説明

部品供給構造部および部品供給方法

【課題】磁石を利用した部品供給において、部品を目的箇所へ到達させる力を大きくする。
【解決手段】保持部材15を移動することによって磁性材料製の部品1を目的箇所6へ到達させるものであって、保持部材15に取り付けた第1磁石19の極性が、部品1のほぼ移動方向で見て、目的箇所6に取り付けた第2磁石23の極性に対して逆に設定され、第2磁石23の磁力が第1磁石19の磁力よりも強く設定してある。部品1が目的箇所へ接近すると、前記磁石によって部品に吸引力と反発力が同時に発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁石を利用して部品を目的箇所へ供給する部品供給構造部および部品供給方法に関している。
【背景技術】
【0002】
図4は、特許第2509103号公報に記載されている部品供給装置である。ここで供給される部品は、同図(B)に示した鉄製のプロジェクションボルト50であり、雄ねじが切られた軸部51と、それと一体に形成された円形のフランジ部52と、軸部51とは反対側のフランジ部52の中央部に形成された円形の溶着用突起65によって構成されている。
【0003】
エアシリンダ53によって進退する供給ロッド54の先端部にボルト50の保持部材55が結合され、この保持部材55に部品保持用の永久磁石56が取り付けられている。そして、ボルト供給の目的箇所として電気抵抗溶接電極57の受入孔58が形成され、この受入孔58の奥に部品保持用の永久磁石59が取り付けられている。供給ロッド54が進出して軸部51が受入孔58と同軸になった位置で停止し、ついで挿入エアシリンダ60の動作で軸部51が受入孔58に挿入される。そのとき、受入孔58側の永久磁石59の磁気力は、保持部材55側の永久磁石56のそれよりも強い値に設定されているので、保持部材55が元の位置の方へ後戻りをしても、ボルト50は永久磁石56の吸引力に抗して受入孔58内に引き込まれる。
【0004】
なお、挿入エアシリンダ60は機枠などの静止部材61に固定され、そのピストンロッド62がブラケット63を介してエアシリンダ53に結合してある。また、パーツフィーダ(図示していない)から延びてきている部品供給管64が設けられ、復帰した保持部材55にボルト50を載置するようになっている。また、電極57は可動電極であり、それに対する固定電極66が可動電極57と同軸上に配置され、その上にボルト50が溶接される鋼板部品67が載置してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2509103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術においては、ボルト50を受入孔58内に引き込む力が、永久磁石59の磁力と永久磁石56の磁力の大小差に応じて決定される。ところが、ボルト50の質量が大きいときには、上記磁力の大小差を大きく設定しなければならない。しかしながら、磁力の大小差を大きく設定するためには、磁石の大きさ寸法にも大幅な大小差を付与する必要があり、外形寸法の大きな磁石を電極内部に配置することがスペース的に困難になる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、磁石の極性を所定の極性に設定することにより、部品を目的箇所へ到達させる力を大きくすることのできる部品供給構造部および部品供給方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、部品供給構造部の発明であり、保持部材を移動することによって前記保持部材に保持した磁性材料製の部品を目的箇所へ到達させるものであって、前記保持部材に取り付けた部品保持用の第1磁石の極性が、部品のほぼ移動方向で見て、前記目的箇所に取り付けた部品保持用の第2磁石の極性に対して逆に設定され、前記第2磁石の磁力が第1磁石の磁力よりも強く設定してあることを特徴とする部品供給構造部である。
【発明の効果】
【0009】
前記保持部材に取り付けた部品保持用の第1磁石の極性が、部品のほぼ移動方向で見て、前記目的箇所に取り付けた部品保持用の第2磁石の極性に対して逆に設定され、前記第2磁石の磁力が第1磁石の磁力よりも強く設定してある。
【0010】
このため、保持部材の移動開始前においては、第1磁石によって保持部材に保持された部品の先端部と第2磁石の間隔が大きいので、第2磁石の磁界の領域は部品から離隔した状態になっていて、第2磁石からの磁気的影響は部品に対して及ぶことがない。そして、このときには部品の移動方向で見た部品の先端部は、第1磁石の磁力線の透過によって第1磁石の極性と同じになっているとともに、部品の移動方向後端部の極性と第1磁石の部品側の極性は逆になっていて、部品は第1磁石に吸引されている。
