説明

選別装置

【課題】混合回収物中の磁性金属、非磁性金属及び非金属を選別するに際し、磁性物が回転駆動中のプーリ又は回転ロータに付着することを防止でき、かつプーリ周辺の過熱を未然に防止できる選別装置を提供する。
【解決手段】ベルトコンベア上を後方に搬送される選別対象物(磁性金属、非磁性金属及び非金属)のうち、磁性金属を磁力により吸着して選別回収し、非磁性金属を渦電流による反発力を利用して後方に飛ばして選別回収し、非金属をベルトコンベアからの自然落下を利用して選別回収する磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段を備えた選別装置であって、選別対象物と共にベルトコンベア上に混在する磁性を有する不純物及び空気中に浮遊する磁性を有する不純物が回転駆動中のプーリ及び回転ドラムに磁着することを防止する磁着防止手段として、後端側のプーリの外周面に空気を噴射する空気噴射装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合回収物中の磁性金属、非磁性金属及び非金属を選別する選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大量消費型社会から資源リサイクルを中心とした循環型社会への移行が進むなかで、回収物に含まれる磁性金属、非磁性金属及び非金属を機械的に効率よく選別・回収することでごみの再資源化が図られている。
例えば、自動販売機や家庭で発生する清涼飲料水の空き缶等、すなわちスチール缶(磁性金属)、アルミ缶(非磁性金属)、瓶及びペットボトル(非金属)は分別回収され、再利用されている。
また、機械や建築物の破砕処理等で発生する産業廃棄物、すなわち鉄片等(磁性金属)、アルミニウム片等(非磁性金属)、ガラス片及びプラスチック片等(非金属)も分別回収され、再利用されている。
なお、本明細書においてはスチール缶、アルミ缶、瓶及びペットボトルを総称する場合には「空き缶等」と表記する。
また、本明細書においては選別装置によって選別される対象物、すなわち磁性金属、非磁性金属及び非金属を総称する場合には「選別対象物」と表記する。
【0003】
しかし、店舗やコンビニエンスストア等に設置されているゴミ回収容器にはこれら空き缶等が分別されずに廃棄されていることがあり、家庭ごみについても空き缶等が混在した状態で廃棄される場合も多い。また、工事現場で発生する上記磁性金属、非磁性金属及び非金属も混在していることが多い。
このように磁性金属、非磁性金属及び非金属が混在した状態で回収された場合には選別処理施設で機械による選別処理を行った上で再資源化処理を行っている。
【0004】
例えば特許文献1には、回収した空き缶等のうちスチール缶を磁力により吸着して選別回収するスチール缶選別機と、アルミ缶を渦電流による反発作用を利用して弾き飛ばして選別回収するアルミ缶選別機と、ペットボトルと瓶に対して送風し、より軽量のペットボトルを吹き飛ばすと共に瓶を自然落下させることでペットボトルと瓶を選別回収する送風選別手段とを備えた選別装置が開示されている。本装置によればスチール缶、アルミ缶、瓶及びペットボトルの4種類を一つの装置で選別することができる。
【0005】
ここで、特許文献1記載のアルミ缶選別機の動作原理は一般的に広く利用されている渦電流と反発作用を利用するものである。具体的には、搬送コンベヤを掛け回したプーリの内部に回転ロータを挿入し、この回転ロータにはN極・S極の磁石を交番磁界が発生するように円周方向に交互に配置しておく。そして、回転ロータを軸回りに回転させることによって発生する磁界と、この磁界の作用によりコンベヤ上を搬送されるアルミ缶に発生する渦電流による磁界とを反発させてアルミ缶を弾き飛ばすものである。
【0006】
このような渦電流と反発作用を利用する選別装置では、回収された空き缶等に混在している鉄片や鉄粉等の磁性物が、搬送中の振動や衝撃を受けてコンベアから落下し、プーリの表面に磁着してしまうことがある。
プーリの表面に磁着した磁性物は、プーリと一体に回転する際に回転ロータの強力な交番磁界を受けて電磁誘導による電場が生じ、渦電流によるジュール熱が発生する。
ここで、プーリの材料としては磁気の影響を受けにくいFRP等を使用することが多いため、FRP等の耐熱性が低い材料で形成されたプーリは磁性物の発熱によって溶解することがあり、さらに磁性物が高速回転する回転ロータ内の磁石によって引きつけられて衝突し、回転ロータが破損してしまうことがある。
【0007】
また、選別装置の電源を切ってベルトコンベアの駆動を停止させた場合にも、回転ロータが惰性によりしばらく回転し続けるため、停止しているベルトコンベア上の磁性物が渦電流により発熱し、ベルトコンベアやプーリ等に焼損が発生することがある。
