部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置
【課題】 確率論的に推定されたクリープ損傷度及び確率論的に推定された熱疲労損傷度に従って、部品の寿命が高精度で、しかも、迅速に高温に晒される部材の寿命を診断することができる部材の寿命を診断する方法を提供するにある。
【解決手段】 各部品毎にクリープ損傷度がラーソン・ミラーパラメータを含む関係式で近似される。部品毎の定数を決定して得られる近似式でそのクリープ損傷度が推定され、このクリープ損傷度がワイブル統計解析により確率論的にクリープ損傷度が推定される。また、熱疲労損傷度を近似する近似式で求められた熱疲労損傷度は、同様にワイブル統計解析により確率論的に熱疲労損傷度が推定される。
【解決手段】 各部品毎にクリープ損傷度がラーソン・ミラーパラメータを含む関係式で近似される。部品毎の定数を決定して得られる近似式でそのクリープ損傷度が推定され、このクリープ損傷度がワイブル統計解析により確率論的にクリープ損傷度が推定される。また、熱疲労損傷度を近似する近似式で求められた熱疲労損傷度は、同様にワイブル統計解析により確率論的に熱疲労損傷度が推定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温環境下に長期間置かれる部材、例えば、蒸気タービン・ユニットのロータは、高温環境下で長時間負荷を受け続けるためクリープ損傷を受け、このクリープ損傷を原因としてその寿命が消費される。また、ロータには、タービンの起動時および停止時に繰り返し熱応力が与えられ、その結果、熱疲労を原因としてその寿命が消費される。従って、蒸気タービン・ユニットにおいて、その信頼性を長期に亘って確保するには、その部品のその寿命が精度良く診断されることが重要とされている。
【0003】
従来、この分野での寿命を診断する技術としては、新な部品の材料に対して及びリプレイス時に廃却された高温下に置かれた部品の材料に対して破壊試験が実施され、この材料特性の試験結果に基づいて、その余寿命が診断される技術が開発され、実用化されている。即ち、破壊試験において、その材料強度特性であるクリープ破断強度及び低サイクルでの疲労強度データが実験室的に求められる。このクリープ破断強度及び低サイクル疲労強度データは、あるパラメータの関数、例えば、硬さの関数として求められる。また、蒸気タービン・ユニットを定期的に検査する際にも、個々の部材に固有のパラメータとして硬さが計測される。この部材固有のパラメータ、即ち、硬さから求めたクリープ破断強度及び低サイクル疲労強度データから、ユニットの運転履歴及び今後の運用を考慮した余寿命が診断される。
【0004】
この余寿命を診断する技術の一例として、特許文献1に開示がある。この公報には、高温下に置かれる構造部材の使用状態量から温度・応力特性が算出され、また、構造部材の硬さから材料特性が算出され、更に条件を設定する条件設定器によって運転履歴に応じた修正がこれら特性に加えられて構造部材に生じた損傷蓄積量が演算され、許容値と比較される余寿命診断の技術が開示されている。このような余寿命診断の技術によれば、構造部材にき裂が発生する時期を正確に予知判断することができるとしている。
【特許文献1】特公平1−27378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、個々のユニット毎に個々の高温部材の寿命は累積線形損傷則によりクリープ損傷、疲労損傷を求め、今後の運用を考慮した余寿命評価を実施する方法を採用することにより、個々の高温部材の寿命診断を行うにとどまっていた。
【0006】
そこで、余寿命診断の高精度化及び評価の迅速化を図るにために、高温部材の個々の寿命診断結果を統合し、クリープ損傷、疲労損傷度の近似式を求め、更に統計的寿命解析による高温部材の確率論的寿命診断方法及びその装置の開発が望まれる。
【0007】
また、従来は高温部材の寿命診断を実施する際に、部材の硬さ計測は定期検査時に行い、当該硬さを用いて、寿命診断を実施していた。しかし、定期検査にて硬さ計測を実施しなければ精度のよい寿命診断がでず、評価したい時期に迅速に硬さ測定をすることは困難であった。
【0008】
そこで、寿命診断を高精度に及び評価の迅速化を図るに際して、構築された高温部材の個々の硬さの経時変化データを統合して,タービン高温部材の硬さを確率論的確率論的に推定し寿命診断をする方法及びその装置の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上述したような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、高温環境下に置かれる構造部材の寿命を高精度で、しかも、迅速に、診断することができる診断方法及びその寿命を診断する装置を提供するにある。
【0010】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する工程と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0011】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する工程と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0012】
更に、この発明においては、
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0013】
更にまた、この発明においては、
前記確率は、部材の硬さから推定しても良い。
【0014】
また、更に、この発明においては、
前記寿命を診断する手段は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供するようにしても良い。
【0015】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する手段と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0016】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する手段と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0017】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0018】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0019】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0020】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0021】
また、上記したすべての方法の発明は、その工程を含む計算機のプログラムとして提供しても良い。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、高温環境下に置かれる構造部材の寿命を高精度で、しかも、迅速に、診断することができる診断方法及びその寿命を診断する装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明は、特に、高温環境下に長期間置かれる部材、例えば、蒸気タービン・ユニットに組み込まれる高圧或いは中圧ロータ、高圧或いは中圧ケーシング、及び主要弁等の構造部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置に適している。
【0024】
この発明の診断方法について概説すれば、診断対象である高温環境下に長期間置かれる構造部材に対して、累積損傷則に基づいてクリープ損傷度及び熱疲労損傷度が算出されると共に、該算出されたクリープ損傷度及び熱疲労損傷度が記憶装置にデータとして格納され、この両データを用いてワイブル(Weibull)統計解析に基づいて確率論的にその部材の余寿命が予測解析される。
【0025】
この寿命診断では、定期検査時に測定された部材の硬さのデータから個々の部材の材料強度特性が推定され、これらのデータ、履歴データ及び設計データに基づいて寿命が診断される。
【0026】
以下、図面を参照して、この発明の部材の寿命を診断する装置の実施例を説明する。
【0027】
図1乃至図3は、本発明に係る高温で使用される構造部材の寿命診断装置に係る実施例を説明するための機能ブロック図である。確率論的に蒸気タービン部材のクリープ損傷度を推定するシステムは、図1乃至図3に示される機能を備えている。即ち、クリープ損傷度を推定システムは、蒸気タービンの部材に関するデータを入力する入力部1、データを記憶する記憶部2、データに基づいてクリープ損傷度を演算する演算部3、演算部3からの演算結果を記録する記憶部4及びクリープ損傷を推定するためにある近似式で演算する演算部5から構成されている。
【0028】
データ入力部1で入力される蒸気タービンの部材に関するデータとしては、評価部品データ、設計データ、検査データ及び運転履歴データがある。また、評価部品データとしては、余寿命を推定する対象物としての部品のユニット名、その部品名及び部位名がある。また、設計データとしては、蒸気タービンの定常状態での運転動作における構造部材が晒される供用中温度T及び応力σがある。さらに、検査データとしては、蒸気タービンの定期的な検査時に測定される構造部材の硬さ(ビッカース硬度)Hがあり、また、運転履歴データとしては、蒸気タービンの総運転時間tがある。
【0029】
記憶部2には、蒸気タービン部材データ入力部1から入力された評価部品データ、設計データ、検査データ、運転履歴データが記憶され、演算部3,5で必要とされる際に、それらデータがアクセスされ出力される。
【0030】
クリープ損傷度を演算する演算部3は、予め記憶された以下に述べる式(1)〜(4)に基づいてクリープ損傷度φcを算出する。
【0031】
高温及び一定応力の条件下での定常運転では、クリープ損傷が各部材に生じ、この部材のクリープ損傷度φcは、実験的研究により硬さHと負荷応力σからラーソン・ミラーパラメータPを介して式(1)より推定できる。
【0032】
P' = A1(σ)H + B1(σ) ... (1)
ここで、σ:応力
H:硬さ
一方、ラーソン・ミラーパラメータP’は、供用中の温度T(℃)とクリープ破断寿命trとの関数として式(2)のように表される。
【0033】
P' = (T + 273) (log tr + C) ... (2)
C:材料定数
従って、蒸気タービンの定期的な検査時に部材硬さHを測定或いは後に説明するようにある時点でこの部材の硬さ推定することにより、供用中温度T(℃)と負荷応力σがわかれば、その部材がクリープ破断する寿命すなわち余寿命trが式(3)から推定される。
【0034】
tr = 10{P'/(T+273)-C} ... (3)
ここで、C:材料定数、
T:供用中の温度及び
tr:クリープ破断寿命
φc = t/(tr + t) 或いは φc = t/tr ... (4)
ここで、φc:クリープ損傷度
ここで、診断対象の部材の高温高応力下の部位の硬さのデータを用いる場合は、φc=t/(tr+t)が採用され、高温低応力下の部位の硬さのデータを用いて同じ部材の高温高応力の部位を診断対象とする場合は、φc=t/trが採用される。
【0035】
クリープ損傷度を演算する演算部3からの演算結果は、演算結果記憶部4に保存される。記憶部4では、各部材毎、各部位毎に演算結果が格納され、部材名或いは部位名を指定することによってその演算結果をアクセスすることができる。このように演算結果記憶部4には、数多くの個々の部材及び評価部位毎のクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPの組み合わせデータが格納される。図3は、格納されているクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPのデータをグラフにプロットしたものである。
【0036】
次に、クリープ損傷度を推定する近似式演算部5では、各部品の評価部位毎にクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータpとの関係を表している式(5)からクリープ損傷度φcの近似式が算出される。近似式の算出は、演算結果記憶部4に格納された個々の部材の評価部位毎にクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPの組み合わせのデータから、近似式(5)が確定される。即ち、近似式(5)において各部材の部位毎の定数A,Bが決定される。定数A,Bが決定されると、Pとφcとの関係を表した近似式(5)によりクリープ損傷度φcを推定する。
【数1】
【0037】
この近似式(5)は、実際に蒸気タービンの部材について測定したラーソン・ミラーパラメータPとクリープ損傷度φcとの関係に極めて近似していることが実験的に確認されている。
【0038】