【0011】
この極性の状態で保持部材が第2磁石の方へ移動を開始して部品が第2磁石の磁界内に進入すると、進入初期の段階では、部品先端部の極性と第2磁石の部品側の極性が同じであるため、部品先端部と第2磁石とは反発する関係となるが、部品先端部と第2磁石との間隔が大きいので、実質的には反発力は発生しない。
【0012】
これに引き続いて保持部材がさらに第2磁石の方へ移動すると、部品は第2磁石の磁界内に置かれ、第2磁石の磁力が第1磁石のそれよりも強いので、第2磁石の磁力線が部品を透過する。このため、部品先端部の極性が第2磁石の部品側極性とは逆となり、同時に、部品の移動方向後端部の極性は第1磁石の部品側極性と同じになる。したがって、部品と第2磁石との間では吸引力が発生し、部品と第1磁石との間では反発力が発生する。上記の吸引現象による力と反発現象による力が相乗されて、部品を目的箇所へ到達させる総合的な力が十分な値として確実にえられる。上記の進入初期の段階における反発関係は、部品先端部と第2磁石との間の距離が長いので、実質的に反発力は発生せず、保持部材の移動に支障を来すことはない。
【0013】
前記第1磁石と第2磁石の極性が、部品の移動方向で見て逆に設定してあるとともに、第2磁石の磁力が第1磁石の磁力よりも強く設定してあるので、保持部材が第2磁石の方へ移動すると、部品は第1磁石よりも強められている第2磁石の磁気力で吸引される。この吸引と同時に、部品の移動方向後端部の極性と第1磁石の部品側の極性が同極性となって、ここに部品を反発する力が発生する。上述のように、部品の移動方向後端部の極性と第1磁石の部品側の極性が同極性となるのは、磁力が第1磁石よりも強められている第2磁石の磁界内に部品が存在させられることにより、第2磁石の磁力線が部品を透過して部品の移動方向後端部の極性が第2磁石の極性と同じになるためである。
【0014】
上述のように、第1磁石と第2磁石の極性が逆であることと、両磁石の磁力に大小差が付与されていることによって、部品が第2磁石の方へ移動させられると、自動的に部品自体の極性が変換されて、吸引現象による力と反発現象による力が相乗されるのである。
【0015】
したがって、上記吸引と反発の相乗作用により十分な値の力がえられるので、部品の質量が大きい場合であっても、前述の磁石寸法の大小差を大きくすることなく、制約された箇所において小型の磁石を配置して、スペース的に有利な条件で磁石配置をすることができる。また、部品の移動力が不足することを補うために、保持部材から部品に対して空気噴射を行うことが行われているが、このような空気噴射は空気通路や噴射制御などにおいて構造が複雑になりとともに、圧縮空気の節約においても不経済である。本発明では、このような問題も一掃されるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記部品がプロジェクションボルトなどの軸状部品であり、電気抵抗溶接電極に前記軸状部品が挿入される受入孔が形成され、この受入孔の奥部に前記第2磁石が取付けられ、前記保持部材は、前記軸状部品を前記受入孔へ供給する供給装置の保持ヘッドまたはその一部を形成する部材であり、前記保持部材に前記第1磁石が取り付けられている電気抵抗溶接装置用の請求項1記載の部品供給構造部である。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の部品供給構造部の発明を電気抵抗溶接装置に適用したものであり、軸状部品の移動に伴う部品自体の極性変換や、吸引・反発の現象は請求項1記載のものと同じである。さらに、前述のように、第2磁石を小型のものとすることができるので、前記受入孔の奥部、すなわち電極の内部のようにスペース的に制約のある箇所であっても、支障なく磁石配置が可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明は、方法の発明であり、保持部材を移動することによって前記保持部材に保持した磁性材料製の部品を目的箇所へ到達させるものであって、前記保持部材に取り付けた部品保持用の第1磁石の極性が、部品のほぼ移動方向で見て、前記目的箇所に取り付けた部品保持用の第2磁石の極性に対して逆に設定され、前記第2磁石の磁力が第1磁石の磁力よりも強く設定してある部品供給構造部を準備し、前記第1磁石の吸引力によって前記保持部材に保持された部品を、前記目的箇所の方へ移動させて前記部品を前記第2磁石の磁界内に存在させることにより、前記部品を前記第2磁石で吸引するとともに、前記部品の移動方向後端部の極性と前記第1磁石の部品側の極性を同極性にして、前記部品と前記第1磁石との間に反発力が生じるようにしたことを特徴とする部品供給方法である。