このような、回収された空き缶等に混在している鉄片等の磁性物による発熱の問題を考慮して、例えば特許文献2にはベルトコンベアプーリ表面の過熱を検出する過熱検出手段を設けた選別装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、選別装置を通常停止させる際には、惰性回転する回転ロータの近傍にベルトコンベア上の磁性物を残留させないようにするべく、選別物残留防止装置によりベルトコンベアを所定時間だけ遅れて停止させ、一方、選別装置を異常停止させる際には、制動装置により回転ロータの惰性回転を制動したり、散水装置により消化水を散水するという選別装置が開示されている。
また、特許文献4には、非磁性金属をできるだけ強く前方に投射するためにヘッドプーリの外周面とベルトコンベアの間に設けた磁力遮断用の磁気遮蔽板が発熱することを防止するために水冷パイプ等の冷却装置を付設した選別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001―334397号公報
【特許文献2】特開2008−104915号公報
【特許文献3】特開2003−112078号公報
【特許文献4】特開平10−128150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献2〜4に開示された技術では以下のような問題があった。
すなわち、特許文献2は過熱検出手段を用いてベルトコンベアプーリの表面の過熱状態を検出するに過ぎず、過熱状態になることを未然に防止するものではないという問題がある。
また、特許文献3は選別装置の駆動を停止する際に、惰性回転する回転ロータの近傍に磁性物を残留させないようにするものに過ぎず、選別装置の駆動中に磁性物がプーリあるいは回転ロータに磁着することを防止できないという問題がある。
また、特許文献4も同様に選別装置の駆動中に磁性物がプーリあるいは回転ロータに磁着することを防止できないという問題がある。
また、選別装置の周囲に浮遊しているチリ等の不純物の中には磁性を有するものも含まれており、このような空気中に浮遊している磁性を有する不純物が長期の間にプーリや回転ロータに磁着し、種々の不具合を引き起こす可能性があるが、上記特許文献2〜4に開示された技術ではこの問題に対応できないことは明らかである。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑み、混合回収物中の磁性金属、非磁性金属及び非金属を選別するに際し、磁性物が回転駆動中のプーリ又は回転ロータに付着することを防止でき、かつプーリ周辺の過熱を未然に防止できる選別装置を提供することを目的とする。
更に、空き缶等の混合回収物については、スチール缶、アルミ缶、瓶及びペットボトルの4種類に選別可能な選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の選別手段は、混在した状態でベルトコンベア上を後方に搬送される選別対象物(磁性金属、非磁性金属及び非金属)のうち、磁性金属を磁力により吸着して選別回収し、非磁性金属を渦電流による反発力を利用して後方に飛ばして選別回収し、非金属をベルトコンベアからの自然落下を利用して選別回収する磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段を備えた選別装置であって、前記磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段が、前記ベルトコンベアの後端側の筒状のプーリの内部に回転ドラムを備えており、当該回転ドラムの表面には複数の永久磁石がその磁極が円周方向に交番するように配置されており、前記選別対象物と共に前記ベルトコンベア上に混在する磁性を有する不純物及び空気中に浮遊する磁性を有する不純物が回転駆動中の前記プーリ及び前記回転ドラムに磁着することを防止する磁着防止手段として、前記後端側のプーリの外周面のうち前記ベルトコンベアに覆われていない部分に空気清浄用フィルタを通過した後の空気を噴射する空気噴射装置を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記後端側のプーリの外周面と前記ベルトコンベアの間に形成される上方間隙部に前記永久磁石による磁気を遮蔽する磁気遮蔽板を備えることを特徴とする。
また、前記磁着防止手段が、前記後端側のプーリの外周面のうち前記ベルトコンベアに覆われていない部分を覆うカバー部材を備え、当該カバー部材及び前記プーリの外周面のうち前記ベルトコンベアに覆われていない部分によって囲まれる空間内に前記空気噴射装置が空気を噴射することを特徴とする。
