説明

部品移送装置

【課題】部品を所定供給位置から確実に取上げて所定移送先位置に移送する部品移送装置を提供することにある。
【解決手段】部品を自動的に所定供給位置から取上げて所定移送先位置に移送する部品移送装置であって、前記部品を圧縮エアで吸着保持する吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを移動させる吸着ヘッド移動手段と、前記圧縮エアの圧力を検出するエア圧センサと、前記吸着ヘッドを前記所定供給位置にその真上から接近移動させた後、前記エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき前記吸着ヘッドが前記部品を吸着したか否かを判断し、前記部品を吸着しない場合は、前記吸着ヘッドを上下方向に僅かに往復移動させ、次いで互いに直交する水平な2方向へ僅かに往復移動させ、前記接近移動、前記上下移動および前記水平移動の何れかによって前記部品を吸着した場合は前記吸着ヘッドを前記所定移送先位置に移動させる作動制御手段と、を具えてなる部品移送装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネジ等の部品を装着等のために自動的に所定供給位置から取上げて所定移送先位置に移送する部品移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述の如き装置としては例えば、ネジ供給機からネジを取上げてネジ締め位置へ移送し、ネジ締めを行う作業ロボットがあり、この作業ロボットにより、市販の自動機用ネジ供給機から、その作業ロボットが把持しているモータ駆動式ドライバの先端に、圧縮エアで生じさせた負圧での吸着によってネジを取上げる場合、先ず作業ロボットを操作し、ネジ供給機からドライバの先端でネジを取上げる軌跡を作業ロボットにティーチングして、作業ロボットにネジを取上げさせている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−320289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の装置では、作業ロボットの繰返し位置決め精度の誤差や、ネジ供給機のネジ供給部の繰返し位置決め精度の誤差等が積み重なってティーチングポイントにずれが生じたり、ネジ供給機のネジ供給部でネジが傾いていたりして、ネジの取上げに失敗する場合があった。
【0005】
それゆえこの発明は、ネジ等の部品の供給機等の繰返し位置決め精度の誤差や部品の傾き等があっても部品の取上げおよび移送を確実に行うことができる部品移送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記従来技術の課題を有利に解決するものであり、この発明の部品移送装置は、部品を自動的に所定供給位置から取上げて所定移送先位置に移送する部品移送装置において、前記部品を圧縮エアで吸着保持する吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを移動させる吸着ヘッド移動手段と、前記圧縮エアの圧力を検出するエア圧センサと、前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定供給位置にその真上から接近移動させた後、前記エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき前記吸着ヘッドが前記部品を吸着したか否かを判断し、前記吸着ヘッドが前記部品を吸着しない場合は、前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定供給位置から上下方向に僅かに往復移動させながら前記エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき前記吸着ヘッドが前記部品を吸着したか否かを判断し、前記吸着ヘッドが未だ前記部品を吸着しない場合は、前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定供給位置から互いに直交する水平な2方向へ僅かに往復移動させながら前記エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき前記吸着ヘッドが前記部品を吸着したか否かを判断し、前記接近移動、前記上下移動および前記水平移動の何れかによって前記吸着ヘッドが前記部品を吸着した場合は、前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定移送先位置に移動させる作動制御手段と、を具えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
