説明

遠赤外線放射シート及び該シートを利用した温浴装置

【課題】遠赤外線を放射すると共に十分な強度を備えた遠赤外線放射シートを提供する。
【解決手段】この発明の遠赤外線放射シートは、基布層2の上面側に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層3が積層一体化されると共に、基布層2の下面側に、樹脂を含有してなる裏面層4が積層一体化されてなり、遠赤外線放射層3におけるブラックシリカの含有率が4〜30質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠赤外線を放射するシート及び該シートを用いた温浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
床面に敷き詰めた天然鉱石等を利用した岩盤浴は、発汗を促進する、血行を良くする、湯冷めし難い等の諸効果があることから、近年多く利用されるようになってきている。例えば特許文献1には、コンクリート、大理石、タイル等の床台に、天然珪酸ジルコンを埋め込んだ構成の岩盤浴施設が記載されている。
【特許文献1】特開2006−6507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、天然鉱石を床面に敷き詰めた岩盤床設備を備えた岩盤浴施設を要するものであり、設備が大型である上に、エネルギーコストも高いという問題があった。即ち、岩盤浴のためには上記のような岩盤浴設備を備えた施設に行かなければならず、従来は、例えば家庭等において簡易的に実施できるようなものはなかったのが実状である。
【0004】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、遠赤外線を放射すると共に十分な強度を備えた遠赤外線放射シート、及び例えば家庭等において簡易的に岩盤浴のような温浴を行うことのできる温浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0006】
[1]基布層の上面側に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層が積層一体化されると共に、前記基布層の下面側に、樹脂を含有してなる裏面層が積層一体化されてなり、
前記遠赤外線放射層におけるブラックシリカの含有率が4〜30質量%であることを特徴とする遠赤外線放射シート。
【0007】
[2]前記遠赤外線放射層を構成する樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられ、前記裏面層を構成する樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられている前項1に記載の遠赤外線放射シート。
【0008】
[3]遠赤外線放射シートの全体厚さが0.5〜1.5mmである前項1または2に記載の遠赤外線放射シート。
【0009】
[4]前記基布層は、ポリエステル製織布からなる前項1〜3のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シート。
【0010】
[5]前記ブラックシリカの粒子径が2〜20μmである前項1〜4のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シート。
【0011】
[6]前記遠赤外線放射層の上面側に、樹脂を含有してなる表面保護層が積層されている前項1〜5のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シート。
【0012】
[7]電熱マットと、
前記電熱マットの上に配置される請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シートと、
前記遠赤外線放射シートとの間に内部空間を形成する態様で該遠赤外線放射シートの上に設置される屋根体と、
を備えることを特徴とする温浴装置。
【0013】
[8]前記屋根体は、金属層を含んでなることを特徴とする前項7に記載の温浴装置。
【0014】
[9]前記屋根体は、金属層と、電熱マットと、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シートとを含んでなることを特徴とする前項7に記載の温浴装置。
【0015】
[10]前記屋根体において、電熱マットは金属層より内側に配置され、遠赤外線放射シートは電熱マットより内側に配置されている前項9に記載の温浴装置。
【発明の効果】
【0016】
[1]の発明(遠赤外線放射シート)では、ブラックシリカを含有した遠赤外線放射層を備えているから、遠赤外線が放射される。また、遠赤外線放射層におけるブラックシリカの含有率が4〜30質量%であるから、遠赤外線が十分に放射されると共に遠赤外線放射層の強度を十分に確保することができる。また、基布層が積層一体化されているので、遠赤外線放射シートの全体厚さを薄く(例えば全体厚さを0.5〜1.5mmに)設計しても、シートとして十分な強度を確保できる。更に、裏面樹脂層が基布層の下面に積層されており、この裏面層の樹脂が基布層内に侵入することで、該基布層を挟んで遠赤外線放射層の樹脂と裏面層の樹脂が融着するものとなり、これにより遠赤外線放射シート(1)は層間剥離を生じ難くなるので、遠赤外線放射シート(1)の耐久性を向上させることができる。
【0017】
