説明

選択性が向上し、感度が強化された電気化学的センサー

【課題】再現性のある電気化学的センサー。
【解決手段】参照電極及び測定電極が多孔性非導電性シート材料により互いに隔てられている電気化学的センサー、好ましくは電気化学的バイオセンサーにつき記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学的センサー、好ましくは電気化学的バイオセンサーにつき記載する。さらに体液の診断のための電気化学的、好ましくは電流測定バイオセンサーの二次加工の方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
特に血糖診断における電流測定バイオセンサーの利用は数年間、先行技術の一部を形成してきた。
【0003】
そのような製品は例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載されている。対応する試験系はMediSense(R)、ExacTex(R)及びGlucocard(R)の製品名の下に商業的に入手可能である。それらは在宅使用者条件下での簡単な血液グルコース診断を可能にする。
【0004】
レセプター成分としてグルコースオキシダーゼを含有する電流測定バイオセンサーにより特に有意性が増してきた。非特許文献1に詳細に記載されている通り、グルコースとグルコースオキシダーゼとの反応は糖濃度に比例する量の過酸化水素を与える。
【0005】
しかし陽極酸化H→O+2H+2eは比較的高いセル電圧(約600mV)を必要とするので、全血の分析は望ましくない干渉の問題を伴い得る。これは、上記の電圧においてアスコルビン酸などのある種の血液成分が同様に反応し、誤った陽性の結果をもたらすからである。
【0006】
結局、電流測定センサーの選択性を向上させるという観点で、媒介物の考えが発展してきた。いわゆる第2世代バイオセンサーの場合に多く用いられる媒介物は、例えばフェロセン又はフェリシアン化カリウムKFe(CN)である。この場合の電流測定血液グルコース決定は以下の反応案に従って進行する:
(1)グルコース+GO(FAD)→グルコノラクトン+GO(FADH
(2)GO(FADH)+Fe(III)(CN)3−
Fe(II)(CN)4−+GO(FAD)+H
(3)Fe(II)(CN)4−→Fe(III)(CN)3−+e
【0007】
従って電流測定血液グルコース決定は、測定に関する限り、(3)に記載の陽極酸化に集約され、それは+360mVの電圧において進行する。かくしてそのような媒介物−修正バイオセンサーは強化された選択性を有する。
【0008】
再現性のある結果という観点で、O−制御副反応GO(FADH)+O→GO(FAD)+Hは可能な限り妨げられねばならない。
【0009】
適した試験装置の設計は、必要な検出試薬、例えばグルコースオキシダーゼ及びフェリシアン化カリウムに加え、少なくとも2種の電極(作用電極及び参照電極)を含み、それらは電解質橋を介して互いに接触していなければならない。
【0010】
先行技術に従う可能な電極材料は貴金属、例えばパラジウム、白金、金、銀及び銅、又はグラファイトであり、陽極(作用電極)及び陰極(参照電極)は場合により異なる材料から、又は同じ材料から二次加工されることができ、場合により同じ、又は異なる寸法の表面を有することができる。
【0011】
商業的に入手可能な系の場合の試験法は、患者が関連する限り、液体試料(全血)としての供給に制限され、分析値は少なくとも1分以内に数で表示される。
【0012】
しかし、被検体(グルコース)の酸化及び媒介物の還元を含む反応の実際の経路は、測定に関し、以下の段階が観察されるような方法で管理される:
a) 血液を供給し、反応を(1)〜(2)に従って進行させ、
b) 約5〜30秒の一定の反応時間の観察の後、約400mVの一定の電圧をかけ、(
3)に記載の陽極酸化を起こさせる。
c) 短い遅延時間の後に電流を測定する。
【0013】
分析的評価は拡散律速限界電流の範囲内で行われ、いわゆるCottrell式
【数1】

が適用される。

i=電流
n=電極反応に含まれる電子の数
F=ファラデー定数
D=拡散係数
C=被検体の濃度
A=作用電極の面積
D=作用電極における拡散境界層の厚さ
t=時間
【0014】
これらの条件が満たされるべき場合、対電極(counter electrode)における酸化還元媒介物の酸化形態(KFe(CN))は作用電極における還元形態媒介物(KFe(CN))の濃度を有意に越えなければならない。
