説明

遺伝子断片情報の重ね合わせ方法及び装置

【課題】 複数の検体の遺伝子断片長をより精度良く適切に比較し、判定の信頼性の高い遺伝子断片情報の重ね合わせ技術を提供する。
【解決手段】 第1検体の遺伝子断片長からなる第1集合と第2検体の遺伝子断片長からなる第2集合の全要素を整列した第3数列を作成する第3数列作成工程と、階差を算出する算出工程と、第1集合と第2集合の要素の階差であり、かつ、絶対値が最小となる階差を検索する検索工程と、検索された階差の絶対値が所定のしきい値以下若しくは未満である場合に、前記階差に係る第1集合と第2集合の要素を一組の要素対として、第4集合に移動する要素対作成工程とを有し、算出工程と検索工程と要素対作成工程とを要素対がなくなるまで繰返し実行することにより、第4集合を作成する第4集合作成工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの検体の遺伝子断片長を比較する遺伝子断片情報の重ね合わせ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、癌細胞の研究等において、癌細胞を検体とする遺伝子と正常な細胞を検体とする遺伝子とを比較することにより、癌細胞の遺伝子から特異遺伝子を検出することが行われている。また、食肉等の品種鑑別等においてもDNA鑑定が活用されている。
検体から遺伝子断片長やピークの値等の遺伝子情報を検出する技術には、例えば、RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法がある。これは、特定の塩基配列部位で遺伝子を切断する酵素を用いて遺伝子を切断し、電気泳動により切断した遺伝子の断片を遺伝子断片長に従って分離するものであり、PCR(Polymerase Chain Reaction)法により、各断片を増幅して、検体の遺伝子断片のデータを検出している。遺伝子のデータの検出は、RFLP法の他に、適当なプライマを用いて遺伝子を増幅するRAPD(Randam Amplified Polymorphic DNA)法や、RFLP法とRAPD法を組み合わせたAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)法等によっても行われる。
2つの検体の遺伝子断片長を比較する技術には、例えば、各検体の遺伝子断片長をゴム弾性エネルギ物理モデルに基づいて、数値間の補正が全体で最小になるように、全ての遺伝子断片長を整数に変換し、変換後の数値を比較するものがある(例えば、非特許文献1参照)。尚、遺伝子断片長の異同を判定するにあたって、一般的に、遺伝子断片長の差が1より大きい場合には異なる遺伝子断片であると判定できることが知られている。
【0003】
【非特許文献1】”A format for databasing and comparison of AFLP fingerprint profiles” Hong,Y. and Chuah,A. BMC Bioinformatics. 2003 Feb 25;4(1):7.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の方法では、例えば、数値の差が1未満の範囲に複数の遺伝子断片が存在する等、数値が密に存在するデータの場合、元のデータの数値とかけ離れた整数に変換されてしまう虞がある。このため、本来同じ値に変換されるべき2つの検体の遺伝子断片長が別の値に変換されるといった問題があった。例えば、一方の検体の遺伝子断片長の一つが125.42であり、他方の検体の遺伝子断片長の一つが126.15である場合、遺伝子断片長の差が小さいため本来なら同じ値に変換されるべきであるが、一方の検体の遺伝子断片長125.42は125に、他方の検体の遺伝子断片長126.15は126に変換され、異なる遺伝子断片として判定されてしまうこととなる。