[2]の発明では、遠赤外線放射層を構成する樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられ、裏面層を構成する樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられているので、遠赤外線放射シートは柔軟性に富んだものとなり、例えば保管時等にこの遠赤外線放射シートを容易に且つ良好状態に巻くことが可能となる利点がある。即ち、巻き取り収納性を向上させることができる。また、巻き取り状態から平面状に拡げた際に巻きグセが残ることが殆どなく直ちに床面等の敷設面に馴染むという利点もある。
【0018】
[3]の発明では、遠赤外線放射シートの全体厚さが0.5〜1.5mmであって薄いので、この遠赤外線放射シートの熱伝導性がより向上する。例えば、この遠赤外線放射シートを用いて後述する発明[7][8]のような温浴装置を構成した場合において、電熱マットからの熱がこの遠赤外線放射シートに素早く伝わるので、この遠赤外線放射シートからの遠赤外線の放射現象が素早く立ち上がる(装置の稼働開始から早い段階で十分な遠赤外線の放射が実現されるものとなる)。
【0019】
[4]の発明では、基布層は、ポリエステル製織布からなるので、この遠赤外線放射シートの強度をさらに向上させることができる。
【0020】
[5]の発明では、ブラックシリカの粒子径が2〜20μmであるから、遠赤外線放射層の強度をより向上させることができる。
【0021】
[6]の発明では、遠赤外線放射層の上面側に、樹脂を含有してなる表面保護層が積層されているから、遠赤外線放射シートの表面の傷付きを効果的に防止できる。
【0022】
[7]の発明(温浴装置)では、電熱マットの上に遠赤外線放射シートが配置されるので、電熱マットの発熱が効率良く遠赤外線放射シートに伝わる。この遠赤外線放射シートは、加温状態(例えば40度程度)ではより多くの遠赤外線を放出するので、本構成の温浴装置では、遠赤外線が多量に放出されるものとなる。この時、遠赤外線放射シートの上部は、屋根体で覆われているので、該屋根体と遠赤外線放射シートとの間に形成された内部空間(温浴空間)において遠赤外線による保温効果が十分に確保される(十分な温浴効果が得られる)。
【0023】
[8]の発明では、屋根体は金属層を含んでなる構成であるから、遠赤外線放射シートから放射された遠赤外線は、この金属層で反射されて内部空間に戻される(即ち屋根体を抜けて外部に漏れ出ることが防止される)ので、遠赤外線による温浴効果を十分に高めることができる利点がある。
【0024】
[9]の発明では、屋根体は、金属層と、電熱マットと、前項1〜6のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シートとを含んでなる構成であるから、遠赤外線による温浴効果をより十分に高めることができる。
【0025】
[10]の発明では、遠赤外線による温浴効果をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明に係る遠赤外線放射シート(1)の一実施形態を図1に示す。この図1において、(2)は基布層、(3)は遠赤外線放射層、(4)は裏面層、(5)は表面保護層である。
【0027】
本実施形態の遠赤外線放射シート(1)は、基布層(2)の上面に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層(3)が積層一体化されると共に、前記基布層(2)の下面に、樹脂を含有してなる裏面層(4)が積層一体化されてなり、さらに前記遠赤外線放射層(3)の上面に、樹脂を含有してなる表面保護層(5)が積層された構成である。
【0028】
前記遠赤外線放射層(3)におけるブラックシリカの含有率は4〜30質量%の範囲に設定される必要がある。4質量%未満では遠赤外線が十分に放出されないし、30質量%を超えると遠赤外線放射層(3)の強度が低下する結果、この遠赤外線放射シート(1)として十分な強度を確保することができない。中でも、前記遠赤外線放射層(3)におけるブラックシリカの含有率は10〜25質量%の範囲に設定されるのが好ましい。
【0029】
また、前記ブラックシリカの粒子径は2〜20μmであるのが好ましい。2μm以上であることで製造時の作業性を向上できると共に、20μm以下であることで遠赤外線放射層(3)の強度をより向上させることができる。中でも、前記ブラックシリカの粒子径は5〜10μmであるのが特に好ましい。
【0030】
なお、前記ブラックシリカ(黒鉛珪石)は、例えば北海道の上ノ国で産出されるものが有名であるが、特にこの産地に限定されるものではない。
【0031】
前記遠赤外線放射層(3)を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ゴム等が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用いるのが好ましく、この場合には遠赤外線放射シート(1)は柔軟性に富んだものとなるので、例えば保管時等に遠赤外線放射シート(1)を容易に巻くことができると共に良好状態に巻くことができる利点がある。
【0032】
前記基布層(2)は、遠赤外線放射シート(1)として十分な強度を確保するために必要である。即ち、前記遠赤外線放射層(3)単独では強度が不足する。また、基布層(2)を積層することによって、遠赤外線放射シート(1)として寸法安定性を向上させることができる。
