説明

遠隔把持道具用先端具

【課題】ヤットコのような遠隔把持道具でもしっかりと把持することができるようにする遠隔把持道具用先端具を提供すること。
【解決手段】遠隔位置に配設されている一対の回動本体部材の先端が接離して目的物を挟むように把持するヤットコの該回動本体部材の先端に取り付ける一対の取付部11と、該取付部により取り付けられて前記回動本体部材の回動動作に伴って接離することにより目的物を挟むように把持する一対の延長部31、41と、を備えており、一方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲する二股形状部32、33が形成されるとともに、他方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲して前記二股形状部間に挿脱される一本形状部42が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔把持道具用先端具に関し、詳しくは、既存の遠隔把持道具でも目的物を確実に把持できるようにするものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔位置の目的物を把持することのできるヤットコ(遠隔把持道具)が知られており、このヤットコを用いて、例えば、電柱に架設されている電線に防護管を被せたり、その電柱の上部に営巣されたカラスの巣を除去するなどの作業等が行われている。
【0003】
このようなヤットコとしては、例えば、図5に示すように、簡単に説明しておくと、目的物を把持する把持部110と、作業者が操作する操作部120と、この操作部120が手元側に配置されるとともに把持部110が離隔する先端位置に連結されて操作部120からの操作力を把持部110に伝達して動作させる支持伝達部130と、を備えている。このヤットコ100の把持部110は、支持伝達部130の支持棒131に配設された回動軸113を中心に回動自在に支持(連結)されている湾曲形状の回動部材(回動本体部材)111と、支持伝達部130の支持棒131に固設(連結)されて不動状態のまま回動部材111に対して相対回動する湾曲形状の回動部材(回動本体部材)112とを備えており、この回動部材111、112が互いに相対的に回動することにより、それぞれの先端部111a、112aが接離して、目的物を掴んだり離したりすることができる。
【0004】
このヤットコ100は、把持部110の回動部材111、112の先端部111a、112aで挟むことを基本動作としているために、他の機能を付与するために、各種先端具が提案されており、例えば、先細りの棒状部材を備える先端具を着脱自在にその先端部111a、112aに取り付けることによりその棒状部材同士を対面接触させる、所謂、ラジオペンチのようにして作業を行えるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−194822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような遠隔把持道具にあっては、把持部110の回動部材111、112が回動軸113を中心に相対回動して先端部111a、112aが接離することにより目的物を掴む構造であり、その回動部材111、112は先端部111a、112aから回動軸113側に向かうほど離隔する湾曲形状に形成されていることから、先端部111a、112aの回動軸113側は回動部材111、112が大きく離隔して空間が形成されている。
【0007】
このため、遠隔把持道具は、把持する目的物を小面積の先端部111a、112aの対向面間で挟んで把持するか、上記の特許文献1に記載のように棒状部材の先端具をその先端部111a、112aに取り付けるしかなく、目的物の表面が滑る材質である場合にはしっかりと掴むことができずにずれて落下させてしまうことがないように細心の注意が必要である。
【0008】
そこで、本発明は、ヤットコのような遠隔把持道具でもしっかりと把持することができるようにする遠隔把持道具用先端具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する遠隔把持道具用先端具の発明の一態様は、遠隔位置に配設されている一対の回動本体部材の先端が接離して目的物を挟むように把持する遠隔把持道具の該回動本体部材の先端に取り付ける一対の取付部と、該取付部により取り付けられて前記回動本体部材の回動動作に伴って接離することにより目的物を挟むように把持する一対の延長部と、を備えており、一方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲する二股形状部が形成されるとともに、他方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲して前記二股形状部間に挿脱される一本形状部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明の態様では、回動本体部材の先端部のそれぞれに取付部を取り付けることによって、その回動本体部材の先端部に、先端側が内側に屈曲する二股形状部と、先端側が内側に屈曲する一本形状部とを有する一対の延長部をセットすることができる。