次に、図2に示されるように確率論的余寿命を推定するシステムにクリープ損傷度を推定する近似式演算部5からの出力結果、即ち、推定クリープ損傷度φcが入力される。このシステムは、ワイブル統計処理演算部6及びクリープ損傷度φcの確率論的推定式の算出部7から構成されている。
【0039】
ワイブル統計処理演算部6において、推定クリープ損傷度φcがワイブル統計解析され、確率論的推定式の算出部7において、ワイブル統計解析の結果から確率論的寿命推定式が算出される。
【0040】
運転時間t(h)と供用温度T(℃)の関数としてラーソン・ミラーパラメータP(t、T)とクリープ損傷度φcとの関係においてデータのばらつきは、ワイブル分布でよく近似でき、ワイブル統計解析によりワイブル係数m、尺度母数βを算出する。
【0041】
クリープ損傷度の確率論的推定式の算出部7では、式(6)のように確率論的にクリープ損傷度φcを推定する式を算出する。
【数2】
【0042】
図4及び図5は、この発明の高温で使用される構造部材の寿命診断装置に係る他の実施形態を説明するためのブロック図である。図4に示されるシステムにおいては、蒸気タービン部材の確率論的熱疲労損傷度が推定される。このシステムは、蒸気タービンの部材に関するデータを入力するデータ入力部1A、入力されたデータを記憶する記憶部2A、熱疲労損傷度を演算する演算部8、演算された熱疲労損傷度の結果を記憶する記憶部9及び熱疲労損傷度を推定する近似式演算部10から構成されている。
【0043】
データ入力部1Aに入力される評価部品データとしては、ユニット名、部材名、部材の部位名がある。また、設計データとしては、構造部材の供用中温度T、応力σ、具体的には、コールド起動時、例えば、蒸気タービンの定期検査後に起動する時のコールド熱応力σc、ウォーム起動時、例えば、週末停止後の起動する時のウォーム熱応力σw、ホット起動時,例えば、毎日起動停止する時のホット熱応力σhがある。さらに、検査データとしては、定期検査時の構造部材の硬さ(ビッカース等)Hがあり、運転履歴データとしては、具体的には、総起動回数N、コールド起動時のコールド起動回数nc、ウォーム起動時のウォーム起動回数nw、ホット起動時のホット起動回数nhがある。
【0044】
記憶部2Aには、データ入力部1Aで入力された評価部品データ、設計データ、検査データ、運転履歴データが格納されている。
【0045】
熱疲労損傷度を演算する演算部8には、予め以下に述べる式(7)〜式(10)を記憶する記憶部を含んでいる。この演算部では、これらの式(7)〜式(10)に記憶部2Aで記憶された各種のデータが入力されて各式(7)〜式(10)に対応した演算が実行され、最終的に熱疲労損傷度(熱疲労損傷実測値)φf及び熱疲労損傷度を推定する推定パラメータqが算出される。
【0046】
すなわち、タービンの起動及び停止の繰り返しによって生じる熱応力が繰り返し部品に与えられる結果、熱疲労損傷が生じる。この熱疲労損傷は、実験的研究に歪み範囲Δεeで推定することができる。この歪み範囲Δεeは、部品によりき裂が生じるまでの、即ち、破断に至るまでの起動及び停止の繰り返し回数Mと部品の硬さHの関数であって、式(7)で表される。
【0047】
Δεe = C1・Mα1 + C2・Mα2 ... (7)
ここで、C1 = 10β1・H+β2,
α1 =β3・H + β4,
C2, α1, β1, β2, β3, β4=定数
一方、寿命が評価される部位の歪み範囲Δεeは、歪み集中係数Kε、熱応力σおよび弾性係数Eの関数として式(8)のように表される。
【0048】
Δεe = 2Kε(σ/E) ... (8)
従って、熱応力σが分かれば、供用中の部材の硬さHを測定することによりその部材のき裂が発生されるまでの回数Mを推定することができる。
【0049】
起動回数nには、コールド起動の回数nc、ウォーム起動の回数nw、ホット起動回数nhの3パターンの起動回数がある。各起動パターンでの起動回数nと、き裂発生までの回数(破断までの回数)Mとの比n/Mを累計する累積損傷則の式(9)が熱疲労損傷度φfと定義される。
【0050】
φf = nc/Mc + nw/Mw + nh/Mh ... (9)
一方、総起動回数Nが同じであっても、起動時及び停止時の温度差によって生じる熱応力とコールド、ウォーム及びホット起動のパターンの違いにより熱疲労損傷度φfの消費の度合いが変化される。
【0051】
そこで、起動パターン、起動回数、各熱応力を考慮し、熱疲労損傷度の推定パラメータqが式(10)のように決定される。
【0052】
q = N (σc・nc/N + σw・nw/N + σh・nh/N)α ... (10)
α:定数
σc:コールド起動時の熱応力
σw:ウォーム起動時の熱応力
σh:ホット起動時の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
このように演算された熱疲労損傷度φf、熱疲労損傷度推定パラメータqは、熱疲労損傷度の演算結果を記憶した記憶部9に出力される。従って、この記憶部9には、数多くの部材についての評価部位毎の熱疲労損傷度φfと熱疲労損傷度の推定パラメータqとの組み合わせがデータとして格納される。図6は、格納されている疲労損傷度φfと熱疲労損傷度の推定パラメータqのデータとの関係をプロットしたものである。この図6には、近似式(11)によって表される一次式も示されている。この図6から明らかなようにデータプロットは、この一次式に近似されている。
【0053】
そして、熱疲労損傷度を推定する近似式演算部10において、各部品の評価部位毎に熱疲労損傷度φfと熱疲労損傷度推定パラメータqとの関係を示している熱疲労損傷度φfの近似式が算出される。この近似式の算出は、演算結果記憶部9に格納された各部材の評価部位毎の熱疲労損傷度φfと熱疲労損傷度の推パラメータqの組み合わせデータから、式(11)で近似される。式(11)は、部品毎の推パラメータq及び熱疲労損傷度φfを線形近似式で表している。
【0054】
φf = Cf・q ... (11)
Cf:定数
式(10)のαが部品部位ごとに求められ、式(11)を最も近似するような適切なパラメータの値が算出される。
【0055】
次に、図5に示すように熱疲労損傷度の確率論的な余寿命が予測解析される。図5に示されるシステムでは、図5の熱疲労損傷度を推定する近似式演算部10で演算された結果に基づき、熱疲労損傷度の確率論的な余寿命を予測解析するためのワイブル統計処理演算部11及び熱疲労損傷度φfの確率論的推定式の算出部12からなっている。
【0056】
ワイブル統計処理演算部11では、フィールドデータのばらつきを定量的に把握するためにワイブル統計解析をすることにより、ワイブル係数m及び尺度母数βが演算される。
【0057】
熱疲労損傷度φfの確率論的推定式の算出部12は、ワイブル統計処理演算部11で求められたワイブル係数m、尺度母数βを式(12)に代入することにより、確率論的に熱疲労損傷度φfを推定することができる。
【数3】
【0058】
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:累積損傷確率
図7、図8及び図9は、確率論的に部品の寿命を評価する評価式で演算を実行する演算装置及びその演算結果に従ってその部品の寿命を診断する装置を具備したシステムの機能を示している。
【0059】
図7及び図8には、確率論的に部品の寿命を評価する評価式で演算を実行する演算装置が示されている。この演算装置は、実施する事項を決定するオプション部13、必要なデータを入力し、このデータを保持するデータ入力・記憶部14、損傷度を演算する損傷度演算部15、損傷度の演算結果を記憶する記憶部16、評価対象についての情報を入力する入力部1B、記憶部16からのデータに基づき各近似式及び推定式を演算する演算部17及びこの近似式及び推定式を記憶する記憶及び出力部18から構成されている。
【0060】
オプション部13においては、1)クリープ損傷度及び熱疲労損傷度を演算し、この演算結果を記憶部に格納するのみを実施する場合、2)クリープ損傷度を推定する近似式及びクリープ損傷度を確率論的に推定する式を演算で求めるとともに熱疲労損傷度を推定する近似式及び熱疲労損傷度を確率論的に推定する式を演算で求めることを実施する場合、3)確率論的に寿命の診断評価のみを実施する場合のいずれかが選択可能となっている。具体的には、これらの場合に対応して設けられている選択項目、例えば、図示しない選択ボタンにより上述した(1)から(3)の実施事項が選択可能となっている。
【0061】
入力及び記憶部14には、ユニット名、部材名、部位名等の評価部品データ、起動停止回数、運転時間等の運転履歴データ、部材の硬さ等の検査データ及び温度、応力等の設計データが入力され、記憶される。
【0062】
損傷度演算部15では、式(4)に基づいてクリープ損傷度φc及び式(9)に基づいて熱疲労損傷度φfが演算され、これら損傷度の演算結果が記憶部16に格納される。
【0063】
入力部1Bには、近似式、推定式を求める評価対象としての部材、部位のデータが入力され、評価対象が特定される。近似式及び推定式を演算する演算部17では、特定された部材及び部位の損傷度の演算結果としてM個以上のデータ数が得られていれば、クリープ損傷度を推定する近似式が演算され、クリープ損傷度を確率論的に推定する推定式が演算される。また、演算部17では、同様に、熱疲労損傷度を推定する近似式が演算され、熱疲労損傷度を確率論的に推定する推定式が演算される。近似式及び推定式の記憶及び出力部18には、前述の近似式、推定式が記憶され、その近似式及び推定式が出力される。
【0064】
次に、図9を参照して寿命診断装置について説明するが、これは評価ユニット、部品、部位のデータ入力部23、推定式による寿命評価の演算部24、評価結果の出力部27から構成されている。
【0065】
評価ユニット、部品、部位のデータ入力部(評価部材部位データ入力部)23にて評価に必要なデータ、評価ユニット、部材、部位、運転時間、起動停止回数、温度、応力、累積確率Pfが入力される。
【0066】
推定式よる寿命評価の演算部24によりクリープ損傷度確率論的推定及び熱疲労損傷度確率論的推定が演算され、出力部27にて評価結果が出力される。
【0067】
図10には、蒸気タービンの部材の寿命を診断する装置によってタービン部材の確率論的にクリープ損傷度φcを評価した結果の出力例が示されている。また、図11には、確率論的に熱疲労損傷度φfを評価した結果の出力例が示されている。図10には、累積確率Pf=0.05、0.87及び0.95をパラメータとした場合の確率論的に推定した蒸気タービンの部材のクリープ損傷度φcと運転時間との関係が示されている。また、図11には、累積確率Pf=0.05、0.44、0.95をパラメータとした場合の確率論的に推定した蒸気タービンの部材の熱疲労損傷度φfと起動回数との関係が示されている。
【0068】
図10及び図11の曲線において、定期点検時に測定された硬さ測定から各損傷度φf、φcを計算し、式(6)より累積確率Pf=0.87及び0.44が定まれば、その後の蒸気タービンの部品ごとにクリープ損傷度φcと熱疲労損傷度φfに基づく余寿命を確率論的に精度よく予測できることが確認されている。
【0069】
この様に、この発明の実施例に係る装置によれば、任意の累積確率Pfに対して、寿命を消費して行く過程のシミュレーションが可能となる。
【0070】
本発明は、前述した実施形態では、高温で使用される構造部材として蒸気タービンのロータを例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されず高温で使用される構造部材の何れの部品にも適用することができる。
【0071】
更に、この発明の他の実施例について図12から図17を参照して説明する。
【0072】
図12は、この発明の部材の寿命を診断する装置を示している。その寿命診断装置は、タービン部材の確率論的に硬さを推定する推定部51、タービン部材の熱疲労損傷度を診断する診断部52、タービン部材のクリープ損傷度を診断する診断部53から構成されている。
【0073】
高温に晒される部材の硬さを推定する推定部51は、部材に関するデータを入力する入力部61と、入力されたデータに基づいて部材の硬さを推定する演算式で演算する演算部62と、演算部62からの演算結果を出力する出力部63とから成っている。推定部51においては、後に説明するようにタービン部材に対して、ワイブル統計解析による確率論的に求める確率論的推定式に基づき、任意の時点における部材の硬さを推定することができる。
【0074】
熱疲労損傷度を推定する推定部52は、部材に関するデータを入力する入力部71と、入力されたデータに基づいて熱疲労損傷度を演算する演算部72と、この演算部72からの熱疲労損傷度の演算結果を出力する出力部73とから成っている。この熱疲労損傷度の診断部52では、部材硬さ推定部51の出力である硬さの推定値と、タービン部材の熱応力と、タービン部材の温度と、タービン部材の起動回数から熱疲労損傷度が推定、即ち、評価される。
【0075】
クリープ損傷度を推定する推定部53は、部材に関するデータを入力する入力部81と、クリープ損傷度を演算する演算部82と、クリープ損傷度の演算結果を出力する出力部33とから成っている。この推定部53では、部材硬さ推定部51の出力である硬さの推定値と、タービン部材の定常応力と、タービン部材の温度と、タービン部材の運転時間から累積損傷則に基づいてクリープ損傷度 が推定、即ち、評価される。