【0033】
前記基布層(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば織物、編物、不織布、又はこれらの複合布等が挙げられる。また、前記基布層(2)の素材としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の合成繊維、木綿、麻等の天然繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の無機繊維などが挙げられる。また、これら繊維は、長繊維、短繊維、スリットヤーン等のいずれであっても良い。中でも、前記基布層(2)はポリエステル製織布からなる構成であるのが好ましく、この場合には遠赤外線放射シート(1)の強度をさらに向上させることができる。
【0034】
前記裏面層(4)は、樹脂を含有してなる層であり、このような裏面樹脂層を基布層(2)の下面に積層することで、この裏面層(4)の樹脂が前記基布層(2)内に侵入することで、遠赤外線放射シート(1)の耐久性をより向上させることができる。
【0035】
前記裏面層(4)を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ゴム等が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用いるのが好ましく、この場合には遠赤外線放射シート(1)は柔軟性により富んだものとなる。
【0036】
前記表面保護層(5)は、樹脂を含有してなる層であり、このような表面保護層(5)を遠赤外線放射層(3)の上面に積層することで、遠赤外線放射シート(1)の表面の傷付きを効果的に防止することができる。
【0037】
前記表面保護層(5)を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ゴム等が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用いるのが好ましく、この場合には遠赤外線放射シート(1)は柔軟性により富んだものとなる。
【0038】
また、前記遠赤外線放射シート(1)の全体厚さは0.5〜1.5mmの範囲であるのが好ましい。0.5mm以上であることでシート(1)の強度を十分に確保できると共に、1.5mm以下であることで、例えば遠赤外線放射シート(1)を用いて後述する温浴装置(10)を構成した場合において、電熱マット(20)からの熱がこの遠赤外線放射シート(1)に素早く伝わるので、この遠赤外線放射シート(1)からの遠赤外線の放射現象が素早く立ち上がる利点がある。中でも、前記遠赤外線放射シート(1)の全体厚さは0.7〜1.0mmの範囲であるのが特に好ましい。
【0039】
図2に、上記遠赤外線放射シート(1)を用いて構成された温浴装置(10)の一実施形態を示す。
【0040】
まず、床面上に電熱マット(20)が載置されている。この電熱マット(20)は、ヒータ線が配設されたカーペット本体(21)と、該カーペット本体(21)のコーナー部に固定された、電源ON・OFF操作、温度制御操作等のための制御操作ボックス(22)とを備えてなる。
【0041】
前記電熱マット(20)の上に前記遠赤外線放射シート(1)が配置されている。この遠赤外線放射シート(1)における前記制御操作ボックス(22)の対応領域には切欠部(11)が形成されており、この切欠部(11)を介して制御操作ボックス(22)が遠赤外線放射シート(1)より上方に突出するように配置されている(図2参照)。
【0042】
前記遠赤外線放射シート(1)の四辺の周縁から、金属層(例えばアルミニウム蒸着層)を含有した樹脂シートが立ち上げられて該遠赤外線放射シート(1)と連接状態に屋根体(31)が形成されている。即ち、この屋根体(31)と前記遠赤外線放射シート(1)との間に内部空間(温浴空間)(34)が形成されるように前記遠赤外線放射シート(1)の上に屋根体(31)が配置されている。本実施形態では、前記屋根体(31)は、略ドーム状に形成されているが、特にこのような形状に限定されるものではない。
【0043】
前記屋根体(31)の前面壁には、使用者の頭部を外に出すための開口窓(32)が形成されている。また、屋根体(31)の天面壁の幅方向の中央部には、その長さ方向に沿って、開閉自在に閉じ合わせ得るファスナー(33)が取り付けられている。このファスナー(33)は、前記前面壁の開口窓(32)に至る位置まで延設されている。
【0044】
しかして、使用者は、前記屋根体(31)のファスナー(33)を開けて胴体を前記温浴空間(34)内に配置せしめた後、ファスナー(33)を閉じると共に開口窓(32)から頭部を外に出した状態で寝る。
【0045】
前記電熱マット(20)が発熱すると、これが遠赤外線放射シート(1)に効率良く伝わり、遠赤外線放射シート(1)は加温される(例えば約40度)ことでより多くの遠赤外線を放出し、前記温浴空間(34)内にある使用者の胴体や手足等が遠赤外線効果によって暖められる。この時、屋根体(31)は金属層を含んでなる構成であるから、遠赤外線放射シート(1)から放射された遠赤外線は、この金属層で反射されて温浴空間(34)に戻されるので、遠赤外線による温浴効果を十分に高めることができる。
【0046】
