説明

遠赤色光波長域用水銀ランプ

【課題】近赤色光波長域を含む可視光線波長域を遮光し、主に遠赤色光波長域を放射する事を特徴とした、水銀ランプを提供する。
【解決手段】可視光を遮光するガラス管の内壁に赤外蛍光体を有する事を特徴とする遠赤色光波長域用水銀ランプの製作。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤色光波長域を放射する水銀ランプを提供するものであり、特に植物育成に適した水銀ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の農学研究の進歩により、光りの波長と植物の成長部位の相関関係が解明されてきている。そして植物に影響を及ぼす波長域は約300nm〜800nmで、特に遠赤色光と呼ばれる光の波長域700nm〜800nmが植物育成に必要不可欠なものである事が明らかになってきている。
【0003】
植物の光りに対する反応は、光合成反応と光形態形成反応に分けられる。光合成は、光エネルギーを利用して有機物を合成する反応を指し、光形態形成は成長(種子発芽、光屈性など)、分化(花芽形成、葉の形成、色素量調整など)、運動(気孔開閉など)、生合成(カロチン、アントシアニンの生成など)の現象を指す。
【0004】
その事で植物育成に用いられる光源として、白色型蛍光灯や3波長形蛍光灯、メタルハライドランプ並びに高圧ナトリウムランプが多く使用されている。
【非特許文献1】照明学会誌 第91巻 第4号 184頁〜188頁 「植物生産システムにおける人工光利用」より
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の非特許文献1にある光源にも以下のような問題点があった。
(イ) 上記の非特許文献1には遠赤色光が多いと茎が伸長し花成が促進されるとあるが、表4にある光源において、白色型蛍光灯の場合は遠赤色光波長域700nm〜800nm付近(以下FRと表記)9%、3波長形蛍光灯の場合はFR9%、メタルハライドランプの場合はFR9%、高圧ナトリウムランプの場合はFR8%とあるように、一般的に植物育成に使用する光源では遠赤色光波長域FRの割合が少なかった。
(ロ) この事は植物育成の研究分野において、近紫外線波長域が多いと植物の茎の伸びを鈍らせ葉を厚くし、更に近赤色光波長域が多いと植物の茎や葉を縮小させ成長を妨げ、花成が促進されず開花も早まらない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の問題点を解決する為になされたものであり、その手段として可視光を遮光するガラス管の内壁に赤外蛍光体を有する遠赤色光波長域用水銀ランプとした事を特徴とするものである。更に波長域450nm以上680nm以下の光りを遮光し、波長域680nm以上880nm以下の光りを放射するものである。
【発明の効果】
【0007】
強い遠赤色光波長を放射する事で植物育成に適した光りが効率良く放射される。
【0008】
更に可視光線波長域並びに近赤色光波長域400nm〜700nmが上記構成とする事により、約450nm〜700nm付近の可視光線波長域並びに同波長域内に存在する600nm〜700nm付近の近赤色光波長域の放射を吸収させる事が出来、植物の成長を促進する事ができる。
【0009】
従って本発明の水銀ランプを使用する事で植物の茎が伸長し、葉の面積が拡大されて、更には花成が促進され開花が早まる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を第1図に基づいて説明する。
1は本発明の遠赤色光波長域用水銀ランプの断面図で、2は可視光を遮光するガラス管であり、紫外線を透過するが可視光を透過しないフィルターガラス管である。このガラス管2は従来製品としてある約340nm〜380nm付近を最大ピークに持つブラックライトと称される蛍光ランプに使用されているフィルターガラス管である。
3はガラス管2の内壁に形成された赤外蛍光体である。赤外蛍光体3とは、可視放射エネルギーに同時に起きる付帯的な赤外放射による発光の励起で起きるか、もしくはその励起に追従して起きる硫化物やセレン化物のような蛍光体であり、例えば酸化リチウム・酸化鉄・酸化アルミニウムを主成分とする通常の赤外蛍光体(日亜化学製 製品名NP−870)が用いられる。この赤外蛍光体を塗布・焼付け等の手段により、ガラス菅2の内壁に赤外蛍光体3を形成する。
赤外蛍光体3を形成した発光菅の両端に電極を封着し、その発光管内に水銀及び希ガスを封入し遠赤色光波長域用水銀ランプを形成する。
第2図は室温25℃・湿度50%の状態で本発明の遠赤色光波長域用水銀ランプに交流電圧100V(50Hz)・電流値360mAの電源で発光させ、その光源から50cm離した場所に測定器を配置させ、その発光体を測定した遠赤色光波長域用水銀ランプ発光スペクトル分布図である。
第2図に示すように本発明の遠赤色光波長域用水銀ランプでは、波長680nmから880nmの領域において強い光が放射される為、植物の育成に適している。
本発明の遠赤色光波長域用水銀ランプは、ランプ製造の点においても、通常市販されている蛍光ランプと同じ製造方法の為、様々な規格に準拠したランプが製造可能であり、使用環境や状況に適応した水銀ランプを供給できる。
また、汎用品である蛍光ランプ用照明器具をそのまま使用できる利点がある為、多種多様に設置対応が可能であり、コストの面でもかなり安価に抑える事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例の遠赤色光波長域用水銀ランプの断面図
【図2】本発明の遠赤色光波長域用水銀ランプ発光スペクトル分布図
【符号の説明】
【0012】
1 遠赤色光波長域用水銀ランプ
2 可視光を遮光するガラス管
3 赤外蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を遮光するガラス管の内壁に赤外蛍光体を有する事を特徴とする遠赤色光波長域用水銀ランプ。
【請求項2】
波長域450nm以上680nm以下の光りを遮光し、波長域680nm以上880nm以下の光りを放射する事を特徴とする請求項1記載の遠赤色光波長域用水銀ランプ。

【図1】
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【図2】
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