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の検体の遺伝子断片長をより精度良く適切に比較し、判定の信頼性の高い遺伝子断片情報の重ね合わせ技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明に係る遺伝子断片情報の重ね合わせ方法の特徴構成は、コンピュータ上で実行することにより、2つの検体の遺伝子断片長を比較する遺伝子断片情報の重ね合わせ方法であって、第1検体の遺伝子断片長からなる第1集合と第2検体の遺伝子断片長からなる第2集合とを用い、前記第1集合の全要素と前記第2集合の全要素とを昇順若しくは降順に整列した第3数列を作成する第3数列作成工程と、前記第3数列作成工程において作成された前記第3数列の各要素について階差を算出する算出工程と、前記算出工程で算出された前記階差から、前記第1集合の要素と前記第2集合の要素との階差であり、かつ、絶対値が最小となる階差を検索する検索工程と、前記検索工程で検索された階差の絶対値が所定のしきい値以下若しくは未満である場合に、前記階差に係る前記第1集合の要素と前記第2集合の要素とを一組の要素対として判定し、前記要素対を第4集合に移動する要素対作成工程とを有し、前記算出工程と前記検索工程と前記要素対作成工程とを、前記要素対作成工程に於いて要素対として判定されなくなるまで繰返し実行することにより、前記第4集合を作成する第4集合作成工程を実行する点にある。
【0007】
即ち、上記特徴構成によれば、第1検体の遺伝子断片長と第2検体の遺伝子断片長との差であって、その絶対値が最も小さいものを抽出するので、2つの検体の遺伝子断片長のデータ全体から、同一の遺伝子断片である可能性の最も高いものを判定することができる。このようにして、同一の遺伝子断片である可能性の最も高いものから順に抽出するので、数値が密に存在するデータを重ね合わせる場合であっても適切に判定することができ、遺伝子断片の判定の信頼性を高めることができる。
また、しきい値を設け、遺伝子断片長の差の絶対値がしきい値より大きければ異なる遺伝子断片であるとして、遺伝子断片の異同を判定するので、遺伝子断片長の差が大きく同一ではない可能性の高い遺伝子断片が同一遺伝子断片であると判定されるのを防止することができる。更に、第1集合の要素及び第2集合の要素からなる第3数列を作成して判定を行う構成であることから、遺伝子断片の数が非常に多数ある場合であっても、判定精度を良好に維持しながら、簡易に且つ容易に遺伝子断片の異同判定を行うことができる。
【0008】
この目的を達成するための本発明に係る遺伝子断片情報の重ね合わせ方法の他の特徴構成は、前記要素対作成工程に於いて要素対として判定されなくなった後に、前記第3数列に残存する夫々の要素と空要素とを一組の要素対として前記第4集合に移動し、前記第4集合の要素を昇順若しくは降順に整列する第4数列作成工程を実行する点にある。
即ち、上記特徴構成によれば、対になる要素の存在しない、第3数列に残存する要素を空要素と対にすることで、第4数列において、容易に第1検体の全要素と第2検体の全要素とを比較することができる。
【0009】
さらに、他の特徴構成は、前記第1検体の遺伝子断片長の測定を複数回繰返して実施し、各測定結果を比較整形した値からなる遺伝子断片長情報を作成し、前記遺伝子断片長情報を用いて前記第1集合を作成する第1集合作成工程、及び、前記第2検体の遺伝子断片長の測定を複数回繰返して実施し、各測定結果を比較整形した値からなる遺伝子断片長情報を作成し、前記遺伝子断片長情報を用いて前記第2集合を作成する第2集合作成工程の少なくとも何れか一方を含む点にある。
即ち、上記特徴構成によれば、第1検体及び第2検体の少なくとも何れか一方について、遺伝子断片長の測定を行う際、複数回に渡って測定を行うので、検体の遺伝子断片長のデータの信頼性を高めることができ、2つの検体の遺伝子断片長の判定の信頼性を高めることができる。
【0010】
