説明

避雷碍子

【目的】抵抗素子15を収容した収容筒体12の両端部に磁器製の蓋体19,20を固定し、両蓋体19,20に棒状の導通用電極22,23を貫通して設けた避雷碍子において、碍子外面の汚損湿潤時の漏れ電流により、導通用電極22,23に電蝕が生じるのを防ぐ。
【構成】導通用電極22,23の蓋体19,20から露出する境界部を取り巻くように、蓋体19,20の外面に環状の電蝕防止リング24を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、雷サージ電流を大地に放電して、送電線の雷サージ電位上昇を抑制し、地絡事故による停電を防止するようにした避雷碍子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の避雷碍子としては、磁器製の収容筒体内に電圧−電流特性が非直線性の抵抗素子を収容し、収容筒体の両端部に磁器製の蓋体を接着固定し、両蓋体に棒状の導通用電極を貫設したものが知られている。
【0003】この従来の避雷碍子において、導通用電極の太さは避雷機能面を考慮して設定されるが、通常は5mmもあれば十分であり、この導通用電極に耐蝕性の強い金属の被覆等を施すことにより、大気や海塩等による通常の腐蝕にも対処することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この従来構成のように導通用電極を細くした場合には、碍子外面の汚損湿潤時の漏れ電流が、導通用電極の蓋体から露出した境界部より導通用電極内に流入出して、その導通用電極の露出境界部に電蝕、即ち電流による腐蝕が生じたり、局部電界集中によるコロナ放電が生じたりするという問題があった。
【0005】この問題を解消するために、導通用電極の太さを大きく設定することも考えられるが、このように構成した場合には、導通用電極の外周面と蓋体の貫通孔との接触面積が増大して、その接触面間のシール性が低下し、加工技術も難しくなるという新たな問題が生じた。
【0006】この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであって、その目的とするところは、導通用電極を太くすることなく、導通用電極に電蝕が生じるのを防止し、電界を緩和することができる避雷碍子を提供することにある。
【0007】又、この発明の別の目的は上記目的に加えて、汚損体積物による導通用電極の自然腐食を防止することができる避雷碍子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明では、磁器製の収容筒体内に電圧−電流特性が非直線性の抵抗素子を収容し、収容筒体の両端部に磁器製の蓋体を接着固定し、両蓋体に棒状の導通用電極を貫設した避雷碍子において、前記導通用電極の蓋体からの露出境界部を取り巻くように、蓋体の外面に環状の電蝕防止リングを設けたものである。
【0009】又、請求項2記載の発明は、請求項1において、前記導通用電極の外周面と環状の電蝕防止リングの内周面との間に形成された空間に絶縁材を充填している。
【0010】
【作 用】請求項1記載の避雷碍子においては、碍子外面の汚損湿潤時の漏れ電流が、導通用電極の蓋体からの露出境界部を取り巻くように設けられた環状の電蝕防止リングに流入出して流れる。従って、漏れ電流が導通用電極の蓋体からの露出境界部に集中的に流入出することはなく、導通用電極の太さが雷撃時の通電機能を満たす程度に細く設定されていても、その導通用電極の露出境界部に電蝕が生じるおそれはない。
【0011】又、請求項2記載の避雷碍子においては、導通用電極の外周面と環状の電蝕防止リングの内周面との間に形成された空間に絶縁材が充填されているので、前記空間へ汚損物が侵入して堆積するのを防止することができ、このため汚損堆積物の湿潤による導通用電極の自然腐食を防止することができる。
【0012】
【実施例】以下、請求項1記載の発明を懸垂型避雷碍子に具体化した第1実施例を、図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
【0013】図2に示すように、避雷碍子1の碍子本体2は磁器により一体に形成され、有底円筒状の頭部3と、その頭部3の外周に形成された笠部4と、その笠部4の内面に同心状に形成された複数のひだ部5とを備えている。キャップ金具6は碍子本体2の頭部3にセメント7を介して嵌着固定され、その頂部には嵌合凹部8が形成されている。ピン金具9はセメント10により碍子本体2の頭部3内に固定され、その下端には嵌合部11が形成されている。そして、このピン金具9の嵌合部11を他の避雷碍子1のキャップ金具6上の嵌合凹部8に係合することによって、複数の避雷碍子1を縦方向へ直列に連結することができる。
