説明

部品取付用のクリップ及び部品の取付構造

【課題】 クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる、部品取付用のクリップ及び部品の取付構造を提供する。
【解決手段】 クリップ(3)は、一対の側壁(3e)の間に内部空間(3b)をもち、先端部(3g)において一対の側壁(3e)が連結され、基端部(3d)において内部空間(3b)に連通する開口(3c)をもつ。一対の側壁(3e)には、それぞれ、取付穴(2b)に係止される弾性係止部(3a)及び、アシストグリップ(1)に保持される段部(3f)が配設されている。弾性係止部(3a)は、一端(3s)が側壁(3e)に連結され、他端(3q)が自由端であり、該端部(3q)よりも内部空間側に窪んで取付穴2aに係止される窪み部(3k)と該窪み部よりも外側に張り出した張り出し部(3m)とをもつ。弾性係止部(3a)は、張り出し部(3m)の頂部(3t)から窪み部(3k)に至る傾斜部(3z)に、内部空間(3b)側に突出するビード(逃げ部)(3r)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装部品などの部品を取付ける際に用いられるクリップ及び部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アシストグリップなどの車両内装用の部品を、車体側パネルに取り付けるにあたっては、アシストグリップのグリップ本体を揺動可能に保持する基台にクリップを取付けるとともに、クリップの内部空間に樹脂製のキャップの脚部を挿入した後に、クリップを取付穴に嵌挿して弾性係止部を取付穴に係止する構造が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1におけるクリップは、取付穴に係止する弾性係止部の先端が分割されており、クリップの挿入荷重を低減させることができる。また、クリップの掛かり代による取付穴中央部への応力集中を分散させることができるので、取付穴の変形が抑制できてクリップが取付孔から抜け出ることを防止できるとされている。
【0004】
しかし、弾性係止部の先端が分割されていると、樹脂製であるキャップの脚部への接触面積が少なくなる。これ故、脚部が変形しやすくなり、クリップが取付穴から抜け出る虞が生じる。また、クリップ自体の剛性も低下する。
【0005】
一方、特許文献2に示されるクリップは、その弾性係止部の先端は分割されていない。このため、弾性係止部の脚部への接触面積は増加し、クリップによる脚部の変形を低減することができる。しかし、クリップの掛かり代による取付穴中央部への応力集中が発生しやすいので、取付穴が変形してクリップが取付穴から抜け出る虞がある。また、クリップ自体の剛性に関しても物足りないものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−121633号公報
【特許文献2】特開2009−120118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、クリップによる脚部の変形を低減するとともに取付穴の変形を抑制して、クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる、部品取付用のクリップ及び部品の取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の部品取付用のクリップは、基台を有する部品を取付部材の取付穴に取り付けるときに用いられる部品取付用のクリップにおいて、クリップは、一対の側壁の間に内部空間をもち、先端部において前記一対の側壁が連結され、基端部において内部空間に連通する開口をもち、一対の側壁には、それぞれ取付穴に係止される弾性係止部と、基台に保持される保持部とが配設されており、弾性係止部は、一方の端部が側壁に連結され、他方の端部が自由端でその他方の端部よりも内部空間側に窪んで取付穴に係止される窪み部と、この窪み部よりも外側に張り出した張り出し部とを有し、部品が取付穴に取り付けられた状態で、取付穴の周縁に当接しない逃げ部を張り出し部の頂部から窪み部に至る傾斜部に有することを特徴とする。
【0009】
本発明の部品取付用のクリップにおいて、前記逃げ部は、内部空間側に突出するように形成された凹部であることが望ましい。
【0010】
また、本発明の部品取付構造は、基台を有する部品と、取付穴をもつ取付部材と、一対の側壁の間に内部空間をもち先端部において前記一対の側壁が連結され基端部において前記内部空間に連通する開口をもち、前記一対の側壁にそれぞれ前記取付穴の周縁に係止される弾性係止部及び前記基台に保持される保持部を配設したクリップと、このクリップの基端部を覆う覆い部及び前記開口から前記内部空間に嵌挿される脚部をもつキャップと、をもち、クリップの保持部を基台に保持するとともに、クリップを取付穴に嵌挿して弾性係止部を取付穴の周縁に係止し、前記キャップの覆い部で前記クリップの基端部を覆うとともに脚部をクリップの開口から内部空間に嵌挿させることにより部品を取付部材に取り付けてなる部品の取付構造であって、クリップの弾性係止部は、一方の端部が側壁に連結され、他方の端部が自由端で該他方の端部よりも内部空間側に窪んで取付穴に係止される窪み部と、この窪み部よりも外側に張り出した張り出し部とを有し、部品が取付穴に取り付けられた状態で、取付穴の周縁に当接しない逃げ部を張り出し部の頂部から窪み部に至る傾斜部に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の部品取付用のクリップは、弾性係止部の張り出し部の頂部から窪み部に至る傾斜部に、部品が取付穴に取り付けられた状態で取付穴の周縁に当接しない逃げ部を備える。これ故、クリップに部品の抜け方向の荷重がかかった場合には、取付穴の周縁から窪み部へ負荷される応力は、逃げ部を挟んで窪み部の左右に分散される。このため、取付穴の中央部への応力集中を抑制することができる。すなわち、弾性係止部に逃げ部を設けることにより、取付穴の変形を抑えてクリップが取付穴から抜け出ることを効果的に防止することができる。
【0012】
一方、窪み部の内周面(内部空間側の凸面)は窪み部の全幅でキャップの脚部に当接する。従って、窪み部の先端が分割されている場合に比べて、樹脂製であるキャップの脚部の変形が抑制され、クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる。
【0013】
本発明において、逃げ部を内部空間側に突出する凹部、例えばビード状とした場合には、ビード部が補強リブの役割も果たすため、クリップ自体の剛性も増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るアシストグリップの取付構造の正面図である。
【図2】実施形態に係るアシストグリップの取付構造の分解斜視図である。
【図3】実施形態に係るアシストグリップの取付構造の要部断面図である。
【図4】実施形態に係るクリップの斜視図である。
【図5】実施形態に係るキャップの斜視図である。
【図6】実施形態に係る基台の斜視図である。
【図7】実施形態に係る基台の平面図である。
【図8】実施形態に係るアシストグリップの取付方法を説明するために、基台にクリップを保持したときの取付構造の断面図である。
【図9】図8に続く、基台及びクリップにキャップを仮挿入したときの取付構造の断面図である。
【図10】図9のP−P矢視断面図である。
【図11】図9に続く、基台にグリップ本体を取り付けたときの取付構造の断面図である。
【図12】図11に続く、クリップを車両側パネルの取付穴に嵌挿してアシストグリップを車両側パネルに仮固定したときの取付構造の断面図である。
【図13】図12に続く、キャップの脚部をクリップの内部空間に更に押し込んで、アシストグリップを車両側パネルに本固定したときの取付構造の断面図である。
【図14】逃げ部の効果を説明する模式図である。(a)は図4におけるA視正面図、(b)は(a)のB視一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、アシストグリップを車両側パネルに取り付けた取付構造の正面図である。図2は、取付構造の分解斜視図である。図1、図2に示すように、アシストグリップ1は、クリップ3及びキャップ4を用いて車両側パネル2に取り付けられている。
【0016】
アシストグリップ1は、グリップ本体10と、グリップ本体10の両端部に設けられグリップ本体10を回動可能に支持する基台11とをもつ。グリップ本体10の両端部は、基台11を収容する凹部10aをもつ。凹部10aの側壁には、軸孔10bが開口している。軸孔10b、及び基台11に設けられた軸受部11aの孔に、軸12を挿入することで、グリップ本体10は基台11に対して回動可能に支持されている。また、軸受部11aと軸孔10bとの間には、凹部10aが基台11に近接する方向にグリップ本体10を付勢するばね13が配設されている。ばね13の一端13aは、凹部10aの係止部10cに係止され、他端13bは軸受部11aの係止部11nに係止されている。基台11は、後述するようにクリップ3及びキャップ4を用いて車両パネル2に固定される部分である。なお、グリップ本体10及び基台11は、樹脂材料を金型内に射出して成形される。
【0017】
図3は、アシストグリップの取付構造の要部断面図である。図3において、紙面下方向を挿入方向、紙面上方向を抜け方向、紙面左右横方向をクリップの内部空間の奥行き方向とする。また、クリップの一対の側壁の間の奥行きの中心に向かう方向を、奥行き中心方向Gといい、クリップの側壁の奥行きの外側に向かう方向を、奥行き外側方向Hという。クリップの側壁の間の内部空間の奥行き方向の幅は、奥行き幅Dという。図8、図9、図11〜図13において同じである。
【0018】
図3に示すように、車両側パネル2は、車両室内に露出している表面パネル21と、表面パネル21とボディとの間に介設されている内部パネル22とをもつ。表面パネル21は、車両の天井パネルに表皮材が貼り付けられたものである。表面パネル21及び内部パネル22には、基台11を取り付ける位置に、取付穴2aが貫通して形成されている。取付穴2aの表面パネル貫通部2bは、内部パネル貫通部2cよりも開口径が大きいため、内部パネル貫通部2cの周縁2dは、表面パネル貫通部2bに露出している。
【0019】
図3、図4に示すように、クリップ3は、断面U字形状を呈している。クリップ3は、内部空間3bを挟んでその両側に一対の側壁3eをもつ。クリップ3の先端部3gでは、一対の側壁3eがU字状に湾曲して連結されている。クリップ3の基端部3dでは、側壁3eは連結されておらず、内部空間3bに連通する開口3cを有している。クリップ3は、その長手方向に車両側パネル2の取付穴2aに嵌挿される。クリップ3の側壁3eは、長手方向と直交する方向、即ち内部空間3bの奥行き方向の相対する位置に一対の弾性係止部3aをもつ。
【0020】
弾性係止部3aは、一方の端部3sが側壁3eの先端部3g近傍に連結され、他方の端部3qが自由端である。弾性係止部3aは、自由端の端部3qの近傍に、端部3qよりも内部空間3b側に窪むとともに取付穴2aに係止される窪み部3kと、窪み部3kよりも外側に張り出した張り出し部3mとを有する。窪み部3kは、円弧状に湾曲して、自由状態で、側壁3eの平面部3hよりも奥行き内側方向Gに窪んでいる。
【0021】
弾性係止部3aの張り出し部3mから窪み部3kまでの間には、弾性係止部3aの長手方向に沿って奥行き内側方向Gに凹んで突出するビード3rが形成されている。ビード3rは、張り出し部3mの頂部3tから張り出し部3mの窪み部3k側の傾斜部3zを経て傾斜部3zと窪み部3kとの境界までに形成されている。
【0022】
ビード3rは、側壁3eの横幅Cの中央に形成されている。ビード3rは、クリップ3が取付穴2aに取り付けられた状態で、クリップの掛かり代が取付穴2aの周縁2dに当接しない逃げ部である。
【0023】
また、クリップ3の側壁3eにおける弾性係止部3aよりも基端部3d側には、基台11に保持される保持部としての段部3fを有している。段部3fは、側壁3eを奥行き外側方向Hに屈折させて形成された部分である。クリップ3は、金属板に打ち抜き曲げ加工を施して形成される。
【0024】
図3、図5に示すように、キャップ4は、クリップ3の基端部3dを覆う覆い部4aと、クリップ3の開口3cから内部空間3bに挿入され該挿入方向に延びる脚部4bをもつ。覆い部4aは、基台11の上部に形成されたキャップ保持壁11cの上面及び側面を覆うように、断面コ字状に湾曲している。脚部4bは、矩形の四隅に位置する4本の支柱4cと、隣り合う支柱4cの間を平面状に連結する一対の挟持部4dとをもつ。脚部4bにおける、クリップ3の側壁3eと対向する部分、即ち脚部4bの外側面には、側壁3eに対して圧接する圧接部4eをもつ。なお、図10に示すように、キャップ4の覆い部4aの内側面には、被係止凸部4gが形成されている。キャップ4は、樹脂材料を金型内に射出して成形される。
【0025】
図3、図6、図7に示すように、アシストグリップ1の基台11は、クリップ3を嵌挿する四角形状のクリップ保持穴11bをもつ枠部11fと、枠部11fから上方に突出するキャップ保持壁11cとをもつ。キャップ保持壁11cは、キャップ4の覆い部4aの内側面に沿った形状をもち、該内側面に当接してキャップ4を保持する。キャップ保持壁11cの後端部には、上記グリップ本体10を回動可能に支持する軸受部11aが一体に固定されている。
【0026】
更に、基台11は、枠部11fの下方に突出する当接リブ11dをもつ。当接リブ11dは、クリップ3を車両側パネル2の取付穴2aに嵌挿するときに、クリップ3の抜け方向への動きを規制する規制部である。当接リブ11dは、クリップ保持穴11bの中央に配置されクリップ保持穴11bを2つに区画している。当接リブ11dは、平滑な板状を呈しており、当接リブ11dの横幅Bは、クリップ3の横幅Cとほぼ同じである(図10参照)。図6に示すように、当接リブ11dの先端11eは、面取りされて横幅Bが縮小されている。図10に示すように、この先端11eは、クリップ3の先端部3gに開口するスリット3jに挿入されて、当接リブ11dをクリップ3の内部空間3bの奥行き幅Dの略中央に位置決めしている。
【0027】
クリップ3及びキャップ4を用いて、アシストグリップ1を車両側パネル2に取り付けるにあたっては、まず、図8に示すように、クリップ3の側壁3eを奥行き中心方向Gに圧縮して、基端部3dの間の内部空間3bの奥行き幅Dを狭くする。この状態でクリップ3を基端部3d側から、基台11のクリップ保持穴11bに挿入する。クリップ3の側壁3eは、基台11の当接リブ11dに摺接しながら、クリップ保持穴11bの下方側から挿入される。そして、クリップ3の基端部3dに形成された段部3fをクリップ保持穴11bの上側周縁11mに係止する。このとき、当接リブ11dの先端11eが、クリップ3の先端3gに開口するスリット3jに嵌挿されて、当接リブ11dの先端11e近傍のテーパ状又は段状の係止部11hがスリット3jの周縁3nに係止される(図10参照)。このようにして、クリップ3を基台11に保持するとともに、当接リブ11dを、クリップ3の内部空間3bの奥行き幅Dの略中央に位置決めする。
【0028】
次に、図9、図10に示すように、クリップ3の基端部3dの開口3cから内部空間3bに、キャップ4の脚部4bを仮挿入する。このとき、図10に示すように、キャップ4の覆い部4aの内側面に突出する被係止凸部4gが、基台11のキャップ保持壁11cの外縁11gに係止され、この位置で挿入が一旦停止される。脚部4bは、クリップ3の内部空間3bにおける弾性係止部3aの位置する部分まで挿入されるが、図9に示すように、弾性係止部3aの位置する部分の内部空間3bには奥行き方向に隙間3pが残る。それゆえ、弾性係止部3aは、内部空間3bの奥行き方向に容易に変形し得る。
【0029】
次に、図11、図2に示すように、基台11をグリップ本体部10の凹部10aに配設させる。凹部10aの軸孔10b及び基台11の軸受部11aに軸12を挿入するとともに、軸12は円筒状のカラー14の孔の中に挿入する。また、軸受部11aと軸孔10bとの間にばね13を配設する。ばね13の一端13aは、凹部10aの係止部10cに係止させ、他端13bは軸受部11aの係止部11nに係止させる。これにより、グリップ本体10が基台11に取り付けられるとともに、ばね13によって基台11にグリップ本体10が付勢される。そして、凹部10aの内面10dに、キャップ4の覆い部4aの端部4kが当接する。これにより、基台11に対して、クリップ3、キャップ4及びグリップ本体部10が、一体的に保持される。
【0030】
次に、図12に示すように、グリップ本体10を車両側パネル2側(図12のF1方向)に向けて押圧する。これにより、グリップ本体10の凹部10aの内面10dでキャップ4が押される。更に、キャップ4が、被係止凸部4gで基台11を押して(図10参照)、基台11に保持されているクリップ3が、車体側パネル2の取付穴2aに嵌挿される。取付穴2aには、内部パネル貫通部2cの周縁2dが露出している。このため、クリップ3の弾性係止部3aは、周縁2dに弾接して、弾性係止部3aの間の内部空間3bの奥行き幅Dが縮められ、弾性係止部3aの張り出し部3mが内部パネル貫通部2cを通過する。内部パネル貫通部2cを通過した後、弾性係止部3aは、弾性係止部3aのばね反発力によって奥行き幅Dを元の大きさに近づける。そして、このばね反発力で、弾性係止部3aの窪み部3kが、内部パネル貫通部2cの周縁2dに係止される。これにより、アシストグリップ1が車両側パネル2に仮固定される。
【0031】
次に、図13に示すように、キャップ4の覆い部4aを車両側パネル2側、即ち図13に示すF2方向で、図12の仮固定時の力F1よりも大きな荷重で押圧する。これにより、キャップ4の被係止凸部4gと基台11のキャップ保持壁11cの外縁11gとの係止が外れて、更に、キャップ4は、挿入方向に本挿入される。覆い部4aの内側面に、キャップ保持壁11cが当接して、クリップ3の基端部3d側及び基台11の上部側が覆い部4aで覆われる。また、キャップ4の脚部4bがクリップ3の内部空間3bに嵌挿される。これにより、脚部4bの間に形成された一対の挟持部4dで、基台11の当接リブ11dが挟持される。また、挟持部4dは、弾性係止部3aの窪み部3kの内面に圧接する。すなわち、図13、図4、図5に示すように、キャップ4の脚部4bの挟持部4dは、クリップ3の弾性係止部3aの窪み部3kに当接し、弾性係止部3aの変形を抑制する。また、キャップ4の脚部4bの支柱4cは、クリップ3の側壁3eの平面部3hに当接し、弾性係止部3aを除くクリップ3全体の変形を抑える。これにより、クリップ3の内部空間3bの奥行き方向の隙間がなくなり、弾性係止部3aが内部空間3bの奥行き中心方向Gへ変形しにくくなる。そして、クリップ3の側壁3e及び弾性係止部3aの窪み部3kが、奥行き中心方向Gへ撓みにくくなり、クリップ3が取付穴2aから抜け出ることが防止される。このようにして、アシストグリップ1が車両側パネル2に本固定される。
【0032】
次に、本実施形態における逃げ部(ビード3r)の効果について図14を参照しながら説明する。図14は、逃げ部の効果を説明する模式図であり、(a)はクリップ3が取付穴2aに嵌着された状態の図4におけるA視正面図を示し、(b)は(a)のB視一部断面図を示す。
【0033】
本実施形態において、クリップ3の弾性係止部3aには奥行き内側方向Gに突出するビード3rが形成されている。ここで、クリップ3に抜け方向の荷重F3が付加されると、取付穴2aの周縁2dは窪み部3kと傾斜部3zとの境界3vで弾性係止部3aに当接する。しかし、弾性係止部3aの境界3vには中心方向Gに窪んだビード3rが形成されているので、幅Jのビード3rを除く左右の幅Kがクリップの掛かり代3yとなる。すなわち、取付穴2aの周縁2dから窪み部3kへ負荷される応力が、ビード3rを挟んで左右に分散されるので、窪み部3kが分割されている場合と同様に、取付穴2aの中央部への応力集中を抑制することができる。よって、クリップ3が取付穴2aから抜け出ることを効果的に防止できるわけである。
【0034】
一方、窪み部3kの内周面(内部空間3b側の凸面)3uは、窪み部3kの全幅Lでキャップ4の脚部4b(特に、挟持部4d)に当接している。従って、窪み部3kが分割されている場合に比べて、樹脂製である脚部4bへの接触面積が増大するので、挟持部4dの変形が抑制され、クリップのガタつきを生じることがない。よって、クリップ3が取付穴2aから抜け出ることを防止することができる。さらに、ビード3rが弾性係止部3aの補強リブの役割も果たすため、クリップ3自体の剛性も増加することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、逃げ部を内部空間3b側に突出するビード3rとしたが、ビード3rに対応する部位に長孔を穿設してもよい。ビード3rに代えて長孔とすることで、クリップの剛性が低下して、クリップ挿入荷重が低減され、部品の取付作業性を向上することができる。
【0036】
本実施形態においては、クリップ3の内部空間3bにキャップ4の脚部4bを挿入した後に、車両側パネル2の取付穴2aにクリップ3を嵌挿している。これは、アシストグリップ1の基台11、グリップ本体10、クリップ3及びキャップ4を一体化品としてまとめて運搬、取り扱いを容易とするためである。しかし、この順序が逆であっても、本発明の効果を発揮することができる。即ち、先に、クリップ3の内部空間3bにキャップ4の脚部4bを挿入しない状態で取付穴2aにクリップ3を嵌挿し、その後にクリップ3の内部空間3bにキャップ4の脚部4bを挿入しても良い。この場合には、キャップ4の脚部4bは、ワンアクションで、クリップ3の内部空間3bに完全に挿入することができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、部品として車両内装部品の一つであるアシストグリップを適用したが、コンソールボックス、インストルメントパネル、サンバイザー、コートフック、レジスタ、ルームランプなどの車両内外部品にも適用できる。