前記遠赤外線放射シート(1)の全体厚さが0.5〜1.5mmである場合には、電熱マット(20)からの熱がこの遠赤外線放射シート(1)に素早く伝わり、これにより遠赤外線放射シート(1)からの遠赤外線の放射現象が素早く立ち上がるので、温浴装置(10)の稼働開始から早い段階で十分な遠赤外線の放射が実現され、十分な温浴効果を得ることができる。
【実施例】
【0047】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0048】
なお、原材料のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、酢酸ビニル含有率が20モル%、MFRが0.9g/10分、ショアA硬度91、軟化温度59℃、融点84℃であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を使用した。
【0049】
<実施例1>
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂80質量部及び粒径5〜10μmのブラックシリカ20質量部からなる樹脂組成物をカレンダー成形によって厚さ0.25mmにシート化して遠赤外線放射層(3)を形成せしめ、該シートが予熱を有している間に該シートに厚さ0.30mmのポリエステル製織布(平織り、繊維太さ830dtex)からなる基布層(2)を重ね合わせて一対の圧着ロール間で圧着した後、さらに該基布層(2)の非積層面にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる厚さ0.32mmの裏面層(4)を重ね合わせると共に前記遠赤外線放射層(3)の非積層面にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる厚さ0.10mmの表面保護層(5)を重ね合わせてこれらを一対の圧着ロール間で圧着することによって、厚さ0.85mmの遠赤外線放射シート(1)を得た(図1参照)。
【0050】
<実施例2>
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂90質量部及び粒径5〜10μmのブラックシリカ10質量部からなる樹脂組成物をカレンダー成形によって厚さ0.25mmにシート化して遠赤外線放射層(3)を形成せしめ、該シートが予熱を有している間に該シートに厚さ0.30mmのポリエステル製織布(平織り、繊維太さ830dtex)からなる基布層(2)を重ね合わせて一対の圧着ロール間で圧着した後、さらに該基布層(2)の非積層面にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる厚さ0.32mmの裏面層(4)を重ね合わせてこれらを一対の圧着ロール間で圧着することによって、厚さ0.75mmの遠赤外線放射シート(1)を得た。
【0051】
<比較例1>
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をカレンダー成形によって厚さ0.25mmにシート化して遠赤外線放射層(3)を形成せしめ、該シートが予熱を有している間に該シートに厚さ0.30mmのポリエステル製織布(平織り、繊維太さ830dtex)からなる基布層(2)を重ね合わせて一対の圧着ロール間で圧着した後、さらに該基布層(2)の非積層面にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる厚さ0.32mmの裏面層(4)を重ね合わせると共に前記遠赤外線放射層(3)の非積層面にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる厚さ0.10mmの表面保護層(5)を重ね合わせてこれらを一対の圧着ロール間で圧着することによって、厚さ0.85mmの遠赤外線放射シート(1)を得た。
【0052】
上記のようにして得られた各遠赤外線放射シートの遠赤外線放射特性を調べた。即ち、日本電子製遠赤外線分光放射計JIR−E500で測定した実施例1の遠赤外線放射シートの放射特性測定結果を図4に、実施例2の遠赤外線放射シートの放射特性測定結果を図5に、比較例1の遠赤外線放射シートの放射特性測定結果を図6にそれぞれ示した。なお、測定方式は、二点温度標準検量方式であり、測定温度は65℃とした。
【0053】
実施例1、2の遠赤外線放射シートでは、幅広い遠赤外線領域で十分な遠赤外線が放出されていた。これに対し、比較例1のシートでは、遠赤外線の放出量が落ち込む遠赤外線領域が存在した。
【0054】
<実施例3>
前述した図2に示す温浴装置(10)を製作した。なお、遠赤外線放射シート(1)として実施例1の遠赤外線放射シートを用い、屋根体(31)として、厚さ3mmのポリエチレン樹脂製シートからなる中間層の両面に、アルミニウム蒸着層を積層した厚さ2mmのポリエチレン発泡樹脂シート2枚を、それぞれアルミニウム蒸着層が外側になるように接着してなる総厚さ7mmの3層構造の樹脂シートを用いた。
【0055】
<比較例2>
前述した図2に示す温浴装置(10)を製作した。なお、遠赤外線放射シート(1)として比較例1の遠赤外線放射シートを用い、屋根体(31)として、厚さ3mmのポリエチレン樹脂製シートからなる中間層の両面に、アルミニウム蒸着層を積層した厚さ2mmのポリエチレン発泡樹脂シート2枚を、それぞれアルミニウム蒸着層が外側になるように接着してなる総厚さ7mmの3層構造の樹脂シートを用いた。
【0056】
<実施例4>