また、前記空間の上下が前記ベルトコンベアで覆われていることを特徴とする。
また、前記選別対象物のうち、磁性金属がスチール缶であり、非磁性金属がアルミ缶であり、非金属が瓶及びペットボトルであることを特徴とする。
【0014】
また、前記ベルトコンベアの後端から落下する瓶及びペットボトルに向けて、前記空気噴射装置からの空気の一部を噴射することで前記瓶と比較して相対的に軽量のペットボトルを飛ばすと共に瓶を自然落下させて選別回収する瓶・ペットボトル選別手段を備えることを特徴とする。
また、前記瓶・ペットボトル選別手段が、前記空気噴射装置から前記瓶及びペットボトルに噴射した空気の一部を循環させて再び瓶及びペットボトルに噴射することを特徴とする。
また、前記ベルトコンベア上に前記選別対象物が載置される前に、当該選別対象物中の磁性物の大半を磁力により吸着して選別回収する磁性金属事前選別手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の選別装置によれば、後端側のプーリの外周面のうちベルトコンベアに覆われていない部分に空気清浄用フィルタを通過した後の空気を噴射する空気噴射装置を有する。そして、後端側のプーリの外周面に噴射された空気は、プーリの外周面に衝突した後、プーリの左右側面及び回転ドラムの左右側面を覆うようにして拡がっていく。
つまり、空気噴射装置から噴出された空気はいわゆるエアカーテンとして機能し、選別対象物に混在してベルトコンベア上を搬送される磁性を有する不純物(ゴミ)が振動によりベルトコンベアの左右の端部から落下した場合でも、噴出する空気によって外側へ弾き飛ばすので、プーリの外周面や回転ロータに磁着することを防止できる。
【0016】
また、選別装置の周囲に浮遊しているチリ等の不純物のうち磁性を有するものに関しても、噴出する空気によって外側へ流されていくのでプーリの外周面や回転ロータに磁着することを防止できる。
なお、空気中に浮遊している磁性を有する不純物を空気清浄用フィルタで除去した後に空気噴射装置で空気を噴射するので、空気噴射装置から噴射される空気には磁性を有する不純物が含まれていない。
【0017】
また、磁着防止手段は上述したエアカーテン機能に加えて空冷機能も備える。
すなわち、非磁性金属を渦電流による反発作用を利用して分別回収する機構を備える場合、選別装置の駆動中や停止時に磁性金属に発生するジュール熱によってプーリや回転ドラムが破損するおそれがある。しかし、本発明では空気噴射装置から噴射する空気によってプーリ、回転ドラム、ベルトコンベアを空冷するので磁性金属の発熱を抑制できる。
また、選別装置の駆動を停止した後も空気噴射装置からの空気の噴出を一定時間続けることにすれば、ベルトコンベアの裏面を冷却することができるので、選別装置の駆動停止後にベルトコンベア上に残った磁性金属が発熱した場合でも、ベルトコンベアの焼損度合いを抑制できる。
このように、本発明の磁着防止手段によれば、上記エアカーテン機能によってプーリ及び回転ドラムへの磁性物の付着を未然に効果的に抑制できると共に、仮に付着した場合であっても空気噴射装置から噴射する空気によって磁性物を除去できる。さらに上記空冷機能によって付着した磁性物の発熱に起因する各種不具合の発生を防止できる。
【0018】
また、磁気遮蔽板を用いる場合であって、磁気遮蔽板の材料として磁性を有する金属や高い導電性を有する金属を使用する場合であっても、磁着防止手段の上記空冷機能によって磁気遮蔽板の発熱を抑制できる。
また、カバー部材及びプーリの外周面のうちベルトコンベアに覆われていない部分によって囲まれる空間内に空気噴射装置が空気を噴射することにすれば、後端側のプーリの外周面に噴射された空気はプーリの外周面に衝突した後、カバー部材とプーリ外周面の間の隙間や、カバー部材とベルトコンベアの間の隙間から外部に噴出していく。
したがって、ベルトコンベア上の磁性を有する不純物が振動によりベルトコンベアの左右の端部から落下した場合でも、プーリの外周面をカバー部材で覆って遮蔽しているので、当該不純物の大半はプーリの外周面に至ることがない。
【0019】
また、当該不純物が軽量物の場合にはカバー部材とベルトコンベアの間の隙間から噴出する空気によって外側へ弾き飛ばされるので上記空間内に侵入することがなく、プーリの外周面や回転ロータに不純物が磁着することを防止できる。
また、仮に当該不純物が重量物の場合には上記空間内に侵入する可能性があるが、この場合でも空気噴射装置から噴出された空気は上記隙間から空間外へ流れ出ていくため、当該不純物は空気と共に空間外へ排出されることになる。
