説明

遺伝子改変キク

本発明は、変更された花部を発現する遺伝子改変キク植物に関する。青色またはスミレ色の花部を有する植物を作製するため、キクフラボノイド経路を操作する。フラボノイド3'5'ヒドロキシラーゼを発現させて、(任意で)フラボノイド3'ヒドロキシラーゼ活性を抑制することにより、青色デルフィニジン色素が産生される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願データ
本願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる2007年11月15日出願の米国仮特許出願第60/988,331号と関連しており、それに基づく優先権を主張するものである。
【0002】
分野
本発明は、一般に、遺伝子改変植物の分野に関する。より具体的には、本発明は、植物の所望の部分において、選択された色表現型を発現する、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物に関する。さらに具体的には、本発明は、変更されたまたは所望の花部を発現する遺伝子改変キク植物を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
本明細書中に提供される参照の書誌の詳細は、本明細書の最後に列挙される。
【0004】
先行技術に関する言及は、この先行技術がいずれかの国における共通の一般知識の一部を形成することの認識または何らかの型の示唆ではなく、そのように解釈されるできではない。
【0005】
花または観賞植物の産業は、花および/または植物の新しい異なる品種を開発しようと努力している。そのような新規の品種を作出するための有効な方式は、花色の操作を通したものである。古典的な育種技術は、今日入手可能な花および/または植物の市販されている品種のほぼ全てについて、広範囲の色を作製するために、ある程度の成功を持って使用されている。しかしながら、このアプローチには、特定の種の遺伝子プールの制約のため限界があり、この理由のため、単一の種が完全なスペクトルの色の品種を有することは稀である。例えば、植物、または花、葉、および茎のような植物部分の新規な色の品種の開発は、切り花および観賞植物の市場の両方において大きな機会を与えるであろう。花または観賞植物の産業において、キクの新規の色の品種の開発は、特に興味深い。これには、異なる色の花のみならず、葯および花柱も含まれる。
【0006】
花色は、主に、フラボノイド、カロテノイド、およびベタレインという三つの型の色素による。三つのうち、フラボノイドは、最も一般的なものであり、黄色〜赤色〜青色の範囲に寄与する。花色に主に寄与するフラボノイド分子は、シアニジンおよびそのメチル化誘導体ペオニジン、デルフィニジンおよびそのメチル化誘導体ペチュニジンおよびマルビジン、ならびにペラルゴニジンのグリコシル化誘導体であるアントシアニンである。アントシアニンは、花弁の上皮細胞の液胞または葉の表皮下細胞の液胞に局在している。
【0007】
フラボノイド色素はフェニルプロパノイド経路の二次代謝物である。フラボノイド色素の生合成経路(フラボノイド経路)は十分に確立されており(Holton and Cornish,Plant Cell 7:1071-1083,1995(非特許文献1);Mol et al,Trends Plant Sci.3:212-217,1998(非特許文献2);Winkel-Shirley,Plant Physiol.126:485-493,2001a(非特許文献3);およびWinkel-Shirley,Plant Physiol.127:1399-1404,2001b(非特許文献4)、Tanaka and Mason,In Plant Genetic Engineering,Singh and Jaiwal (eds) SciTech Publishing Llc,USA,1:361-385,2003(非特許文献5)、Tanaka et al,Plant Cell,Tissue and Organ Culture 80:1-24,2005(非特許文献6)、Tanaka and Brugliera,In Flowering and Its Manipulation,Annual Plant Reviews Ainsworth (ed),Blackwell Publishing,UK,20:201-239,2006(非特許文献7))、図1に示される。フラボノイド経路の第1の重要な基質のうちの一つであるp-クマロイル-CoAへのフェニルアラニンの変換には、三つの反応および酵素が関与している。それらの酵素は、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)、桂皮酸4-ヒドロキシラーゼ(C4H)、および4-クマル酸:CoAリガーゼ(4CL)である。経路において最初に委ねられる工程は、(アセチルCoAおよびCO2に対するアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)の作用により提供される)マロニル-CoA 3分子のp-クマロイル-CoA 1分子との縮合を含む。この反応は、酵素カルコンシンターゼ(CHS)により触媒される。この反応の生成物2',4,4',6'テトラヒドロキシ-カルコンは、通常、酵素カルコンフラバノンイソメラーゼ(CHI)により迅速に異性化され、ナリンゲニンが生成する。続いて、ナリンゲニンが、フラバノン3-ヒドロキシラーゼ(F3H)により、中央の環の3位でヒドロキシル化され、ジヒドロケンフェロール(DHK)が生成する。
【0008】
dDHKのB環のヒドロキシル化のパターンは、花弁色の決定において重要な役割を果たす。B環は、3'位、または3'位および5'位の両方でヒドロキシル化され得、それぞれ、ジヒドロケルセチン(DHQ)またはジヒドロミリセチン(DHM)が生成する。経路のこの部分に関与する重要な二種の酵素は、いずれも、シトクロムP450クラスの酵素のメンバーであるフラボノイド3'-ヒドロキシラーゼ(F3'Η)およびフラボノイド3',5'-ヒドロキシラーゼ(F3'5'H)である。F3'Hは、多くの植物種において、赤およびピンクの花色に寄与する、シアニジンベースの色素の発生に関与している。
【0009】
F3'5'Hをコードするヌクレオチド配列は、クローニングされている(国際特許出願PCT/AU92/00334(特許文献1)およびHolton et al,Nature,366:276-279,1993(非特許文献8)および国際特許出願PCT/AU03/01111(特許文献2)を参照のこと)。これらの配列は、ペチュニア(参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願PCT/AU92/00334(特許文献1)、およびHolton et al,1993(前記)(非特許文献8)を参照のこと)、タバコ(参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願PCT/AU92/00334(特許文献1)を参照のこと)、カーネーション(参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願PCT/AU96/00296(特許文献3)を参照のこと)、およびバラ(参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願PCT/AU03/01111(特許文献2)を参照のこと)におけるフラボノイドの3',5'ヒドロキシル化の改変において有効であった。
【0010】
ジヒドロフラボノール(DHK、DHQ、DHM)からの有色アントシアニンの生成をもたらす経路の次の工程は、ロイコアントシアニジンの生成をもたらすジヒドロフラボノール-4-レダクターゼ(DFR)を含む。続いて、ロイコアントシアニジンは、アントシアニジン、ペラルゴニジン、シアニジン、およびデルフィニジンに変換される。これらのフラボノイド分子は、正常な生理的条件の下で不安定であり、糖転移酵素の作用を通した3位におけるグリコシル化が、アントシアニジン分子を安定化し、従って、アントシアニンの蓄積を可能にする。一般に、糖転移酵素は、UDP糖からフラボノイド分子へ糖部分を転移させ、グリコシル化の位置に関する高い特異性およびアクセプター基質に関する比較的低い特異性を示す(Seitz and Hinderer,Anthocyanins.In:Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants.Constabel and Vasil (eds.),Academic Press.New York,USA,5:49-76,1988(非特許文献9))。アントシアニンは、糖類(グルコース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース、およびキシロース)に関連する3,5-ジグリコシドおよび3,7-ジグリコシドとしても、3-モノシド(monoside)、3-ビオシド(bioside)、および3-トリオシド(trioside)としても存在することができる(Strack and Wray,In:The Flavonoids-Advances in Research since 1986.Harborne,J.B.(ed),Chapman and Hall,London,UK,1-22,1993(非特許文献10))。
【0011】
キクは高度に進化した顕花植物である。キク科のメンバー、クリサンセマム(Chrysanthemum)の種は、深い裂片を有する葉を有し、野生種では白色、黄色、またはピンク色の大きい頭状花を有する、50〜150cmの高さにまで生長する草本性多年生植物である。花は、様々な形態で存在し、デージー様(daisy-like)、デコラティブ(decorative)、ポンポン(pompons)、またはボタン(buttons)であり得る。ナショナル・クリサンセマム・ソサイエティ(National Chrysanthemum Society)(米国)は、キクを花形に基づき13のクラスに分類している。それらのクラスは、それぞれ、イレギュラーインカーブ(irregular incurve)、リフレックス(reflex)、レギュラー(regular)インカーブ、デコラティブ、インターミディエート(intermediate)インカーブ、ポンポン、シングル(single)およびセミダブル(semi-double)、アネモネ(anemone)、スプーン(spoon)、キル(quill)、スパイダー(spider)、ブラシ(brush)またはアザミ(thistle)、および未分類(unclassified)である。
【0012】
キクに見出されるアントシアニンは、一般に、シアニジンベースである。デルフィニジンベースの色素は、F3'5'H活性の欠如のために存在せず、ペラルゴニジンベースの色素は、稀にしか見出されない。ペラルゴニジンベースの色素がキクに存在しないのは、DFRの特異性ではなく、F3'H活性の存在のためであることが示唆されている。例えば、キク花弁にシトクロムP450阻害剤を供給すると、ペラルゴニジンベースの色素が検出された(Schwinn et al,Phytochemistry,35:145-150,1993(非特許文献11))。
【0013】
古典的な交配作業によってハイブリッドキクが作製されているが、遺伝子工学は、キク花においてスミレ色/紫色〜青色を生じさせることができていない。変更された花部を有する鑑賞用の顕花植物、特に、キク植物を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許出願PCT/AU92/00334
【特許文献2】国際特許出願PCT/AU03/01111
【特許文献3】国際特許出願PCT/AU96/00296
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Holton and Cornish,Plant Cell 7:1071-1083,1995
【非特許文献2】Mol et al,Trends Plant Sci.3:212-217,1998
【非特許文献3】Winkel-Shirley,Plant Physiol.126:485-493,2001a
【非特許文献4】Winkel-Shirley,Plant Physiol.127:1399-1404,2001b
【非特許文献5】Tanaka and Mason,In Plant Genetic Engineering,Singh and Jaiwal (eds) SciTech Publishing Llc,USA,1:361-385,2003
【非特許文献6】Tanaka et al,Plant Cell,Tissue and Organ Culture 80:1-24,2005
【非特許文献7】Tanaka and Brugliera,In Flowering and Its Manipulation,Annual Plant Reviews Ainsworth (ed),Blackwell Publishing,UK,20:201-239,2006
【非特許文献8】Holton et al,Nature,366:276-279,1993
【非特許文献9】Seitz and Hinderer,Anthocyanins.In:Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants.Constabel and Vasil (eds.),Academic Press.New York,USA,5:49-76,1988
【非特許文献10】Strack and Wray,In:The Flavonoids-Advances in Research since 1986.Harborne,J.B.(ed),Chapman and Hall,London,UK,1-22,1993
【非特許文献11】Schwinn et al,Phytochemistry,35:145-150,1993
【発明の概要】
【0016】
概要
本明細書の全体にわたって、文脈上特記されない限り、「を含む(comprise)」という単語、または「を含む(comprises)」もしくは「を含む(comprising)」のような変形は、明示された要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を意味し、その他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の排除を意味するものではないことが理解される。
【0017】
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、配列番号(SEQ ID NO)により参照される。SEQ ID NOは、配列ID<400>l(SEQ ID NO:1)、<400>2(SEQ ID NO:2)等に数的に対応する。
【0018】
本明細書の全体にわたって使用される配列IDの概要は、表1に提供される。
【0019】
本発明は、変更された花部(選択されたまたは所望の花部を含む)を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物、特に、遺伝子改変キクを提供する。さらに具体的には、変更された花部とは、赤紫色〜青色の範囲の色の花、花弁、葯、および花柱を含むキクの組織または器官である。一つの態様において、完全飽和色の順に色が配置され、低飽和度の低輝度の色が横に並べられている、英国王立園芸協会(Royal Horticultural Society)カラーチャートを使用して、色が決定される。色群はスペクトルを通して進み、本願において言及される色は、一般に、ファン(Fan)2に含有されている赤紫色群(RHSCC 58-74)、紫色群(RHSCC 75-79)、紫スミレ色群(RHSCC 81-82)、スミレ色群(RHSCC 83-88)、スミレ青色群(RHSCC 89-98)、青色群(RHSCC 99-110)にある。色は、75C、75D、76A、76B、76C5 77C、77D、78D、N80D、N81B、84C、およびそれらの中間または近くの色を含む範囲より選択される。特に、デルフィニジンを産生し、紫色/スミレ色〜青色である、遺伝子改変キクが提供される。遺伝子改変されていないキクは、F3'5'H活性の欠如のため、デルフィニジンベースのフラボノイド分子を産生しない。色の変化は、デルフィニジンの存在により促進される。便利なことに、デルフィニジンは、TLCまたはHPLCを使用して検出され得る。
【0020】
(表1)配列IDの概要