したがって、回動本体部材の先端部の延長方向では、内側に屈曲する一対の延長部の二股形状部と一本形状部の先端側が交差して、あるいは、中間部よりも接近した状態になって把持する目的物を掴むことができる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明の一態様によれば、それぞれの先端側が内側に屈曲して交差あるいは接近する二股形状部と一本形状部を備える一対の延長部で目的物を把持することができるので、把持する目的物が滑って離脱してしまうことなく、目的物を容易かつ確実に把持する状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る遠隔把持道具用先端具の第1実施形態の全体構成を示す図であり、(a)その正面図、(b)はその側面図である。
【図2】その先端具毎に示す図であり、(a)は一方の二股形状部の形状を示す平面図、(b)は他方の一本形状部の形状を示す平面図である。
【図3】その遠隔把持道具への取付構造を示す図であり、(a)はその外観を示す斜視図、(b)はその要部構成を示す縦断面図、(c)はその要部構成を示す一部拡大横断面図である。
【図4】その遠隔把持道具への取付状態を示す縦断面図である。
【図5】その遠隔把持道具の全体構成を示す平面図である。
【図6】本発明に係る遠隔把持道具用先端具の第2実施形態の全体構成を示す正面図である。
【図7】その他の態様を示す正面図である。
【図8】本発明に係る遠隔把持道具用先端具の第3実施形態の全体構成を示す正面図である。
【図9】その全体構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の態様としては、上記の課題解決手段のように、遠隔位置に配設されている一対の回動本体部材の先端が接離して目的物を挟むように把持する遠隔把持道具の該回動本体部材の先端に取り付ける一対の取付部と、該取付部により取り付けられて前記回動本体部材の回動動作に伴って接離することにより目的物を挟むように把持する一対の延長部と、を備えており、一方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲する二股形状部が形成されるとともに、他方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲して前記二股形状部間に挿脱される一本形状部が形成されていることを基本構成とするのに加えて、次の構成を備えてもよい。
【0014】
第1の他の態様としては、前記延長部は、前記取付部から前記回動本体部材の回動軸に対する離隔方向に延在して内側に屈曲する形状に形成されて前記二股形状部と前記一本形状部を備えていてもよい。
【0015】
この態様では、回動本体部材の先端部に取付部を取り付けることによって、その回動本体部材の先端側に延在して二股形状部と一本形状部を備える延長部をセットすることができ、その延長部の先端側が延在して把持面が長めに延長された後に内側に屈曲する二股形状部と一本形状部の間で目的物を離脱しないように把持することができる。
【0016】
第2の他の態様としては、前記延長部は、前記一本形状部の把持面が前記二股形状部の把持面間の延長面に一致する位置まで、あるいは、当該一致位置を越える位置まで回動する形状に形成されていてもよい。
【0017】
この態様では、把持面が一致する以上に相対回動させて延長部の二股形状部と一本形状部の間で挟むようにして目的物を把持することができ、細かったり、薄かったりする目的物でも所望の把持力で離脱しないように把持することができる。
【0018】
第3の他の態様としては、前記延長部は、前記二股形状部および前記一本形状部が湾曲内面を対向させて、把持位置まで回動したときに互いの先端部が交差するとともに前記取付部側の把持面同士が離隔して対向する湾曲形状に形成されていてもよい。
【0019】
この態様では、延長部の二股形状部と一本形状部が湾曲内面を把持面として目的物を最深部に位置するようにして安定した状態で把持することができるとともに、その二股形状部と一本形状部の先端部を交差または接近させる状態にして目的物を離脱させないように把持することができる。