【0019】
上記方法の作用効果は、請求項1記載の発明の作用効果と同じである。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記部品がプロジェクションボルトなどの軸状部品であり、電気抵抗溶接電極に前記軸状部品が挿入される受入孔が形成され、この受入孔の奥部に前記第2磁石が取付けられ、前記保持部材は、前記軸状部品を前記受入孔へ供給する供給装置の保持ヘッドまたはその一部を形成する部材であり、前記保持部材に前記第1磁石が取り付けられている電気抵抗溶接における請求項3記載の部品供給方法である。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の部品供給構造部の発明を請求項3記載の発明に組み合わせたものであり、軸状部品の移動に伴う部品自体の極性変換や吸引・反発の現象は、請求項1記載のものと同じである。さらに、軸状部品に対して吸引と反発が同時に作用するので、受入孔の奥まで勢いよく部品挿入が可能となる。また、何等かの原因で軸状部品が受入孔の開口角部に擦れるようなことがあっても、軸状部品を受入孔内へ導入する力が十分に確保できるので、このような擦れの場合であっても確実に部品挿入が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】部品供給構造部の断面図である。
【図2】部品移動を段階的に示す簡略的な断面図である。
【図3】他の実施例を示す断面図である。
【図4】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明の部品供給構造部および部品供給方法を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0024】
図1および図2は、本発明の実施例1を示す。
【0025】
最初に、部品について説明する。
【0026】
本発明によって供給される部品としては、軸状部品であるプロジェクションボルトや細長い直方体の部品など色々なものがある。この実施例において供給される部品は図1(A)に示すように、鉄製のプロジェクションボルト1であり、雄ねじが切られた軸部2と、それと一体に形成された円形のフランジ部3と、軸部2とは反対側のフランジ部3の中央部に形成された円形の溶着用突起4によって構成されている。以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。
【0027】
つぎに、電極について説明する。
【0028】
ボルト1が供給される目的箇所としては種々な箇所があるが、ここでの目的箇所は、電気抵抗溶接における電極の受入孔である。可動電極5は図1(A)の上下方向に進退するようになっており、可動電極5の電極軸線O−Oに沿って、受入孔6が開けられていて可動電極5の下面に開口している。また、可動電極5に対向している固定電極は、図示していないが、図4に示した固定電極66や鋼板部品67と同様な構成とされている。
【0029】
つぎに、供給装置について説明する。
【0030】
軸部2を受入孔6に挿入するために供給装置100が設けてある。供給装置100の形式としては、供給ロッドが水平方向に進退し、電極軸線O−O方向に昇降する形式のものや、供給ロッドが斜め方向に進退し、電極軸線O−O方向に昇降する形式のものなど種々なものがある。ここでは、後者の形式である。
【0031】
傾斜姿勢で配置したエアシリンダ7のピストンロッド8によって供給ロッド9が進退するようになっている。前記エアシリンダ7にブラケット10が結合され、その下側に挿入エアシリンダ12が配置してある。この挿入エアシリンダ12は、機枠などの静止部材13に固定してあり、そのピストンロッド14は電極軸線O−Oと平行な方向に進退するようになっている。
【0032】
供給ロッド9の先端部に、保持部材である保持ヘッド15が結合してある。この保持ヘッド15は、円形のブロック状部材に機械加工を施したものであり、上方に開放している円形の保持凹部16が設けられ、ここにフランジ部3が収容される。保持凹部16の底部に、溶着用突起4が受け入れられる円形の中央凹部17が形成され、これによって環状の段部18が形成されている。したがって、フランジ部3が保持凹部16に収容されているときには、フランジ部3の平坦な外周側の端面部分が段部18に着座し、溶着用突起4は中央凹部17内に突き出ている。
【0033】
静止部材13にパーツフィーダ(図示していない)から延びてきている部品供給管22が固定され、供給ロッド9が最も後退した位置で保持凹部16にボルト1が移載されるようになっている。
【0034】