【0038】
また、本実施形態においては、クリップを保持している部品が、グリップ本体10と基台11の2部材から構成されていたが、本発明の基台の構成を有していれば、1部材から部品が構成されていてもよい。もちろん、部品は、基台と、その他の2以上の部材から構成されていてもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1:アシストグリップ、10:グリップ本体、10a:凹部、10b:軸孔、11:基台、11a:軸受部、11b:クリップ保持穴、11c:キャップ保持壁、11d:当接リブ、11e:先端、11f:枠部、11g:外縁、11h:係止部、12:軸、2:車両側パネル、2a:取付穴、2d:周縁、3:クリップ、3a:弾性係止部、3b:内部空間、3c:開口、3d:基端部、3e:側壁、3f:段部、3g:先端部、3h:平面部、3j:スリット、3k:窪み部、3m:張り出し部、3q:端部(自由端)、3r:ビード(逃げ部)、3s:端部、3t:頂部、3v:境界 3y:掛かり代 3z:傾斜部、4:キャップ、4a:覆い部、4b:脚部、4d:挟持部、4e:圧接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台を有する部品を取付部材の取付穴に取り付けるときに用いられる部品取付用のクリップにおいて、
前記クリップは、一対の側壁の間に内部空間をもち先端部において前記一対の側壁が連結され基端部において前記内部空間に連通する開口をもち、
前記一対の側壁には、それぞれ前記取付穴に係止される弾性係止部と、前記基台に保持される保持部とが配設されており、
前記弾性係止部は、一方の端部が前記側壁に連結され、他方の端部が自由端で該他方の端部よりも前記内部空間側に窪んで前記取付穴に係止される窪み部と該窪み部よりも外側に張り出した張り出し部とを有し、
前記部品が前記取付穴に取り付けられた状態で、該取付穴の周縁に当接しない逃げ部を該張り出し部の頂部から該窪み部に至る傾斜部に備えることを特徴とする部品取付用のクリップ。
【請求項2】
前記逃げ部は、前記内部空間側に突出するように形成された凹部である請求項1に記載の部品取付用のクリップ。
【請求項3】
基台を有する部品と、
取付穴をもつ取付部材と、
一対の側壁の間に内部空間をもち先端部において前記一対の側壁が連結され基端部において前記内部空間に連通する開口をもち、前記一対の側壁にそれぞれ前記取付穴の周縁に係止される弾性係止部及び前記基台に保持される保持部を配設したクリップと、
前記クリップの前記基端部を覆う覆い部及び前記開口から前記内部空間に嵌挿される脚部をもつキャップと、をもち、
前記クリップの前記保持部を前記基台に保持するとともに前記クリップを前記取付穴に嵌挿して前記弾性係止部を前記取付穴の周縁に係止し、前記キャップの前記覆い部で前記クリップの前記基端部を覆うと共に前記脚部を前記クリップの前記開口から前記内部空間に嵌挿させることにより前記部品を前記取付部材に取り付けてなる部品の取付構造であって、
前記クリップの前記弾性係止部は、一方の端部が前記側壁に連結され、他方の端部が自由端で該他方の端部よりも前記内部空間側に窪んで前記取付穴に係止される窪み部と該窪み部よりも外側に張り出した張り出し部とを有し、
前記部品が前記取付穴に取り付けられた状態で、該取付穴の周縁に当接しない逃げ部を該張り出し部の頂部から該窪み部に至る傾斜部に備えることを特徴とする部品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−211649(P2012−211649A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77780(P2011−77780)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】