また、本発明は、上述した遺伝子断片情報の重ね合わせ方法をコンピュータに実行させるプログラムやそのプログラムを記録した媒体も権利の対象とするものであり、そのような2つの検体の遺伝子断片長を比較する遺伝子断片情報の重ね合わせプログラムは、第1検体の遺伝子断片長と、第2検体の遺伝子断片長とを取得し、前記第1検体の遺伝子断片長からなる第1集合と前記第2検体の遺伝子断片長からなる第2集合とを作成する検体情報取得機能と、前記検体情報取得機能において作成した前記第1集合の全要素と前記第2集合の全要素とを、昇順若しくは降順に整列した第3数列を作成する第3数列作成機能と、前記第3数列作成機能によって作成した前記第3数列の各要素について、階差を算出する算出機能と、前記算出機能によって算出した前記階差から、前記第1集合の要素と前記第2集合の要素との階差であり、かつ、絶対値が最小となる階差を検索する検索機能と、前記検索機能によって検索した階差の絶対値が所定のしきい値以下若しくは未満である場合に、前記階差に係る前記第1集合の要素と前記第2集合の要素とを一組の要素対として判定し、前記要素対を第4集合に移動する要素対作成機能とを有し、前記算出機能と前記検索機能と前記要素対作成機能とを、前記要素対作成機能に於いて要素対が判定されなくなるまで繰返し実行することにより、前記第4集合を作成する第4集合作成機能を備えている。更に、前記要素対作成機能に於いて要素対として判定されなくなった後に、前記第3数列に残存する夫々の要素と空要素とを一組の要素対として前記第4集合に移動し、前記第4集合の要素を昇順若しくは降順に整列する第4数列作成機能を有する構成とするのも好適である。当然ながら、このような遺伝子断片情報の重ね合わせプログラムも上述した遺伝子断片情報の重ね合わせ方法におけるすべての作用効果を得ることができる。
【0011】
本発明では、更に、上述した遺伝子断片情報の重ね合わせ方法を実施する遺伝子断片情報の重ね合わせ装置も権利の対象とするものであり、そのような2つの検体の遺伝子断片長を比較する遺伝子断片情報の重ね合わせ装置は、第1検体の遺伝子断片長と、第2検体の遺伝子断片長とを入力する入力部と、前記入力部において入力された前記第1検体の遺伝子断片長から第1集合を作成すると共に、前記入力部において入力された前記第2検体の遺伝子断片長から第2集合を作成し、前記第1集合の全要素と前記第2集合の全要素とを、昇順若しくは降順に整列した第3数列を作成する第3数列作成部と、前記第3数列作成部によって作成した前記第3数列の各要素について、階差を算出する算出部と、前記算出部によって算出した前記階差から、前記第1集合の要素と前記第2集合の要素との階差であり、かつ、絶対値が最小となる階差を検索する検索部と、前記検索部によって検索した階差の絶対値が所定のしきい値以下若しくは未満である場合に、前記階差に係る前記第1集合の要素と前記第2集合の要素とを一組の要素対として判定し、前記要素対を第4集合に移動する要素対作成部とを有し、前記算出部と前記検索部と前記要素対作成部とを、前記要素対作成部に於いて要素対が判定されなくなるまで繰返し実行することにより、前記第4集合を作成する第4集合作成部を備えている。更に、前記要素対作成部に於いて要素対として判定されなくなった後に、前記第3数列に残存する夫々の要素と空要素とを一組の要素対として前記第4集合に移動し、前記第4集合の要素を昇順若しくは降順に整列する第4数列作成部を有する構成とするのも好適である。当然ながら、このような遺伝子断片情報の重ね合わせ装置も上述した遺伝子断片情報の重ね合わせ方法におけるすべての作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第一実施形態について図1乃至図8を基に説明する。
図1は、本発明に係る遺伝子断片情報の重ね合わせ技術を適用したサーバ1、及び、検体を測定して遺伝子断片長やピーク等の遺伝子データを出力する遺伝子解析手段2を示している。本実施形態では、遺伝子断片情報の重ね合わせを行う検体として、正常な人細胞である第1検体と、癌細胞等の特異遺伝子を持つ正常ではない人細胞である第2検体とを用いた例を示す。正常な細胞の遺伝子と正常ではない細胞の遺伝子とを比較することで、特異遺伝子を特定することができる。
【0013】
遺伝子解析手段2は、例えば、前述のAFLP法を用いて遺伝子を制限酵素により特定の塩基配列部位で切断し、PCR法により切断された遺伝子断片を選択的に増幅させて、切断された各遺伝子断片の遺伝子断片長及び遺伝子断片長に対応するピークの値を測定し、遺伝子データとして出力する。