1 PCT/AU03/01111を参照のこと。
2 Holton et al,1993(前記)およびPCT/AU92/00334を参照のこと。
【0021】
本発明は、変更された花部(選択されたまたは所望の花部を含む)を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物、特に、遺伝子改変キクを提供する。さらに具体的には、変更された花部は、赤紫色〜青色の範囲の色の花、花弁、葯、および花柱を含むキクの組織または器官である。色の決定は主観的である。一つの態様において、色は、色が完全飽和色の順に配置され、低飽和度の低輝度の色が横に並んでいる、英国王立園芸協会(RHS)カラーチャートを使用して決定される。色群はスペクトルを通して進み、本願において言及される色は、一般に、ファン2に含有されている赤紫色群(RHSCC 58-74)、紫色群(RHSCC 75-79)、紫スミレ色群(RHSCC 81-82)、スミレ色群(RHSCC 83-88)、スミレ青色群(RHSCC 89-98)、青色群(RHSCC 99-110)にある。色は、75C、75D、76A、76B、76C 77C、77D、78D、N80D、N81B、84C、およびそれらの中間または近くの色を含む範囲より選択される。特に、デルフィニジンを産生するようになった遺伝子改変キクが提供される。これは遺伝子改変キクの新規の特性であり、「増大したデルフィニジン」量という用語に包含される。「増大」とは、遺伝子改変されていないキク植物におけるゼロまたは実質的にゼロの量に対する相対的なものである。
【0022】
一つの態様において、改変キクは、選択されたプロモーター配列およびターミネーター配列と組み合わせられたF3'5'H酵素をコードする遺伝子配列を含む。もう一つの態様において、キクは、少なくとも二種のF3'5'Hをコードする遺伝子配列を含む。さらにもう一つの態様において、遺伝子配列は、さらに、DFRをコードし、かつ/または固有のF3'Hを阻害する。さらにもう一つの態様において、遺伝子配列は、さらに、DFRをコードし、かつ/または固有のF3'Hを阻害し、かつ固有のDFRを阻害する。
【0023】
キクは、任意の遺伝的背景またはハイブリッド背景のものであってよく、人工交配キク、クリサンセマム×モリフロリウム(Chrysanthemum x moriflorium)、デンドランセマ・グランジフローラ(Dendranthema grandiflora)、クリサンセマム・アフロダイト(aphrodite)、クリサンセマム・アークティカム(arcticum)、クリサンセマム・アーギロフィルス(argyrophyllum)クリサンセマム・アリサネンス(arisanense)、クリサンセマム・ボリール(boreale)、クリサンセマム・カルキンゴリカム(chalchingolicum)、クリサンセマム・チャネティー(chanetii)、クリサンセマム・シネラリエフォリウム(cinerariaefolium)、クリサンセマム・コロナリウム(coronarium)、クラウン・デージー(Crown daisy)、クリサンセマム・クラッサム(crassum)、クリサンセマム・グラブリウスカラム(glabriusculum)、クリサンセマム・ヒパルギラム(hypargyrum)、クリサンセマム・インディカム(indicum)、クリサンセマム・ジャポネンス(japonense)、クリサンセマム・ジャポニカム(japonicum)、クリサンセマム・ラバンダリフォリウム(lavandulifolium)、クリサンセマム・マウィー(mawii)、クリサンセマム・マキシモウィッジー(maximowiczii)、クリサンセマム・モンゴリカム(mongolicum)、クリサンセマム・モリフォリウム(morifolium)、クリサンセマム・モリー(morii)、クリサンセマム・オキエンス(okiense)、クリサンセマム・オレアストラム(oreastrum)、クリサンセマム・オーナタム(ornatum)、クリサンセマム・パシフィカム(pacificum)、クリサンセマム・ポテンティロイデス(potentilloides)、クリサンセマム・セゲタム(segetum)、クリサンセマム・シヲギク(shiwogiku)、クリサンセマム・シヌアタム(sinuatum)、クリサンセマム・ベスチタム(vestitum)、クリサンセマム・ウェイリキー(weyrichii)、クリサンセマム・ヨリナガンサム(yoshinaganthum)、およびクリサンセマム・ザワドスキー(zawadskii)のようなクリサンセマムsp.およびデンドランセマspの種を含む。
【0024】
特定の関心対象の品種には、ブルーリッジ(Blue Ridge)、マデリン(Madeline)、マネーメーカー(Moneymaker)、マンディアル(Mundial)、リーガン(Reagan)ならびにインプルーブドリーガン(Improved Reagan)およびダークスプレンディッドリーガン(Dark Splendid Reagan)のような変種、セイアイダ(Sei Aida)、セイフィガロ(Sei Figaro)、セイファウスト(Sei Faust)、セイフロレア(Sei Florea)、セイスパイア(Sei Spire)、セイチタン(Sei Titan)、セイチタン406、セイノーマ(Sei Norma)、セイアメリー(Sei Amelie)、ならびにマリフーシャ(Mari Fusha)が含まれる。
【0025】
従って、本発明の一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターと組み合わせられたF3'5'H酵素をコードする発現された遺伝物質を含む、選択された組織において変更された花部を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物に関する。
【0026】
この文脈において「変更された花部」という用語は、遺伝子操作前の植物(例えば、親植物または同一種であるが遺伝子改変されていない植物)の花部と比較して変更されている花部を意味する。「をコードする」という用語には、機能性のF3'5'H酵素を産生する遺伝物質の発現が含まれる。
【0027】
本発明のもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターと組み合わせられたF3'5'H酵素をコードする発現された遺伝物質を含む、選択された組織において変更された花部を示す、キク植物に関する。
【0028】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターと組み合わせられたF3'5'H酵素をコードする発現された遺伝子配列を含む、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の組織を示す、遺伝子改変キク系統またはその変種に関する。
【0029】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターと組み合わせられたF3'5'Hをコードする発現された遺伝子配列、ならびに、別のF3'5'H、DFR、および、固有のF3'Hおよび/またはDFR遺伝子配列に対する阻害性核酸配列を含む一覧より選択される少なくとも一つの他の要素をコードする発現された遺伝子配列を含む、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の組織を示す、遺伝子改変キク系統またはその変種を提供する。「固有の」F3'Hとは、キク親系統に常在し、発現されているF3'Hである。「固有の」DFRとは、キク親系統に常在し、発現されているDFRである。この定義は、本明細書において意図された非キク植物種に関しても同一である。「阻害性」核酸配列には、とりわけ、アンチセンス、センス、ヘアピン、二本鎖RNA、RNAi、およびリボザイムが含まれる。
【0030】
遺伝子配列を含むキクなる言及は、キク植物の細胞が遺伝物質を含有していることを意味する。
【0031】
従って、本発明は、以下を含む一覧より選択される遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物を提供する:
(i)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列;
(ii)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hならびに異種DFRをコードするヌクレオチド配列;
(iii)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hならびに異種DFRをコードするヌクレオチド配列、ならびに固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質;
(iv)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列、ならびに固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質;ならびに
(v)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hならびに異種DFRをコードするヌクレオチド配列、ならびに固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質、ならびに固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質。
【0032】
キクなどの遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物に由来する子孫、生殖物質、切り花、組織培養可能な細胞、および再生可能な細胞も、本発明の一部を形成する。
【0033】
本発明は、赤紫色〜青色(スミレ色/紫色〜青色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示すキクまたはその変種の製造における、F3'5'H酵素をコードする遺伝子配列の使用にも関する。遺伝子配列は、第二のF3'5'H、DFR、またはF3'H遺伝子配列の発現を阻害する核酸分子もしくはDFR遺伝子配列の発現を阻害する核酸分子もコードしてもよい。
【0034】
F3'5'Hは任意の起源に由来し得る。ビオラsp、シネラリアsp、ペチュニア・ハイブリダ、およびサルビアspに由来するF3'5'H酵素は、特に有用である。ビオラsp、ペチュニア・ハイブリダ、シネラリアsp、およびサルビアspに由来するF3'5'H酵素をコードする適当なヌクレオチド配列は、表1に示される。
【0035】
本発明の遺伝子改変されたキク植物は、F3'5'Hを発現するよう遺伝子改変されたキクの遺伝子改変以前には存在しない特色である、デルフィニジンを含むデルフィニジンベースのフラボノイド分子の産生を可能にする。これにより、新規の色および変更された花部の産生が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】アントシアニンを産生する大部分の植物に存在するアントシアニジン3-グルコシドの生合成の模式図である。経路に含まれる酵素は、以下のように示されている:PAL=フェニルアラニンアンモニアリアーゼ;C4H=ケイ皮酸4-ヒドロキシラーゼ;4CL=4-クマル酸:CoAリガーゼ;CHS=カルコンシンターゼ;CHI=カルコンフラバノンイソメラーゼ;F3H=フラバノン3-ヒドロキシラーゼ;DFR=ジヒドロフラボノール-4-レダクターゼ;ANS=アントシアニジンシンターゼ、3GT=UDP-グルコース:フラボノイド3-O-グルコシルトランスフェラーゼ。その他の略語には、DHK=ジヒドロケンフェロール、DHQ=ジヒドロケルセチン、DHM=ジヒドロミリセチンが含まれる。
【図2】carnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'発現カセットおよび35S 5':SuRB発現カセットを含むプラスミドpCGP2205の概略図である。略語には、RB=T-DNAの右の境界、LB=T-DNAの左の境界、TetR=抗生物質テトラサイクリンに対する耐性を付与するテトラサイクリン耐性遺伝子が含まれる。遺伝子発現カセットの詳細に関しては、表3を参照のこと。選択された制限エンドヌクレアーゼ部位が示されている。
【図3】RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'発現カセットおよび35S 5':SuRB発現カセットを含むプラスミドpCGP2217の概略図である。略語には、RB=T-DNAの右の境界、LB=T-DNAの左の境界、TetR=抗生物質テトラサイクリンに対する耐性を付与するテトラサイクリン耐性遺伝子が含まれる。遺伝子発現カセットの詳細に関しては、表3を参照のこと。選択された制限エンドヌクレアーゼ部位が示されている。
【図4】RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'発現カセット、35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3'発現カセット、および35S 5':SuRB発現カセットを含むプラスミドpCGP3424の概略図である。略語には、RB=T-DNAの右の境界、LB=T-DNAの左の境界、TetR=抗生物質テトラサイクリンに対する耐性を付与するテトラサイクリン耐性遺伝子が含まれる。遺伝子発現カセットの詳細に関しては、表3を参照のこと。
【図5】Cinereria gF3'5'H発現カセットおよび35S 5':SuRB発現カセットを含むプラスミドpCGP3141の概略図である。略語には、RB=T-DNAの右の境界、LB=T-DNAの左の境界、TetR=抗生物質テトラサイクリンに対する耐性を付与するテトラサイクリン耐性遺伝子が含まれる。遺伝子発現カセットの詳細に関しては、表3を参照のこと。
【図6】RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'発現カセット、RoseCHS 5':ds chrysF3'H*:nos 3'発現カセット、および35S 5':SuRB発現カセットを含むプラスミドpCGP3429の概略図である。略語には、RB=T-DNAの右の境界、LB=T-DNAの左の境界、TetR=抗生物質テトラサイクリンに対する耐性を付与するテトラサイクリン耐性遺伝子が含まれる。遺伝子発現カセットの詳細に関しては、表3を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
文脈上特記されない限り、本明細書において使用される単数形には複数の局面も含まれる。従って、例えば、「植物」なる言及には、単一の植物のみならず複数の植物も含まれ;「F3'5'H酵素」なる言及には、単一の酵素のみならず複数の酵素も含まれ;「本発明」なる言及には、発明の単一の局面のみならず複数の局面も含まれ、他も同様である。
【0038】
本発明は、変更された花部(選択されたまたは所望の花部を含む)を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物、特に、キクを意図したものである。変更された花部とは、花、花弁、葯、および花柱を含む、任意の組織または器官内であり得る。本明細書において意図される特定の花部には、スミレ色/紫色〜青色が含まれる。色の決定は、英国王立園芸協会(RHS)カラーチャートで便利に測定され、RHSカラーチャートのファン2に含有されている赤紫色群(RHSCC 58-74)、紫色群(RHSCC 75-79)、紫スミレ色群(RHSCC 81-82)、スミレ色群(RHSCC 83-88)、スミレ青色群(RHSCC 89-98)、青色群(RHSCC 99-110)の範囲より選択される色を含む。特定の色には、75C、75D、76A、76B、76C、77C、78D、N80D、N81B、84C、および上記範囲の間または末端に近い色が含まれる。「花部」という用語は、厳密に解釈されるべきではなく、任意の有色の細胞、組織器官、またはそれらの一部分に関する。
【0039】
従って、本発明の一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物を提供する。
【0040】
本発明のもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物を提供する。
【0041】
本発明のさらなる局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列、および固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物を提供する。
【0042】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列、および固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物を提供する。
【0043】
本発明のまたさらなる局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列、ならびに固有のF3'Hおよび固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変された鑑賞用の顕花植物を提供する。
【0044】
特定の態様において、鑑賞用の顕花植物はキクである。
【0045】
従って、本発明のもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変キクを提供する。
【0046】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変キクを提供する。
【0047】
本発明のさらなる局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列、および固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変キクを提供する。
【0048】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列、および固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変キクを提供する。
【0049】
本発明のまたさらなる局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列を発現し、異種DFRヌクレオチド配列、ならびに固有のF3'Hおよび固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質をさらに発現する、遺伝子改変前の同一種の植物と比較して変更された花部を示す、遺伝子改変キクを提供する。
【0050】
遺伝子改変キクは、デルフィニジンのようなデルフィニジンベースのフラボノイド分子を産生するようになっている。これは、紫色/青色の発生のような花部の変更を可能にする。
【0051】
従って、本発明は、以下のものを含む一覧より選択される遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物を提供する:
(i)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列;
(ii)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hならびに異種DFRをコードするヌクレオチド配列;
(iii)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hならびに異種DFRをコードするヌクレオチド配列、ならびに固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質;
(iv)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hをコードするヌクレオチド配列、ならびに固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質;ならびに
(v)選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'Hならびに異種DFRをコードするヌクレオチド配列、ならびに固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質、ならびに固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質。
【0052】
本発明の遺伝子改変キク植物は、遺伝子改変されていないキク植物においては産生されないデルフィニジンを産生する。これは、「増大したデルフィニジン」量という用語に包含される。
【0053】
有用なプロモーターには、CHS遺伝子、ANS遺伝子、F3'H遺伝子、DFR遺伝子、F3H遺伝子、F3'5'H遺伝子、F3'H遺伝子、3RT遺伝子、MT遺伝子、3GT遺伝子、AT遺伝子のようなフラボノイド経路遺伝子に由来するプロモーター、ローザ・ハイブリダカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子に由来するプロモーター配列(Rose CHS 5')、アンチリナム・マジュス(Antirrhinum majus)カルコンシンターゼ(CHS)遺伝子に由来するプロモーター配列(AmCHS 5')、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)またはその断片(例えば、35S 5')、キクCHSに由来するプロモーター配列(chrysCHS 5')、マンノピンシンターゼ(mas)遺伝子に由来するプロモーターとCaMV35Sエンハンサー領域(Mac)とからなるハイブリッドプロモーター、ペチュニア・ハイブリダリン脂質転移タンパク質遺伝子プロモーター(petD8 5')、ペチュニアアントシアニジン-3-グルコシドラムノシルトランスフェラーゼ(3RT)遺伝子に由来するプロモーター配列(petRT 5')、カーネーションANS遺伝子に由来するプロモーター配列(carnANS 5')、シネラリアF3'5'H遺伝子に由来するプロモーター配列(Cineraria F3'5'H 5')、ペチュニアF3'5'H遺伝子に由来するプロモーター配列(Pet F3'5'H 5')、バラF3H遺伝子に由来するプロモーター配列(R.rugosa F3H 5')、バラDFR遺伝子に由来するプロモーター配列(R.rugosa DFR 5')、ビオラF3'5'H遺伝子に由来するプロモーター配列(BPF3'5'H#40 5')、またはペチュニアDFR-A遺伝子に由来するプロモーター配列が含まれる。有用なターミネーターには、A.ツメファシエンス(tumefaciens)のmas遺伝子に由来するターミネーター(mas 3')、A.ツメファシエンスのnos遺伝子に由来するターミネーター領域(nos 3')、オクトピンシンターゼ遺伝子に由来するターミネーター断片(ocs 3')、リン脂質転移タンパク質遺伝子ターミネーター(petD8 3')、ペチュニア3RT遺伝子に由来するターミネーター配列(petRT 3')、A.ツメファシエンスに由来するトゥーマーモルホロジーロング(tumor morphology long)遺伝子ターミネーター(tm1 3')、カーネーションANS遺伝子に由来するターミネーター配列(carnANS 3')、シネラリアF3'5'H遺伝子に由来するターミネーター配列(Cineraria F3'5'H 3')、ペチュニアF3'5'H遺伝子に由来するターミネーター配列(Pet F3'5'H 3')、またはペチュニアDFR遺伝子に由来するターミネーター配列(petDFR 3')が含まれる。
【0054】
従って、本発明の一つの局面は、アンチリナム・マジュスカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子プロモーター(AmCHS 5')、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)またはその断片(例えば、35S 5')、キクに由来するCHS遺伝子プロモーター(chrysCHS 5')、マンノピンシンターゼ(mas)遺伝子に由来するプロモーターとCaMV35Sエンハンサー領域(Mac)とからなるハイブリッドプロモーター、ペチュニア・ハイブリダリン脂質転移タンパク質遺伝子プロモーター(petD8 5')、アントシアニジン-3-グルコシドラムノシルトランスフェラーゼ(3RT)遺伝子プロモーター(petRT 5')、バラに由来するCHS遺伝子プロモーター(Rose CHS 5')、およびカーネーションANS遺伝子プロモーター(carnANS 5')、シネラリアF3'5'H遺伝子プロモーター、ペチュニアDFR遺伝子プロモーターを含む一覧より選択されるプロモーターに機能的に連結され、かつA.ツメファシエンスのmas遺伝子(mas 3')、A.ツメファシエンスのnos遺伝子に由来するターミネーター領域(nos 3')、オクトピンシンターゼ遺伝子に由来するターミネーター断片(ocs 3')、リン脂質転移タンパク質遺伝子ターミネーター(petD8 3')、ペチュニアに由来する3RT遺伝子ターミネーター(petRT 3')、A.ツメファシエンスに由来するトゥーマーモルホロジーロング遺伝子ターミネーター(tm1 3')、またはカーネーションに由来するANS遺伝子ターミネーター(carnANS 3')、シネラリアF3'5'H遺伝子ターミネーター、およびペチュニアDFR遺伝子ターミネーターを含む一覧より選択されるターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝子配列を含む、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の組織を示す、遺伝子改変キク系統またはその変種に関する。
【0055】
本発明のさらにもう一つの局面は、CHS遺伝子、ANS遺伝子、F3'H遺伝子、DFR遺伝子、F3H遺伝子、F3'5'H遺伝子、F3'H遺伝子、3RT遺伝子、MT遺伝子、3GT遺伝子、AT遺伝子、ローザ・ハイブリダカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子に由来するプロモーター配列(Rose CHS 5')、アンチリナム・マジュスカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子に由来するプロモーター配列(AmCHS 5')、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)またはその断片(例えば、35S 5')、キクCHSに由来するプロモーター配列(chrysCHS 5')、マンノピンシンターゼ(mas)遺伝子に由来するプロモーターとCaMV35Sエンハンサー領域(Mac)とからなるハイブリッドプロモーター、ペチュニア・ハイブリダリン脂質転移タンパク質遺伝子プロモーター(petD8 5')、ペチュニアアントシアニジン-3-グルコシドラムノシルトランスフェラーゼ(3RT)遺伝子に由来するプロモーター配列(petRT 5')、カーネーションANS遺伝子に由来するプロモーター配列(carnANS 5')、シネラリアF3'5'H遺伝子に由来するプロモーター配列(Cineraria F3'5'H 5')、ペチュニアF3'5'H遺伝子に由来するプロモーター配列(Pet F3'5'H 5')、バラF3H遺伝子に由来するプロモーター配列(R.rugosa F3H 5')、バラDFR遺伝子に由来するプロモーター配列(R.rugosa DFR 5')、ビオラF3'5'H遺伝子に由来するプロモーター配列(BPF3'5'H#40 5')、またはペチュニアDFR-A遺伝子に由来するプロモーター配列を含む一覧より選択されるプロモーターに機能的に連結され、かつペチュニア3RT遺伝子(petRT 3')、A.ツメファシエンスに由来するトゥーマーモルホロジーロング遺伝子ターミネーター(tm1 3')、カーネーションANS遺伝子に由来するターミネーター配列(carnANS 3')、シネラリアF3'5'H遺伝子に由来するターミネーター配列(Cineraria F3'5'H 3')、ペチュニアF3'5'H遺伝子に由来するターミネーター配列(Pet F3'5'H 3')、およびペチュニアDFR遺伝子に由来するターミネーター配列を含む一覧より選択されるターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝子配列を含む、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の組織を示す、遺伝子改変キク系統またはその変種に関する。
【0056】
35Sプロモーターのような非フラボノイド経路遺伝子プロモーターが使用されてもよく、同様に非フラボノイド経路遺伝子ターミネーターが使用されてもよい。さらに、非フラボノイド経路遺伝子プロモーター(例えば、35Sプロモーター)がフラボノイド経路遺伝子ターミネーターと共に使用されてもよい。または、フラボノイド経路遺伝子プロモーター(例えば、上に例示されたようなもの)が非フラボノイド経路遺伝子ターミネーターと共に使用されてもよい。「35Sプロモーター」なる言及には、35S 5'またはCaMV 35Sが含まれる。
【0057】
遺伝子配列は、便利には、プロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素または二種のF3'5'H酵素をコードするヌクレオチド配列を包含する単一の構築物である。さらに、遺伝子配列は、植物細胞のゲノムへ組み込まれてもよいし、または染色体外の人工染色体として維持されてもよい。さらに、F3'5'H酵素を発現するキクの生成は、単独の組換え手段によって生成されてもよいし、または従来の交配と組換えDNA操作との組み合わせによって生成されてもよい。
【0058】
従って、本発明は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程、ならびにそこから植物またはその遺伝子改変子孫を再生させる工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0059】
本発明のもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程、ならびにそこから植物またはその遺伝子改変子孫を再生させる工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0060】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程、ならびにそこから植物またはその遺伝子改変子孫を再生させる工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0061】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質、ならびに固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程、ならびにそこから植物またはその遺伝子改変子孫を再生させる工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0062】
本発明のまたさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質、ならびに固有のF3'Hおよび固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0063】
遺伝子変異体は、発現を容易にするため、プロモーターに機能的に連結される。次いで、遺伝子操作された植物は、様々な世代にわたる生長または栽培を受けてもよい。従って、「遺伝子改変キク」なる言及には、その子孫および姉妹系統が含まれ、その変種も含まれる。本発明は、遺伝子改変キクに由来する生殖物質にも及ぶ。
【0064】
本発明のもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質を含むキクを選択する工程、この植物を所望の遺伝的背景を有する別のキクと交配させる工程、ならびに次いで、F1以降の世代の植物を選択する工程を含む、変更された花部を示すキク系統を作製する方法を提供する。「所望の遺伝的背景」には、花色、硬直(rigor)、液胞pH等が含まれる。
【0065】
本発明は、さらに、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質を含むキクを選択する工程、そこから植物またはその遺伝子改変子孫を再生させる工程、この植物を所望の遺伝的背景を有する別のキクと交配させる工程、ならびに次いで、F1以降の世代の植物を選択する工程を含む、変更された花部を示すキク系統を作製する方法を意図する。
【0066】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程、ならびにそこから植物またはその遺伝子改変子孫を再生させる工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0067】
本発明のさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質、ならびに固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程、ならびにそこから植物またはその遺伝子改変子孫を再生させる工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0068】
本発明のまたさらにもう一つの局面は、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質、ならびに固有のF3'Hおよび固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法を意図する。
【0069】
F3'5'H酵素は、ビオラsp、ペチュニアsp、シネラリアsp、サルビアsp、ビオラsp、リシアンサス(Lisianthus)sp、ゲンチアナ(Gentiana)sp、ソリア(Sollya)sp、サルビアsp、クリトリア(Clitoria)sp、ケネディア(Kennedia)sp、カンパヌラ(Campanula)sp、ラバンドゥラ(Lavandula)sp、バーベナ(Verbena)sp、トレニア(Torenia)sp、デルフィニウム(Delphinium)sp、ソラナム(Solanum)sp、シネラリアsp、ビチス(Vitis)sp、バビアナ・ストリクタ(Babiana stricta)、ピヌス(Pinus)sp、ピセア(Picea)sp、ラリックス(Larix)sp、ファセオラス(Phaseolus)sp、バシニウム(Vaccinium)sp、シクラメン(Cyclamen)sp、アイリス(Iris)sp、ペラルゴニウム(Pelargonium)sp、リパリエ(Liparieae)、ゲラニウム(Geranium)sp、ピスム(Pisum)sp、ラチラス(Lathyrus)sp、カタランタス(Catharanthus)sp、マルビア(Malvia)sp、ムクナ(Mucuna)sp、ビシア(Vicia)sp、セントポーリア(Saintpaulia)sp、ラガーストレミア(Lagerstroemia)sp、ボウキナ(bouchina)sp、プランバゴ(Plumbago)sp、ヒポカリプタス(Hypocalyptus)sp、ロドデンドロン(Rhododendron)sp、リナム(Linum)sp、マクロプチリウム(Macroptilium)sp、ハイビスカス(Hibiscus)sp、ヒドランゲア(Hydrangea)sp、シンビジウム(Cymbidium)sp、ミレッチア(Millettia)sp、ヘディサルム(Hedysarum)sp、レスペデザ(Lespedeza)sp、アスパラガス(Asparagus)sp、アンチゴノン(Antigonon)sp、ピスムsp、フリージア(Freesia)sp、ブルネラ(Brunella)sp、クラーキア(Clarkia)sp等を含む任意の起源に由来し得る。特に有用なF3'5'H酵素は、ブラックパンジー(ビオラsp)、シネラリアsp、ペチュニア・ハイブリダ、またはサルビアspに由来するものである。
【0070】
F3'5'H酵素の存在は、植物におけるデルフィニジンの産生の圧力をもたらす。キク植物において、この特徴は新規の成果である。デルフィニジンおよびデルフィニジンベースのフラボノイド分子は、遺伝子改変されていないキク植物においては、通常、観察されない。これは、キク植物にとって新しい色の作製を容易にする。
【0071】
本発明は、さらに、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示すキクまたはその変種の製造における、F3'5'H酵素をコードする遺伝子配列の使用を意図する。
【0072】
本発明は、さらに、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示すキクまたはその変種の製造における、F3'5'H酵素をコードし、かつ固有のF3'Hの発現をダウンレギュレートする遺伝子配列の使用を意図する。
【0073】
本発明は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示すキクまたはその変種の製造における、F3'5'H酵素および異種DFRをコードし、かつ固有のF3'Hおよび/またはDFRの発現をダウンレギュレートする遺伝子配列の使用も提供する。
【0074】
一般に、遺伝子配列は、選択されたプロモーターおよびターミネーターを含む。
【0075】
切り花、組織培養可能な細胞、再生可能な細胞、植物の部分、種、生殖物質(花粉を含む)は、全て、本発明に包含される。
【0076】
F3'5'Hをコードする核酸分子は、国際特許出願PCT/AU92/00334およびHolton et al,1993(前記)にも提供されている。これらの配列は、ペチュニア(国際特許出願PCT/AU92/00334およびHolton et al,1993(前記)を参照のこと)、タバコ(国際特許出願PCT/AU92/00334を参照のこと)、およびカーネーション(国際特許出願PCT/AU96/00296を参照のこと)においてフラボノイドの3',5'ヒドロキシル化を調節するために使用されている。ビオラ、サルビア、およびソリアのようなその他の種に由来するF3'5'Hのヌクレオチド配列が、クローニングされている(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)。これらの配列のうちのいずれかが、プロモーターおよび/またはターミネーターと組み合わせられて使用され得る。本発明は、SEQ ID NO:1もしくは3もしくは5もしくは7もしくは12(表1を参照のこと)によりコードされるか、あるいは、低いもしくは高いストリンジェンシー条件の下でSEQ ID NO:1もしくは3もしくは5もしくは7もしくは12のいずれかもしくはその相補型にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列または最適アラインメント後にSEQ ID NO:1もしくは3もしくは5もしくは7もしくは12と少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされるF3'5'Hを特に意図する。一つの特定の態様において、F3'5'Hをコードする核酸分子は、RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'を含む構築物pCGP2217の中にある。もう一つの態様において、F3'5'Hをコードする核酸分子は、RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'.35S 5':dschrysF3'H:ocs 3'を含む構築物pCGP3424の中にある。もう一つの態様において、F3'5'Hをコードする核酸分子は、RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'.RoseCHS 5':dschrysF3'H*:nos 3'を含む構築物pCGP3429の中にある。もう一つの態様において、F3'5'Hをコードする核酸分子は、carnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'を含む構築物pCGP2205の中にある。さらにもう一つの態様において、F3'5'Hをコードする核酸分子は、Cineraria gF3'5'Hを含む構築物pCGP3141の中にある。そのような植物は、TLCまたはHPLCにより検出されるようなデルフィニジンを産生する。これはデルフィニジンの「増大した」量とも呼ばれる。これは、遺伝子改変されていない植物におけるデルフィニジンの実質的にゼロの量と比べて増大している。
【0077】
SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3もしくはSEQ ID NO:5もしくはSEQ ID NO:7もしくはSEQ ID NO:12またはそれらの相補型にハイブリダイズすることができる核酸分子を画定するためのストリンジェンシーのレベルを決定する目的のため、低ストリンジェンシーには、ハイブリダイゼーションのための少なくとも約0%〜少なくとも約15% v/vホルムアミドおよび少なくとも約1M〜少なくとも約2M塩、ならびに洗浄条件のための少なくとも約1M〜少なくとも約2M塩が含まれ包含される。一般に、低ストリンジェンシーは、約25〜30℃から約42℃である。温度は変更されてもよく、より高い温度を、ホルムアミドを含める代わりに、かつ/または別のストリンジェンシー条件を与えるため使用してもよい。ハイブリダイゼーションのための少なくとも約16% v/v〜少なくとも約30% v/vホルムアミドおよび少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9M塩、ならびに洗浄条件のための少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9M塩を含み包含する中ストリンジェンシー、またはハイブリダイゼーションのための少なくとも約31% v/v〜少なくとも約50% v/vホルムアミドおよび少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15M塩、ならびに洗浄条件のための少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15M塩を含み包含する高ストリンジェンシーのような、別のストリンジェンシー条件が、必要に応じて適用されてもよい。一般に、洗浄はTm=69.3+0.41(G+C)%で実施される(Marmur and Doty,J.Mol.Biol.5:109,1962)。しかしながら、二重鎖DNAのTmは、ミスマッチ塩基対の数が1%増加する毎に1℃減少する(Bonner and Laskey,Eur.J.Biochem.46:83,1974)。ホルムアミドは、これらのハイブリダイゼーション条件において任意である。従って、特に好ましいレベルのストリンジェンシーは、以下のように定義される:低ストリンジェンシーは、25〜42℃における6×SSC緩衝液、1.0%w/v SDSであり;中ストリンジェンシーは、20℃〜65℃の範囲の温度における2×SSC緩衝液、1.0%w/v SDSであり;高ストリンジェンシーは、少なくとも65℃の温度における0.1×SSC緩衝液、0.1%w/v SDSである。
【0078】
少なくとも70%の同一性なる言及には、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100%の同一性が含まれる。SEQ ID NO:2または4または6または8または13のアミノ酸配列の類似性のレベルで、比較がなされてもよい。従って、SEQ ID NO:2または4または6または8または13に示されたアミノ酸配列との少なくとも70%の類似性を有するF3'5'H酵素をコードする核酸分子が、本明細書において意図される。同様に、少なくとも70%の類似性には、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100%の類似性または同一性が含まれる。
【0079】
F3'5'H酵素をコードする核酸分子は、一つまたは複数のプロモーターおよび/またはターミネーターを含む。一つの態様において、より高いpHを有する組織におけるF3'5'Hヌクレオチド配列の発現を指図するプロモーターが選択される。
【0080】
一つの態様において、プロモーター配列は、形質転換される宿主キク植物にネイティブであり、または、その領域が宿主植物において機能性である場合、別の起源に由来してもよい。その他の起源には、ノパリン、オクタピン、マンノピン、またはその他のオピンの生合成のための酵素をコードする遺伝子のプロモーターのようなアグロバクテリウムT-DNA遺伝子;ユビキチンをコードする遺伝子に由来するプロモーターのような植物由来のプロモーター;組織特異的プロモーター(例えば、Conklingらの米国特許第5,459,252号;Advanced TechnologyのWO 91/13992を参照のこと);(宿主特異的ウイルスを含む)植物ウイルス由来のプロモーター、または部分的にもしくは完全に合成のプロモーターが含まれる。(トウモロコシobi-1遺伝子由来のUbiプロモーター(例えば、米国特許第4,962,028号を参照のこと)のような)植物および(カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、CaMV 35Sのような)植物ウイルスから単離された様々なプロモーターを含む、キク植物において機能性である可能性のある多数のプロモーター(例えば、Greve,J.Mol.Appl.Genet.1:499-511,1983;Salomon et al,EMBO,J.3:141-146,1984;Garfinkel et al,Cell 27:143-153,1981;Barker et al,Plant Mol.Biol.2:235-350,1983を参照のこと)。その他の態様において、プロモーターは、対応するターミネーターpet D8 3'、nos 3'、ocs 3'、carnANS 3'、およびpetDFR 3'(ペチュニアに由来するDFR遺伝子に由来するターミネーター領域)と組み合わせられた、35S 5'、RoseCHS 5'、AmCHS 5'、chrysCHS 5'、petD8 5'、petRT 5'、carnANS 5'、cineraria F3'5'H 5'、BPF3'5'H#40 5'、R.rugosa DFR 5'、R.rugosa F3H 5'、および/またはペチュニアのDFR遺伝子に由来するプロモーター領域である。
【0081】
プロモーター配列は、転写を調節するシス作用性配列を含んでいてもよく、ここで、調節には、例えば、化学的もしくは物理的な抑制もしくは誘導(例えば、代謝物、光、もしくはその他の物理化学的な因子に基づく調節;例えば、線虫応答性プロモーターを開示しているWO 93/06710を参照のこと)、または(植物における葉、根、種子等に関連したもののような;例えば、根特異的プロモーターを開示している米国特許第5,459,252号を参照のこと)細胞分化に基づく調節が含まれる。
【0082】
利用され得るその他のシス作用性配列には、転写および/または翻訳のエンハンサーが含まれる。これらのエンハンサー領域は、当業者に周知であり、ATG開始コドンおよび隣接配列を含み得る。
【0083】
適当なプロモーターおよび/またはターミネーターと組み合わせられた、F3'5'H酵素をコードする核酸分子が、キクにおけるデルフィニジンのようなフラボノイド分子の量を改変するために使用される。デルフィニジンベースの分子の量の改変とは、正常な内因性または既存の活性レベルよりも最大30%、より具体的には30〜50%、さらに具体的には50〜75%、またはさらに具体的には75%以上高いまたは低いレベルの増大または減少に関する。任意の検出手段が本明細書において意図されるが、便利には、デルフィニジン量はTLCまたはHPLCにより検出される。
【0084】
従って、本発明は、組織が赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の範囲の色となるのに寄与する、組織においてデルフィニジンを産生する、F3'5'H酵素を産生するよう発現される遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物を提供する。
【0085】
本発明は、さらに、組織が赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の範囲の色となるのに寄与する、組織においてデルフィニジンを産生する、F3'5'H酵素および異種DFRを産生するよう発現される遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物を提供する。
【0086】
本発明のもう一つの局面は、組織が赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の範囲の色となるのに寄与する、組織においてデルフィニジンを産生する、F3'5'H酵素およびダウンレギュレートされた固有のF3'Hを産生するよう発現される遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物に関する。
【0087】
本発明のさらにもう一つの局面は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)より選択される色である組織に寄与する、組織においてデルフィニジンを産生する、F3'5'H酵素および異種DFRおよびダウンレギュレートされた固有のDFRを産生するよう発現される遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物に関する。
【0088】
本発明のさらにもう一つの局面は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)の範囲の色である組織に寄与する、組織においてデルフィニジンを産生する、F3'5'H酵素および異種DFRおよびダウンレギュレートされた固有のDFRおよびダウンレギュレートされたF3'Hを産生するよう発現される遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物に関する。
【0089】
本明細書において使用される「花部」という用語は、植物の顕花部分、または伸長した節間により栄養部分から通常分離されており、通常、個々の花、苞葉および花柄、および小花柄を含む、複数の花の顕花系をさす。上に示されたように、「トランスジェニック植物」なる言及は、「遺伝子改変植物」と読み替えられてもよく、第一世代トランスジェニック植物に最終的に由来する子孫またはハイブリッド系統を含む。
【0090】
本発明は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示し、かつ増大した量のデルフィニジンを含む、キク植物またはその変種の製造における、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝子配列の使用も意図する。
【0091】
本発明のもう一つの局面は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示し、かつ増大した量のデルフィニジンを含む、キク植物またはその変種の製造における、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝子配列、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質の使用を意図する。
【0092】
本発明のさらにもう一つの局面は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示し、かつ増大した量のデルフィニジンを含む、キク植物またはその変種の製造における、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝物質の使用に関する。
【0093】
本発明のさらにもう一つの局面は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示し、かつ増大した量のデルフィニジンを含む、キク植物またはその変種の製造における、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質、ならびに固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質の使用を意図する。
【0094】
本発明のまたさらにもう一つの局面は、赤色/紫色〜青色(スミレ色/紫色を含む)を有する組織を含む変更された花部を示し、かつ増大した量のデルフィニジンを含む、キク植物またはその変種の製造における、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする遺伝物質、ならびに異種DFRを発現する遺伝物質、ならびに固有のF3'Hおよび固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質の使用を提供する。
【0095】
本発明は、植物品種、特に、変更された色特徴を有するキクを開発するための新しいアプローチを表す。さらに、本発明は、例えば、調味料または食品添加物または健康製品または飲料またはジュースまたは着色料としての用途を有する、F3'5'H形質転換植物、特に、遺伝子改変キク植物の抽出物の生成を可能にする。飲料には、茶、ワイン、酒、コーヒー、乳、および乳製品が含まれ得るが、これらに限定はされない。
【0096】
「抽出物」なる言及には、精製されたまたは実質的に精製された画分または分子またはデルフィニジン含有部分が含まれる。
【0097】
本発明のもう一つの局面は、本発明の核酸配列の全部または一部を含有している遺伝子改変植物または遺伝子改変植物の植物部分または遺伝子改変植物の子孫からの抽出物の使用、特に、調味料または食品添加物または健康製品または飲料またはジュースまたは着色料として使用された場合の、その遺伝子改変植物からの抽出物の使用を意図する。特に、遺伝子改変植物は、デルフィニジンのようなデルフィニジンベースのフラボノイド化合物または分子を産生するキクである。
【0098】
さらに、種子のような植物部分の新規の色の品種の開発は、農業における有意義な機会を提示する。例えば、新規の色のキク種子は、植物のための専売タグとして有用である。
【0099】
本発明は、以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。この実施例においては、以下に概説されるような物質および方法が利用された。
【0100】
従った方法は、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring Harbor,NY,USA,1989またはSambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring Harbor,NY,USA,2001またはPlant Molecular Biology Manual (2nd edition),Gelvin and Schilperoot (eds),Kluwer Academic Publisher,The Netherlands,1994またはPlant Molecular Biology Labfax,Croy (ed),Bios scientific Publishers,Oxford,UK,1993に記載されたようなものであった。
【0101】
クローニングベクターpBluescriptおよびPCR scriptは、Stratagene(USA)より入手した。pCR7 2.1は、Invitrogen(USA)より入手した。
【0102】
大腸菌形質転換
使用した大腸菌株は、以下の通りであった。

M15大腸菌は大腸菌K12に由来し、表現型NalS、StrS、RifS、Thi-、Ara+、Gal+、Mtl-、F-、RecA+、Uvr+、Lon+を有する。大腸菌株の形質転換は、Inoueら(Gene 96:23-28,1990)の方法に従って実施した。
【0103】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス株および形質転換
使用した無毒化(disarmed)アグロバクテリウム・ツメファシエンス株は、AGL0(Lazo et al,Bio/technology 9:963-967,1991)であった。
【0104】
50mLのLB培養物(Sambrook et al,1989(前記))を接種し、28℃で振とうしながら16時間インキュベートすることにより調製された100μLのコンピテントAGL0細胞へ、5μgのプラスミドDNAを添加することにより、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL0にプラスミドDNAを導入した。次いで、細胞をペレット化し、0.5mLの85%(v/v)100mM CaCl2/15%(v/v)グリセロールに再懸濁させた。DNA-アグロバクテリウム混合物を、液体N2中で2分間インキュベートすることにより凍結させ、次いで、37℃で5分間インキュベートすることにより解凍した。次いで、DNA/細菌混合物を、さらに10分間、氷上に置いた。次いで、細胞を1mLのLB(Sambrook et al,1989(前記))培地と混合し、28℃で16時間振とうしながらインキュベートした。プラスミドを包含するA.ツメファシエンスの細胞を、50μg/mLテトラサイクリンまたは100μg/mLゲンタマイシンのような適切な抗生物質を含有しているLB寒天プレートで選択した。A.ツメファシエンス中のプラスミドの確認を、抗生物質耐性形質転換体から単離されたDNAの制限エンドヌクレアーゼマッピングにより行った。
【0105】
DNAライゲーション
DNAライゲーションは、製造業者によって推奨された手法に従って、Amersham LigationキットまたはPromega Ligationキットを使用して実施した。
【0106】
DNA断片の単離および精製
断片は、一般に、1%(w/v)アガロースゲル上に単離され、製造業者によって推奨された手法に従い、QIAEX II Gel Extractionキット(Qiagen)またはBresacleanキット(Bresatec,Australia)を使用して精製された。
【0107】
制限エンドヌクレアーゼ消化後の突出末端の修復
突出5'末端は、標準的なプロトコル(Sambrook et al,1989(前記))に従って、DNAポリメラーゼIクレノウ断片を使用して修復した。突出3'末端は、標準的なプロトコル(Sambrook et al,1989(前記))に従って、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼを使用して修復した。
【0108】
核酸からのリン酸基の除去
再環化を防止するため、クローニングベクターからリン酸基を除去するために、典型的には、シュリンプアルカリホスファターゼ(SAP)[USB]を、製造業者の推奨に従って使用した。
【0109】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
特記しない限り、鋳型としてプラスミドDNAを使用したPCR条件は、全容量50μLでの、2ngのプラスミドDNA、100ngの各プライマー、2μLの10mM dNTP混合物、5μLの10×Taq DNAポリメラーゼ緩衝液、0.5μLのTaq DNAポリメラーゼの使用を含んだ。サイクリング条件は、94℃5分の初期変性工程、それに続く、94℃20秒、50℃30秒、および72℃1分の35サイクル、72℃10分間の最終処理を含み、その後、4℃で保管した。
【0110】
PCRは、Perkin Elmer GeneAmp PCR System 9600において実施した。
【0111】
DNAプローブの32P標識
DNA断片は、製造業者によって推奨された方法に従って、Gigaprimeキット(Geneworks,AUSTRALIA)またはDecaprimeキット(AMBION,USA)を使用して、50μCiの[α-32P]-dCTPにより放射標識した。未取り込みの[α-32P]-dCTPは、Sephadex G-50(Fine)カラムまたはMicrobiospin P-30 Trisクロマトグラフィカラム(BioRad)でのクロマトグラフィにより除去した。
【0112】
プラスミド単離
適切な抗生物質選択(例えば、100μg/mLアンピシリンまたは10〜50μg/mLテトラサイクリン等)を含むLBブロス(Sambrook et al,1989(前記))を接種し、振とうしながらおよそ16時間37℃(大腸菌の場合)または29℃(A.ツメファシエンスの場合)で液体培養物をインキュベートすることにより、単一コロニーをインサートについて分析した。アルカリ溶解法(Sambrook et al,1989(前記))を使用するか、またはWizardPlus SV minipreps DNA精製系(Promega)もしくはQiagen Plasmid Miniキット(Qiagen)を使用して、プラスミドDNAを精製した。インサートの存在が決定された後、アルカリ溶解法(Sambrook et al,1989(前記))またはQIAfilter Plasmid Midiキット(Qiagen)を使用して、製造業者によって推奨された条件に従って、大量のプラスミドDNAを50mLの一夜培養物から調製した。
【0113】
DNA配列分析
DNA配列決定は、Applied BiosystemsのPRISM(商標)Ready Reaction Dye Primer Cycle Sequencingキットを使用して実施された。製造業者によって供給されたプロトコルに従った。サイクル配列決定反応は、Perkin Elmer PCR機(GeneAmp PCR System 9600)を使用して実施された。配列決定の実行は、一般に、University of Queensland,St Lucia,Brisbane,Australia、およびThe Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research (Melbourne,Australia)において、Australian Genome Research Facilityにより実施された。
【0114】
配列は、MacVector(商標)アプリケーション(10.0.2以前のバージョン)[MacVector Inc,Cary,North Carolina,USA]を使用して分析された。
【0115】
Genbank、SWISS-PROT、およびEMBLデータベースに対する相同性検索は、FASTAプログラムおよびTFASTAプログラム(Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444-2448,1988)またはBLASTプログラム(Altschul et al,J.Mol.Biol.215(3):403-410,1990)を使用して実施された。配列類似率は、デフォルト設定を使用して、LALIGNプログラム(Huang and Miller,Adv.Appl.Math.12:373-381,1991)またはMacVector(商標)アプリケーション(MacVector Inc,USA)内のClustalWプログラム(Thompson et al,Nucleic Acids Research 22:4673-4680,1994)を使用して入手された。
【0116】
多重配列アラインメントは、デフォルト設定を使用して、ClustalW(Thompson et al,1994(前記))を使用して作製された。
【0117】
植物形質転換
植物形質転換は、選択可能マーカー遺伝子カセットに依る適切な選択計画を使用した、国際特許出願PCT/US91/05805、米国特許第251,392号(米国登録第5,567,599号)に記載されたようなものである。nptII選択可能マーカー遺伝子のためのカナマイシン選択およびSuRB選択可能マーカー遺伝子のためのクロルスルフロン選択。その他の方法も利用され得る。例えば、Aida et al,Breeding Science,54:51-58,2004;Dolgov et al,Acta Hort 447,329-334,1997;Toguri et al,Plant Biotechnology,20:121-127,2003;Ledger et al,Plant Cell Reports,10:195-199,1991;da Silva,Biotechnology Advances 21,715-766,2003。
【0118】
キク品種は、CleanGrow AustraliaまたはSeikoen,Japanより入手された。
【0119】
トランスジェニック分析
色コード決定
観察された色の説明を提供するため、英国王立園芸協会のカラーチャート第3版および/または第5版(London,UK)(1995年および/または2007年)を使用した。それらは、観察された色表現型を記載するための代替的な手段を提供する。しかしながら、指定された数字は、知覚された色についての案内としてのみ解釈されるべきであり、入手され得る可能性のある色を限定するものと見なされるべきではない。
【0120】
キク花部は、一般に、小花と呼ばれる多くの花からなる。一般に、周辺小花および中心小花という二種類の小花が存在する。インプルーブドリーガンのようなデージー型のキクにおいては、外側部分が周辺小花または舌状小花であり、花弁が、観察された色の大部分に寄与し、中心はディスク(中心)小花または管状小花から構成される(National Chrysanthemum Society,Inc.,USA,2001,Glimn-Lacy and Kaufman,Botany Illustrated,Introduction to Plants,Major Groups,Flowering Plant Families,2nd ed,Springer,USA,2006)。
【0121】
本明細書に報告された花弁色は、周辺小花または舌状小花からのものである。
【0122】
クロマトグラフィ分析
薄層クロマトグラフィ(TLC)および高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析は、一般に、Bruglieraら(Plant J.5:81-92,1994)に記載されたようにして実施された。これらの技術は、デルフィニジンのようなデルフィニジンベースのフラボノイド分子の検出を可能にする。
【0123】
アントシアニジンの抽出
HPLC分析前に、花弁および雄ずいの抽出物中に存在するアントシアニンおよびフラボノール分子を、アントシアニジンまたはフラボノールコアからグリコシル部分を除去するために酸加水分解した。アントシアニジンおよびフラボノールの標準物を、花抽出物中に存在する化合物の同定を補助するために使用した。
【0124】
反応混合物中のアントシアニジンは、10分間で50%Bから60%Bにし、次いで10分間60%B、最後に5分間で60%Bから100%Bにする勾配条件を使用して、勾配溶出を介してHPLCにより分析された。ここで、溶媒AはTFA:H2O(5:995)からなり、溶媒Bはアセトニトリル:TFA:H2O(500:5:495)からなっていた。Asahi Pac ODP-50カートリッジカラム(250mm×4.6mm ID)が、逆相クロマトグラフィ分離のために使用された。流速は1mL/分であり、温度は40℃であった。アントシアニジン化合物の検出は、400〜650nmでShimadzu SPD-M6A三次元検出器を使用して実施された。
【0125】
アントシアニジンピークは、公知の標準物、即ち、デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジン、シアニジン、およびペオニジンを参照して同定された。
【0126】
花発達の段階
キク花部は、以下のように定義された発達段階において採集した。
段階1:芽は閉じている、花弁は可視でない。
段階2:花芽が開き始める:花弁の先端が可視となる。
段階3:ほぼ全ての花弁の先端が露出される。
段階4:外側の花弁が茎に対して45°の角度となる。
段階5:花部が完全に開く。
【0127】
TLCまたはHPLC分析のために、最大色素蓄積の段階にある段階4の花部から周辺花弁を収集した。
【0128】
ノーザンブロット分析のためには、フラボノイド経路遺伝子の最大発現の段階にある段階3〜4の花部から周辺花弁を収集した。
【0129】
使用されたペチュニア・ハイブリダ栽培品種を、表2に提示する。
【0130】
(表2)ペチュニア・ハイブリダ栽培品種の遺伝子型

