説明

遮音シート用組成物及び遮音シート

【課題】 スチレン系熱可塑性エラストマーを基材とする遮音性及びシート成形加工性に優れた遮音シート用組成物を提供すること。
【解決手段】 スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、カーボンブラック(B)5〜50重量部、高比重無機充填剤200〜1000重量部及び炭化水素系スリップ剤(C)を0.5〜5重量部の割合で配合してなる遮音シート用組成物及びこれをシート状に成形加工してなる遮音シート。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遮音性、耐熱変形性及び柔軟性に優れた遮音シート用組成物及びこれを用いた遮音シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、種々の基材ポリマーに高比重無機充填剤を高配合量で添加した組成物を用いた遮音シートが使用されている。通常、遮音シートには遮音性とともに柔軟性や耐熱変形性等が要求されるが、従来の組成物には遮音性は優れているが、柔軟性や耐熱変形性が不十分なものが多く改善が要望されている。
【0003】この要望に対して、特開昭62−256845号公報において、スチレン系熱可塑性エラストマーと高結合スチレン量のスチレン−ブタジエン共重合体熱可塑性樹脂とを基材ポリマーとする無機充填剤を高充填した遮音性の組成物が提案されている。しかしながら、この組成物においては高結合スチレン量(60〜90重量%)のスチレン−ブタジエン共重合体熱可塑性樹脂を併用することから、得られるシートの硬度が高くなりすぎ、配合の自由度が著しく制限されてしまう。また、組成物は1mm程度の厚さのシートに成形加工することができる程度に加工性が良好であることが必要であるが、この組成物は硬すぎてシート成形加工が困難となる場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的はスチレン系熱可塑性エラストマーを基材とする遮音性及びシート成形加工性に優れた遮音シート用組成物を提供することにある。本発明者は上記目的を達成すべく鋭意努力した結果、スチレン系熱可塑性エラストマーのなかでもSISを選び、上記の熱可塑性樹脂に代えてカーボンブラックを使用することにより、硬度を低下させ、配合の自由度も大きく、上記特性を満足する組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる本発明によれば、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、カーボンブラック(B)5〜50重量部、高比重無機充填剤200〜1000重量部及び炭化水素系スリップ剤(C)を0.5〜5重量部の割合で配合してなる遮音シート用組成物及びこれをシートに成形加工してなる遮音シートが提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】次に発明の実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明で使用するスチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン重合体ブロック(S)と共役ジエン重合体ブロック(D)を有するブロック共重合体であり、SDS型の線状又はラジアルブロック共重合体が好ましい。共役ジエン重合体としてはポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)が一般的である。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、SBS及びその水素化物であるSEBS、SIS、SBIS等が挙げられるが、これらのなかではSISが好ましい。また、スチレン系熱可塑性エラストマーの好ましいスチレン含有量は10〜30重量%であり、10重量%未満ではシート成形加工性が不十分となり、30重量%を超えるとシート硬度が硬くなり好ましくない。さらに好ましいスチレン含有量は15〜25重量%である。
【0007】本発明で使用するカーボンブラックは、通常ゴム工業で使用されているカーボンブラックはいずれも使用でき、特に制限されない。好ましいカーボンブラックは平均粒径が15〜30μmのものであり、例えば、SRF、FEF等が挙げられる。カーボンブラックの配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して5〜50重量部の割合である。少なすぎると硬度が上がらず、多すぎると硬度が硬くなり好ましくない。好ましくは5〜25重量部である。
【0008】本発明において遮音性を発現するために使用される高比重無機充填剤は、従来から遮音シートの製造に使用されている比重が2以上、好ましくは4以上の該無機充填剤はいずれも使用でき特に制限されない。例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー、シリカ、雲母、アルミナ、リトポン、グラファイト、ジルコサンド、クロマイトサンド、鉄粉、砂鉄、酸化鉄、製鉄スラグ粉、硫化鉄、鉛粉、ガラス繊維等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。高比重無機充填剤の使用量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して200〜1000重量部の割合である。要求される遮音性に従ってこの範囲から最適な使用割合を決めることが必要である。
【0009】さらに本発明においてはシート成形加工性を良好なものとするために炭化水素系スリップ剤(滑剤)の使用が必要である。炭化水素系スリップ剤としては、例えば、パラフィンワックス;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸及びそのカルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛等の金属塩;ステアロアミド、メチレン(又はエチレン)ビス・ステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、オレイル・アミド等の脂肪酸アミド;ブチル・ステアレート、メチル・ヒドロキシステアレート等の脂肪酸エステル;パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級脂肪族アルコール;グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート等の高級脂肪酸と多価アルコールの部分エステル等が挙げられる。これらの炭化水素系スリップ剤の使用量は、通常、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して0.5〜5重量部の割合であり、この範囲から最適な使用量を決めて使用する。
【0010】以上の他にも、要求性能を満足させるために、必要に応じて、熱可塑性樹脂、軟化剤、難燃剤等を適宜使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して60重量部以下の割合で使用することができる。軟化剤としては、例えば、アスファルト、アロマティック系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、ポリブテン等が挙げられ、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して50重量部以下の割合で使用することができる。
【0011】難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の無機水和物や酸化アンチモン等の無機系難燃剤;トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−ブロモエチル)ホスフェート、トリス(ジブロモブチル)ホスフェート等のリン系難燃剤;塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン等の塩素系難燃剤;テトラブロモエタン、テトラブロモエタン、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン等の臭素系難燃剤等が挙げられる。これらの中では、無機系の難燃剤は高比重無機充填剤と同様に高比重であることから遮音性を高める効果が得られる傾向があるので好ましい。無機系難燃剤の好ましい配合量はスチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して少なくとも200重量部であり、上限の配合量は特に制限されないが通常600重量部以下であり、難燃性、シート成形性及びコストを考慮して決定される。無機系難燃剤は、他の難燃剤と併用できることはいうまでもないことである。尚、スチレン系熱可塑性エラストマーとしてSISを使用する場合には、高比重無機充填剤と無機系難燃剤を高配合量で併用した場合にもシート加工性に優れ、柔軟性に優れたシートの作製が可能である。
【0012】本発明の遮音シート用組成物は以上に説明したスチレン系熱可塑性エラストマーと各配合成分とをバンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の通常の混合機を用いて十分に混合・混練することによって製造される。得られた組成物をカレンダー、ロール、押出機(Tダイ付き)等を用いて所定の厚さ(通常、0.8〜2mm程度)のシートに成形加工することで本発明の遮音シートが得られる。本発明の遮音シートは、硬度(JIS A)は通常40〜85の範囲であり、好ましくは55〜75である。また、比重は2〜3程度であるが、好ましくは2.3〜2.6である。
【0013】
【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。特に断りのない限り以下における部及び%は重量基準である。
【0014】実施例1〜5、比較例1〜5スチレン系熱可塑性エラストマーとしてSISブロック共重合体(日本ゼオン社製Quintac 3450:スチレン含有量19%)又はSBSブロック共重合体(旭化成社製ソルプレンT−414:スチレン含有量40%)を用い、表1又は表2に記載の配合処方に従い、該エラストマーと各配合成分とを加圧ニーダー(容積300cc)を用い内温150〜200℃で6分間混合・混練して組成物を調製した。得られた各組成物をシートに成形加工して評価した。シートの調製方法及び評価方法は下記の通りである。評価結果を表1及び表2に示す。
【0015】(1)シートの作製上記各組成物を125〜130℃に加熱したロールで5分間加熱した後、ロール間隙を狭めてシート出しして厚さが1.1〜1.2mmのシートを作製する。
(2)評価方法■比重:組成物をJIS K7112のA法(水中置換法)に従って測定。
■硬度:シートを用いJIS K6301に従いA型試験機で測定。
■シート加工性:上記のシート出し時のシートのロール剥離性を観察する。
○:良好(ロールからスムーズに剥離してシートを引き取ることができる)
△:やや不良(剥離性がやや悪く、ロールにシートが取られる傾向があり、シート表面がやや荒れる)
×:不良(剥離性が悪く、シート出しができない)
■シートの折り曲げ性:JIS K6301のデマッシャ屈曲試験機を用い、試験片を圧縮−回復(やや圧縮された状態)の屈曲を1000サイクル繰り返す。試験後の亀裂の発生の有無を観察する。
○:良好(1000サイクルで亀裂が発生しない)
×:不良(1000サイクルで亀裂の発生あり)
【0016】表 1