つぎに、第1磁石および第2磁石について説明する。
【0035】
フランジ部3を保持凹部16内に安定した状態で保持するために、保持ヘッド15に第1磁石19が取り付けられている。この第1磁石19は保持ヘッド15の中心部に挿入孔20が開けられ、そこに埋め込んである。なお、符号21は蓋部材である。そして、第1磁石19は、永久磁石で構成してある。
【0036】
図1は、エアシリンダ7の動作で供給ロッド9が進出した状態を示しており、軸部2が電極軸線O−Oと同軸になった位置で供給ロッド9の進出が停止するようになっている。この停止状態では、第1磁石19の中心線も電極軸線O−Oと合致している。第1磁石19の磁力線がボルト1の軸部2に沿って、すなわちボルト1の軸線方向に透過するように、第1磁石19の極性が設定されている。図1に示した第1磁石19の上側と下側にN極とS極が配置してある。
【0037】
可動電極5の受入孔6に挿入されたボルト1を保持するために、第2磁石23が受入孔6の奥部に取り付けてある。第2磁石23の中心線も電極軸線O−Oと合致している。第2磁石23の磁力線がボルト1の軸部2に沿って、すなわちボルト1の軸線方向に透過するように、第2磁石23の極性が設定されている。図1に示した第2磁石23の上側と下側にS極とN極が配置してある。そして、第2磁石23の磁力は第1磁石19の磁力よりも強く設定してある。そして、第2磁石23は、永久磁石で構成してある。
【0038】
なお、第2磁石23を可動電極5内に格納する具体的な構造は、後述する。
【0039】
つぎに、供給装置の動作を説明する。
【0040】
供給ロッド9が進出して軸部2が電極軸線O−Oと同軸になった位置で停止する。ついで、挿入エアシリンダ12の動作でエアシリンダ7全体が上昇すると、軸部2が受入孔6内に挿入され、第2磁石23の強い磁力でボルト1が受入孔6内に保持される。上記の動作から明らかなように、ボルト1や保持部材である保持ヘッド15の移動方向は、電極軸線O−Oの方向と同じである。
【0041】
つぎに、第1磁石と第2磁石の極性について説明する。
【0042】
図1(B)および(C)に示すように、前記保持ヘッド15に取り付けた部品保持用の第1磁石19の極性が、ボルト1のほぼ移動方向で見て、受入孔6に取り付けた部品保持用の第2磁石23の極性に対して、逆に設定されている。
【0043】
つぎに、部品移動と極性の変化について説明する。
【0044】
図1(B)は、挿入エアシリンダ12が最も縮小した状態であり、保持ヘッド15の移動開始前の状態を示している。この状態では、第1磁石19の磁力線(磁界)24はボルト1だけを透過しているので、フランジ部3は前記段部18に吸引され、保持ヘッド15は安定した状態で保持されている。
【0045】
上記の移動開始前の状態では、ボルト1の先端部と第2磁石23の間隔が大きいので、第2磁石23の磁力線(磁界)25の領域はボルト1から離隔した状態になっていて、第2磁石23からの磁気的影響はボルト1に対して及ぶことがない。そして、このときにはボルト1の移動方向で見たボルト1の先端部は、第1磁石19の磁力線24の透過によって第1磁石19の極性と同じN極になっているとともに、ボルト1の移動方向後端部であるフランジ部3や溶着用突起4の極性S極に対して、第1磁石19のボルト1側の極性がN極になっていて、ボルト1は第1磁石19に吸引されている。上記の状態は、図2(A)に示す段階である。
【0046】
上記の極性の状態で保持ヘッド15が第2磁石23の方へ移動を開始してボルト1が第2磁石23の磁界内に進入すると、進入初期の段階では、ボルト先端部の極性N極と第2磁石23のボルト1側の極性N極が同じであるため、ボルト先端部と第2磁石23とは反発する関係となるが、ボルト先端部と第2磁石23(断熱片27の下端部)との間隔が大きいので、実質的には反発力は発生しない。上記の状態は、図2(B)に示す段階である。
【0047】
これに引き続いて保持ヘッド15がさらに第2磁石23の方へ移動すると、ボルト1は図1(C)に示すように、第2磁石23の磁界内に置かれ、第2磁石23の磁力が第1磁石19のそれよりも強いので、第2磁石23の磁力線がボルト1を透過する。このため、ボルト先端部の極性がN極からS極に変換されて、第2磁石23のボルト側極性とは逆となる。同時に、ボルト1の移動方向後端部の極性はS極からN極に変換されて、第1磁石19のボルト側極性と同じになる。
【0048】
したがって、ボルト1と第2磁石23との間では吸引力が発生し、ボルト1と第1磁石19との間では反発力が発生する。上記の吸引現象による力と反発現象による力が相乗されて、ボルト1を目的箇所である受入孔6の奥部へ到達させる総合的な力が十分な値として確実にえられる。上記の進入初期の段階における反発関係は、ボルト先端部と第2磁石23との間の距離が長いので、実質的に反発力は発生せず、保持ヘッド15の移動に支障を来すことはない。上記の状態は、図2(C)と(D)に示す段階である。(D)は、保持ヘッド15から第2磁石23に向かってボルト1が空中移動をしている過渡的な段階を示している。したがって、(C)図と(D)図における保持ヘッド15と可動電極5の下面との間隔は、同じである。
【0049】
つぎに、第2磁石の配置構造を説明する。
【0050】
第2磁石23は、受入孔6の内径よりも大きな外径のカップ状の容器26内に収容され、円柱形の断熱片27が第2磁石23に密着した状態で容器26に溶接してある。断熱片27は受入孔6内に突き出ている。受入孔6の内径よりも大きな内径とされた大径孔28内に、容器26が摺動可能な状態で挿入されている。容器26と大径孔28の内端面29の間に、圧縮コイルばね30が挿入されている。溶着用突起4が鋼板部品(図示していない)に押し付けられると、圧縮コイルばね30が圧縮されてフランジ部3が可動電極5の下端面に密着するようになっている。
【0051】
上記断熱片27は、第2磁石23に伝達される溶接熱の熱量を少なくするために配置してあり、同時に第2磁石23の一部を構成している。したがって、断熱片27は磁性材料である鉄が使用されている。このため上述のように、第2磁石23の下側、すなわちボルト1側の極性は、断熱片27の下端部に現れる。一方、容器26は非磁性材料であるステンレス鋼で作られている。なお、可動電極5の本体や保持ヘッド15は非磁性材料で作られており、可動電極本体はクロム銅、保持ヘッド15はステンレス鋼で作られている。このようにして、第2磁石23の磁力を効果的にボルト1へ作用させている。
【0052】
保持部材は、前記ボルト1を受入孔6へ供給する供給装置100の保持ヘッド15「またはその一部」を形成する部材であると表現しているのは、例えば、保持ヘッド15の保持機能を果たす保持凹部16のような構造部以外に、保持ヘッド15と供給ロッド9を一体化するための結合構造部が付随している場合などがあるためである。
【0053】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記各種の永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0054】
上述の動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行わせることが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0055】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0056】
前記保持ヘッド15に取り付けたボルト保持用の第1磁石19の極性が、ボルト1のほぼ移動方向で見て、前記目的箇所である受入孔6の奥に取り付けたボルト保持用の第2磁石23の極性に対して逆に設定されている。つまり、図1(B)において、第1磁石19の上側がN極、下側がS極であり、第2磁石23の上側がS極、下側(断熱片27の下端部)がN極とされている。そして、第2磁石23の磁力が第1磁石19の磁力よりも強く設定してある。
【0057】
このため、図1(B)に示すように、保持ヘッド15の移動開始前においては、第1磁石19によって保持ヘッド15に保持されたボルト1の先端部と第2磁石23(断熱片27の下端部)の間隔が大きいので、第2磁石23の磁界(磁力線25)の領域はボルト1から離隔した状態になっていて、第2磁石23からの磁気的影響はボルト1に対して及ぶことがない。そして、このときにはボルト1の移動方向、すなわち電極軸線O−Oの方向で見たボルト1の先端部は、第1磁石19の磁力線の透過によって第1磁石の極性と同じN極になっているとともに、ボルト1の移動方向後端部の極性はS極となっている。そして、第1磁石19のボルト1側の極性はN極になっているから、ボルト1は第1磁石19に吸引されている。
【0058】
この極性の状態で保持ヘッド15が第2磁石23の方へ移動を開始してボルト1が第2磁石23の磁界内に進入すると、進入初期の段階では、ボルト先端部の極性N極と第2磁石23(断熱片27の下端部)のボルト側の極性N極が同じであるため、部品先端部と第2磁石23とは反発する関係となるが、ボルト先端部と第2磁石23(断熱片27の下端部)との間隔が大きいので、実質的には反発力は発生しない。
【0059】
これに引き続いて保持ヘッド15がさらに第2磁石23の方へ移動すると、ボルト1は第2磁石23の磁界内に置かれ、第2磁石23の磁力が第1磁石19のそれよりも強いので、第2磁石23の磁力線がボルト1を透過する。このため、図1(C)に示すように、ボルト先端部の極性が第2磁石23の部品側極性N極とは逆のS極となり、同時に、ボルト1の移動方向後端部の極性はN極となって第1磁石19のボルト側極性と同じN極になる。したがって、ボルト1と第2磁石23(断熱片27の下端部)との間では吸引力が発生し、ボルト1と第1磁石19との間では反発力が発生する。上記の吸引現象による力と反発現象による力が相乗されて、ボルト1を目的箇所へ到達させる総合的な力が十分な値として確実にえられる。上記の進入初期の段階における反発関係は、ボルト1先端部と第2磁石23(断熱片27の下端部)との間の距離が長いので、実質的に反発力は発生せず、保持ヘッド15の移動に支障を来すことはない。
【0060】
第1磁石19と第2磁石23の極性が、ボルト1の移動方向で見て逆に設定してあるとともに、第2磁石23の磁力が第1磁石19の磁力よりも強く設定してあるので、保持ヘッド15が第2磁石23の方へ移動すると、ボルト1は第1磁石19よりも強められている第2磁石23の磁気力で吸引される。この吸引と同時に、ボルト1の移動方向後端部の極性と第1磁石19のボルト側の極性が同極性となって、ここにボルト1を反発する力が発生する。上述のように、ボルト1の移動方向後端部(フランジ部3や溶着用突起4など)の極性と第1磁石19のボルト側の極性が同極性となるのは、磁力が第1磁石19よりも強められている第2磁石23の磁界内にボルト1が存在させられることにより、第2磁石23の磁力線25がボルト1を透過してボルト1の移動方向後端部の極性が第2磁石の極性と同じになるためである。
【0061】
上述のように、第1磁石19と第2磁石23の極性が逆であることと、両磁石の磁力に大小差が付与されていることによって、ボルト1が第2磁石23の方へ移動させられると、自動的にボルト自体の極性が変換されて、吸引現象による力と反発現象による力が相乗されるのである。
【0062】
したがって、上記吸引と反発の相乗作用により十分な値の力がえられるので、ボルト1の質量が大きい場合であっても、前述の磁石寸法の大小差を大きくすることなく、制約された箇所において小型の磁石を配置して、スペース的に有利な条件で磁石配置をすることができる。また、ボルト1の移動力が不足することを補うために、保持ヘッド15からボルト1に対して空気噴射を行うことが行われているが、このような空気噴射は空気通路や噴射制御などにおいて構造が複雑になりとともに、圧縮空気の節約においても不経済である。本実施例では、このような問題も一掃されるという効果がある。
【0063】
前記部品がプロジェクションボルトなどの軸状部品であり、電気抵抗溶接電極5にボルト1が挿入される受入孔6が形成され、この受入孔6の奥部に第2磁石23が取付けられ、前記保持部材は、前記ボルト1を前記受入孔6へ供給する供給装置100の保持ヘッド15またはその一部を形成する部材であり、前記保持部材に前記第1磁石19が取り付けられている電気抵抗溶接装置用の部品供給構造部である。
【0064】
前記部品供給構造部を電気抵抗溶接装置に適用したものであり、ボルト1の移動に伴うボルト1自体の極性変換や、吸引・反発の現象は前記部品供給構造部と同じである。さらに、前述のように、第2磁石23を小型のものとすることができるので、前記受入孔6の奥部、すなわち電極5の内部のようにスペース的に制約のある箇所であっても、支障なく磁石配置が可能となる。
【0065】
方法の発明の実施例は、部品供給構造部の実施例と同様であり、保持ヘッド15を移動することによって前記保持ヘッド15に保持した磁性材料製のボルト1を目的箇所へ到達させるものであって、前記保持ヘッド15に取り付けた部品保持用の第1磁石19の極性が、ボルト1のほぼ移動方向で見て、前記目的箇所に取り付けたボルト保持用の第2磁石23の極性に対して逆に設定され、前記第2磁石23の磁力が第1磁石19の磁力よりも強く設定してある部品供給構造部を準備し、前記第1磁石19の吸引力によって保持ヘッド15に保持されたボルト1を、前記目的箇所の方へ移動させてボルト1を第2磁石23の磁界内に存在させることにより、ボルト1を第2磁石23で吸引するとともに、ボルト1の移動方向後端部の極性と第1磁石19のボルト側の極性を同極性にして、ボルト1と第1磁石19との間に反発力が生じるようにした。
【0066】
上記方法の実施例の作用効果は、前記部品供給構造部の実施例の作用効果と同じである。
【0067】
上記方法の実施例として、前記部品がプロジェクションボルトなどの軸状部品を電気抵抗溶接で溶接している。電気抵抗溶接電極5にボルト1が挿入される受入孔6が形成され、この受入孔6の奥部に第2磁石23が取付けられ、前記保持部材は、ボルト1を受入孔6へ供給する供給装置100の保持ヘッド15またはその一部を形成する部材であり、前記保持部材に第1磁石19が取り付けられている。