また、上記空間の上下をベルトコンベアで覆うことにすれば、空気噴射装置から噴射される空気によって空間内が正圧状態になるため上記エアカーテン機能をより高めることができる。
【0020】
また、選別対象物のうち磁性金属をスチール缶、非磁性金属をアルミ缶、非金属を瓶及びペットボトルとすれば、選別装置を空き缶等の選別に適用できる。
特に、空気噴射装置からの空気の一部を噴射して瓶とペットボトルを選別回収する瓶・ペットボトル選別手段を備えることにすれば、空気噴射装置から噴出される空気の一部を瓶とペットボトルとの選別用途に利用し、残りの空気を後端側のプーリの外周面に噴射できるので、送風機を2つ取り付ける必要がなく、選別装置の製造コストを抑えることができる。
更に、空気噴射装置から瓶及びペットボトルに噴射した空気の一部を循環させて再び瓶及びペットボトルに噴射することにすれば、空気噴射装置の周囲が負圧の状態になり、空気中に浮遊する不純物を積極的に取り込んで空気清浄用フィルタで除去することができる。
また、ベルトコンベア上に選別対象物を載置する前の段階で、磁性金属事前選別手段によって磁性物の大半を選別回収することにすれば、プーリがFRP等の比較的強度が低い材料で製造されている場合でも、磁性物の大半はプーリ及び回転ロータに至る前に選別回収される。したがって、磁性物が回転ロータ内の磁石によって強く引きつけられる結果、プーリが変形・破損してしまう事態を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施の形態の選別装置の左側面図
【図2】第一の実施の形態の選別装置の平面図
【図3】第一の実施の形態の磁着防止手段を示す図1のA矢視図
【図4】第一の実施の形態の磁着防止手段を示す図2のB矢視図
【図5】第一の実施の形態のカバー部材の構造を示す斜視図
【図6】第二の実施の形態の選別装置の左側面図
【図7】第二の実施の形態の選別装置の平面図
【図8】第二の実施の形態の磁着防止手段を示す図6のC矢視図
【図9】第二の実施の形態の瓶・ペットボトル選別手段を示す図6のA矢視図
【図10】第二の実施の形態の瓶・ペットボトル選別手段を示す図6のB矢視図
【図11】瓶・ペットボトル選別手段の他の構造例を示す背面図(a)、平面図(b)、左側面図(c)及び右側面図(d)
【図12】第三の実施の形態の選別装置の左側面図(a)、平面図(b)、正面図(c)及び背面図(d)
【図13】第三の実施の形態の磁性金属事前選別手段を示す左側面図(a)、平面図(b)、正面図(c)及び背面図(d)
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一の実施の形態]
本発明の選別装置1の第一の実施の形態について説明する。
図1〜図5に示すように、本実施の形態における選別装置1は磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段20、磁気遮蔽板30及び磁着防止手段40を備えている。
磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段20は、混在した状態でベルトコンベア3上を後方に搬送される選別対象物(磁性金属、非磁性金属及び非金属)のうち、磁性金属を磁力により吸着して選別回収し、非磁性金属を渦電流による反発力を利用して後方に飛ばして選別回収し、非金属をベルトコンベア3からの自然落下を利用して選別回収するものである。なお、図1中に磁性金属は丸、非磁性金属は四角、非金属は三角で表している。
【0023】
磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段20は選別対象物の投入口2の下方から後方にのびるベルトコンベア3、ベルトコンベア3を掛け回す前後2つの筒状のプーリ4、前端側のプーリ4を回転駆動させる第一のモータ5、後端側のプーリ4の内部に配置される回転ドラム6、回転ドラム6を回転駆動させる第二のモータ7、回転ドラム6の表面に配置された複数の永久磁石8を備えており、これらはブラケット等を介して適宜フレーム9に固定されている。なお、永久磁石8はその磁極が回転ドラム6の円周方向に交番するように配置されている。
ベルトコンベア3の下方には磁性金属を回収するための磁性金属用ホッパ10、後端側のプーリ4の下方には非金属を回収するための非金属用ホッパ11、非金属用ホッパ11の後方には非磁性金属を回収するための非磁性金属用ホッパ12が配置されている。
【0024】
磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段20の動作について説明すると、ベルトコンベア3上の選別対象物のうち磁性金属は回転ドラム6内の永久磁石8の吸引力を受けてベルトコンベア3上に磁着した状態で下方に移動していき、後端側のプーリ4(回転ドラム6)から離れるにつれて永久磁石8の磁力が弱まることで磁性金属用ホッパ10内に自然落下して回収される。
非金属は永久磁石8の影響を受けずにベルトコンベア3の後端から下方に自然落下して非金属用ホッパ11に回収される。
非磁性金属はベルトコンベア3の後端近傍において回転ドラム6の回転駆動により発生する磁界と、この磁界の影響を受けて非磁性金属に発生する渦電流による磁界との反発力によって後方に弾き飛ばされ、非磁性金属用ホッパ12に回収される。
【0025】
磁気遮蔽板30は、ベルトコンベア3上を後方に搬送される非磁性金属が、回転ドラム6の直上近傍に至る前に永久磁石8による上記反発力を受ける結果、後方への飛距離が小さくなってしまうことを防止するためのものである。
磁気遮蔽板30は後端側のプーリ4の外周面とベルトコンベア3の間に形成される上方間隙部に配置されている。これにより、ベルトコンベア3上を後方に搬送される非磁性金属は、磁気遮蔽板30の上方を移動している間は上記反発力をほとんど受けず、回転ドラム6の直上近傍に至った時点でほぼ水平方向に上記反発力を受ける。したがって、非磁性金属の後方への飛距離が大きくなり、非磁性金属が誤って非金属用ホッパ11に回収されることを防止し、回収精度を向上させることができる。
磁気遮蔽板30の材料としては、鉄、ニッケル、コバルト、フェライト等の強磁性体や、金、銀、銅、アルミ、鉛等の非磁性体が挙げられる。
【0026】
磁着防止手段40は、選別対象物と共にベルトコンベア3上に混在する磁性を有する不純物及び空気中に浮遊する磁性を有する不純物が回転駆動中のプーリ4及び回転ドラム6に磁着することを防止するためのものである。
磁着防止手段40は小型の送風機41(空気噴射装置)、カバー部材42及び空気清浄用フィルタ43を備えている。
送風機41はブラケット44を介して第二のモータ7の前方側のフレーム9に取り付けられており、空気清浄用フィルタ43を通過した空気がパイプ45内に送り込まれるようになっている。
カバー部材42は後端側のプーリ4の外周面のうちベルトコンベア3に覆われていない部分を覆うものであり、前側と左右側の計3枚の側面板42a〜42cによって平面視した場合に後方に開口したコ字状に形成されている。
【0027】
左右の側面板42b及び42cの後部には、筒状のプーリ4の外周面に対応した円弧状の凹部46が形成されており、左右の側面板42b及び42cは凹部46にプーリ4の外周面が接触しない程度の間隔を開けて配置されている。
このようにカバー部材42及びプーリ4の外周面のうちベルトコンベア3に覆われていない部分によって、前後左右が囲まれた空間が形成されており、更に、この空間の上下はベルトコンベア3で覆われている。
また、前側の側面板42aに設けた開口に送風機41のパイプ45が取り付けられている。
【0028】
次に磁着防止手段40の動作及び効果について説明する。
空気清浄用フィルタ43を通過して送風機41から噴出された空気はパイプ45を通って上記空間内においてプーリ4の外周面に噴射される。
後端側のプーリ4の外周面に噴射された空気はプーリ4の外周面に衝突した後、側面板42b及び42cの凹部46とプーリ4の外周面の間の隙間や、側面板42a〜42cとベルトコンベア3の間の隙間から外部に噴出する。
【0029】
以上の通り、送風機41から噴出された空気はいわゆるエアカーテンとして機能し、選別対象物に混在してベルトコンベア3上を搬送される磁性を有する不純物や空気中に浮遊する磁性を有する不純物を外部に排出するので、これら磁性を有する不純物がプーリ4の外周面や回転ドラム6に磁着することを防止できる。
また、磁着防止手段40は送風機41から噴射する空気によってプーリ4、回転ドラム6、ベルトコンベア3及び磁気遮蔽板30を空冷する機能も有している。
【0030】
なお、本実施の形態では選別装置1が磁気遮蔽板30を備えるものとしたが、磁気遮蔽板30を備えない構成であってもよい。
また、磁着防止手段40がカバー部材42を備えるものとしたが、カバー部材42を備えずに後端側のプーリ4の外周面に空気を噴射する構成であってもよい。
また、上記空間の上下がベルトコンベア3で覆われているものとしたが、カバー部材42の3枚の側面板42a〜42cの上下を板材で覆う構造にしてもよい。
また、空気清浄用フィルタ43は送風機41からパイプ45の先端までのいずれかの位置に取り付ければよい。
【0031】
[第二の実施の形態]
次に、本発明の第二の実施の形態について説明するが、上記第一の実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態の選別装置50は選別対象物として空き缶等、すなわち磁性金属であるスチール缶、非磁性金属であるアルミ缶、非金属である瓶及びペットボトルの選別に適したものであり、特に瓶とペットボトルをそれぞれ分別回収できる点に特徴を有している。
【0032】
本実施の形態の選別装置50は、図6〜図10に示すように、上記第一の実施の形態で示した磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段20、磁着防止手段40及び磁気遮蔽板30以外に瓶・ペットボトル選別手段60を備えている。
瓶・ペットボトル選別手段60はベルトコンベア3の後端から落下する瓶及びペットボトルに向けて送風機70(空気噴射装置)から空気を噴射することで、瓶と比較して相対的に軽量のペットボトルを飛ばすと共に瓶を自然落下させて選別回収するものである。
【0033】
具体的には、図9及び図10に示すように、後端側のプーリ4の下方に非金属用ホッパ11として瓶用ホッパ51とペットボトル用ホッパ52を備えている。
非金属用ホッパ11は受け口から左斜め下方に傾斜する傾斜部53によって左右に分岐しており、左側が瓶用ホッパ51、右側がペットボトル用ホッパ52になっている。
空気噴射装置としての送風機70はペットボトル用ホッパ52の後部に取り付けられており、その空気取入口70aが空気清浄用フィルタ71を介してペットボトル用ホッパ52の内部に連通した状態になっている。
【0034】
また、送風機70の空気噴出口から左方向にのびる第一のパイプ72が瓶用ホッパ51の左側面に接続しており、その先端は瓶用ホッパ51の左側面において右斜め上方を向くように取り付けられている。
また、送風機70の空気噴出口から前方にのびる第二のパイプ73が磁性金属用ホッパ10の右側面で上方に屈曲し、カバー部材42の前側の側面板42aに設けた開口から上記空間内に至っている。
【0035】
次に、瓶・ペットボトル選別手段60の動作及び効果について説明する。
送風機70から送られる空気は空気清浄用フィルタ71によって不純物(特に磁性を有する不純物)が除去された後、第一のパイプ72を通って瓶用ホッパ51の内部において右斜め上方に向かって噴出する。
ベルトコンベア3上を搬送される選別対象物のうちスチール缶(磁性金属)は回転ドラム6内の永久磁石8の吸引力を受けてベルトコンベア3上に磁着した状態で下方に移動していき、後端側のプーリ4(回転ドラム6)から離れるにつれて永久磁石8の磁力が弱まることで磁性金属用ホッパ10内に自然落下して回収される。
【0036】
また、アルミ缶(非磁性金属)はベルトコンベア3の後端近傍において回転ドラム6の回転駆動により発生する磁界と、この磁界の影響を受けて非磁性金属に発生する渦電流による磁界との反発力を受けることで後方に弾き飛ばされて非磁性金属用ホッパ12に回収される。
そして、図10に示すように、瓶80及びペットボトル81(非金属)は永久磁石8の影響を受けずにベルトコンベア3の後端から下方に自然落下し、非金属用ホッパ11の受け口から傾斜部53に至る。
傾斜部53では第一のパイプ72から右斜め上方に向けて空気が噴出しているので、瓶80と比較して相対的に軽いペットボトル81は空気と共に傾斜部53内を右斜め上方に移動し、ペットボトル用ホッパ52に選別回収される。また、ペットボトル用ホッパ52に至った空気は再び送風機70の空気噴出口から第一のパイプ72を通って噴射されることで非金属用ホッパ11内を循環する。
【0037】
一方、相対的に重い瓶80は噴出する空気の影響をほとんど受けず、自然落下により傾斜部53内を左下方に摺動していき、瓶用ホッパ51に選別回収される。
更に、送風機70から噴出される空気の一部は第二のパイプ73を通ってカバー部材42で覆われた上記空間内に噴出され、上記エアカーテン機能及び空冷機能を発揮して、プーリ4等への磁性を有する不純物の磁着やプーリ4等の発熱を抑制する。
【0038】
このように、本実施の形態で示した選別装置50によれば、送風機70から噴出される空気の一部を瓶とペットボトルの選別用途に利用し、残りの空気を後端側のプーリ4の外周面に噴射するので、送風機70を2つ取り付ける必要がなく、選別装置50の製造コストを抑えることができる。
また、非金属用ホッパ11内で空気を循環させることで、非金属用ホッパ11内が負圧の状態になるため、非金属用ホッパ11の受け口の周辺に浮遊する不純物が負圧状態の非金属用ホッパ11内に流入することになる。したがって、空気中に浮遊する不純物(特に磁性を有する不純物)を積極的に取り込んで、ペットボトル用ホッパ52と送風機70の間の空気清浄用フィルタ71で効率的に除去することができる。
【0039】
すなわち、第二のパイプ73から噴射する空気のみならず、第一のパイプ72から噴射する空気も利用してプーリ4等に磁性を有する不純物が磁着することを防止するという相乗効果を得ることができる。
なお、本実施の形態では瓶・ペットボトル選別手段60が、送風機70から瓶及びペットボトルに噴射した空気の一部を循環させて再び瓶及びペットボトルに噴射するものとしたが、必ずしも循環させる必要はない。
【0040】
また、瓶・ペットボトル選別手段の構造は図11に示すようなものであってもよい。この瓶・ペットボトル選別手段61は、第二の実施の形態で示した瓶・ペットボトル選別手段60(図10参照)と比較して、第一のパイプ72aの先端72bの開口面積が小さくなっていると共に、より傾斜部53aの表面に沿って空気を噴出できるように先端72bの傾斜角が調整されている。
これにより、第一のパイプ72aから噴出した空気が非金属用ホッパ11aの内部に拡散しにくくなり、当該空気を非金属用ホッパ11a、送風機70a及び第一のパイプ72a内で効率的に循環させることができる。
なお、本実施の形態では瓶用ホッパ51aを右側、ペットボトル用ホッパ52aを左側、送風機70aを左側に配置しており、この点において第二の実施の形態の瓶・ペットボトル選別手段60とは反対の配置になっているが、第二の実施の形態と同様の配置にしてもよい。また、理解を容易にするために図11(a)中に第一のパイプの先端72bを表しているが、実際には当該先端72bは非金属用ホッパ11aの内部に位置しており、背面視した場合には視認できない。
【0041】
[第三の実施の形態]
次に、本発明の第三の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図12及び図13に示すように、本実施の形態の選別装置80は、磁性金属事前選別手段90を備える点に特徴を有する。
なお、本実施の形態の選別装置80は第二の実施の形態で示した瓶・ペットボトル選別手段61を備えている。また、図12(a)〜(d)及び図13(a)〜(d)は装置構造を容易に理解できるように概略的に示しているため、一つの図に示されている部位が他の図には示されていない場合がある。
【0042】
磁性金属事前選別手段90は、ベルトコンベア3の前端上部近傍に配置されており、ベルトコンベア3上に選別対象物が載置される前に、選別対象物中の磁性物の大半を磁力により吸着して選別回収するものである。
具体的には磁性金属事前選別手段90は前後方向にのびるベルトコンベア91、ベルトコンベアを掛け回すための前後2つの筒状のプーリ92、プーリ92を回転駆動させるモータ(図示略)、後端側のプーリ92の表面に貼り付けられておりプーリ92と一体に回転する永久磁石93、磁性物を磁性金属用ホッパ10に誘導するための搬送路94を備えており、これらは各々ブラケット等を介して適宜フレーム95に固定されている。
【0043】
磁性金属事前選別手段90の動作について説明すると、ベルトコンベア91上に載置された状態で後方に移動していく選別対象物のうち磁性金属は、後端側のプーリ92表面の永久磁石93の磁力(吸引力)を受けてベルトコンベア91上に磁着した状態で当該プーリ92の下面側に移動していく。そして、後端側のプーリ92から離れるにつれて永久磁石93の磁力が弱まるので、磁性金属は搬送路94内に自然落下する。
ベルトコンベア91の表面には弾性を有する舌片96が所定間隔で複数取り付けられおり、搬送路94内の磁性金属は舌片96で押されながら搬送路94内を前方に移動していき、開口部97から磁性金属用ホッパ10内に自然落下して回収される。
なお、全ての磁性金属を磁性金属事前選別手段90で選別回収することは困難なので、磁性金属事前選別手段90で選別回収できなかった磁性物は他の選別対象物と混在した状態でベルトコンベア3上に落下し、磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段20によって選別回収される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は磁性物が回転駆動中のプーリ又は回転ロータに付着することを防止でき、かつプーリ周辺の過熱を未然に防止できる選別装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0045】
1 選別装置
3 ベルトコンベア
4 プーリ
5 第一のモータ
6 回転ドラム
7 第二のモータ
8 永久磁石
10 磁性金属用ホッパ
11 非金属用ホッパ
11a 非金属用ホッパ
