液中に残存する気泡が、回転軸91Aから離れて位置しないようにするための部材である。ここで、従来例の遠心脱泡機100において、泡溜まり領域X100は、外筒105の外周面よりも回転軸AX1から離れて位置する脱泡液ケーシング123内で発生する(図7参照)。このため、スペーサ92の内半径r3は、外筒32の外半径r2よりも小さく形成されている。すなわち、仮に泡溜まり領域が発生したとしても、当該泡溜まり領域が従来例よりも回転軸AX側で発生するようにしている。
【0058】
軸受部材63の上部には、脱泡液ケーシング91内の脱泡液が軸受部材63に漏出するのを防止するためのシール部材として、オイルシール93が配置されている。オイルシール93は、回転部材の軸受部材を密封し、流体の漏出を防止するために一般的に使用されるシール部材である。オイルシール93としては、例えば、荒井製作所製のオイルシール(品番:FS−25−40−7)が挙げられる。なお、オイルシール93は、内筒31が回転することにより発熱する恐れがあるので、脱泡液ケーシング91及びスペーサ92とは接触しないように配置されることが好ましい。言い換えれば、スペーサ92の内半径r3は、オイルシール93の外半径以上に形成されることが好ましい。
【0059】
以上のように構成される本発明の第2実施形態にかかる遠心脱泡機1Aによれば、脱泡液ケーシング91の内側にスペーサ92を設けて、脱泡液中に残存する気泡が回転軸91Aから離れて位置しないようにしている。これにより、脱泡液中に気泡が残存したとしても、当該気泡は従来例よりも回転軸近傍に位置することになり、当該気泡に加わるロータ2及び中空シャフト3の回転による遠心力の影響を小さくすることができる。したがって、泡溜まり領域の発生を抑えることができ、脱泡処理後の脱泡液中に比較的サイズの大きな気泡が混入することを抑えることができる。また、泡溜まり領域の発生を抑えることができるので、ロータ2の回転数を上げることができ、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができる。
【0060】
次に、図4〜6を用いて、上記第1実施形態にかかる遠心脱泡機1と、上記第2実施形態にかかる遠心脱泡機1Aと、従来例の遠心脱泡機101との脱泡効果について説明する。ここでは、サンプルとしてカーボポールを使用し、各遠心脱泡機に流れる原液の全流量を750cc/minとし、液と気泡との比率を5:5として脱泡処理を行い、処理後の脱泡液を2ml採取して、その脱泡液中に含まれる気泡の数及びサイズを観察した。また、ロータの回転数を0、300〜1,800rpm(100rpm刻み)とし、粘度500cp(センチポアズ)、3,000cp、及び10,000cpとしたときの脱泡液中の気泡について、それぞれ観察した。
【0061】
図4は、原液の粘度が500cpのときの各遠心脱泡機の脱泡効果を示すグラフである。図5は、原液の粘度が3,000cpのときの各遠心脱泡機の脱泡効果を示すグラフである。図6は、原液の粘度が10,000cpのときの各遠心脱泡機の脱泡効果を示すグラフである。図4〜図6において、横軸はロータの回転数を示し、縦軸は脱泡液中に残存する気泡の個数を示している。また、各図中の実線は、サイズが50μm〜100μm未満の気泡のデータを結んでおり、点線は、サイズが100μm〜200μm未満の気泡のデータを結んでいる。各図中の1点鎖線は、サイズが200〜400μm未満の気泡のデータを結んでおり、2点鎖線は、サイズが400μm以上の気泡のデータを結んでいる。
【0062】
図4より、原液の粘度が500cpのとき、各遠心脱泡機により、ロータの回転数が800rpm以上でほぼ完全に脱泡液から気泡を取り除くことができることが分かる。また、第1実施形態の遠心脱泡機1及び第2実施形態の遠心脱泡機1Aでは、従来例の遠心脱泡機101と比べて、全体的に気泡の数が減るとともにサイズが小さくなっていることが分かる。さらに、従来例の遠心脱泡機101では、ロータの回転数が800rpm以上のときに、200μm以上程度の比較的サイズの大きな気泡が突発的に発生していることが分かる。
【0063】
また、図5より、原液の粘度が3,000cpのとき、各遠心脱泡機により、ロータの回転数が1,100rpm〜1,200rpmでほぼ完全に脱泡液から気泡を取り除くことができることが分かる。また、第1実施形態の遠心脱泡機1及び第2実施形態の遠心脱泡機1Aでは、従来例の遠心脱泡機101と比べて、全体的に気泡の数が減るとともにサイズが小さくなっていることが分かる。さらに、従来例の遠心脱泡機101では、ロータの回転数が1,000rpm以上のときに、200μm以上程度の比較的サイズの大きな気泡が突発的に発生していることが分かる。
