説明

遮水シートの漏水検知システム

【課題】 単層の遮水シートであってもその漏水を検知し得るシステムを提供する。
【解決手段】 土質遮水層1の表面上に通水性を有する不織布等からなる保護シート2を積層してその上に遮水シート3を敷設し、土質遮水層の表層部に集水溝8を設け、集水溝内には漏水検知ピットに接続される集水管9を敷設することにより、遮水シートの損傷により漏出した漏水を保護シートを通して集水溝に流入せしめ、集水管により集水して漏水検知ピットに導く。施設全体を複数のブロックに区画して各ブロックで生じた漏水を独立に漏水検知ピットに導く。集水溝内に砕石等の充填材11を土質遮水層の表面よりも盛り上げた状態で充填してその上に保護シート2を敷設することにより、ブロック間の区画を集水溝の位置に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場等の施設に敷設された遮水シートの漏水検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の漏水検知システムとしては、たとえば特許文献1に示されるもののように遮水シートを二重に敷設しておき、上層側の遮水シートが破れた場合にはそれにより生じた漏水を下層側の遮水シートで受けてそれを集水することで漏水の有無を検知するというものが一般的である。
【特許文献1】特開平6−322732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のシステムは遮水シートを二重に敷設することが前提であり、したがって遮水シートが単層の場合には当然に適用できないものであった。また、漏水が生じた位置を検知するためには施設全体を一定面積ごとにブロック化しておいて各ブロックからの漏水を独立に集水する必要があるが、特許文献1に示されるシステムではそのようなブロック化を二重の遮水シートの間に粘着シートを挟み込むことで行うものであることから、各ブロックを明確に区画できない場合も想定され、信頼性の点でも必ずしも十分ではない。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は遮水シートが単層であっても漏水を検知し得る有効適切な検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、廃棄物処分場等の施設に敷設される遮水シートの漏水検知システムであって、土質遮水層の表面上に通水性を有する不織布等からなる保護シートを積層して、その保護シート上に遮水シートを敷設するとともに、土質遮水層の表層部には集水溝を設け、集水溝内には、遮水シートの損傷により漏出して保護シートを通って集水溝に流入した漏水を集水して漏水検知ピットに導く集水管を敷設してなることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の漏水検知システムにおいて、施設全体を複数のブロックに区画して各ブロックのそれぞれに集水溝および集水管を独立に設けるとともに、各ブロックの集水管と漏水検知ピットとをそれぞれ導水管により接続し、各ブロックで生じた漏水をブロックごとに集水溝により集水して集水管および導水管を通して漏水検知ピットに導く構成としたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の漏水検知システムにおいて、集水溝内に砕石等の充填材を土質遮水層の表面よりも盛り上げた状態で充填して、その充填材上に保護シートを敷設することにより、ブロック間の区画を集水溝の位置に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、遮水シートの下層に通水性を有する保護シートを介して土質遮水層を設け、土質遮水層の表層部に漏水を集水するための集水溝を設けて、その内部に漏水を集水して漏水検知ピットに導く集水管を敷設したので、従来のように遮水シートを二重に敷設する必要はなく、単層の遮水シートであっても漏水を有効に検知することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、施設全体を複数のブロックに区画して各ブロックからの漏水を漏水検知ピットまで独立に導くことにより漏水発生ブロックを確実に特定することが可能である。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、集水溝内に充填する充填材をわずかに盛り上げてその上に保護シートを敷設することにより、集水溝自体が各ブロック間の区画を確実に形成するものとなり、したがって区画を形成するための面倒な手間や格別のコストを必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態を図1〜図6を参照して説明する。図1は本実施形態の漏水検知システムを採用した廃棄物最終処分場の平面形態を概略的に示すものである。この施設は山間部のほぼ平坦な緩斜面を利用して設けられたもので、その地形は全体的に図1において左方から右方に向かって緩やかな下り勾配となっているものである。