【0068】
プロジェクションボルト1の移動に伴うボルト自体の極性変換や吸引・反発の現象は、前述の部品供給構造部のものと同じである。さらに、ボルト1に対して吸引と反発が同時に作用するので、受入孔6の奥まで勢いよくボルト挿入が可能となる。また、何等かの原因で軸部2が受入孔6の開口角部に擦れるようなことがあっても、ボルト1を受入孔6内へ導入する力が十分に確保できるので、このような擦れの場合であっても確実にボルト挿入が可能となる。
【実施例2】
【0069】
図3は、本発明の実施例2を示す。
【0070】
この実施例2は、部品32が鉄製の直方体型部材の場合であり、部品の移動方向がやや斜め下から移動するようになっている。また、部品供給の目的箇所は、静止部材13に固定したブロック部材33の平坦な下端面34である。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実施例1と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0071】
本実施例2のように、部品の形状や目的箇所の形状が先の実施例1とは異なっていても、実施例1と同様な作用効果がえられる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
上述のように、本発明の構造部や方法によれば、磁石の極性を所定の極性に設定することにより、部品を目的箇所へ到達させる力を大きくすることができる。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 プロジェクションボルト、部品
2 軸部
3 フランジ部
5 可動電極
O−O 電極軸線
6 受入孔
9 供給ロッド
13 静止部材
15 保持部材、保持ヘッド
19 第1磁石
23 第2磁石
24 磁力線(磁界)
25 磁力線(磁界)
32 部品
34 下端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材を移動することによって前記保持部材に保持した磁性材料製の部品を目的箇所へ到達させるものであって、
前記保持部材に取り付けた部品保持用の第1磁石の極性が、部品のほぼ移動方向で見て、前記目的箇所に取り付けた部品保持用の第2磁石の極性に対して逆に設定され、前記第2磁石の磁力が第1磁石の磁力よりも強く設定してあることを特徴とする部品供給構造部。
【請求項2】
前記部品がプロジェクションボルトなどの軸状部品であり、
電気抵抗溶接電極に前記軸状部品が挿入される受入孔が形成され、
この受入孔の奥部に前記第2磁石が取付けられ、
前記保持部材は、前記軸状部品を前記受入孔へ供給する供給装置の保持ヘッドまたはその一部を形成する部材であり、
前記保持部材に前記第1磁石が取り付けられている電気抵抗溶接装置用の請求項1記載の部品供給構造部。
【請求項3】
保持部材を移動することによって前記保持部材に保持した磁性材料製の部品を目的箇所へ到達させるものであって、
前記保持部材に取り付けた部品保持用の第1磁石の極性が、部品のほぼ移動方向で見て、前記目的箇所に取り付けた部品保持用の第2磁石の極性に対して逆に設定され、前記第2磁石の磁力が第1磁石の磁力よりも強く設定してある部品供給構造部を準備し、
前記第1磁石の吸引力によって前記保持部材に保持された部品を、前記目的箇所の方へ移動させて前記部品を前記第2磁石の磁界内に存在させることにより、前記部品を前記第2磁石で吸引するとともに、前記部品の移動方向後端部の極性と前記第1磁石の部品側の極性を同極性にして、前記部品と前記第1磁石との間に反発力が生じるようにしたことを特徴とする部品供給方法。
【請求項4】
前記部品がプロジェクションボルトなどの軸状部品であり、
電気抵抗溶接電極に前記軸状部品が挿入される受入孔が形成され、
この受入孔の奥部に前記第2磁石が取付けられ、
前記保持部材は、前記軸状部品を前記受入孔へ供給する供給装置の保持ヘッドまたはその一部を形成する部材であり、
前記保持部材に前記第1磁石が取り付けられている電気抵抗溶接における請求項3記載の部品供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−240119(P2012−240119A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122706(P2011−122706)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】