説明

部品組み付け構造および部品組み付け方法

【課題】一方の部品に設けたピンを他方の部品に形成した穴に挿入して位置決めした状態で、2部品を締結部材により締結する場合、2部品間の位置精度を向上させる。
【解決手段】一方の部品1の穴13に他方の部品2のピン21を圧入して、ピン21が穴13内でがたつかないようにして、2部品間1、2の位置精度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部品を締結部材により締結する部品組み付け構造および部品組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の部品組み付け構造は、一方の部品に設けた円柱状のピンを他方の部品に形成した円形の穴に挿入して位置決めした状態で、2部品を締結部材により締結するようにしている。
【0003】
また、他の従来の部品組み付け構造は、治具に円柱状のピンを設け、締結される2部品に円形の穴を形成し、ピンを穴に挿入することにより2部品を治具に仮固定した状態で2部品を締結部材により締結し、その後に治具を2部品から取り外すようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のいずれの部品組み付け構造においても、ピンと穴は隙間嵌めの寸法関係になっているためピンと穴との間に隙間が発生する。そして、その隙間の分、ピンが穴内で2次元的に相対移動できる(すなわち、がたつく)ため、ピンと穴の隙間は2部品間の位置精度を低下させる要因になる。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、2部品間の位置精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴では、一方の部品(1)の穴(13)に他方の部品(2)のピン(21)を圧入して一方の部品(1)と他方の部品(2)を位置決めした状態で、一方の部品(1)と他方の部品(2)を締結部材(3)により締結する部品組み付け構造であって、穴(13)にピン(21)が圧入されて、穴(13)およびピン(21)のうち少なくとも一方が塑性変形する構成を備えている。このような構成では、ピン(21)は穴(13)内でがたつかないため、2部品間(1、2)の位置精度が向上する。
【0007】
この場合、穴(13)は円形とし、ピン(21)の断面形状を三角形にすることができる。このようにすれば、穴(13)とピン(21)の接触線数は3本であり、最小限の接触線数にて2部品間(1、2)の2次元的な位置決めを行うことができる。そして、接触線数が少ないため小さな力でピン(21)を穴(13)に圧入することができる。
【0008】
本発明の第2の特徴では、穴およびピンの少なくとも一方を有する治具(6)と、治具(6)の穴に圧入されるピンまたは治具(6)のピンが圧入される穴を有する第1部品(1、4)と、治具(6)の穴に挿入されるピンまたは治具(6)のピンが挿入される穴を有する第2部品(5)とを準備し、穴にピンを圧入して穴およびピンのうち少なくとも一方を塑性変形させることにより、治具(6)と第1部品(1、4)とを仮固定する第1仮固定工程と、この第1仮固定工程と前後して、穴にピンを挿入して治具(6)と第2部品(5)とを仮固定する第2仮固定工程と、第1仮固定工程および第2仮固定工程後に第1部品(1、4)と第2部品(5)を締結部材(3)により締結する締結工程と、この締結工程後に治具(6)を第1部品(1、4)および第2部品(5)から取り外す治具外し工程とを備えている。
【0009】
このようにすれば、圧入されるピンは穴内でがたつかないため、治具(6)を介して位置決めされる第1部品(1、4)と第2部品(5)間の位置精度が向上する。
【0010】
第2の特徴において、治具(6)の材料強度を、第1部品(1、4)の材料強度よりも高くすれば、治具(6)の穴またはピンは塑性変形しないため、治具(6)は繰り返し使用することができる。
【0011】
第2の特徴において、治具(6)を金属製とし、第1部品(1、4)を樹脂製とすれば、治具(6)の穴またはピンは塑性変形しないため、治具(6)は繰り返し使用することができる。
【0012】
