説明

遠隔電気刺激装置

【課題】
電気刺激装置から離れた場所にいる患者に効果的に電気刺激をおこなえるようにする。
【解決手段】
電気刺激装置と、電気刺激装置から離れた場所にいる患者の近くに置いた遠隔スタンドを、電気的に接続し、
電気刺激装置が出力する電気刺激信号の波形や周波数に関するパラメータを入力する入力部の一部又は前部を前記遠隔スタンドにも設け、遠隔スタンドの入力部を操作して、電気刺激装置の出力を制御するようにした。
また、遠隔スタンドにヒータを設け、電気刺激装置から電力を供給し、ヒータ上に保存した電極を加温するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激装置に遠隔スタンドを接続して電気刺激装置から離れた場所にいる患者の近くに置き、遠隔スタンドの操作部を操作して、患者に最適な刺激条件と刺激強度に設定して治療を行うことができるようにした電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気刺激装置は、図2のように、生体を電気刺激する電気刺激信号を発生する電気刺激信号発生部21と、発生した電気刺激信号を患者に適した値に増幅する増幅部24と、増幅部24の出力を生体に供給する電極26と、装置を制御する制御部28と、発生させる電気刺激信号の波形や周波数、治療時間等の刺激条件を設定する入力部Aと、現在の出力や治療時間や出力、各種設定値などを表示する表示器2A等を有する。Bは装置の出力に関する部分で、出力部と称する。
図2は、以上のような出力系統を2系統有する干渉低周波治療器の例である。
【0003】
干渉低周波治療器は、周波数が僅かに異なる複数の電流(搬送波)を同時に生体に流し、生体内で発生する干渉低周波で刺激をおこなうものである。
搬送波の周波数fには数kHz(通常は4000Hz前後)、のものが使用されている。この周波数は従来の一般的な低周波治療器よりも1桁程度、高いため、皮膚インピーダンスは1/10程度になり、電気刺激感覚は殆どない。このため、従来よりも大きなエネルギーを供給できる。しかし、4000Hz程度の電流単独では筋収縮を得ることはできない。
そこで、周波数が僅かに異なる2つの搬送波を用い、生体内で発生する干渉低周波により、筋収縮を得るようにしている。数〜数十Hzの電流は効果的に筋収縮を得ることができる。
このようにして、干渉低周波治療器では、高い周波数の搬送波を用いることで不快な電気刺激感が無く、従来よりも大きな電気エネルギーを供給することができるようにし、しかも、2つの搬送波を干渉させて発生する干渉低周波で効果的に筋収縮を得ることができるようにしている。
【0004】
以上の説明では、周波数が僅かに異なる2つの搬送波を同時に生体に供給し、生体内で干渉低周波を発生させる干渉低周波治療器について述べたが、搬送波の位相を制御することでも、これと同様の干渉低周波を発生させることができる(例えば特許文献1など)。
【0005】
以上を図2で説明する。
装置は、搬送波発生部21、干渉波発生部22、位相器23、増幅器24と25、制御部28、電極26と27、入力部A、表示器2Aなどから構成される。29は電極に吸着式電極を用いるときに電極を吸着させるための印圧を発生させるポンプ、2Aは装置の出力や入力などの各種情報を表示する表示器である。
入力部Aの搬送波設定器を操作して、搬送波発生部21から周波数fの搬送波を発生し、増幅器24で所望の値に増幅して電極26を介して、生体に供給される。このとき、入力部Aの出力調節器を操作して増幅器24を制御し、搬送波を所望の値に増幅する。
入力部Aの干渉波設定器を操作して、生体で発生させる干渉低周波の周波数や波形を入力すると、干渉波発生部22で干渉波を発生させるための信号が作成される。
搬送波発生部21で発生させた搬送波は位相器22に入力し、干渉波発生部22の信号によって位相器23を制御して、搬送波の位相を所定の量だけ位相制御し、これを増幅器25で増幅して、電極27を介して、生体に供給される。このとき、入力部Aの出力調節器を操作して増幅器25を制御し、位相制御した搬送波を所望の値に増幅する。
この搬送波と、位相制御した搬送波を、同時に生体に供給すると、位相を制御する周期(周波数)を周期(周波数)とする干渉低周波が生体内で発生する。この干渉低周波の振幅変化で筋肉を収縮させる。
【0006】
従来の電気刺激装置は、通常は4〜8チャンネルの出力を有し、電極には1m程度のコードを設け、装置の近くにいる患者を治療していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】公告特許昭和53-30270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
