説明

部分放電標定装置および部分放電標定方法

【課題】効率的に部分放電の探査が可能な部分放電標定装置および部分放電標定方法を提供する。
【解決手段】アンテナユニット10は、部分放電による電磁波を受信する第1アンテナエレメント、第2アンテナエレメントおよび第3アンテナエレメントと、背面方向から第1、第2および第3アンテナエレメントに到来する電磁波を遮断するアース板と、を備え、第1アンテナエレメントで受信した受信信号と第2アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第1の位相差および第1アンテナエレメントで受信した受信信号と第3アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第2の位相差を算出し、第1の位相差と第2の位相差から、部分放電による電磁波の到来方向の仰角および水平角を算出する標定部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電線、変電設備、受電設備等の電力設備の絶縁劣化箇所(ケーブル劣化箇所)から放射される部分放電パルスの到来方向を標定する部分放電標定装置および部分放電標定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力設備の機能維持、故障の未然の防止の観点から、電力設備の部分放電発生源(即ち、絶縁劣化箇所)を非接触で検出する部分放電標定装置および部分放電標定方法が求められている。
特許文献1では、第1および第2の2つのアンテナで部分放電発生源からの電磁波を受信し、位相差を求めて部分放電発生源を標定する部分放電位置標定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−250870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示された部分放電位置標定装置では、部分放電発生源とアンテナとの角度を算出するのみで、十分な標定は行えていなかった。また、アンテナは、無指向性で全方位から電磁パルスを受信する方式であるため、探査対象からの部分放電パルスだけでなく、探査対象とは反対の方向からの信号も受信してしまうため、環境により部分放電の探査が効率的に行なえない状態となることが多かった。
【0005】
そこで本発明は、効率的に部分放電の探査が可能な部分放電標定装置および部分放電標定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明に係る部分放電標定方法は、電力設備から発生する部分放電による電磁波を受信アンテナで受信し、部分放電の位置を標定する部分放電標定装置において、前記受信アンテナは、前記部分放電による電磁波を受信する第1アンテナエレメント、第2アンテナエレメントおよび第3アンテナエレメントと、背面方向から前記第1、第2および第3アンテナエレメントに到来する電磁波を遮断するアース板と、を備え、前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第2アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第1の位相差および前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第3アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第2の位相差を算出する位相差算出手段と、前記第1の位相差と前記第2の位相差から、前記部分放電による電磁波の到来方向の仰角および水平角を算出する到来方向算出手段を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る部分放電標定方法は、部分放電による電磁波を受信する第1アンテナエレメント、第2アンテナエレメントおよび第3アンテナエレメントと、背面方向から前記第1、第2および第3アンテナエレメントに到来する電磁波を遮断するアース板と、を備える受信アンテナで、電力設備から発生する部分放電による電磁波を受信し、部分放電の位置を標定する部分放電標定方法において、前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第2アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第1の位相差および前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第3アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第2の位相差を算出するステップと、前記第1の位相差と前記第2の位相差から、前記部分放電による電磁波の到来方向の仰角および水平角を算出するステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る部分放電標定装置および部分放電標定方法によれば、効率的に部分放電の探査をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る部分放電標定装置の構成図である。
【図2】(a)はアンテナユニットの前面側から見た構成図であり、(b)はアンテナユニットの背面側から見た構成図である。
【図3】アンテナの構成を説明する斜視図である。
【図4】アンテナの断面図である。
【図5】直線配置したアンテナエレメントとアース板との配置関係を示す図である。
【図6】円周配置したアンテナエレメントとアース板との配置関係を示す図である。
【図7】本実施形態に係る部分放電標定装置の制御ユニットの機能ブロック図である。
【図8】本実施形態に係る部分放電標定装置が備えるアナログ位相処理回路の信号処理ブロック図である。
【図9】部分放電発生源で発生した電磁波の到来方向推定方法を説明する概念図である。
【図10】正三角形の各頂点にアンテナを配置した場合の部分放電発生源で発生した電磁波の到来方向推定方法を説明する概念図である。
【図11】正三角形の各頂点にアンテナを配置した場合の部分放電発生源で発生した電磁波の到来方向推定方法を説明する概念図である。
【図12】本実施形態に係る部分放電標定装置の表示装置に表示される標定結果の例を示す画像図である。
【図13】部分放電発生源の位置と表示画面に表示される矢印の関係を示す図である。
【図14】部分放電発生源が視野外領域にある場合の表示装置に表示される標定結果の例を示す画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る部分放電標定装置の構成図である。
部分放電標定装置は、部分放電発生源からの電磁パルス信号を受信するアンテナユニット10と、制御ユニット20と、表示装置30と、を備えている。なお、図1では、制御ユニット20および表示装置30を一体として設けているが、分離して設けてもよい。
本実施形態に係る部分放電標定装置を用いて定点探査を行う際には、図1に示すように、アンテナユニット10を非金属材料(たとえば、木製)からなる三脚40で固定する。これにより、外乱電波ノイズの影響を低減することができる。
【0012】
≪アンテナユニット10≫
次に、図2を用いて、本実施形態に係る部分放電標定装置のアンテナユニット10について説明する。図2(a)はアンテナユニットの前面側から見た構成図であり、図2(b)はアンテナユニットの背面側から見た構成図である。
アンテナユニット10は、部分放電発生源で発生した電磁波(電磁パルス信号)を受信する3つのアンテナ11(第1アンテナ11A,第2アンテナ11B,第3アンテナ11C)と、アンテナユニット10の前面側から探査対象を撮像するカメラ18と、それらを支持する支持部材19と、を備えている。
3つのアンテナ11(第1アンテナ11A,第2アンテナ11B,第3アンテナ11C)は、長さDの正三角形の各頂点に配置されるように支持部材19によりアンテナ11の背面側から固定され、カメラ18は3つのアンテナ11で構成される正三角形の略中心から撮像されるように配置される。
なお、支持部材19には三脚40(図1参照)を固定する三脚取付部(図示せず)が設けられている。また、支持部材19に把持部(図示せず)を設けてもよい。
【0013】
<アンテナ11>
3つのアンテナ11(第1アンテナ11A,第2アンテナ11B,第3アンテナ11C)は同一の構成を有するため、図3および図4を用いて第1アンテナ11Aの構成につて説明し、第2アンテナ11Bおよび第3アンテナ11Cの構成については説明を省略する。
図3はアンテナの構成を説明する斜視図であり、図4はアンテナの断面図である。
第1アンテナ11Aは、アンテナエレメント12Aと、アース板13Aと、電波吸収材14Aと、を備えている。なお、図3では、電波吸収材14Aを省略して図示している。
【0014】
アンテナエレメント12Aは、部分放電発生源で発生した電磁波(電磁パルス信号)を受信するアンテナであり、アンテナエレメント12Aの途中で90°屈曲した逆L型アンテナである。アンテナエレメント12Aの長さは、λ/4とするのが好適である。ここで、λとは、後述するアナログ位相処理回路200(図8参照)のSAWフィルタ212(212a,212b,212c)の特定周波数(例えば、400MHz)の波長である。
また、アンテナエレメント12Aは、断面形状を円とし、電磁波の到来方向に対して同一の受感特性を持たせている。また、アンテナエレメント12Aの材料は、入手性、加工性を考慮して、電気抵抗の小さい銅線、アルミニウム線等を用いるのが好適である。
【0015】
第1アンテナ11Aは、アンテナエレメント12Aの背面側に金属板からなるアース板13Aを備えている。図4に示すように、前面側からの到来電磁パルスP1,P2,P3はアンテナエレメント12Aで受信可能である。一方、背面側からの到来電磁パルスP4,P5,P6は、アース板13Aにより遮蔽され、アンテナエレメント12Aは不感となる。
また、到来電磁パルスP1,P2,P3の到来方向の違いによる位相特性の偏りを少なくするために、アンテナエレメント12Aはアース板13Aの中央に配置され、アース板13Aの形状は楕円形状となることが望ましい。
【0016】
アース板13Aの前面側には、電波吸収材14Aが設けられており、アンテナエレメント12Aが前面側からの到来電磁パルスP1,P2,P3を受信する際、アース板13Aでの多重反射を防止する。
また、アンテナエレメント12Aと電波吸収材14Aとの間には空隙15Aが設けられ、アンテナエレメント12Aの受信を妨げないようにする。
【0017】
アンテナエレメント12Aは、アース板13Aの開口部16Aからアース板13Aの背面側に貫けて、給電点17Aから伝送ケーブル(図1参照)に接続される。伝送ケーブルの他端は後述する制御ユニット20のアナログ位相処理回路200(フロントエンド部210)に接続される。
【0018】
このように、アンテナ11は、前面方向からのみ受信する指向特性を有し、背面方向からの外来電波ノイズに対しては、不感特性となる。また、アンテナユニット10の背面側の構造物、例えば、支持部材19や給電点17Aに接続される伝送ケーブル(図1参照)による電波の多重反射の影響を少なくすることができる。
また、背面方向に対して不感特性を有することにより、アンテナユニット10の背面側の支持部材19に設けた把持部(図示せず)を操作者が把持した状態でも、背面側の操作者による電波の多重反射の影響を少なくすることができる。即ち、操作者がアンテナユニット10を把持し、アンテナユニット10を探査対象に向けて探査する場合においても、背面側の操作者による電波の多重反射の影響を少なくすることができる。
また、逆L型のアンテナエレメント12を平面的に配置し、カメラ18としてCCD(Charge Coupled Device)カメラを用いることにより、アンテナユニット10を小型化・軽量化することができ、操作性に優れる。
【0019】
<アンテナの変形例>
到来電磁パルスの偏波に対して効率的に受信するために、図5および図6で示す2つのアンテナのアンテナエレメントの配置について説明する。
図5は直線配置したアンテナエレメントとアース板との配置関係を示す図である。
図5に示すアンテナは、1つのアース板13に直線偏波に対して効率的に受信するようにアンテナエレメント12A,12B,12Cを配置したアンテナである。
図6は円周配置したアンテナエレメントとアース板との配置関係を示す図である。
図6に示すアンテナは、アース板13に偏波面を120°回転させアンテナエレメント12A,12B,12Cを円周上に配置している。このような配置とすることによりアンテナサイズを小さくすることができる。
なお、アース板13の中央には、カメラ18を設置するための開口部18hが設けられている。
【0020】
≪制御ユニット20≫
図7は、本実施形態に係る部分放電標定装置の制御ユニット20の機能ブロック図である。
制御ユニット20は、アンテナユニット10の3つのアンテナ11(11A,11B,11C)で受信した電磁パルス信号と、アンテナユニット10のカメラ18で撮像されたカメラ画像が入力され、表示装置30に部分放電標定した画像を表示する。
制御ユニット20は、アナログ位相処理回路200と、AD変換部300と、標定部400と、表示処理部500と、を備える。以下、それぞれについて説明する。
【0021】
<アナログ位相処理回路200>
図8を用いて、アナログ位相処理回路200について説明する。
図8は、本実施形態に係る部分放電標定装置が備えるアナログ位相処理回路の信号処理ブロック図である。
アナログ位相処理回路200は、フロントエンド部210と、増幅部220と、第1分配回路230と、第1乗算器部240と、第1LPF部250と、第2分配回路260と、第2乗算器部270と、第2LPF部280と、を備えている。各部について、それぞれ説明する。
【0022】
(フロントエンド部210)
フロントエンド部210は、入力部211(211a,211b,211c)と、SAWフィルタ212(212a,212b,212c)と、出力部213(213a,213b,213c)と、を備えている。
入力部211aにはアンテナユニット10の第1アンテナ11Aで受信した到来電磁パルスの電磁パルス信号が入力され、入力部211bにはアンテナユニット10の第2アンテナ11Bで受信した電磁パルス信号が入力され、入力部211cにはアンテナユニット10の第3アンテナ11Cで受信した電磁パルス信号が入力される。
ここで、アンテナユニット10(第1アンテナ11A、第2アンテナ11B、第3アンテナ11C)で受信し、フロントエンド部210に入力される電磁パルス信号は、数十MHzから数GHzまでの周波数成分を含む非常に広帯域な信号である。
そこで、精度よく、各アンテナ(11A,11B,11C)間の位相差を抽出するために、フロントエンド部210は、入力部211(211a,211b、211c)に入力された電磁パルス信号を狭帯域な通過特性を有するSAWフィルタ(Surface Acoustic Wave Filter)212(212a,212b,212c)に通過させることにより所定の周波数成分の電磁パルス信号を抽出し、出力部213(213a,213b,213c)に出力する。
なお、本実施形態では、SAWフィルタ212が抽出する周波数帯域を400MHzとして説明する。
【0023】
また、フロントエンド部210は、局部発信器214と、局部発信器214で生成された信号を透過させるSAWフィルタ215と、出力部216と、を備えている。
局部発信器214で生成された局部発信周波数の信号は、SAWフィルタ215を通過し、参照波信号として出力部216に出力される。
なお、本実施形態では、局部発信器214で生成する局部発信周波数およびSAWフィルタ215が抽出する周波数帯域を300MHzとして説明する。
【0024】
なお、フロントエンド部210は、アンテナユニット10からの非常に微弱な信号(電磁パルス信号)を通過させる必要があるため、後述する第1乗算器部240、第2乗算器部270のミキサ(241,243,245,271,273)とは分離して配置することが望ましい。これにより、空間結合ノイズ(クロストーク)を排除する。
また、参照波信号を生成する回路(局部発信器214、SAWフィルタ215)も、同様の理由により、後述する第1乗算器部240、第2乗算器部270のミキサ(241,243,245,271,273)とは分離して配置することが望ましい。
このように、フロントエンド部210は、後段の回路とは分離して配置されることが望ましい。なお、フロントエンド部210の出力部213と増幅部220の入力部221とは、シールドされたケーブルで通信可能に接続される。同様に、フロントエンド部210の出力部216と増幅部220の入力部225とは、シールドされたケーブルで通信可能に接続される。
【0025】
(増幅部220)
増幅部220は、入力部221(221a,221b,221c)と、プリアンプ222(222a,222b,222c)と、デジタルアッテネータ223(223a,223b,223c)と、メインアンプ224(224a,224b,224c)と、入力部225と、アッテネータ226と、メインアンプ227と、を備えている。
入力部221(221a,221b,221c)に入力された400MHz帯の微弱な電磁パルス信号は、プリアンプ222(222a,222b,222c)で40dB程度増幅され、デジタルアッテネータ223(223a,223b,223c)で所定のレベルに調整され、メインアンプ224(224a,224b,224c)で増幅される。
なお、アンテナユニット10の各アンテナ(11A,11B,11C)で受信した電磁パルス信号の強度に応じて、デジタルアッテネータ223を調整するゲイン調整回路(図示せず)が設けられている。後述する第1乗算器部240のミキサ(241,243,245)に適した入力となるように、ゲイン調整回路は、デジタルアッテネータ223を調整する。
入力部225に入力された参照波信号は、アッテネータ226で所定のレベルに調整され、メインアンプ227で増幅される。
【0026】
(第1分配回路230)
第1分配回路230は、スプリッタ231,233と、ハイブリッドカプラ232と、を備えている。
基準アンテナである第1アンテナ11Aからフロントエンド部210、増幅部220を通過した信号(即ち、メインアンプ224aから出力された信号)は、スプリッタ231に入力され、等電力・同位相で2つに分配される。なお、後述するアナログ位相処理回路200の後段に設けられるAD変換部300の同期信号として使用するために、スプリッタ231から、等電力・同位相で3つに分配し、1つをトリガ信号Tri1 として用いてもよい。
増幅部220で増幅された参照波信号(即ち、メインアンプ227から出力された信号)は、ハイブリッドカプラ232に入力され、等電力で、位相角が0°の参照波信号(図8では、0°として示す)と、位相角が90°の参照波信号(図8では、π/2として示す)との2つに分配される。
さらに、ハイブリッドカプラ232で出力された位相角が0°の参照波信号は、スプリッタ233に入力され、等電力・同位相で3つに分配される。
なお、スプリッタ231,233およびハイブリッドカプラ232は、内部に増幅器(図示せず)を有するものとして説明する。これにより、ハイブリッドカプラ232から出力される位相角90°の参照波信号と、スプリッタ233から出力される参照波信号とは、等電力となる。
【0027】
(第1乗算器部240)
第1乗算器部240は、ミキサ241,243(243b,243c),245と、アンプ242,244(244b,244c),246と、を備えている。
ミキサ241は、スプリッタ231から出力された基準アンテナである第1アンテナ11Aに対応する電磁パルス信号と、スプリッタ233から出力された位相角が0°の参照波信号と、を乗算し、正確にかつひずみの小さい中間周波数信号を生成して出力する。ミキサ241で生成された信号は、アンプ242で増幅される。
ミキサ243bは、メインアンプ224bから出力された第2アンテナ11Bに対応する電磁パルス信号と、スプリッタ233から出力された位相角が0°の参照波信号と、を乗算し、正確にかつひずみの小さい中間周波数信号を生成して出力する。ミキサ243bで生成された信号は、アンプ244bで増幅される。
ミキサ243cは、メインアンプ224cから出力された第3アンテナ11Cに対応する電磁パルス信号と、スプリッタ233から出力された位相角が0°の参照波信号と、を乗算し、正確にかつひずみの小さい中間周波数信号を生成して出力する。ミキサ243cで生成された信号は、アンプ244cで増幅される。
ミキサ245は、スプリッタ231から出力された基準アンテナである第1アンテナ11Aに対応する電磁パルス信号と、ハイブリッドカプラ232から出力された位相角が90°の参照波信号と、を乗算し、正確にかつひずみの小さい中間周波数信号を生成して出力する。ミキサ245で生成された信号は、アンプ246で増幅される。
【0028】
(第1LPF部250)
第1LPF部250は、4つのローパスフィルタ(以下「LPF(Low-Pass Filter)」と称する。)251,252b,252c,253を備えている。
アンプ242で増幅された信号は、LPF251を通過する。アンプ244bで増幅された信号は、LPF252bを通過する。アンプ244cで増幅された信号は、LPF252cを通過する。アンプ246で増幅された信号は、LPF253を通過する。
第1乗算器部240から出力される中間周波数信号は、700(400+300)MHz帯域成分と100(400−100)MHz帯域成分の2つの信号が出力される。このうち、位相情報を有している100MHz帯域の信号を抽出し、後段の第2乗算器部270に出力するため、100MHz帯域より高領域を遮断するLPFを通過させる。
【0029】
(第2分配回路260)
第2分配回路260は、4つのスプリッタ261,262b,262c,263を備えている。
第1LPF部250のLPF251を通過した信号は、スプリッタ261に入力され、等電力・同位相で2つに分配される。第1LPF部250のLPF252bを通過した信号は、スプリッタ262bに入力され、等電力・同位相で2つに分配される。第1LPF部250のLPF252cを通過した信号は、スプリッタ262cに入力され、等電力・同位相で2つに分配される。第1LPF部250のLPF253を通過した信号は、スプリッタ263に入力され、等電力・同位相で2つに分配される。なお、後述するアナログ位相処理回路200の後段に設けられるAD変換部300の同期信号として使用するために、スプリッタ263から、等電力・同位相で3つに分配し、1つをトリガ信号Tri2 として用いてもよい。
【0030】
(第2乗算器部270)
第2乗算器部270は、4つのミキサ271b,271c,273b,273cを備えている。
ミキサ271bは、スプリッタ261から出力された信号と、スプリッタ262bから出力された信号とを乗算する。ミキサ271cは、スプリッタ261から出力された信号と、スプリッタ262cから出力された信号とを乗算する。ミキサ273bは、スプリッタ263から出力された信号と、スプリッタ262bから出力された信号とを乗算する。ミキサ273cは、スプリッタ263から出力された信号と、スプリッタ262cから出力された信号とを乗算する。
【0031】
(第2LPF部280)
第2LPF部280は、4つのLPF281b,281c,283b,283cを備えている。
ミキサ271bで乗算されて生成された信号は、LPF281bを通過する。ミキサ271cで乗算されて生成された信号は、LPF281cを通過する。ミキサ273bで乗算されて生成された信号は、LPF283bを通過する。ミキサ273cで乗算されて生成された信号は、LPF283cを通過する。
第2乗算器部270から出力される信号は、200(100+100)MHz帯域成分と直流(即ち100−100=0)成分の2つの信号が出力される。このうち、位相情報を有している直流成分の信号を抽出するため、10MHz帯域より高領域を遮断するLPFを通過させ、所望の信号を得る。
LPF281bを通過して得られた信号をV1bとし、LPF281cを通過して得られた信号をV1cとし、LPF283bを通過して得られた信号をV3bとし、LPF283cを通過して得られた信号をV3cとする。
【0032】
<AD変換部300>
図7に戻り、AD変換部300について説明する。
AD変換部300は、アナログ位相処理回路200(図8参照)のスプリッタ231から出力されたトリガ信号Tri1 または/およびスプリッタ263から出力されたトリガ信号Tri2 を入力する。入力されたトリガ信号は、AD変換部300のパワーディテクタ(図示せず)に入力され、基準トリガ信号以上のトリガ信号入力時にデジタルパルス信号を出力する。AD変換部300は、パワーディテクタから出力されたデジタルパルス信号に同期して、アナログ位相処理回路200のアナログ出力信号V1b,V1c,V3b,V3cをサンプリングホールドする。
そして、AD変換部300は、サンプリングホールドされたアナログ出力信号V1b,V1c,V3b,V3cをAD変換部300のAD変換器(図示せず)でデジタル信号に変換して、標定部400に出力する。
【0033】
<標定部400>
標定部400は、AD変換部300でサンプリングホールドされた出力値V1b,V1c,V3b,V3cのデジタル信号を入力し、部分放電発生源からの電磁パルス信号の到来方向の仰角θzおよび水平角φxを算出し、表示処理部500に出力する。
【0034】
(アナログ位相処理回路の動作)
ここで、図8で示すアナログ位相処理回路200の動作について説明しつつ、出力値V1b,V1c,V3b,V3cと到達時間差Δt2,Δt3との関係について説明する。なお、アンプ242,244b,244c,246での増幅については説明を省略する。
【0035】
部分放電による単発パルス信号が第1アンテナ11A、第2アンテナ11B、および、第3アンテナ11Cで受信され、フロントエンド部210、増幅部220、第1分配回路230を通過した信号をそれぞれ、S1(t)、S2(t)、および、S3(t)とすると、次のように表すことができる。
1(t)=E1(t)×sin(2πft) …(1)
2(t)=E2(t)×sin(2πft−Δt2) …(2)
3(t)=E3(t)×sin(2πft−Δt3) …(3)
ここで、E1(t)、E2(t)、E3(t)は、エンベローブ関数、fはSAWフィルタ212の特定周波数(400MHz)、Δt2は第1アンテナ11Aに対する第2アンテナ11Bの電磁パルス信号の到達時間差、Δt3は第1アンテナ11Aに対する第3アンテナ11Cの電磁パルス信号の到達時間差である。
【0036】
フロントエンド部210の局部発信器214から出力され、増幅部220および第1分配回路230でを通過し、スプリッタ233から出力された位相角が0°の参照波信号およびハイブリッドカプラ232から出力された位相角が90°の参照波信号を、それぞれ、V1(t)、V3(t)とすると、次のように表すことができる。
1(t)=V0×sin(2πf0t+φ) …(4)
3(t)=V0×sin(2πf0t+φ+π/2) …(5)
ここで、V0は参照波信号の振幅、f0は局部発信器214で生成する局部発信周波数(300MHz)、φは局部発信器214の位相角である。
【0037】
第1乗算器部240のミキサ241,243b,243c,245の出力をそれぞれ、V241(t),V243b(t),V243c(t),V245(t)とすると、次のように表すことができる。
241(t)=S1(t)×V1(t)
=(1/2)×V0×E1(t)×cos(2π(f−f0)t−φ)
−(1/2)×V0×E1(t)×cos(2π(f+f0)t+φ) …(6)
243b(t)=S2(t)×V1(t)
=(1/2)×V0×E2(t)×cos(2π(f−f0)t−2πfΔt2−φ)
−(1/2)×V0×E2(t)×cos(2π(f+f0)t−2πfΔt2+φ) …(7)
243c(t)=S3(t)×V1(t)
=(1/2)×V0×E3(t)×cos(2π(f−f0)t−2πfΔt3−φ)
−(1/2)×V0×E3(t)×cos(2π(f+f0)t−2πfΔt3+φ) …(8)
245(t)=S1(t)×V3(t)
=(1/2)×V0×E1(t)×cos(2π(f−f0)t−φ−π/2)
−(1/2)×V0×E1(t)×cos(2π(f+f0)t+φ+π/2)
=(1/2)×V0×E1(t)×sin(2π(f−f0)t−φ)
−(1/2)×V0×E1(t)×sin(2π(f+f0)t+φ) …(9)
【0038】
第1LPF部250のLPF251,252b,252c,253の出力をそれぞれ、V251(t),V252b(t),V252c(t),V253(t)とすると、次のように表すことができる。
251(t)=(1/2)×V0×E1(t)×cos(2π(f−f0)t−φ) …(10)
252b(t)=(1/2)×V0×E2(t)×cos(2π(f−f0)t−2πfΔt2−φ) …(11)
252c(t)=(1/2)×V0×E3(t)×cos(2π(f−f0)t−2πfΔt3−φ) …(12)
253(t)=(1/2)×V0×E1(t)×sin(2π(f−f0)t−φ) …(13)
【0039】
第2乗算器部240のミキサ271b,271c,273b,273cの出力をそれぞれ、V271b(t),V271c(t),V273b(t),V273c(t)とすると、次のように表すことができる。
271b(t)=V251(t)×V252b(t)
=(1/8)×V02×E1(t)×E2(t)×cos(4π(f−f0)t−2πfΔt2−2φ)
+(1/8)×V02×E1(t)×E2(t)×cos(2πfΔt2) …(14)
271c(t)=V251(t)×V252c(t)
=(1/8)×V02×E1(t)×E3(t)×cos(4π(f−f0)t−2πfΔt3−2φ)
+(1/8)×V02×E1(t)×E3(t)×cos(2πfΔt3) …(15)
273b(t)=V253(t)×V252b(t)
=(1/8)×V02×E1(t)×E2(t)×sin(4π(f−f0)t−2πfΔt2−2φ)
+(1/8)×V02×E1(t)×E2(t)×sin(2πfΔt2) …(16)
273c(t)=V253(t)×V252c(t)
=(1/8)×V02×E1(t)×E3(t)×sin(4π(f−f0)t−2πfΔt3−2φ)
+(1/8)×V02×E1(t)×E3(t)×sin(2πfΔt3) …(17)
【0040】
第2LPF部280のLPF281b,281c,283b,283cの出力をそれぞれ、V1b(t),V1c(t),V3b(t),V3c(t)とすると、次のように表すことができる。
1b(t)=(1/8)×V02×E1(t)×E2(t)×cos(2πfΔt2) …(18)
1c(t)=(1/8)×V02×E1(t)×E3(t)×cos(2πfΔt3) …(19)
3b(t)=(1/8)×V02×E1(t)×E2(t)×sin(2πfΔt2) …(20)
3c(t)=(1/8)×V02×E1(t)×E3(t)×sin(2πfΔt3) …(21)
【0041】
ここで、式(18)と式(20)から式(22)が成立し、式(19)と式(21)から式(23)が成立する。
tan(2πfΔt2)=V3b(t)/V1b(t) …(22)
tan(2πfΔt3)=V3c(t)/V1c(t) …(23)
これにより、到達時間差Δt2,Δt3は、
Δt2=(2πf)-1×arctan(V3b(t)/V1b(t)) …(24)
Δt3=(2πf)-1×arctan(V3c(t)/V1c(t)) …(25)
として、求めることができる。
【0042】
このように、標定部400は、基準アンテナである第1アンテナ11Aに対する第2アンテナ11Bの電磁パルス信号の到達時間差Δt2を、出力値V1b,V3bおよび(24)を用いて算出することができる。同様に、基準アンテナである第1アンテナ11Aに対する第3アンテナ11Cの電磁パルス信号の到達時間差Δt3を、出力値V1c,V3cおよび(25)を用いて算出することができる。なお、到達時間差Δtと位相差Θとは(Θ=2πfΔt)の関係が成立するため、標定部400が到達時間差Δtを算出することは、位相差Θを算出していることと同義である。
【0043】
(電磁パルス信号の到来方向推定方法)
次に、到達時間差Δt2,Δt3と電磁パルス信号の到来方向の仰角θzおよび水平角φxとの関係について説明する。
【0044】
図9は、部分放電発生源で発生した電磁波の到来方向推定方法を説明する概念図である。
部分放電発生源は、アンテナ(11A,11B,11C)から十分遠方にあるため、アンテナに到来する電磁波は平面波と仮定することができる。
アンテナの間隔をD、アナログ位相処理回路200(図8参照)のSAWフィルタ212(212a,212b,212c)の特定周波数(400MHz)の波長をλ、アンテナと部分放電発生源との角度をθ、とすると、位相差Θ(=2πfΔt)は、次のように表すことができる。
Θ=(D/λ)×sin(θ) …(26)
【0045】
本実施形態に係る部分放電標定装置は、後述する図12に示すように、アンテナユニット10のカメラ18で撮像した画像に部分放電発生源の位置をマーキングするものである。そのため、前面側からの到来波(電磁パルス信号)を標定することができればよいため、アンテナの背面側にはアース板が設けられており(図3,図4参照)、背面側からの電磁波の到来を遮断する。
3次元中に配置された部分放電発生源からの電磁波の到来方向を一意的に求めるためには、少なくとも4本のアンテナが必要である。しかし、本実施形態に係る部分放電標定装置によれば、カメラの視野角(カメラの視線方向である前面側だけ)で制限している。
このため、例えば、3本のアンテナの第1アンテナを直交軸の原点、第2アンテナをY軸上、第3アンテナをZ軸上に配置し、背面側をアース板で遮断することにより、第1アンテナと第2の位相差から水平角を、第1アンテナと第3アンテナとの位相差から仰角を算出することができる。
【0046】
到来方向の水平角と仰角とを算出する方法について、図10および図11を用いて具体的に説明する。なお、3つのアンテナ11(11A,11B,11C)は、Y−Z平面上の正三角形の各頂点に配置され、アンテナの間隔(正三角形の一辺の長さ)Dをλ/4として以下に説明する。ここで、λとは、アナログ位相処理回路200(図8参照)のSAWフィルタ212(212a,212b,212c)の特定周波数f(400MHz)の波長である。
図10および図11は、正三角形の各頂点にアンテナを配置した場合の部分放電発生源で発生した電磁波の到来方向推定方法を説明する概念図である。
第1アンテナ11A、第2アンテナ11B、第3アンテナ11Cの位置ベクトルr1,r2,r3は次のように表すことができる。
1=(0,0,0) …(27)
2=(0,+(λ/4)×sin(π/6),-(λ/4)×cos(π/6)) …(28)
3=(0,-(λ/4)×sin(π/6),-(λ/4)×cos(π/6)) …(29)
【0047】
部分放電発生源からの電磁パルス信号の到来方向ベクトル(単位ベクトル)をvとする。第1アンテナ11Aに対する第2アンテナ11Bの位置ベクトルr2と到来方向ベクトルvとのなす角をδ21とし、第1アンテナ11Aに対する第3アンテナ11Cの位置ベクトルr3と到来方向ベクトルvとのなす角をδ31とすると、次のように表すことができる。
cos(δ21)=<v,r2>/|r2|=4<v,r2>/λ …(30)
cos(δ31)=<v,r3>/|r3|=4<v,r3>/λ …(31)
ここで、<v,r>は、到来方向ベクトルvと位置ベクトルrの内積である。
【0048】
ここで、位置ベクトルの和r2+r3は、Z軸上のベクトルであり、位置ベクトルの差r2−r3は、Y軸上のベクトルである。Z軸上のベクトルである位置ベクトルの和r2+r3と到来方向ベクトルvとのなす角をθzとし、Y軸上のベクトルである位置ベクトルの差r2−r3と到来方向ベクトルvとのなす角をθyとすると、次のように表すことができる。
cos(θz)=<v,r2+r3>/|r2+r3
=4・3-0.5(<v,r2>+<v,r3>)/λ …(32)
cos(θy)=<v,r2−r3>/|r2−r3
=4(<v,r2>−<v,r3>)/λ …(33)
また、到来方向ベクトルvの水平角φxは、次のように表すことができる。
sin(φx)=cos(θy)/sin(θz) …(34)
【0049】
以上より、到来方向ベクトルvの水平角φxおよび仰角θzは、次のように表すことができる。
θz=arccos(4・3-0.5(<v,r2>+<v,r3>)/λ)
=arccos(3-0.5(cos(δ21)+cos(δ31))) …(35)
φx=arcsin(cos(θy)/sin(θz))
=arcsin(cos(θy)/(1-cos2z))0.5)
=arcsin(4(<v,r2>−<v,r3>)/λ(1-cos2z))0.5)
=arcsin((cos(δ21)−cos(δ31))/(1-cos2z))0.5) …(36)
【0050】
ここで、図9に戻り、位置ベクトルrと到来方向ベクトルvとのなす角をδを用いて式(26)を変形すると、次のように表すことができる。
Θ=(D/λ)×sin(θ)=(D/λ)×sin(δ−π/2)=−(D/λ)×cos(δ) …(37)
すなわち、仰角θzは位相差の和から、水平角φxは位相差の差と仰角θzから算出することができる。
【0051】
このように、標定部400は、出力値V1b,V3b,V1c,V3cから電磁パルス信号の到来方向の仰角θzおよび水平角φxを算出することができる。
【0052】
<表示処理部500>
図7に戻り、表示処理部500について説明する。
表示処理部500は、標定部400で算出された電磁パルス信号の到来方向の仰角θz、水平角φxおよびアンテナユニット10のカメラ18で撮像された探査対象のカメラ画像を入力して画像表示処理を行い、表示装置30に出力する。
図12は、本実施形態に係る部分放電標定装置の表示装置に表示される標定結果の例を示す画像図である。
表示装置30(図1参照)の表示画面31には、カメラ18で撮像された画像32に、水平方向/垂直方向の直線および複数の同心円で構成されたメモリ33が重ね合わせて表示されている。さらに、表示画面31には、電磁パルス信号の到来方向の仰角θzおよび水平角φxで特定された位置に部分放電の標定位置を示すマーク34が重ね合わせて表示される。これにより、部分放電発生源の特定が容易となる。
【0053】
次に、部分放電発生源がカメラ18の視野外である場合について、図13および図14を用いて説明する。
図13は、部分放電発生源の位置と表示画面に表示される矢印の関係を示す図である。
電磁パルス信号の到来方向の仰角θzおよび水平角φxで特定された部分放電発生源の位置がカメラ18の視野内である場合には、図12に示すように、部分放電の標定位置を示すマーク34が表示される。
一方、部分放電発生源の位置が視野外の領域35aにある場合には、対応する矢印36aが表示画面31の端部に表示される。部分放電発生源の位置が視野外の領域35b〜35hに対応する矢印36b〜36hが表示画面31の端部に表示される。
図14は、部分放電発生源が視野外領域35dにある場合の表示装置30に表示される標定結果の例を示す画像図である。
図14に示すように、表示画面31の左端にはカメラ18の視野外に部分放電発生源があることを示すマーク36dが表示される。これにより、操作者は、矢印36dの向きにしたがって、アンテナユニット10ごとカメラ18を矢印36dで示された方向に向ける。
【符号の説明】
【0054】
10 アンテナユニット(受信アンテナ)
11 アンテナ
11A 第1アンテナ
11B 第2アンテナ
11C 第3アンテナ
12 アンテナエレメント
13 アース板
14 電波吸収材
15 空隙
16 開口部
17 給電点
18 カメラ(撮像手段)
18h カメラ穴
19 支持部材
20 制御ユニット
30 表示装置
31 表示画面
32 画像
33 メモリ
34 マーク
35 領域
36 矢印
200 アナログ位相処理回路
300 AD変換部
400 標定部(位相差算出手段)(到来方向算出手段)
500 表示処理部(表示処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力設備から発生する部分放電による電磁波を受信アンテナで受信し、部分放電の位置を標定する部分放電標定装置において、
前記受信アンテナは、
前記部分放電による電磁波を受信する第1アンテナエレメント、第2アンテナエレメントおよび第3アンテナエレメントと、
背面方向から前記第1、第2および第3アンテナエレメントに到来する電磁波を遮断するアース板と、を備え、
前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第2アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第1の位相差および前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第3アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第2の位相差を算出する位相差算出手段と、
前記第1の位相差と前記第2の位相差から、前記部分放電による電磁波の到来方向の仰角および水平角を算出する到来方向算出手段を備える
ことを特徴とする部分放電標定装置。
【請求項2】
前記到来方向算出手段は、
前記第1の位相差と前記第2の位相差の和から、前記部分放電による電磁波の到来方向の仰角を算出し、
前記第1の位相差と前記第2の位相差の差および算出した前記仰角から、前記部分放電による電磁波の到来方向の水平角を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の部分放電標定装置。
【請求項3】
前記部分放電標定装置は、
前記受信アンテナと一体に設けられ、前記第1、第2および第3アンテナエレメントの受信方向を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された画像を表示する表示手段と、
表示処理手段と、をさらに備え、
前記表示処理手段は、
前記表示手段に表示された画像に、
前記到来方向算出手段で算出された仰角および水平角にもとづいて、前記部分放電の位置を重ねて表示させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部分放電標定装置。
【請求項4】
部分放電による電磁波を受信する第1アンテナエレメント、第2アンテナエレメントおよび第3アンテナエレメントと、背面方向から前記第1、第2および第3アンテナエレメントに到来する電磁波を遮断するアース板と、を備える受信アンテナで、
電力設備から発生する部分放電による電磁波を受信し、部分放電の位置を標定する部分放電標定方法において、
前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第2アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第1の位相差および前記第1アンテナエレメントで受信した受信信号と前記第3アンテナエレメントで受信した受信信号との位相差である第2の位相差を算出するステップと、
前記第1の位相差と前記第2の位相差から、前記部分放電による電磁波の到来方向の仰角および水平角を算出するステップと、を実行する
ことを特徴とする部分放電標定方法。
【請求項5】
前記到来方向の仰角および水平角を算出するステップは、
前記第1の位相差と前記第2の位相差の和から、前記部分放電による電磁波の到来方向の仰角を算出するステップと、
前記第1の位相差と前記第2の位相差の差および算出した前記仰角から、前記部分放電による電磁波の到来方向の水平角を算出ステップと、を実行する
ことを特徴とする請求項4に記載の部分放電標定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−242244(P2011−242244A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114241(P2010−114241)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】