【0012】
この施設においては遮水シートを主体とする遮水層が全面的に設けられて優れた遮水性能が確保されているものであり、その遮水層は図3に示すように土質遮水層1の表面に保護シート2を介して遮水シート3が敷設された構造とされている。
【0013】
土質遮水層1は、現地土あるいは客土としての火山灰質粘性土を母材としてそれに生石灰を添加混合することで混合土を調製し、それを遮水材として撒出して転圧することで形成される不透水土層からなるものである。母材としての火山灰質粘性土は、適量の生石灰を添加して混合することで十分な強度と遮水性能が発現して遮水材として有効に利用できるものである。この土質遮水層1の層厚は適宜であるが50〜60cmとすることが好ましく、さらにその下層にバックアップ層として粘性土層を40cm程度の厚さで形成することがより好ましい。
【0014】
遮水シート3はたとえば厚さ1.5mmの熱可塑製ゴムシートからなるもので、遮水シート3どうしの継目は隙間無く完全に熱融着されている。保護シート2はたとえば厚さ10〜20mm程度の不織布シートからなるもので、鋭利物による遮水シート3の損傷を防止できるものであり、かつ後述するように漏水検知のために十分な通水性を有するものである。なお、遮水シート3の上面にも同様の保護シート4が積層されており、その保護シート4としては遮水シート3の紫外線による劣化を防止するべく遮光性を有するものとされている。なお、上記構造の遮水層の上層にはさらに50cm程度の厚さの保護土層5が形成されている。
【0015】
本実施形態の漏水検知システムは、上記構造の遮水層における遮水シート3の損傷による漏水を検知するべく、図1に示すように施設全体を複数のブロック(図示例ではAブロック〜Jブロックの全10ブロック)に区画しておき、各ブロックにおける遮水シート3が万一損傷を受けて漏水が生じた場合には、その漏水をブロックごとに独立に集水して漏水検知ピット6に導くことにより、漏水検知ピット6を監視することで漏水の有無を検知しその発生ブロックを特定するように構成されている。
【0016】
すなわち、図1に示すようにこの施設全体のほぼ中心位置を縦断するように複数系統(図示例ではA〜Dブロックを対象とする系統と、E〜Gブロックを対象とする系統と、H〜J系統を対象とする系統の計3系統)の主集水溝7が設けられているとともに、各ブロック内の最下流側にはそれぞれ集水溝8が設けられていて、各集水溝8はそれぞれ主集水溝7に接続されている。そして、図2〜図5に示すようにそれら集水溝8および主集水溝7内には、各ブロックからの漏水を独立に漏水検知ピット6に導くための集水管9と導水管10とが敷設されている。
【0017】
図3に示すように、各ブロックに設けられている集水溝8は土質遮水層1の表層部がたとえば幅10cm程度、深さ5cm程度に掘削されることで形成され、その内部には25φ程度の有孔管からなる集水管9が敷設されているとともに、砕石や礫材等の充填材11が充填されたものである。したがって、各ブロック内において遮水シート3が何らかの原因により万一損傷を受けてその損傷部から保護シート2への漏水が生じた際には、図示しているように損傷部からの漏水が保護シート2内を下流側に向かって流れて集水溝8に流入し、集水管9により集水されるようになっている。なお、集水溝8に充填されている充填材11は土質遮水層1の表面よりやや盛り上げられており、それにより充填材11上においては保護シート2は上方に若干湾曲した状態で敷設されており、したがってこの集水溝8自体がブロック間の区画を形成して隣接ブロックからこの集水溝8への流入が確実に阻止されるものとなっている。
【0018】
各ブロック内の集水溝8内に敷設された集水管9には図2に示すように継手12を介して導水管10が接続され、その導水管10は下流側の主集水管7内に敷設されて漏水検知ピット6まで独立に配管されている。したがって、各ブロック内において生じた漏水は、それぞれのブロック内の集水溝8に流入して集水管9により集水され、それに接続されている導水管10を通って漏水検知ピット6まで独立に導かれることになる。
【0019】