INRA=Institut National de la Recherche Agronomique, Cedex, France
【0131】
ノーザン/RNAブロット分析
移された遺伝子の転写は、RNAを単離し、予想された転写物の量およびサイズを推定することによりモニタリングされた。ノーザンブロット分析を用いて、花弁における特定の転写物の定常状態レベルをモニタリングした。転写物は、使用された遺伝子から予想される推定サイズに基づき、完全または全長であることが決定された。一般に、cDNAがコーディング配列として使用された場合には、予想される転写物のサイズは、cDNAのサイズ+融合したプロモーター断片の5'非翻訳成分+融合したターミネーター断片に由来する3'非翻訳配列であろう。cDNA領域が推定ポリアデニル化部位を含有しており、ターミネーター領域が推定ポリアデニル化部位を含有している場合には、二種の転写物が検出されるであろう。一つは、cDNA配列内のポリアデニル化部位から直ぐ下流で起こるポリアデニル化と一致するサイズのものであろう。第二の転写物は、より大きく、ターミネーター断片内のポリアデニル化部位の後にポリアデニル化された転写物と一致しているであろう。
【0132】
全RNAは、製造業者によって推奨された手法に従い、Plant RNAeasyキット(QIAGEN)を使用して、またはTurpenおよびGriffith(BioTechniques 4:11-15,1986)の方法を使用して、花弁または葉から単離した。
【0133】
RNA試料(5μg)は、40mMモルホリノプロパンスルホン酸(pH7.0)、5mM酢酸ナトリウム、0.1mM EDTA(pH8.0)を含有しているランニング緩衝液を使用して、2.2Mホルムアルデヒド/1.2%w/vアガロースゲルでの電気泳動に供した。RNAは臭化エチジウムにより染色され、UV光下で可視化された。リボソームRNAが、一般に、RNAが細胞内または細胞外のリボヌクレアーゼにより分解されていないことを確認するための案内として使用された。RNAは、Hybond-Nメンブレンフィルター(Amersham)に転写し、製造業者によって記載されたように処理した。
【0134】
RNAブロットは32P標識断片によりプローブした。メンブレンフィルターのプレハイブリダイゼーション(42℃で1時間)およびハイブリダイゼーション(42℃で16時間)は、50%v/vホルムアミド、1M NaCl、1%w/v SDS、10%w/v硫酸デキストランにおいて実施した。メンブレンフィルターは、一般に、2×SSC、1%w/v SDSで、65℃で、1〜2時間洗浄し、次いで、0.2×SSC、1%w/v SDSで、65℃で、0.5〜1時間洗浄した。メンブレンフィルターは、一般に、-70℃で、16〜72時間、増感紙を用いてKodak XARフィルムに露光させた。
【0135】
DNA構築物調製において使用される略語は、表3に定義される。
【0136】
(表3)構築物調製において使用される略語




【0137】
実施例1
キメラF3'5'H遺伝子のキクへの導入
アントシアニジン分子のB環のヒドロキシル化のパターンは、花弁色の決定において重要な役割を果たす。ジヒドロフラボノールDHMの産生は、ペチュニアのような植物において、紫色/青色のデルフィニジンベースの色素の産生をもたらす。F3'5'H活性の欠如は、ローザ(例えば、バラ)、ガーベラ(Gerbera)(例えば、ガーベラ)、アンチリナム(例えば、キンギョソウ)、ダイアンサス(例えば、カーネーション)、およびデンドランセマ(例えば、キク)のような多くの植物種における青色花の欠如と相関している。
【0138】
変異型ペチュニア系統(Holton et al,1993(前記)および国際特許出願PCT/AU92/00334)、タバコ花(国際特許出願PCT/AU92/00334)、カーネーション花(国際特許出願PCT/AU96/00296)、およびバラ花(国際特許出願PCT/AU03/01111)におけるデルフィニジンベースの色素の産生の成功に基づき、類似のキメラF3'5'H遺伝子を、選択されたまたは所望のデルフィニジンベースの色素を産生し、花色を改変するため、キクへ導入した。
【0139】
キメラF3'5'H遺伝子発現カセットは表4に示される。
【0140】
(表4)キクの形質転換において使用された形質転換ベクター構築物に含有されているキメラF3'5'H遺伝子発現カセットの概要(略語の説明については、表3を参照のこと)