第2の特徴において、穴(13)は円形とし、ピン(61)の断面形状を三角形にすることができる。このようにすれば、穴(13)とピン(61)の接触線数は3本であり、最小限の接触線数にて治具(6)と第1部品(1、4)との間の2次元的な位置決めを行うことができる。そして、接触線数が少ないため、仮固定工程において小さな力でピン(61)を穴(13)に圧入することができるとともに、治具外し工程において小さな力で治具(6)を第1部品(1、4)から取り外すことができる。
【0013】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る部品組み付け構造を適用した構造体の平面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は図1のB部の拡大図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、部品としての電動アクチュエータ1と部品としてのケース部材2が、締結部材としての2個のビス3により締結されている。ケース部材2は、例えば車両用空調装置の空調ユニットケースであり、電動アクチュエータ1は、その空調ユニット内の空気通路を切り替えるドアを作動させるアクチュエータである。
【0016】
電動アクチュエータ1は、樹脂製のアクチュエータケース11内に図示しないサーボモータが収納され、アクチュエータケース11の外周に4個のフランジ状の取付部12を備えている。この取付部12には、貫通した円形の穴13が形成されている。
【0017】
ケース部材2は、樹脂よりなり、取付部12の穴13に圧入されるピン21が2個設けられている。ピン21の断面形状は、非円形であり、より詳細には三角形である。ピン21の外接円の径は、取付部12の穴13の径よりも大きく設定されている。ケース部材2は、ビス3が螺合される雄ねじ22が2個形成されている。
【0018】
電動アクチュエータ1のケース部材2への組み付けは次のように行われる。まず、電動アクチュエータ1の取付部12の穴13に、ケース部材2のピン21を圧入して、ケース部材2に対して電動アクチュエータ1を位置決めする。
【0019】
このとき、ピン21の外接円の径は取付部12の穴13の径よりも大きいため、ピン21が穴13に圧入され、ピン21は穴13内でがたつかない。したがって、ケース部材2に対する電動アクチュエータ12の位置精度が向上する。なお、ピン21の断面形状を三角形にした場合、ピン21と穴13の接触線数は3本であり、最小限の接触線数にて電動アクチュエータ1とケース部材2の2次元的な位置決めを行うことができる。
【0020】
アクチュエータケース11およびケース部材2はいずれも樹脂製であるため、ピン21が穴13に圧入される際には、三角形のピン21の頂部が塑性変形する。そして、ピン21の断面形状を三角形にした場合、接触線数が少ないため小さな力でピン21を穴13に圧入することができる。
【0021】
次に、ケース部材2に対して電動アクチュエータ1を位置決めした状態で、ビス3を電動アクチュエータ1の取付部12の穴13に挿入し、ビス3をケース部材2の雄ねじ22に螺合させることにより、電動アクチュエータ1のケース部材2への組み付けが完了する。
【0022】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図4は第2実施形態に係る部品組み付け構造を適用した構造体の分解斜視図である。
【0023】
本実施形態は、電動アクチュエータ1を、中間ケース部材4を介して本体ケース部材5に締結するようにしたものである。なお、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
図4に示すように、樹脂よりなる板状の中間ケース部材4は、電動アクチュエータ1と本体ケース部材5との間に配置される。そして、中間ケース部材4は、電動アクチュエータ1の取付部12に対向する位置に中間ケース第1ボス部41が2個設けられ、この中間ケース第1ボス部41には、ビス3が螺合される雄ねじ(図示せず)が形成されている。また、中間ケース部材4は、本体ケース部材5側に向かって突出する中間ケース第2ボス部42が4個設けられ、この中間ケース第2ボス部42には、ビス3が挿入される貫通したビス挿入穴43が形成されている。さらに、中間ケース部材4は、後述する治具6のピンが挿入される貫通したピン挿入穴44が3個形成されている。
【0025】
第2部品としての本体ケース部材5は樹脂よりなる。そして、本体ケース部材5は、中間ケース第2ボス部42に対向する位置に本体ケース第1ボス部51が4個設けられ、この本体ケース第1ボス部51には、ビス3が螺合される雄ねじ(図示せず)が形成されている。また、本体ケース部材5は、中間ケース部材4側に向かって突出する本体ケース第2ボス部52が3個設けられている。この本体ケース第2ボス部52は、中間ケース部材4のピン挿入穴44に対向する位置に配置されるとともに、円筒になっていて後述する治具6のピンが挿入可能になっている。
【0026】
金属よりなる板状の治具6は、電動アクチュエータ1の取付部12の穴13に圧入される第1ピン61が、電動アクチュエータ1の取付部12に対向する位置に2個設けられている。第1ピン61の断面形状は、非円形であり、より詳細には三角形である。第1ピン61の外接円の径は、取付部12の穴13の径よりも大きく設定されている。また、治具6は、本体ケース第2ボス部52に挿入される円柱の第2ピン62が、本体ケース第2ボス部52に対向する位置に3個設けられている。
【0027】
電動アクチュエータ1と中間ケース部材4と本体ケース部材5の組み付けは次のように行われる。
【0028】
まず、電動アクチュエータ1と中間ケース部材4とを一体化して第1集合体とする。具体的には、ビス3を電動アクチュエータ1の取付部12の穴13に挿入し、ビス3を中間ケース第1ボス部41の雄ねじに螺合して、第1集合体を得る。なお、第1集合体は、本発明の第1部品に相当する。
【0029】
次に、仮固定工程にて、第1集合体と本体ケース部材5を治具6に仮固定する。具体的には、治具6の第1ピン61を電動アクチュエータ1の取付部12の穴13に圧入して、治具6に対して第1集合体を位置決めする。また、治具6の第2ピン62を中間ケース部材4のピン挿入穴44に挿入し、第2ピン62を本体ケース第2ボス部52に挿入して、治具6に対して本体ケース部材5を位置決めする。これにより、第1集合体と本体ケース部材5は、治具6を介して、位置精度が良好な状態で仮固定される。なお、このときに治具6の第2ピン62と中間ケース部材4のピン挿入穴44とが干渉しないように、ピン挿入穴44の径は第2ピン62の径よりも十分に大きく設定されている。
【0030】
アクチュエータケース11は樹脂製であるのに対し、治具6は金属製であるため、第1ピン61が穴13に圧入される際には穴13が塑性変形する。そして、第1ピン61の断面形状を三角形にした場合、接触線数が少ないため、小さな力で第1ピン61を穴13に圧入することができる。
【0031】
この仮固定工程後の締結工程にて、第1集合体と本体ケース部材5とを締結する。具体的には、第1集合体と本体ケース部材5を治具6に仮固定した状態で、ビス3を中間ケース部材4のビス挿入穴43に挿入し、ビス3を本体ケース第1ボス部51に螺合して、第1集合体と本体ケース部材5とを締結する。このとき、第1集合体と本体ケース部材5の位置精度が良好な状態で仮固定されているため、締結後の第1集合体と本体ケース部材5の位置精度も向上する。
【0032】
この締結工程後の治具外し工程にて、治具6を第1集合体および本体ケース部材5から取り外すことにより、電動アクチュエータ1と中間ケース部材4と本体ケース部材5の組み付けが完了する。そして、第1ピン61の断面形状を三角形にした場合、接触線数が少ないため、小さな力で第1ピン61を穴13から引き抜くことができる。さらに、治具6は金属製であり、第1ピン61は塑性変形しないため、治具6は繰り返し使用することができる。
【0033】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、圧入用のピン21、61の断面形状を三角形にしたが、圧入用のピン21、61の断面形状は、例えば図5(a)に示すような四角形、図5(b)に示すような星型、図5(c)に示すような円柱の外周面に断面形状が三角形の突起を設けた形状でもよい。換言すると、圧入用のピン21、61の断面形状は、圧入用の穴13と線接触する形状であればよい。
【0034】
また、図6(a)に示すように圧入用の穴13の内周面に断面形状が三角形の突起を設けるとともに、図6(b)に示すように圧入用のピン21の外周面に断面形状が三角形の突起を設けて、電動アクチュエータ1とケース部材2が互いにならい合う(すなわち、穴13とピン21がともに塑性変形する)ようにしてもよい。
【0035】
さらに、上記各実施形態では、ケース部材2または治具6に圧入用のピン21、61を設け、電動アクチュエータ1に圧入用の穴13を設けたが、ケース部材2または治具6に圧入用の穴を設け、電動アクチュエータ1に圧入用のピンを設けてもよい。
【0036】
さらにまた、上記各実施形態では、圧入用のピン21、61を非円形とし、圧入用の穴13を円形としたが、圧入用のピン21、61を円形とし、圧入用の穴13を非円形としてもよいし、圧入用のピン21、61および圧入用の穴13をともに非円形としてもよい
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る部品組み付け構造を適用した構造体の平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のB部の拡大図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る部品組み付け構造を適用した構造体の分解斜視図である。
【図5】圧入用のピン21、61の変形例を示す図である。
【図6】圧入用の穴13および圧入用のピン21の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…電動アクチュエータ(一方の部品)、2…ケース部材(他方の部品)、3…ビス(締結部材)、13…穴、21…ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部品(1)の穴(13)に他方の部品(2)のピン(21)を圧入して前記一方の部品(1)と前記他方の部品(2)を位置決めした状態で、前記一方の部品(1)と前記他方の部品(2)を締結部材(3)により締結する部品組み付け構造であって、
前記穴(13)に前記ピン(21)が圧入されて、前記穴(13)および前記ピン(21)のうち少なくとも一方が塑性変形していることを特徴とする部品組み付け構造。
【請求項2】
前記穴(13)は円形であり、前記ピン(21)は断面形状が非円形であることを特徴とする請求項1に記載の部品組み付け構造。
【請求項3】
前記ピン(21)は断面形状が三角形であることを特徴とする請求項2に記載の部品組み付け構造。
【請求項4】
前記穴(13)は非円形であり、前記ピン(21)は断面形状が円形であることを特徴とする請求項1に記載の部品組み付け構造。
【請求項5】
前記穴(13)および前記ピン(21)は断面形状が非円形であることを特徴とする請求項1に記載の部品組み付け構造。
【請求項6】
穴およびピンの少なくとも一方を有する治具(6)と、前記治具(6)の穴に圧入されるピンまたは前記治具(6)のピンが圧入される穴を有する第1部品(1、4)と、前記治具(6)の穴に挿入されるピンまたは前記治具(6)のピンが挿入される穴を有する第2部品(5)とを準備し、
前記穴に前記ピンを圧入して前記穴および前記ピンのうち少なくとも一方を塑性変形させることにより、前記治具(6)と前記第1部品(1、4)とを仮固定する第1仮固定工程と、
この第1仮固定工程と前後して、前記穴に前記ピンを挿入して前記治具(6)と前記第2部品(5)とを仮固定する第2仮固定工程と、
前記第1仮固定工程および第2仮固定工程後に前記第1部品(1、4)と前記第2部品(5)を締結部材(3)により締結する締結工程と、
この締結工程後に前記治具(6)を前記第1部品(1、4)および前記第2部品(5)から取り外す治具外し工程とを備えることを特徴とする部品組み付け方法。
【請求項7】
前記治具(6)の材料強度が、前記第1部品(1、4)の材料強度よりも高いことを特徴とする請求項6に記載の組み付け方法。
【請求項8】
前記治具(6)は金属よりなり、前記第1部品(1、4)は樹脂よりなることを特徴とする請求項7に記載の部品組み付け方法。
【請求項9】
圧入用の前記穴(13)は円形であり、圧入用の前記ピン(61)は断面形状が三角形であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の部品組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−27087(P2009−27087A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190895(P2007−190895)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】