なお、主集水溝7はそれが設けられているブロック内の漏水を集水する機能も有するものとされ、そのため図2および図4に示すように主集水溝7はブロック間の境界位置でコンクリート等の区画材13により水密裡に区画されており、図2および図5に示すように主集水溝7内にはこの主集水溝7が設置されているブロックからの漏水を集水するための集水管9と、他のブロックからの導水管10とが区画材13を貫通して併設されたものとなっている。
【0020】
漏水検知ピット6は、図6に示すようにコンクリート製の集水桝であって、その側面には各ブロックからの導水管10が独立に接続されており、各導水管10からの流入水の有無を目視監視することで漏水発生の有無と漏水が発生したブロックを直ちに特定することができるものである。なお、漏水検知ピット6に各導水管10からの流入水の有無を自動的かつ機械的に検知するための各種のセンサを設ければ、漏水を常時連続的に監視することも可能である。
【0021】
本実施形態のシステムによれば、遮水シート3の下層に保護シート2を介して土質遮水層1を設け、その土質遮水層1の表層部に集水溝8を設けてその内部に集水管9を敷設したので、従来のように遮水シート3を二重に敷設する必要はなく、単層の遮水シート3であってもその漏水を有効に検知できるものである。特に、施設全体を複数のブロックに区画して各ブロックからの漏水を漏水検知ピット6まで独立に導くようにしたので漏水発生ブロックを特定することが可能である。しかも、集水溝8内に充填する充填材11をわずかに盛り上げておくことのみで各ブロック間の区画を容易にかつ確実に形成することができる。
【0022】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明を適用する施設の用途や規模、形態に応じて、たとえば漏水を検知するためのブロックの割り付けや区画数、集水溝8の構造、土質遮水層1の構造、遮水シート3や保護シート2の素材、その他細部の具体的な構成については、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な設計的変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の漏水検知システムの実施形態を示すもので、本漏水検知システムを適用した施設の平面形態を概略的に示す図である。
【図2】同、集水溝と主集水溝との接続部(図1におけるII部)を示す図である。
【図3】同、集水溝の断面図(図2におけるIII−III線視図)および集水管を示す図である。
【図4】同、主集水溝の断面図(図2におけるIV−IV線視図)である。
【図5】同、主集水溝の断面図(図2におけるV−V線視図)である。
【図6】同、漏水検知ピットを示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 土質遮水層
2 保護シート
3 遮水シート
4 保護シート
5 保護土層
6 漏水検知ピット
7 主集水溝
8 集水溝
9 集水管
10 導水管
11 充填材
12 継手
13 区画材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処分場等の施設に敷設される遮水シートの漏水検知システムであって、
土質遮水層の表面上に通水性を有する不織布等からなる保護シートを積層して、その保護シート上に遮水シートを敷設するとともに、土質遮水層の表層部には集水溝を設け、
集水溝内には、遮水シートの損傷により漏出して保護シートを通って集水溝に流入した漏水を集水して漏水検知ピットに導く集水管を敷設してなることを特徴とする遮水シートの漏水検知システム。
【請求項2】
施設全体を複数のブロックに区画して各ブロックのそれぞれに集水溝および集水管を独立に設けるとともに、各ブロックの集水管と漏水検知ピットとをそれぞれ導水管により接続し、各ブロックで生じた漏水をブロックごとに集水溝により集水して集水管および導水管を通して漏水検知ピットに導く構成としたことを特徴とする請求項1記載の遮水シートの漏水検知システム。
【請求項3】
集水溝内に砕石等の充填材を土質遮水層の表面よりも盛り上げた状態で充填して、その充填材上に保護シートを敷設することにより、ブロック間の区画を集水溝の位置に設定したことを特徴とする請求項2記載の遮水シートの漏水検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−198587(P2006−198587A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15866(P2005−15866)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【出願人】(303025168)同和工営株式会社 (7)
【Fターム(参考)】