【0014】図1〜図4に示すように、複数の収容筒体12は前記碍子本体2の笠部4に一体に形成され、その内部にはアルミナ等よりなる保護筒13が無機繊維層14を介して配置されている。複数の抵抗素子15は保護筒13内に収容配置され、電圧−電流特性が非直線性の酸化亜鉛を主材とする抵抗体で形成されている。一対の中間電極16,17は抵抗素子15の中間部に配設され、この中間電極16,17間には抵抗素子15を上下両端側に向かって付勢するためのバネ18が介装されている。
【0015】上下一対の磁器製の蓋体19,20は前記収容筒体12の上下両端の開口部に嵌合され、それらの接合面が硝子等の無機接合材21により互いに接着固定されている。上下一対の銅あるいはコバール等の金属材料からなる導通用電極22,23は上下両蓋体19,20に貫通して設けられ、それらの内端部が抵抗素子15に電気的に接続されると共に、外端にはネジ部22a,23aが設けられている。
【0016】円形断面の円環状をなす電蝕防止リング24は前記両導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部を所定間隔をおいて取り巻くように、蓋体19,20の外面に配設され、導通用電極22,23のネジ部22a,23aに螺合するナット25によりワッシャ26を介して締付固定されている。そして、この電蝕防止リング24は銅やコバール等の金属材料により形成され、碍子本体2の外面が汚損湿潤して漏れ電流が流れたとき、その漏れ電流が導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部に流入出しないように、この電蝕防止リング24によりガードされて、導通用電極22,23の露出境界部に電蝕が発生するおそれが防止される。又、もし電蝕防止リング24がないとナット25の外周角部に電界の集中が生じ易くなるが、この実施例ではリング24により導通用電極22,23近傍の電界が図1の鎖線で示すように緩和される。
【0017】上部リード線27は前記上部導通用電極22とキャップ金具6との間に取り付けられ、この上部リード線27及び上部導通用電極22を介して、抵抗素子15とキャップ金具6とが電気的に接続されている。下部リード線28は下部導通用電極23とピン金具9との間に取り付けられ、この下部リード線28及び下部導通用電極23を介して、抵抗素子15とピン金具9とが電気的に接続されている。
【0018】さらに前記導通用電極22,23は蓋体19,20に例えば銀蝋29付けにより封止され、導通用電極22,23の外周面に嵌合固定した銅あるいはコバール等の金属材料からなるフランジ金具30の外周縁と蓋体19,20の上面とは同じく銀蝋31付けにより封止されている。導通用電極22,23の中心部に形成した貫通孔22b,23bも銀蝋32により封止されている。
【0019】次に、前記のように構成された懸垂型避雷碍子について作用を説明する。さて、この避雷碍子1は複数個を縦方向へ直列に連結し、その下端に送電線を支持して使用される。この使用状態において送電線に雷サージの過電圧が印加されると、雷サージ電流が下端に位置する避雷碍子1のピン金具9に流れ、下部リード線28、下部導通用電極23、下側抵抗素子15、中間電極17,16、上側抵抗素子15、上部導通用電極22、及び上部リード線27を介してキャップ金具6に至り、その後、接地側の避雷碍子1に順次流れて、鉄塔から大地に放電される。このとき、抵抗素子15は、非直線性の電圧−電流特性により抵抗値を減じて雷サージ電流を速やかに放電し、その後、直ちに抵抗値を復元して続く運転電圧に対して絶縁機能を回復する。
【0020】又、第1実施例の避雷碍子1においては、導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部を取り巻くように、蓋体19,20の外面に円環状の電蝕防止リング24が設けられているため、碍子本体2の外面が汚損湿潤して漏れ電流が流れたとき、その漏れ電流が円環状の電蝕防止リング24に流入出して流れる。従って、漏れ電流が導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部に流入出することはなく、導通用電極22,23の太さが避雷機能を満たす程度に細く設定されていても、その導通用電極22,23の露出境界部に電蝕が生じるおそれはない。又、電触防止リング24によりコロナ放電を生じることは無い。
【0021】次に、請求項2記載の発明を懸垂型避雷碍子に具体化した第2実施例を図5及び図6に基づいて説明する。この実施例では前記導通用電極22に対しフランジ部22cを一体に形成するとともに、電蝕防止リング24の内周面に形成した段差部24aを前記フランジ部22cの上面に当接し、さらに上部リード線27の端部を前記電蝕防止リング24の上面に接触した状態で、前記導通用電極22のネジ部22aに螺合されるナット25により電蝕防止リング24を前記フランジ部22cに締め付け固定している。さらに、この取付状態で電蝕防止リング24の下面と、蓋体19の上面との間には、小間隙gが形成され、該小間隙gから電蝕防止リング24の内部空間に耐候性及び撥水性を有するシリコンゴム等の絶縁材35を注入している。