【0015】
必要なら固定化による固定を含む媒介物系、例えばフェリシアン化カリウム(KFe(CN))の対極への、及び酵素レセプター(GO)の作用電極への別々の適用を可能にする試験装置は、相応して利点を与えるはずである。
【0016】
隔てられた試薬区域を含有する試験系も、酵素試薬系の長期間の安定性という観点で有利であり得る。
【0017】
複数の種々の公開文献が電気化学的バイオセンサーのためのさらに望ましい性質を挙げており、それらは系全体の最適化に寄与し得る。
【0018】
いくつかの重要なものを下記に挙げる:
−選択性のさらなる強化
特許文献5は、グルタルジアルデヒドにより架橋されたアルブミンを含有する酵素電極につき記載しており、それらはそれらの透過性のために電気的活性干渉成分に対して、特に高分子量を有するタンパク質に対して作用電極を保護する。
【0019】
電気化学セルの場合に赤血球を排除するための合成膜の利用は特許文献6に記載されている。
【0020】
特許文献7は可動性赤血球凝集剤を含有する赤血球排除膜が設けられた電気化学的センサーにつき記載している。
【0021】
特許文献8は、酵素−非含有及び酵素−含有領域から成る2部分に別れた作用電極を含む系につき記載しており、前者はアスコルビン酸などの酵素的に反応できない酸化可能な干渉成分を検出する。次いで各電圧の測定のからの計算を用い、修正された実際の血液グルコース量を決定する。
【0022】
Nankai et al.は特許文献9において、作用電極及び参照電極に加えてセル電流へのセル電圧の依存性を補正する比較電極も含有する3−電極系につき記載している。
【0023】
−センサー感度の向上
式(A)に従う電極面積の拡大による感度の強化は特許文献10に記載されている。
【0024】
−取り扱い性の向上
Nankai et al.は特許文献4において、消耗性センサーを含有する電流測定血液グルコース試験系の二次加工につき記載しており、該系は特に優れた取り扱い性が顕著である。電流測定分析器中に差し込まれる消耗性センサーは、センサーの先端で分析されるべき血液の滴に触れるように作られている。微小毛細管(microcapillary)(毛細管流系(capillary flow system))を介し、全血はセンサーの作用室(作用電極及び参照電極、ならびに検出試薬)中に運ばれる。その方法では、検出試薬(GO/KFe(CN))は分析されるべき液体(血液)に溶解され、前記の検出反応が進行する。両電極が血液で濡れると−問題のない操作性のための予備条件−自動的に低い抵抗値が分析器を開始させる。従って機器は制御ボタンなしで操作することができる。不必要な痛みなしで血液を抽出するという観点で、血液の必要量は可能な限り低く保たれ、従って微小毛細管の体積は約5μlに制限されている。導電路は、微小毛細管により限定される反応室から、延びているセンサー部分を介し、差し込み接点に達し、かくして分析器中の重要な機能性成分のいずれの汚染も排除される。
【0025】
通常引用される血液グルコースバイオセンサーの二次加工は、スクリーン印刷法を用いる。
【0026】
電極部分(変換器)の印刷法は、例えばグラファイト又は銀に基づく商業的に入手可能なスクリーン印刷ペーストを用い(Acheson)、それがセラミックス又はプラスチックシートなどの基質材料上に印刷される。これは複数の連続した印刷及び乾燥段階を必要とする(導電路、作用電極、参照電極、誘電層)。
【0027】
作用性の観点で消泡剤、チキソトロープ剤及び洗浄剤などの複数の種々の添加剤を含有するスクリーン印刷ペーストは、多くの場合に再現性の点で有意な欠点を示す。
【0028】
多くの場合、スクリーン印刷される電極表面はまだ、プラズマ処理により活性化されねばならない。これは、比較的疎水性の結合剤の割合が高いために、表面が疎水性であり、湿潤性が悪い傾向があり、グラファイト又は銀を例とする純粋な導電材料と比較して顕著に導電率が低下しているためである。
【0029】
老化又は望ましくない酸化還元−活性表面基の形成などのプラズマ処理の別の欠点を考慮しなければならない。電極部分の二次加工に続いて検出試薬組成物、例えば血液グルコース検出の場合はグルコースオキシダーゼ(GO)及びフェリシアン化カリウムが適用される。これは各センサーの作用表面がそれぞれ個別にドーピングされることを必要とし、
スクリーン印刷法又はマイクロピペットを使用するめんどうな方法が用いられる。