4〜8チャンネルの出力を有すると、ベッドを並べて、同時に4〜8人の患者を治療することができる。
しかし、電極コードが短いため、患者が装置から少し離れると、電極が届かず、治療ができないため、装置に使用しない空きのチャンネルが存在することになり、効率が悪いという問題があった。
これを解決するために、電極コードを長くして、出力調節器を患者の近くに置き、出力だけは調節できるものもあったが、電気刺激条件を変更するには装置の前に行き、操作部を操作する必要があり、手間がかかっていた。
また、装置本体には電極を保温する機能を有するものもあったが、電極コードを延長して離れた場所に設置しておくと、電極を保温することができず、冬には電極を装着すると冷たくて患者に悪影響を与えることもあった。
本発明はこのような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで請求項1記載の発明では、
生体を電気刺激する電気刺激信号を発生する電気刺激装置と、
前記電気刺激装置から離れた場所の患者に前記電気刺激装置の電気刺激信号を供給する電極と、
前記電気刺激装置から離れた場所の患者の近くに置き、前記電気刺激装置の出力を制御する出力調節器を有する遠隔スタンドと、
を有する遠隔電気刺激装置において、
電気刺激をおこなわないときに前記電極を保存する電極保存部を設け、
前記電気刺激装置から電力を供給し、前記電極保存部に保存している電極を加温するヒータを設けた。
電極を使用しないときは、遠隔スタンドのヒータ部に電極を収納し、常に保温しておき、冬でも不快な冷感を覚えることが無いようにした。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の遠隔電気刺激装置において、
前記電気刺激装置が出力する電気刺激信号の波形や周波数に関するパラメータを入力する入力部の一部又は全部を、前記遠隔スタンドにも設けた。
これにより、装置から離れた場所で治療をおこなう場合、患者の様子を見ながら、最適な刺激条件を設定できるため、より効果的で、効率の良い治療をおこなうことができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、請求項1又は請求項2記載の遠隔電気刺激装置において、
前記遠隔スタンドで、干渉低周波治療器の2つ以上の各々の電流の周波数と、前記干渉低周波の周波数、前記2つ以上の各々の電流の強さのバランスを調節することができるようにした。
干渉低周波治療器では、搬送波の設定、治療周波数(干渉低周波の周波数)、2つの電流バランスなど、他の電気刺激装置よりも複雑な調節を要する。このため、患者の近くで、患者の様子を見ながら、患者に適した刺激条件で刺激をおこなえるため、より効果的で、より効率的な治療が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明により、遠隔スタンドに電極保存部を設け、電極保存部にはヒータを設け、電極を使用しないときは遠隔スタンドのヒータ部に電極を収納して常に適切な温度に保温する。
このため、冬でも不快な冷感を覚えることが無いようにした。
【0013】
請求項2記載の発明により、電気刺激装置が出力する電気刺激信号の波形や周波数に関するパラメータを入力する入力部の一部又は全部を、前記遠隔スタンドにも設けた。
このため、装置から離れた場所で治療をおこなう場合、その場で、患者の様子を見ながら、最適な刺激条件を設定できるため、より効果的で、効率の良い治療をおこなうことができる。
【0014】
請求項3記載の発明により、干渉低周波治療器では、搬送波の設定、治療周波数(干渉低周波の周波数)、2つの電流バランスなど、他の電気刺激装置よりも複雑な調節を要する。このため、患者の近くで、患者の様子を見ながら、患者に適した刺激条件で刺激をおこなえるため、より効果的で、より効率的な治療が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、実施例により、本発明を説明する。
【実施例】
【0016】
本発明の実施例を図1に示す。図のCは電気刺激装置で、Dは遠隔スタンド、Eは表示器、Fはヒータ、Gは電極、Hは接続コード、Iは電極コード、Jは操作部である。
遠隔スタンドには、請求項1の発明により、ヒータFを設けている。
また、請求項2の発明により、操作部Jを設けている。