【0064】
一方、第2実施形態の遠心脱泡機1Aにおいても、ロータの回転数が1,300rpm以上のときに、50μm〜100μm程度の比較的サイズの小さな気泡が回転数の増加に伴って多数発生していることが分かる。この原因は、ロータの回転数の増加による脱泡液ケーシング内の圧力変化により、オイルシール93の部分で空気漏れが発生しているためと推察される。これに対して、気密性の高いメカニカルシール75を用いた第1実施形態の遠心脱泡機1においては、ロータの回転数が1,300rpm以上のときであっても、気泡の発生はほぼ抑えられている。
【0065】
また、図6より、原液の粘度が10,000cpのとき、第1実施形態の遠心脱泡機1により、ロータの回転数が1,500rpm以上でほぼ完全に脱泡液から気泡を取り除くことができることが分かる。また、第2実施形態の遠心脱泡機1Aでは、従来例の遠心脱泡機101に比べて、200μm以上の比較的サイズの大きな気泡が減っていることが分かる。さらに、従来例の遠心脱泡機101では、ロータの回転数が1,700rpm〜1,800rpmのときに、200μm以上程度の比較的サイズの大きな気泡が突発的に発生していることが分かる。
【0066】
以上の結果より、第2実施形態の遠心脱泡機1Aによれば、従来例の遠心脱泡機101に比べて、脱泡液中に比較的サイズの大きな気泡が混入することを抑えるとともに、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができることが分かる。
また、第1実施形態の遠心脱泡機1によれば、第2実施形態の遠心脱泡機1Aよりもさらに、脱泡液中に比較的サイズの大きな気泡が混入することを抑えるとともに、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができることが分かる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、上記第2実施形態では、脱泡液の漏出を防止するためのシール部材としてオイルシール93を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、メカニカルシール75が用いられてもよい。
【0068】
また、上記第2実施形態では、脱泡液ケーシング91とスペーサ92とを別々の部材で構成したが、脱泡液ケーシング91とスペーサ92とは単一の部材で構成されてもよい。
また、上記第2実施形態では、リング状のスペーサ92を用いたが、本発明はこれに限定されず、その他の形状のものでもよい。この場合、回転軸AXからスペーサ92の内面までの最大距離が外筒32の外半径r2よりも短くなるように構成すればよい。これにより、上記第2実施形態にかかる遠心脱泡機1Aと同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、上記第1実施形態にかかる遠心脱泡機1の設置は、図1に示すようにロータ2を下にして脱泡液ケーシング53が上方に位置するように設置されることが好ましい。これにより、脱泡液中に残存する気泡に上方向に浮力がかかることになり、当該気泡のサイズが大きくなる前に脱泡液排出口53aから排出することができる。これにより、さらに脱泡効果を向上させることができる。また、上記第2実施形態にかかる遠心脱泡機1Aについても同様に、図3に示すようにロータ2を下にして脱泡液ケーシング91が上方に位置するように設置されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる遠心脱泡機は、脱泡液中にサイズの大きな気泡が混入することを抑えるとともに、高粘度の原液に対しても脱泡効果を向上させることができるので、特に、化学、医薬、製紙、繊維、印刷、電子材料、油製品などの工業分野や、化粧品、食品、樹脂、塗料、接着剤、シール材などの製品の製造過程において、液中に混入した気泡を連続的に除去するための脱泡機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる遠心脱泡機を用いて原液を処理するシステムの模式構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる遠心脱泡機の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第1及び第2実施形態にかかる遠心脱泡機と従来例の遠心脱泡機とにおいて、原液の粘度が500cpのときの脱泡効果を示すグラフである。
