説明

部品搬送装置

【課題】低コストかつ簡単な構造で部品保持体を平行移動後回転運動できるとともに高速かつ応答性の良好な移動ができる部品搬送装置を提供する。
【解決手段】この部品搬送装置31は、搬送装置本体35と、この搬送装置本体33に設けられた第1のカム溝55と、搬送装置本体33に第1のカム溝55に沿う方向に並んで設けられた第2のカム溝61と、第1のカム溝55に係合する第1のローラ51と第2のカム溝61に係合する第2のローラ52とを有するとともに部品を保持する部品保持体45と、この部品保持体45を搬送方向に駆動する駆動体35とを有する部品搬送装置31において、第2のカム溝61は、第1のカム溝61の端部より搬送方向前方側に延びた円弧部69を有し、この円弧部69は前記第1のカム溝の端部を中心とする円弧状に形成され、部品保持体45は、水平駆動体35に対して回動可能かつ搬送方向に交わる方向に移動可能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を保持して所定の距離の移動するとともに部品の方向を変換することも可能な部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を保持して搬送方向に搬送するとともに回動する部品搬送装置としては、図3及び図4に示すような部品搬送装置11が知られている。この部品搬送装置11は、搬送装置本体13を有しており、この搬送装置本体13には水平方向の移動を行う水平駆動体15を介して水平移動体17が設けられている。この水平移動体17には傾斜駆動体19を介して回転駆動体21が傾斜方向移動可能に設けられている。この回転駆動体21には部品保持体23が回動可能に保持されており、この部品保持体23には部品25が保持されている。
【0003】
このような構成において、この部品搬送装置11は、まず、傾斜方向駆動体19を作動させて、回転駆動体21及びこの回転駆動体21に保持されている部品保持体23を斜め下方に移動させ、部品保持体23を位置Aから位置Bに平行移動させる。次いで、水平駆動体15を作動させて水平移動体17を水平移動させる。すると、部品保持体23は、位置Bから位置Cまで平行移動する。次に、回転駆動体21を作動させると、部品保持体23は位置Cから位置Dまで回動する。このようにして、この部品搬送装置11は、部品保持体23に対して、傾斜方向の平行移動と水平方向の平行移動と回動運動を行うようになっている。
【0004】
しかしながら、この部品搬送装置11は、部品保持体23に上記のような運動をさせるために、水平駆動体15、傾斜駆動体19、回転駆動体21の3つの駆動体を必要とし、構造が複雑になるとともに、コストが嵩むという問題点があった。また、水平移動体17に傾斜駆動体19、回転駆動体21が搭載されているため、移動部分の重量が嵩み、高速かつ応答性のよい移動ができないという問題点があった。
【0005】
また、これに対して、特許文献1ないし4には、カム機構を利用した搬送装置が開示されているが、部品保持体を平行移動後回転運動させるものは示されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平7−144734
【特許文献2】特開平5−139533
【特許文献3】特開平2−41840
【特許文献4】特開平7−67965
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決することをその課題とし、低コストかつ簡単な構造で部品保持体を水平移動のみならず回動移動できるとともに、高速かつ応答性の良好な移動ができる部品搬送装置を提供することを目的している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、搬送装置本体(33)と、この搬送装置本体(33)に搬送方向に設けられた第1のカム溝(55)と、搬送装置本体(33)に、第1のカム溝(55)に沿う方向に並んで設けられた第2のカム溝(61)と、第1のカム溝(55)に係合する第1の従動節(51)と第2のカム溝(61)に係合する第2の従動節(52)とを有するとともに部品を保持する部品保持体(45)と、この部品保持体(45)を搬送方向に駆動する駆動体(35)とを有する部品搬送装置において、第2のカム溝(61)は、第1のカム溝(55)より長く形成された延長溝部(69)を有し、部品保持体(45)は、駆動体(35)に対して回動可能かつ上下方向に移動可能に保持されている手段を採用することができる。この手段によれば、部品保持体の水平および回動移動を1つの駆動装置で行うことができる。したがって、低コストかつ簡単な構造の部品搬送装置を提供できるとともに、移動部分の重量を軽減することができ、高速かつ応答性のよい移動が可能となる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、延長溝部(69)は、第1のカム溝(55)の端部(71)を中心とする円弧状に形成されている手段を採用することができる。このようにすれば、部品保持体の回動移動をより確実に行うことができる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、第1の従動節(51)は第1のローラであり、第2の従動節(52)は第2のローラであり、部品保持体(45)は、第1のローラ(51)と第2のローラ(52)を介して第1のカム溝(55)と第2のカム溝(61)によって重量を支持されている手段を採用することができる。