かかる部品移送装置にあっては、作動制御手段が、吸着ヘッド移動手段を作動させて吸着ヘッドを所定供給位置にその真上から接近移動させた後、エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき吸着ヘッドが部品を吸着したか否かを判断し、吸着ヘッドが部品を吸着しない場合は、吸着ヘッド移動手段を作動させて吸着ヘッドを所定供給位置から上下方向に僅かに往復移動させながらエア圧センサの出力信号の変化状態に基づき吸着ヘッドが部品を吸着したか否かを判断し、吸着ヘッドが未だ部品を吸着しない場合は、吸着ヘッド移動手段を作動させて吸着ヘッドを所定供給位置から互いに直交する水平な2方向へ僅かに往復移動させながらエア圧センサの出力信号の変化状態に基づき吸着ヘッドが部品を吸着したか否かを判断し、それら接近移動、上下移動および水平移動の何れかによって吸着ヘッドが部品を吸着した場合は、吸着ヘッド移動手段を作動させて吸着ヘッドを所定移送先位置に移動させる。
【0008】
従って、この発明の部品移送装置によれば、最初の真上からの接近移動で吸着ヘッドが部品を吸着しなかった場合に、吸着ヘッドを僅かに上下移動および水平移動させることで、ティーチングポイントがずれていたり部品が傾いていたりしても部品を確実に取上げて移送することができる。
【0009】
なお、この発明の部品移送装置においては、前記所定供給位置へ向けてエアを噴射するエア噴射器を具え、前記作動制御手段は、前記水平移動によっても前記吸着ヘッドが未だ前記部品を吸着しない場合は、前記エア噴射器を作動させて前記所定供給位置へ向けてエアを噴射し、前記部品を排除することとしても良い。
【0010】
このようにすれば、一旦取上げた部品を所定供給位置に落としてしまった場合に、その部品を所定供給位置付近からエアで吹飛ばして排除するので、次の部品の供給や吸着ヘッドによる取上げが、その落下した部品で妨げられるのを防止することができる。
【0011】
また、この発明の部品移送装置においては、前記部品としてのネジをモータで回転させて締め込むドライバを具え、前記作動制御手段は、前記吸着ヘッドを前記ネジと一緒に前記所定移送先位置に移動させた後、前記ドライバを作動させて前記ネジを締め込むこととしても良い。
【0012】
このようにすれば、当該部品移送装置によって、多数のネジを自動的に連続して締着する自動ネジ締め装置を構成することができる。
【0013】
さらに、この発明の部品移送装置においては、前記所定供給位置および前記所定移送先位置の少なくとも一方を同時に撮像する2台のビデオカメラと、前記2台のビデオカメラからの画像信号に基づき前記所定供給位置および前記所定移送先位置の少なくとも一方を認識して出力する画像処理手段と、を具え、前記吸着ヘッド移動手段は多関節型ロボットであり、前記作動制御手段は、前記画像処理手段からの位置信号に基づき前記多関節型ロボットの作動を制御することとしても良い。
【0014】
このようにすれば、多関節型ロボットへの所定供給位置や所定移送先位置が当初のティーチング位置から動いてしまっても、再度のティーチングを省略して部品移送を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の部品移送装置の一実施例としての自動ネジ締め装置の全体構成を示す略線図である。
【図2】上記実施例の自動ネジ締め装置の要部を示す説明図である。
【図3】上記実施例の自動ネジ締め装置の動作制御CPUが実行するプログラムを示すフローチャートである。
【図4】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部にネジが供給された状態を示す説明図である。
【図5】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部にネジが供給されていずドライバを待機させている状態を示す説明図である。
【図6】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部にドライバを移動させた状態を示す説明図である。
【図7】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部でドライバを上下移動させている状態を示す説明図である。
【図8】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部でドライバを水平移動させている状態を示す説明図である。
【図9】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部にエア噴射器でエアを噴射している状態を示す説明図である。
【図10】この発明の部品移送装置の他の一実施例としての自動ネジ締め装置の全体構成を示す略線図である。
【図11】上記実施例の自動ネジ締め装置の要部を示す説明図である。
【図12】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部に設けられたクロスマークを示す説明図である。