【0030】
第3の手順において最後に、適切に予備形成されたシートを接着することにより微小毛細管系が適用され、それは優れた湿潤性という観点から必要なら親水性層が設けられていなければならない。
【0031】
従ってこれは全体的に比較的複雑な二次加工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第45 45 382号
【特許文献2】EP 127 958
【特許文献3】EP 351 891
【特許文献4】EP出願0 471 986
【特許文献5】EP 0 276 782明細書
【特許文献6】EP出願0 289 265
【特許文献7】WO 94/27140
【特許文献8】EP出願0 546 536
【特許文献9】WO 86/07 642
【特許文献10】EP 0 385 964
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】Anal.Chem.1990,62,1111〜1117
【発明の概要】
【0034】
驚くべきことに、二次加工の点で有意により簡単であり、再現性の点でより信頼できる電気化学的センサーの二次加工のための方法が見いだされた。
【0035】
特に本発明の方法は、目的とされ、本文において記載された性質を1つの系において組み合わせることを可能にし、それは改良された製品を生ずるはずである。先行技術においては、性質の該組み合わされた完全な側面はまだ達成されていない。
【0036】
かくして、従来の系の場合必要であったような試料の体積(例えば血液の滴)の有意な増加なしで、試薬マトリックス面積を拡大することにより、簡単な方法で感度の強化が可能である。
【0037】
選択性の向上は多孔性分離層を組み込むことにより可能である。事実、下記においてもっと詳細に説明する通り、選択性−強化分離法を種々のセンサー層、例えば多孔性参照電極、試薬マトリックスとしての膜、及びおそらく膜を介して作用電極のコーティングに組み込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1に従う電流測定試験装置の分解略図である。
【図2】実施例1に従って構築される電流測定試験装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は本発明のセンサー系を例示することを目的とする:
ベースシート(1)上に固定されたグラファイトシート(2)上に、数mmの範囲の面積を有する試薬マトリックス(膜)(3)が適用される。この上にグラファイトウェブのストリップ(5)が孔開き2面接着テープ(4)を用いて固定される。最後に孔開きシ
ート(6)が最上被覆として接着される。必要な試料体積はグラファイトウェブの液体停止区域を例えば試薬膜(10)の後に組み込むことにより限定することができる。
【0040】
ポテンショスタットとの接触は(7)においてグラファイトウェブ層に(参照電極、陰極)、及び(8)においてグラファイトシートに(作用電極、陽極)成される。試料はグラファイトウェブの前端(9)を介して供給されることができ、−実施例において記載される通り−試薬マトリックスの方向に輸送される液体を限定する。
【0041】
各機能層に用いられる、又は可能な成分を下記においてさらに詳細に説明する:
【0042】
a)作用電極
SGL Carbon GroupからSigraflex(R)の商標名で入手可能なグラファイトシートを用いるのが好ましい。
意図されるこの目的に重要な性質は:
電気抵抗率: 層に平行に8〜10Ωμm
層に垂直に600〜650Ωμm
層の厚さ: 0.25〜1.00mm
純度: >99.85%
【0043】
反応の選択性を向上させるという観点で、後に実施例において記載する通り、試薬マトリックス(3)に面するグラファイト表面に、微孔性有孔膜又は非孔性膨潤膜層であることができる組み込み膜層が設けられていることができる。
【0044】
グラファイトシートの代わりに、金、銀又は白金などの他の既知の電極材料を用いることができる。
【0045】
湿潤性を向上させるため、又は導電率を増すためのプラズマ処理は必要でない。
【0046】
b)多孔性ベースマトリックス
このような関係で用いることができる多孔性シート材料は、例えばポリエステルもしくはポリ(ビニルアルコール)から作られているポリマーウェブ、例えばポリアミドもしくはポリエステルから作られているポリマー織物から成る群より、あるいは好ましくはポリマー膜から成る群より選ばれることができる。