【0076】
図13は、部材硬さ推定部51の詳細が示されている。この図13に示されるように、高温タービン部材の寿命診断装置では、経時的硬さの変化データが長期間、例えば、15年に亘って蓄積され、この硬さデータがワイブル統計処理されることによりタービン等の部材の硬さが確率論的に推定される。
【0077】
製造時に各部材ごとに切片が用意され、この製造時の初期硬さが検査され、その後、同様に硬さが検査される。この硬さHと運転時間tとについてプロットしたところ、図14に示されるような関係となり、この図14のデータプロットは、(33)式のように線形近似することができることが判明している。図14では、硬さHは、ビッカース硬さとしているが、硬さの単位は、このビッカース硬さに限らず、他の単位が採用されても同様に(33)式に近似することができることが判明している。
【0078】
H = at + b ... (33)
また,運転時間と硬さの関係におけるデータのばらつきを表す確率変数μ=(実測値/推定値)は、図15に示すばらつき特性のように、ワイブル分布に良く近似できることが判明している。従って、データの確率変数μからワイブル係数及び尺度母数を決定することでき、次式(34)式から確率論的に硬さを推定することができることが判明している。
【数4】
【0079】
図13に示されるデータ入力部51には、評価部品データ、硬さデータ、評価時間データが入力される。評価対象の部品データとしては、部品が組み込まれるユニットの名称、例えば、蒸気タービンユニット、部品の材料を特定する部材名、部品名が入力される。硬さデータとしては、(i)初期硬さを入力する場合には、その初期硬さH0が入力され、(ii)定期検査時の硬さを入力する場合には、定期検査時の硬さ計測までの運転時間t1とともに硬さH1が入力され、(iii)直接累積確率Pfを指定する場合には、適当な累積確率Pfが入力され、評価時間データについては、評価時までの評価時間thが入力される。
【0080】
更に、図13に示される演算部62においては、評価時の硬さが推定式によって確率論的に次のように推定される。すなわち、部材の材料特性に依存する硬さのばらつきを考慮して、算出部121において、初期硬さ及び定期検査時の硬さがどの程度の累積確率Pfに相当するかが次のように算出する。
【0081】
(i)初期硬さが入力される場合は、
初期硬さからこの初期硬さに相当する確率Pf0が式(35)より求められる。
【0082】
Pf0 = 1 − exp{-(μ0/β)m} ... (35)
ここで、H:部材の硬さ、t:部材の総運転時間、a,b:定数、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:部材の初期硬さに対応する累積確率、μ0:部材の初期硬さ(実測値)/部材の硬さ(推定値)である。ここで、
初期硬さ(実測値)= H0
総運転時間: t = t0 = 0
部材の硬さ(推定値)H = a t0 + b = b
[(33)式による。]
(ii)定期検査時の硬さが入力される場合には、
定期検査時の硬さよりこの硬さに対応する確率Pf1が(36)式より求められる。
【0083】
Pf1 = 1 − exp{-(μ1/β)m} ... (36)
ここで、μ1=定期検査時の硬さ(実測値)/硬さ(推定値)
(実測値)=定期検査時の硬さ=H1
総運転時間:: t = t1
部材の硬さ(推定値)H = a t0 + b = b
[(33)式による。]
(iii)直接Pfが指定される場合には、指定されたPf及び評価時間tを用いて硬さを推定することができる。
【0084】
次に、硬さ演算部122にて、累積確率算出部121で算出した確率Pf0,Pf1または、直接指定したPfを用いて、評価時の総運転時間tにより評価時の硬さHが算出される。
【0085】
次に、図13に示される出力部63において、演算結果の評価時の硬さH、その時の硬さの確率Pfが出力される。
【0086】
図16は、タービン部材の熱疲労損傷度を診断する推定部52の詳細を示している。図16に示されるデータ入力部71において、演算データとしてタービン部材の硬さH(部材の硬さ推定部51の出力に相当する)、評価部品データとしてユニット名、部材名、部位、また設計データとして温度T、コールド起動時の熱応力σc、ウォーム起動時の熱応力σw、ホット起動時の熱応力σh、これらの熱応力の総称である総称熱応力σ、さらに運転データ(運転履歴データ)として総起動回数N、具体的にはコールド起動回数nc、ウォーム起動回数nw、ホット起動回数nhが夫々入力される。
【0087】
図16に示される熱疲労損傷演算部72は、データ入力部61からの入力データと部材硬さ推定部51により推定した評価時の硬さHで熱疲労損傷が算出される。
【0088】
タービンの起動及び停止により生じる熱応力の繰り返が部材に与えられることによって部材に生じる熱疲労損傷は、低サイクル疲労特性としてき裂発生までの繰り返し回数Mと硬さHの関数から歪み範囲Δεeを(37)式により推定することができる。
【0089】
Δεe = C1・Mα1 + C2・Mα2 ... (37)
一方、寿命評価部位の歪み範囲Δεeは、歪み集中係数Kε、熱応力σ及び弾性係数Eの関数として式(38)式のように表さられる。
【0090】
Δεe = 2Kε(σ/E) ... (38)
従って、熱応力σが判明すれば、部材硬さ推定手段51により求めた評価時の部材硬さHを用いることにより、そのタービン部材のき裂発生までの繰返し回数(破断回数)Mを推定できる。
【0091】
起動回数nには、コールド起動回数nc、ウォーム起動回数nw、ホット起動回数nhの3パターンの起動回数があり、各起動パターンでの起動回数nとき裂発生までの繰返し回数Mとの比n/Mの累計を(39)式のように熱疲労損傷度φfを求めることができる。
【0092】
φf = nc/Mc + nw/Mw + nh/Mh ... (39)
ここで、 C1 = 10β1H+β2、
α1 =β3・H + β4、
C2,α1,β1,β2,β3,β4:定数、
Δεe:寿命評価部位の歪み範囲、
Kε:歪み集中係数、
σ:熱応力、
M:き裂発生までの繰返し回数、
E:弾性係数、
nc:コールド起動回数、
nw:ウォーム起動回数、
nh:ホット起動回数、
Mc:コールド起動時のき裂発生までの繰返し回数、
Mw:ウォーム起動時のき裂発生までの繰返し回数、
Mh:ホット起動時のき裂発生までの繰返し回数、
φf:熱疲労損傷度。
【0093】
図17は、タービン部材のクリープ損傷度を診断する診断部53の詳細を示している。図17に示されたデータ入力部81には、評価部品データとしてユニット名、部材名、部位、又設計データとして定常状態のタービン部材の温度T、定常応力σ、更に運転データ(運転履歴データ)として総運転時間t、又演算データとしてタービン部材の硬さH(部材硬さ推定手段51の出力)が入力される。
【0094】
図17に示された推定部82においては、データ入力部81からの入力データと部材硬さ推定部51からの評価時の硬さHより、クリープ損傷度が算出される。具体的には、クリープ損傷度推定部82おいて、(40)〜(43)式に基づいてクリープ損傷度が推定(算出)される。
【0095】
高温一定応力条件下での定常運転によるクリープ損傷度は、硬さHと定常応力(負荷応力)σからラーソン・ミラーパラメータP'を、(40)式より推定できる。
【0096】
P' = A1(σ)H + B1(σ) ... (40)
一方、ラーソン・ミラーパラメータP'は、供用中温度T(℃)とクリープ破断寿命trとの関数として(41)式のように表される。
【0097】
tr = 10{p'/(T+273)-C} ... (41)
また、クリープ損傷度φcは、(42)式で求めることができる。
【0098】
φc = t/(tr + t) 或いは φc = t/tr ... (42)
ここで、σ:定常応力、H:部材の硬さ、C:材料定数、φc:クリープ損傷度である。
【0099】
クリープ損傷度に関する推定結果は、図17に示されるクリープ損傷度の推定結果を出力する出力部83により出力される。
【0100】
尚、図13に示される演算部121において、硬さの累積確率Pfを推定できるが、この推定された部材の硬さ確率Pfを図9に示される入力部23に入力してクリープ損傷度が推定されても良い。同様に演算部121において推定された部材の硬さ確率Pfを図9の入力部23に入力して熱疲労度が推定されても良い。
【0101】
図18は、タービン部材のネットワーク例えばインターネット95を介した寿命診断方法の実施形態である。図18に示されるシステムでは、診断対象である低合金鋼からなる部材の寿命を診断することを望むクライアントに対してインターネット95を介してサーバ96がそのサービスを提供することができる。即ち、インターネット95を介して各種情報を提供する部材の寿命を診断するシステムでは、クライアント側の端末94が入力部91及び出力部92を備え、サービス提供サーバ96側が既に説明したクリープ損傷度及び該熱疲労損傷度を推定する推定部を備えている。外部入力部91は、サーバからの指示に基づいて、入力診断情報としてユニット名、評価部品名、硬さ及び硬さ計測時の運転時間若しくは累積確率Pf、運転履歴である評価時までの運転時間及び評価時までの起動停止回数を入力することができ、推定部は、ネットワーク95を介して入力部91から入力されたデータを受け取り、このデータに基づきクリープ損傷度及び該熱疲労損傷度を推定する。クライアント側の出力部92は、インターネット95を介して推定部から出力された推定結果を獲得してその推定結果を出力する。
【0102】
外部入力部91としては、パソコン等のコンピュータを動かすための指示やデータを与えるための装置、例えばキーボード、マウス、タブレット、ジョイステイック、スキャナー、OCR、文字認識装置、音声入力装置、ビデオ入力装置、バーコードリーダー、マイク等であれば良い。また、出力部92としては、プリンタやディスプレイ或は音声出力器などコンピュータで処理された情報を出力するものを全て含む。
【0103】
サービス提供サーバ96は、コンピュータ等の一種の情報処理端末で構成されており、インターネット95に対するサーバの機能を有している。ここで、インターネット95は有線であっても無線であってもよく、デジタル通信が行えればよい。また、公衆回線を含む場合もある。
【0104】
以上、本発明と好ましい実施の形態をまとめると次のとおりである。
【0105】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する工程と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0106】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0107】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0108】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0109】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する工程と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0110】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0111】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0112】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式に確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度は、下記式で推定されても良い。
【数5】
【0113】
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:累積損傷確率
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0114】
また、この発明においては、
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0115】
また、この発明においては、
前記確率は、部材の硬さから推定しても良い。
【0116】
また、この発明においては、
前記確率Pfは、下記式で定められる硬さに依存した確率Pfを入力することにより推定しても良い。
【0117】
Pf=1−exp{−(μ/β)m}
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数(scale parameter)、
μ:部材の硬さ(実測値)/部材の硬さ(推定値)である。
【0118】
更に、ここで、部材の硬さの推定値は次の近似式により求める。
【0119】
at+b
t:部材の硬さを計測した時の供用時間、a,b:定数、
また、この発明においては、
前記寿命を診断する手段は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供するようにしても良い。