【図13】上記実施例の自動ネジ締め装置においてネジ供給機のネジ供給部に設けられたクロスマークの位置を認識するための2台のビデオカメラを示す説明図である。
【図14】上記実施例の自動ネジ締め装置の動作制御CPUが実行するプログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づく実施例によって詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の部品移送装置の一実施例としての自動ネジ締め装置の全体構成を示す略線図であり、図2は、上記実施例の自動ネジ締め装置の要部を示す説明図である。
【0017】
この実施例の自動ネジ締め装置は、部品としてのネジ1を自動的にネジ供給機Fの前部上の所定のネジ供給位置FPから取上げて所定移送先位置としての図示しないネジ締め位置へ移送し、そのネジ締め位置でネジ1を他の部品に締め込むものであって、図1に示すように、コンプレッサ2からの圧縮エアで生じさせた負圧によりネジ1を吸着保持する通常の吸着ヘッド3と、その吸着ヘッド3の中心に収容されたドライバビットを電気モータで回転させる電動ドライバ4と、その電動ドライバ4を吸着ヘッド3とともに移動させる吸着ヘッド移動手段としての、例えば本願出願人が市販している上体ヒューマノイドロボット(商品名「HIRO」)の双腕の片方である多関節腕5と、コンプレッサ2と吸着ヘッド3との間に介挿されたエア圧センサ6と、もう一台のコンプレッサ7から圧縮エアを供給されてそのエアをネジ供給機F上のネジ供給位置FPへ向けて噴射するエア噴射器8と、多関節腕5等の作動を制御するための作動制御手段としての、通常のコンピュータを有する作動制御装置9とを具えている。
【0018】
ネジ供給機Fは、例えば(株)大武・ルート工業の商品名「クイッチャーNJRタイプ」等の市販のもので、その前部上面の直線状のガイド溝Gに沿って振動でネジ1を前方へ押出して、そのガイド溝Gに直交する横方向バーLの1箇所の溝にネジ1の軸部を受取らせ、その横方向バーLを横に移動させることでネジ1をガイド溝Gの先端位置からネジ供給位置FPへ移動させ、ネジ供給位置FPからネジ1が取上げられたら横方向バーLを元の位置へ移動させることで次のネジ1の軸部を溝に受取らせる、という作動を繰返して、複数のネジ1を1つずつ順次に供給する。またネジ供給機Fは、そのネジ供給位置FPを挟んで互いに対向する位置に発光素子と受光素子とを持つネジ検知センサSを有し、このネジ検知センサSは、その発光素子からの光をネジ1が遮って受光素子が受光しないと、ネジ供給位置FPにネジ1があることを示す信号を作動制御装置9へ出力する。
【0019】
エア圧センサ6は、コンプレッサ2からの圧縮エアの圧力を検出するものであり、吸着ヘッド3がネジ1を吸着すると、コンプレッサ2からの圧縮エアの流れに抵抗が生じてその圧力が上昇するので、エア圧センサ6はこの圧縮エアの圧力変化に基づき、ネジ1の吸着の有無を示す信号を作動制御装置9へ出力する。
【0020】
多関節腕5は、図2に示すように、ネジ供給位置FPに対し所定位置に配置された図示しない胴体に対し上腕5aをピッチ軸およびヨー軸周りに2自由度で揺動させる肩関節5bと、上腕5aに対し前腕5cをピッチ軸周りに1自由度で揺動させる肘関節5dと、前腕5cに対しエンドエフェクタとしての電動ドライバ4を吸着ヘッド3とともにピッチ軸、ロール軸およびヨー軸周りに3自由度で回動させる手首関節5eとを有している。
【0021】
作動制御装置9は、上述した多関節腕5の各関節のモータに駆動電流を供給するモータドライバ9aと、ネジ検知センサSおよびエア圧センサ6からの出力信号を入力するとともに、コンプレッサ7にエア噴射器8への圧縮エアの供給を指示する信号を出力するインターフェース9bと、あらかじめ与えられたプログラムに基づき演算処理を行ってそれらモータドライバ9aおよびインターフェース9bに指令信号を出力する中央処理ユニット(CPU)9cとを有しており、この作動制御装置9は、多関節腕5の作動により電動ドライバ4を移動させて吸着ヘッド3をネジ供給機Fのネジ供給位置FPと上記ネジ締め位置とに位置させるようにあらかじめティーチングされた後、図3のフローチャートで示す処理を実行する。
【0022】
このフローチャートにおいて作動制御装置9は、先ずステップS1で、多関節腕5を作動させて、ネジ供給機Fのネジ供給位置FPの真上に電動ドライバ4を吸着ヘッド3とともに移動させ、次いでステップS2で、ネジ検知センサSの出力信号から、ネジ供給位置FPにネジ1があるか否かを判断する。すなわち、前述のように発光素子からの光を受光素子が受光しないと、図4に示すように、ネジ供給位置FPにネジ1があると判断し、発光素子からの光を受光素子が受光すると、図5に示すように、ネジ1が詰まったり無くなったりした等、何らかの理由でネジ供給位置FPにネジ1がないと判断して、ネジ供給位置FPにネジ1が供給されるまで、電動ドライバ4を吸着ヘッド3とともにネジ供給位置FPの真上に待機させる。これにより、ネジ供給位置FPに確実にネジがある時だけ多関節腕5が動作を行うので、電動ドライバ4にネジ1が供給されていないにもかかわらず動作を行うことがない。