したがって、部品保持体の移動重量を軽減させることができ、高速移動、高速応答が可能で衝撃の少ない部品移動装置を提供することができる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、駆動体(35)には、この駆動体(35)によって水平方向に駆動される水平移動体(37)が設けられ、この水平移動体(37)には、上下方向移動機構(40)を介して上下方向移動体(43)が上下方向移動自在に設けられ、この上下方向移動体(43)には、部品保持体(45)が軸(47)によって回動自在に軸支され、部品保持体(45)において、軸(47)は、第1のローラ(51)と第2のローラ(52)の中間点に位置せしめられている手段を採用することができ、このようにすることにより、上記目的を確実に達成することができる。
【0012】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0014】
図1及び図2は、本発明の部品搬送装置31を示している。この部品搬送装置31は、搬送装置本体33を有している。この搬送装置本体33には、水平駆動体35を介して水平移動体37が水平移動自在に設けられている。この水平移動体37には、上下方向に昇降レール39が設けられており、この昇降レール39には、ガイド部材41を介してアーム43が昇降自在に設けられている。ここで、昇降レール39とガイド部材41は、垂直方向移動機構40を構成する。このアーム43には、部品保持体45が軸47で回転自在に軸支されている。この部品保持体45は、その上端部に部品49を保持している。また、この部品保持体45の両側には、軸47から下方位置に一対の第1のローラ51が外方に突出して設けられている。また、軸47から上方で軸47と第1のローラ51の距離と等距離の位置に一対の第2のローラ52が外方に突出して設けられている。
【0015】
一方、搬送装置本体33は、その搬送方向の両側に、図2に示すように、一対の板状のカムプレート53を有している。この一対のカムプレート53の内側面には、第1のカム溝55が形成されている。この第1のカム溝55は、傾斜して形成された第1の傾斜部57とこの第1の傾斜部57に接続され、搬送方向に水平に形成された第1の水平部59とを有している。この第1のカム溝55の上方には、この第1のカム溝55と平行に第2のカム溝61が形成されている。この第2のカム溝61は、第1の傾斜部57に平行に形成された第2の傾斜部63と、第1の水平部59と平行に形成された第2の水平部65が形成されている。ここで、第1の傾斜部57と第2の傾斜部63との垂直方向距離、第1の水平部59と第2の水平部65との垂直方向距離は、ともに部品保持体45に設けられた第1のローラ51と第2のローラ52の距離に等しくなされている。そして、第2のカム溝61は、第2の水平部65の第2の傾斜部63と反対側の端部67に、この端部67から延在する円弧部69を有している。この円弧部69は、第1のカム溝55の第1の傾斜部57と反対側の端部71を中心とし第1のカム溝55と第2のカム溝61との距離を半径とした円弧状に形成されている。
【0016】
そして、部品保持体45は、その下部両側に設けられた一対の第1のローラ51を両側のカムプレート53に形成された第1のカム溝55に係合させ、上部両側に設けられた一対の第2のローラ52をカムプレート53に形成された第2のカム溝61に係合させてその重量を支持されている。
【0017】
このような構成において、部品保持体45が図1中Aにある状態から水平駆動体35を作動させて水平移動体37を図1中左方向へ移動させると、第1のローラ51は第1の傾斜部57に沿って、第2のローラ52は第2の傾斜部63に沿って移動する。ここで、第1の傾斜部57と第2の傾斜部63との垂直方向距離は、常に第1のローラ51と第2のローラ52との距離に等しくなされているから、部品保持体45は回動することなく、直立状態のまま斜め下方へ平行移動して位置Bに到達する。すなわち、アーム43は昇降レール39に沿って下降するが、部品保持体45はアーム43に対して回動することなく直立状態を保持したまま移動する。
【0018】
次に、この位置Bから、水平駆動体を35作動させて水平移動体37を図1中左に移動させると、第1のローラ51は第1の水平部59に沿って、第2のローラ52は第2の水平部65に沿って図1中左へ移動する。ここで、第1の水平部59と第2の水平部65との垂直方向距離は、第1のローラ51と第2のローラ52との距離に等しくなされているから、部品保持体45はアーム43に対して回動することなく、直立状態のまま端部67,71まで平行移動して位置Cに到達する。
【0019】
さらに、この位置Cから、水平駆動体35を作動させて水平移動体37を図1中左に移動させると、第1のローラ51は第1の水平部59の端部71に留まるのに対して、第2のローラ52は第2の水平部65に続く円弧部69内を移動しその端部73まで移動する。ここで、円弧部69は第1の水平部59の端部71を中心とした円弧状に形成されているから、部品保持体45は端部71中心として図1中反時計方向に回転して位置Dに到達する。
【0020】