【0141】
キメラF3'5'H遺伝子構築物の調製
形質転換ベクターpCGP90(Mac:petHf1:mas 3')
形質転換ベクターpCGP90は、アグロバクテリウムのマンノピンシンターゼ(mas)遺伝子に由来するターミネーター断片(mas 3')と組み合わせられた、アグロバクテリウムのmas遺伝子に由来するプロモーター断片およびCaMV 35Sエンハンサー領域の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNAP)の35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向にある[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]。形質転換ベクターpCGP90の構築は、Holton et al,1993(前記)に記載されている。
【0142】
形質転換ベクターpCGP1452(AmCHS 5':petHf1:petD8 3')
プラスミドpCGP1452は、ペチュニアリン脂質転移タンパク質(PLTP)遺伝子に由来するターミネーター断片(petD8 3')[Holton,1992(前記)]と組み合わせられた、アンチリナム・マジュスカルコンシンターゼ遺伝子(CHS)に由来するプロモーター断片[Sommer and Saedler,1986(前記)]の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNA Plant Technologies,USA = DNAP)(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB遺伝子に対してタンデム方向にある。pCGP1452の構築は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0143】
形質転換ベクターpCGP1455(ゲノムpetHf1)
キメラゲノムペチュニアF3'5'H Hf1(ゲノムpetHf1)クローンは、下記のような様々なペチュニアF3'5'Hのゲノムクローン断片およびcDNAクローン断片を使用して構築された。
【0144】
中間プラスミドpCGP1352の構築
まず、ペチュニア栽培品種V23から単離されたゲノムDNAを、制限エンドヌクレアーゼEcoRVにより完全に消化した。消化されたDNAを、ショ糖密度勾配を使用してサイズ分画した。製造業者によって推奨されたような方法に従い、1〜3kbの画分を含有しているDNAを、EcoRIアダプターとライゲートさせ、次いで、λZAPII EcoRI(Stratagene)とライゲートさせ、ペチュニアV23サブゲノムライブラリーを与えるためにパッケージングした。
【0145】
タンパク質のN末端部分を表すペチュニアF3'5'H petHf1 cDNAクローンの5'末端を含有しており、5'非コーディング配列を含有している、pCGP602に由来するEcoRI-EcoRV断片の32P標識断片を用いて、V23サブゲノムライブラリーのPfusをスクリーニングした(Holton et al,1993(前記))。ハイブリダイズしたクローンのうちの一つを、pCGP1352と名付けた。それは、タンパク質のN末端部分を表す、およそ2kbのペチュニアF3'5'H遺伝子のプロモーター領域および5'コーディング配列を含有していた。
【0146】
中間プラスミドpCGP1354、pCGP1355、および1356の構築
3'非コーディング領域を含む完全ペチュニアF3'5'H(petHf1)cDNAクローン(Holton et al,1993(前記))を含有しているpCGP602(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)由来のEcoRI-KpnI断片の32P標識断片によっても、ライブラリーをスクリーニングした。一つのハイブリダイズしたクローンを、pCGP1354と名付けた。それは、ペチュニアF3'5'H Hf1のコーディング領域および二つのイントロンを含有していた。pCGP1355およびpCGP1356(いずれも、1.3kbのインサートを含む)と名付けられた、さらに二つのハイブリダイズしたクローンは、ペチュニアF3'5'H Hf1遺伝子の3'非コーディング領域と共に、タンパク質のC末端部分を表す配列を含有していた。
【0147】
中間プラスミドpCGP1358の構築
pCGP1352(上記)に由来するおよそ2.4 kbのBstX1断片(ペチュニアF3'5'H Hf1遺伝子のプロモーター領域、およびF3'5'Hタンパク質のN末端部分を表す配列を含有している)を、pCGP176(Holton et al,1993(前記))に由来するBstXI断片(3'非コーディング領域と共にペチュニアF3'5'H Hf1 cDNAクローンのコーディング領域を含有している)とライゲートさせた。得られたプラスミドをpCGP1358と名付けた。
【0148】
中間プラスミドpCGP1359の構築
完全ゲノムペチュニアF3'5'H Hf1クローンを、以下の断片をライゲートさせることにより構築した:pCGP1354(上記)に由来するEcoRI(その認識配列は最初のイントロンに位置している)-PvuII断片、pCGP176(Holton et al,1993(前記))に由来するPvuII-HindIII断片(ペチュニアF3'5'H Hf1コーディング領域の大部分を含有している)、およびpCGP176(Holton et al,1993(前記))のHindIII-EcoRI断片(3'非コーディング配列およびクローニングベクターpBluescript SK-(Stratagene)と共に、タンパク質のC末端部分を表す配列を保持している)。得られたプラスミドをpCGP1359と名付けた。
【0149】
中間プラスミドpCGP649の構築
ゲノムHf1配列を保有している2.5kbの産物を、以下のプライマー:

および鋳型としてのP.ハイブリダ栽培品種Th7から単離されたゲノムDNAを使用して増幅した。増幅産物を、pBluescript(STRATAGENE)のEcoRV ddT充填部位へクローニングし、プラスミドpCGP649を得た。
【0150】
中間プラスミドpCGP1360の構築
制限エンドヌクレアーゼBstXIによるプラスミドpCGP1352(上記)の消化により、断片(プロモーター領域およびF3'5'Hタンパク質のN末端部分を表す配列を保持している)を放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP649(P.ハイブリダ栽培品種Th7を鋳型として使用して増幅されたHf1ゲノム配列をpBluescript SK-骨格ベクターの中に保持している)(上記)のBstXI末端とライゲートさせ、プラスミドpCGP1360を得た。
【0151】
中間プラスミドpCGP1361の構築
pCGP1360(Hf1プロモーター領域、タンパク質のN末端部分をコードする配列、および第一イントロンのセクションを保持している)(上記)のおよそ2.5 kbのEcoRI断片を、プラスミドpCGP1359(上記)のEcoRI末端とライゲートさせ、プラスミドpCGP1361(完全ゲノムHf1配列を含有している)を得た。
【0152】
中間プラスミドpCGP1363の構築
RE SacIおよびBstBIによる消化により、プラスミドpCGP1361(上記)から4.5kbの断片を放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP1356(上記)のSacI末端およびBstBI末端とライゲートさせ、pCGP1363を得た。
【0153】
形質転換ベクターpCGP1455の構築
RE ApaIおよびSacIによる消化により、ペチュニアゲノムF3'5'H Hf1クローンを保持している6kbの断片を、プラスミドpCGP1363から放出させた。末端を修復し、断片を精製し、プラスミドpWTT2132のSmaI末端とライゲートさせた。選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのペチュニアゲノムF3'5'H Hf1クローンの正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析によって確認した。得られたプラスミドをpCGP1455と名付けた。
【0154】
形質転換ベクターpCGP1457(petD8 5':petHf1:pet D8 3')
プラスミドpCGP1457は、ペチュニアPLTP遺伝子に由来するターミネーター断片(petD8 3')と組み合わせられた、ペチュニアPLTP遺伝子に由来するプロモーター断片(petD8 5')の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]の35S 5':SuRB遺伝子に対してタンデム方向にある。pCGP1457の構築は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0155】
形質転換ベクターpCGP1476(PetCHS 5':petHf1:mas 3')
形質転換ベクターpCGP1476は、アグロバクテリウムのマンノピンシンターゼ遺伝子に由来するターミネーター断片(mas 3')(Janssen and Gardner,1989(前記))と組み合わせられた、P.ハイブリダCHS-A遺伝子に由来するプロモーター断片(PetCHS 5')[Koes,1988(前記)]の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]の35S 5':SuRB遺伝子に対してタンデム方向にある。
【0156】
中間プラスミドpCGP669(pBluescript II SKの中のPetCHS 5'断片)の構築
PetCHS 5'プロモーター断片を保持しているおよそ800bpの産物を、以下のプライマー:

および鋳型としてのP.ハイブリダcv.V30から単離されたゲノムDNAを使用して増幅した。
【0157】
増幅産物を、ddTテールを有するpBluescript II SK(STRATAGENE)とライゲートさせ、配列決定した。プラスミドをpCGP669と名付けた。
【0158】
中間プラスミドpCGP672(PetCHS 5':mas 3')の構築
まず、プラスミドpCGP669(上記)を、RE EcoRIによる消化により直鎖化した。突出末端を修復した後、直鎖化されたプラスミドを、制限エンドヌクレアーゼHindIIIにより消化し、PetCHS 5'プロモーター断片を保持しているおよそ800bpの断片を放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP293(Mac 5':mas 3'発現カセットを含有している形質転換ベクター)[Brugliera et al,1994(前記)に記載されている]のXbaI(修復された末端)/HindIII末端とライゲートさせた。Mac 5'プロモーター断片のPetCHS 5'プロモーター断片への正確な交換を、ゲンタマイシン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。PetCHS 5':mas 3'発現カセットを含有している得られたプラスミドを、pCGP672と名付けた。
【0159】
pCGP483(pBI221骨格の中のAmCHS 5':petHf1:petD8 3')の構築
翻訳開始部位の5'側にある1.2kbのアンチリナム・マジュスCHS遺伝子断片(Sommer and Saedler,1986(前記))と、推定終止コドンの3'側にあるpCGP13ΔBam(Holton,1992(前記))由来の0.7 kbのSmaI/XhoI PLTP断片(petD8 3')との間に、pCGP601(国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている)由来の1.6 kbのBclI/FspIペチュニアF3'5'H(petHf1)断片をクローニングすることにより、ペチュニアPLTPターミネーター(petD8 3')と組み合わせられたアンチリナム・マジュスCHS(AmCHS 5')プロモーターの制御下にあるキメラペチュニアF3'5'H遺伝子を構築した。得られたpBluescribe(STRATAGENE)骨格ベクター内のプラスミドを、pCGP483と名付けた。
【0160】
中間プラスミドpCGP1471(PetCHS 5':petHf1:mas 3')の構築
制限エンドヌクレアーゼXbaIおよびBamHIによる消化により、petHf1 cDNAクローンを保有している1.6kbの断片を、プラスミドpCGP483(上記)から放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP672(上記)のXbaI/BamHI末端とライゲートさせた。AmCHS 5'プロモーター断片とpetD8 3'ターミネーター断片との間へのpetHf1 cDNAクローンの正確な挿入を、ゲンタマイシン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドを、pCGP1471と名付けた。
【0161】
形質転換ベクターpCGP1476(PetCHS 5':petHf1:mas 3')の構築
まず、プラスミドpCGP1471を、制限エンドヌクレアーゼHindIIIにより部分消化した。突出末端を修復し、部分消化されたプラスミドを、制限エンドヌクレアーゼPstIによりさらに消化した。PetCHS 5':petHf1:mas 3'発現カセットを保有している3.2kbの断片を精製し、TiプラスミドpWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]のSmaI/PstI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向での発現カセットの正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られた形質転換ベクターをpCGP1476と名付けた。
【0162】
形質転換ベクターpCGP1616(petRT 5':petHf1:nos 3')
形質転換ベクターpCGP1616は、アグロバクテリウムのノパリンシンターゼ遺伝子に由来するターミネーター断片(nos 3')(Depicker,et al,1982(前記))と組み合わせられた、P.ハイブリダ3RT遺伝子に由来するプロモーター断片(petRT 5')[Brugliera,1994(前記)]の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]の35S 5':SuRB遺伝子に対してタンデム方向にある。pCGP1616の構築は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0163】
形質転換ベクターpCGP1627(ChrysCHS 5':petHf1:nos 3')
形質転換ベクターpCGP1627は、アグロバクテリウムのノパリンシンターゼ(nos)遺伝子に由来するターミネーター断片(nos 3')と組み合わせられた、キクのカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子に由来するプロモーター断片の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNAP)の35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向にある。
【0164】
キクCHSプロモーターの単離
キクCHSゲノムクローンの単離、およびchrysCHS 5':GUS:nos 3'発現カセットを含有している中間プラスミドpCGP1622の調製は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0165】
中間プラスミドpCGP1624(chrysCHS 5':petHf1:nos 3')の構築
制限エンドヌクレアーゼBspHIおよびXmaIによる消化により、ペチュニアF3'5'H(petHf1)cDNAクローンを、プラスミドpCGP1303(国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている)から放出させた。ペチュニアF3'5'H(petHf1)cDNAクローンを含有している1.6kbの断片を精製し、pCGP1622のNcoI/XmaI末端とライゲートさせた。断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。chrysCHS 5':petHf1:nos 3'発現カセットを含有している得られたプラスミドを、pCGP1624と名付けた。
【0166】
形質転換ベクターpCGP1627の構築
chrysCHS 5':petHf1:nos 3'遺伝子を含有している4.5kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼPstIおよびBglIIによる消化により、プラスミドpCGP1624から放出させた。精製された断片を、pWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]のPstI/BamHI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのchrysCHS 5':petHf1:nos 3'遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られた形質転換ベクターをpCGP1627と名付けた。
【0167】
形質転換ベクターpCGP1633(ChrysCHS 5':petHf1:petRT 3')
プラスミドpCGP1633は、ペチュニア・ハイブリダの3RT遺伝子(Brugliera,1994(前記))に由来するターミネーター断片(petRT 3')と組み合わせられた、キクのカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子に由来するプロモーター断片の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNAP)の35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向にある。
【0168】
中間プラスミドpCGP1630(chrysCHS 5':petHf1:petRT 3')の構築
制限エンドヌクレアーゼSacIおよびBamHIによる消化により、petRT 3'ターミネーター断片を、プラスミドpCGP1610(Brugliera,1994(前記))から放出させた。2.5kbの断片を精製し、pCGP1624(上記)のSacI/BglII末端とライゲートさせた。断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。chrysCHS 5':petHf1:petRT 3'発現カセットを含有している得られたプラスミドを、pCGP1630と名付けた。
【0169】
形質転換ベクターpCGP1633(chrysCHS 5':petHf1:petRT 3')の構築
chrysCHS 5':petHf1:petRT 3'遺伝子を含有している6.6kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼPstIによる消化により、プラスミドpCGP1630から放出させた。精製された断片を、pWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]のPstI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのchrysCHS 5':petHf1:petRT 3'遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。プラスミドをpCGP1633と名付けた。
【0170】
形質転換ベクターpCGP1638(CaMV 35S:petHf1:ocs 3')
形質転換ベクターpCGP1638は、オクトピンシンターゼターミネーター(ocs 3')と組み合わせられた、CaMV 35Sプロモーター(35S 5')の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。ペチュニアクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子(Cab 22遺伝子)[Harpster et al,1988(前記)]由来のおよそ60bpの5'非翻訳リーダー配列が、CaMV 35Sプロモーター断片とペチュニアF3'5'H petHf1 cDNAクローンとの間に含まれている。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、TiプラスミドベクターpWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]の35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向にある。形質転換ベクターpCGP1638の構築は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0171】
形質転換ベクターpCGP1860(RoseCHS 5':petHf1:nos 3')
形質転換ベクターpCGP1860は、アグロバクテリウムのノパリンシンターゼ遺伝子に由来するターミネーター断片(nos 3')と組み合わせられた、ローザ・ハイブリダのカルコンシンターゼ遺伝子に由来するプロモーター断片(RoseCHS 5')の制御下で、キメラペチュニアF3'5'H(petHf1)遺伝子を含有している。キメラペチュニアF3'5'Hカセットは、プラスミドpWTT2132(DNAP)[国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと]の35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向にある。形質転換ベクターpCGP1860の構築は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0172】
形質転換ベクターpCGP2119(CaMV 35S:salvia F3'5'H:ocs 3')
形質転換ベクターpCGP2119は、プラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向で、キメラCaMV 35S:salvia F3'5'H:ocs 3'遺伝子カセットを含有している。pCGP2119の構築は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0173】
形質転換ベクターpCGP2205(carnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3')
形質転換ベクターpCGP2205(図2)は、プラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向で、キメラcarnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'遺伝子カセットを含有している。
【0174】
カーネーションANSゲノムクローン(pCGP787)の単離
Sau3A部分消化物を使用して、EMBL 3ラムダベクター(STRATAGENE)において、ダイアンサス・カリオフィルスcv.ラグナ(Laguna)DNAからゲノムDNAライブラリーを構築した。消化されたゲノムDNAを、グリセロール密度勾配でサイズ分画し、15〜20kbの範囲のDNA断片を含有している画分をプールし、EMBL3λベクターのBamHI末端とライゲートさせた。ライゲーション混合物を、Gigapack XL Gold(PROMEGA)を使用してパッケージングした。ライブラリーの全サイズは、1×106組換え体であった。
【0175】
全部で300,000pfuのラグナゲノムライブラリーを、pCGP786由来のカーネーションANS cDNAクローンの32P標識断片によりデュプリケートでスクリーニングした(国際PCT出願PCT/AU96/00296を参照のこと)。ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェンシー条件(42℃、50%ホルムアミド、0.1%PVP、0.1%BSA、0.1%フィコール、1%SDS、100μg/mL変性ニシン精子DNA)を使用して実施された。洗浄は、65℃で、2×SSC/1%SDSおよび0.2×SSC/1%SDSであった。続いて、ゲノムクローン(4.3)を精製し、さらに特徴決定した。ゲノムクローンの8kbのHindIII断片を、さらなる分析のため、pBluescript KSへとサブクローニングした。得られたプラスミドをpCGP787と名付けた。
【0176】
中間プラスミドpCGP1274(carnANS 5')の構築
カーネーションANS遺伝子由来のプロモーター領域を含有しているおよそ2.5 kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼEcoRIおよびBamHIによる消化により、pCGP787(上記)から放出させた。断片を精製し、pBluescript KSのEcoRI/BamHI末端とライゲートさせ、プラスミドpCGP793を得た。この2.5kbの断片は、ANS遺伝子の5'コーディング配列の200bpも含有していた。次いで、ATGコドンから5'上流にXbaI部位を導入するプライマーを使用したPCRにより、プロモーター領域の3'末端を増幅した。次いで、増幅された700bpのPCR断片を、NdeI/XbaIにより消化し、pCGP793のNdeI/XbaI末端とライゲートさせ、コーディング配列の200bpを含まずにANSプロモーターを保持している2.3kbの断片を作製した。この新しいプラスミドをpCGP1274と名付けた。
【0177】
中間プラスミドpCGP1275(carnANS 5':carnANS 3')の構築
プラスミドpCGP795(上記)を、制限エンドヌクレアーゼEcl136II/XbaIにより消化し、0.7kbのANSターミネーター保持断片を放出させた。断片を精製し、pCGP1274のApaI(平滑末端化)/XbaI末端とライゲートさせ、プラスミドpCGP1275(カーネーションANS遺伝子のプロモーター断片およびターミネーター断片を含有しており、クローニングを容易にするためにマルチクローニング部位が二つの断片を分断している)[carnANS 5':carnANS 3']を作製した。
【0178】
中間プラスミドpCGP2150(carnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3')の構築
プラスミドpCGP1959(BPF3'5'H#18 cDNAクローンを含有している)[国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている]を、制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびAsp718により消化した。末端を修復し、精製されたBPF3'5'H#18断片を、pCGP1275(carnANS 5':carnANS 3'を含有している )の修復されたPstI/XbaI末端とライゲートさせ、プラスミドpCGP2150(carnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'発現カセットを含有している )を作製した。
【0179】
形質転換ベクターpCGP2205の構築
キメラcarnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'遺伝子を、制限エンドヌクレアーゼClaIによる消化により、pCGP2150(上記)から放出させた。およそ4.8kbの断片のClaI末端を修復し、断片を単離し、精製し、プラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の修復されたAsp718I末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのcarnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。形質転換ベクターをpCGP2205と名付けた(図2)。
【0180】
形質転換ベクターpCGP2217(Rose CHS:BPF3'5'H#18:nos 3')
形質転換ベクターpCGP2217は、TiプラスミドpCGP1988の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、RoseCHS:Viola F3'5'H#18:nos 3'発現カセットを含有している(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)。
【0181】
バラCHSプロモーターの単離
バラCHSゲノムクローンの単離、ならびにバラ由来のCHS遺伝子の2.7〜3.0kbのプロモーター断片を含有しているプラスミドpCGP1116およびpUC18骨格の中にRoseCHS 5':GUS:nos 3'発現カセットを含有しているpCGP197の調製は、国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている。
【0182】
中間プラスミドpCGP197(pUC18骨格の中のRoseCHS 5':GUS:nos 3')の構築
バラカルコンシンターゼ(CHS)プロモーターを保持しているおよそ3.0 kbの断片(RoseCHS 5')を、制限エンドヌクレアーゼHindIIIおよびAsp718による消化により、プラスミドpCGP1116から放出させた。断片を精製し、ベクター骨格、β-グルクロニダーゼ(GUS)断片、およびnos 3'断片を含有している、pJB1(Bodeau,Molecular and genetic regulation of Bronze-2 and other maize anthocyanin genes.Dissertation,Stanford University,USA,1994)由来のHindII/Asp718断片とライゲートさせた。GUSコーディング配列の上流へのバラCHSプロモーター断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpCGP197と名付けた。
【0183】
中間プラスミドpCGP2201(pBluescript骨格の中のRose CHS 5':nos 3')の構築
まず、プラスミドpCGP197(pUC18骨格の中にRoseCHS 5':GUS:nos 3'を含有している)を、制限エンドヌクレアーゼHindIIIによる消化により直鎖化した。突出HindIII末端を修復し、次いで、バラCHSプロモーター断片を、制限エンドヌクレアーゼSalIによる消化により放出させた。およそ2.8kbの断片を精製し、プラスミドpCGP1986(pBluescript骨格の中にnosターミネーター断片を含有している)のXhoI(修復された末端)/SalI末端とライゲートさせた。nosターミネーター断片の前へのバラCHSプロモーター断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpCGP2201と名付けた。
【0184】
中間プラスミドpCGP2203(pBluescript骨格の中のRose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3')の構築
制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびAsp718による消化により、BPF3'5'H#18 cDNAクローンを、プラスミドpCGP1959(pBluescript骨格の中にBPF3'5'H#18を含有している[国際特許出願PCT/AU03/01111の中に記載されている]から放出させた。突出末端を修復した後、BPF3'5'H#18を含有している1.6kbの断片を精製し、pCGP2201(上記)のSalI(修復された末端)とライゲートさせた。Rose CHS 5'断片とnos 3'断片との間へのBPF3'5'H#18 cDNAクローンの正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpCGP2203と名付けた。
【0185】
形質転換ベクターpCGP2217(pCGP1988骨格の中のRose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3')の構築
まず、プラスミドpCGP2203を、制限エンドヌクレアーゼSpeIによる消化により直鎖化した。突出末端を修復し、Rose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'発現カセットを含有している断片を、制限エンドヌクレアーゼBglIIによる消化により放出させた。およそ5kbの断片を精製し、プラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)のSalI(修復された末端)/BamHI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのRose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。形質転換ベクターをpCGP2217と名付けた(図3)。
【0186】
形質転換ベクターpCGP2788(CaMV 35S:BPF3'5'H#40:35S)
形質転換ベクターpCGP2788は、TiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、CaMV 35S:BPF3'5'H#40:35S 3'発現カセットを含有している。pCGP2788の構築は、国際特許出願PCT/AU03/00079に記載されている。
【0187】
形質転換ベクターpCGP3141(Cineraria gF3'5'H)
形質転換ベクターpCGP3141は、TiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、シネラリアF3'5'H遺伝子(日本特許出願第2008-276029号を参照のこと)を含有している。
【0188】
シネラリアF3'5'Hゲノムクローンの単離
日本特許出願第2008-276029号に記載されるようにして、シネラリアF3'5'Hゲノムクローンを単離した。シネラリアgF3'5'Hクローン(SEQ ID NO:12)を保持しているおよそ4.6kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼPvuIIおよびEcoRVによる消化により、プラスミドgCi01(pBluestarベクター骨格(NOVAGEN)の中のシネラリアF3'5'H遺伝子)から放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP1988のSmaI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してコンバージェント(convergent)方向でのシネラリアgF3'5'H遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。プラスミドをpCGP3141と名付けた(図5)。
【0189】
形質転換ベクターpCGP3149(35S 5':BPF3'5'H#40:SuRB 3')
形質転換ベクターpCGP3149は、TiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、35S 5':BPF3'5'H#40:SuRB 3'発現カセットを含有している。
【0190】
形質転換ベクターpCGP3149の構築において使用された断片には、pCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)由来のSuRB 3'ターミネーター配列を含有しているPstI/StuI断片、プラスミドpCGP1273(国際特許出願PCT/AU03/01111に記載されている)から放出させた骨格ベクターと共に35S 5'プロモーター配列を保持しているPstI/NcoI断片、およびプラスミドpCGP1961(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)に起因するBPF3'5'H#40断片が含まれていた。得られたプラスミドpCGP3148は、pBluescript骨格ベクターの中に35S 5':BPF3'5'H#40:SuRB 3'発現カセットを含有していた。
【0191】
35S 5':BPF3'5'H#40:SuRB 3'発現カセットを、制限エンドヌクレアーゼBamHIによる消化により、プラスミドpCGP3148から放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP1988のBamHI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向での35S 5':BPF3'5'H#40:SuRB 3'キメラ遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。プラスミドをpCGP3149と名付けた。
【0192】
形質転換ベクターpCGP3408(BPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3')
形質転換ベクターpCGP3409は、TiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、BPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos発現カセットを含有している。
【0193】
BPF3'5'H#40遺伝子に由来するプロモーター断片の単離
製造業者によって推奨された手法に従い、DNA easy plantキット(QIAGEN)を使用して、ビオラcv.ブラックパンジーの葉からゲノムDNAを単離した。3μgのゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼHindIIIにより消化した。消化されたDNAを、製造業者のプロトコルを使用して、16℃で40分間、Ligation High(TAKARA)を使用して、[インビトロクローニングキットTAKARAに含有されていた]TaKaRa LA PCR(商標)のHindIII末端とライゲートさせた。
【0194】
BPF3'5H#40遺伝子のプロモーター断片を、ネステッドPCRを使用して増幅した。一次PCRは以下のように実施された:4μLのライゲートさせられたゲノムDNA(gDNA)[上記]を10μLの水で希釈し、10分間94℃で変性させ、次いで、氷に移した。5pmolの以下のプライマー:
プライマー

[カセットに対して設計され、キットに含有されていた]
プライマー

[BPF3'5H#40のコーディング領域(逆方向)に対して設計された]を、14μLのライゲートさせられたgDNAに添加した。製造業者によって推奨されたプロトコル(98℃20秒、次いで68℃15分のインキュベーションの30サイクル)に従って、25μLでPCRを実施した。
【0195】
次いで、1次PCRの反応産物を水で10倍希釈した。0.5μLの希釈された1次PCR産物および5pmolの以下のプライマー:
プライマー

[カセットに対して設計され、キットに含有されていた]
プライマー

[BPF3'5H#40のコーディング領域(逆方向)に対して設計された]
を、25μLの全反応容量でPCRに供した。PCR条件は、98℃5分の変性工程、それに続く、98℃20秒、次いで68℃15分のインキュベーションの30サイクルを含んでいた。
【0196】
2次PCRの産物をpCR2.1(INVITROGEN)へクローニングした。正確なF3'5'Hインサートが入手されたことを確認するため、インサートを配列決定した。
【0197】
Ex-Taq DNAポリメラーゼ(TOYOBO)を使用して、25μLの全反応容量で、50pmolの以下のプライマー:
プライマーBP40-i7(上記)および
プライマー

[BPF3'5H#40遺伝子のプロモーター領域に対して設計された]
と共に、鋳型としての200ngのパンジーゲノムDNAを使用したPCRにより、BPF3'5'H#40遺伝子のプロモーター領域を、コーディング配列の200bpと共に増幅した。使用された条件は、98℃5分の初期変性工程、それに続く、98℃20秒および68℃15分のインキュベーションの30サイクルであった。
【0198】
PCR産物をクローニングベクターpCR2.1(INVITROGEN)へクローニングした。インサートを配列決定し、5'非コーディング領域のおよそ2.1kbと共にコーディング領域の200bpを含有している一つのプラスミドを、pSFL614と名付けた。
【0199】
中間プラスミドpSFL620(BPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3')の構築
pSFL614(上記)の中のゲノム配列の5'上流領域の約1.1kbを、以下に記載されるようなBPF3'5'H#40コーディング配列の発現を制御するために使用した。その領域のBamHI部位を、構築の簡便のためNheIに変換した。
【0200】
BPF3'5'H#40遺伝子のプロモーターの5'領域を保持している470bpのDNA断片を、Ex-Taq DNAポリメラーゼ(TOYOBO)を使用して、25μLの全反応容量で、50pmolの以下のプライマー:
プライマー

およびプライマー

と共に、鋳型としての1ngのpSFL614プラスミドを使用して増幅した。
【0201】
使用された条件は、98℃5分の初期変性工程、それに続く、98℃20秒および68℃15分のインキュベーションの25サイクルであった。増幅されたDNAを、pCR2.1(INVITROGEN)へとクローニングした。配列にPCRエラーがないことを確認した。制限エンドヌクレアーゼHindIIIおよびNheIによる消化により、470bpのDNA断片を回収した(断片Aと名付けた)。
【0202】
次いで、BPF3'5'H#40遺伝子のプロモーターの3'領域を保持している630bpのDNA断片を、Ex-Taq DNAポリメラーゼ(TOYOBO)を使用して、25μLの全反応容量で、50pmolの以下のプライマー:
プライマー

およびプライマー

と共に、鋳型としての1ngのプラスミドpSFL614(上記)を使用したPCRにより増幅した
【0203】
使用された条件は、98℃5分の初期変性工程、それに続く、98℃20秒および68℃15分のインキュベーションの25サイクルであった。次いで、増幅されたDNAを、pCR2.1(INVITROGEN)へとクローニングした。配列にPCRエラーがないことを確認した。630bpのDNA断片を、制限エンドヌクレアーゼNheIおよびBamHIによる消化により放出させた(断片Bと名付けた)。
【0204】
プラスミドpSPB567(特許公開番号WO2005/017147に記載されており、pUC骨格の中に増強されたCaMV35S:BPF3'5'H#40:nos 3'遺伝子カセットを含有している)を、CaMV35Sプロモーター保持断片を除去することを目標に、制限エンドヌクレアーゼHindIII(部分消化)およびBamHIにより消化した。次いで、430bpのHindIII/NheI断片A(上記、BPF3'5'H#40遺伝子のプロモーターの5'領域を保持している)およびNheI/BamHI断片B(上記、BPF3'5'H#40遺伝子のプロモーターの3'領域を保持している)を、pSPB567由来のpUC骨格上にBPF3'5'H#40:nos 3'カセットを保持しているHindIII/BamHI断片とライゲートさせ、pSFL620(pUC骨格の中のBPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3')を得た。BPF3'5'H#40 5'プロモーター断片のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:18に示される。
【0205】
中間プラスミドpSFL622(BPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3')の構築
3.1kbのBPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットを、制限エンドヌクレアーゼPacIを使用して、中間プラスミドpSFL620(上記)から切り出し、pBINPLUS(van Engelen et al,Transgenic Research 4,288-290,1995)のPacI末端とライゲートさせた。nos 5':nptII:nos 3'選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのBPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3'キメラ遺伝子の正確な挿入を、カナマイシン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpSFL622と名付けた。
【0206】
形質転換ベクターpCGP3408(BPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3')の構築
BPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットを、制限エンドヌクレアーゼPacIによる消化により、pSFL622(上記)から放出させた。3.1kbの断片を精製し、プラスミドpCGP1988のPacI末端とライゲートさせた(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)。35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのBPF3'5'H#40 5':BPF3'5'H#40:nos 3'キメラ遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られた形質転換ベクターをpCGP3408と名付けた。
【0207】
形質転換ベクターpCGP3409(R.rugosa DFR 5':BPF3'5'H#40:nos 3')
形質転換ベクターpCGP3409は、TiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、R.rugosa DFR 5':BPF3'5'H#40:nos発現カセットを含有している。
【0208】
ローザ・ルゴサからのDFRゲノムクローンの単離
λBlueSTAR(商標)XhoI Half-Site Armsキット(Novagen,http://www.merckbiosciences.com/product/69242)を使用して調製されたR.ルゴサゲノムライブラリーから、ローザ・ルゴサDFRゲノムクローンを単離した。
【0209】
Nucleon Phytopure(登録商標)(TEPNEL Life Sciences)を使用して、R.ルゴサの若い葉から、ゲノムDNAを単離した。約100μgのゲノムDNAを、制限エンドヌクレアーゼSau3AIにより部分消化した。消化された末端を、dGTPおよびdATPの存在下でDNAポリメラーゼIクレノウ酵素(TOYOBO)により部分的に充填した。次いで、ゲノムDNA(gDNA)をショ糖密度勾配によるサイズ分画に供した。
【0210】
約13kbのgDNA断片を含有している画分を合わせ、エタノール沈殿に供した。約180ngのgDNAを、4℃で一夜、1μLのλBlueSTAR(商標)XhoI Half-Site Armsキットを用いてライゲートさせ、次いで、パッケージングした。入手されたゲノムライブラリーを、バラDFR cDNA(Tanaka et al,Plant and Cell Physiology,36,1023-1031,1995)によるスクリーニングに供した。DNA標識および検出は、製造業者によって提供されたプロトコルに従い、DIG(Roche Applied Science)を用いて実施された。
【0211】
陽性プラークを精製し、λBlueSTAR(商標)(Novagen)の手法に従い、インビボ切除に供した。約10kbのインサートを含有しているクローンのうちの一つ(pSFL710)を、さらに特徴決定した。pSFL710の中のDNA断片の配列決定により、断片が、R.ハイブリダDFR cDNA(Tanaka et al,1995(前記))に相同な配列を含有していることが明らかとなった。
【0212】
R.ルゴサDFR遺伝子の5'非コーディング領域を単離するため、PCRを使用して、EcoRI認識配列を変異させ、HindIIIおよびBamHIの認識配列を付加した。各々1μLの以下のプライマー(いずれも25μM):

を、鋳型pSFL710(上記)およびExTaq DNAポリメラーゼ(TOYOBO)を含有している混合物[最終容量50μL]に添加した。PCR条件は、94℃5分の変性工程、それに続く、94℃30秒、50℃30秒、72℃30秒のインキュベーションの30サイクル、それに続く72℃7分の最終インキュベーションを含んでいた。350bpのDNA断片を増幅し、断片Cと名付けた。
【0213】
2次PCRを、鋳型pSFL710(上記)およびExTaq DNAポリメラーゼ(TOYOBO)と共に、各々1μLのプライマー(いずれも25μM):

を使用して実施した。PCR条件には、94℃5分の変性工程、それに続く、94℃30秒、50℃30秒、72℃30秒のインキュベーションの30サイクル、それに続く、72℃7分の最終インキュベーションが含まれていた。600bpのDNA断片を増幅し、断片Dと名付けた。
【0214】
断片C(上記)を制限エンドヌクレアーゼHindIIIおよびNheIにより消化し、断片D(上記)を制限エンドヌクレアーゼNheIおよびBamHIにより消化した。(特許公開番号WO2005/017147に記載された)pUC骨格の中に増強されたCaMV35S:BPF3'5'H#40:nos 3'遺伝子カセットを含有しているプラスミドpSPB567を、CaMV35Sプロモーター保持断片を除去することを目標に、HindIII(部分)およびBamHIにより消化した。従って、HindIII/NheI断片C(R.ルゴサDFRプロモーター配列の5'部分を保持している)と、NheI/BamHI断片D(R.ルゴサDFRプロモーター配列の3'部分を保持している)およびHindIII/BamHI pSPB567(pUC骨格の中にBPF3'5'H#40:nos 3'カセットを保持している)とをライゲートさせ、プラスミドpSFL721(pUCベースのベクターの中のR.rugosa DFR 5':BPF3'5'H#40:nos 3')を得た。(NheI部位へと変異させられたEcoRI認識部位ならびに付加されたHindIIIおよびBamHIの認識部位を含むR.ルゴサDFRプロモーターの配列は、SED ID NO:16に示される)。
【0215】
形質転換ベクターpCGP3409の構築
R.rugosa DFR 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットを保持している3.11kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼPacIを使用して、中間プラスミドpSFL721(上記)から切り出し、プラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)のPacI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのR.rugosa DFR 5':BPF3'5'H#40:nos 3'キメラ遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られた形質転換ベクターをpCGP3409と名付けた。
【0216】
形質転換ベクターpCGP3410(R.rugosa F3H 5':BPF3'5'H#40:nos 3')
形質転換ベクターpCGP3410は、TiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、R.rugosa F3H 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットを含有している。
【0217】
ローザ・ルゴサからのF3Hゲノムクローンの単離
ローザ・ルゴサのゲノムライブラリー(上記)を、トレニアフラバノン3-ヒドロキシラーゼ(F3H)cDNA(NCBI番号AB211958)のDIG標識断片によりスクリーニングした。選択されたハイブリダイズしたプラークを精製し、プラスミドを(製造業者によって推奨された方法を使用して)切り出した。クローンのうちの一つ#5を、さらなる研究のために選択した。プラスミドを制限エンドヌクレアーゼSpeIにより消化し、約2.6kbのサイズの得られた断片のうちの一つを単離し、精製した。断片をpBluescript SKII-(STRATAGENE)のSpeI末端へサブクローニングし、得られたプラスミドを名付けた。pSPB804に含有されていた断片の配列分析は、プラスミドがF3H様の配列を含有していることを明らかにした。
【0218】
ローザ・ルゴサF3H遺伝子の5'非コーディング領域を増幅するため、50μLの最終反応容量で、鋳型としての1ngのpSPB804およびEx-Taq DNAポリメラーゼ(TOYOBA)と共に、以下のプライマーを使用して、PCRを実施した。

PCR条件には、94℃5分のインキュベーション、それに続く、94℃30秒、次いで50℃30秒、および72℃30秒のインキュベーションの30サイクル、さらに、72℃7分の最終インキュベーションが含まれていた。増幅された断片を、pCR-TOPOベクター(INVITROGEN)へとサブクローニングし、プラスミドpSPB811を得た。
【0219】
R.ルゴサF3Hプロモーター領域(SEQ ID NO:17)を保持している断片を、制限エンドヌクレアーゼHindIIIおよびBamHIによる消化により、pSPB811から放出させた。プラスミドpSPB567(特許公開WO2005/017147に記載されており、pUC骨格の中に増強されたCaMV35S:BPF3'5'H#40:nos 3'遺伝子カセットを含有している)を、CaMV35Sプロモーター保持断片を除去することを目標に、制限エンドヌクレアーゼHindIII(部分消化)およびBamHIにより消化した。次いで、pSPB811由来のR.ルゴサF3Hプロモーター領域を保持している1.2kbのHindIII/BamHI断片を、pSPB567由来のpUC骨格上にBPF3'5'H#40:nos 3'カセットを保持しているHindIII/BamHI断片とライゲートさせ、pSFL814(pUC骨格の中のR.rugosa F3H 5':BPF3'5'H#40:nos 3')を得た。
【0220】
形質転換ベクターpCGP3410の構築
R.rugosa F3H 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットを保持しているおよそ3.2kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼPacIおよびAscIを使用して、中間プラスミドpSFL814(上記)から切り出し、プラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)のPacI/AscI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに対してタンデム方向でのR.rugosa F3H 5':BPF3'5'H#40:nos 3'キメラ遺伝子の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られた形質転換ベクターをpCGP3410と名付けた。
【0221】
形質転換ベクターpCGP3424(RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3':35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3')
形質転換ベクターpCGP3424は、内因性キクF3'Hの発現をダウンレギュレートするための35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3'カセット(下記pCGP3134由来)と共に、形質転換ベクターpCGP2217(上記)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'発現カセットを含有している。
【0222】
中間プラスミドpCGP1472(ペチュニアDFR-Aゲノムクローン)の構築
ベクターλ2001(Holton,1992(前記))において、ペチュニア・ハイブリダcv.オールドグローリーブルーDNAからゲノムライブラリーを作成した。およそ200,000 pfuをNZYプレートに播種し、隆起をNENフィルターに採り、フィルターに400,000cpm/mLの32P標識ペチュニアDFR-A cDNA断片(Brugliera et al,The Plant Journal 5(1):81-92,1994に記載されている)をハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたクローンを精製し、各々からDNAを単離し、制限エンドヌクレアーゼ消化によりマッピングした。これらのクローンのうちの一つの13kbのSacI断片を単離し、pBluescriptIIのSacI末端とライゲートさせ、プラスミドpCGP1472を作出した。より詳細なマッピングは、およそ5.3kbのBglII断片がペチュニアDFR-A遺伝子(Beld et al,.Plant Mol.Biol.13:491-502,1989)全体を含有していることを示した。
【0223】
中間プラスミドpCGP3127(CaMV 35S:ペチュニアDFR-Aイントロン1:ocs 3')の構築
ペチュニアDFR-Aイントロン1の180bpを保持している断片を、鋳型としてのプラスミドpCGP1472(上記)および以下のプライマーを使用して、PCRにより増幅した。

【0224】
順方向プライマー(DFRint F)は、5'末端に制限エンドヌクレアーゼ認識部位NcoIおよびBglIIを組み入れるよう設計されていた。逆方向プライマー(DFRint R)は、増幅された180bpの産物の3'末端にXbaI制限エンドヌクレアーゼ認識部位を組み入れるよう設計されていた。次いで、得られた180bpのPCR産物を、制限エンドヌクレアーゼNcoIおよびXbaIにより消化し、プラスミドpCGP1634(国際特許出願PCT/AU03/01111に記載)のNcoI/XbaI末端とライゲートさせた。pCGP1634の35S 5'断片とocs 3'断片との間へのペチュニアDFR-Aイントロン1断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。得られたプラスミドをpCGP3127と名付けた。
【0225】
中間プラスミドpCGP3369(部分キクF3'Hクローン)の構築
部分キクF3'H配列(全長キクF3'H cDNAクローンの配列はSEQ ID NO:44に示される、国際PCT出願PCT/AU97/00124を参照のこと)を含有している1.2kbの断片を、キク花弁cDNAライブラリー(Klondike)を鋳型として使用したPCRにより増幅した。Klondike花弁cDNAライブラリーは、国際PCT出願PCT/AU97/00124に記載された方法に従って、花段階1〜3から単離されたRNAから調製された。以下のプライマーをPCRにおいて使用した。

【0226】
得られた1.2kbのPCR産物を、T/AベクターpCR2.1(INVITROGEN)とライゲートさせた。PCR産物の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析、および配列分析により確認した。得られたプラスミドを、pCGP3369と名付けた。
【0227】
中間プラスミドpCGP3133(キクF3'H)の構築
プラスミドpCGP3133は、両端にXbaI制限エンドヌクレアーゼ認識部位を組み入れるPCRにより生成された部分キクF3'Hクローンを含有している。キクF3'H cDNAクローンのおよそ1.1kbの断片を、以下のプライマーおよび鋳型としてのプラスミドpCGP3369(上記)を使用して増幅した。

得られたおよそ1.1kbのPCR産物を、T/AベクターpCR2.1(INVITROGEN)とライゲートさせた。pCR2.1ベクターへのPCR断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体の制限エンドヌクレアーゼおよび配列分析により確認した。得られたプラスミドをpCGP3133と名付けた。
【0228】
中間プラスミドpCGP3129(35S 5':キクF3'Hセンス:ペチュニアDFR-Aイントロン1:ocs 3')の構築
部分キクF3'H cDNAを含有しているおよそ1kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼNcoIおよびBamHIによる消化により、中間プラスミドpCGP3369(上記)から切り出した。得られた断片を精製し、プラスミドpCGP3127(上記)のNcoI/BglII末端とライゲートさせた。35S 5'プロモーター断片とペチュニアゲノムDFR-Aイントロン1断片との間へのセンス方向でのキクF3'H断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。さらなる確認を、正確にマッピングされた形質転換体の配列分析により入手した。得られた中間プラスミドをpCGP3129と名付けた。
【0229】
中間プラスミドpCGP3134(35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3')の構築
中間プラスミドpCGP3134は、pCR2.1(INVITROGEN)骨格の中に35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3'カセットを含有している。キクF3'H部分cDNA断片を、制限エンドヌクレアーゼXbaIによる消化により、プラスミドpCGP3133(上記)から放出させた。得られたおよそ1.1kbの断片を精製し、pCGP3129(上記)のXbaI末端とライゲートさせた。ペチュニアDFR-Aイントロン1断片とocs 3'ターミネーター断片との間へのアンチセンス方向でのキクF3'H断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。得られたプラスミドをpCGP3134と名付けた。
【0230】
形質転換ベクターpCGP3424(Rose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3':35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3')の構築
発現カセット35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3'を、制限エンドヌクレアーゼSmaIおよびPvuIIによる消化により、プラスミドpCGP3134(上記)から放出させた。得られた3.5kbの断片を精製し、形質転換ベクターpCGP2217(上記)のPmeI SAP処理末端とライゲートさせた。RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'および35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向での35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3'カセットの正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。得られた形質転換ベクターをpCGP3424と名付けた(図4)。
【0231】
形質転換ベクターpCGP3429(RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3':RoseCHS 5':ds chrysF3'H*:nos 3')
形質転換ベクターpCGP3429は、内因性キクF3'Hの発現をダウンレギュレートするためのRoseCHS 5':ds chrysF3'H*:ocs 3'カセットと共に、35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向で、RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'発現カセットを含有している。
【0232】
中間プラスミドpSPB3349(pBINPlusの中のRoseCHS 5')の構築
RoseCHS 5'プロモーター領域を保持している断片を、制限エンドヌクレアーゼHindIIIおよびSmaIによる消化により、pCGP2203(上記)から放出させた。およそ2.7kbの断片を精製し、pBINPLus(van Engelen et al.,1995(前記))のHindIII/SmaI末端とライゲートさせた。断片の正確な挿入を、カナマイシン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpSPB3349と名付けた。
【0233】
中間プラスミドpSPB3350(部分アンチセンスchrys F3'H:nos 3')の構築
キクF3'H cDNAクローンの部分領域を保持している断片を、制限エンドヌクレアーゼSalIおよびHindIIIによる消化により、プラスミドpRm6i(国際特許出願PCT/AU97/00124)から放出させた。キクF3'H cDNAの5'部分を含有している0.83kbの断片を精製し、プラスミドpSPB176のHindIII/SalI末端とライゲートさせた(pSPB176はpBINPlusの中にe35S 5':GUS:nos 3'を含有しており、国際特許出願PCT/AU03/00079に記載されている)。nos 3'ターミネーター断片に対してアンチセンス方向での断片の正確な挿入を、カナマイシン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpSPB3350と名付けた。
【0234】
中間プラスミドpSPB3351(RoseCHS 5':ds chrys F3'H*:nos 3')の構築
RoseCHS 5'プロモーター領域を保持している断片を、制限エンドヌクレアーゼAscIおよびKpnIによる消化により、プラスミドpSPB3349(上記)から放出させた。断片を精製し、断片A(AscI/KpnI RoseCHS 5'断片)と名付けた。
【0235】
まず、プラスミドpSPB3348(上記)を、制限エンドヌクレアーゼBamHIにより直鎖化した。突出末端を修復し、次いで、キクF3'H cDNAクローンの5'部分を保持している1.1kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼKpnIによる消化により放出させた。断片を精製し、断片B(BamHI(平滑末端化)/KpnI chrysF3'H)と名付けた。
【0236】
まず、プラスミドpSPB3350(上記)を、制限エンドヌクレアーゼHindIIIにより直鎖化した。突出末端を修復し、次いで、直鎖化されたプラスミドを、制限エンドヌクレアーゼAscIにより消化した。直鎖化されたプラスミドを、断片C(pBINPlus内のHindIII(平滑末端化)/AscIアンチセンスchrysF3'H:nos 3')と名付けた。断片A、B、およびCをライゲートさせた。RoseCHS 5':センスchrysF3'H:アンチセンスchrysF3'H:nos 3'を与える断片の正確な挿入を、カナマイシン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドを、pSPB3351(pBINPlus骨格の中のRoseCHS 5':ds chrysF3'H*:nos 3')と名付けた。
【0237】
中間プラスミドpSPB3352(RoseCHS 5':ds chrys F3'H*:nos 3';RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3';nos 5':nptII:nos 3')の構築
RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'発現カセットを保持している断片を、制限エンドヌクレアーゼPacIによる消化により、プラスミドpSPB459(国際特許出願WO2005-017147に記載)(pUCベースの骨格の中にRoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'を含有している)から放出させた。断片を精製し、プラスミドpSPB3351(上記)のPacI末端とライゲートさせた。RoseCHS 5':ds chrysF3'H*:nos 3'発現カセットに対してタンデム方向でのRoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子を保持している断片の正確な挿入を、カナマイシン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpSPB3352と名付けた。
【0238】
中間プラスミドpCGP3426(RoseCHS 5':ds chrys F3'H*:nos 3';35S 5':SuRB)の構築
RoseCHS 5':ds chrys F3'H*:nos 3'キメラ遺伝子を保持している断片を、制限エンドヌクレアーゼAscIおよびPacIによる消化により、プラスミドpSPB3352(上記)から放出させた。断片を精製し、TiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)のAscI/PacI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向でのRoseCHS 5':ds chrysF3'H*:nos 3'キメラ遺伝子を保持している断片の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpCGP3426と名付けた。
【0239】
形質転換ベクターpCGP3429(RoseCHS 5':ds chrys F3'H*:nos 3';RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3';35S 5':SuRB)の構築
RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子を保持している断片を、制限エンドヌクレアーゼPacIによる消化により、プラスミドpSPB3352(上記)から放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP3426(上記)のPacI末端とライゲートさせた。RoseCHS 5':ds chrysF3'H*:nos 3'キメラ遺伝子および35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してタンデム方向でのRoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'を保持している断片の正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確立した。得られたプラスミドをpCGP3429と名付けた(図6)。
【0240】
形質転換ベクターpCGP3434(RoseCHS:BPF3'5'H#40:nos)
形質転換ベクターpCGP3434は、RoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットおよびTiプラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)の35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットを含有している。
【0241】
中間プラスミドpCGP3425(RoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3')の構築
BPF3'5'H#40 cDNAクローンを保持している1.6kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびAsp718を使用して、プラスミドpCGP1961(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)から切り出した。断片の末端を修復し、次いで、プラスミドpCGP2201(上記)の修復されたSalI末端とライゲートさせた。RoseCHS 5'断片とnos 3'断片との間へのBPF3'5'H#40 cDNAクローンの正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。得られたプラスミドをpCGP3425と名付けた。
【0242】
中間プラスミドpCGP3438(RoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3')の構築
RoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットを保持している4.9kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼSpeIおよびBglIIによる消化により、プラスミドpCGP3425(上記)から放出させた。断片を精製し、pUCAP/AscIクローニングベクターのXbaI/BamHI末端とライゲートさせた。(プラスミドpUCAP/AscIは、追加のクローニング部位、特に、マルチクローニング部位の両端にAscI認識部位を有する、pUC19ベースのクローニングベクターである。)RoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3'保持断片の正確な挿入を、アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。得られたプラスミドをpCGP3438と名付けた。
【0243】
形質転換ベクターpCGP3434(RoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3')の構築
RoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3'発現カセットを保持している4.9kbの断片を、制限エンドヌクレアーゼAscIによる消化により、プラスミドpCGP3438(上記)から放出させた。断片を精製し、プラスミドpCGP1988(国際特許出願PCT/AU03/01111を参照のこと)のAscI末端とライゲートさせた。35S 5':SuRB選択可能マーカーカセットに対してコンバージェント方向でのRoseCHS 5':BPF3'5'H#40:nos 3'カセットの正確な挿入を、テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限エンドヌクレアーゼ分析により確認した。得られた形質転換ベクターをpCGP3434と名付けた。
【0244】
形質転換ベクターからのT-DNA上に含有された発現カセット(表4)を、ブルーリッジ(BlueRidge)(BR)、マデリン、マネーメーカー、マンディアル、インプルーブドリーガン、ダークスプレンディッドリーガンを含む様々なキク栽培品種へ導入した。結果の概要を表5に示す。
【0245】
(表5)様々なF3'5'Hキメラ遺伝子を含有しているトランスジェニックキク花弁の分析の結果