【0047】
好ましいポリマー膜は微小濾過基(microfiltration group)を伴い、約0.1〜10μmの孔範囲、特に好ましくは0.3〜5μmの範囲内にあり、優れた湿潤性において顕著であるものである。関連する例はPALLからのポリアミド膜(Biodyne(R))、Milliporeからの親水性化ポリ(フッ化ビニル)膜(Durapore(R))、Gelmannからの親水性化ポリスルホン膜(Supor(R))、又は米国特許第5 124 128号に記載のポリマーブレンド膜である。
【0048】
用いられる種類の膜は自立的であるか、又はベース上に支持されていることができ、ベース材料はポリマーウェブを含むか、又はポリマー織物を含むか、ならびに膜層の中心に組み込まれるか、又は片側に組み込まれるかを選択できる。構造の点で、用いられる膜は非対称性又は対称性であることができる。
【0049】
本発明のセンサーの特に有利な点は、試薬支持体の機能及び分離機能の両方を有することができるこれらの特殊な試薬マトリックスの二重性に由来する。
【0050】
最も適した多孔性ベースマトリックスの選択は特定の用途に依存する。例えば血液グルコース試験のためには、プラズマを容易に透過させるが赤血球を保持する膜により特に優
れた利用性が与えられる。
【0051】
別の場合、検出試薬、例えばグルコースオキシダーゼを固定化させるベースマトリックス系を用いることができる。その場合に考えられる実施態様は、例えば連続操作性の、又は再使用可能なバイオセンサーである。
【0052】
多段階検出反応、例えばコレステロール試験の観点で、別法として互いの上に複数のベースマトリックス系を組み合わせることができる。するとこれは検出試薬の導入に関して、及び望ましくない干渉成分の除去の目的のために、種々の可能性を生ずる。
【0053】
下記において例として血液グルコース試験を用いて少し詳細に記載する通り、スクリーン印刷又はマイクロピペット使用法と比較し、単−層マトリックス型の場合でさえ種々の方法で試薬を導入することができ、それは例えば反応の性能又は長期間の安定性の観点で興味深い:
最も簡単な場合、ベースマトリックスに従来の含浸法を介して、例えばグルコースオキシダーゼ及びフェリシアン化カリウムを含浸させることができる。
【0054】
別の場合、さらに含浸及びコーティング法の組み合わせを選択し、マトリックスの片側又は両側にペースト−様試薬組成物をコーティングすることができる。
【0055】
かくして例えば実施例において詳細に記載する通り、電流測定血液グルコース試験のための好ましい方法の場合、ベースマトリックスにフェリシアン化カリウムが含浸されるが、ペースト−様グルコースオキシダーゼ組成物は作用電極に面する側に適用される。
【0056】
しかしすべての形態の試薬導入の場合に、スクリーン印刷又はマイクロピペット使用法などの方法と比較して、各センサードーピングが従来の方法より確立されることができ、有意な製造における利点を生ずることが明らかである。
【0057】
各センサーに用いられる試薬マトリックス面積は同様に比較的広い範囲内で変えることができる。例えば比較的感度の低い、又は比較的低い濃度範囲にある被検体の場合、不相応に大きな試料体積(例えば血液)を必要とせずに、より大きい試薬マトリックス面積を用い、式(A)に従って従来通り容易に解釈され得る厳密な応答信号が発生される。
【0058】
試薬マトリックス面積を介して感度を向上させることができる選択の故に、本発明のセンサーは特に免疫化学的検出系としても非常に興味深い。
【0059】
実際のマトリックス面積は数mmの範囲内にある。実施例において記載される通り、血液グルコース試験の評価は約7mmの面積に相当する3mmの直径を有するマトリックス円板を用いた。
【0060】
驚くべきことに、それを用いて二次加工されたバイオセンサーは約2μl以下の範囲内の試料体積で機能することができ、以前から既知の血液グルコースバイオセンサーより明らかに高い電流収率を達成することができた(値は約8倍に増加した)。
【0061】
従来のバイオセンサーは約1〜2mmの作用電極面積を含み、少なくとも5μlの体積量の試料(血液)を必要とし、約0.1〜20μAの範囲内の電流収率を達成した。
【0062】