【0014】
サーバ1は、本実施形態ではマルチユーザーシステムであり、端末4からネットワーク3を介してログインして利用する。端末4は、キーボードやマウス等の入力手段4a、及び、2つの検体の遺伝子断片長の比較結果を表示可能なディスプレイ等の表示手段4bを備えている。
【0015】
サーバ1は、遺伝子断片情報重ね合わせ手段10、及び、検体の遺伝子データや遺伝子断片長の重ね合わせの結果データ等を記憶するメモリ18を備えている。遺伝子断片情報重ね合わせ手段10は、ソフトウェア的に構築されており、第1検体及び第2検体の遺伝子断片長を取得して第1集合及び第2集合を作成する検体情報取得部11、第1集合及び第2集合から第3数列を作成する第3数列作成部12、第3数列の各要素の階差を算出する算出部13、前記階差の中から第1集合の要素と第2集合の要素との階差であり、且つ、絶対値が最小となる同一遺伝子断片の候補を検索する検索部14、検索された候補が同一遺伝子断片のものかを判定する要素対作成部15、遺伝子断片情報の重ね合わせの結果としての第4数列を作成する第4数列作成部16、及び、結果データを出力する出力部17を備えている。
【0016】
次に、遺伝子断片情報重ね合わせ手段10の処理について図2乃至図8を基に説明する。図2は遺伝子断片情報重ね合わせ手段10の処理工程を示すフローチャートであり、図3乃至図8は、第1、第2、第4集合及び第1乃至第4数列の各処理工程における状態を示している。
【0017】
ステップ#100において、端末4からサーバ1にアクセスすると、先ず、遺伝子断片情報重ね合わせ手段10は、第1検体の遺伝子断片長及び第2検体の遺伝子断片長を取得するために、第1検体の遺伝子断片長及び第2検体の遺伝子断片長の入力用画面を端末4の表示手段4bに表示させる。
【0018】
検体情報取得部11は、入力部としての入力手段4aから入力された第1検体の遺伝子断片長及び第2検体の遺伝子断片長のデータを端末4から取得する(ステップ#101)。更に、本実施形態の検体情報作成部は、取得した第1検体の遺伝子断片長のデータ(第1集合)を用いて、第1検体の各遺伝子断片長を昇順に整列してラベルを付した第1数列を作成する。同様に、第2検体の遺伝子断片長のデータ(第2集合)を用いて、第2検体の各遺伝子断片長を昇順に整列してラベルを付した第2数列を作成する。ここで、図3は、第1数列及び第2数列の例を示している。第1数列の遺伝子断片長の値には、A1からA6のラベルを付し、第2数列の遺伝子断片長の値には、B1からB8のラベルを付している。尚、遺伝子解析手段2によって実際に測定されるデータは、遺伝子断片長及びピークの数が数百程度になるが、図3では簡単のために全体の一部を抜粋している。
【0019】
第3数列作成部12は、第1数列及び第2数列の全要素を第3集合に入力し(ステップ#102)、第3集合の各要素を昇順に整列した第3数列を作成する(ステップ#103)。ここで、図4の左欄は、図3に示す第1数列及び第2数列を用いて作成した第3数列の例を示している。
【0020】
算出部13は、第3数列の各要素について、階差、つまり隣り合う要素との差を算出する。本実施形態では、図4の右欄に示す如く、隣り会う要素の差を格納する第5数列を用意し、算出部13が、この第5数列に算出した差の絶対値を記憶する。続いて、検索部14は、第5数列の中から、第1数列の要素と第2数列の要素との差であり、かつ、最小の値を検索する(ステップ#104)。そして、図4に示す第5数列においては、絶対値が0.01と最も小さいラベルA1及びラベルB1の差が検索される。
【0021】
ここで、検索部14が、絶対値が最小となる差に係る要素を重複して複数検索した場合(ステップ#105)について説明する。この場合には、これらの差の算出に係る要素の何れかが、他の差の算出に重複して用いられているか否かを確認し、重複して用いられている場合には、この要素とその前後の要素とが異なる遺伝子断片であると判定する。差の算出に係る2つの要素が、何れも重複して用いられる要素で無い場合には、同一遺伝子断片長の候補であると判定して、ステップ#107に移行する。具体的には、例えば、第3数列において、第1数列の要素の前後に第2数列の要素があり、第1数列の要素とその前後の第2数列の要素との差が同じ値の場合であって、この差が検索部14において検索された場合に、前記第1数列の要素とその前後の第2数列の要素とを異なる遺伝子断片であると判定する。第2数列の前後に第1数列が配置されている場合も同様である。