電気刺激装置Cは、図2のような、刺激信号発生部と、増幅部、電極、入力部、表示器などを有し、入力部で入力されたデータに元づいて、電気刺激信号を発生し、操作部の出力調節器の操作量に応じた値に増幅器で増幅し、電極を介して生体に供給して、生体を刺激する。
【0017】
請求項1の発明により、電気刺激装置で干渉低周波を発生させる電気刺激信号を発生し、干渉低周波を制御するための操作部Jを、遠隔スタンドに設けている。
表示器Eには、電気刺激装置Cの制御部から、図2の制御部28から表示器2Aに送る信号と同様の信号を、接続コードHを介して送り、出力の大きさや治療時間などを表示する。表示器Eの電源は接続コードHを介して供給される。
ヒータFは、使用する電極Gを載置できる大きさで、電極Gを適温に加温する。ヒータFの電源は接続コードHを介して供給される。
【0018】
電極Gは、電気刺激装置Cの出力部(増幅部の出力)と接続され、電気刺激装置Cで生成した電気刺激信号を生体に供給し、生体を刺激する。電極Gは、電極コードIを長くして、直接電気刺激装置Cの出力部と接続してもよく、遠隔スタンドDを中継して接続してもよい。
接続コードHは、以上に述べたように、表示器Eの表示信号と電源、ヒータFの電源、制御部Jの制御情報と電源の各ラインをまとめて記載したものである。
電極コードIは、電極に刺激信号を供給するコードで、前述のように、患者の位置から電気刺激装置Cの出力部まで長くしたものでも良いし、遠隔スタンドDを中継しても良い。
操作部Jは、図2のAのような、電気刺激信号の波形、周波数、治療時間等の刺激条件を設定するための操作キー等を有し、これを操作すると、電気刺激装置Cから離れた患者の近くで、電気刺激条件を細かに設定、調節することができる。
【0019】
最近、電極を電極カバーで覆い、電極カバーの開口部を生体に接触させ、電極カバー内を陰圧にして電極を生体に吸着させる吸着式の電極も使用されているが、この場合は操作部Jに吸着圧を調節する圧力調節器を設けると、より快適な刺激をおこなうことができる。吸着圧が強すぎると不快感があるし、弱すぎると電極が脱落し、治療に支障をきたし、その対応に手間を取られるためである。吸着導子を使用する場合、電極コードIにポンプと空気接続する空気回路を設けている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の構成例である。
【図2】干渉低周波治療器の構成例である。
【符号の説明】
【0021】
C:電気刺激装置 D:遠隔スタンド
E:表示器 F:ヒータ
G:電極 H:接続コード
I:電極コード J:操作部
21:搬送波発生部 22:干渉波発生部
23:位相器 24、25:増幅器
26、27:電極 28:制御部
29:ポンプ 2A:表示器
A:入力部 B:出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を電気刺激する電気刺激信号を発生する電気刺激装置と、
前記電気刺激装置から離れた場所の患者に前記電気刺激装置の電気刺激信号を供給する電極と、
前記電気刺激装置から離れた場所の患者の近くに置き、前記電気刺激装置の出力を制御する出力調節器を有する遠隔スタンドと、
を有する遠隔電気刺激装置において、
電気刺激をおこなわないときに前記電極を保存する電極保存部を設け、
前記電気刺激装置から電力を供給し、前記電極保存部に保存している電極を加温するヒータを設けたことを特徴とする、遠隔電気刺激装置。
【請求項2】
前記電気刺激装置が出力する電気刺激信号の波形や周波数に関するパラメータを入力する入力部の一部又は全部を前記遠隔スタンドにも設けたことを特徴とする、請求項1記載の遠隔電気刺激装置。
【請求項3】
前記電気刺激装置は2つ以上の電流を生体に供給して生体で発生する干渉低周波で生体を刺激する干渉低周波治療器であり、前記遠隔スタンドで、前記2つ以上の各々の電流の周波数と、前記干渉低周波の周波数、前記2つ以上の各々の電流の強さのバランスを調節することができるようにしたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の遠隔電気刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−245014(P2011−245014A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120722(P2010−120722)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000114190)ミナト医科学株式会社 (31)
【Fターム(参考)】