還元剤供給装置
【課題】フィルタに捕集された異物が流入することによる各部品の不具合を防ぐことができる還元剤供給装置を提供する。
【解決手段】液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁と、前記還元剤タンクから前記還元剤噴射弁までの還元剤通路の途中に配置され前記還元剤中の異物を捕集するフィルタと、を備え、前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御が実行される還元剤供給装置において、前記還元剤の噴射制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、前記パージ制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、を一定の方向にする。
【解決手段】液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁と、前記還元剤タンクから前記還元剤噴射弁までの還元剤通路の途中に配置され前記還元剤中の異物を捕集するフィルタと、を備え、前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御が実行される還元剤供給装置において、前記還元剤の噴射制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、前記パージ制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、を一定の方向にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気を浄化するための還元剤を排気管内に噴射する還元剤供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に搭載された内燃機関から排出される排気中の窒素酸化物(以下「NOX」と称する。)を除去するための排気浄化装置の一態様として、排気通路に備えられNOXと還元剤との還元反応を促進させるNOX浄化触媒と、尿素水溶液等の液体の還元剤をNOX浄化触媒の上流側で噴射する還元剤供給装置とを備えた装置が実用化されている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給装置は、液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、還元剤タンク内の還元剤を吸い上げて圧送するポンプと、ポンプにより圧送される還元剤を排気管内に噴射する還元剤噴射弁とを備えて構成されている。また、還元剤が流通する還元剤通路には、還元剤中の異物を捕集するためのフィルタが備えられている。
【0004】
ここで、還元剤として尿素水溶液が用いられる場合、尿素水溶液の濃度は凝固点が最も低くなる濃度(例えば32.5%濃度、凝固点≒−11℃)に調整されて用いられる。しかしながら、寒冷地等において、内燃機関の停止中に外気温が凝固点を下回ると、還元剤供給経路内で還元剤が凝固するおそれがある。特に、排気熱等によって水分が蒸発して還元剤の濃度が上昇し、還元剤の凝固点が上昇する場合があるため、還元剤の凝固の発生は十分に考えられる。
【0005】
還元剤の凝固を生じると、還元剤の体積が膨張して、配管や還元剤噴射弁が破損するおそれがある。そのため、内燃機関の停止時においては、還元剤供給経路内に残留する還元剤を還元剤タンクに回収するパージ制御が実施されるようになっている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、還元剤供給装置に備えられたフィルタは、還元剤の噴射制御中においては、還元剤タンクから還元剤噴射弁に供給される還元剤中の異物を捕集する役割を果たす。還元剤の噴射制御中に捕集される異物には、貯蔵タンク内の還元剤に混入していたゴミや、フィルタの位置によってはポンプの摩耗粉等が含まれる。また、フィルタは、パージ制御中においては、還元剤噴射弁や還元剤通路から還元剤タンクへと回収される還元剤中の異物を捕集する役割を果たす。パージ制御中に捕集される異物には、排気管内の不燃物や排気微粒子、還元剤噴射弁の摩耗粉、フィルタの位置によってはポンプの摩耗粉等が含まれる。
【0008】
従来の還元剤供給装置においては、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタの濾過面が異なるようになっている。すなわち、還元剤の噴射制御中には、フィルタにおける互いに表裏をなす第1の面及び第2の面のうちの第1の面側から第2の面側に還元剤が通過すると仮定すると、パージ制御中には第2の面側から第1の面側に還元剤が通過するようになっている。
【0009】
そのため、還元剤の噴射制御中に第1の面側に付着した異物は、パージ制御中に還元剤タンクやポンプその他の部品内に流入するおそれがある。また、パージ制御中に第2の面側に付着した異物は、還元剤の噴射制御中に還元剤噴射弁その他の部品内に流入するおそれがある。
【0010】
還元剤タンクに異物がまとめて流入すると、タンク内の還元剤の汚染を生じるおそれがある。ポンプに異物がまとめて流入すると、ポンプの焼付きや異常摩耗を生じるおそれがある。また、還元剤噴射弁に異物がまとめて流入すると、噴孔の詰まりや弁体の摺動不良、シート面の異常摩耗を生じるおそれがある。この他、異物がまとめて流入することによって、各部品の不具合を生じるおそれがある。
【0011】
また、フィルタを通過する還元剤の通過方向が異なると、流れによってフィルタ自体のたわみが大きくなりやすく、フィルタが破損するおそれもある。
【0012】
本発明の発明者は、このような課題に鑑みて、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタを通過する還元剤の通過方向を一定の方向にすることよりこのような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、フィルタに捕集された異物が流入することによる各部品の不具合を防ぐことができる還元剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁と、前記還元剤タンクから前記還元剤噴射弁までの還元剤通路の途中に配置され前記還元剤中の異物を捕集するフィルタと、を備え、前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御が実行される還元剤供給装置において、前記還元剤の噴射制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、前記パージ制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、を一定の方向にしたことを特徴とする還元剤供給装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0014】
すなわち、本発明の還元剤供給装置は、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタを通過する還元剤の通過方向が一定の方向となるように構成されているため、常にフィルタの一定の面側において異物が捕集されることになる。したがって、還元剤の噴射制御時又はパージ制御時にフィルタに捕集された異物が逆流することがなくなり、フィルタに捕集された異物の流入によって各部品に不具合が発生することを防ぐとともに、フィルタ自体の破損も低減することが可能になる。
【0015】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記フィルタが、互いに表裏をなす第1の面及び第2の面を有し、前記フィルタよりも前記還元剤タンク側の前記還元剤通路が第1の分岐路及び第2の分岐路に分岐するとともに、前記第1の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第2の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、前記フィルタよりも前記還元剤噴射弁側の前記還元剤通路が第3の分岐路及び第4の分岐路に分岐するとともに、前記第3の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第4の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、前記還元剤の噴射制御中には前記第1の分岐路、前記フィルタ、及び前記第4の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤噴射弁に供給する一方、前記パージ制御中には前記第3の分岐路、前記フィルタ、及び前記第2の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するように構成することにより、前記還元剤を前記フィルタの前記第1の面側から前記第2の面側に通過させることが好ましい。
【0016】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中いずれの場合であっても還元剤をフィルタの第1の面側に導くことができるとともに、フィルタを通過した還元剤をフィルタの第2の面側から還元剤タンク側又は還元剤噴射弁側に導くことが可能になる。
【0017】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記第1の分岐路及び前記第3の分岐路は前記還元剤の前記還元剤タンク側又は前記還元剤噴射弁側への流れを遮断する一方向弁を備えるとともに、前記第2の分岐路及び前記第4の分岐路は前記還元剤の前記フィルタ側への流れを遮断する一方向弁を備えることが好ましい。
【0018】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、制御装置等による制御によらない機械式の一方向弁によって、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0019】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記第1の分岐路と前記第2の分岐路との分岐部に、前記還元剤タンク側と前記第1の分岐路又は前記第2の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備え、前記第3の分岐路と前記第4の分岐路との分岐部に、前記還元剤噴射弁側と前記第3の分岐路又は前記第4の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備えることが好ましい。
【0020】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、切換制御弁を制御装置等により制御することによって、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0021】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記フィルタを、少なくとも前記一方向弁又は前記流路切換制御弁を含むフィルタユニットとして構成することが好ましい。
【0022】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、フィルタ部分を置き換えることによって、本発明の還元剤供給装置を容易に構成することが可能になる。
【0023】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記第2の分岐路を、前記フィルタの前記第2の面側の領域の最下部に接続することが好ましい。
【0024】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、パージ制御時にフィルタに残留する還元剤の量をできる限り少なくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成の一例を概略的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図3】還元剤の流れ方向について説明するために示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成の一例を概略的に示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図6】還元剤の流れ方向について説明するために示す図である。
【図7】変形例1に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図8】変形例2に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図9】変形例3に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図10】変形例4に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図11】変形例5に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図12】変形例6に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る還元剤供給装置に関する実施の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、それぞれの図において、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aを備えた排気浄化装置10Aの全体的構成の一例を概略的に示す図である。図2は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの構成について説明するために示す図である。図3は、還元剤の流れ方向について説明するために示す図であって、図3(a)は還元剤の噴射制御中の還元剤の流れ方向を示し、図3(b)はパージ制御中の還元剤の流れ方向を示している。
【0028】
(1)排気浄化装置の全体的構成
排気浄化装置10Aは、車両等に搭載された内燃機関1から排出される排気中のNOXを、NOX浄化触媒11上で還元剤を用いて浄化するように構成された装置である。排気浄化装置10Aは、内燃機関1の排気系に接続された排気管3の途中に配置されたNOX浄化触媒11と、NOX浄化触媒11よりも上流側において排気管3内に還元剤を噴射供給するための還元剤供給装置20Aと、還元剤供給装置20Aの動作制御を行う制御装置40Aとを主たる構成要素として備えている。
【0029】
NOX浄化触媒11は、排気管3内に噴射された還元剤又は当該還元剤から生成される還元成分と、排気中のNOXとの反応を促進する機能を有している。NOX浄化触媒11としては、NOX選択還元触媒やNOX吸蔵触媒が用いられる。
【0030】
NOX選択還元触媒は、還元剤を吸着するとともに、この還元剤を用いて、触媒中に流入する排気中のNOXを選択的に浄化する機能を有する触媒である。NOX選択還元触媒を用いる場合においては、尿素水溶液や未燃燃料が還元剤として用いられる。還元剤として尿素水溶液を用いる場合には、尿素水溶液中の尿素が分解することによって生成されるアンモニア(NH3)がNOXと反応することにより、NOXが窒素(N2)及び水(H2O)に分解される。また、還元剤として未燃燃料を用いる場合には、未燃燃料中の炭化水素(HC)がNOXと反応することにより、NOXが窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解される。
【0031】
また、NOX吸蔵触媒は、触媒中に流入する排気の空燃比がリーンの状態(燃料希薄状態)においてNOXを吸蔵する一方、空燃比がリッチの状態に切り換えられたときにNOXを放出し、排気中の炭化水素(HC)を用いてNOXを浄化する機能を有する触媒である。炭化水素(HC)と反応したNOXは窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解される。NOX吸蔵触媒を用いる場合においては、排気の空燃比をリッチの状態とするために、還元剤としての未燃燃料が排気管3内に噴射供給される。
【0032】
(2)還元剤供給装置
還元剤供給装置20Aは、液体の還元剤を収容する還元剤タンク21と、還元剤を圧送するポンプ23と、ポンプ23により圧送された還元剤を排気管3内に噴射する還元剤噴射弁25と、ポンプ23により圧送される還元剤の流れ方向を切り換えるリバーティングバルブ24と、還元剤中の異物を捕集するためのフィルタ部50Aとを備えている。
【0033】
還元剤タンク21とポンプ23とは、リバーティングバルブ24を介して第1の還元剤通路31で接続され、ポンプ23とフィルタ部50Aとは、リバーティングバルブ24を介して第2の還元剤通路32で接続され、さらに、フィルタ部50Aと還元剤噴射弁25とは、第3の還元剤通路33で接続されている。フィルタ部50Aには、他端が還元剤タンク21に接続されたリターン通路35が接続されており、リターン通路35にはリリーフ弁37が備えられている。
【0034】
第3の還元剤通路33には、第3の還元剤通路33内の圧力を検出するための圧力センサ27が備えられている。但し、圧力センサ27は、還元剤噴射弁25に供給される還元剤の圧力を検出できるようになっていればよく、第3の還元剤通路33に直接設けられていなくても構わない。
【0035】
還元剤噴射弁25は、制御装置40Aによって駆動制御が行われるものであり、使用できる還元剤噴射弁25は特に限定されるものではない。例えば、通電/非通電の切り換えにより開弁/閉弁の切り換えが行われる電磁弁を用いることができる。
【0036】
ポンプ23は、制御装置40Aによって駆動制御が行われるものであり、使用できるポンプ23は特に限定されるものではない。例えば、単位時間当たりの通電のオン/オフのデューティ比を調整することによって吐出量が調節される電動ポンプを用いることができる。
【0037】
リバーティングバルブ24は、制御装置40によって駆動制御が行われるものであり、還元剤の流れ方向を、還元剤タンク21側から還元剤噴射弁25側へと流れる正方向と、還元剤噴射弁25側から還元剤タンク21側へと流れる逆方向とに切り換え可能に構成されている。使用できるリバーティングバルブ24は特に限定されるものではなく、例えば、通電のオン/オフによって還元剤の流れ方向を正方向又は逆方向に切り換え可能な電磁切換弁を用いることができる。
【0038】
本実施形態に係る還元剤供給装置20Aにおいては、排気管3内への還元剤の噴射制御を行う場合には、リバーティングバルブ24への通電が停止されて、還元剤が正方向に流れるようになっている。一方、還元剤を還元剤タンク21に回収するパージ制御を行う場合には、リバーティングバルブ24への通電が行われ、還元剤が逆方向に流れるように流路が切り換えられるようになっている。
【0039】
フィルタ部50Aは、図2に示すように、ケーシング54と、ケーシング54内に収容されたフィルタ51とを備えている。本実施形態の還元剤供給装置20Aにおいては、円筒状のフィルタ51が用いられており、フィルタ51は円筒状の外側に位置する第1の面51aと、内側に位置する第2の面51bとを有している。図2において、フィルタ51は断面のみが示されている。
【0040】
ポンプ23とフィルタ部50Aとを接続する第2の還元剤通路32は、途中で、第1の分岐路32aと第2の分岐路32bとに分岐している。第1の分岐路32aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されるとともに、フィルタ部50A側からポンプ23側への還元剤の流れを遮断する第1の一方向弁52aを備えている。第2の分岐路32bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されるとともに、ポンプ23側からフィルタ部50A側への還元剤の流れを遮断する第2の一方向弁52bを備えている。
【0041】
フィルタ部50Aと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路33は、途中で、第3の分岐路33aと第4の分岐路33bとに分岐している。第3の分岐路33aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されるとともに、フィルタ部50A側から還元剤噴射弁25側への還元剤の流れを遮断する第3の一方向弁53aを備えている。第4の分岐路33bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されるとともに、還元剤噴射弁25側からフィルタ部50A側への還元剤の流れを遮断する第4の一方向弁53bを備えている。
【0042】
フィルタ部50Aと還元剤タンク21とを接続するリターン通路35は、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されるとともに、還元剤タンク21側からフィルタ部50A側への還元剤の流れを遮断するリリーフ弁37を備えている。
【0043】
第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53b及びリリーフ弁37は、弁体とスプリングとを用いた機械式の弁として構成されている。第1の一方向弁52a、第4の一方向弁53b、及びリリーフ弁37は、還元剤の噴射制御中に開弁する。第2の一方向弁52b及び第3の一方向弁53aは、パージ制御中に開弁する。
【0044】
具体的には、図3(a)に示すように、還元剤の噴射制御中、ポンプ23を駆動して還元剤が正方向に圧送されて第2の還元剤通路32、第1の分岐路32a、及び第2の分岐路32b内の圧力が上昇することによって、第2の一方向弁52bが閉弁する一方、第1の一方向弁52aが開弁する。第1の分岐路32aが開弁することによってフィルタ51の第1の面51a側の領域Aに還元剤が流れ込む。
【0045】
また、フィルタ部50A内に還元剤が流れ込み、フィルタ部50A内の圧力が上昇することによって、第3の一方向弁53aが閉弁する一方、第4の一方向弁53bが開弁する。そのため、フィルタ部50A内に流れ込んだ還元剤は、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過する。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0046】
フィルタ51を通過した還元剤は、第4の一方向弁53bを介して第4の分岐路33bを流れ、さらに第3の還元剤通路33を流れて還元剤噴射弁25に供給される。このとき、還元剤の供給量が過剰になって、還元剤の圧力がリリーフ弁37の開弁圧を超えるとリリーフ弁37が開弁し、余剰の還元剤がリターン通路35を介して還元剤タンク21に戻される。リターン通路35がフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入することがない。
【0047】
また、図3(b)に示すように、パージ制御中、ポンプ23を駆動して還元剤が逆方向に圧送されて第2の還元剤通路32、第1の分岐路32a、及び第2の分岐路32b内が減圧されることによって、第1の一方向弁52aが閉弁する一方、第2の一方向弁52bが開弁する。第2の一方向弁52bが開弁することによって、フィルタ部50A内の還元剤がポンプ23側に吸い戻される。
【0048】
また、フィルタ部50A内の還元剤が吸い戻され、フィルタ部50A内が減圧されることによって、第4の一方向弁53b及びリリーフ弁37が閉弁する一方、第3の一方向弁53aが開弁する。そのため、還元剤噴射弁25及び第3の還元剤通路33内の還元剤は、第3の一方向弁53aを介してフィルタ51の第1の面51a側に流れ込み、さらに、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過する。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0049】
フィルタ51を通過した還元剤は、第2の分岐路32b及び第2の還元剤通路32を介してポンプ23によって吸い戻されて、還元剤タンク21に回収される。このとき、第2の分岐路32bはフィルタ部50Aのケーシング54の最下部に接続されているため、還元剤がフィルタ部50A内に残留しにくくなっている。
【0050】
すなわち、還元剤の噴射制御中において、ポンプ23により圧送される還元剤は、第2の還元剤通路32、第1の分岐路32a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第4の分岐路33b、第3の還元剤通路33を順次通過して還元剤噴射弁25に供給される。また、パージ制御中において、ポンプ23により吸い戻される還元剤は、第3の還元剤通路33、第3の分岐路33a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第2の分岐路32b、第2の還元剤通路32を順次通過して還元剤タンク21に回収される。
【0051】
したがって、本実施形態の還元剤供給装置20Aにおいては、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中ともに還元剤が第1の面51a側から第2の面51b側に通過するため、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が同一となって、フィルタ51に付着した異物が逆流することがないようになっている。
【0052】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る還元剤噴射装置20Aは、還元剤の噴射制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向と、パージ制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向とが一定方向となるように構成されている。そのため、常にフィルタ51の第1の面51a側において異物が捕集されることになる。したがって、還元剤の噴射制御時又はパージ制御時にフィルタ51に捕集された異物が逆流することがなくなり、フィルタ51に捕集された異物の流入によって、ポンプ23や還元剤噴射弁25、第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53b、リリーフ弁37、還元剤タンク21等の各構成部品において不具合が発生することを防ぐとともに、フィルタ51自体の破損を低減することが可能になる。
【0053】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、ポンプ23とフィルタ部50Aとを接続する第2の還元剤通路32を分岐するとともに、フィルタ部50Aと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路33を分岐し、それぞれの分岐路に一方向弁を設けて所定の箇所に接続することとしているために、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中いずれの場合であっても還元剤をフィルタ51の第1の面51a側に導くことができるとともに、フィルタ51を通過した還元剤をフィルタ51の第2の面51b側から還元剤タンク21側又は還元剤噴射弁25側に導くことが可能になる。
【0054】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、第1〜第4の分岐路32a,32b,33a,33bに、所定方向への還元剤の流れを遮断する機械式の第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53bを備えることとしているために、制御装置40による制御を要しないで、還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0055】
また、第1の実施の形態の還元剤供給装置20Aによれば、リターン通路35をフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続しているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入しないようにすることが可能になる。
【0056】
さらに、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、パージ制御時にフィルタ部50A内の還元剤が流れる第2の分岐路32bを、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bの最下部に接続することとしているため、パージ制御時にフィルタ部50A内に残留する還元剤の量をできる限り少なくすることが可能になる。
【0057】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bを備えた排気浄化装置10Bの全体的構成の一例を概略的に示す図である。図5は、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの構成について説明するために示す図である。図6は、還元剤の流れ方向について説明するために示す図であって、図6(a)は還元剤の噴射制御中の還元剤の流れ方向を示し、図6(b)はパージ制御中の還元剤の流れ方向を示している。
【0058】
排気浄化装置10Bの全体的構成は、基本的に第1の実施の形態の場合と同様であるが、還元剤供給装置20Bの構成が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と異なる。以下、還元剤供給装置20Bの構成を中心に説明する。
【0059】
本実施形態に係る還元剤供給装置20Bは、液体の還元剤を収容する還元剤タンク21と、還元剤を圧送するポンプ23と、ポンプ23により圧送された還元剤を排気管3内に噴射する還元剤噴射弁25と、ポンプ23により圧送される還元剤の流れ方向を切り換えるリバーティングバルブ24と、還元剤中の異物を捕集するためのフィルタ部50Bとを備えている。
【0060】
還元剤タンク21とポンプ23とは、リバーティングバルブ24を介して第1の還元剤通路31で接続され、ポンプ23とフィルタ部50Bとは、リバーティングバルブ24を介して第2の還元剤通路72で接続され、さらに、フィルタ部50Bと還元剤噴射弁25とは、第3の還元剤通路73で接続されている。フィルタ部50Bには、他端が還元剤タンク21に接続されたリターン通路35が接続されており、リターン通路35にはリリーフ弁37が備えられている。第3の還元剤通路73には、第3の還元剤通路73内の圧力を検出するための圧力センサ27が備えられている。
【0061】
還元剤噴射弁25やポンプ23、リバーティングバルブ24、圧力センサ27、フィルタ部50B、リターン通路35、リリーフ弁37は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様に構成することができる。
【0062】
ポンプ23とフィルタ部50Bとを接続する第2の還元剤通路72は、途中で、第1の分岐路72aと第2の分岐路72bとに分岐している。第1の分岐路72aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されている。第2の分岐路72bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されている。
【0063】
第1の分岐路72aと第2の分岐路72bとの分岐部分には第1の切換制御弁75が備えられている。第1の切換制御弁75は、制御装置40Bによって制御されるものであり、第2の還元剤通路72を第1の分岐路72aに接続するか、又は第2の分岐路72bに接続するかを切り換えることができるようになっている。本実施形態に係る還元剤供給装置20Bにおいては、第1の切換制御弁75への通電が停止している間、第2の還元剤通路72と第1の分岐路72aとを接続する一方、第1の切換制御弁75に通電している間、第2の還元剤通路72と第2の分岐路72bとを接続する電磁制御弁が用いられている。但し、使用できる第1の切換制御弁75は特に限定されない。
【0064】
フィルタ部50Bと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路73は、途中で、第3の分岐路73aと第4の分岐路73bとに分岐している。第3の分岐路73aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されている。第4の分岐路73bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されている。
【0065】
第3の分岐路73aと第4の分岐路73bとの分岐部分には第2の切換制御弁76が備えられている。第2の切換制御弁76は、制御装置40Bによって制御されるものであり、第3の還元剤通路73を第3の分岐路73aに接続するか、又は第4の分岐路73bに接続するかを切り換えることができるようになっている。本実施形態に係る還元剤供給装置20Bにおいては、第2の切換制御弁76への通電が停止している間、第3の還元剤通路73と第4の分岐路73bとを接続する一方、第2の切換制御弁76に通電している間、第3の還元剤通路73と第3の分岐路73aとを接続する電磁制御弁が用いられている。但し、使用できる第2の切換制御弁76は特に限定されない。
【0066】
本実施形態に係る還元剤供給装置20Bにおいて、還元剤の噴射制御中には第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76への通電はともに停止され、第2の還元剤通路72と第1の分岐路72a、及び、第4の分岐路73bと第3の還元剤通路73がそれぞれ接続される。一方、パージ制御中には第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76にともに通電され、第2の還元剤通路72と第2の分岐路72b、及び、第3の分岐路73aと第3の還元剤通路73がそれぞれ接続される。
【0067】
具体的には、図6(a)に示すように、還元剤の噴射制御中においては、第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76への通電をともに停止し、第2の還元剤通路72と第1の分岐路72a、及び、第4の分岐路73bと第3の還元剤通路73をそれぞれ接続する。この状態でポンプ23を駆動して還元剤を正方向に圧送すると、還元剤は第1の分岐路72aを介してフィルタ51の第1の面51a側の領域Aに流れ込む。
【0068】
また、フィルタ部50B内に流れ込んだ還元剤は、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過し、さらに、第4の分岐路73bを介して第3の還元剤通路73を流れて還元剤噴射弁25に供給される。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0069】
また、還元剤の供給量が過剰になって、還元剤の圧力がリリーフ弁37の開弁圧を超えるとリリーフ弁37が開弁し、余剰の還元剤がリターン通路35を介して還元剤タンク21に戻される。このとき、リターン通路35がフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入することがない。
【0070】
また、図6(b)に示すように、パージ制御中においては、第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76にともに通電し、第2の還元剤通路72と第2の分岐路72b、及び、第3の分岐路73aと第3の還元剤通路73をそれぞれ接続する。この状態でポンプ23を駆動して還元剤を逆方向に圧送すると、第2の還元剤通路72及び第2の分岐路72b内が減圧されることによって、フィルタ部50B内の還元剤がポンプ23側に吸い戻される。
【0071】
また、フィルタ部50B内の還元剤が吸い戻され、フィルタ部50B内が減圧されることによって、リリーフ弁37が閉弁する一方、第3の分岐路73a及び第3の還元剤通路73が減圧される。そのため、還元剤噴射弁25及び第3の還元剤通路73内の還元剤が第3の分岐路73aを介してフィルタ51の第1の面51a側に流れ込み、さらに、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過する。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0072】
フィルタ51を通過した還元剤は、第2の分岐路72b及び第2の還元剤通路72を介してポンプ23によって吸い戻されて、還元剤タンク21に回収される。このとき、第2の分岐路72bはフィルタ部50Bのケーシング54の最下部に接続されているため、還元剤がフィルタ部50B内に残留しにくくなっている。
【0073】
すなわち、還元剤の噴射制御中において、ポンプ23により圧送される還元剤は、第2の還元剤通路72、第1の分岐路72a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第4の分岐路73b、第3の還元剤通路73を順次通過して還元剤噴射弁25に供給される。また、パージ制御中において、ポンプ23により吸い戻される還元剤は、第3の還元剤通路73、第3の分岐路73a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第2の分岐路72b、第2の還元剤通路72を順次通過して還元剤タンク21に回収される。
【0074】
したがって、本実施形態の還元剤供給装置20Bにおいては、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中ともに還元剤が第1の面51a側から第2の面51b側に通過するため、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が同一となって、フィルタ51に付着した異物が逆流することがないようになっている。
【0075】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る還元剤噴射装置20Bは、還元剤の噴射制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向と、パージ制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向とが一定方向となるように構成されている。そのため、常にフィルタ51の第1の面51a側において異物が捕集されることになる。したがって、還元剤の噴射制御時又はパージ制御時にフィルタ51に捕集された異物が逆流することがなくなり、フィルタ51に捕集された異物の流入によって、ポンプ23や還元剤噴射弁25、リリーフ弁37、還元剤タンク21等の各構成部品において不具合が発生することを防ぐとともに、フィルタ51自体の破損を低減することが可能になる。
【0076】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、ポンプ23とフィルタ部50Bとを接続する第2の還元剤通路72を分岐するとともに、フィルタ部50Bと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路73を分岐して所定の箇所に接続し、それぞれの分岐部分に切換制御弁を設けることとしているために、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中いずれの場合であっても還元剤をフィルタ51の第1の面51a側に導くことができるとともに、フィルタ51を通過した還元剤をフィルタ51の第2の面51b側から還元剤タンク21側又は還元剤噴射弁25側に導くことが可能になる。
【0077】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、第1の分岐路72aと第2の分岐路72bとの分岐部分に第1の切換制御弁75を備え、第3の分岐路73aと第4の分岐路73bとの分岐部分に第2の切換制御弁76を備えることとしているために、制御装置40により制御することによって、還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0078】
また、第2の実施の形態の還元剤供給装置20Bによれば、リターン通路35をフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続しているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入しないようにすることが可能になる。
【0079】
さらに、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、パージ制御時にフィルタ部50B内の還元剤が流れる第2の分岐路72bを、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bの最下部に接続することとしているため、パージ制御時にフィルタ部50B内に残留する還元剤の量をできる限り少なくすることが可能になる。
【0080】
[他の実施の形態]
以上説明した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。例えば、第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置は、以下のように変更することができる。
【0081】
(1)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置において説明した各構成要素の構成や形態はあくまでも一例であって、任意に変更することが可能である。
【0082】
例えば、上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、リバーティングバルブ24によって還元剤の流れ方向を切り換えることによってパージ制御を実施するようにしているが、リバーティングバルブを用いないで、ポンプ23を逆回転させることでパージ制御を実施するように構成することもできる。
【0083】
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、円筒状のフィルタ51を用いているが、フィルタの形態は限定されない。例えば、立体形状のフィルタではなく、平板状のフィルタを用いることもできる。また、複数のフィルタ51を重ねて使用することもできる。
【0084】
(2)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、円筒状のフィルタ51の外側から、フィルタ51の内側に向けて還元剤を通過させるようにしているが、還元剤の通過方向が逆であってもよい。
【0085】
図7は変形例1に係る還元剤供給装置を説明するために示す図であり、図8は変形例2に係る還元剤供給装置を説明するために示す図である。
変形例1に係る還元剤供給装置は、第1の分岐路32a及び第2の分岐路32bのフィルタ部50Aへの接続箇所が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合とは逆になっているとともに、第3の分岐路33a及び第4の分岐路33bの接続箇所が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合とは逆になっている。また、変形例2に係る還元剤供給装置は、第1の分岐路72a及び第2の分岐路72bのフィルタ部50Bへの接続箇所が第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの場合とは逆になっているとともに、第3の分岐路73a及び第4の分岐路73bの接続箇所が第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの場合とは逆になっている。すなわち、変形例1及び2に係る還元剤供給装置においては、フィルタ51の内側に位置する面が第1の面51aであり、外側に位置する面が第2の面51bである。変形例1及び2に係る還元剤供給装置は、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が内側から外側になって、それぞれ第1及び第2の実施の形態の場合とは逆になるが、第1又は第2の実施の形態に係る還元剤供給装置と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(3)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bを構成するフィルタや一方向弁、切換制御弁等をユニット化して構成することもできる。
図9は、変形例3に係る還元剤供給装置を説明するために示す図であり、図10は、変形例4に係る還元剤供給装置を説明するために示す図である。変形例3に係る還元剤供給装置は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aにおけるフィルタ部50A、第1〜第4の分岐路32a,32b,33a,33b、第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53bをユニット化したフィルタユニット50Cを備えている。また、変形例4に係る還元剤供給装置は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bにおけるフィルタ部50B、第1〜第4の分岐路72a,72b,73a,73b、第1及び第2の切換制御弁75,76をユニット化したフィルタユニット50Dを備えている。このように構成されたフィルタユニット50C,50Dを用いることによって、フィルタ部分を置き換えることによって、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が一定の方向となる還元剤供給装置を容易に構成することが可能になる。
【0087】
(4)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、ポンプ23と還元剤噴射弁25との間にフィルタ部50A,50Bを配置しているが、還元剤タンク21とポンプ23との間にフィルタ部50A,50Bを配置することもできる。このようにフィルタ部を配置する場合においても、フィルタ部よりも還元剤タンク側に位置する還元剤通路と、フィルタ部よりもポンプ側に位置する還元剤通路とをそれぞれ分岐して、所定方向への還元剤の流れを遮断する一方向弁や、流路を切り換える切換制御弁を備えることで、還元剤の噴射制御時とパージ制御時とで、フィルタを通過する還元剤の通過方向を一定方向にすることができる。
【0088】
(5)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいて、フィルタ51を、剛性の高い開口部材で矜持することもできる。
図11は、変形例5に係る還元剤供給装置を説明するための図を示しており、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aを変形した例を示している。変形例5に係る還元剤供給装置において、フィルタ51は、第1の面51a側及び第2の面51b側にそれぞれ配置された開口部材81a,81bによって矜持されている。したがって、還元剤の噴射制御時における還元剤の圧力や、パージ制御時におけるポンプ23の吸引力の影響によるフィルタ51の変形を防ぐことが可能になる。開口部材81a,81bは、ステンレス製の金属や、剛性の高い樹脂材料を用いて構成することができる。また、開口部材81a,81bは、例えば、複数の開口部を有する穴あきプレートや、メッシュ状に構成することができる。
【0089】
(6)上述した変形例3に係る還元剤供給装置において、ケーシング54内でフィルタ51の下部に空間部を設けることもできる。
図12は、変形例6に係る還元剤供給装置を説明するための図を示しており、変形例3に係る還元剤供給装置を変形した例を示している。変形例6に係る還元剤供給装置において、フィルタ51は、スプリング85によって上方に押し付けられており、フィルタ51の下方側には空間部87が設けられている。そのため、パージ制御時に、フィルタ部50F内の還元剤を第2の分岐路32bを介して吸い戻したときに、ケーシング54内に還元剤が残留した場合であっても、フィルタ51に還元剤が付着しにくくなっている。したがって、内燃機関の停止中にフィルタ部50Fで還元剤が凍結した場合であっても、還元剤の体積の膨張等によるフィルタ51の破損を防ぐことが可能になる。
【符号の説明】
【0090】
1:内燃機関、3:排気管、10A・10B:排気浄化装置、11:NOX浄化触媒、13:NOXセンサ、20A・20B:還元剤供給装置、21:還元剤タンク、23:ポンプ、24:リバーティングバルブ、25:還元剤噴射弁、27:圧力センサ、31:第1の還元剤通路、32:第2の還元剤通路、32a:第1の分岐路、32b:第2の分岐路、33:第3の還元剤通路、33a:第3の分岐路、33b:第4の分岐路、35:リターン通路、37:リリーフ弁、40A・40B:制御装置、50A・50B・50E・50F:フィルタ部、50C・50D:フィルタユニット、51:フィルタ、51a:第1の面、51b:第2の面、52a:第1の一方向弁、52b:第2の一方向弁、53a:第3の一方向弁、53b:第4の一方向弁、54:ケーシング、72:第2の還元剤通路、72a:第1の分岐路、72b:第2の分岐路、73:第3の還元剤通路、73a:第3の分岐路、73b:第4の分岐路、75:第1の切換制御弁、76:第2の切換制御弁、81a・81b:開口部材、85:スプリング、87:空間部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気を浄化するための還元剤を排気管内に噴射する還元剤供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に搭載された内燃機関から排出される排気中の窒素酸化物(以下「NOX」と称する。)を除去するための排気浄化装置の一態様として、排気通路に備えられNOXと還元剤との還元反応を促進させるNOX浄化触媒と、尿素水溶液等の液体の還元剤をNOX浄化触媒の上流側で噴射する還元剤供給装置とを備えた装置が実用化されている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給装置は、液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、還元剤タンク内の還元剤を吸い上げて圧送するポンプと、ポンプにより圧送される還元剤を排気管内に噴射する還元剤噴射弁とを備えて構成されている。また、還元剤が流通する還元剤通路には、還元剤中の異物を捕集するためのフィルタが備えられている。
【0004】
ここで、還元剤として尿素水溶液が用いられる場合、尿素水溶液の濃度は凝固点が最も低くなる濃度(例えば32.5%濃度、凝固点≒−11℃)に調整されて用いられる。しかしながら、寒冷地等において、内燃機関の停止中に外気温が凝固点を下回ると、還元剤供給経路内で還元剤が凝固するおそれがある。特に、排気熱等によって水分が蒸発して還元剤の濃度が上昇し、還元剤の凝固点が上昇する場合があるため、還元剤の凝固の発生は十分に考えられる。
【0005】
還元剤の凝固を生じると、還元剤の体積が膨張して、配管や還元剤噴射弁が破損するおそれがある。そのため、内燃機関の停止時においては、還元剤供給経路内に残留する還元剤を還元剤タンクに回収するパージ制御が実施されるようになっている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、還元剤供給装置に備えられたフィルタは、還元剤の噴射制御中においては、還元剤タンクから還元剤噴射弁に供給される還元剤中の異物を捕集する役割を果たす。還元剤の噴射制御中に捕集される異物には、貯蔵タンク内の還元剤に混入していたゴミや、フィルタの位置によってはポンプの摩耗粉等が含まれる。また、フィルタは、パージ制御中においては、還元剤噴射弁や還元剤通路から還元剤タンクへと回収される還元剤中の異物を捕集する役割を果たす。パージ制御中に捕集される異物には、排気管内の不燃物や排気微粒子、還元剤噴射弁の摩耗粉、フィルタの位置によってはポンプの摩耗粉等が含まれる。
【0008】
従来の還元剤供給装置においては、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタの濾過面が異なるようになっている。すなわち、還元剤の噴射制御中には、フィルタにおける互いに表裏をなす第1の面及び第2の面のうちの第1の面側から第2の面側に還元剤が通過すると仮定すると、パージ制御中には第2の面側から第1の面側に還元剤が通過するようになっている。
【0009】
そのため、還元剤の噴射制御中に第1の面側に付着した異物は、パージ制御中に還元剤タンクやポンプその他の部品内に流入するおそれがある。また、パージ制御中に第2の面側に付着した異物は、還元剤の噴射制御中に還元剤噴射弁その他の部品内に流入するおそれがある。
【0010】
還元剤タンクに異物がまとめて流入すると、タンク内の還元剤の汚染を生じるおそれがある。ポンプに異物がまとめて流入すると、ポンプの焼付きや異常摩耗を生じるおそれがある。また、還元剤噴射弁に異物がまとめて流入すると、噴孔の詰まりや弁体の摺動不良、シート面の異常摩耗を生じるおそれがある。この他、異物がまとめて流入することによって、各部品の不具合を生じるおそれがある。
【0011】
また、フィルタを通過する還元剤の通過方向が異なると、流れによってフィルタ自体のたわみが大きくなりやすく、フィルタが破損するおそれもある。
【0012】
本発明の発明者は、このような課題に鑑みて、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタを通過する還元剤の通過方向を一定の方向にすることよりこのような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、フィルタに捕集された異物が流入することによる各部品の不具合を防ぐことができる還元剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁と、前記還元剤タンクから前記還元剤噴射弁までの還元剤通路の途中に配置され前記還元剤中の異物を捕集するフィルタと、を備え、前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御が実行される還元剤供給装置において、前記還元剤の噴射制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、前記パージ制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、を一定の方向にしたことを特徴とする還元剤供給装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0014】
すなわち、本発明の還元剤供給装置は、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタを通過する還元剤の通過方向が一定の方向となるように構成されているため、常にフィルタの一定の面側において異物が捕集されることになる。したがって、還元剤の噴射制御時又はパージ制御時にフィルタに捕集された異物が逆流することがなくなり、フィルタに捕集された異物の流入によって各部品に不具合が発生することを防ぐとともに、フィルタ自体の破損も低減することが可能になる。
【0015】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記フィルタが、互いに表裏をなす第1の面及び第2の面を有し、前記フィルタよりも前記還元剤タンク側の前記還元剤通路が第1の分岐路及び第2の分岐路に分岐するとともに、前記第1の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第2の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、前記フィルタよりも前記還元剤噴射弁側の前記還元剤通路が第3の分岐路及び第4の分岐路に分岐するとともに、前記第3の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第4の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、前記還元剤の噴射制御中には前記第1の分岐路、前記フィルタ、及び前記第4の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤噴射弁に供給する一方、前記パージ制御中には前記第3の分岐路、前記フィルタ、及び前記第2の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するように構成することにより、前記還元剤を前記フィルタの前記第1の面側から前記第2の面側に通過させることが好ましい。
【0016】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中いずれの場合であっても還元剤をフィルタの第1の面側に導くことができるとともに、フィルタを通過した還元剤をフィルタの第2の面側から還元剤タンク側又は還元剤噴射弁側に導くことが可能になる。
【0017】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記第1の分岐路及び前記第3の分岐路は前記還元剤の前記還元剤タンク側又は前記還元剤噴射弁側への流れを遮断する一方向弁を備えるとともに、前記第2の分岐路及び前記第4の分岐路は前記還元剤の前記フィルタ側への流れを遮断する一方向弁を備えることが好ましい。
【0018】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、制御装置等による制御によらない機械式の一方向弁によって、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0019】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記第1の分岐路と前記第2の分岐路との分岐部に、前記還元剤タンク側と前記第1の分岐路又は前記第2の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備え、前記第3の分岐路と前記第4の分岐路との分岐部に、前記還元剤噴射弁側と前記第3の分岐路又は前記第4の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備えることが好ましい。
【0020】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、切換制御弁を制御装置等により制御することによって、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0021】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記フィルタを、少なくとも前記一方向弁又は前記流路切換制御弁を含むフィルタユニットとして構成することが好ましい。
【0022】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、フィルタ部分を置き換えることによって、本発明の還元剤供給装置を容易に構成することが可能になる。
【0023】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記第2の分岐路を、前記フィルタの前記第2の面側の領域の最下部に接続することが好ましい。
【0024】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、パージ制御時にフィルタに残留する還元剤の量をできる限り少なくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成の一例を概略的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図3】還元剤の流れ方向について説明するために示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成の一例を概略的に示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図6】還元剤の流れ方向について説明するために示す図である。
【図7】変形例1に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図8】変形例2に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図9】変形例3に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図10】変形例4に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図11】変形例5に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図12】変形例6に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る還元剤供給装置に関する実施の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、それぞれの図において、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aを備えた排気浄化装置10Aの全体的構成の一例を概略的に示す図である。図2は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの構成について説明するために示す図である。図3は、還元剤の流れ方向について説明するために示す図であって、図3(a)は還元剤の噴射制御中の還元剤の流れ方向を示し、図3(b)はパージ制御中の還元剤の流れ方向を示している。
【0028】
(1)排気浄化装置の全体的構成
排気浄化装置10Aは、車両等に搭載された内燃機関1から排出される排気中のNOXを、NOX浄化触媒11上で還元剤を用いて浄化するように構成された装置である。排気浄化装置10Aは、内燃機関1の排気系に接続された排気管3の途中に配置されたNOX浄化触媒11と、NOX浄化触媒11よりも上流側において排気管3内に還元剤を噴射供給するための還元剤供給装置20Aと、還元剤供給装置20Aの動作制御を行う制御装置40Aとを主たる構成要素として備えている。
【0029】
NOX浄化触媒11は、排気管3内に噴射された還元剤又は当該還元剤から生成される還元成分と、排気中のNOXとの反応を促進する機能を有している。NOX浄化触媒11としては、NOX選択還元触媒やNOX吸蔵触媒が用いられる。
【0030】
NOX選択還元触媒は、還元剤を吸着するとともに、この還元剤を用いて、触媒中に流入する排気中のNOXを選択的に浄化する機能を有する触媒である。NOX選択還元触媒を用いる場合においては、尿素水溶液や未燃燃料が還元剤として用いられる。還元剤として尿素水溶液を用いる場合には、尿素水溶液中の尿素が分解することによって生成されるアンモニア(NH3)がNOXと反応することにより、NOXが窒素(N2)及び水(H2O)に分解される。また、還元剤として未燃燃料を用いる場合には、未燃燃料中の炭化水素(HC)がNOXと反応することにより、NOXが窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解される。
【0031】
また、NOX吸蔵触媒は、触媒中に流入する排気の空燃比がリーンの状態(燃料希薄状態)においてNOXを吸蔵する一方、空燃比がリッチの状態に切り換えられたときにNOXを放出し、排気中の炭化水素(HC)を用いてNOXを浄化する機能を有する触媒である。炭化水素(HC)と反応したNOXは窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解される。NOX吸蔵触媒を用いる場合においては、排気の空燃比をリッチの状態とするために、還元剤としての未燃燃料が排気管3内に噴射供給される。
【0032】
(2)還元剤供給装置
還元剤供給装置20Aは、液体の還元剤を収容する還元剤タンク21と、還元剤を圧送するポンプ23と、ポンプ23により圧送された還元剤を排気管3内に噴射する還元剤噴射弁25と、ポンプ23により圧送される還元剤の流れ方向を切り換えるリバーティングバルブ24と、還元剤中の異物を捕集するためのフィルタ部50Aとを備えている。
【0033】
還元剤タンク21とポンプ23とは、リバーティングバルブ24を介して第1の還元剤通路31で接続され、ポンプ23とフィルタ部50Aとは、リバーティングバルブ24を介して第2の還元剤通路32で接続され、さらに、フィルタ部50Aと還元剤噴射弁25とは、第3の還元剤通路33で接続されている。フィルタ部50Aには、他端が還元剤タンク21に接続されたリターン通路35が接続されており、リターン通路35にはリリーフ弁37が備えられている。
【0034】
第3の還元剤通路33には、第3の還元剤通路33内の圧力を検出するための圧力センサ27が備えられている。但し、圧力センサ27は、還元剤噴射弁25に供給される還元剤の圧力を検出できるようになっていればよく、第3の還元剤通路33に直接設けられていなくても構わない。
【0035】
還元剤噴射弁25は、制御装置40Aによって駆動制御が行われるものであり、使用できる還元剤噴射弁25は特に限定されるものではない。例えば、通電/非通電の切り換えにより開弁/閉弁の切り換えが行われる電磁弁を用いることができる。
【0036】
ポンプ23は、制御装置40Aによって駆動制御が行われるものであり、使用できるポンプ23は特に限定されるものではない。例えば、単位時間当たりの通電のオン/オフのデューティ比を調整することによって吐出量が調節される電動ポンプを用いることができる。
【0037】
リバーティングバルブ24は、制御装置40によって駆動制御が行われるものであり、還元剤の流れ方向を、還元剤タンク21側から還元剤噴射弁25側へと流れる正方向と、還元剤噴射弁25側から還元剤タンク21側へと流れる逆方向とに切り換え可能に構成されている。使用できるリバーティングバルブ24は特に限定されるものではなく、例えば、通電のオン/オフによって還元剤の流れ方向を正方向又は逆方向に切り換え可能な電磁切換弁を用いることができる。
【0038】
本実施形態に係る還元剤供給装置20Aにおいては、排気管3内への還元剤の噴射制御を行う場合には、リバーティングバルブ24への通電が停止されて、還元剤が正方向に流れるようになっている。一方、還元剤を還元剤タンク21に回収するパージ制御を行う場合には、リバーティングバルブ24への通電が行われ、還元剤が逆方向に流れるように流路が切り換えられるようになっている。
【0039】
フィルタ部50Aは、図2に示すように、ケーシング54と、ケーシング54内に収容されたフィルタ51とを備えている。本実施形態の還元剤供給装置20Aにおいては、円筒状のフィルタ51が用いられており、フィルタ51は円筒状の外側に位置する第1の面51aと、内側に位置する第2の面51bとを有している。図2において、フィルタ51は断面のみが示されている。
【0040】
ポンプ23とフィルタ部50Aとを接続する第2の還元剤通路32は、途中で、第1の分岐路32aと第2の分岐路32bとに分岐している。第1の分岐路32aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されるとともに、フィルタ部50A側からポンプ23側への還元剤の流れを遮断する第1の一方向弁52aを備えている。第2の分岐路32bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されるとともに、ポンプ23側からフィルタ部50A側への還元剤の流れを遮断する第2の一方向弁52bを備えている。
【0041】
フィルタ部50Aと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路33は、途中で、第3の分岐路33aと第4の分岐路33bとに分岐している。第3の分岐路33aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されるとともに、フィルタ部50A側から還元剤噴射弁25側への還元剤の流れを遮断する第3の一方向弁53aを備えている。第4の分岐路33bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されるとともに、還元剤噴射弁25側からフィルタ部50A側への還元剤の流れを遮断する第4の一方向弁53bを備えている。
【0042】
フィルタ部50Aと還元剤タンク21とを接続するリターン通路35は、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されるとともに、還元剤タンク21側からフィルタ部50A側への還元剤の流れを遮断するリリーフ弁37を備えている。
【0043】
第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53b及びリリーフ弁37は、弁体とスプリングとを用いた機械式の弁として構成されている。第1の一方向弁52a、第4の一方向弁53b、及びリリーフ弁37は、還元剤の噴射制御中に開弁する。第2の一方向弁52b及び第3の一方向弁53aは、パージ制御中に開弁する。
【0044】
具体的には、図3(a)に示すように、還元剤の噴射制御中、ポンプ23を駆動して還元剤が正方向に圧送されて第2の還元剤通路32、第1の分岐路32a、及び第2の分岐路32b内の圧力が上昇することによって、第2の一方向弁52bが閉弁する一方、第1の一方向弁52aが開弁する。第1の分岐路32aが開弁することによってフィルタ51の第1の面51a側の領域Aに還元剤が流れ込む。
【0045】
また、フィルタ部50A内に還元剤が流れ込み、フィルタ部50A内の圧力が上昇することによって、第3の一方向弁53aが閉弁する一方、第4の一方向弁53bが開弁する。そのため、フィルタ部50A内に流れ込んだ還元剤は、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過する。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0046】
フィルタ51を通過した還元剤は、第4の一方向弁53bを介して第4の分岐路33bを流れ、さらに第3の還元剤通路33を流れて還元剤噴射弁25に供給される。このとき、還元剤の供給量が過剰になって、還元剤の圧力がリリーフ弁37の開弁圧を超えるとリリーフ弁37が開弁し、余剰の還元剤がリターン通路35を介して還元剤タンク21に戻される。リターン通路35がフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入することがない。
【0047】
また、図3(b)に示すように、パージ制御中、ポンプ23を駆動して還元剤が逆方向に圧送されて第2の還元剤通路32、第1の分岐路32a、及び第2の分岐路32b内が減圧されることによって、第1の一方向弁52aが閉弁する一方、第2の一方向弁52bが開弁する。第2の一方向弁52bが開弁することによって、フィルタ部50A内の還元剤がポンプ23側に吸い戻される。
【0048】
また、フィルタ部50A内の還元剤が吸い戻され、フィルタ部50A内が減圧されることによって、第4の一方向弁53b及びリリーフ弁37が閉弁する一方、第3の一方向弁53aが開弁する。そのため、還元剤噴射弁25及び第3の還元剤通路33内の還元剤は、第3の一方向弁53aを介してフィルタ51の第1の面51a側に流れ込み、さらに、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過する。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0049】
フィルタ51を通過した還元剤は、第2の分岐路32b及び第2の還元剤通路32を介してポンプ23によって吸い戻されて、還元剤タンク21に回収される。このとき、第2の分岐路32bはフィルタ部50Aのケーシング54の最下部に接続されているため、還元剤がフィルタ部50A内に残留しにくくなっている。
【0050】
すなわち、還元剤の噴射制御中において、ポンプ23により圧送される還元剤は、第2の還元剤通路32、第1の分岐路32a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第4の分岐路33b、第3の還元剤通路33を順次通過して還元剤噴射弁25に供給される。また、パージ制御中において、ポンプ23により吸い戻される還元剤は、第3の還元剤通路33、第3の分岐路33a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第2の分岐路32b、第2の還元剤通路32を順次通過して還元剤タンク21に回収される。
【0051】
したがって、本実施形態の還元剤供給装置20Aにおいては、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中ともに還元剤が第1の面51a側から第2の面51b側に通過するため、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が同一となって、フィルタ51に付着した異物が逆流することがないようになっている。
【0052】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る還元剤噴射装置20Aは、還元剤の噴射制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向と、パージ制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向とが一定方向となるように構成されている。そのため、常にフィルタ51の第1の面51a側において異物が捕集されることになる。したがって、還元剤の噴射制御時又はパージ制御時にフィルタ51に捕集された異物が逆流することがなくなり、フィルタ51に捕集された異物の流入によって、ポンプ23や還元剤噴射弁25、第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53b、リリーフ弁37、還元剤タンク21等の各構成部品において不具合が発生することを防ぐとともに、フィルタ51自体の破損を低減することが可能になる。
【0053】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、ポンプ23とフィルタ部50Aとを接続する第2の還元剤通路32を分岐するとともに、フィルタ部50Aと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路33を分岐し、それぞれの分岐路に一方向弁を設けて所定の箇所に接続することとしているために、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中いずれの場合であっても還元剤をフィルタ51の第1の面51a側に導くことができるとともに、フィルタ51を通過した還元剤をフィルタ51の第2の面51b側から還元剤タンク21側又は還元剤噴射弁25側に導くことが可能になる。
【0054】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、第1〜第4の分岐路32a,32b,33a,33bに、所定方向への還元剤の流れを遮断する機械式の第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53bを備えることとしているために、制御装置40による制御を要しないで、還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0055】
また、第1の実施の形態の還元剤供給装置20Aによれば、リターン通路35をフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続しているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入しないようにすることが可能になる。
【0056】
さらに、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、パージ制御時にフィルタ部50A内の還元剤が流れる第2の分岐路32bを、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bの最下部に接続することとしているため、パージ制御時にフィルタ部50A内に残留する還元剤の量をできる限り少なくすることが可能になる。
【0057】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bを備えた排気浄化装置10Bの全体的構成の一例を概略的に示す図である。図5は、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの構成について説明するために示す図である。図6は、還元剤の流れ方向について説明するために示す図であって、図6(a)は還元剤の噴射制御中の還元剤の流れ方向を示し、図6(b)はパージ制御中の還元剤の流れ方向を示している。
【0058】
排気浄化装置10Bの全体的構成は、基本的に第1の実施の形態の場合と同様であるが、還元剤供給装置20Bの構成が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と異なる。以下、還元剤供給装置20Bの構成を中心に説明する。
【0059】
本実施形態に係る還元剤供給装置20Bは、液体の還元剤を収容する還元剤タンク21と、還元剤を圧送するポンプ23と、ポンプ23により圧送された還元剤を排気管3内に噴射する還元剤噴射弁25と、ポンプ23により圧送される還元剤の流れ方向を切り換えるリバーティングバルブ24と、還元剤中の異物を捕集するためのフィルタ部50Bとを備えている。
【0060】
還元剤タンク21とポンプ23とは、リバーティングバルブ24を介して第1の還元剤通路31で接続され、ポンプ23とフィルタ部50Bとは、リバーティングバルブ24を介して第2の還元剤通路72で接続され、さらに、フィルタ部50Bと還元剤噴射弁25とは、第3の還元剤通路73で接続されている。フィルタ部50Bには、他端が還元剤タンク21に接続されたリターン通路35が接続されており、リターン通路35にはリリーフ弁37が備えられている。第3の還元剤通路73には、第3の還元剤通路73内の圧力を検出するための圧力センサ27が備えられている。
【0061】
還元剤噴射弁25やポンプ23、リバーティングバルブ24、圧力センサ27、フィルタ部50B、リターン通路35、リリーフ弁37は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様に構成することができる。
【0062】
ポンプ23とフィルタ部50Bとを接続する第2の還元剤通路72は、途中で、第1の分岐路72aと第2の分岐路72bとに分岐している。第1の分岐路72aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されている。第2の分岐路72bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されている。
【0063】
第1の分岐路72aと第2の分岐路72bとの分岐部分には第1の切換制御弁75が備えられている。第1の切換制御弁75は、制御装置40Bによって制御されるものであり、第2の還元剤通路72を第1の分岐路72aに接続するか、又は第2の分岐路72bに接続するかを切り換えることができるようになっている。本実施形態に係る還元剤供給装置20Bにおいては、第1の切換制御弁75への通電が停止している間、第2の還元剤通路72と第1の分岐路72aとを接続する一方、第1の切換制御弁75に通電している間、第2の還元剤通路72と第2の分岐路72bとを接続する電磁制御弁が用いられている。但し、使用できる第1の切換制御弁75は特に限定されない。
【0064】
フィルタ部50Bと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路73は、途中で、第3の分岐路73aと第4の分岐路73bとに分岐している。第3の分岐路73aは、フィルタ51の第1の面51a側の領域Aに接続されている。第4の分岐路73bは、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されている。
【0065】
第3の分岐路73aと第4の分岐路73bとの分岐部分には第2の切換制御弁76が備えられている。第2の切換制御弁76は、制御装置40Bによって制御されるものであり、第3の還元剤通路73を第3の分岐路73aに接続するか、又は第4の分岐路73bに接続するかを切り換えることができるようになっている。本実施形態に係る還元剤供給装置20Bにおいては、第2の切換制御弁76への通電が停止している間、第3の還元剤通路73と第4の分岐路73bとを接続する一方、第2の切換制御弁76に通電している間、第3の還元剤通路73と第3の分岐路73aとを接続する電磁制御弁が用いられている。但し、使用できる第2の切換制御弁76は特に限定されない。
【0066】
本実施形態に係る還元剤供給装置20Bにおいて、還元剤の噴射制御中には第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76への通電はともに停止され、第2の還元剤通路72と第1の分岐路72a、及び、第4の分岐路73bと第3の還元剤通路73がそれぞれ接続される。一方、パージ制御中には第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76にともに通電され、第2の還元剤通路72と第2の分岐路72b、及び、第3の分岐路73aと第3の還元剤通路73がそれぞれ接続される。
【0067】
具体的には、図6(a)に示すように、還元剤の噴射制御中においては、第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76への通電をともに停止し、第2の還元剤通路72と第1の分岐路72a、及び、第4の分岐路73bと第3の還元剤通路73をそれぞれ接続する。この状態でポンプ23を駆動して還元剤を正方向に圧送すると、還元剤は第1の分岐路72aを介してフィルタ51の第1の面51a側の領域Aに流れ込む。
【0068】
また、フィルタ部50B内に流れ込んだ還元剤は、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過し、さらに、第4の分岐路73bを介して第3の還元剤通路73を流れて還元剤噴射弁25に供給される。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0069】
また、還元剤の供給量が過剰になって、還元剤の圧力がリリーフ弁37の開弁圧を超えるとリリーフ弁37が開弁し、余剰の還元剤がリターン通路35を介して還元剤タンク21に戻される。このとき、リターン通路35がフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続されているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入することがない。
【0070】
また、図6(b)に示すように、パージ制御中においては、第1の切換制御弁75及び第2の切換制御弁76にともに通電し、第2の還元剤通路72と第2の分岐路72b、及び、第3の分岐路73aと第3の還元剤通路73をそれぞれ接続する。この状態でポンプ23を駆動して還元剤を逆方向に圧送すると、第2の還元剤通路72及び第2の分岐路72b内が減圧されることによって、フィルタ部50B内の還元剤がポンプ23側に吸い戻される。
【0071】
また、フィルタ部50B内の還元剤が吸い戻され、フィルタ部50B内が減圧されることによって、リリーフ弁37が閉弁する一方、第3の分岐路73a及び第3の還元剤通路73が減圧される。そのため、還元剤噴射弁25及び第3の還元剤通路73内の還元剤が第3の分岐路73aを介してフィルタ51の第1の面51a側に流れ込み、さらに、フィルタ51を第1の面51a側から第2の面51b側に通過する。このとき、還元剤中に混じっている異物がフィルタ51の第1の面51a側に付着する。
【0072】
フィルタ51を通過した還元剤は、第2の分岐路72b及び第2の還元剤通路72を介してポンプ23によって吸い戻されて、還元剤タンク21に回収される。このとき、第2の分岐路72bはフィルタ部50Bのケーシング54の最下部に接続されているため、還元剤がフィルタ部50B内に残留しにくくなっている。
【0073】
すなわち、還元剤の噴射制御中において、ポンプ23により圧送される還元剤は、第2の還元剤通路72、第1の分岐路72a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第4の分岐路73b、第3の還元剤通路73を順次通過して還元剤噴射弁25に供給される。また、パージ制御中において、ポンプ23により吸い戻される還元剤は、第3の還元剤通路73、第3の分岐路73a、第1の面51a側の領域A、フィルタ51、第2の面51b側の領域B、第2の分岐路72b、第2の還元剤通路72を順次通過して還元剤タンク21に回収される。
【0074】
したがって、本実施形態の還元剤供給装置20Bにおいては、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中ともに還元剤が第1の面51a側から第2の面51b側に通過するため、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が同一となって、フィルタ51に付着した異物が逆流することがないようになっている。
【0075】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る還元剤噴射装置20Bは、還元剤の噴射制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向と、パージ制御中にフィルタ51を通過する還元剤の通過方向とが一定方向となるように構成されている。そのため、常にフィルタ51の第1の面51a側において異物が捕集されることになる。したがって、還元剤の噴射制御時又はパージ制御時にフィルタ51に捕集された異物が逆流することがなくなり、フィルタ51に捕集された異物の流入によって、ポンプ23や還元剤噴射弁25、リリーフ弁37、還元剤タンク21等の各構成部品において不具合が発生することを防ぐとともに、フィルタ51自体の破損を低減することが可能になる。
【0076】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、ポンプ23とフィルタ部50Bとを接続する第2の還元剤通路72を分岐するとともに、フィルタ部50Bと還元剤噴射弁25とを接続する第3の還元剤通路73を分岐して所定の箇所に接続し、それぞれの分岐部分に切換制御弁を設けることとしているために、還元剤の噴射制御中及びパージ制御中いずれの場合であっても還元剤をフィルタ51の第1の面51a側に導くことができるとともに、フィルタ51を通過した還元剤をフィルタ51の第2の面51b側から還元剤タンク21側又は還元剤噴射弁25側に導くことが可能になる。
【0077】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、第1の分岐路72aと第2の分岐路72bとの分岐部分に第1の切換制御弁75を備え、第3の分岐路73aと第4の分岐路73bとの分岐部分に第2の切換制御弁76を備えることとしているために、制御装置40により制御することによって、還元剤が流れる流路を切り換えることが可能になる。
【0078】
また、第2の実施の形態の還元剤供給装置20Bによれば、リターン通路35をフィルタ51の第2の面51b側の領域Bに接続しているため、フィルタ51に付着した異物がリターン通路35を介して還元剤タンク21に流入しないようにすることが可能になる。
【0079】
さらに、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、パージ制御時にフィルタ部50B内の還元剤が流れる第2の分岐路72bを、フィルタ51の第2の面51b側の領域Bの最下部に接続することとしているため、パージ制御時にフィルタ部50B内に残留する還元剤の量をできる限り少なくすることが可能になる。
【0080】
[他の実施の形態]
以上説明した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。例えば、第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置は、以下のように変更することができる。
【0081】
(1)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置において説明した各構成要素の構成や形態はあくまでも一例であって、任意に変更することが可能である。
【0082】
例えば、上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、リバーティングバルブ24によって還元剤の流れ方向を切り換えることによってパージ制御を実施するようにしているが、リバーティングバルブを用いないで、ポンプ23を逆回転させることでパージ制御を実施するように構成することもできる。
【0083】
また、上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、円筒状のフィルタ51を用いているが、フィルタの形態は限定されない。例えば、立体形状のフィルタではなく、平板状のフィルタを用いることもできる。また、複数のフィルタ51を重ねて使用することもできる。
【0084】
(2)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、円筒状のフィルタ51の外側から、フィルタ51の内側に向けて還元剤を通過させるようにしているが、還元剤の通過方向が逆であってもよい。
【0085】
図7は変形例1に係る還元剤供給装置を説明するために示す図であり、図8は変形例2に係る還元剤供給装置を説明するために示す図である。
変形例1に係る還元剤供給装置は、第1の分岐路32a及び第2の分岐路32bのフィルタ部50Aへの接続箇所が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合とは逆になっているとともに、第3の分岐路33a及び第4の分岐路33bの接続箇所が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合とは逆になっている。また、変形例2に係る還元剤供給装置は、第1の分岐路72a及び第2の分岐路72bのフィルタ部50Bへの接続箇所が第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの場合とは逆になっているとともに、第3の分岐路73a及び第4の分岐路73bの接続箇所が第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの場合とは逆になっている。すなわち、変形例1及び2に係る還元剤供給装置においては、フィルタ51の内側に位置する面が第1の面51aであり、外側に位置する面が第2の面51bである。変形例1及び2に係る還元剤供給装置は、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が内側から外側になって、それぞれ第1及び第2の実施の形態の場合とは逆になるが、第1又は第2の実施の形態に係る還元剤供給装置と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(3)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bを構成するフィルタや一方向弁、切換制御弁等をユニット化して構成することもできる。
図9は、変形例3に係る還元剤供給装置を説明するために示す図であり、図10は、変形例4に係る還元剤供給装置を説明するために示す図である。変形例3に係る還元剤供給装置は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aにおけるフィルタ部50A、第1〜第4の分岐路32a,32b,33a,33b、第1〜第4の一方向弁52a,52b,53a,53bをユニット化したフィルタユニット50Cを備えている。また、変形例4に係る還元剤供給装置は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bにおけるフィルタ部50B、第1〜第4の分岐路72a,72b,73a,73b、第1及び第2の切換制御弁75,76をユニット化したフィルタユニット50Dを備えている。このように構成されたフィルタユニット50C,50Dを用いることによって、フィルタ部分を置き換えることによって、還元剤の噴射制御中とパージ制御中とで、フィルタ51を通過する還元剤の通過方向が一定の方向となる還元剤供給装置を容易に構成することが可能になる。
【0087】
(4)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいては、ポンプ23と還元剤噴射弁25との間にフィルタ部50A,50Bを配置しているが、還元剤タンク21とポンプ23との間にフィルタ部50A,50Bを配置することもできる。このようにフィルタ部を配置する場合においても、フィルタ部よりも還元剤タンク側に位置する還元剤通路と、フィルタ部よりもポンプ側に位置する還元剤通路とをそれぞれ分岐して、所定方向への還元剤の流れを遮断する一方向弁や、流路を切り換える切換制御弁を備えることで、還元剤の噴射制御時とパージ制御時とで、フィルタを通過する還元剤の通過方向を一定方向にすることができる。
【0088】
(5)上述した第1及び第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20Bにおいて、フィルタ51を、剛性の高い開口部材で矜持することもできる。
図11は、変形例5に係る還元剤供給装置を説明するための図を示しており、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aを変形した例を示している。変形例5に係る還元剤供給装置において、フィルタ51は、第1の面51a側及び第2の面51b側にそれぞれ配置された開口部材81a,81bによって矜持されている。したがって、還元剤の噴射制御時における還元剤の圧力や、パージ制御時におけるポンプ23の吸引力の影響によるフィルタ51の変形を防ぐことが可能になる。開口部材81a,81bは、ステンレス製の金属や、剛性の高い樹脂材料を用いて構成することができる。また、開口部材81a,81bは、例えば、複数の開口部を有する穴あきプレートや、メッシュ状に構成することができる。
【0089】
(6)上述した変形例3に係る還元剤供給装置において、ケーシング54内でフィルタ51の下部に空間部を設けることもできる。
図12は、変形例6に係る還元剤供給装置を説明するための図を示しており、変形例3に係る還元剤供給装置を変形した例を示している。変形例6に係る還元剤供給装置において、フィルタ51は、スプリング85によって上方に押し付けられており、フィルタ51の下方側には空間部87が設けられている。そのため、パージ制御時に、フィルタ部50F内の還元剤を第2の分岐路32bを介して吸い戻したときに、ケーシング54内に還元剤が残留した場合であっても、フィルタ51に還元剤が付着しにくくなっている。したがって、内燃機関の停止中にフィルタ部50Fで還元剤が凍結した場合であっても、還元剤の体積の膨張等によるフィルタ51の破損を防ぐことが可能になる。
【符号の説明】
【0090】
1:内燃機関、3:排気管、10A・10B:排気浄化装置、11:NOX浄化触媒、13:NOXセンサ、20A・20B:還元剤供給装置、21:還元剤タンク、23:ポンプ、24:リバーティングバルブ、25:還元剤噴射弁、27:圧力センサ、31:第1の還元剤通路、32:第2の還元剤通路、32a:第1の分岐路、32b:第2の分岐路、33:第3の還元剤通路、33a:第3の分岐路、33b:第4の分岐路、35:リターン通路、37:リリーフ弁、40A・40B:制御装置、50A・50B・50E・50F:フィルタ部、50C・50D:フィルタユニット、51:フィルタ、51a:第1の面、51b:第2の面、52a:第1の一方向弁、52b:第2の一方向弁、53a:第3の一方向弁、53b:第4の一方向弁、54:ケーシング、72:第2の還元剤通路、72a:第1の分岐路、72b:第2の分岐路、73:第3の還元剤通路、73a:第3の分岐路、73b:第4の分岐路、75:第1の切換制御弁、76:第2の切換制御弁、81a・81b:開口部材、85:スプリング、87:空間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁と、前記還元剤タンクから前記還元剤噴射弁までの還元剤通路の途中に配置され前記還元剤中の異物を捕集するフィルタと、を備え、
前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御が実行される還元剤供給装置において、
前記還元剤の噴射制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、前記パージ制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、を一定の方向にしたことを特徴とする還元剤供給装置。
【請求項2】
前記フィルタが、互いに表裏をなす第1の面及び第2の面を有し、
前記フィルタよりも前記還元剤タンク側の前記還元剤通路が第1の分岐路及び第2の分岐路に分岐するとともに、前記第1の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第2の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、
前記フィルタよりも前記還元剤噴射弁側の前記還元剤通路が第3の分岐路及び第4の分岐路に分岐するとともに、前記第3の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第4の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、
前記還元剤の噴射制御中には前記第1の分岐路、前記フィルタ、及び前記第4の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤噴射弁に供給する一方、
前記パージ制御中には前記第3の分岐路、前記フィルタ、及び前記第2の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するように構成することにより、前記還元剤を前記フィルタの前記第1の面側から前記第2の面側に通過させることを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
前記第1の分岐路及び前記第3の分岐路は前記還元剤の前記還元剤タンク側又は前記還元剤噴射弁側への流れを遮断する一方向弁を備えるとともに、
前記第2の分岐路及び前記第4の分岐路は前記還元剤の前記フィルタ側への流れを遮断する一方向弁を備えることを特徴とする請求項2に記載の還元剤供給装置。
【請求項4】
前記第1の分岐路と前記第2の分岐路との分岐部に、前記還元剤タンク側と前記第1の分岐路又は前記第2の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備え、
前記第3の分岐路と前記第4の分岐路との分岐部に、前記還元剤噴射弁側と前記第3の分岐路又は前記第4の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備えることを特徴とする請求項2に記載の還元剤供給装置。
【請求項5】
前記フィルタを、少なくとも前記一方向弁又は前記流路切換制御弁を含むフィルタユニットとして構成することを特徴とする請求項3又は4に記載の還元剤供給装置。
【請求項6】
前記第2の分岐路を、前記フィルタにおける前記第2の面側の領域の最下部に接続することを特徴とする請求項5に記載の還元剤供給装置。
【請求項1】
液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁と、前記還元剤タンクから前記還元剤噴射弁までの還元剤通路の途中に配置され前記還元剤中の異物を捕集するフィルタと、を備え、
前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御が実行される還元剤供給装置において、
前記還元剤の噴射制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、前記パージ制御中に前記フィルタを通過する前記還元剤の通過方向と、を一定の方向にしたことを特徴とする還元剤供給装置。
【請求項2】
前記フィルタが、互いに表裏をなす第1の面及び第2の面を有し、
前記フィルタよりも前記還元剤タンク側の前記還元剤通路が第1の分岐路及び第2の分岐路に分岐するとともに、前記第1の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第2の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、
前記フィルタよりも前記還元剤噴射弁側の前記還元剤通路が第3の分岐路及び第4の分岐路に分岐するとともに、前記第3の分岐路が前記フィルタの前記第1の面側に接続される一方、前記第4の分岐路が前記フィルタの前記第2の面側に接続され、
前記還元剤の噴射制御中には前記第1の分岐路、前記フィルタ、及び前記第4の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤噴射弁に供給する一方、
前記パージ制御中には前記第3の分岐路、前記フィルタ、及び前記第2の分岐路を介して前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するように構成することにより、前記還元剤を前記フィルタの前記第1の面側から前記第2の面側に通過させることを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
前記第1の分岐路及び前記第3の分岐路は前記還元剤の前記還元剤タンク側又は前記還元剤噴射弁側への流れを遮断する一方向弁を備えるとともに、
前記第2の分岐路及び前記第4の分岐路は前記還元剤の前記フィルタ側への流れを遮断する一方向弁を備えることを特徴とする請求項2に記載の還元剤供給装置。
【請求項4】
前記第1の分岐路と前記第2の分岐路との分岐部に、前記還元剤タンク側と前記第1の分岐路又は前記第2の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備え、
前記第3の分岐路と前記第4の分岐路との分岐部に、前記還元剤噴射弁側と前記第3の分岐路又は前記第4の分岐路との接続を切り換えるための流路切換制御弁を備えることを特徴とする請求項2に記載の還元剤供給装置。
【請求項5】
前記フィルタを、少なくとも前記一方向弁又は前記流路切換制御弁を含むフィルタユニットとして構成することを特徴とする請求項3又は4に記載の還元剤供給装置。
【請求項6】
前記第2の分岐路を、前記フィルタにおける前記第2の面側の領域の最下部に接続することを特徴とする請求項5に記載の還元剤供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−154285(P2012−154285A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15846(P2011−15846)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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