【0022】
ステップ#105において、検索部14が、複数の差を検索し、当該差に係る要素が異なる遺伝子断片であると判定した場合には、異なる遺伝子断片であると判定した要素を空要素と一組にして第3数列から第4集合に移動し(ステップ#106)、第1数列及び第2数列からこれらの要素を削除して、ステップ#103に移行する。
【0023】
要素対作成部15は、検索部14によって検索された差の絶対値が、所定のしきい値以下であるか否かを判定する(ステップ#107)。ここで、本実施形態のしきい値は、遺伝子断片長の差が1より大きい場合には異なる遺伝子断片であると判定できることが経験則的に知られていることから、1を設定する。
【0024】
要素対作成部15は、差の絶対値が所定のしきい値、つまり1以下である場合に、差の算出に係る第1数列の要素と第2数列の要素とを一組の要素対として判定し、この要素対を第4集合に移動する(ステップ#108)。ここで、図5は、要素対として判定された最初の要素対を第4集合に移動させた後、つまり、ステップ#108が最初に実行された後の第3数列及び第4集合を示している。ここでは、最初の要素対として判定されたラベルA1を付した要素とラベルB1を付した要素とを、一組にして第3数列から第4集合に移動する。また、本実施形態では、第4集合に、第1数列の要素と第2数列の要素との平均値を入力するように構成されている。
【0025】
続いて、要素対作成部15は、第1数列及び第2数列から、要素対として判定された要素を削除する(ステップ#109)。これによって、第3数列は、判定が確定した要素が順次取除かれることになるのに対し、第1数列及び第2数列は、要素対と判定された要素が取除かれて、最終的に対になる要素が判定されない全ての要素が残ることとなる。詳細には、例えば、ラベルA1及びラベルB1が要素対として判定されると、第1数列からラベルA1の要素を削除し、第2数列からラベルB1の要素を削除する。
【0026】
第4数列作成部16は、算出部13と検索部14と要素対作成部15とを、要素対作成部15に於いて要素対が判定されなくなるまで繰返し実行する。言換えると、ステップ#103乃至#109を、ステップ#107において要素対が判定されなくなるまで繰返し実行する。ここで、図6は、算出部13と検索部14と要素対作成部15とを(ステップ#103乃至#109)要素対作成部15において要素対が判定されなくなるまで(ステップ#107)繰返し実行した後の第3数列及び第4集合を示している。
【0027】
続いて、第4数列作成部16は、組になる要素が判定されない要素を、空要素と組にして第4集合に移動する(ステップ#110)。詳細には、第1数列の残りの要素及び第2数列の残りの要素と空要素とを組にする。ここで、図7は、ステップ#110実行後の第4集合を示している。このときの平均値は、組になる要素が判定されない第1数列及び第2数列の要素の値がそのまま入力される。
【0028】
第4数列作成部16は、ステップ#110実行後、第4集合の要素を整列し、これを第4数列とする(ステップ#111)。尚、ここでは、平均値の値を昇順に整列させる。図8は、ステップ#111実行後の第4数列を示している。
最後に、出力部17は、第4数列を端末4の表示手段4bに表示させるための結果データを作成し、端末4に対して出力する(ステップ#112)。
【0029】
尚、本実施形態では、第1検体及び第2検体の遺伝子断片長を、キーボード等の入力手段4aを用いて入力する構成としたが、遺伝子解析手段2からの出力データを直接自動的に変換して第1数列及び第2数列を作成する構成とするのも好ましい実施態様である。この場合には、作業の効率化を図り入力ミス等を回避することができる。