最小の試料体積を用いて機能することができるセンサー系は、特にいわゆる「最小侵略的(minimal invasive)」設計(PCT WO 95/10223)と関連して興味深く、2μlか又はそれ以下の値が目的とされている。
【0063】
c)多孔性導電性参照電極
用いられる好ましい材料は前記の通りグラファイトウェブを含み、それは例えばSGL
Carbon GroupからSigrafil(R)SPC 7011の商標名で入手可能である。
【0064】
これらは単位面積当たり30g/mの質量、0.5mmの厚さ、7μmの平均繊維直径及び約20〜24重量%の架橋ポリ(ビニルアルコール)の結合剤系を有する黒い、引裂抵抗性の高いウェブである。
【0065】
前に示した通り、この材料はエレクトロニックバイオセンサーの二次加工の場合に特に興味深い2つの特殊な性質において顕著である。これらは垂直及び水平方向の両方における非常に迅速で非破壊的な液体の輸送の能力、ならびにその導電性であり、電気抵抗率は約10Ωμmの近辺にある。
【0066】
かくしてこのグラファイトウェブ層は、液体の毛細管輸送の機能及び参照電極の機能を同時に行うことができる。
【0067】
そのようなグラファイトウェブ層はレクチンなどの凝集剤と一緒になって、顕著に有効な方法で血液/血漿分離を行うことができる。
【0068】
そのような分離法はヘマトクリットの影響を減少させるという観点で、血液試料の分析においてかなり興味深い。
【0069】
別の場合、上記のグラファイトウェブの代わりに、金属化織物、ウェブ又は膜などの他の導電性多孔性シート材料を用いることができ、それらは湿潤性を向上させるために界面活性物質で処理することができる。
【0070】
挙げられるべき適した導電性織物の例はSEFARからのMetalen 120 bis 34 Tの型である。
【0071】
これはニッケルコートマルチフィラメントポリエステル織物である。
【0072】
純銀に基づく導電性膜は、例えばMilliporeから入手することができる。
【0073】
導電性多孔性参照電極のこの目的は、通常の方法の1つに従って金属化された従来の膜を用いて満たすこともできる。
【0074】
d)プラスチックシート
ベースシート(1)及び最上被覆シート(6)は原則的に広い範囲のプラスチックシートから大きな選択手順なしで選ばれることができる。
【0075】
しかしバイオセンサーストリップの機械的安定性の観点で、ある程度の剛性及び層の厚さを有するシートが好ましい。
【0076】
例えば約100〜300μmの範囲の厚さの、部分的に透明又は着色されたポリエステルシート、ポリカーボネートシート及びPVCシートが用いられた。
【0077】
液体の輸送の向上という観点で、被覆シートの内側が親水性支持体層を有するのが有利であり得る。そのように修正された(modified)シートは、例えばICI又はD
u−pontの標準的シートの範囲内で見いだすことができる。
【0078】
各層の接着又は積層は、上記の通り接着テープ、ホットメルト接着剤又は既知の溶接法の1つを用いて行うことができる。
【実施例】
【0079】
図1又は2に従う電流測定試験装置を構築した:
(1)ベースシート (ポリカーボネートシート、厚さ250μm)
(2)グラファイトシート (Sigraflex(R)、(1)上に2面接着テープで固
定)
(3)試薬膜 (PALLからのBiodyne(R)、グルコースオキシダ
ーゼ及びフェリシアン化カリウムを含浸)
(4)2面接着テープ
(5)グラファイトウェブ (Sigratex(R) SPC 7011)
(6)被覆シート (ポリカーボネートシート、厚さ250μm)
【0080】
電流計との接触は(7)においてグラファイトウェブに(陰極、参照電極)、及び(8)においてグラファイトシートに(陽極、作用電極)確立した。
【0081】
試料(3μl)をピペットを用いてグラファイトウェブの前側(9)において供給し、試薬マトリックスの方向に液体が毛細管輸送された。
【0082】
試薬マトリックスの作製:
a)フェリシアン化カリウムの含浸
PALLからのナイロン膜(Biodyne、0.45μm)に濃度が20%のフェリシアン化カリウム溶液を含浸させ、乾燥した。
【0083】
b)グルコースオキシダーゼの導入
高速撹拌機(溶解機)を用いてグルコースオキシダーゼを含有するコーティング溶液を以下の成分から調製した:
4.42g ポリエチレンオキシド300,000(Union Cabide)
84.08g クエン酸緩衝液(0.01モル、pHは6.5)
0.58g オクタン−1−オール
3.84g Aerosil(R)(Degussaからの高分散ケイ酸)
0.12g 界面活性剤FC−170C(3Mから)
7.00g グルコースオキシダーゼ(150μ/mg)
【0084】
脱ガスの後、このコーティング溶液をドクターナイフを用い、フェリシアン化カリウムが含浸されたナイロン膜に適用し(湿潤厚さ50μm)、温空気を用いて乾燥した。
【0085】
かくして作製された試薬膜から回転パンチを用い、3mmの直径を有する円板を打ち抜いた。
【0086】
図1に示される設計が組み立てられた後、以下の試験溶液を用いて400mVにおいて電流測定試験の系列を行った:
【0087】
a)標準水溶液
0、25、50、100、200、300、400、500mg/dlのグルコース
【0088】
30秒間の測定時間が観察され、Cottrell式に従って1/tで下降するクロノ電流測定曲線(chronamperometric curves)が得られた。グルコース濃度が増加すると共に、次第により高い電流密度を有する値が得られた。
【0089】
b)全血
104mg/dlのグルコース量を有する全血をa)と同様にして適用した。これはa)からの100mg/dl曲線と大きく一致する測定曲線を生じた。
【0090】
2.実施例
膜−コートグラファイトシートの作製
a)多孔性膜層
高速撹拌機(溶解機)を用いて以下の成分からコーティング溶液を調製した:
Dralon L (Bayer AG) 50.0g
Ultrason E (BASF) 50.0g
Aerosil 200 (Degussa) 30.0g
Pluriol P 600(BASF) 90.0g
N−メチルピロリドン (NMP) 484.0g
【0091】
脱ガスの後、このコーティング溶液を、ドクターナイフを用いてグラファイトシート(Sigraflex)に適用し(湿潤適用150μm)、水浴に浸した。乾燥し、グルコースオキシダーゼ及びフェリシアン化カリウムを含浸させた後、3mmの直径を有する膜円板を実施例1に記載の通りに打ち抜き、同様に実施例1に記載の設計を組み立てた。
【0092】
クロノ電流測定分析の間に、実施例1aと同様にグルコース濃度と共に増加する電流濃度が得られた。
【0093】
b)グラファイトシート上の非孔性膨潤性膜層
高速撹拌機を用い、以下の成分から流延溶液を調製した:
8.77gの水性ポリウレタン分散液 DLS (Bayer AG)
9.66gのポリエチレンオキシド300,000 (Union Carbide)0.06gのプルロニックPE 6,400 (BASF)
1.20gのクエン酸緩衝液(0.1モル、pH=6.5)
0.34gのAerosil 200 (Degussa)
1.00gのグルコースオキシダーゼ(154U/mg)
【0094】
脱ガスの後、このコーティング溶液をグラファイトシート(Sigaflex(R))に、ドクターナイフを用いて適用し(湿潤適用100μm)、乾燥し、打ち抜いた(円板3mm)。
【0095】
かくしてコーティングされた作用電極を図1の(3)に従って用いた。600mVの適用電圧で、グルコース水溶液を用いる評価の間に、実施例1aと同様にグルコース濃度の増加と共に増加する電流強度が測定される。
【0096】
膜−コートグラファイトシートを含むグルコースセンサーの結果:
純粋なグルコース水溶液は実施例1における結果と非常に類似の結果を与えたが、膜−修正センサー系は干渉成分(アスコルビン酸、アセトアミノフェン)も含有する試験溶液に関し、より優れた結果を与えた。
【0097】
干渉化合物のための誤った陽性の変化は、実際上完全に除去された。
【0098】
本発明の主たる特徴及び態様は以下の通りである。
【0099】
1.作用電極及び参照電極が非導電性透過性シート材料により互いに隔てられていること
を特徴とする電流測定試験装置。
【0100】
2.透過性シート材料が多孔性材料、例えばウェブ、紙、織物、膜又は非孔性膨潤性膜層を含むことを特徴とする上記1項に記載の試験装置。
【0101】
3.シート材料が試薬を含有することを特徴とする上記1及び2項に記載の試験装置。
【0102】
4.シート材料が複数の層を含むことを特徴とする上記1〜3項に記載の試験装置。
【0103】
5.各層が異なる試薬を含有することを特徴とする上記4項に記載の試験装置。
【0104】
6.試料適用区域が液体の毛細管輸送の機能及び参照電極の機能の両方を行うことができる導電性不織布又はウェブを含むことを特徴とする上記4項に記載の試験装置。