【0020】
第4の他の態様としては、前記延長部は、前記二股形状部および前記一本形状部の前記先端部の反対側端部も把持位置まで回動したときに交差する湾曲形状に形成されていてもよい。
【0021】
この態様では、延長部の二股形状部と一本形状部の先端部と同様に、反対側端部も交差または接近させる状態にして、遠隔把持道具の回動本体部材の回動軸側に抜けてしまうことなく、目的物を把持することができる。
【0022】
この態様は、上記の第1の他の態様にも適用することができ、延長部の取付部側の端部も内側に屈曲する形状に形成して、遠隔把持道具の回動本体部材の回動軸側に抜けてしまうことなく目的物を把持できるようにしてもよい。
【0023】
第5の他の態様としては、前記延長部は、中間部に配設された回動軸を中心に相対的に回動して一端側先端が接離することにより目的物を挟むように把持する構造に構築されて、該一端側の反対側の他端側端部が前記取付部に回動自在に連結されており、当該延長部の一端側先端に前記二股形状部と前記一本形状部が形成されていてもよい。
【0024】
この態様では、回動本体部材の先端部に取付部を取り付けることによって、その回動本体部材の先端側に、同様に回動軸を中心に回動して先端を接離させて把持する一対の延長部をセットすることができ、その延長部の先端部に二股形状部と一本形状部を備えて目的物を離脱しないように把持することができる。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図6は本発明に係る遠隔把持道具用先端具の第1実施形態を示す図である。
【0026】
図1において、先端具10A、10Bは、図5に示すヤットコ(遠隔把持道具)100の把持部110に、電線などを把持して作業する際に取り付けて使用するものである。
【0027】
まず、ヤットコ100は、図5に示すように、各種の部品や材料などの目的物を掴む把持部110と、この把持部110の操作(力)を入力する操作部120と、これら把持部110および操作部120を離隔させる位置に支持棒131により連結するとともにその操作部120に入力された作業者による操作を伝達棒132により把持部110に伝達する支持伝達部130と、を備えており、このヤットコ100は、強度等が必要な金属製の把持部110以外の概略全体がプラスチックやゴム材料などの絶縁材料により作製されて絶縁性を確保されている。
【0028】
把持部110は、円弧形状に形成されて支持伝達部130の伝達棒132の一端側に連結されるとともに支持棒131側に配設された回動軸113を中心に回動自在に軸支されている回動部材(回動本体部材)111と、同様に円弧形状に形成されて支持伝達部130の支持棒131の一端側に固設された回動部材(回動本体部材)112と、により構成されている。この把持部110は、回動部材111、112が回動軸113を中心に相対的に回動して互いの先端部111a、112aを接離させることにより目的物を挟むようにして把持することができるように構築されている。
【0029】
操作部120は、支持伝達部130の支持棒131の他端側に取り付ける取付具121と、この取付具121に配設された回動軸121aに一端側が回動自在に軸支されているレバーハンドル122と、このレバーハンドル122と同軸となるように取付具121の回動軸121aに一端側が回動自在に軸支されているとともに他端側が回動軸123aを介して相対回動可能に支持伝達部130の伝達棒132に連結されている連結レバー123と、取付具121の回動軸121aに配設されてレバーハンドル122の回動を連結レバー123に伝達するとともに支持伝達部130の伝達棒132を図5の上方(回動部材111、112の先端部111a、112a同士を離隔させる方向)に押すように付勢する不図示のバネ材料と、により構成されている。
【0030】
これにより、ヤットコ100は、作業者が支持伝達部130の支持棒131を掴んで支持しつつ、操作部120のレバーハンドル122をその支持棒131に接近させる方向に回動させると、その支持伝達部130の伝達棒132が図5の下方に引かれて把持部110の可動な回動部材111が不動の回動部材112に接近する方向に向かって回動されることにより先端部111a、112a同士を接近させることができ、目的物を把持して掴むことができる。一方、このヤットコ100は、レバーハンドル122が放されて伝達棒132を介する操作力から解放されると、前記バネ材料の弾性力により伝達棒132が図5の上方に押されて可動な回動部材111が不動の回動部材112から離隔する方向に向かって回動されることにより先端部111a、112a同士を離隔させた自然状態に戻る。