【0017】表 2

【0018】(注)(表1〜3に共通)
(1)日本ゼオン社製 Quintac 3450(2)旭化成工業社製 ソルプレンT−414(3)日本ポリオレフィン社製 JB124A(低密度ポリエチレン)
(4)日本ゼオン社製 Nipol 2007J(スチレン含有量85%)
(5)富士興産社製 P−200(6)日本石油化学社製 HV−100(7)旭カーボン社製 旭#50(SRF)
(8)堺化学社製 SM−1000(9)花王社製 Kao−Wax E−BP(10)竹原化学工業社製 SL−700(11)竹原化学工業社製 A−200
【0019】実施例6〜10表3に示す配合処方により上記の実施例及び比較例と同様にして難燃性遮音シートを作製し、シート加工性、シート折り曲げ性及び難燃性を評価した。難燃性はJIS K−A1322に従って試験した。これらの結果を表3に示した。
【0020】表3

【0021】(注)
(12)昭和電工社製 ハイジライトH−42S(13)昭和電工社製 401A(14)味の素社製 塩パラ40(15)三井金属鉱業社製
【0022】
【発明の効果】以上の本発明によれば、シート成形加工性、柔軟性に優れ、高比重で遮音性に優れ、耐熱変形性を有する遮音シート用組成物及び遮音シートが提供される。又、高比重無機充填剤とともに無機系難燃剤を配合することにより難燃性の遮音シートの製造が可能である。スチレン系熱可塑性エラストマーとしてSISを使用することにより高比重無機充填剤又はこれと無機系難燃剤とを高充填量で配合した場合にもシート加工成形性は保持され、柔軟性に富んだ遮音シートの製造が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、カーボンブラック(B)5〜50重量部、高比重無機充填剤200〜1000重量部及び炭化水素系スリップ剤(C)を0.5〜5重量部の割合で配合してなる遮音シート用組成物。
【請求項2】 スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して少なくとも200重量部の無機系難燃剤を配合する請求項1に記載の遮音シート用組成物。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の組成物をシート状に成形加工してなる遮音シート。

【公開番号】特開2000−129036(P2000−129036A)
【公開日】平成12年5月9日(2000.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−299913
【出願日】平成10年10月21日(1998.10.21)
【出願人】(000108214)ゼオン化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】