【0023】
ステップS2で、ネジ検知センサSの出力信号からネジ供給位置FPにネジ1があると判断したら作動制御装置9は、次にステップS3で、電動ドライバ4を下降させて吸着ヘッド3をネジ供給位置FPの1.5mm上に移動させた後、ステップS4で、図6に示すように、電動ドライバ4をさらに下降させて吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させる。このように吸着ヘッド3をネジ供給位置FPの僅かに上で一旦停止させてから、ネジ1を吸着する位置に移動させることによって、ネジ取上げ時の多関節腕5ひいては吸着ヘッド3の振動を抑え、オーバーシュートをほとんどすることがなく吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させることができる。
【0024】
次に作動制御装置9は、ステップS5で、エア圧センサ6の出力信号から、コンプレッサ2からの圧縮エアのエア圧があらかじめ設定した閾値まで上昇したか否かを調べ、その結果エア圧が閾値まで上昇していれば吸着ヘッド3がネジ1を吸着しており、エア圧が閾値まで上昇していなければ吸着ヘッド3がネジ1を吸着していないと判断する。そしてネジ1を吸着していると判断した場合はステップS6で、電動ドライバ4を吸着ヘッド3とともに所定速度、例えば250mm/秒で引上げる。これにより多関節腕5は電動ドライバ4の先端部にネジ1を吸着したことを検知して次の動作を行うので、ネジ1を電動ドライバ4に吸着していない状態でネジ締めを行うことがない。また、電動ドライバ4を引上げる際の移動速度を250mm/秒以下にすることで、ネジ1とネジ供給機Fとの間の摩擦を抑えることができるので、ネジ1がネジ供給機Fに引掛かる等して吸着ヘッド3から落下するのを防止することができる。
【0025】
一方、ステップS5でネジ1を吸着していないと判断した場合はステップS7で、最初に吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させてから100m秒が経過したか否かを判断し、経過していればステップS8で、電動ドライバ4を僅かに引上げて吸着ヘッド3をネジ供給位置FPの1.5mm上に移動させた後、ステップS5へ戻る。そしてこの2回目のステップS5でネジ1を吸着していないと判断し、さらにステップS7で最初に吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させてから500m秒は経過していないと判断した場合はステップS9で、最初に吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させてから300m秒が経過したか否かを判断し、経過していればステップS10で、電動ドライバ4を下降させて吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させた後、ステップS5へ戻る。
【0026】
そしてこの3回目のステップS5で未だネジ1を吸着していないと判断し、さらにステップS7で最初に吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させてから500m秒経過したと判断した場合はステップS8で、電動ドライバ4を僅かに引上げて吸着ヘッド3をネジ供給位置FPの1.5mm上に移動させた後、ステップS5へ戻る。そしてこの4回目のステップS5で未だネジ1を吸着していないと判断し、さらにステップS7で最初に吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させてから900m秒は経過していないと判断した場合はステップS9で、最初に吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させてから700m秒が経過したか否かを判断し、経過していればステップS10で、電動ドライバ4を下降させて吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させた後、ステップS5へ戻る。そしてこの5回目のステップS5で未だネジ1を吸着していないと判断し、さらにステップS7で最初に吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させてから900m秒経過したと判断した場合はステップS8で、電動ドライバ4を僅かに引上げて吸着ヘッド3をネジ供給位置FPの1.5mm上に移動させた後、ステップS5へ戻る。
【0027】