【0120】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する手段と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0121】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0122】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0123】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0124】
上述した発明において、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する手段と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0125】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0126】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0127】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式に確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度は、下記式で推定されても良い。
【数6】
【0128】
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:累積損傷確率
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0129】
また、この発明においては、
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0130】
また、この発明においては、
前記確率は、部材の硬さから推定しても良い。
【0131】
また、この発明においては、
前記確率Pfは、下記式で定められる硬さに依存した確率Pfを入力することにより推定しても良い。
【0132】
Pf=1−exp{−(μ/β)m}
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数(scale parameter)、
μ:部材の硬さ(実測値)/部材の硬さ(推定値)である。
【0133】
更に、ここで、部材の硬さの推定値は次の近似式により求める。
【0134】
at+b
t:部材の硬さを計測した時の供用時間、a,b:定数、
また、この発明においては、
前記寿命を診断する手段は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供するようにしても良い。
【0135】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0136】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0137】
請求項21の発明によれば、
高温で使用される部材に対して、その部材の供用中の温度と時間からラーソン・ミラーパラメータを求め、その部材の硬さと応力から累積損傷則に基づいてクリープ損傷度 を算出することにより構築されたデータを用いて、ラーソン・ミラーパラメータとクリープ損傷度との関係を、指数関数を含んだ式で近似する近似手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の供用時間の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて診断対象の部材の供用時間とからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に対して出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0138】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0139】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0140】
また、上記したすべての方法の発明は、その工程を含む計算機のプログラムとして提供しても良い。
【0141】
以上述べたようにこの発明の実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。
【0142】
高温部材ごとにクリープ損傷と熱疲労損傷による寿命を確率論的に精度よく予測できるようになった。
【0143】
任意の累積確率Pfに対して、寿命を消費して行く過程をシミーションすることが可能となった。
【0144】
寿命診断に必要な硬さの経年変化値を確率論的に推定できるようになった。当該硬さによる寿命診断を迅速に行うことができるようになった。
【0145】
クリープ損傷度の確率論的推定式の累積確率Pfに硬さの確率論的推定式から既知の硬さより求めた累積確率Pfを代入することにより迅速に高温部材の寿命を診断することができるようになった。
【0146】
熱疲労損傷度の確率論的推定式の累積確率Pfに硬さの確率論的推定式から既知の硬さより求めた累積確率Pfを代入することにより迅速に高温部材の寿命を診断することができるようになった。
【0147】
インターネットを介してクライアントから入力情報を受け取り、当該発明の診断サーバにより部品の寿命を診断し、クライアントに寿命の診断結果を送信することにより遠隔な地においても、寿命診断の迅速化が図られ、更に診断評価のコストの低減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】この発明の部材の寿命をクリープ損傷度に基づいて診断する装置の一実施例を説明するためのブロック図である。
【図2】同様に、この発明の部材の寿命をクリープ損傷度に基づいて診断する装置の一実施例を説明するためのブロック図である。
【図3】図1及び図2に示されたシステムに格納されているクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPのデータをプロットしたグラフである。
【図4】この発明の部材の寿命を熱疲労損傷度に基づいて診断する装置の他の実施例を説明するためのブロック図である。
【図5】この発明の部材の寿命を熱疲労損傷度に基づいて診断する装置の他の実施例を説明するためのブロック図である。
【図6】図4示されたシステムに格納されている熱疲労損傷度Φfと推定パラメータqのデータをプロットしたグラフである。
【図7】この発明の部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置の変形実施例を説明するためのブロック図である。
【図8】同様にこの発明の部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置の変形実施例を説明するためのブロック図である。
【図9】同様にこの発明の部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置の変形実施例を説明するためのブロック図である。
【図10】図9示す本発明の蒸気タービン部材の寿命診断装置によりタービン部材の確率論的クリープ損傷度の評価結果を示す図。
【図11】図9示す本発明の蒸気タービン部材の寿命診断装置によりタービン部材の確率論的熱疲労損傷度の評価結果を示す図。
【図12】図8に示したタービン部材の確率論的硬さの推定部を詳細に説明するためのブロック図である。
【図13】図8に示したタービン部材の確率論的硬さの推定部を詳細に説明するためのブロック図である。
【図14】図13に示したタービン部材の硬さHと運転時間との関係を示す特性図である。
【図15】運転時間と硬さの関係におけるデータのばらつきを表す確率変数μと累積確率Pfとの関係を示す特性図である。
【図16】図12に示したタービン部材の熱疲労損傷の診断部を説明するためのブロック図である。
【図17】図12に示したタービン部材のクリープ損傷の診断手段を説明するためのブロック図である。
【図18】インターネットを介して部材の寿命診断方法及びその寿命診断装置の診断を伝送できるようにしたシステムの例を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0149】
1…蒸気タービン部材データ入力部、2…記憶部、3…クリープ損傷度演算部、4…演算結果記憶部、5…クリープ損傷度推定近似式演算部、6…ワイブル統計処理演算部、7…演算部、8…熱疲労損傷度演算部、9…熱疲労損傷度演算結果記憶部、10…熱疲労損傷度推定近似式演算部、11…ワイブル統計処理演算部、12…算出部、13…オプション部、14…データ入力・記憶部、15…損傷演算部、16…損傷度演算結果の構築部、17…近似式・推定式の演算部、18…近似式・推定式記憶部及び出力部、19…クリープ損傷度推定近似式、20…クリープ損傷度確率論的推定式、21…熱疲労損傷度推定近似式、22…熱疲労損傷度確率論的推定式、23…デー入力部、24…推定式による寿命評価の演算部、27…評価結果の出力部、51…高温部材硬さ推定部、52…熱疲労損傷度推定部、53…クリープ損傷度推定部、61…データ入力部、62…演算部、63…熱疲労損傷演算結果出力部、71…データ入力部、72…熱疲労損傷演算部、73…出力部、81…データ入力部、82…クリープ損傷演算部、83…クリープ損傷演算結果出力部、95…インターネット、96…サーバ、121…確率算出部、122…確率論的硬演算部
【技術分野】
【0001】
この発明は、部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温環境下に長期間置かれる部材、例えば、蒸気タービン・ユニットのロータは、高温環境下で長時間負荷を受け続けるためクリープ損傷を受け、このクリープ損傷を原因としてその寿命が消費される。また、ロータには、タービンの起動時および停止時に繰り返し熱応力が与えられ、その結果、熱疲労を原因としてその寿命が消費される。従って、蒸気タービン・ユニットにおいて、その信頼性を長期に亘って確保するには、その部品のその寿命が精度良く診断されることが重要とされている。
【0003】
従来、この分野での寿命を診断する技術としては、新な部品の材料に対して及びリプレイス時に廃却された高温下に置かれた部品の材料に対して破壊試験が実施され、この材料特性の試験結果に基づいて、その余寿命が診断される技術が開発され、実用化されている。即ち、破壊試験において、その材料強度特性であるクリープ破断強度及び低サイクルでの疲労強度データが実験室的に求められる。このクリープ破断強度及び低サイクル疲労強度データは、あるパラメータの関数、例えば、硬さの関数として求められる。また、蒸気タービン・ユニットを定期的に検査する際にも、個々の部材に固有のパラメータとして硬さが計測される。この部材固有のパラメータ、即ち、硬さから求めたクリープ破断強度及び低サイクル疲労強度データから、ユニットの運転履歴及び今後の運用を考慮した余寿命が診断される。
【0004】
この余寿命を診断する技術の一例として、特許文献1に開示がある。この公報には、高温下に置かれる構造部材の使用状態量から温度・応力特性が算出され、また、構造部材の硬さから材料特性が算出され、更に条件を設定する条件設定器によって運転履歴に応じた修正がこれら特性に加えられて構造部材に生じた損傷蓄積量が演算され、許容値と比較される余寿命診断の技術が開示されている。このような余寿命診断の技術によれば、構造部材にき裂が発生する時期を正確に予知判断することができるとしている。
【特許文献1】特公平1−27378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、個々のユニット毎に個々の高温部材の寿命は累積線形損傷則によりクリープ損傷、疲労損傷を求め、今後の運用を考慮した余寿命評価を実施する方法を採用することにより、個々の高温部材の寿命診断を行うにとどまっていた。
【0006】
そこで、余寿命診断の高精度化及び評価の迅速化を図るにために、高温部材の個々の寿命診断結果を統合し、クリープ損傷、疲労損傷度の近似式を求め、更に統計的寿命解析による高温部材の確率論的寿命診断方法及びその装置の開発が望まれる。
【0007】
また、従来は高温部材の寿命診断を実施する際に、部材の硬さ計測は定期検査時に行い、当該硬さを用いて、寿命診断を実施していた。しかし、定期検査にて硬さ計測を実施しなければ精度のよい寿命診断がでず、評価したい時期に迅速に硬さ測定をすることは困難であった。
【0008】
そこで、寿命診断を高精度に及び評価の迅速化を図るに際して、構築された高温部材の個々の硬さの経時変化データを統合して,タービン高温部材の硬さを確率論的確率論的に推定し寿命診断をする方法及びその装置の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上述したような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、高温環境下に置かれる構造部材の寿命を高精度で、しかも、迅速に、診断することができる診断方法及びその寿命を診断する装置を提供するにある。
【0010】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する工程と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0011】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する工程と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0012】
更に、この発明においては、
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0013】
更にまた、この発明においては、
前記確率は、部材の硬さから推定しても良い。
【0014】
また、更に、この発明においては、
前記寿命を診断する手段は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供するようにしても良い。
【0015】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する手段と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0016】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する手段と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0017】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0018】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0019】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0020】
また、この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0021】
また、上記したすべての方法の発明は、その工程を含む計算機のプログラムとして提供しても良い。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、高温環境下に置かれる構造部材の寿命を高精度で、しかも、迅速に、診断することができる診断方法及びその寿命を診断する装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明は、特に、高温環境下に長期間置かれる部材、例えば、蒸気タービン・ユニットに組み込まれる高圧或いは中圧ロータ、高圧或いは中圧ケーシング、及び主要弁等の構造部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置に適している。
【0024】
この発明の診断方法について概説すれば、診断対象である高温環境下に長期間置かれる構造部材に対して、累積損傷則に基づいてクリープ損傷度及び熱疲労損傷度が算出されると共に、該算出されたクリープ損傷度及び熱疲労損傷度が記憶装置にデータとして格納され、この両データを用いてワイブル(Weibull)統計解析に基づいて確率論的にその部材の余寿命が予測解析される。
【0025】
この寿命診断では、定期検査時に測定された部材の硬さのデータから個々の部材の材料強度特性が推定され、これらのデータ、履歴データ及び設計データに基づいて寿命が診断される。
【0026】
以下、図面を参照して、この発明の部材の寿命を診断する装置の実施例を説明する。
【0027】
図1乃至図3は、本発明に係る高温で使用される構造部材の寿命診断装置に係る実施例を説明するための機能ブロック図である。確率論的に蒸気タービン部材のクリープ損傷度を推定するシステムは、図1乃至図3に示される機能を備えている。即ち、クリープ損傷度を推定システムは、蒸気タービンの部材に関するデータを入力する入力部1、データを記憶する記憶部2、データに基づいてクリープ損傷度を演算する演算部3、演算部3からの演算結果を記録する記憶部4及びクリープ損傷を推定するためにある近似式で演算する演算部5から構成されている。
【0028】
データ入力部1で入力される蒸気タービンの部材に関するデータとしては、評価部品データ、設計データ、検査データ及び運転履歴データがある。また、評価部品データとしては、余寿命を推定する対象物としての部品のユニット名、その部品名及び部位名がある。また、設計データとしては、蒸気タービンの定常状態での運転動作における構造部材が晒される供用中温度T及び応力σがある。さらに、検査データとしては、蒸気タービンの定期的な検査時に測定される構造部材の硬さ(ビッカース硬度)Hがあり、また、運転履歴データとしては、蒸気タービンの総運転時間tがある。
【0029】
記憶部2には、蒸気タービン部材データ入力部1から入力された評価部品データ、設計データ、検査データ、運転履歴データが記憶され、演算部3,5で必要とされる際に、それらデータがアクセスされ出力される。
【0030】
クリープ損傷度を演算する演算部3は、予め記憶された以下に述べる式(1)〜(4)に基づいてクリープ損傷度φcを算出する。
【0031】
高温及び一定応力の条件下での定常運転では、クリープ損傷が各部材に生じ、この部材のクリープ損傷度φcは、実験的研究により硬さHと負荷応力σからラーソン・ミラーパラメータPを介して式(1)より推定できる。
【0032】
P' = A1(σ)H + B1(σ) ... (1)
ここで、σ:応力
H:硬さ
一方、ラーソン・ミラーパラメータP’は、供用中の温度T(℃)とクリープ破断寿命trとの関数として式(2)のように表される。
【0033】
P' = (T + 273) (log tr + C) ... (2)
C:材料定数
従って、蒸気タービンの定期的な検査時に部材硬さHを測定或いは後に説明するようにある時点でこの部材の硬さ推定することにより、供用中温度T(℃)と負荷応力σがわかれば、その部材がクリープ破断する寿命すなわち余寿命trが式(3)から推定される。
【0034】
tr = 10{P'/(T+273)-C} ... (3)
ここで、C:材料定数、
T:供用中の温度及び
tr:クリープ破断寿命
φc = t/(tr + t) 或いは φc = t/tr ... (4)
ここで、φc:クリープ損傷度
ここで、診断対象の部材の高温高応力下の部位の硬さのデータを用いる場合は、φc=t/(tr+t)が採用され、高温低応力下の部位の硬さのデータを用いて同じ部材の高温高応力の部位を診断対象とする場合は、φc=t/trが採用される。
【0035】
クリープ損傷度を演算する演算部3からの演算結果は、演算結果記憶部4に保存される。記憶部4では、各部材毎、各部位毎に演算結果が格納され、部材名或いは部位名を指定することによってその演算結果をアクセスすることができる。このように演算結果記憶部4には、数多くの個々の部材及び評価部位毎のクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPの組み合わせデータが格納される。図3は、格納されているクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPのデータをグラフにプロットしたものである。
【0036】
次に、クリープ損傷度を推定する近似式演算部5では、各部品の評価部位毎にクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータpとの関係を表している式(5)からクリープ損傷度φcの近似式が算出される。近似式の算出は、演算結果記憶部4に格納された個々の部材の評価部位毎にクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPの組み合わせのデータから、近似式(5)が確定される。即ち、近似式(5)において各部材の部位毎の定数A,Bが決定される。定数A,Bが決定されると、Pとφcとの関係を表した近似式(5)によりクリープ損傷度φcを推定する。
【数1】
【0037】
この近似式(5)は、実際に蒸気タービンの部材について測定したラーソン・ミラーパラメータPとクリープ損傷度φcとの関係に極めて近似していることが実験的に確認されている。
【0038】
次に、図2に示されるように確率論的余寿命を推定するシステムにクリープ損傷度を推定する近似式演算部5からの出力結果、即ち、推定クリープ損傷度φcが入力される。このシステムは、ワイブル統計処理演算部6及びクリープ損傷度φcの確率論的推定式の算出部7から構成されている。
【0039】
ワイブル統計処理演算部6において、推定クリープ損傷度φcがワイブル統計解析され、確率論的推定式の算出部7において、ワイブル統計解析の結果から確率論的寿命推定式が算出される。
【0040】
運転時間t(h)と供用温度T(℃)の関数としてラーソン・ミラーパラメータP(t、T)とクリープ損傷度φcとの関係においてデータのばらつきは、ワイブル分布でよく近似でき、ワイブル統計解析によりワイブル係数m、尺度母数βを算出する。
【0041】
クリープ損傷度の確率論的推定式の算出部7では、式(6)のように確率論的にクリープ損傷度φcを推定する式を算出する。
【数2】
【0042】
図4及び図5は、この発明の高温で使用される構造部材の寿命診断装置に係る他の実施形態を説明するためのブロック図である。図4に示されるシステムにおいては、蒸気タービン部材の確率論的熱疲労損傷度が推定される。このシステムは、蒸気タービンの部材に関するデータを入力するデータ入力部1A、入力されたデータを記憶する記憶部2A、熱疲労損傷度を演算する演算部8、演算された熱疲労損傷度の結果を記憶する記憶部9及び熱疲労損傷度を推定する近似式演算部10から構成されている。
【0043】
データ入力部1Aに入力される評価部品データとしては、ユニット名、部材名、部材の部位名がある。また、設計データとしては、構造部材の供用中温度T、応力σ、具体的には、コールド起動時、例えば、蒸気タービンの定期検査後に起動する時のコールド熱応力σc、ウォーム起動時、例えば、週末停止後の起動する時のウォーム熱応力σw、ホット起動時,例えば、毎日起動停止する時のホット熱応力σhがある。さらに、検査データとしては、定期検査時の構造部材の硬さ(ビッカース等)Hがあり、運転履歴データとしては、具体的には、総起動回数N、コールド起動時のコールド起動回数nc、ウォーム起動時のウォーム起動回数nw、ホット起動時のホット起動回数nhがある。
【0044】
記憶部2Aには、データ入力部1Aで入力された評価部品データ、設計データ、検査データ、運転履歴データが格納されている。
【0045】
熱疲労損傷度を演算する演算部8には、予め以下に述べる式(7)〜式(10)を記憶する記憶部を含んでいる。この演算部では、これらの式(7)〜式(10)に記憶部2Aで記憶された各種のデータが入力されて各式(7)〜式(10)に対応した演算が実行され、最終的に熱疲労損傷度(熱疲労損傷実測値)φf及び熱疲労損傷度を推定する推定パラメータqが算出される。
【0046】
すなわち、タービンの起動及び停止の繰り返しによって生じる熱応力が繰り返し部品に与えられる結果、熱疲労損傷が生じる。この熱疲労損傷は、実験的研究に歪み範囲Δεeで推定することができる。この歪み範囲Δεeは、部品によりき裂が生じるまでの、即ち、破断に至るまでの起動及び停止の繰り返し回数Mと部品の硬さHの関数であって、式(7)で表される。
【0047】
Δεe = C1・Mα1 + C2・Mα2 ... (7)
ここで、C1 = 10β1・H+β2,
α1 =β3・H + β4,
C2, α1, β1, β2, β3, β4=定数
一方、寿命が評価される部位の歪み範囲Δεeは、歪み集中係数Kε、熱応力σおよび弾性係数Eの関数として式(8)のように表される。
【0048】
Δεe = 2Kε(σ/E) ... (8)
従って、熱応力σが分かれば、供用中の部材の硬さHを測定することによりその部材のき裂が発生されるまでの回数Mを推定することができる。
【0049】
起動回数nには、コールド起動の回数nc、ウォーム起動の回数nw、ホット起動回数nhの3パターンの起動回数がある。各起動パターンでの起動回数nと、き裂発生までの回数(破断までの回数)Mとの比n/Mを累計する累積損傷則の式(9)が熱疲労損傷度φfと定義される。
【0050】
φf = nc/Mc + nw/Mw + nh/Mh ... (9)
一方、総起動回数Nが同じであっても、起動時及び停止時の温度差によって生じる熱応力とコールド、ウォーム及びホット起動のパターンの違いにより熱疲労損傷度φfの消費の度合いが変化される。
【0051】
そこで、起動パターン、起動回数、各熱応力を考慮し、熱疲労損傷度の推定パラメータqが式(10)のように決定される。
【0052】
q = N (σc・nc/N + σw・nw/N + σh・nh/N)α ... (10)
α:定数
σc:コールド起動時の熱応力
σw:ウォーム起動時の熱応力
σh:ホット起動時の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
このように演算された熱疲労損傷度φf、熱疲労損傷度推定パラメータqは、熱疲労損傷度の演算結果を記憶した記憶部9に出力される。従って、この記憶部9には、数多くの部材についての評価部位毎の熱疲労損傷度φfと熱疲労損傷度の推定パラメータqとの組み合わせがデータとして格納される。図6は、格納されている疲労損傷度φfと熱疲労損傷度の推定パラメータqのデータとの関係をプロットしたものである。この図6には、近似式(11)によって表される一次式も示されている。この図6から明らかなようにデータプロットは、この一次式に近似されている。
【0053】
そして、熱疲労損傷度を推定する近似式演算部10において、各部品の評価部位毎に熱疲労損傷度φfと熱疲労損傷度推定パラメータqとの関係を示している熱疲労損傷度φfの近似式が算出される。この近似式の算出は、演算結果記憶部9に格納された各部材の評価部位毎の熱疲労損傷度φfと熱疲労損傷度の推パラメータqの組み合わせデータから、式(11)で近似される。式(11)は、部品毎の推パラメータq及び熱疲労損傷度φfを線形近似式で表している。
【0054】
φf = Cf・q ... (11)
Cf:定数
式(10)のαが部品部位ごとに求められ、式(11)を最も近似するような適切なパラメータの値が算出される。
【0055】
次に、図5に示すように熱疲労損傷度の確率論的な余寿命が予測解析される。図5に示されるシステムでは、図5の熱疲労損傷度を推定する近似式演算部10で演算された結果に基づき、熱疲労損傷度の確率論的な余寿命を予測解析するためのワイブル統計処理演算部11及び熱疲労損傷度φfの確率論的推定式の算出部12からなっている。
【0056】
ワイブル統計処理演算部11では、フィールドデータのばらつきを定量的に把握するためにワイブル統計解析をすることにより、ワイブル係数m及び尺度母数βが演算される。
【0057】
熱疲労損傷度φfの確率論的推定式の算出部12は、ワイブル統計処理演算部11で求められたワイブル係数m、尺度母数βを式(12)に代入することにより、確率論的に熱疲労損傷度φfを推定することができる。
【数3】
【0058】
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:累積損傷確率
図7、図8及び図9は、確率論的に部品の寿命を評価する評価式で演算を実行する演算装置及びその演算結果に従ってその部品の寿命を診断する装置を具備したシステムの機能を示している。
【0059】
図7及び図8には、確率論的に部品の寿命を評価する評価式で演算を実行する演算装置が示されている。この演算装置は、実施する事項を決定するオプション部13、必要なデータを入力し、このデータを保持するデータ入力・記憶部14、損傷度を演算する損傷度演算部15、損傷度の演算結果を記憶する記憶部16、評価対象についての情報を入力する入力部1B、記憶部16からのデータに基づき各近似式及び推定式を演算する演算部17及びこの近似式及び推定式を記憶する記憶及び出力部18から構成されている。
【0060】
オプション部13においては、1)クリープ損傷度及び熱疲労損傷度を演算し、この演算結果を記憶部に格納するのみを実施する場合、2)クリープ損傷度を推定する近似式及びクリープ損傷度を確率論的に推定する式を演算で求めるとともに熱疲労損傷度を推定する近似式及び熱疲労損傷度を確率論的に推定する式を演算で求めることを実施する場合、3)確率論的に寿命の診断評価のみを実施する場合のいずれかが選択可能となっている。具体的には、これらの場合に対応して設けられている選択項目、例えば、図示しない選択ボタンにより上述した(1)から(3)の実施事項が選択可能となっている。
【0061】
入力及び記憶部14には、ユニット名、部材名、部位名等の評価部品データ、起動停止回数、運転時間等の運転履歴データ、部材の硬さ等の検査データ及び温度、応力等の設計データが入力され、記憶される。
【0062】
損傷度演算部15では、式(4)に基づいてクリープ損傷度φc及び式(9)に基づいて熱疲労損傷度φfが演算され、これら損傷度の演算結果が記憶部16に格納される。
【0063】
入力部1Bには、近似式、推定式を求める評価対象としての部材、部位のデータが入力され、評価対象が特定される。近似式及び推定式を演算する演算部17では、特定された部材及び部位の損傷度の演算結果としてM個以上のデータ数が得られていれば、クリープ損傷度を推定する近似式が演算され、クリープ損傷度を確率論的に推定する推定式が演算される。また、演算部17では、同様に、熱疲労損傷度を推定する近似式が演算され、熱疲労損傷度を確率論的に推定する推定式が演算される。近似式及び推定式の記憶及び出力部18には、前述の近似式、推定式が記憶され、その近似式及び推定式が出力される。
【0064】
次に、図9を参照して寿命診断装置について説明するが、これは評価ユニット、部品、部位のデータ入力部23、推定式による寿命評価の演算部24、評価結果の出力部27から構成されている。
【0065】
評価ユニット、部品、部位のデータ入力部(評価部材部位データ入力部)23にて評価に必要なデータ、評価ユニット、部材、部位、運転時間、起動停止回数、温度、応力、累積確率Pfが入力される。
【0066】
推定式よる寿命評価の演算部24によりクリープ損傷度確率論的推定及び熱疲労損傷度確率論的推定が演算され、出力部27にて評価結果が出力される。
【0067】
図10には、蒸気タービンの部材の寿命を診断する装置によってタービン部材の確率論的にクリープ損傷度φcを評価した結果の出力例が示されている。また、図11には、確率論的に熱疲労損傷度φfを評価した結果の出力例が示されている。図10には、累積確率Pf=0.05、0.87及び0.95をパラメータとした場合の確率論的に推定した蒸気タービンの部材のクリープ損傷度φcと運転時間との関係が示されている。また、図11には、累積確率Pf=0.05、0.44、0.95をパラメータとした場合の確率論的に推定した蒸気タービンの部材の熱疲労損傷度φfと起動回数との関係が示されている。
【0068】
図10及び図11の曲線において、定期点検時に測定された硬さ測定から各損傷度φf、φcを計算し、式(6)より累積確率Pf=0.87及び0.44が定まれば、その後の蒸気タービンの部品ごとにクリープ損傷度φcと熱疲労損傷度φfに基づく余寿命を確率論的に精度よく予測できることが確認されている。
【0069】
この様に、この発明の実施例に係る装置によれば、任意の累積確率Pfに対して、寿命を消費して行く過程のシミュレーションが可能となる。
【0070】
本発明は、前述した実施形態では、高温で使用される構造部材として蒸気タービンのロータを例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されず高温で使用される構造部材の何れの部品にも適用することができる。
【0071】
更に、この発明の他の実施例について図12から図17を参照して説明する。
【0072】
図12は、この発明の部材の寿命を診断する装置を示している。その寿命診断装置は、タービン部材の確率論的に硬さを推定する推定部51、タービン部材の熱疲労損傷度を診断する診断部52、タービン部材のクリープ損傷度を診断する診断部53から構成されている。
【0073】
高温に晒される部材の硬さを推定する推定部51は、部材に関するデータを入力する入力部61と、入力されたデータに基づいて部材の硬さを推定する演算式で演算する演算部62と、演算部62からの演算結果を出力する出力部63とから成っている。推定部51においては、後に説明するようにタービン部材に対して、ワイブル統計解析による確率論的に求める確率論的推定式に基づき、任意の時点における部材の硬さを推定することができる。
【0074】
熱疲労損傷度を推定する推定部52は、部材に関するデータを入力する入力部71と、入力されたデータに基づいて熱疲労損傷度を演算する演算部72と、この演算部72からの熱疲労損傷度の演算結果を出力する出力部73とから成っている。この熱疲労損傷度の診断部52では、部材硬さ推定部51の出力である硬さの推定値と、タービン部材の熱応力と、タービン部材の温度と、タービン部材の起動回数から熱疲労損傷度が推定、即ち、評価される。
【0075】
クリープ損傷度を推定する推定部53は、部材に関するデータを入力する入力部81と、クリープ損傷度を演算する演算部82と、クリープ損傷度の演算結果を出力する出力部33とから成っている。この推定部53では、部材硬さ推定部51の出力である硬さの推定値と、タービン部材の定常応力と、タービン部材の温度と、タービン部材の運転時間から累積損傷則に基づいてクリープ損傷度 が推定、即ち、評価される。
【0076】
図13は、部材硬さ推定部51の詳細が示されている。この図13に示されるように、高温タービン部材の寿命診断装置では、経時的硬さの変化データが長期間、例えば、15年に亘って蓄積され、この硬さデータがワイブル統計処理されることによりタービン等の部材の硬さが確率論的に推定される。
【0077】
製造時に各部材ごとに切片が用意され、この製造時の初期硬さが検査され、その後、同様に硬さが検査される。この硬さHと運転時間tとについてプロットしたところ、図14に示されるような関係となり、この図14のデータプロットは、(33)式のように線形近似することができることが判明している。図14では、硬さHは、ビッカース硬さとしているが、硬さの単位は、このビッカース硬さに限らず、他の単位が採用されても同様に(33)式に近似することができることが判明している。
【0078】
H = at + b ... (33)
また,運転時間と硬さの関係におけるデータのばらつきを表す確率変数μ=(実測値/推定値)は、図15に示すばらつき特性のように、ワイブル分布に良く近似できることが判明している。従って、データの確率変数μからワイブル係数及び尺度母数を決定することでき、次式(34)式から確率論的に硬さを推定することができることが判明している。
【数4】
【0079】
図13に示されるデータ入力部51には、評価部品データ、硬さデータ、評価時間データが入力される。評価対象の部品データとしては、部品が組み込まれるユニットの名称、例えば、蒸気タービンユニット、部品の材料を特定する部材名、部品名が入力される。硬さデータとしては、(i)初期硬さを入力する場合には、その初期硬さH0が入力され、(ii)定期検査時の硬さを入力する場合には、定期検査時の硬さ計測までの運転時間t1とともに硬さH1が入力され、(iii)直接累積確率Pfを指定する場合には、適当な累積確率Pfが入力され、評価時間データについては、評価時までの評価時間thが入力される。
【0080】
更に、図13に示される演算部62においては、評価時の硬さが推定式によって確率論的に次のように推定される。すなわち、部材の材料特性に依存する硬さのばらつきを考慮して、算出部121において、初期硬さ及び定期検査時の硬さがどの程度の累積確率Pfに相当するかが次のように算出する。
【0081】
(i)初期硬さが入力される場合は、
初期硬さからこの初期硬さに相当する確率Pf0が式(35)より求められる。
【0082】
Pf0 = 1 − exp{-(μ0/β)m} ... (35)
ここで、H:部材の硬さ、t:部材の総運転時間、a,b:定数、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:部材の初期硬さに対応する累積確率、μ0:部材の初期硬さ(実測値)/部材の硬さ(推定値)である。ここで、
初期硬さ(実測値)= H0
総運転時間: t = t0 = 0
部材の硬さ(推定値)H = a t0 + b = b
[(33)式による。]
(ii)定期検査時の硬さが入力される場合には、
定期検査時の硬さよりこの硬さに対応する確率Pf1が(36)式より求められる。
【0083】
Pf1 = 1 − exp{-(μ1/β)m} ... (36)
ここで、μ1=定期検査時の硬さ(実測値)/硬さ(推定値)
(実測値)=定期検査時の硬さ=H1
総運転時間:: t = t1
部材の硬さ(推定値)H = a t0 + b = b
[(33)式による。]
(iii)直接Pfが指定される場合には、指定されたPf及び評価時間tを用いて硬さを推定することができる。
【0084】
次に、硬さ演算部122にて、累積確率算出部121で算出した確率Pf0,Pf1または、直接指定したPfを用いて、評価時の総運転時間tにより評価時の硬さHが算出される。
【0085】
次に、図13に示される出力部63において、演算結果の評価時の硬さH、その時の硬さの確率Pfが出力される。
【0086】
図16は、タービン部材の熱疲労損傷度を診断する推定部52の詳細を示している。図16に示されるデータ入力部71において、演算データとしてタービン部材の硬さH(部材の硬さ推定部51の出力に相当する)、評価部品データとしてユニット名、部材名、部位、また設計データとして温度T、コールド起動時の熱応力σc、ウォーム起動時の熱応力σw、ホット起動時の熱応力σh、これらの熱応力の総称である総称熱応力σ、さらに運転データ(運転履歴データ)として総起動回数N、具体的にはコールド起動回数nc、ウォーム起動回数nw、ホット起動回数nhが夫々入力される。
【0087】
図16に示される熱疲労損傷演算部72は、データ入力部61からの入力データと部材硬さ推定部51により推定した評価時の硬さHで熱疲労損傷が算出される。
【0088】
タービンの起動及び停止により生じる熱応力の繰り返が部材に与えられることによって部材に生じる熱疲労損傷は、低サイクル疲労特性としてき裂発生までの繰り返し回数Mと硬さHの関数から歪み範囲Δεeを(37)式により推定することができる。
【0089】
Δεe = C1・Mα1 + C2・Mα2 ... (37)
一方、寿命評価部位の歪み範囲Δεeは、歪み集中係数Kε、熱応力σ及び弾性係数Eの関数として式(38)式のように表さられる。
【0090】
Δεe = 2Kε(σ/E) ... (38)
従って、熱応力σが判明すれば、部材硬さ推定手段51により求めた評価時の部材硬さHを用いることにより、そのタービン部材のき裂発生までの繰返し回数(破断回数)Mを推定できる。
【0091】
起動回数nには、コールド起動回数nc、ウォーム起動回数nw、ホット起動回数nhの3パターンの起動回数があり、各起動パターンでの起動回数nとき裂発生までの繰返し回数Mとの比n/Mの累計を(39)式のように熱疲労損傷度φfを求めることができる。
【0092】
φf = nc/Mc + nw/Mw + nh/Mh ... (39)
ここで、 C1 = 10β1H+β2、
α1 =β3・H + β4、
C2,α1,β1,β2,β3,β4:定数、
Δεe:寿命評価部位の歪み範囲、
Kε:歪み集中係数、
σ:熱応力、
M:き裂発生までの繰返し回数、
E:弾性係数、
nc:コールド起動回数、
nw:ウォーム起動回数、
nh:ホット起動回数、
Mc:コールド起動時のき裂発生までの繰返し回数、
Mw:ウォーム起動時のき裂発生までの繰返し回数、
Mh:ホット起動時のき裂発生までの繰返し回数、
φf:熱疲労損傷度。
【0093】
図17は、タービン部材のクリープ損傷度を診断する診断部53の詳細を示している。図17に示されたデータ入力部81には、評価部品データとしてユニット名、部材名、部位、又設計データとして定常状態のタービン部材の温度T、定常応力σ、更に運転データ(運転履歴データ)として総運転時間t、又演算データとしてタービン部材の硬さH(部材硬さ推定手段51の出力)が入力される。
【0094】
図17に示された推定部82においては、データ入力部81からの入力データと部材硬さ推定部51からの評価時の硬さHより、クリープ損傷度が算出される。具体的には、クリープ損傷度推定部82おいて、(40)〜(43)式に基づいてクリープ損傷度が推定(算出)される。
【0095】
高温一定応力条件下での定常運転によるクリープ損傷度は、硬さHと定常応力(負荷応力)σからラーソン・ミラーパラメータP'を、(40)式より推定できる。
【0096】
P' = A1(σ)H + B1(σ) ... (40)
一方、ラーソン・ミラーパラメータP'は、供用中温度T(℃)とクリープ破断寿命trとの関数として(41)式のように表される。
【0097】
tr = 10{p'/(T+273)-C} ... (41)
また、クリープ損傷度φcは、(42)式で求めることができる。
【0098】
φc = t/(tr + t) 或いは φc = t/tr ... (42)
ここで、σ:定常応力、H:部材の硬さ、C:材料定数、φc:クリープ損傷度である。
【0099】
クリープ損傷度に関する推定結果は、図17に示されるクリープ損傷度の推定結果を出力する出力部83により出力される。
【0100】
尚、図13に示される演算部121において、硬さの累積確率Pfを推定できるが、この推定された部材の硬さ確率Pfを図9に示される入力部23に入力してクリープ損傷度が推定されても良い。同様に演算部121において推定された部材の硬さ確率Pfを図9の入力部23に入力して熱疲労度が推定されても良い。
【0101】
図18は、タービン部材のネットワーク例えばインターネット95を介した寿命診断方法の実施形態である。図18に示されるシステムでは、診断対象である低合金鋼からなる部材の寿命を診断することを望むクライアントに対してインターネット95を介してサーバ96がそのサービスを提供することができる。即ち、インターネット95を介して各種情報を提供する部材の寿命を診断するシステムでは、クライアント側の端末94が入力部91及び出力部92を備え、サービス提供サーバ96側が既に説明したクリープ損傷度及び該熱疲労損傷度を推定する推定部を備えている。外部入力部91は、サーバからの指示に基づいて、入力診断情報としてユニット名、評価部品名、硬さ及び硬さ計測時の運転時間若しくは累積確率Pf、運転履歴である評価時までの運転時間及び評価時までの起動停止回数を入力することができ、推定部は、ネットワーク95を介して入力部91から入力されたデータを受け取り、このデータに基づきクリープ損傷度及び該熱疲労損傷度を推定する。クライアント側の出力部92は、インターネット95を介して推定部から出力された推定結果を獲得してその推定結果を出力する。
【0102】
外部入力部91としては、パソコン等のコンピュータを動かすための指示やデータを与えるための装置、例えばキーボード、マウス、タブレット、ジョイステイック、スキャナー、OCR、文字認識装置、音声入力装置、ビデオ入力装置、バーコードリーダー、マイク等であれば良い。また、出力部92としては、プリンタやディスプレイ或は音声出力器などコンピュータで処理された情報を出力するものを全て含む。
【0103】
サービス提供サーバ96は、コンピュータ等の一種の情報処理端末で構成されており、インターネット95に対するサーバの機能を有している。ここで、インターネット95は有線であっても無線であってもよく、デジタル通信が行えればよい。また、公衆回線を含む場合もある。
【0104】
以上、本発明と好ましい実施の形態をまとめると次のとおりである。
【0105】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する工程と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0106】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0107】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0108】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0109】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する工程と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0110】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0111】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0112】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式に確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度は、下記式で推定されても良い。
【数5】
【0113】
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:累積損傷確率
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0114】
また、この発明においては、
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0115】
また、この発明においては、
前記確率は、部材の硬さから推定しても良い。
【0116】
また、この発明においては、
前記確率Pfは、下記式で定められる硬さに依存した確率Pfを入力することにより推定しても良い。
【0117】
Pf=1−exp{−(μ/β)m}
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数(scale parameter)、
μ:部材の硬さ(実測値)/部材の硬さ(推定値)である。
【0118】
更に、ここで、部材の硬さの推定値は次の近似式により求める。
【0119】
at+b
t:部材の硬さを計測した時の供用時間、a,b:定数、
また、この発明においては、
前記寿命を診断する手段は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供するようにしても良い。
【0120】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する手段と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0121】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0122】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0123】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0124】
上述した発明において、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する手段と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する手段と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0125】
また、この発明においては、
前記推定パラメータは指数関数で定め、前記推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式は一次式で定めると良い。
【0126】
また、この発明においては、
前記推定パラメータqを次のように求めても良い、
q=N(σc・nc/N+σw・nw/N+σh・nh/N)α
ここで、α:定数
σc:コールド起動時の部材の熱応力
σw:ウォーム起動時の部材の熱応力
σh:ホット起動時の部材の熱応力
N:総起動回数
nc:コールド起動回数
nw:ウォーム起動回数
nh:ホット起動回数
であり、熱疲労損傷度は、下記式で近似しても良い。
【0127】
φf=Cf・q
Cf:定数
また、この発明においては、
前記近似式に確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度は、下記式で推定されても良い。
【数6】
【0128】
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数、Pf:累積損傷確率
また、この発明においては、
前記近似式を用いて診断対象の部材の起動回数からその部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0129】
また、この発明においては、
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する手段をさらに含んでも良い。
【0130】
また、この発明においては、
前記確率は、部材の硬さから推定しても良い。
【0131】
また、この発明においては、
前記確率Pfは、下記式で定められる硬さに依存した確率Pfを入力することにより推定しても良い。
【0132】
Pf=1−exp{−(μ/β)m}
ここで、m:ワイブル係数、β:尺度母数(scale parameter)、
μ:部材の硬さ(実測値)/部材の硬さ(推定値)である。
【0133】
更に、ここで、部材の硬さの推定値は次の近似式により求める。
【0134】
at+b
t:部材の硬さを計測した時の供用時間、a,b:定数、
また、この発明においては、
前記寿命を診断する手段は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供するようにしても良い。
【0135】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0136】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法が提供される。
【0137】
請求項21の発明によれば、
高温で使用される部材に対して、その部材の供用中の温度と時間からラーソン・ミラーパラメータを求め、その部材の硬さと応力から累積損傷則に基づいてクリープ損傷度 を算出することにより構築されたデータを用いて、ラーソン・ミラーパラメータとクリープ損傷度との関係を、指数関数を含んだ式で近似する近似手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の供用時間の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて診断対象の部材の供用時間とからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に対して出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0138】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0139】
この発明によれば、
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置が提供される。
【0140】
また、上記したすべての方法の発明は、その工程を含む計算機のプログラムとして提供しても良い。
【0141】
以上述べたようにこの発明の実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。
【0142】
高温部材ごとにクリープ損傷と熱疲労損傷による寿命を確率論的に精度よく予測できるようになった。
【0143】
任意の累積確率Pfに対して、寿命を消費して行く過程をシミーションすることが可能となった。
【0144】
寿命診断に必要な硬さの経年変化値を確率論的に推定できるようになった。当該硬さによる寿命診断を迅速に行うことができるようになった。
【0145】
クリープ損傷度の確率論的推定式の累積確率Pfに硬さの確率論的推定式から既知の硬さより求めた累積確率Pfを代入することにより迅速に高温部材の寿命を診断することができるようになった。
【0146】
熱疲労損傷度の確率論的推定式の累積確率Pfに硬さの確率論的推定式から既知の硬さより求めた累積確率Pfを代入することにより迅速に高温部材の寿命を診断することができるようになった。
【0147】
インターネットを介してクライアントから入力情報を受け取り、当該発明の診断サーバにより部品の寿命を診断し、クライアントに寿命の診断結果を送信することにより遠隔な地においても、寿命診断の迅速化が図られ、更に診断評価のコストの低減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】この発明の部材の寿命をクリープ損傷度に基づいて診断する装置の一実施例を説明するためのブロック図である。
【図2】同様に、この発明の部材の寿命をクリープ損傷度に基づいて診断する装置の一実施例を説明するためのブロック図である。
【図3】図1及び図2に示されたシステムに格納されているクリープ損傷度φcとラーソン・ミラーパラメータPのデータをプロットしたグラフである。
【図4】この発明の部材の寿命を熱疲労損傷度に基づいて診断する装置の他の実施例を説明するためのブロック図である。
【図5】この発明の部材の寿命を熱疲労損傷度に基づいて診断する装置の他の実施例を説明するためのブロック図である。
【図6】図4示されたシステムに格納されている熱疲労損傷度Φfと推定パラメータqのデータをプロットしたグラフである。
【図7】この発明の部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置の変形実施例を説明するためのブロック図である。
【図8】同様にこの発明の部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置の変形実施例を説明するためのブロック図である。
【図9】同様にこの発明の部材の寿命を診断する方法及びその寿命を診断する装置の変形実施例を説明するためのブロック図である。
【図10】図9示す本発明の蒸気タービン部材の寿命診断装置によりタービン部材の確率論的クリープ損傷度の評価結果を示す図。
【図11】図9示す本発明の蒸気タービン部材の寿命診断装置によりタービン部材の確率論的熱疲労損傷度の評価結果を示す図。
【図12】図8に示したタービン部材の確率論的硬さの推定部を詳細に説明するためのブロック図である。
【図13】図8に示したタービン部材の確率論的硬さの推定部を詳細に説明するためのブロック図である。
【図14】図13に示したタービン部材の硬さHと運転時間との関係を示す特性図である。
【図15】運転時間と硬さの関係におけるデータのばらつきを表す確率変数μと累積確率Pfとの関係を示す特性図である。
【図16】図12に示したタービン部材の熱疲労損傷の診断部を説明するためのブロック図である。
【図17】図12に示したタービン部材のクリープ損傷の診断手段を説明するためのブロック図である。
【図18】インターネットを介して部材の寿命診断方法及びその寿命診断装置の診断を伝送できるようにしたシステムの例を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0149】
1…蒸気タービン部材データ入力部、2…記憶部、3…クリープ損傷度演算部、4…演算結果記憶部、5…クリープ損傷度推定近似式演算部、6…ワイブル統計処理演算部、7…演算部、8…熱疲労損傷度演算部、9…熱疲労損傷度演算結果記憶部、10…熱疲労損傷度推定近似式演算部、11…ワイブル統計処理演算部、12…算出部、13…オプション部、14…データ入力・記憶部、15…損傷演算部、16…損傷度演算結果の構築部、17…近似式・推定式の演算部、18…近似式・推定式記憶部及び出力部、19…クリープ損傷度推定近似式、20…クリープ損傷度確率論的推定式、21…熱疲労損傷度推定近似式、22…熱疲労損傷度確率論的推定式、23…デー入力部、24…推定式による寿命評価の演算部、27…評価結果の出力部、51…高温部材硬さ推定部、52…熱疲労損傷度推定部、53…クリープ損傷度推定部、61…データ入力部、62…演算部、63…熱疲労損傷演算結果出力部、71…データ入力部、72…熱疲労損傷演算部、73…出力部、81…データ入力部、82…クリープ損傷演算部、83…クリープ損傷演算結果出力部、95…インターネット、96…サーバ、121…確率算出部、122…確率論的硬演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する工程と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項2】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する工程と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項3】
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2の部材の寿命を診断する方法。
【請求項4】
前記確率は、部材の硬さから推定することを特徴とする請求項3の部材の寿命を診断する方法。
【請求項5】
前記寿命を診断する工程は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供することを特徴とする請求項4の部材の寿命を診断する方法。
【請求項6】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築するデータ構築手段と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する近似手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項7】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する近似手段と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する推定手段と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項8】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項9】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項10】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項11】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項12】
請求項2の部材の寿命を診断する方法に係る工程を含むことを特徴とする計算機のプログラム。
【請求項1】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築する工程と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項2】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する工程と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する工程と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項3】
前記確率論的統計処理が加えられた式に確率を入力することにより、部材の寿命を診断する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2の部材の寿命を診断する方法。
【請求項4】
前記確率は、部材の硬さから推定することを特徴とする請求項3の部材の寿命を診断する方法。
【請求項5】
前記寿命を診断する工程は、その部材の起動回数と熱疲労損傷度とのグラフと、その部材の余寿命を提供することを特徴とする請求項4の部材の寿命を診断する方法。
【請求項6】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出しデータを構築するデータ構築手段と、
これらの推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する近似手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項7】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似式で近似する近似手段と、
この近似式に確率論的統計処理を加えて熱疲労損傷度を推定する推定手段と
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項8】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項9】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく工程と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す工程と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する工程と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する方法。
【請求項10】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータから推定パラメータと熱疲労損傷度との関係の近似式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数の入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数からその部材の寿命を診断する工程と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項11】
複数回に亘って起動される装置に設けられ高温で使用される部材に対して、前記装置の起動回数及び熱応力の関数である推定パラメータと、累積損傷則に基づく熱疲労損傷度を算出することにより構築されたデータを用いて、推定パラメータと熱疲労損傷度との関係を近似してさらに確率論的統計処理を加えた熱疲労損傷度を推定する式を準備しておく推定手段と、
ネットワークを介して接続されている端末に対して診断対象の部材の起動回数と硬さの入力を促す手段と、
前記近似式を用いて入力された起動回数と硬さからその部材の寿命を診断する診断手段と、
診断された寿命を前記端末に出力する出力手段と、
から構成されることを特徴とする部材の寿命を診断する装置。
【請求項12】
請求項2の部材の寿命を診断する方法に係る工程を含むことを特徴とする計算機のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−180735(P2008−180735A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105180(P2008−105180)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【分割の表示】特願2001−117414(P2001−117414)の分割
【原出願日】平成13年4月16日(2001.4.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【分割の表示】特願2001−117414(P2001−117414)の分割
【原出願日】平成13年4月16日(2001.4.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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