12 非磁性金属用ホッパ
20 磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段
30 磁気遮蔽板
40 磁着防止手段
41 送風機
42 カバー部材
43 空気清浄用フィルタ
45 パイプ
46 凹部
50 選別装置
51 瓶用ホッパ
51a 瓶用ホッパ
52 ペットボトル用ホッパ
52a ペットボトル用ホッパ
53 傾斜部
53a 傾斜部
60 瓶・ペットボトル選別手段
61 瓶・ペットボトル選別手段
70 送風機
70a 送風機
71 空気清浄用フィルタ
72 第一のパイプ
72a 第一のパイプ
72b 先端
73 第二のパイプ
80 選別装置
90 磁性金属事前選別手段
91 ベルトコンベア
92 プーリ
93 永久磁石
94 搬送路
95 フレーム
96 舌片
97 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
混在した状態でベルトコンベア上を後方に搬送される選別対象物(磁性金属、非磁性金属及び非金属)のうち、
磁性金属を磁力により吸着して選別回収し、非磁性金属を渦電流による反発力を利用して後方に飛ばして選別回収し、非金属をベルトコンベアからの自然落下を利用して選別回収する磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段を備えた選別装置であって、
前記磁性金属・非磁性金属・非金属選別手段が、前記ベルトコンベアの後端側の筒状のプーリの内部に回転ドラムを備えており、当該回転ドラムの表面には複数の永久磁石がその磁極が円周方向に交番するように配置されており、
前記選別対象物と共に前記ベルトコンベア上に混在する磁性を有する不純物及び空気中に浮遊する磁性を有する不純物が回転駆動中の前記プーリ及び前記回転ドラムに磁着することを防止する磁着防止手段として、前記後端側のプーリの外周面のうち前記ベルトコンベアに覆われていない部分に空気清浄用フィルタを通過した後の空気を噴射する空気噴射装置を有することを特徴とする選別装置。
【請求項2】
前記後端側のプーリの外周面と前記ベルトコンベアの間に形成される上方間隙部に前記永久磁石による磁気を遮蔽する磁気遮蔽板を備えることを特徴とする請求項1に記載の選別装置。
【請求項3】
前記磁着防止手段が、前記後端側のプーリの外周面のうち前記ベルトコンベアに覆われていない部分を覆うカバー部材を備え、当該カバー部材及び前記プーリの外周面のうち前記ベルトコンベアに覆われていない部分によって囲まれる空間内に前記空気噴射装置が空気を噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載の選別装置。
【請求項4】
前記空間の上下が前記ベルトコンベアで覆われていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の選別装置。
【請求項5】
前記選別対象物のうち、磁性金属がスチール缶であり、非磁性金属がアルミ缶であり、非金属が瓶及びペットボトルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の選別装置。
【請求項6】
前記ベルトコンベアの後端から落下する瓶及びペットボトルに向けて、前記空気噴射装置からの空気の一部を噴射することで前記瓶と比較して相対的に軽量のペットボトルを飛ばすと共に瓶を自然落下させて選別回収する瓶・ペットボトル選別手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の選別装置。
【請求項7】
前記瓶・ペットボトル選別手段が、前記空気噴射装置から前記瓶及びペットボトルに噴射した空気の一部を循環させて再び瓶及びペットボトルに噴射することを特徴とする請求項6に記載の選別装置。
【請求項8】
前記ベルトコンベア上に前記選別対象物が載置される前に、当該選別対象物中の磁性物の大半を磁力により吸着して選別回収する磁性金属事前選別手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の選別装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−63423(P2013−63423A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187269(P2012−187269)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【出願人】(502127272)株式会社直江鉄工 (2)
【Fターム(参考)】