この一連の動作で、図7に矢印Zで示すように、吸着ヘッド3をネジ供給位置FPとその僅かに上の位置との間で上下移動させ、移動させる度にエア圧センサ6の信号を確認して、コンプレッサ2からの圧縮エアのエア圧があらかじめ設定した閾値まで上昇していた場合、ネジ1が電動ドライバ4の先端部に吸着したとして電動ドライバ4を引上げる。吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに移動させても、僅かな位置のずれやネジ1の傾きによってネジ1を吸着できない場合があり、この場合、吸着ヘッド3をネジ供給位置FPから僅かに引上げることによって、ネジ1を吸着できる場合がある。また、吸着ヘッド3を一度引上げただけではネジ1を吸着できなくても、上下動を繰返すことでネジ1を吸着できることがあるので、この僅かな上下移動によってネジ取上げの成功率を格段に向上させることができる。
【0028】
そして、上記のように吸着ヘッド3の上下動を繰返してもエア圧が上昇しなかった場合に、作動制御装置9は、ステップS11で、それが吸着ヘッド3をネジ供給位置FPに位置させて行った取上げ失敗1回目か否かを判断し、取上げ失敗1回目の場合は、ステップS12で、図8に矢印+Xで示すように、電動ドライバ4をネジ供給機Fの横方向である水平なX方向へネジ供給位置FPから+0.7mm移動させてから、上記ステップS5およびS7からS10までの処理による上下動を繰返し、この間にエア圧が上昇すればステップS6へ進む。一方、この間にエア圧が上昇しななかった場合は、ステップS13で、それが吸着ヘッド3をネジ供給位置FPからX方向へ+0.7mm移動させて行った取上げ失敗2回目か否かを判断し、取上げ失敗2回目の場合は、ステップS14で、図8に矢印−Xで示すように、電動ドライバ4を上記X方向へ−1.4mm移動させてから、上記ステップS5およびS7からS10までの処理による上下動を繰返し、この間にエア圧が上昇すればステップS6へ進む。
【0029】
さらに、この間にエア圧が上昇しななかった場合は、ステップS15で、それが吸着ヘッド3をネジ供給位置FPからX方向へ−1.4mm移動させて行った取上げ失敗3回目か否かを判断し、取上げ失敗3回目の場合は、ステップS16で、図8に矢印+Yで示すように、電動ドライバ4を一旦元のネジ供給位置FPへ戻した後、上記X方向と直交する水平なY方向へ+0.7mm移動させてから、上記ステップS5およびS7からS10までの処理による上下動を繰返し、この間にエア圧が上昇すればステップS6へ進む。一方、この間にエア圧が上昇しななかった場合は、ステップS17で、それが吸着ヘッド3をネジ供給位置FPからY方向へ+0.7mm移動させて行った取上げ失敗4回目か否かを判断し、取上げ失敗4回目の場合は、ステップS18で、図8に矢印−Yで示すように、電動ドライバ4を上記Y方向へ−1.4mm移動させてから、上記ステップS5およびS7からS10までの処理による上下動を繰返し、この間にエア圧が上昇すればステップS6へ進む。
【0030】
上述した処理でもネジ1の取上げに失敗した場合は、何らかの原因でティーチングポイントが大きくずれてしまった可能性があるので、作動制御装置9は、ステップS19で、電動ドライバ4を引上げ、人がネジ1を吸着ヘッド3に吸着させる。これにより、多関節腕5やネジ供給機Fのネジ供給の繰返し位置決め精度の誤差で、多少ネジ取上げ位置がずれても、多関節腕5のティーチングポイントの微調整をすることなくネジ1を取上げることができる。なお、この場合は後述するネジ締め後に、ネジ供給位置FPのティーチングがし直される。
【0031】
ネジ1の取上げに成功したら作動制御装置9は、ステップS21で、多関節腕5を作動させて、電動ドライバ4および吸着ヘッド3を上記ネジ締め位置の直上に移動させる。直上に移動したら、ステップS22で、エア圧センサ6の出力信号により、コンプレッサ2からの圧縮エアのエア圧があらかじめ設定した閾値まで上昇していることを確認し、エア圧が上昇していればネジ1は落下していないので、電動ドライバ4をネジ締め位置へ下降させながらネジ1を回転させてネジ締めを行う。ステップS22でエア圧が上昇していなかった場合は、ネジ1が電動ドライバ4および吸着ヘッド3の移動中に吸着ヘッド3から落下しているので、ネジ取上げをし直す。
【0032】
ところで、落下したネジ1がネジ供給機F上に残っているとそのネジ1が吸着ヘッド3の先端に当接して次のネジ1の吸着を邪魔する可能性があるので、作動制御装置9は、ネジ取上げをしなおす前にコンプレッサ7にエア噴射器8への圧縮エアの供給を指示し、図9に示すように、エア噴射機8からエアをネジ供給機F上へ噴射してその落下したネジ1を退けてから、次のネジ1のネジ取上げを行う。
【0033】
従って、この実施例の自動ネジ締め装置によれば、多関節腕5の振動やオーバーシュートを抑えてネジ取上げを行えるので、ネジ取上げの成功率を格段に向上させることができる。また、多関節腕5やネジ供給機Fの繰返し位置決め精度の誤差などによってネジ取上げに失敗しても、多関節腕5の位置を調整してネジ取上げを行うので、ネジ取上げに失敗する確率を低くすることができ、ネジ締め前にネジ1を落下させてしまっても落下したネジ1を退けてから次のネジ1のネジ取上げを行うので、ネジ1を取上げてネジ締め位置まで移動させることができる確率を極めて高くすることができる。
【0034】
図10は、この発明の部品移送装置の他の一実施例としての自動ネジ締め装置の全体構成を示す略線図、図11は、上記実施例の自動ネジ締め装置の要部を示す説明図である。
【0035】
この実施例の自動ネジ締め装置も、部品としてのネジ1を自動的にネジ供給機Fの前部上の所定のネジ供給位置FPから取上げて所定移送先位置としての図示しないネジ締め位置へ移送し、そのネジ締め位置でネジ1を他の部品に締め込むものであって、図10に示すように、コンプレッサ2からの圧縮エアで生じさせた負圧によりネジ1を吸着保持する通常の吸着ヘッド3と、その吸着ヘッド3の中心に収容されたドライバビットを電気モータで回転駆動する電動ドライバ4と、その電動ドライバ4を吸着ヘッド3とともに移動させる吸着ヘッド移動手段としての上記多関節腕5と、コンプレッサ2と吸着ヘッド3との間に介挿されたエア圧センサ6と、もう一台のコンプレッサ7から圧縮エアを供給されてそのエアをネジ供給機F上のネジ供給位置FPへ向けて噴射するエア噴射器8と、多関節腕5等の作動を制御するための作動制御手段としての、通常のコンピュータを有する作動制御装置9とを具えており、これらの構成は、先に実施例と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0036】
さらにこの実施例の自動ネジ締め装置は、上記多関節腕5を持つ上体ヒューマノイドロボットの作業領域を撮像するための2台のビデオカメラ10と、それらのビデオカメラ10を上記作業領域の上方の天井に吊下げ支持するための支柱11と、2台のビデオカメラ10からの画像からネジ供給位置FPの3次元座標を認識して出力する画像処理手段としての、通常のコンピュータを有する画像処理装置12と、を具えており、この画像処理装置12は、ビデオカメラ10および作動制御装置9との間で信号を送受信するためのインターフェース12aと、作動制御装置9からの指令によって、あらかじめ与えられたプログラムに基づき2台のビデオカメラ10に撮像を行わせ、それらの撮像した画像からネジ供給位置FPの3次元座標を演算してインターフェース12aに出力する中央処理ユニット(CPU)12bと、を有している。
【0037】
ここで、ネジ供給機Fの前部上のネジ供給位置FPの周辺には、図12に示すように、ネジ供給位置FPに対する所定位置の3箇所または4箇所にクロスマークCMが貼られており、また2台のビデオカメラ10は、図13に示すように、互いに所定距離離間するとともに光軸が互いに交差するように配置されている。
【0038】
作動制御装置9は、多関節腕5の作動により電動ドライバ4を移動させて吸着ヘッド3を上記ネジ締め位置に位置させるようにあらかじめティーチングされた後、図14のフローチャートで示す処理を実行する。
【0039】
このフローチャートにおいて作動制御装置9は、先ずステップS0で、画像処理装置12にネジ供給機Fのネジ供給位置FPの周辺のクロスマークCMの認識を指令し、これにより画像処理装置12は、三角測量の原理によって各クロスマークCMの3次元座標を演算し、それらの3次元座標からネジ供給位置FPの3次元座標および傾きを演算して、その位置情報を作動制御装置9に出力する。
【0040】
その後はステップS1以降で、ネジ供給位置FPにステップS0で得た位置情報を用いる以外は先の実施例における図3のフローチャートと同様にしてネジ取上げを行うので、ここでは説明を省略する。
【0041】
従って、この実施例の自動ネジ締め装置によれば、先の実施例と同様の作用効果をもたらし得るのに加えて、クロスマークCMの認識によってネジ供給機Fのネジ供給位置FPの位置座標と傾きを取得してネジ取上げを行うので、人が接触したり、ロボットが周辺装置に接触したりして、ネジ供給機Fの位置が移動してしまっても、ティーチングをし直すことなく直ぐにネジ取上げ作業を再開することができる。
【0042】
また、ネジ締め位置が上記上体ヒューマノイドロボットの双腕の他方の腕の先のハンドで保持している部品に設定されている場合には、ロボットの位置が移動してもロボットに対するネジ締め位置は変わらないので、クロスマークCMの認識と相俟って、作業ラインの変更などでロボットを移動させた後に、再びロボットを戻して作業させる場合も、ティーチングをし直すことなく直ぐに作業を再開することができ、従来のように再ティーチングをしていた作業時間を削減することができる。
【0043】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、上記実施例では吸着ヘッド移動手段として上体ヒューマノイドロボットの多関節腕5を用いたが、通常の多間接型やスカラ型の作業ロボット等を用いても良い。また上記実施例ではドライバとして電動ドライバ4を用いたが、エアモータでドライバビットを回転させるエアドライバを用いても良い。そして上記実施例では作動制御装置9と画像処理装置12とを別個に具えたが、1つのコンピュータで双方の機能を奏するように構成しても良い。