また、算出部13が、第3数列の各要素について、全ての隣り合う要素との差を算出するのではなく、第1数列の要素と第2数列の要素との差のみ算出するように構成しても良い。
更に、本実施形態では、第1乃至第4数列を昇順に整列したが、降順に整列するのも好ましい実施態様であり、本願の権利の対象とするものである。
【0030】
次に、本実施形態の別実施形態について説明する。
本実施形態では、ステップ#101に先立って、遺伝子解析手段2において、第1検体の測定及び第2検体の測定を複数回実施する。
具体的には、遺伝子解析手段2において第1検体について測定を複数回実施し、これらの測定結果をまとめてデータ整形し、遺伝子断片長及びピークの値を平均した遺伝子断片長情報を作成する。この遺伝子断片長情報の各遺伝子断片長を入力手段4aから入力することで、検体情報取得部11が、入力された遺伝子断片長情報に基づいて第1数列を作成する。同様に、第2検体について実施した複数回の測定結果を用い、遺伝子断片長及びピークの値を平均した遺伝子断片長情報を作成し、この遺伝子断片長を入力手段4aから入力することで、検体情報取得部11が第2数列を作成する。
【0031】
尚、検体情報取得部11が、遺伝子解析手段2からの第1検体及び第2検体の測定結果データを取得し、遺伝子断片長及びピークの値を平均した遺伝子断片長情報を作成すると共に、これに基づいて、第1数列及び第2数列を作成する構成にするのも好ましい実施態様である。このように構成することで、第1検体及び第2検体の遺伝子断片長情報をより正確なものにして、遺伝子断片情報の重ね合わせの信頼性を高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による遺伝子断片情報の重ね合わせ技術を適用した装置の構成図
【図2】本発明による遺伝子断片情報の重ね合わせ技術のフローチャート
【図3】本発明において用いる数列の一例を示す図
【図4】本発明において作成する数列の一例を示す図
【図5】本発明の一工程における数列の説明図
【図6】本発明の一工程における数列の説明図
【図7】本発明の一工程における数列の説明図
【図8】本発明において作成する結果の一例を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 サーバ
2 遺伝子解析手段
3 ネットワーク
4 端末
4a 入力手段
11 検体情報取得部
12 第3数列作成部
13 算出部
14 検索部
15 要素対作成部
16 第4数列作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ上で実行することにより、2つの検体の遺伝子断片長を比較する遺伝子断片情報の重ね合わせ方法であって、
第1検体の遺伝子断片長からなる第1集合と第2検体の遺伝子断片長からなる第2集合とを用い、前記第1集合の全要素と前記第2集合の全要素とを昇順若しくは降順に整列した第3数列を作成する第3数列作成工程と、
前記第3数列作成工程において作成された前記第3数列の各要素について階差を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記階差から、前記第1集合の要素と前記第2集合の要素との階差であり、かつ、絶対値が最小となる階差を検索する検索工程と、
前記検索工程で検索された階差の絶対値が所定のしきい値以下若しくは未満である場合に、前記階差に係る前記第1集合の要素と前記第2集合の要素とを一組の要素対として判定し、前記要素対を第4集合に移動する要素対作成工程とを有し、
前記算出工程と前記検索工程と前記要素対作成工程とを、前記要素対作成工程に於いて要素対として判定されなくなるまで繰返し実行することにより、前記第4集合を作成する第4集合作成工程を実行する遺伝子断片情報の重ね合わせ方法。
【請求項2】
前記要素対作成工程に於いて要素対として判定されなくなった後に、前記第3数列に残存する夫々の要素と空要素とを一組の要素対として前記第4集合に移動し、前記第4集合の要素を昇順若しくは降順に整列する第4数列作成工程を実行する請求項1に記載の遺伝子断片情報の重ね合わせ方法。
【請求項3】