【0031】
ここで、支持伝達部130の伝達棒132には、連結レバー123との連結部の近傍にスプリング133が介装されており、レバーハンドル122を回動させて伝達棒132を引いて回動部材111、112の先端部111a、112aを接近させて目的物を把持する際には、その操作力に応じてスプリング133が弾性伸長することにより信頼性高く目的物を把持して掴む状態を維持することができる。また、このヤットコ100は、把持部110側からの水分を滴下させる傘カバー134と、作業対象の電線などからの絶縁性を考慮して安全に作業を行い得る限界位置を示す傘カバー135とが支持伝達部130の支持棒131および伝達棒132に設けられている。
【0032】
そして、図1に戻って、先端具10A、10Bは、一対の取付部11と延長部31、41を備えることにより、ヤットコ100の把持部110の回動部材111、112の先端部111a、112a(以下、単にヤットコ100の先端部111a、112aなどと適宜短縮する)毎に取り付けて2つ一組で使用する道具であり、それぞれの取付部11がヤットコ100の先端部111a、112a毎に固定されて取付状態を維持することは共通である一方、この取付部11に連設されている延長部31、41がそれぞれヤットコ100の回動部材111、112と一体に連動することにより遠隔位置の目的物を挟み込むように協動して掴んで把持するようになっている。
【0033】
先端具10A、10Bの取付部11は、ヤットコ100の回動部材111、112の先端部111a、112aを覆う状態に差し込む箱型筐体12と、この箱型筐体12をその先端部111a、112aに着脱可能に固定して取り付け状態を維持する着脱部13と、により構成されている。
【0034】
箱型筐体12は、図3に示すように、ヤットコ100の先端部111a、112aを差し込んで内装状態にするように開口する差込口15が形成されているとともに、その差込口15の上面側(図3(a)の上方)にはその先端部111a、112aの両側面に形成されている不図示のリブを収装するスリット16が形成されており、そのスリット16の間に着脱部13が配設されている。ここで、図中では、差込口15が奥側ほど対面間隔を離隔させる形状に形成されているのは、取付部11を取り付けたときにはヤットコ100の先端部111a、112a同士を完全に接触させる状態にすることはできないためである。
【0035】
着脱部13は、箱型筐体12の上面に一体形成された円柱形状部17内に上下方向に貫通する貫通孔17aが穿孔されており、この貫通孔17a内に、箱型筐体12の内部に先端18aを突出させる係合ピン18と、この係合ピン18および円柱形状部17の貫通孔17a内面に両端部をそれぞれ固設されてその係合ピン18の先端18aを箱型筐体12内に突出させるように付勢するスプリング(付勢手段)19と、が収装されている。
【0036】
これにより、先端具10A、10Bの取付部11は、
着脱部13の係合ピン18の後端側の大径部18bを摘まんでスプリング19の弾性力に抗して引き上げることによって、ヤットコ100の先端部111a、112aを箱型筐体12の差込口15から差し込むことができ、図4に示すように、その係合ピン18の大径部18bを離したときにはその先端部111a、112aの外面に形成されている窪みPに係合ピン18の先端18aを進入(係合)させて箱型筐体12内から離脱してしまうことを制限して離脱不能に取り付けて固定することができる。
なお、このヤットコ100の先端部111a、112aは、先端具10A、10Bの箱型筐体12上面側に位置する係合ピン18の大径部18bを摘んで引き上げることにより取付部11から外すことができる。また、この先端具10A、10Bの着脱部13は、係合ピン18を引き上げることなく、スプリング19の弾性力に抗しつつ、ヤットコ100の先端部111a、112aを箱型筐体12の差込口15から差し込んでもよいことはいうまでもない。
【0037】
また、着脱部13は、係合ピン18の軸部側面に係止ピン18cが立設される一方、円柱形状部17の貫通孔17aには、その係止ピン18cを上下方向に移動可能に収装するスリット17bが形成されている。
【0038】
これにより、先端具10A、10Bの取付部11は、係合ピン18の大径部18bを摘まんでスリット17bから係止ピン18cが外れるほど引き上げた後に回転させることにより、その係止ピン18cを円柱形状部17の上面(スリット17bの脇)に係止させることができ、作業者が手を離しても箱型筐体12内にその先端18aが突出しない状態に保持することができる。この状態で、ヤットコ100の先端部111a、112aを取付部11の箱型筐体12の差込口15から容易に差し込むことができ、この後にその大径部18bを逆方向に回転させて係合ピン18の係止ピン18cをスリット17b内に進入させることによりその係合ピン18の先端18aをヤットコ100の先端部111a、112aの外面の窪みに係合させて先端具10A、10Bをセットすることができる。
【0039】
また、図1に戻って、先端具10A、10Bの延長部31、41は、図2にも図示するように、取付部11の箱型筐体12をヤットコ100の回動軸113から離隔する方向に延長されており、先端具10Aの延長部31は、取付部11の箱型筐体12の両側壁側を延長した二股形状部32、33を備える一方、先端具10Bの延長部41は、取付部11の箱型筐体12の中央をその二股形状部32、33の間の隙間程度の太さで延長した一本形状部42を備えるように形成されている。
【0040】
この延長部31、41の二股形状部32、33と一本形状部42は、取付部11の箱型筐体12の幅方向を3等分した太さに形成されており、その箱型筐体12の把持面側(先端部111a、112aに対する背面側)をヤットコ100の回動軸113から離隔する方向にそのまま延長した把持面32a、33a、42aを有するとともに、その先端部32b、33b、42bが内側に屈曲する形状に形成されて交差する形状に形成されている。すなわち、延長部31、41の二股形状部32、33と一本形状部42は、取付部11側の把持面32a、33a、42aが箱型筐体12の把持面側をそのまま延長していることから隣接方向への延長面が一致するとともに、その先端部32b、33b、42bがその延長面を超える位置まで回動して二股形状部32、33の先端部32b、33bの間に一本形状部42の先端部42bがヤットコ100の回動部材111、112の回動動作に伴って挿脱する。なお、ここでは、延長部31、41の二股形状部32、33と一本形状部42の把持面32a、33a、42aは、隣接方向の延長面を一致させているが、これに限るものではなく、例えば、断面円柱形状に形成して外面が相手側の延長面を超える形状に形成してもよいことはいうまでもない。
【0041】
これにより、先端具10A、10Bの延長部31、41は、ヤットコ100の先端部111a、112aの回動軸113から離隔する方向に延在することにより回動部材111、112の回動動作に伴って接離して二股形状部32、33と一本形状部42の間に目的物を挟むようにして把持することができ、この二股形状部32、33と一本形状部42の把持面32a、33a、42aは隣接方向への延長面が一致して隙間なく近接する状態になるので、電線のように細かったり、シートのように薄かったりする目的物でも所望の把持力で離脱しないように把持することができる。また、この延長部31、41は、ヤットコ100の先端部111a、112aが接近するのに伴って、挟み込む目的物が先端側に滑ったとしても、二股形状部32、33と一本形状部42の内側に屈曲する先端部32b、33b、42bが近接・交差する状態になってそれ以上滑って離脱してしまうことを制限して確実に把持する状態を維持することができる。
【0042】
このように本実施形態においては、ヤットコ100の先端部111a、112aに先端具10A、10Bを取付部11により取り付けてセットするだけで、延長部31、41の二股形状部32、33と一本形状部42の間で目的物を挟んで把持することができ、その目的物が先端側に向かって滑ろうとしてもその先端部32b、33b、42bで離脱することを制限して確実に把持する状態を維持することができる。
【0043】
次に、図6は本発明に係る遠隔把持道具用先端具の第2実施形態を示す図である。ここで、本実施形態は上述実施形態と略同様に構成されているので、同様の構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
【0044】
図6において、先端具10A、10Bは、上述実施形態における延長部31、41に代えて、一対の取付部11のそれぞれには延長部51、61が連設されており、この延長部51は、取付部11の箱型筐体12の両側壁側を延長した二股形状部52、53を備える一方、延長部61は、取付部11の箱型筐体12の中央をその二股形状部52、53の間の隙間程度の太さで延長した一本形状部62を備えるように形成されている。
【0045】
この延長部51、61の二股形状部52、53と一本形状部62は、取付部11の箱型筐体12の幅方向を3等分した太さに形成されており、その箱型筐体12の把持面側(先端部111a、112aに対する背面側)のヤットコ100の回動軸113から離隔する方向の延長面を中心にして互いに離隔した後に接近する方向に湾曲する把持面(湾曲内面)52a、53a、62aを有するとともに、その先端部52b、53b、62bが内側に向かって湾曲(屈曲)することにより交差する形状に形成されている。すなわち、延長部51、61の二股形状部52、53と一本形状部62は、ヤットコ100の先端部111a、112aを接近させても、取付部11側の把持面52a、53a、62aが湾曲内面を離隔する状態で対向させているとともに、その二股形状部52、53の先端部52b、53bの間に一本形状部62の先端部62bがそのヤットコ100の回動部材111、112の回動動作に伴って挿脱する。
【0046】
これにより、先端具10A、10Bの延長部51、61は、ヤットコ100の先端部111a、112aを回動軸113から離隔する方向に湾曲形状で延在することにより、回動部材111、112の回動動作に伴って接離して二股形状部52、53と一本形状部62の間で目的物を挟むようにしてその湾曲内面の中間部(最深部)に位置させるようにして安定状態で把持することができ、ヤットコ100の先端部111a、112aが接近するのに伴って、挟み込む目的物が先端側に滑ったとしても、二股形状部52、53と一本形状部62の内側に湾曲する先端部52b、53b、62bが近接・交差する状態になってそれ以上滑って離脱してしまうことを制限して確実に把持する状態を維持することができる。
【0047】
このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、延長部51、61の湾曲する二股形状部52、53と一本形状部62の中間部に位置するように目的物を挟んで把持することができ、その目的物が先端側に向かって滑ろうとすることなく、その先端部52b、53b、52bで離脱することを制限する状態を確保しつつ目的物を安定した状態で確実に把持することができる。
【0048】
ここで、本実施形態の他の態様としては、図7に示すように、先端具10A、10Bの延長部51、61には、二股形状部52、53と一本形状部62の取付部11側となる先端部52b、53b、62bの反対側端部も、その先端部52b、53b、62bと同様に、内側に向かって湾曲して突出する交差部52c、53c、62cを形成してよい。この場合には、二股形状部52、53の交差部52c、53cが交差部62cを超えて一本形状部62自体の根元を間に内装する状態なるとともに、一本形状部62の交差部62cが交差部52c、53cの間を越えて二股形状部52、53の根元の間に進入する状態になる。このため、ヤットコ100の先端部111a、112aが接近するのに伴って、挟み込む目的物が回動軸113側に滑ったとしても、二股形状部52、53と一本形状部62の内側に湾曲突出する交差部52c、53c、62cが近接・交差する状態になってそれ以上滑って回動軸113側に離脱してしまうことをより確実に制限して把持する状態を維持することができる。
【0049】
この交差部52c、53c、62cは、本実施形態だけでなく、上述第1実施形態に適用して形成してもよく、また、二股形状部52、53と一本形状部62の双方だけでなく、いずれか一方のみに設けてもよいことはいうまでもない。
【0050】
次に、図8および図9は本発明に係る遠隔把持道具用先端具の第3実施形態を示す図である。
【0051】
図8において、先端具70は、上述実施形態における延長部31、41、51、61に代えて、一対の取付部11のそれぞれには延長部81、91の基端部が回動軸71を介して回動自在に連設されており、この延長部81、91は、図9に示すように、延長部81が取付部11の箱型筐体12の両側壁側を延長した二股形状部82、83を備える一方、延長部91は、取付部11の箱型筐体12の中央をその二股形状部82、83の間の隙間程度の太さで延長した一本形状部92を備えるように形成されて、所謂、ラジオペンチなどと同様に、先端側に近接する中間部に配設されている回動軸72により相対回動自在に連結されている。
【0052】
この延長部81、91の二股形状部82、83と一本形状部92は、先端具70としての回動軸72までは直線的に回動軸71から延在した後に、その回動軸72よりも先端側が内側に湾曲して把持面(湾曲内面)82a、83a、92aが形成されており、その先端部82b、83b、92bがヤットコ100の先端部111a、112aの接近時には交差する形状に形成されている。すなわち、延長部81、91の二股形状部82、83と一本形状部92でも、ヤットコ100の先端部111a、112aを接近させても、回動軸72側(取付部11側)の把持面82a、83a、92aが湾曲内面を離隔対向させているとともに、その二股形状部82、83の先端部82b、83bの間に一本形状部92の先端部92bがそのヤットコ100の回動部材111、112の回動動作に伴って挿脱する。ここで、本実施形態では、延長部81、91の全体を二股形状部82、83と一本形状部92に形成する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、例えば、回動軸72の先端側のみを二股形状部と一本形状部に形成してもよいことはいうまでもない。
【0053】
これにより、先端具70の延長部81、91は、回動部材111、112の回動動作に伴って、二股形状部82、83と一本形状部92の回動軸72の先端側の間で目的物を挟むようにしてその湾曲内面の中間部(最深部)に位置するように安定する状態で把持することができ、ヤットコ100の先端部111a、112aが接近するのに伴って、挟み込む目的物が先端側に滑ったとしても、二股形状部82、83と一本形状部92の内側に湾曲する先端部82b、83b、92bが近接・交差する状態になってそれ以上滑って離脱してしまうことを制限して確実に把持する状態を維持することができる。
【0054】
このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、延長部81、91を組み立てた先端具70として取り扱うことができ、バラバラになってしまうことなく、容易に管理して利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10A、10B、70……先端具 11……取付部 31、41、51、61、81、91……延長部 32、33、52、53、82、83……二股形状部 32a、33a、42a、52a、53a、62a、82a、83a、92a……把持面 32b、33b、42b、52b、53b、62b、82b、83b、92b……先端部 42、62、92……一本形状部 52c、53c、62c……交差部 71、72……回動軸 100……ヤットコ 110……把持部 111、112……回動部材 111a、112a……先端部 113……回動軸 120……操作部 130……支持伝達部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔位置に配設されている一対の回動本体部材の先端が接離して目的物を挟むように把持する遠隔把持道具の該回動本体部材の先端に取り付ける一対の取付部と、該取付部により取り付けられて前記回動本体部材の回動動作に伴って接離することにより目的物を挟むように把持する一対の延長部と、を備えており、
一方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲する二股形状部が形成されるとともに、
他方の前記延長部は、先端側が内側に屈曲して前記二股形状部間に挿脱される一本形状部が形成されていることを特徴とする遠隔把持道具用先端具。
【請求項2】
前記延長部は、前記取付部から前記回動本体部材の回動軸に対する離隔方向に延在して内側に屈曲する形状に形成されて前記二股形状部と前記一本形状部を備えることを特徴とする請求項1に記載の遠隔把持道具用先端具。
【請求項3】
前記延長部は、前記一本形状部の把持面が前記二股形状部の把持面間の延長面に一致する位置まで、あるいは、当該一致位置を越える位置まで回動する形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠隔把持道具用先端具。
【請求項4】
前記延長部は、前記二股形状部および前記一本形状部が湾曲内面を対向させて、把持位置まで回動したときに互いの先端部が交差するとともに前記取付部側の把持面同士が離隔して対向する湾曲形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠隔把持道具用先端具。
【請求項5】
前記延長部は、前記二股形状部および前記一本形状部の前記先端部の反対側端部も把持位置まで回動したときに交差する湾曲形状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の遠隔把持道具用先端具。
【請求項6】
前記延長部は、中間部に配設された回動軸を中心に相対的に回動して一端側先端が接離することにより目的物を挟むように把持する構造に構築されて、該一端側の反対側の他端側端部が前記取付部に回動自在に連結されており、
当該延長部の一端側先端に前記二股形状部と前記一本形状部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の遠隔把持道具用先端具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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