屋根体(31)として後述する構成のものを用いた以外は、実施例3と同様にして図3に示す温浴装置(10)を製作した。即ち、屋根体(31)として、外面にアルミニウム蒸着層(41)が積層された厚さ2mmのポリエチレン発泡樹脂シート(42)の内面に電熱マット(20)が接着により積層配置され、該電熱マット(20)の内面にさらに実施例1の遠赤外線放射シート(1)が接着により積層されてなる総厚さ7mmの積層体を用いた。
【0057】
上記のようにして得られた各温浴装置に実際に人が入って温浴を行った。実施例3の温浴装置では、温浴装置(10)の稼働開始(電熱マットの電源ON)から早い段階で汗が多量に出始め、十分な温浴効果を得ることができると共に、温浴装置を出た後も体の芯から温められた状態が長い時間持続した。また、実施例4の温浴装置では、温浴装置(10)の稼働開始(電熱マットの電源ON)から実施例3よりもさらに早い段階で汗が多量に出始め、短時間で十分な温浴効果を得ることができた。これに対し、比較例2の温浴装置では、温浴装置(10)の稼働開始(電熱マットの電源ON)から汗が出始めるまでに時間を要し、温浴装置を出た後、体が温められた状態は長く持続しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明に係る遠赤外線放射シートは、例えば、温浴装置の床シート、膝掛け等として用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明に係る遠赤外線放射シートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明に係る温浴装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】この発明に係る温浴装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図4】実施例1の遠赤外線放射シートの遠赤外線放射特性測定結果を示す測定グラフである。
【図5】実施例2の遠赤外線放射シートの遠赤外線放射特性測定結果を示す測定グラフである。
【図6】比較例1の遠赤外線放射シートの遠赤外線放射特性測定結果を示す測定グラフである。
【符号の説明】
【0060】
1…遠赤外線放射シート
2…基布層
3…遠赤外線放射層
4…裏面層
5…表面保護層
10…温浴装置
20…電熱マット
31…屋根体
41…アルミニウム蒸着層(金属層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布層の上面側に、樹脂及びブラックシリカを含有してなる遠赤外線放射層が積層一体化されると共に、前記基布層の下面側に、樹脂を含有してなる裏面層が積層一体化されてなり、
前記遠赤外線放射層におけるブラックシリカの含有率が4〜30質量%であることを特徴とする遠赤外線放射シート。
【請求項2】
前記遠赤外線放射層を構成する樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられ、前記裏面層を構成する樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が用いられている請求項1に記載の遠赤外線放射シート。
【請求項3】
遠赤外線放射シートの全体厚さが0.5〜1.5mmである請求項1または2に記載の遠赤外線放射シート。
【請求項4】
前記基布層は、ポリエステル製織布からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シート。
【請求項5】
前記ブラックシリカの粒子径が2〜20μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シート。
【請求項6】
前記遠赤外線放射層の上面側に、樹脂を含有してなる表面保護層が積層されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シート。
【請求項7】
電熱マットと、
前記電熱マットの上に配置される請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シートと、
前記遠赤外線放射シートとの間に内部空間を形成する態様で該遠赤外線放射シートの上に設置される屋根体と、
を備えることを特徴とする温浴装置。
【請求項8】
前記屋根体は、金属層を含んでなることを特徴とする請求項7に記載の温浴装置。
【請求項9】
前記屋根体は、金属層と、電熱マットと、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠赤外線放射シートとを含んでなることを特徴とする請求項7に記載の温浴装置。
【請求項10】
前記屋根体において、電熱マットは金属層より内側に配置され、遠赤外線放射シートは電熱マットより内側に配置されている請求項9に記載の温浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−28507(P2009−28507A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106933(P2008−106933)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【出願人】(000177014)三木理研工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】