このように、この部品搬送装置31にあっては、水平移動体37に、上下方向に昇降レール39が設けられ、この昇降レール39に、ガイド部材41を介してアーム43が昇降自在に設けられ、このアーム43には、部品保持体45が軸47で回転自在に軸支され、この部品保持体45には、軸47の上下等距離の位置に第1のローラ51と第2のローラ52が設けられ、また第1の傾斜部57と第2の傾斜部63との垂直方向距離、第1の水平部59と第2の水平部65との垂直方向距離は、常に第1のローラ51と第2のローラ52との距離に等しくなされ、さらに円弧部69は第1の水平部59の端部71を中心とした円弧上に形成されているから、単一の駆動体35を作動させて水平移動体37を水平移動させるだけで、部品保持体45は、位置Aから回動することなく直立状態のまま斜め下方へ平行移動して位置Bに到達し、直立状態のまま端部67,71まで平行移動して位置Cに到達し、その後部品保持体45は端部71中心として回転して位置Dに到達する。
【0021】
したがって、傾斜移動、水平移動、回転移動の各移動毎に駆動装置を必要とせず、構造を簡素化することができるとともに、コストの削減を図ることができる。また、駆動装置を1つにすることができるため、移動部分の重量を軽減することができ、したがって、高速かつ応答性のよい移動装置を提供することができる。
【0022】
さらに、部品保持体45は、第1のローラ51、第2のローラ52を、第1のカム溝55、第2のカム溝61に係合させて支持されているから、部品保持体45の重量のほとんどを、第1のカム溝55、第2のカム溝61で支えることができる。したがって、移動重量を軽減することができ、高速かつ応答性の良好で衝撃の少ない移動装置を提供することができる。
【0023】
なお、上記実施の形態にあっては、一対のカムプレート53の間を部品保持体45が通過するような構成になされているが、これに限る必要はなく、部品保持体45の片側にのみカムプレートを配置してもよいし、また、部品保持体を対向する一対のプレートで構成し、この一対のプレート間にカムプレートを配置してもよい。
【0024】
また、上記実施の形態にあっては、円弧部69は第2のカム溝61に設けられているが、これに限る必要はなく、第1のカム溝に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態である部品搬送装置を示す概略正面図。
【図2】部品保持体が位置Aにあるときの側断面図。
【図3】従来の部品搬送装置を示す概略正面図。
【図4】部品保持体が位置Aにあるときの側面図。
【符号の説明】
【0026】
33 搬送装置本体
35 水平駆動体
37 水平移動体
39 昇降レール
40 垂直方向移動機構
41 ガイド部材
43 アーム
45 部品保持体
47 軸部
51 第1のローラ
52 第2のローラ
55 第1のカム溝
57 第1の傾斜部
63 第2の傾斜部
61 第2のカム溝
69 円弧部
71 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置本体(33)と、
この搬送装置本体(33)に搬送方向に設けられた第1のカム溝(55)と、
前記搬送装置本体(33)に、前記第1のカム溝(55)に沿う方向に並んで設けられた第2のカム溝(61)と、
前記第1のカム溝(55)に係合する第1の従動節(51)と前記第2のカム溝(61)に係合する第2の従動節(52)とを有するとともに部品を保持する部品保持体(45)と、
この部品保持体(45)を前記搬送装置本体(33)に対して前記第1および第2のカム溝(55,61)に沿う方向に駆動する駆動体(35)と、
を有する部品搬送装置において、
前記第2のカム溝(61)は、前記第1のカム溝(55)より長く形成された延長溝部(69)を有し、前記部品保持体(45)は、前記駆動体(35)に対して回動可能かつ上下方向移動可能に保持されていることを特徴とする部品搬送装置。
【請求項2】
前記延長溝部(69)は、前記第1のカム溝(55)の端部(71)を中心とする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の部品搬送装置。
【請求項3】
前記第1の従動節(51)は第1のローラであり、前記第2の従動節(52)は第2のローラであり、前記部品保持体(45)は、前記第1のローラ(51)と前記第2のローラ(52)を介して前記第1のカム溝(55)と前記第2のカム溝(61)によって重量を支持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の部品搬送装置。
【請求項4】
前記駆動体(35)には、この駆動体(35)によって水平方向に駆動される水平移動体(37)が設けられ、この水平移動体(37)には、上下方向移動機構(40)を介して上下方向移動体(43)が上下方向移動自在に設けられ、この上下方向移動体(43)には、前記部品保持体(45)が軸(47)によって回動自在に軸支され、前記部品保持体(45)において、前記軸(47)は、前記第1のローラ(51)と前記第2のローラ(52)の中間点に位置せしめられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載の部品搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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