前記第1検体の遺伝子断片長の測定を複数回繰返して実施し、各測定結果を比較整形した値からなる遺伝子断片長情報を作成し、前記遺伝子断片長情報を用いて前記第1集合を作成する第1集合作成工程、及び、前記第2検体の遺伝子断片長の測定を複数回繰返して実施し、各測定結果を比較整形した値からなる遺伝子断片長情報を作成し、前記遺伝子断片長情報を用いて前記第2集合を作成する第2集合作成工程の少なくとも何れか一方を含む請求項1または2に記載の遺伝子断片情報の重ね合わせ方法。
【請求項4】
2つの検体の遺伝子断片長を比較する遺伝子断片情報の重ね合わせプログラムであって、
第1検体の遺伝子断片長と、第2検体の遺伝子断片長とを取得し、前記第1検体の遺伝子断片長からなる第1集合と前記第2検体の遺伝子断片長からなる第2集合とを作成する検体情報取得機能と、
前記検体情報取得機能において作成した前記第1集合の全要素と前記第2集合の全要素とを、昇順若しくは降順に整列した第3数列を作成する第3数列作成機能と、
前記第3数列作成機能によって作成した前記第3数列の各要素について、階差を算出する算出機能と、
前記算出機能によって算出した前記階差から、前記第1集合の要素と前記第2集合の要素との階差であり、かつ、絶対値が最小となる階差を検索する検索機能と、
前記検索機能によって検索した階差の絶対値が所定のしきい値以下若しくは未満である場合に、前記階差に係る前記第1集合の要素と前記第2集合の要素とを一組の要素対として判定し、前記要素対を第4集合に移動する要素対作成機能とを有し、
前記算出機能と前記検索機能と前記要素対作成機能とを、前記要素対作成機能に於いて要素対が判定されなくなるまで繰返し実行することにより、前記第4集合を作成する第4集合作成機能をコンピュータに実行させる遺伝子断片情報の重ね合わせプログラム。
【請求項5】
前記要素対作成機能に於いて要素対として判定されなくなった後に、前記第3数列に残存する夫々の要素と空要素とを一組の要素対として前記第4集合に移動し、前記第4集合の要素を昇順若しくは降順に整列する第4数列作成機能を有する請求項4に記載の遺伝子断片情報の重ね合わせプログラム。
【請求項6】
2つの検体の遺伝子断片長を比較する遺伝子断片情報の重ね合わせ装置であって、
第1検体の遺伝子断片長と、第2検体の遺伝子断片長とを入力する入力部と、
前記入力部において入力された前記第1検体の遺伝子断片長から第1集合を作成すると共に、前記入力部において入力された前記第2検体の遺伝子断片長から第2集合を作成し、前記第1集合の全要素と前記第2集合の全要素とを、昇順若しくは降順に整列した第3数列を作成する第3数列作成部と、
前記第3数列作成部によって作成した前記第3数列の各要素について、階差を算出する算出部と、
前記算出部によって算出した前記階差から、前記第1集合の要素と前記第2集合の要素との階差であり、かつ、絶対値が最小となる階差を検索する検索部と、
前記検索部によって検索した階差の絶対値が所定のしきい値以下若しくは未満である場合に、前記階差に係る前記第1集合の要素と前記第2集合の要素とを一組の要素対として判定し、前記要素対を第4集合に移動する要素対作成部とを有し、
前記算出部と前記検索部と前記要素対作成部とを、前記要素対作成部に於いて要素対が判定されなくなるまで繰返し実行することにより、前記第4集合を作成する第4集合作成部を備える遺伝子断片情報の重ね合わせ装置。
【請求項7】
前記要素対作成部に於いて要素対として判定されなくなった後に、前記第3数列に残存する夫々の要素と空要素とを一組の要素対として前記第4集合に移動し、前記第4集合の要素を昇順若しくは降順に整列する第4数列作成部を有する請求項6に記載の遺伝子断片情報の重ね合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−11823(P2006−11823A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188071(P2004−188071)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】