【0022】図6に示すように、下部の電蝕防止リング24側も上述した上部側と同様の構造としている。従って、この第2実施例においては、絶縁材35により内部に汚損物が侵入して堆積するのを防止でき、汚損堆積物の吸水による導通用電極22の自然腐食を防止することができる。
【0023】
【別の実施例】次に、この発明の別の実施例を図7〜図1010に基づいて説明する。まず、図7及び図8に示す実施例においては、電蝕防止リング24が半円形断面をなす楕円形の環状に形成され、導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部を所定間隔をおいて取り巻くように、蓋体19,20の外面に配設されて、導通用電極22,23のネジ部22a,23aに螺合するナット25によりワッシャ26を介して締付固定されている。
【0024】又、図9及び図10に示す実施例においては、電蝕防止リング24が円環状の金属円板により形成され、導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部を接合状態で取り巻くように、その導通用電極22,23の露出境界部に嵌合した状態で、蓋体19,20の外面に銀ロー付け等により固定されている。
【0025】従って、これらの各実施例においても、碍子本体2の外面汚損湿潤時の漏れ電流が電蝕防止リング24にガードされて、導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部に流入出することはなく、導通用電極22,23の太さが避雷機能を満たす程度に細く設定されていても、その導通用電極22,23の露出境界部に電蝕が生じるおそれを確実に防止し、かつ電界緩和を図り、コロナ放電を防止することができる。
【0026】なお、この発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、例えば、電蝕防止リング24を、導通用電極22,23の蓋体19,20からの露出境界部に一体に形成したり、図5及び図6に示す実施例において、絶縁材35を省略したりする等、この発明の趣旨から逸脱しない範囲で、各部の構成を任意に変更して具体化することも可能である。
【0027】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の発明は、導通用電極の太さを大きくしなくても、導通用電極に電蝕が生じるのを確実に防止し、電界緩和によるコロナ放電を防止することができるという優れた効果を奏する。
【0028】又、請求項2記載の発明は、導通用電極の外周面と環状の電蝕防止リングの内周面との間の空間へ汚損物が侵入して堆積するのを防止することができ、このため汚損堆積物の湿潤による導通用電極の自然腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を具体化した避雷碍子の第1実施例を示す要部断面図である。
【図2】その避雷碍子の全体を部分的に断面にして示す正面図である。
【図3】その要部を拡大して示す部分断面図である。
【図4】図3のA−A線における部分断面図である。
【図5】この発明を具体化した避雷碍子の第2実施例を示す要部断面図である。
【図6】その避雷碍子の全体を部分的に断面にして示す正面図である。
【図7】この発明のさらに別の実施例を示す部分断面図である。
【図8】図7のB−B線における部分断面図である。
【図9】この発明のさらに別の実施例を示す部分断面図である。
【図10】図9のC−C線における部分断面図である。
【符号の説明】
1 避雷碍子、2 碍子本体、12 収容筒体、15 抵抗素子、19 上部蓋体、20 下部蓋体、22 上部導通用電極、23 下部導通用電極、24電蝕防止リング、35 絶縁材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁器製の収容筒体内に電圧−電流特性が非直線性の抵抗素子を収容し、収容筒体の両端部に磁器製の蓋体を接着固定し、両蓋体に棒状の導通用電極を貫設した避雷碍子において、前記導通用電極の蓋体からの露出境界部を取り巻くように、蓋体の外面に環状の電蝕防止リングを設けたことを特徴とする避雷碍子。
【請求項2】 請求項1において、前記導通用電極の外周面と環状の電蝕防止リングの内周面との間に形成された空間に絶縁材を充填したことを特徴とする避雷碍子。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate