説明

部品組立方法および部品組立装置

【課題】部品組立方法および部品組立装置において、挿入部材が被挿入部材の凹部に引っかかりやすい場合にも、効率よく被挿入部材に挿入部材を挿入することができるようにする。
【解決手段】被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して、被挿入部材および挿入部材を含む部品を組み立てる部品組立方法であって、凹部の開口を上方に向けて被挿入部材の位置を被挿入部材保持部に固定して(ステップS1)、被挿入部材保持部に衝撃を加えることにより、被挿入部材を介して挿入部材に衝撃を加える(ステップS3)方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品組立方法および部品組立装置に関する。例えば、被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して、被挿入部材および挿入部材を含む部品を組み立てる部品組立方法および部品組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して部品を組み立てる際、被挿入部材の凹部と挿入部材との間に隙間代が少ないと、挿入部材の挿入姿勢によっては挿入部材が凹部に干渉して挿入に失敗し、挿入をやり直さなければならない場合がある。
このため、被挿入部材と挿入部材とを自動組立して部品を製造する場合には、画像処理等を用いて部材間の位置決めを高精度に行ったり、倣い機構を有する把持部を用いて挿入作業を行わせたりすることが一般的である。これらの技術は挿入作業時において、挿入部材の一端が被挿入部材の凹部に接触できることが前提となっている。
しかし、凹部が被挿入部材の奥まったところにある場合、挿入部材が凹部に到達する前に把持部が被挿入部材と干渉して、挿入部材の一端を凹部に当接させることができないため、同様の技術が適用できない。
そこで、特許文献1では、ロボットハンドを用いて、挿入部材である軸状部品を被挿入部材である本体部品の嵌入孔(凹部)付近まで挿入し、軸状部品をアンチャックするとともに、本体部品および治具を固有振動数付近の振動数にて振動させて、軸状部品を嵌入孔に嵌入させるようにした軸状部品の嵌め込み方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−26781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の部品組立方法および部品組立装置には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術は、例えば、挿入部材が被挿入部材の挿入穴に傾いた状態で引っかかった状態で嵌り込んでしまうと、引っ掛かり部の摩擦力によって挿入部材が被挿入部材と連結されてしまう。この場合、挿入部材が軽量であると、被挿入部材である本体部品および治具の固有振動数は挿入部材の固有振動数に比べて低周波になるため、本体部品および治具の固有振動数に一致する振動を加えると、挿入部材も本体部品および治具と同様に振動することになる。このため、相当な時間加振しても挿入穴に挿入することができない場合があるという問題がある。
この対策として、挿入部材と被挿入部材との引っ掛かり部における摩擦力を超える力を作用させるために、振動の振幅を大きくすることも考えられるが、このような加振力は、正負交替して周期的に作用する。すなわち、このようにして挿入部材を被挿入部材から離間させたとしても、挿入部材が被挿入部材から離間した後にも続けて同様の加振が続くため、挿入部材と被挿入部材との衝突が繰り返される。このため、挿入部材が動きすぎて挿入孔から飛び出してしまったり、挿入穴内に入り込むことができなくなったりするという問題がある。さらには、このような衝突が続く結果、挿入部材あるいは被挿入部材が破損したりするおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、挿入部材が被挿入部材の凹部に引っかかりやすい場合にも、効率よく被挿入部材に挿入部材を挿入することができる部品組立方法および部品組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して、前記被挿入部材および前記挿入部材を含む部品を組み立てる部品組立方法であって、前記凹部の開口を上方に向けて前記被挿入部材の位置を被挿入部材保持部に固定して、前記被挿入部材保持部に衝撃を加えることにより、前記被挿入部材を介して前記挿入部材に衝撃を加える方法とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して、前記被挿入部材および前記挿入部材を含む部品を組み立てる部品組立装置であって、前記凹部の開口を上方に向けて前記被挿入部材の位置を固定する被挿入部材保持部と、前記被挿入部材を介して衝撃を加える衝撃印加部と、を備える構成とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の部品組立装置において、前記衝撃印加部は、前記被挿入部材保持部に衝撃を加えることにより、前記被挿入部材を介して前記挿入部材に衝撃を加える構成とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項2または3に記載の部品組立装置において、前記衝撃印加部は、圧電アクチュエータで駆動される打撃部材によって衝撃を加える構成とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項2〜4のいずれか1項に記載の部品組立装置において、前記被挿入部材上に配置された前記挿入部材の前記凹部における挿入状態を検出する挿入状態検出部を備える構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の部品組立方法および部品組立装置によれば、被挿入部材上に配置された挿入部材に、被挿入部材を介して衝撃を加えることができるため、挿入部材が被挿入部材の凹部に引っかかりやすい場合にも、効率よく被挿入部材に挿入部材を挿入することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置で組み立てられた部品の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る部品組立方法の工程フローを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る部品組立方法の挿入部材配置工程において被挿入部材上に配置された挿入部材を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る部品組立方法に用いる衝撃の一例を示す加速度のグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な側面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な平面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な側面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な平面図である。
【図12】本発明の各実施形態に係る部品組立装置で組み立てることができる部品の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置で組み立てられた部品の一例を示す模式的な断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な側面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な平面図である。
【0015】
図1に示す本実施形態の部品組立装置1は、被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して、被挿入部材および挿入部材を含む部品を組み立てるものである。
被挿入部材と挿入部材とは、挿入部材を被挿入部材に設けられた凹部に挿入して組み立てることができるものであれば、特に限定されない。ただし、ここで言う「挿入して組み立てる」とは、挿入部材よりも大きな開口を有する被挿入部材の凹部に挿入して組み立てることを意味する。したがって、挿入部材の自重によって落下させて挿入したり、同等の軽荷重で挿入したりすることができる。
このため、被挿入部材の凹部と挿入部材の凸部との間の嵌め合いは、隙間嵌めに限り、挿入部材を圧入する組み立ては含まない。
被挿入部材の例としては、例えば、穴部や溝部を凹部として有するブロック状部材を挙げることができる、また、挿入部材の例としては、被挿入部材の穴部や溝部に挿入可能な軸部材やブロック部材を挙げることができる。
また凹部の断面形状は、挿入部材を一方向に挿入できる形状であれば、特に限定されない。また、凹部の内面は、挿入方向に対して真直に形成された面であってもよいし、傾斜した面であってもよい。
【0016】
以下では、図2に示すように、挿入部材としてはレンズ51、被挿入部材としてはレンズ鏡筒50を用い、部品としては、レンズ鏡筒50にレンズ51に挿入したレンズ組立体52を組み立てる場合の例で説明する。
レンズ51は、レンズ外径、すなわちレンズ側面51aの外径の公称値がDとされ、光軸方向の両端部に凸面である第1レンズ面51bおよび第2レンズ面51cを有する両凸レンズである。
レンズ鏡筒50は、側面50aが円筒面からなる全体として円筒状の部材であり、軸方向の一端側に断面円形の穴部である開口部50bが形成され、開口部50bの中心部にレンズ51を挿入する凹部であるレンズ収容穴部50cが設けられている。このため、開口部50bの穴底部の中心には、レンズ収容穴部50cの端部により円形の挿入開口50d(開口)が形成されている。
レンズ収容穴部50cの内径の公称値は、レンズ側面51aの外径の公称値と同じDである。
また、レンズ収容穴部50cは、レンズ鏡筒50の他端側において、レンズ収容穴部50cの内周面よりも径方向内側に突出された平面視円環状のレンズ受け部50eが形成されている。
レンズ51とレンズ鏡筒50との組み立ては無調整で行う。このため、レンズ51とレンズ収容穴部50cとの嵌め合い公差は、側面50aを基準としたときに、レンズ51の偏心量が許容値以下となるようするとともに、隙間嵌めとなるように設定する。
例えば、レンズ外径Dに対する寸法公差は、0mm〜−0.030mmに設定し、レンズ収容穴部50cの内径Dに対する寸法公差は、+0.010mm〜+0.030mmに設定する。
【0017】
部品組立装置1の概略構成は、図1に示すように、架台2上に設けられた作業室4と、作業室4の内部を清浄化するクリーンユニット6と、作業室4の内部に設けられた、ストッカ8、搬送ロボット11(挿入部材移動部)、組立ステージ12(被挿入部材保持部)、カメラ23(挿入状態観察部、図3参照)、および接着剤塗布ユニット13と、架台2の内部に設けられた制御ユニット17とを備える。
【0018】
作業室4は、架台2上に設けられた矩形板状のベース3を上側から覆うカバー筐体5の内部に形成された直方体状の密閉空間である。
カバー筐体5は、ベース3の外周の四辺から立設された正面側壁5a、背面側壁5b、左側側壁5c、および右側側壁5dによって水平方向が囲まれ、これらの上端部が天面5eで覆われた直方体状の形状を有する。
正面側壁5aおよび背面側壁5bは互いに対向する側壁部である。また、左側側壁5c、右側側壁5dは、正面側壁5aから背面側壁5bに向かう方向に見たとき、それぞれ左側、および右側に位置する側壁部である。
【0019】
以下では、作業室4内の方向を参照する際に、簡単のため、水平面内で直交する2軸をx軸、y軸と、鉛直軸をz軸とするxyz直交座標系を用いる場合がある。x軸の正方向は、背面側壁5bから正面側壁5aに向かう方向であり、y軸の正方向は、左側側壁5cから右側側壁5dに向かう方向であり、z軸の正方向は、鉛直上方である。
【0020】
カバー筐体5の正面側壁5aの下側の左側側壁5c寄りには、後述するストッカ8を出し入れし、ストッカ8を搬入した後は、気密を保つストッカ搬入開口5fが設けられている。
カバー筐体5の天面5eの上部には、クリーンユニット6が取り付けられ、クリーンユニット6から供給される清浄化された空気を下向き(z軸負方向)に送風する不図示の送風口が設けられている。
また、ベース3には、図示しない排気孔が多数設けられており、クリーンユニット6から送風される清浄化された空気が下方へ抜けるようになっている。
このため、カバー筐体5およびベース3で囲まれた作業室4の内部には、上方から下方に向かう清浄化された空気のダウンフローが形成され、カバー筐体5の外部に対する正圧を保つことができるようになっている。
【0021】
ストッカ8は、作業室4内で用いる部材および部品の搬送治具である複数のパレット7を作業室4の内外に搬入搬出するための収容容器であり、カバー筐体5のストッカ搬入開口5fを通して、x軸方向に沿って作業室4内に出し入れ可能に設けられている。
る。
本実施形態における各パレット7には、ストッカ8の搬入時には、レンズ組立体52の組み立てに必要なレンズ鏡筒50、レンズ51が一定の位置関係に載置されている。
また、パレット7は、組み立てに使用されたレンズ鏡筒50の代わりに、組み立てが終了したレンズ組立体52を載置し、ストッカ8とともに、載置されたレンズ組立体52を作業室4の外部に搬出できるようになっている。
【0022】
搬送ロボット11は、レンズ組立体52の組立作業を行うため、作業室4の内部で、レンズ鏡筒50、レンズ51、およびレンズ組立体52を移動するものである。
搬送ロボット11は、ベース3上においてy軸方向の中央部の背面側壁5bの近傍に基台部が固定された多関節ロボット10と、多関節ロボット10の先端部に設けられたハンド9とからなる。
多関節ロボット10は、本実施形態では、基台部から先端部に向かって回転関節が6つ設けられており、これによりハンド9の位置および姿勢を作業室4内で変更することができるようになっている。
ハンド9は、レンズ鏡筒50、レンズ51、およびレンズ組立体52を保持および保持解除するものである。ハンド9の構成としては、例えば、図1に示すように、対向する1対の把持アームによって被保持物を側方から把持して保持する構成を採用することができる。ただし、ハンド9の保持機構は、このような把持機構には限定されず、例えば、被保持物をエア吸着機構によって吸着して保持する構成を採用してもよい。
【0023】
多関節ロボット10およびハンド9は、制御ユニット17に電気的に接続され、制御ユニット17からの制御信号に応じて、それぞれの動作が制御されるようになっている。
制御ユニット17からの制御信号に応じて、搬送ロボット11が行うことができる動作の例としては、例えば、パレット7上に配置されたレンズ鏡筒50およびレンズ51を右側側壁5dの近傍のベース3上に設置された組立ステージ12上に移動する動作や、組立ステージ12上で組み立てが終了したレンズ組立体52をパレット7上に移動する動作などを挙げることができる。
【0024】
組立ステージ12は、レンズ鏡筒50のレンズ収容穴部50cの開口部50bを上方に向けてレンズ鏡筒50の位置を固定するものである。組立ステージ12の構成は、図3、4に示すように、右側側壁5dの近傍のベース3上に設置され(図1参照)y軸方向に移動するY軸アクチュエータ18と、Y軸アクチュエータ18によってy軸方向に移動可能に支持されz軸回りに回転する回転アクチュエータ19と、回転アクチュエータ19によってz軸回りに回転可能に支持されx軸およびy軸に沿う方向に移動するXYステージ21と、XYステージ21によってx軸およびy軸に沿って移動可能に支持されたチャック部22(被挿入部材固定部)と、チャック部22に取り付けられたピエゾハンマ20(衝撃印加部)とを備える。
【0025】
Y軸アクチュエータ18、回転アクチュエータ19、およびXYステージ21は、それぞれ、制御ユニット17に電気的に接続され、制御ユニット17からの制御信号に応じて、それぞれの移動量が制御されるようになっている。
これにより、Y軸アクチュエータ18、回転アクチュエータ19、およびXYステージ21の移動量を制御ユニット17によって制御して、チャック部22のベース3に対するx軸、y軸方向における位置と、チャック部22のz軸回りの回転角度を変更できるようになっている。
【0026】
チャック部22は、レンズ鏡筒50の挿入開口50dを上方に向けてレンズ鏡筒50の位置を固定するものである。
チャック部22の概略構成は、XYステージ21上に設置されXYステージ21によってx軸、y軸方向に移動可能に設けられたベース22aと、レンズ鏡筒50の側面50aを側方から把持するため対向間隔可変に設けられた1対のチャック部材22cと、これら1対のチャック部材22cを対向方向に進退させてレンズ鏡筒50の把持と把持解除とを行うチャックスライド部22bと、一方のチャック部材22cに接続され水平方向に延ばされた棒状の衝撃伝達部材22dと、ピエゾハンマ20を保持するピエゾハンマホルダ22eとを備える。
チャックスライド部22bは、不図示の配線により制御ユニット17と電気的に接続され、制御ユニット17からの制御信号により、把持および把持解除の動作が制御されるようになっている。
【0027】
本実施形態では、ピエゾハンマホルダ22eは、ピエゾハンマ20を鉛直軸に沿って保持するため、鉛直方向に延ばされ、鉛直上方が開口した穴部を備え、衝撃伝達部材22dの下方側においてベース22aの側面に固定されている。
また、各チャック部材22cは、図4に示すように、それぞれ対向する端部に平面視V字状の溝が設けられている。これにより、レンズ鏡筒50の側面50aを4箇所で受けてレンズ鏡筒50の中心を水平面内の一定位置に位置決めして把持できるようになっている。
【0028】
ピエゾハンマ20は、図3に示すように、電圧の印加によって一方向に伸縮するピエゾ素子(圧電素子)によって構成された圧電アクチュエータであるピエゾアクチュエータ20bと、ピエゾアクチュエータ20bの一方の端部に固定され、ピエゾアクチュエータ20bの伸長の際に衝撃伝達部材22dを打撃する半球状の打撃部20a(打撃部材)と、ピエゾアクチュエータ20bの他方の端部をピエゾアクチュエータ20bの伸縮方向に沿って一方の端部側に付勢する付勢部材20cとを備える。
本実施形態では、打撃部20aの材質は、例えば金属やセラミックスなどからなる硬質材料を採用している。
また、付勢部材20cとしてコイルスプリングを採用している。
【0029】
このような構成のピエゾハンマ20は、ピエゾハンマホルダ22eの穴部に、穴部の底側から付勢部材20c、ピエゾアクチュエータ20bの順に挿入され、穴部内で進退可能に保持されている。
なお、ピエゾアクチュエータ20bは、打撃部20aを上に向けた状態に配置され、付勢部材20cを下方に圧縮した状態でピエゾアクチュエータ20bの穴部に挿入されている。
また、打撃部20aは、ピエゾハンマホルダ22eの上方に突出されているとともに、ピエゾハンマホルダ22eに対向する位置に延ばされた衝撃伝達部材22dの下面に当接されている。
この結果、打撃部20aは、付勢部材20cの弾性復元力に等しい一定荷重で衝撃伝達部材22dに押圧されている。
【0030】
また、ピエゾアクチュエータ20bは、不図示の配線によって制御ユニット17に電気的に接続され、制御ユニット17からの駆動信号によって、伸縮量、伸縮速度が制御されるようになっている。
【0031】
カメラ23は、図3に示すように、組立ステージ12のチャック部22に把持されたレンズ鏡筒50、およびレンズ鏡筒50内に配置されたレンズ51を撮像するものであり、不図示の支持部材によって作業室4内に支持され、予め決められたレンズ51の挿入を行う位置(以下、組立位置と称する)に移動されたチャック部22の直上に配置されている。このためカメラ23は、組立位置に移動されたレンズ鏡筒50、およびレンズ鏡筒50内に配置されたレンズ51を上方から撮像できるようになっている。
本実施形態では、カメラ23は、例えば、コントラスト検出方式などによるオートフォーカス機構を備え、レンズ繰り出し量などを検出することで、光軸上における合焦位置を測定できるようになっている。
また、カメラ23は、制御ユニット17と電気的に接続され、撮像された画像は制御ユニット17に送出されるようになっている。制御ユニット17では、後述するようにカメラ23からの画像に画像処理を施すなどして、レンズ鏡筒50にレンズ51が正しく挿入されたかどうかを画像によって確認できるようになっている。このため、カメラ23は画像による挿入状態観察部を構成している。
また、カメラ23と制御ユニット17とは、レンズ鏡筒50上に配置されたレンズ51のレンズ収容穴部50cにおける挿入状態を検出する挿入状態検出部を構成している。
【0032】
接着剤塗布ユニット13は、組立ステージ12上に配置されたレンズ鏡筒50と、レンズ鏡筒50のレンズ収容穴部50cに挿入されたレンズ51とを接着するためのものである。
接着剤塗布ユニット13の概略構成は、図1に示すように、右側側壁5dに設置されx軸方向に沿って移動するX軸アクチュエータ14と、X軸アクチュエータ14によってx軸方向に移動可能に支持されz軸方向に移動するZ軸アクチュエータ15と、Z軸アクチュエータ15によってz軸方向に移動可能に支持され接着剤を下方に向けて供給するディスペンサ16とを備える。
また、接着剤塗布ユニット13は、不図示の配線によって制御ユニット17に電気的に接続され、制御ユニット17からの制御信号によって、X軸アクチュエータ14、Z軸アクチュエータ15の移動量が制御されるようになっている。
【0033】
制御ユニット17は、部品組立装置1の動作全体を制御するもので、不図示の配線によって上記に説明した部品組立装置1の装置各部、および不図示の操作部に電気的に接続されている。
制御ユニット17の装置構成は、適宜のハードウェアと、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータとから構成されている。コンピュータによって行われる制御機能や演算機能は、コンピュータに記憶された制御プログラムを実行することにより実現されている。
このため、制御ユニット17は、不図示の操作部からの操作入力や制御プログラムに基づいて、部品組立装置1の動作を制御できるようになっている。
【0034】
制御ユニット17が行う制御としては、例えば、クリーンユニット6を起動、停止する制御、搬送ロボット11の動作制御、組立ステージ12の動作制御、ピエゾハンマ20の動作制御、カメラ23の撮像動作制御、接着剤塗布ユニット13の動作制御を挙げることができる。
また、制御ユニット17は、画像処理ハードウェアや画像処理プログラムなどにより画像処理を行う画像処理部を備えている。このため、カメラ23で撮像した画像を画像処理することによって、ベース3上におけるレンズ鏡筒50の位置を検出したり、レンズ51のレンズ鏡筒50に対する挿入状態を確認したりすることができるようになっている。
【0035】
カメラ23が撮像した画像によってベース3上のレンズ鏡筒50の位置を検出するには、例えば、撮像した画像から輪郭抽出する画像処理を行い、側面50aの輪郭や挿入開口50dの輪郭を求め、これらの中心位置を算出することにより、xy平面内での位置を検出する。
【0036】
カメラ23が撮像した画像によってレンズ51の挿入状態を確認する方法は、例えば、オートフォーカスを行うことによって、フォーカスされた部材のz方向の位置を検出する方法を採用することができる。フォーカスを検出する方法としては、例えば、撮像された画像のコントラストを検出する方法を採用することができる。
本実施形態では、制御ユニット17は、予め制御ユニット17内に記憶された組立条件の情報に基づいて、挿入開口50dにカメラ23のフォーカスを移動することを試みる。挿入開口50dに合焦したら、例えばエッジ抽出等の画像処理を施して、挿入開口50dの輪郭を検出して、挿入開口50dの内径を算出する。
算出された内径が予め制御ユニット17内に記憶された挿入開口50dの内径Dに許容範囲内で一致したら、その位置からレンズ収容穴部50cの内部側にフォーカス位置を移動して、レンズ51の第2レンズ面51cにフォーカス位置を合わせる。
制御ユニット17は、このときのレンズ繰り出し量等を検出して、挿入開口50dに対する第2レンズ面51cのz軸方向の位置を算出することができる。
制御ユニット17は、このz軸方向の位置が制御ユニット17に予め記憶されている、レンズ組立体52における第2レンズ面51cの位置に許容範囲内で一致したとき、レンズ51の挿入状態が合格である(挿入OK)と判定する。
一方、制御ユニット17は、挿入開口50dの輪郭を正確に検出できない、もしくは検出された輪郭の内径が許容範囲外の場合には、制御ユニット17はレンズ51が挿入開口50dに引っ掛かっていると判断し、挿入状態が不良である(挿入OKでない)と判定する。
また、挿入開口50dの輪郭が正確に検出できても、第2レンズ面51cのz軸方向の位置が、予め制御ユニット17に記憶された組み立て完成時の第2レンズ面51cのz軸方向の位置の許容範囲外の場合、制御ユニット17は、レンズ51がレンズ収容穴部50c内に引っ掛かっていると判断し、挿入状態が不良である(挿入OKでない)と判定する。
【0037】
次に、部品組立装置1の動作について、部品組立装置1を用いた本実施形態の部品組立方法を中心として説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る部品組立方法の工程フローを示すフローチャートである。図6は、本発明の第1の実施形態に係る部品組立方法の挿入部材配置工程において被挿入部材上に配置された挿入部材を示す模式的な断面図である。図7は、本発明の第1の実施形態に係る部品組立方法に用いる衝撃の一例を示す加速度のグラフである。
【0038】
部品組立装置1の電源を入れると、制御ユニット17の制御によってクリーンユニット6を稼動される。これにより、作業室4内の雰囲気が清浄化される。
作業者は、部品組立装置1によって組立作業を行う準備として、パレット7にレンズ鏡筒50、レンズ51を載せて、これらのレンズ鏡筒50、レンズ51が載置された複数のパレット7をストッカ8へ投入する。
作業者が、不図示の操作部から組立作業の開始を指示すると、部品組立装置1は、図5に示すフローチャートにおけるステップS1〜S6を順次行って、レンズ組立体52を組み立てる。
【0039】
まずステップS1では、被挿入部材固定工程を行う。
本工程は、挿入部材を凹部上に配置する工程である。本実施形態では、凹部の上方から落とし込んで配置する。
【0040】
制御ユニット17は、組立ステージ12の回転アクチュエータ19、XYステージ21を予め決められた移動の中立位置(移動の基準位置)に移動し、チャック部22の各チャック部材22cを互いに離間した把持解除状態に設定する。そして、Y軸アクチュエータ18を駆動して、y軸方向においてカメラ23の直下の組立位置に組立ステージ12を待機させる。
【0041】
次に、制御ユニット17は、搬送ロボット11を駆動してパレット7上のレンズ鏡筒50をハンド9によって把持し、把持されたレンズ鏡筒50を組立ステージ12のチャック部22まで移動し、レンズ鏡筒50のレンズ受け部50e側の端部をチャックスライド部22b上に載置した後、ハンド9の把持を解除する。
ハンド9の把持解除後、制御ユニット17は搬送ロボット11を駆動して、ハンド9をパレット7の上方に移動する。
次に、制御ユニット17は、1対のチャック部材22cを対向方向に進出させ、図3、4に示すように、チャック部材22cにレンズ鏡筒50の側面50aを把持させる。
このようにして、レンズ鏡筒50に設けられたレンズ収容穴部50cの挿入開口50dを上方に向けてレンズ鏡筒50の位置が固定される。
【0042】
次に、制御ユニット17は、カメラ23によってレンズ鏡筒50を撮像し、撮像された画像に基づいて、組立ステージ12上におけるレンズ鏡筒50の位置情報を取得する。
例えば、レンズ鏡筒50の上端部のx軸方向、y軸方向の位置、およびz軸方向の位置、挿入開口50dのx軸方向、y軸方向の位置、およびz軸方向の位置などを算出し、これらの位置情報をメモリに記憶する。
そして、本実施形態では、制御ユニット17は、挿入開口50dの位置情報から回転アクチュエータ19の回転中心に対する挿入開口50dの中心の位置ずれ量を算出し、この位置ずれ量を補正するようにXYステージ21を駆動する。これにより、挿入開口50dの中心が回転アクチュエータ19の回転中心に一致される。
以上で、ステップS1が終了する。
【0043】
次にステップS2では、挿入部材配置工程を行う。
本工程は、挿入部材を凹部の上方から落とし込んで被挿入部材上に配置する工程である。
【0044】
制御ユニット17は、搬送ロボット11のハンド9によってパレット7上のレンズ51のレンズ側面51aを把持し、多関節ロボット10を駆動して、レンズ51を組立ステージ12上に固定されたレンズ鏡筒50の上方に移動する。
次に、制御ユニット17は、多関節ロボット10を駆動して、ハンド9の姿勢を制御して、レンズ51の姿勢を第1レンズ面51bが下に向けられた状態でレンズ51の光軸が鉛直軸に略整列された姿勢に調整する。また、レンズ51のxy平面内の位置は、レンズ51の光軸が、レンズ収容穴部50cの中心軸と略同軸となる位置に位置合わせする。
また、この姿勢・位置合わせの動作は、カメラ23で撮影したレンズ収納穴部50c、レンズ51の画像から画像処理によりレンズ収納穴部50cに対するレンズ51の姿勢・位置ズレ量を算出し、その値を基にロボット10を駆動させ、レンズ51の姿勢・位置を補正しても良い。
そして、制御ユニット17は、ハンド9を下降させ、レンズ51を可能な限り開口部50bに近づくように移動する。
本実施形態では、開口部50bが狭いため、ハンド9で把持されたレンズ鏡筒50は開口部50bの内部に移動することはできない。そこで、ハンド9は、開口部50bよりわずかに上方に移動する。
次に、制御ユニット17は、ハンド9の把持を解除してレンズ51を落下させる。
また、制御ユニット17は、把持解除したハンド9を多関節ロボット10とともにレンズ鏡筒50上の領域から退避させる。これにより、カメラ23がレンズ鏡筒50および落下されたレンズ51を撮像することができる。
以上で、ステップS2が終了する。
【0045】
このように、搬送ロボット11は、レンズ51をレンズ鏡筒50のレンズ収容穴部50cの上方に移動して、レンズ51を開口部50bの上方から落とし込んでレンズ鏡筒50上に配置する挿入部材移動部を構成している。
【0046】
ステップS2において、開口部50b内に落下したレンズ51は、さらにレンズ収容穴部50c内に落下してレンズ収容穴部50cの奥まで落とし込まれる(図6の二点鎖線参照)か、または、図6に実線および破線で示すように、挿入開口50dやレンズ収容穴部50c内に引っ掛かって止まる。
引っ掛かって止まる場合は、レンズ鏡筒50との接触部に働く静止摩擦力や抗力とレンズ51に作用する重力とがつり合う位置で止まる。
レンズ51の外径とレンズ収容穴部50cの内径との嵌め合いは、上述の寸法公差の例では、最大でも0.060mmの隙間しかないため、例えば、カメラ23による位置検出誤差や搬送ロボット11による移動誤差等によって、レンズ51を挿入開口50dの内部に落下させることができないと、レンズ51が挿入開口50dまたはレンズ収容穴部50c内で引っ掛かって止まった状態となる。また、挿入開口50dの内部に落下させることができても、レンズ51の落下姿勢によっては、レンズ収容穴部50cの内部で引っ掛かってしまう場合がある。
【0047】
次に、ステップS3では、衝撃印加工程を行う。
本工程は、被挿入部材上に配置された後の挿入部材に衝撃を加える工程である。
【0048】
本工程では、制御ユニット17は、ピエゾハンマ20を駆動して、ピエゾハンマ20の打撃部20aによって衝撃伝達部材22dに打撃を加える。
すなわち、制御ユニット17は、ピエゾハンマ20のピエゾアクチュエータ20bに、ピエゾアクチュエータ20bを短時間に伸長させた後、伸長前の長さに戻すような制御電圧を印加する。
本実施形態では、一例として、0.0012sの間に加速度が0m/s(0G)から最大19.8m/s(2G)に増大して0m/s(0G)に戻るようなパルス状の制御電圧を印加している。
なお、レンズ51に代えてサイズや質量の異なる他品種の挿入部材を挿入する場合には、駆動信号を変更して、必要な撃力を得ることができる。
【0049】
衝撃伝達部材22dに加えられた打撃による衝撃は、パルス状の弾性波として衝撃伝達部材22d内を伝播し、チャック部材22cを介してレンズ鏡筒50に伝播する。そして、レンズ鏡筒50に伝播した衝撃はレンズ51との接触部を通してレンズ51に伝播する。このようにしてレンズ51に衝撃が加えられる。
したがって、ピエゾハンマ20は、搬送ロボット11によってレンズ鏡筒50上に配置されたレンズ51に、レンズ鏡筒50を介して衝撃を加える衝撃印加部を構成している。
【0050】
図7には、チャック部材22c上で測定した加速度波形の一例を示す。なお、曲線100は、実測波形の曲線をそのまま転記しているため、測定ノイズにより衝撃印加前後の加速度が0G(0m/s)からオフセットしている。
以上で、ステップS3が終了する。
【0051】
このように衝撃が伝播することにより、レンズ51は、撃力を受け、撃力が最大静止摩擦力を上回ると、レンズ鏡筒50に対して相対運動を起こす。この結果、レンズ鏡筒50との接触部から離間してレンズ51の姿勢が変化し、重力によって下方に再落下しようとする。
【0052】
具体的な撃力の大きさは、レンズ51の質量や、レンズ51およびレンズ鏡筒50の間の静止摩擦係数によって異なるため、予め実験を行うなどして設定することができる。
【0053】
このような衝撃の印加前後において、レンズ51の位置、姿勢は、以下のケースA、Bの場合が考えられる。
ケースAは、レンズ51がレンズ収容穴部50c内に落とし込まれる結果、レンズ収容穴部50cを穴底部まで落下して正確な挿入位置に落とし込まれる場合である(図6の二点鎖線参照)。
ケースAでは、衝撃を与えることで挿入が完了することになる。このため、ケースAの場合が確認されれば、挿入後の組立工程を行うことができる。
【0054】
ケースBは、レンズ51の位置または姿勢が変化するものの、挿入開口50dまたはレンズ収容穴部50c内で再度引っ掛かってしまう場合である(図6の実線または破線参照)。
ケースBでは、挿入の完了には到らないものの、引っ掛かりは一旦解除され、新たな引っ掛かりの強さは、落下高さが最初の落下よりも小さくなるため最初の引っ掛かりの強さよりも弱くなる。
したがって、撃力を繰り返し印加すれば、ケースBの場合が繰り返されたとしても、最初の引っ掛かりよりも弱い状態の引っ掛かりが繰り返されることになる。
このため、レンズ51は、撃力による相対移動が容易となり、ケースAの場合に移行する確率が高まる。この結果、何回か衝撃の印加を繰り返した後にはケースBの場合から、ケースAの場合に移行することが期待される。
【0055】
そこで、本実施形態では、ステップS3の次に、衝撃を印加した後に挿入部材の挿入状態を確認する挿入状態確認工程であるステップS4を行う。
ステップS4では、制御ユニット17は、カメラ23によってレンズ鏡筒50内のレンズ51を撮像し、上述したような、撮像した画像によってレンズ51の挿入状態を確認する方法によって、レンズ51の挿入状態を確認する。
すなわち、まず、カメラ23のフォーカスを挿入開口50dに移動し、撮像した画像から挿入開口50dの内径が予め制御ユニット17に記憶された値Dの許容範囲に入るかどうか判定する。
測定値がDの許容範囲に入らないのは、レンズ51が挿入開口50dに引っ掛かっている結果、挿入開口50dの画像がレンズ51越しに撮像されるためである。したがって、この場合には、挿入状態が不良と判定し、ステップS3に移行する。
測定値がDの許容範囲に入った場合、制御ユニット17は、レンズ収容穴部50cの奥側の第2レンズ面51cにフォーカスを合わせ、これにより、挿入開口50dに対する第2レンズ面51cのz軸方向の位置を検出する。
そして、制御ユニット17は、検出されたz軸方向の位置が制御ユニット17に予め記憶された許容範囲に入るかどうか判定し、許容範囲外である場合には挿入状態が不良と判定し、ステップS3に移行する。
許容範囲内である場合には、ステップS5に移行する。
【0056】
このように、本実施形態では、ステップS3とステップS5との間に、レンズ51の挿入状態を判定するステップS4を設け、挿入状態が不良と判定された場合には、ステップS3の衝撃印加工程を繰り返し、挿入状態が合格した場合のみ、ステップS5に移行できるようになっている。
【0057】
かくして本実施形態では、レンズ51の挿入状態が合格するまで衝撃印加工程が繰り返される。レンズ51には、衝撃が断続的に繰り返して印加されるとレンズ51の位置や姿勢が衝撃を受けるごとに徐々に変化し、やがてレンズ51のレンズ収容穴部50c内へ挿入が完了する。
このような断続的な衝撃の繰り返しでは、固有振動数の振動を印加する従来の部品組立方法のように、加振力が正負交替して周期的に作用することがない。このため、挿入部材が共振することはなく、衝撃を繰り返しても、挿入部材の運動が激しくなるということがない。このため、挿入部材が動きすぎて挿入孔から飛び出してしまったり、恒常的に振動して挿入穴内に入り込むことができなくなったりすることを防止することができる。
また、このような衝突が続く結果、挿入部材あるいは被挿入部材が破損したりすることを防止することができる。
【0058】
次に、ステップS5では、後処理工程を行う。
本工程は、レンズ鏡筒50にレンズ51を挿入した後に、レンズ組立体52を完成させるための後処理を行う工程である。
本実施形態では、後処理の一例として、レンズ51をレンズ組立体52に接着する処理を行う。
制御ユニット17は、Y軸アクチュエータ18を駆動して、組立ステージ12に保持されたレンズ鏡筒50およびレンズ51を接着剤塗布ユニット13の下方の所定位置(以下、塗布位置と称する)に移動する。
次に、制御ユニット17は、接着剤塗布ユニット13のX軸アクチュエータ14およびZ軸アクチュエータ15を駆動して、ディスペンサ16の先端部をレンズ収容穴部50c内に挿入し、ディスペンサ16の先端部をレンズ51のレンズ側面51aとレンズ収容穴部50cとの隙間の上方に位置させる。
次に、制御ユニット17は、回転アクチュエータ19を1回転以上回転させるとともに、ディスペンサ16から接着剤を滴下させる。これにより、レンズ51の外周部とレンズ収容穴部50cとの間に周方向にわたって接着剤が供給される。
制御ユニット17は、接着剤の供給終了後に回転アクチュエータ19を停止し、X軸アクチュエータ14およびZ軸アクチュエータ15を駆動して、ディスペンサ16をレンズ鏡筒50の外部に移動する。
【0059】
この状態で接着剤の硬化を進行させる。
例えば、接着剤が紫外線(UV)硬化接着剤の場合には、不図示のUV光源によって、UV光を照射して接着剤の硬化を進行させる。
また、接着剤が2液反応によって硬化する接着剤の場合には、反応が進行して硬化が進む間、暫時放置する。
このようにして、接着剤の硬化がある程度進行したら、制御ユニット17は、Y軸アクチュエータ18を駆動して、組立ステージ12を塗布位置から組立位置に戻す。
以上で、ステップS5が終了する。
なお、挿入を行うだけで部品が完成する場合には、本工程は省略することができる。
【0060】
次に、ステップS6では、完成部品払い出し工程を行う。
本工程は、組立ステージ12上から、後処理工程が終了した完成部品であるレンズ組立体52を払い出し、次のレンズ組立体52を組み立てられるようにする工程である。
制御ユニット17は、チャック部22を駆動して、レンズ組立体52に対する把持を解除する。そして、搬送ロボット11を駆動して、レンズ組立体52を空いているパレット7上に移動する。このようにして組立ステージ12からレンズ組立体52が払い出される。
以上で、ステップS6が終了する。
【0061】
このようにして、パレット7上に完成したレンズ組立体52が移動され、1個のレンズ組立体52の組み立てが終了する。
さらに、他のパレット7上のレンズ鏡筒50およびレンズ51を、上記と同様にして、それぞれ組み立て、他の完成部品であるレンズ組立体52を順次パレット7上に移動する。
レンズ組立体52がすべてパレット7上に移動されたら、作業者はストッカ8を装置外部に引き出して、これらレンズ組立体52を装置外部に取り出す。
このようにして、部品組立装置1により複数のレンズ組立体52が組み立てられる。
【0062】
以上に説明したように、部品組立装置1によれば、衝撃印加部としてピエゾハンマ20を備えるため、レンズ51がレンズ鏡筒50の凹部であるレンズ収容穴部50cに引っかかりやすい場合にも、効率よくレンズ鏡筒50にレンズ51を挿入することができる。
すなわち、ピエゾハンマ20によれば、レンズ51が挿入開口50dおよびレンズ収容穴部50cに引っ掛かった場合にも、レンズ鏡筒50を介してレンズ51に断続的な衝撃を与えることでレンズ51に撃力を作用させることができる。このため、挿入開口50dまたはレンズ収容穴部50cに引っ掛かったレンズ51の位置または姿勢を断続的に変化させることができる。
したがって、衝撃を与えたレンズ51がレンズ収容穴部50cの奥まで落下せず挿入できなかったことがカメラ23によって確認された場合、衝撃によるレンズ51の動きが落ち着いた後に再度行われる衝撃印加工程によってさらに衝撃が印加される。このため、レンズ51には、レンズ51の固有周期よりもはるかに長い周期で断続的に衝撃与えることになり、レンズ51が共振して飛び出したり暴れたりすることを抑制しつつ、レンズ収容穴部50c内に自重落下させていくことが可能となる。
【0063】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の部品組立装置について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な側面図である。図9は、本発明の第2の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な平面図である。
【0064】
本実施形態の部品組立装置1Aは、図1に示すように、上記第1の実施形態における組立ステージ12、制御ユニット17に代えて、組立ステージ12A(被挿入部材保持部)、制御ユニット17Aを備える。
組立ステージ12Aは、図8、9に示すように、組立ステージ12においてチャック部22およびピエゾハンマ20に代えて、チャック部22A(被挿入部材固定部)および衝撃発生器24(衝撃印加部)を備えるものである。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0065】
チャック部22Aは、上記第1の実施形態におけるチャック部22からピエゾハンマホルダ22eと衝撃伝達部材22dとを削除したものである。
衝撃発生器24は、円板状のブロック部材の内部に空洞部24b、24cがそれぞれ1対ずつ設けられた被打撃部材24aと、各空洞部24b、24cに1個ずつ収容され空洞部24b、24c内を自由に移動できる移動体である鋼球24d(打撃部材)とを備える。
【0066】
被打撃部材24aは、図8に示すように、下面において回転アクチュエータ19によってz軸回りに回転可能に支持されており、上面にはXYステージ21がねじ締結などによって連結されている。
空洞部24bは、図8、9に示すように、矩形断面が水平方向の一方向に延ばされた一対の直方体状の空洞からなる。各空洞部24bは、被打撃部材24aの外周近傍において被打撃部材24aの中心を挟んで対向して平行に配置されている。また各空洞部24bの配置姿勢は、回転アクチュエータ19の回転の中立位置においてy軸方向に沿うように設定されている。
空洞部24cは、図9に示すように、空洞部24bと同様の矩形断面が周方向に沿って円弧状に延ばされた一対の空洞からなる。各空洞部24cは、被打撃部材24aの外周近傍において被打撃部材24aの中心を挟んで対向して配置されている。各空洞部24cの対向方向は、各空洞部24bの対向方向と直交する方向に設定されている。
被打撃部材24aの材質は、鋼球24dによる打撃によって衝撃が発生し、かつ連結されたXYステージ21に効率的に伝播させることができる材料であれば、適宜の材質を採用することができる。すなわち、被打撃部材24aの材質の密度、硬度、縦弾性係数はいずれも大きいほど好ましい。例えば、ステンレス鋼などの金属を採用することができる。
また、空洞部24b、24cの内面は、焼き入れ処理などの硬化処理が施されていることが好ましい。
【0067】
制御ユニット17Aは、制御ユニット17の制御機能からピエゾハンマ20の制御機能を削除し、衝撃を加えるための回転アクチュエータ19およびY軸アクチュエータ18の制御機能を追加したものである。
すなわち、制御ユニット17Aは、上記第1の実施形態の制御ユニット17と同様に、回転アクチュエータ19およびY軸アクチュエータ18の動作を制御するものであるが、起動および停止における加速時間および減速時間の可変範囲がより広くなっている。このため、回転アクチュエータ19およびY軸アクチュエータ18の起動停止を急峻に行う高加速モードと、より起動停止時の速度変化を緩やかにした低加速モードとを備える。
【0068】
このような構成の部品組立装置1Aによる部品組立方法は、部品組立装置1Aが上記第1の実施形態のピエゾハンマ20に代えて衝撃発生器24を備えるため、上記第1の実施形態の部品組立方法において、ステップS3の衝撃印加工程のみが異なる。そこで、以下では、部品組立装置1Aによる衝撃印加工程について説明する。
【0069】
本実施形態の衝撃印加工程では、制御ユニット17Aは、回転アクチュエータ19またはY軸アクチュエータ18を、急加速モードを用いて、急峻に起動するか、駆動状態から急峻に停止するか、あるいはこの両方を行うことにより、衝撃を発生させる。
【0070】
例えば、回転アクチュエータ19を停止状態から急峻に起動して回転させると、空洞部24b、24c内の回転系では、各鋼球24dに対して急峻に増大する慣性力が作用する。この結果、各鋼球24dは、回転方向と反対側に急峻に相対移動し、空洞部24b、24cの回転方向と反対側の内面に衝突する。これにより被打撃部材24aに内部から打撃を加えられる。この打撃で発生した衝撃による弾性波は、被打撃部材24aおよび被打撃部材24aと連結されたXYステージ21に伝播し、チャック部22Aおよびレンズ鏡筒50を介して、レンズ51に伝播する。
また、回転アクチュエータ19が回転状態から急峻に停止した場合には、空洞部24b、24cにおいて起動時と反対側の内面に鋼球24dが衝突して衝撃が発生する。
したがって、回転アクチュエータ19の回転方向を切り替えて起動と停止とを繰り返せば、繰り返しの衝撃を発生させることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、回転アクチュエータ19の回転開始時において鋼球24dの位置が不確定であるため、すべての鋼球24dが回転開始時において空洞部24b、24cの回転方向と反対側の内面に当接している場合には、回転開始時には衝撃は発生しないことになる。
そこで、常に確実に衝撃を発生させるためには、急峻な回転開始および急峻な回転停止を行うようにすることが好ましい。
ただし、空洞部24b、24cの底面に緩やかな傾斜を設けて高さが最低となる部位を形成しておき、停止時における各鋼球24dの位置が確定する構成としてもよい。この場合は、急峻な回転開始および急峻な回転停止のいずれかを行うだけでも、確実に衝撃を発生させることができる。
【0072】
また、Y軸アクチュエータ18によって衝撃を発生させる場合には、回転アクチュエータ19の位置を回転の中立位置に固定し、図9に示すように、空洞部24bの延びる方向をy軸方向と一致させた後に、停止状態からy軸方向の一方に急峻に起動する。
この場合、空洞部24b、24c内の加速系では、各鋼球24dに対してy軸方向の他方に向いて急峻に増大する慣性力が作用する。この結果、各鋼球24dは、空洞部24b、24cにおいてy軸方向の他方に向かって急峻に相対移動し、空洞部24b、24cのy軸方向の他方側の内面に衝突する。これにより被打撃部材24aに内部から打撃を加えられる。
この打撃で発生した衝撃による弾性波は、被打撃部材24aおよび被打撃部材24aと連結されたXYステージ21に伝播し、チャック部22Aおよびレンズ鏡筒50を介して、レンズ51に伝播する。
ただし、空洞部24cでは、衝突が発生するまでの距離が空洞部24bに比べて短いため、空洞部24bの内面で発生する衝撃に比べると、空洞部24cの内面で発生する衝撃は無視できる程度の大きさになる。したがって、Y軸アクチュエータ18によって発生する衝撃は、空洞部24b内の2個の鋼球24dの寄与による衝撃であり、衝撃の方向はy軸に沿う方向が支配的である。
また、Y軸アクチュエータ18が駆動状態から急峻に停止した場合には、空洞部24b、24cにおいて起動時と反対側の内面に鋼球24dが衝突して衝撃が発生する。
したがって、Y軸アクチュエータ18の駆動方向を切り替えて起動と停止とを繰り返せば、断続的に繰り返す衝撃を発生させることができる。
【0073】
このように本実施形態では、衝撃を1回以上発生させた後、回転アクチュエータ19またはY軸アクチュエータ18の駆動を停止し、ステップS3を終了する。
そして、ステップS4以下を上記第1の実施形態と同様にして行う。
【0074】
このように、本実施形態における衝撃発生器24は、空洞部24b、24cを有する被打撃部材24aと、被打撃部材24aの空洞部24b、24cの内部に移動自在に設けられた打撃部材である鋼球24dとを備えている。また、本実施形態における回転アクチュエータ19またはY軸アクチュエータ18は、被打撃部材24aを断続的に移動させ、鋼球24dに作用する慣性力によって鋼球24dを被打撃部材24aに衝突させる被打撃部材駆動手段を構成している。このため、衝撃発生器24と回転アクチュエータ19またはY軸アクチュエータ18とは衝撃印加部を構成している。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態によれば、衝撃印加部として衝撃発生器24を備えるため、上記第1の実施形態と同様に、レンズ51がレンズ鏡筒50の凹部であるレンズ収容穴部50cに引っかかりやすい場合にも、効率よくレンズ鏡筒50にレンズ51を挿入することができる。
【0076】
また、本実施形態の衝撃発生器24によれば、回転アクチュエータ19またはY軸アクチュエータ18を駆動することにより、それぞれ、強さと方向が異なる二様の衝撃を発生させることができる。
このため、回転アクチュエータ19を駆動するか、Y軸アクチュエータ18を駆動するかは、被挿入部材と挿入部材との間に発生する引っ掛かりに方向性があるかどうかによって、適宜選択することができる。
例えば、レンズ鏡筒50、レンズ51のように、円断面の穴に円断面の軸を挿入する場合には、引っ掛かりの方向性が不明であるため回転アクチュエータ19による衝撃を用い、被挿入部材の凹部が矩形断面の溝であって挿入部材がこの溝幅に嵌合する矩形断面を有する凸部を有する場合には、y軸方向を溝幅方向に合わせてY軸アクチュエータ18による衝撃を用いる、といった使い分けが可能となる。
また、円断面の穴に円断面の軸を挿入する場合であっても、引っ掛かりは、周方向の一部で発生する。このため、ステップS4の挿入状態確認工程において、カメラ23で撮像した画像から引っ掛かりの部位の位置、方向が確認できた場合には、引っ掛かりの部位の位置や方向性に合わせて、Y軸アクチュエータ18による衝撃を用いるようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、複数の鋼球24dの打撃によって衝撃を発生させるため、鋼球24dの質量や数を変更したり、回転アクチュエータ19およびY軸アクチュエータ18の駆動条件、例えば、加速度変化や衝撃の繰り返し回数、往復駆動の周期などを変更したりすることによって、衝撃の大きさを容易に変更することができる。
このため、挿入部材のサイズや質量が異なる他品種の部品組立を行う場合に、挿入部材のサイズや質量に応じて衝撃の大きさを容易に変更できるので、部品構成に合った効率的な挿入を行うことができる。
【0078】
なお、本実施形態では、制御ユニット17Aは、衝撃印加工程以外の工程では、Y軸アクチュエータ18、回転アクチュエータ19を低加速モードで駆動する。このため、衝撃印加工程以外の工程では、鋼球24dによる打撃が発生しても衝撃の大きさは小さくなる。
【0079】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の部品組立装置について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な側面図である。図11は、本発明の第3の実施形態に係る部品組立装置の主要部の構成を示す模式的な平面図である。
【0080】
本実施形態の部品組立装置1Bは、図1に示すように、上記第1の実施形態における組立ステージ12、制御ユニット17に代えて、組立ステージ12B(被挿入部材保持部)、制御ユニット17Bを備える。
組立ステージ12Bは、図10、11に示すように、組立ステージ12においてチャック部22およびピエゾハンマ20に代えて、チャック部22A(被挿入部材固定部)および衝撃発生器25を備えるものである。
以下、上記第1および第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0081】
衝撃発生器25は、円板状のブロック部材の外周側面に複数の凹部26bが形成された凹凸ブロック26と、凹凸ブロック26の側面に対向して配置され、凹凸ブロック26を打撃する打撃プランジャ27と、打撃プランジャ27を凹凸ブロック26の径方向に進退可能に保持する打撃プランジャ移動部31とを備える。
【0082】
凹凸ブロック26は、図10に示すように、下面において回転アクチュエータ19によってz軸回りに回転可能に支持されており、上面にはXYステージ21がねじ締結などによって連結されている。
各凹部26bの形状は、図11に示すように、円弧状もしくはU字状の断面形状が、凹凸ブロック26の厚さ方向に貫通するように設けられた凹溝からなる。
各凹部26bは、凹凸ブロック26の外周側面である円筒部26aの周方向に一定ピッチで間を空けて形成されている。このため、凹凸ブロック26の外周面は、周方向に沿って、相対的な凸部である円筒部26aにおける円筒面と、凹部26bにおける溝面が交替に現れる凹凸形状が形成されている。
凹凸ブロック26の材質は、打撃プランジャ27による打撃によって衝撃が発生し、かつ連結されたXYステージ21に効率的に伝播させることができる材料であれば、適宜の材質を採用することができる。すなわち、凹凸ブロック26の材質の密度、硬度、縦弾性係数はいずれも大きいほど好ましい。例えば、ステンレス鋼などの金属を採用することができる。
また、凹凸ブロック26の外周面は、後述する打撃プランジャ27の打撃ヘッド28aが周方向の低負荷で摺動できるように滑らかな曲面が組み合わされている。
また、凹凸ブロック26の外周面は、焼き入れ処理など硬化処理が施されていることが好ましい。
【0083】
打撃プランジャ27は、先端部に半球状の打撃ヘッド28aを有する軸状の打撃シャフト28と、打撃シャフト28の基端部を打撃シャフト28の軸方向に付勢するコイルスプリング29と、コイルスプリング29および打撃シャフト28を収容するため一方に開口した収容穴30aを有するシリンダ部30とを備える。
シリンダ部30の収容穴30aには、穴底にコイルスプリング29が配置された状態で打撃シャフト28が基端部側から挿入されている。打撃シャフト28の打撃ヘッド28aは、収容穴30aの開口から外側に突出されており、打撃ヘッド28aを軸方向に押圧すると、コイルスプリング29から弾性復元力が働くようになっている。
【0084】
打撃プランジャ移動部31は、制御ユニット17Bに電気的に接続され制御ユニット17Bからの制御信号によって1軸方向に進退する移動ステージからなる。
また、打撃プランジャ移動部31は、その進退方向が凹凸ブロック26の径方向に整列した状態で、回転アクチュエータ19の底部に固定された固定ベース19a上に支持されている。
打撃プランジャ移動部31の移動範囲は、少なくとも、打撃プランジャ27の打撃ヘッド28aが凹凸ブロック26の凹部26bに当接するとともに、コイルスプリング29が適宜圧縮されて打撃ヘッド28aから凹凸ブロック26に向かって反力が発生する進出時の位置と、打撃ヘッド28aが凹凸ブロック26の円筒部26aから離間する後退時の位置とが切り替えられるようになっている。
本実施形態では、進出時の位置には幅が設けられており、必要な衝撃の大きさに応じて、打撃ヘッド28aから働く反力の大きさを変化させることができるようになっている。
【0085】
制御ユニット17Bは、制御ユニット17の制御機能からピエゾハンマ20の制御機能を削除し、打撃プランジャ移動部31に対する制御機能を追加したものである。
すなわち、制御ユニット17Bは、打撃プランジャ移動部31に制御信号を送出し、打撃プランジャ移動部31の進出および後退の制御を行い、進出時には、進出位置の制御を行えるようになっている。
【0086】
このような構成の部品組立装置1Bによる部品組立方法は、部品組立装置1Bが上記第1の実施形態のピエゾハンマ20に代えて衝撃発生器25を備えるため、上記第1の実施形態の部品組立方法において、ステップS3の衝撃印加工程のみが異なる。そこで、以下では、部品組立装置1Bによる衝撃印加工程について説明する。
【0087】
本実施形態の衝撃印加工程では、制御ユニット17Bは、打撃プランジャ移動部31を進出させて打撃ヘッド28aを凹凸ブロック26に押圧し、この状態で、回転アクチュエータ19を回転させて衝撃を発生させる。
回転アクチュエータ19が回転すると、打撃ヘッド28aは、凹凸ブロック26の凹凸形状にならって打撃シャフト28の軸方向に進退する。
このため、打撃ヘッド28aが円筒部26aに当接している間は、打撃シャフト28がコイルスプリング29側に押し付けられて、弾性復元力が増加し、打撃ヘッド28aが凹部26bに当接している間は、打撃シャフト28が先端側に移動してコイルスプリング29に対する押し付け力が低減されるため、弾性復元力が減少する。
このため、回転アクチュエータ19の回転に伴い、打撃ヘッド28aが円筒部26aから凹部26b上に移動する境界では、増加していた弾性復元力に対する抗力が開放されるため、打撃シャフト28が凹凸ブロック26に向かって加速され、打撃ヘッド28aが凹部26bを打撃する。
この打撃で発生した衝撃による弾性波は、凹凸ブロック26および凹凸ブロック26と連結されたXYステージ21に伝播し、チャック部22Aおよびレンズ鏡筒50を介して、レンズ51に伝播する。
【0088】
さらに回転アクチュエータ19の回転が進むと、凹部26bの深さが浅くなり徐々にコイルスプリング29が圧縮され、隣接する円筒部26aにおいて、弾性復元力が最大となる。そして、円筒部26aと凹部26bとの境界に達すると、上記と同様の打撃が繰り返される。
このようにして、打撃シャフト28は、円筒部26aを乗り越えるたびに、凹凸ブロック26を打撃するため、回転アクチュエータ19の回転が停止するまで、凹凸ブロック26には、断続的に繰り返す衝撃が発生する。
【0089】
制御ユニット17Bは、予め決められた衝撃印加回数となるように、回転アクチュエータ19を回転したら、回転アクチュエータ19の回転を停止し、打撃プランジャ移動部31を後退させて、打撃ヘッド28aを凹凸ブロック26から離間させる。
以上で、本実施形態のステップS3を終了する。
そして、ステップS4以下を上記第1の実施形態と同様にして行う。
【0090】
このように、本実施形態における衝撃発生器25は、表面に複数の凹凸が形成された凹凸部を有する被打撃部材である凹凸ブロック26と、凹凸ブロック26の凹凸部に対して付勢された打撃部材である打撃ヘッド28aとを備えている。また、本実施形態における回転アクチュエータ19は、打撃ヘッド28aを凹凸ブロック26の複数の凹凸を横切る方向に相対移動させて、打撃ヘッド28aによって凹凸ブロック26を繰り返し打撃する相対移動手段を構成している。このため、衝撃発生器25と回転アクチュエータ19とは衝撃印加部を構成している。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態によれば、衝撃印加部として衝撃発生器25、回転アクチュエータ19を備えるため、上記第1の実施形態と同様に、レンズ51がレンズ鏡筒50の凹部であるレンズ収容穴部50cに引っかかりやすい場合にも、効率よくレンズ鏡筒50にレンズ51を挿入することができる。
【0092】
また、本実施形態では、凹凸ブロック26の凹凸形状の凸部を乗り越える際に生じる打撃ヘッド28aの打撃によって衝撃を発生させるため、回転アクチュエータ19の速度、コイルスプリング29のバネ定数、凹凸ブロック26の凹凸形状の変更などを変更することによって、衝撃の大きさを容易に変更することができる。
このため、挿入部材のサイズや質量が異なる他品種の部品組立を行う場合に、挿入部材のサイズや質量に応じて衝撃の大きさを容易に変更できるので、部品構成に合った効率的な挿入を行うことができる。
【0093】
なお、上記の説明では、一例として、レンズ鏡筒50にレンズ51を挿入して、レンズ組立体52を組み立てる場合の例で説明したが、いずれの実施形態においても、1つの被挿入部材に複数の挿入部材を挿入して部品を組み立ててもよい。
図12に、このような部品の一例を示す。
レンズ組立体60(部品)は、上記に説明したレンズ鏡筒50を被挿入部材として、凹部であるレンズ収容穴部50cに、複数の挿入部材であるレンズ51、間隔リング53、絞り54、レンズ55をこの順に挿入し、レンズ55の外周とレンズ収容穴部50cの内周面とを接着して固定したものである。
これら挿入部材の外径の公称値は、いずれもDであり、レンズ51と同様な寸法公差で製作されている。
間隔リング53は、レンズ51、55の間の面間隔を空けるため、レンズ収容穴部50cに内嵌する円環状に設けられた部材であり、レンズ51の第2レンズ面51cに当接されている。
絞り54は、レンズ組立体60を透過する光束の光束径を規制する孔あき円板であり、レンズ収容穴部50cに内嵌した状態で、間隔リング53上に重ねて配置されている。
レンズ55は、レンズ51と同一の外径を有する両凸レンズであり、第1レンズ面55aが、絞り54の開口部に当接して配置されている。
【0094】
このようなレンズ組立体60は、部品組立装置1、1A、1Bのいずれを用いても同様にして組み立てることができる。
すなわち、上記第1の実施形態の部品組立方法と同様に、ステップS1〜S4を行って、レンズ収容穴部50cにレンズ51を挿入する。
次に、間隔リング53を挿入部材として、ステップS2〜S4を行って、レンズ収容穴部50c内のレンズ51上に間隔リング53を挿入する。
次に、絞り54を挿入部材として、ステップS2〜S4を行って、レンズ収容穴部50c内の間隔リング53上に絞り54を挿入する。
次に、レンズ55を挿入部材として、ステップS2〜S4を行って、レンズ収容穴部50c内の絞り54上にレンズ55を挿入する。
その後、ステップS5、S6を順次行う。
これにより、レンズ組立体60を組み立てることができる。
【0095】
また、上記第1の実施形態の説明では、被挿入部材固定部であるチャック部22をピエゾアクチュエータ20bで駆動される打撃部20aによって打撃することで衝撃を加える場合の例で説明したが、ピエゾハンマ20による打撃箇所は、チャック部22には限定されない。
被挿入部材を介して挿入部材に衝撃を加えることができれば、被挿入部材保持部を構成するどの部材を打撃してもよい。例えば、レンズ鏡筒50に接触する部材に直接的、間接的に連結された部材であって、衝撃による弾性波が伝播可能な固体部材を打撃してもよい。例えば、XYステージ21、回転アクチュエータ19、Y軸アクチュエータ18等を打撃してもよい。
【0096】
また、上記の説明では、組立ステージ12、12A、12Bを複数のアクチュエータ等の部材を積層させて構成した場合の例で説明したが、これらの部品配置は、一例であって、部材の取り付け位置や積み重ねる順序等は機能上支障のない範囲で適宜変更することができる。
例えば、組立ステージ12において、ピエゾハンマ20は、z軸方向に沿って配置された場合の例で説明したが、水平方向等の他の方向から打撃するようにしてもよい。また、ピエゾハンマ20を複数設けて、複数の方向から同時に、あるいは複数の方向から選択して、衝撃を加えるようにしてもよい。
また、ピエゾハンマ20がチャックスライド部22bやチャック部材22cを直接打撃できる場合には、衝撃伝達部材22dを設けることなく、チャックスライド部22bやチャック部材22cを直接打撃する構成としてもよい。
また、組立ステージ12A(12B)において、衝撃発生器24(25)を、XYステージ21とチャック部22Aとの間に設置してもよい。この場合、衝撃発生器24(25)で発生した衝撃がチャック部22Aに直接伝播するため、衝撃の伝播効率を向上することができる。
【0097】
また、上記第1の実施形態の説明では、組立ステージ12が、XYステージ21および回転アクチュエータ19を備える場合の例で説明したが、組み立て作業において、チャック部22の位置を水平方向に移動したり、回転させたりする必要がない場合には、これらの移動機構は削除してもよい。また、組立作業において、他の移動機構が必要な場合には、適宜追加することができる。
【0098】
また、上記の説明では、挿入部材移動部として、多関節ロボット10を備える搬送ロボット11を用いた場合の例で説明したが、挿入部材移動部の構成としては、これに限定されない。例えば、多関節ロボット10に代えて、直交ロボットやスカラロボットを用いてもよい。
【0099】
また、上記の説明では、挿入状態検出部として、カメラ23と制御ユニット17(17A、17B)とを組み合わせて、画像による検出を行う場合の例で説明したが、挿入状態検出部はこれには限定されない。
例えば、カメラ23に代えて、レーザー変位センサなどの測定機を採用することができる。
【0100】
また、上記第2の実施形態の説明では、一例として、被打撃部材24aが円盤状であり、直線状、円弧状の空洞部24b、24cを備える場合の例で説明したが、これらの形状や数の組み合わせは適宜変形することができる。
例えば、被打撃部材24aは矩形状でもよく、空洞部24b、24cはいずれか一方のみであってもよい。
また、空洞部24b、24cの断面形状は、矩形には限定されず、円形、多角形なども採用することができる。
また、打撃部材としては、鋼球24dに限定されず、回転楕円体、円柱、多角柱、その他の形状を有するブロック形状等を採用することができる。
【0101】
また、上記第3の実施形態の説明では、一例として、円筒部26aと凹部26bとで構成される凹凸形状であり、打撃ヘッド28aが半球状である場合の例で説明したが、これらの形状は適宜変形することができる。
例えば、凹凸ブロック26の外周面の凹凸形状は、波形断面、三角形断面、矩形断面によって形成されていてもよい。また、打撃ヘッド28aの形状は、球状、円錐状、三角錐状、多角錐状であってもよい。
また、打撃ヘッド28aは、例えば、カムフォロアなどの倣い機構を付けた構成としてもよい。
【0102】
また、上記の説明では、衝撃印加工程を行ってから、挿入状態確認工程を行う場合の例で説明したが、衝撃印加工程が衝撃を繰り返し加える工程である場合には、衝撃印加工程と並行して、挿入状態確認工程を行い、挿入状態が合格となったら、挿入印加工程を終了するようにしてもよい。
【0103】
また、上記の説明では、衝撃印加工程の後に挿入状態確認工程を行う場合の例で説明したが、挿入部材配置工程(ステップS2)と衝撃印加工程(ステップS3)との間にステップS4と同様な挿入状態確認工程を設け、挿入OKの場合にはステップS5に移行し、挿入OKでない場合にはステップS3に移行するようにしてもよい。
【0104】
また、上記の説明では、挿入状態確認工程を部品組立装置が行う場合の例で説明したが、例えば、カメラ23が撮像した画像をモニタなどに表示して、この画像を作業者が見て挿入状態を確認してもよい。
また、例えば、挿入部材配置工程において挿入部材の配置位置が安定している等の理由で、挿入部材が被挿入部材に引っ掛かった場合でも確実に挿入できるような衝撃の大きさや衝撃の繰り返し数が予め知られている場合には、挿入状態確認工程を省略してもよい。
【0105】
また、上記の各実施形態で説明した構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0106】
1、1A、1B 部品組立装置
4 作業室
7 パレット
8 ストッカ
9 ハンド
10 多関節ロボット
11 搬送ロボット(挿入部材移動部)
12、12A、12B 組立ステージ(被挿入部材保持部)
13 接着剤塗布ユニット
17、17A、17B 制御ユニット(挿入状態検出部)
18 Y軸アクチュエータ(衝撃印加部)
19 回転アクチュエータ(衝撃印加部、被打撃部材駆動手段、相対移動手段)
20 ピエゾハンマ(衝撃印加部)
20a 打撃部(打撃部材)
20b ピエゾアクチュエータ(圧電アクチュエータ)
20c 付勢部材
21 XYステージ
22、22A チャック部(被挿入部材固定部)
22c チャック部材
22d 衝撃伝達部材
23 カメラ(挿入状態観察部、挿入状態検出部)
24、25 衝撃発生器(衝撃印加部)
24a 被打撃部材
24b、24c 空洞部
24d 鋼球(打撃部材)
26 凹凸ブロック(被打撃部材)
26a 円筒部
26b 凹部
27 打撃プランジャ
28a 打撃ヘッド(打撃部材)
29 コイルスプリング
31 打撃プランジャ移動部
50 レンズ鏡筒(被挿入部材)
50b 開口部
50c レンズ収容穴部(凹部)
50d 挿入開口(開口)
51、55 レンズ(挿入部材)
52、60 レンズ組立体(部品)
53 間隔リング(挿入部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して、前記被挿入部材および前記挿入部材を含む部品を組み立てる部品組立方法であって、
前記凹部の開口を上方に向けて前記被挿入部材の位置を被挿入部材保持部に固定して、
前記被挿入部材保持部に衝撃を加えることにより、前記被挿入部材を介して前記挿入部材に衝撃を加える
ことを特徴とする部品組立方法。
【請求項2】
被挿入部材に設けられた凹部に挿入部材を挿入して、前記被挿入部材および前記挿入部材を含む部品を組み立てる部品組立装置であって、
前記凹部の開口を上方に向けて前記被挿入部材の位置を固定する被挿入部材保持部と、
前記被挿入部材上に配置された前記挿入部材に、前記被挿入部材を介して衝撃を加える衝撃印加部と、
を備えることを特徴とする部品組立装置。
【請求項3】
前記衝撃印加部は、前記被挿入部材保持部に衝撃を加えることにより、前記被挿入部材を介して前記挿入部材に衝撃を加えることを特徴とする請求項2に記載の部品組立装置。
【請求項4】
前記衝撃印加部は、圧電アクチュエータで駆動される打撃部材によって衝撃を加えることを特徴とする請求項2または3に記載の部品組立装置。
【請求項5】
前記被挿入部材上に配置された前記挿入部材の前記凹部における挿入状態を検出する挿入状態検出部を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の部品組立装置。
【請求項6】
前記衝撃印加部は、
空洞部を有する被打撃部材と、
該被打撃部材の前記空洞部の内部に移動自在に設けられた打撃部材と、
前記被打撃部材を断続的に移動させ、前記打撃部材に作用する慣性力によって前記打撃部材を前記被打撃部材に衝突させる被打撃部材駆動手段と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の部品組立装置。
【請求項7】
前記衝撃印加部は、
表面に複数の凹凸が形成された凹凸部を有する被打撃部材と、
該被打撃部材の前記凹凸部に対して付勢された打撃部材と、
前記打撃部材を前記被打撃部材の前記複数の凹凸を横切る方向に相対移動させて、前記打撃部材によって前記被打撃部材を繰り返し打撃する相対移動手段と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の部品組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−81560(P2012−81560A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230563(P2010−230563)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】