【0105】
7.導電性不織物又はウェブが親水性グラファイト繊維材料、好ましくはグラファイト不織布を含むことを特徴とする上記6項に記載の試験装置。
【0106】
8.親水性グラファイト繊維材料の代わりに、導電性金属シート又はグラファイトシートが上にある非導電性親水性不織布が用いられることを特徴とする上記7項に記載の試験装置。
【0107】
9.毛細管輸送層がさらに試薬を含有することを特徴とする上記6〜8項に記載の試験装置。
【符号の説明】
【0108】
1 ベースシート
2 グラファイトシート
3 試薬膜
4 2面接着テープ
5 グラファイトウェブ
6 被覆シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用電極、
参照電極、
作用電極及び参照電極を互いに隔てる、少なくとも一つの検出試薬を含有する非導電性多孔性シート
を含む電気化学的センサーであって、
該参照電極は試料適用区域から該非導電性多孔性シートへの液体の毛細管輸送のための導電性多孔性シートからなり、且つ、該参照電極は液体の垂直及び水平の両方向の輸送能力をもつことを特徴とする電気化学的センサー。
【請求項2】
該非導電性多孔性シートがウェブ、紙、織物または膜を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
該非導電性多孔性シートが複数の層を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサー。
【請求項4】
各層が異なる検出試薬を含有することを特徴とする請求項3に記載のセンサー。
【請求項5】
該非導電性多孔性シートが、数mmの面積を有する請求項1−4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項6】
該非導電性多孔性シートが、7mmの面積を有する請求項1−4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項7】
該非導電性多孔性シートが、0.1−10μmの孔径を有する請求項1−4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項8】
該非導電性多孔性シートが、0.3−5μmの孔径を有する請求項1−4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項9】
検出試薬が含浸法および/またはコーティング法によって該非導電性多孔性シートと接触する請求項1−8のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項10】
検出試薬がグルコースオキシダーゼおよびヘキサシアン化カリウムである請求項1−9のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項11】
導電性多孔性シートが金属化織物、ウェブまたは膜である請求項1−10のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項12】
導電性多孔性シートが親水性グラファイト繊維材料または導電性金属もしくはグラファイトフォイルが上にある非導電性親水性ウェブである請求項1−9のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項13】
導電性多孔性シートがグラファイトウェブである請求項1−9のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項14】
参照電極が、孔開き2面接着テープを用いて作用電極に取り付けられている請求項1−13のいずれか一項に記載のセンサー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−139388(P2009−139388A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23599(P2009−23599)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願平9−41400の分割
【原出願日】平成9年2月12日(1997.2.12)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen,Germany