栽培品種=形質転換されたキク栽培品種
構築物=形質転換実験において使用された形質転換ベクター
カセット=形質転換ベクターの中に含有されていた遺伝子発現カセット
#tg=現在までに作製され顕花したトランスジェニックの総数
#CC=非形質転換植物のものと比較して有意な色のシフトを有する花部を生じた個々のトランスジェニック事象の数
TLC=分析された個々の事象の総数に対する(TLCにより決定されたように)デルフィニジンが花弁において検出された個々の事象からの花部の数
*=TLCのために使用された抽出物は、きわめて少ない量のデルフィニジンを検出するため濃縮(20倍)された
HPLC=花弁抽出物中に検出された全アントシアニジンに対する割合として示された、HPLCにより検出されたデルフィニジン量の範囲。分析された総数から検出されたデルフィニジンを有する事象の数が、括弧内に表される。
ノーザン=分析された事象の総数に対する、特異的な完全なF3'5'H、ALS(SuRB)、またはnptIIの転写物が、ノーザンブロット分析により、花弁から単離された全RNAの中に検出された個々の事象の数
nd=未実施
Hf1=ペチュニアF3'5'H Hf1 cDNAクローン
cinF3'5'H=標識のために鋳型として使用されたコーディング領域の3'末端を保持している(SEQ ID NO:12由来の)576bpのBglII/HindIIIシネラリアF3'5'H断片
【0246】
驚くべきことに、現在までに試験された23の形質転換ベクターの組み合わせのうちの5つである、pCGP2217(Rose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3';35S 5':SuRBを含有している)、pCGP3424(Rose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3';35S 5':ds chrysF3'H:ocs 3';35S 5':SuRBを含有している)、pCGP3429(Rose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3';RoseCHS 5':ds chrysF3'H*:nos 3';35S 5':SuRBを含有している)、pCGP2205(carnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3';35S 5':SuRBを含有している)、およびpCGP3141(Cineraria gF3'5'H;35S 5':SuRBを含有している)のみが、花弁色の有意な変化をもたらした(表5および6)。選択されたキメラ遺伝子の発現は、キク花弁における新規のデルフィニジンベースのフラボノイド分子の蓄積をもたらした(表5)。しかしながら、pCGP2217、pCGP3424、pCGP3429、pCGP2205、pCGP3141形質転換ベクターからのT-DNAの導入のみが、色を紫色およびスミレ色の範囲へと有意にシフトさせるために十分に多い量のデルフィニジンベースのフラボノイドをもたらした。
【0247】
(表6)対照と比較して有意な色変化を有するトランスジェニックキク花弁色コード

栽培品種=形質転換されたキク栽培品種
構築物=形質転換実験において使用された形質転換ベクター
フラボノイド経路カセット=形質転換ベクター構築物の中に含有されていたフラボノイド遺伝子発現カセット
RHS色コード=対照花弁と比較して最も有意な色変化を有するトランスジェニックキクの花部からの花弁色コード
RHS色群=英国王立園芸協会(London)による花弁色に関連した色群
【0248】
表6に列挙されたキク系統におけるF3'5'Hキメラ遺伝子の発現の結果は、対照の色と比較して、花弁色の紫色または紫スミレ色へのシフトが存在したことを示している。非トランスジェニック対照インプルーブドリーガン(RHSCC 75A)の花弁色は紫色群に分類されるが、ds chrysF3'Hキメラ遺伝子を伴うもしくは伴わないRoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子、またはcarnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'遺伝子の発現は、RHSカラーチャートのスミレ色範囲への花弁色のシフトをもたらした(表6を参照のこと)。非トランスジェニック対照ダークスプレンディッドリーガンの花弁色は赤紫色範囲にあるが、ds chrysF3'Hキメラ遺伝子を伴うもしくは伴わないRoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子、またはcarnANS 5':BPF3'5'H#18:carnANS 3'遺伝子、またはシネラリアgF3'5'H遺伝子の発現は、RHSカラーチャートの紫色およびスミレ色の範囲への花弁色のシフトをもたらした。
【0249】
これらの結果は、プロモーターとターミネーターとF3'5'H配列との極小さな組み合わせが、有意なデルフィニジンベースの色素の産生をもたらし、従って、キク花弁におけるスミレ色/紫色/青色範囲への花弁色のシフトをもたらすことを示している。バラ由来のCHSプロモーターまたはカーネーション由来のANSプロモーターまたはシネラリア由来のF3'5'Hプロモーターのようなフラボノイド特異的遺伝子に由来するプロモーターにより制御された、ビオラまたはシネラリアに由来するF3'5'H配列の組み合わせが、キク花弁の有意な色変化をもたらした。
【0250】
共抑制(co-suppression)、アンチセンス、またはddRNAiのようなサイレンシング戦略を使用して、キクにおいて内因性F3'Hおよび/または内因性DFRをダウンレギュレートすることにより、増加したデルフィニジン産生が達成される。内因性DFRがダウンレギュレートされる場合、ジヒドロケルセチンより優先的にジヒドロミリセチンを利用することができるDFRが含まれる。そのようなDFRは、ペチュニアまたはアイリスから単離され得るが、これらに限定はされない。
【0251】
pCGP2217およびpCGP3424に含有されているRose CHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'遺伝子を、セイフィガロ、セイフロレア、セイスパイア、セイチタン、セイチタン406、セイノーマ、セイアメリーを含む、多数のキク品種(「セイ」品種)にも導入した(表7)。
【0252】
(表7)「セイ」品種のトランスジェニックキク花弁の概要

栽培品種=形質転換されたキク栽培品種
構築物=形質転換実験において使用された形質転換ベクター
#tg=現在までに作製され顕花したランスジェニックの総数
#CC=非形質転換植物のものと比較して変更された花色を有する花部を生じた個々のトランスジェニック事象の数
RHS色コード=対照花弁と比較して最も有意な色変化を有するキクの花部からの花弁色コード
RHS色群=英国王立園芸協会(London)による花弁色に関連した色群
【0253】
表7に列挙されたキク系統のF3'5'Hキメラ遺伝子の発現は、対照の色と比較して、紫色または紫スミレ色への花弁色のシフトが存在したことを示している。非トランスジェニック対照セイフィガロの花弁色は赤紫色範囲にあるが、chrys dsF3'Hキメラ遺伝子を伴うまたは伴わないRoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子の発現は、RHSカラーチャートの紫色範囲への花弁色のシフトをもたらした。非トランスジェニック対照セイフロレアの花弁色は紫色範囲にあるが、トランスジェニック系統におけるRoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子の発現は、RHSカラーチャートの紫スミレ色範囲への花弁色のシフトをもたらした。非トランスジェニック対照セイチタンの花弁色は紫色範囲にあるが、chrys dsF3'Hキメラ遺伝子を伴うまたは伴わないRoseCHS:BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子の発現は、RHSカラーチャートの紫スミレ色範囲への花弁色のシフトをもたらした。非トランスジェニック対照セイチタン406の花弁色は紫色範囲にあるが、RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'キメラ遺伝子の発現は、RHSカラーチャートのスミレ色範囲への花弁色のシフトをもたらした。
【0254】
当業者は、本明細書に記載された本発明が、具体的に記載されたもの以外の変動および改変を受け入れることを認識するであろう。本発明には、そのような変動および改変が全て含まれることが理解されるべきである。本発明には、個々にもしくは集合的に本明細書において言及された、または示された工程、特色、組成物、および化合物の全て、ならびに該工程または特色のうちの二つ以上の全ての任意の組み合わせも含まれる。
【0255】
参考文献





【特許請求の範囲】
【請求項1】
変更された花部を示す遺伝子改変キク植物であって、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたフラボノイド3',5'ヒドロキシラーゼ(F3'5'H)酵素をコードする発現された遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物。
【請求項2】
固有のフラボノイド3'ヒドロキシラーゼ(F3'H)をダウンレギュレートする発現された遺伝物質をさらに含む、請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項3】
固有のDFRをダウンレギュレートする発現された遺伝物質をさらに含む、請求項1または2記載の遺伝子改変植物。
【請求項4】
異種ジヒドロフラボノール-4-レダクターゼ(DFR)をコードする発現された遺伝物質をさらに含む、請求項1または2または3記載の遺伝子改変植物。
【請求項5】
変更された花部が赤色/紫色〜青色の範囲の色である、請求項1〜4のいずれか一項記載の遺伝子改変植物。
【請求項6】
色がスミレ色/紫色である、請求項5記載の遺伝子改変植物。
【請求項7】
色が、英国王立園芸協会(Royal Horticultural Society)カラーチャートの75C、75D、76A、76B、76C、77C、78D、N80D、N81B、および84Cからなる一覧より選択される、請求項5記載の遺伝子改変植物。
【請求項8】
変更された花部が、キク植物の花、花弁、葯、または花柱にある、請求項5または6または7記載の遺伝子改変植物。
【請求項9】
遺伝子改変されていないキク植物には存在しない、TLCまたはHPLCにより決定されるデルフィニジンベースのフラボノイド分子を蓄積する、請求項1〜8のいずれか一項記載の遺伝子改変植物。
【請求項10】
ブルーリッジ(BlueRidge)、マデリン(Madeline)、マネーメーカー(Moneymaker)、マンディアル(Mundial)、インプルーブドリーガン(Improved Reagan)、ダークスプレンディッドリーガン(Dark Splendid Reagan)、セイフィガロ(Sei Figaro)、セイフロレア(Sei Florea)、セイチタン(Sei Titan)、セイチタン406、セイノーマ(Sei Norma)、およびセイアメリー(Sei Amelie)より選択されるキク栽培品種の遺伝的背景を有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の遺伝子改変植物。
【請求項11】
F3'5'H酵素が、ビオラ(Viola)sp.またはシネラリア(Cineraria)sp.に由来する、請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項12】
F3'5'H酵素が、SEQ ID NO:1もしくは3もしくは5もしくは7もしくは12によりコードされるか、またはSEQ ID NO:1もしくは3もしくは5もしくは7もしくは12の相補型に低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列によりコードされる、請求項11記載の遺伝子改変植物。
【請求項13】
プロモーターが、35Sプロモーター(35S 5'またはCaMV 35S)のような、フラボノイド経路遺伝子または非フラボノイド経路遺伝子に由来する、請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項14】
プロモーターが、カルコンシンターゼ(CHS)遺伝子、アントシアニジンシンターゼ(ANS)遺伝子、またはF3'5'H遺伝子に由来する、請求項13記載の遺伝子改変植物。
【請求項15】
プロモーターがRoseCHS 5'である、請求項13記載の遺伝子改変植物。
【請求項16】
プロモーターがCarnANS 5'である、請求項13記載の遺伝子改変植物。
【請求項17】
プロモーターがCineraria gF3'5'Hクローンに由来する、請求項13記載の遺伝子改変植物。
【請求項18】
プロモーターがRoseCHS 5'プロモーターであり、ターミネーターがnos 3'である、請求項13記載の遺伝子改変植物。
【請求項19】
RoseCHS 5':BPF3'5'H#18:nos 3'を含む、請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項20】
CarnANS 5'プロモーターおよびcarnANS 3'ターミネーターを含む、請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項21】
carnANS 5':BPF3'5'H#18:CarnANS carnANS 3'を含む、請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項22】
プロモーターおよびターミネーターの配列が、Cineraria gF3'5'Hクローンに由来する、請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項23】
二種以上のF3'5'H酵素および/またはDFR酵素をコードする発現された遺伝物質をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の遺伝子改変植物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項記載の遺伝子改変植物に由来する、子孫、生殖物質、切り花、組織培養可能な細胞、および再生可能な細胞。
【請求項25】
変更された花部を示すキクまたはその変種の製造における、F3'5'H酵素をコードする遺伝子配列の使用。
【請求項26】
固有のF3'Hを阻害する遺伝物質の使用をさらに含む、請求項25記載の使用。
【請求項27】
異種のDFRをコードする遺伝子配列の使用をさらに含む、請求項25または26記載の使用。
【請求項28】
固有のDFRを阻害する遺伝物質の使用をさらに含む、請求項25または26または27記載の使用。
【請求項29】
選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする発現された遺伝物質を、キク植物の再生可能な細胞へ導入する工程;ならびに、
そこから植物を再生させる工程、またはその遺伝子改変子孫を選択する工程
を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法。
【請求項30】
固有のF3'Hをダウンレギュレートする遺伝子配列をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
異種のDFRをコードする遺伝子配列をさらに含む、請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝子配列をさらに含む、請求項29または30または31記載の方法。
【請求項33】
遺伝子改変を有する植物の子孫を選択する工程をさらに含む、請求項29または30または31または32記載の方法。
【請求項34】
変更された花部を示す遺伝子改変キク植物であって、選択されたプロモーターおよびターミネーターに機能的に連結されたF3'5'H酵素をコードする発現された遺伝物質を含む、遺伝子改変キク植物。
【請求項35】
固有のF3'Hをダウンレギュレートする発現された遺伝物質をさらに含む、請求項34記載の遺伝子改変植物。
【請求項36】
固有のDFRをダウンレギュレートする発現された遺伝物質をさらに含む、請求項34または35記載の遺伝子改変植物。
【請求項37】
異種のDFRをコードする発現された遺伝物質をさらに含む、請求項34または35または36記載の遺伝子改変植物。
【請求項38】
固有のDFRをダウンレギュレートする遺伝物質をさらに含む、請求項34または35または36または37記載の遺伝子改変植物。
【請求項39】
変更された花部が赤色/紫色〜青色の範囲の色である、請求項34〜38のいずれか一項記載の遺伝子改変植物。
【請求項40】
色がスミレ色/紫色〜青色である、請求項39記載の遺伝子改変植物。
【請求項41】
F3'5'H酵素をコードする遺伝物質を含むキクを選択する工程;この植物を、別のF3'5'H酵素をコードする遺伝物質を含む別のキクと交配させる工程;および次いで、F1またはそれ以降の世代の植物を選択する工程
を含む、変更された花部を示すキクを作製する方法。
【請求項42】
いずれかの植物の遺伝物質が固有のF3'Hをダウンレギュレートする、請求項41記載の方法。
【請求項43】
いずれかの植物の遺伝物質が異種のDFRをコードする、請求項41または42記載の方法。
【請求項44】
いずれかの植物の遺伝物質が固有のDFRをダウンレギュレートする、請求項41または42または43記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−504103(P2011−504103A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533382(P2010−533382)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001694
【国際公開番号】WO2009/062253
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(507329918)インターナショナル フラワー ディベロップメンツ プロプライアタリー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】