【図5】本発明の第1及び第2実施形態にかかる遠心脱泡機と従来例の遠心脱泡機とにおいて、原液の粘度が3,000cpのときの脱泡効果を示すグラフである。
【図6】本発明の第1及び第2実施形態にかかる遠心脱泡機と従来例の遠心脱泡機とにおいて、原液の粘度が10,000cpのときの脱泡効果を示すグラフである。
【図7】従来例の遠心脱泡機の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1,1A 遠心脱泡機
2 ロータ
2a 脱泡処理室
3 中空シャフト
21 容器
21a 底壁
22 蓋部
22a 開口
22b シリンダ部
23 回転シャフト
31 内筒
31a 脱泡液取込口
32 外筒
32a 泡液取込口
33 規制板
41 原液通路
41a 原液供給口
42 泡液通路
43 脱泡液通路
51 原液ケーシング
52 泡液ケーシング
53,91 脱泡液ケーシング
53a,91a 脱泡液排出口
53b テーパ部
61,62,63 軸受部材
71,72,73,74 シール部材
75 メカニカルシール
92 スペーサ
93 オイルシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転可能に構成された円筒形箱体のロータを有し、前記ロータ内の脱泡処理室に存在しかつ気泡が含まれる原液に、回転により遠心力を与えることによって前記気泡を前記回転軸近傍に集める脱泡処理を行い、処理後の脱泡液と前記気泡が集められた泡液とに分離する遠心脱泡機であって、
前記脱泡処理室内から、前記回転軸を含むように前記ロータの一方の端部壁に形成された開口を通過して前記脱泡処理室の外部へ、前記回転軸と同軸で且つ前記ロータの回転軸方向に延在するようにそれぞれ配置された、外筒と内筒とを有する中空シャフトと、
前記脱泡処理室内において、前記ロータの一方の端部壁と対向するように設けられ、前記回転軸に交差する方向で且つ前記中空シャフトの周りに放射状に延在する面を有する規制板とを備え、
前記外筒は、
前記外筒の外周面と前記開口とによって原液供給口を画定するとともに、前記脱泡処理室内に位置し且つ前記規制板よりも前記開口側に位置する外筒周壁の一部に前記脱泡処理室に連通する泡液取込口が設けられ、
前記内筒は、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とによって前記泡液取込口を通じて前記脱泡処理室より取り込まれた泡液が通過する泡液通路を形成し、前記脱泡処理室内に位置し且つ前記規制板よりも前記開口から離れて位置する内筒周壁の一部に前記脱泡処理室に連通する脱泡液取込口が設けられ、前記内筒の内周面によって前記脱泡液取込口を通じて前記脱泡処理室より取り込まれた脱泡液が通過する脱泡液通路を形成する、遠心脱泡機。
【請求項2】
前記中空シャフトは、前記ロータと一体的に回転するように、前記脱泡処理室内に位置する前記内筒の端部が前記ロータの他方の端部壁に固着され、
前記遠心脱泡機は、さらに、前記脱泡処理室の外部に位置する前記内筒の端部開口と連通する脱泡液ケーシングを備え、
前記脱泡液ケーシングは、
前記内筒の前記端部開口に対向する壁に、前記脱泡液を排出するための脱泡液排出口が設けられている、請求項1に記載の遠心脱泡機。
【請求項3】
前記脱泡液排出口は、前記回転軸を含むように設けられている、請求項2に記載の遠心脱泡機。
【請求項4】
前記脱泡液ケーシングは、内面に、前記内筒の前記端部開口から前記脱泡液排出口に向かうに従い収束するテーパ部が形成されている、請求項2又は3に記載の遠心脱泡機。
【請求項5】
前記脱泡液ケーシングは、前記回転軸と直交する方向における前記回転軸から内面までの最大距離が前記外筒の外半径よりも短く構成されている、請求項2〜4のいずれか1つに記載の遠心脱泡機。
【請求項6】
前記内筒と前記脱泡液ケーシングとの間に、前記脱泡液の漏出を防止するメカニカルシールが設けられている、請求項2〜5のいずれか1つに記載の遠心脱泡機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−284419(P2008−284419A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129133(P2007−129133)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】