【0044】
さらに、ネジ供給機Fは、上記実施例のものに限られず、他の形式のものを用いてもよく、また搬送する部品は、上記実施例ではネジ1としたが、ギヤ等の機械部品やLSI等の電子部品等としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
かくしてこの発明の部品移送装置によれば、最初の真上からの接近移動で吸着ヘッドが部品を吸着しなかった場合に、吸着ヘッドを僅かに上下移動および水平移動させることで、ティーチングポイントがずれていたり部品が傾いていたりしても部品を確実に取上げて移送することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ネジ
2 コンプレッサ
3 吸着ヘッド
4 電動ドライバ
5 多関節腕
5a 上腕
5b 肩関節
5c 前腕
5d 肘関節
5e 手首関節
6 エア圧センサ
7 コンプレッサ
8 エア噴射機
9 作動制御手段
9a モータドライバ
9b インターフェース
9c CPU
10 ビデオカメラ
11 支柱
12 画像処理装置
12a インターフェース
12b CPU
CM クロスマーク
F ネジ供給機
FP ネジ供給位置
G ガイド溝
L 横方向バー
S ネジ検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を自動的に所定供給位置から取上げて所定移送先位置に移送する部品移送装置において、
前記部品を圧縮エアで吸着保持する吸着ヘッドと、
前記吸着ヘッドを移動させる吸着ヘッド移動手段と、
前記圧縮エアの圧力を検出するエア圧センサと、
前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定供給位置にその真上から接近移動させた後、前記エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき前記吸着ヘッドが前記部品を吸着したか否かを判断し、前記吸着ヘッドが前記部品を吸着しない場合は、前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定供給位置から上下方向に僅かに往復移動させながら前記エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき前記吸着ヘッドが前記部品を吸着したか否かを判断し、前記吸着ヘッドが未だ前記部品を吸着しない場合は、前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定供給位置から互いに直交する水平な2方向へ僅かに往復移動させながら前記エア圧センサの出力信号の変化状態に基づき前記吸着ヘッドが前記部品を吸着したか否かを判断し、前記接近移動、前記上下移動および前記水平移動の何れかによって前記吸着ヘッドが前記部品を吸着した場合は、前記吸着ヘッド移動手段を作動させて前記吸着ヘッドを前記所定移送先位置に移動させる作動制御手段と、
を具えてなる部品移送装置。
【請求項2】
前記所定供給位置へ向けてエアを噴射するエア噴射器を具え、
前記作動制御手段は、前記水平移動によっても前記吸着ヘッドが未だ前記部品を吸着しない場合は、前記エア噴射器を作動させて前記所定供給位置へ向けてエアを噴射し、前記部品を排除することを特徴とする、請求項1記載の部品移送装置。
【請求項3】
前記部品としてのネジをモータで回転させて締め込むドライバを具え、
前記作動制御手段は、前記吸着ヘッドを前記ネジと一緒に前記所定移送先位置に移動させた後、前記ドライバを作動させて前記ネジを締め込むことを特徴とする、請求項1または2記載の部品移送装置。
【請求項4】
前記所定供給位置および前記所定移送先位置の少なくとも一方を同時に撮像する2台のビデオカメラと、
前記2台のビデオカメラからの画像信号に基づき前記所定供給位置および前記所定移送先位置の少なくとも一方を認識して出力する画像処理手段と、
を具え、
前記吸着ヘッド移動手段は多関節型ロボットであり、
前記作動制御手段は、前記画像処理手段からの位置信号に基づき前記多関節型ロボットの作動を制御することを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項記載の部品移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−218484(P2011−218484A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90023(P2010−90023)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(591210600)川田工業株式会社 (57)