説明

部材固定用ブラケットの取付構造

【課題】軟質の壁材に対して部材固定用ブラケット10を確実に固定すること。
【解決手段】壁材50に対して部材を固定するための部材固定用ブラケット10の取付構造であって、部材固定用ブラケット10は、貫通穴11と、ブラケット本体10aの径より大きい径で構成される鍔部12と、鍔部12よりも壁材50側に配置される凸部13と、を有し、壁材50は、凸部13を嵌合させる溝50a、50bを有し、壁材の溝50a、50bに対して、部材固定用ブラケットの凸部13を嵌合させた後、貫通穴11に挿通させた釘20又はビス等を壁材に打ち込み、又はねじ込むことによって、部材固定用ブラケット10を壁材50に取付けることを特徴とする部材固定用ブラケット10の取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材に対して外装材や断熱材等の部材を固定するための部材固定用ブラケットの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁材に外装材の胴縁や断熱材の固定部材等の部材を固定するために、壁材に取付けられる部材固定用ブラケットとして、コンクリート躯体等の硬質の壁材に対してアンカーボルト又は貫通ボルト等のボルトを固定し、当該ボルトのネジ部に部材固定用ブラケットを螺合して固定したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、コンクリート躯体のように硬質で、固定物を保持するための壁材の強度が強い場合には、部材固定用ブラケットに胴縁等の部材をボルトによって設置することができる。部材固定用ブラケットに更に荷重がかかっても、コンクリート躯体のような硬質の壁材は、欠けや割れを生じることなく部材固定用ブラケットを保持することができるからである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−251031
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構成であると、胴縁や外装材等の部材の荷重は全て、部材固定用ブラケットを介してボルトにかかってしまう。すると、例えばALC(軽量気泡コンクリート)パネルのように軟質の壁材を用い、壁材の強度が固定物に対して弱い場合、ボルトにかかるせん断力から受ける力を壁材が支持できない場合がある。この場合、壁材に欠けや割れが生じることも考えられる。
【0006】
一方、接着アンカーはALC(軽量気泡コンクリート)パネルのように表面強度が小さい材料には適さない。また、貫通ボルトは壁材を貫通させて固定面と相対する面にも固定する必要があるが、既存建物の改修工事の場合は、相対する面での固定が困難であるため、採用しづらいという問題がある。
【0007】
本発明は、軟質の壁材に対して部材固定用ブラケットを確実に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明に係る構成は、次の通りである。
【0009】
(1)壁材に対して部材を固定するための部材固定用ブラケットの取付構造であって、前記部材固定用ブラケットは、貫通穴と、ブラケット本体の径より大きい径で構成される鍔部と、該鍔部よりも壁材側に配置される凸部と、を有し、前記壁材は、前記凸部を嵌合させる溝を有し、前記壁材の前記溝に対して、前記部材固定用ブラケットの前記凸部を嵌合させた後、前記貫通穴に挿通させた釘又はビス等を前記壁材に打ち込み、又はねじ込むことによって、前記部材固定用ブラケットを前記壁材に取付けることを特徴とする部材固定用ブラケットの取付構造。
【0010】
(2)(1)に記載の部材固定用ブラケットの取付構造であって、前記壁材は、前記凸部及び前記鍔部の全部又は一部を嵌合させる溝を有し、前記壁材の前記溝に対して、前記部材固定用ブラケットの前記凸部及び前記鍔部の全部又は一部を嵌合させた後、前記貫通穴に挿通させた釘又はビス等を前記壁材に打ち込み、又はねじ込むことによって、前記部材固定用ブラケットを前記壁材に取付けることを特徴とする部材固定用ブラケットの取付構造。
【発明の効果】
【0011】
(1)又は(2)の構成によれば、軟質の壁材に溝を形成し、該溝に対して部材固定用ブラケットを嵌合させて、釘又はビス等にてブラケットを取付ける。このように、部材固定用ブラケットの一部(凸部、又は凸部及び鍔部の全部若しくは一部)が壁材の内部に埋め込まれることにより、部材固定用ブラケットに固定した部材の荷重を、凸部、又は凸部及び鍔部の全部若しくは一部に対応する壁材の溝に、拡散させることができる。これにより、軟質の壁材に対しても、部材固定用ブラケットを確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図を用いて本発明の一実施形態を説明する。説明において、部材固定用ブラケット10(以下、ブラケット10)の構成、ブラケット10の取付構造の順で説明する。
【0013】
(ブラケット10の構成)
ブラケット10及びブラケット10を固定する釘20の構成を図1を用いて説明する。図1はブラケット10及び釘20の構造を示す断面図である。
【0014】
ブラケット10には、円筒状のブラケット本体10aの内部を貫通する貫通穴11が形成される。また、ブラケット本体10aの周りにはブラケット本体10aよりも径の大きい鍔部12が形成される。そして、鍔部12よりも壁材側(矢印A方向)に突出した凸部13が形成される。更に、ブラケット本体10aの最も外装材側(矢印B方向)の外周には、ネジ部14が形成されている。
【0015】
釘20は、ブラケット10の貫通穴11を貫通する。そして釘20の先端部20aがALC(軽量気泡コンクリート)等の軟質の壁材に対して差し込まれ、ブラケット10を壁材に対して固定する。このため、図1に示すように、釘20の長さL2は、ブラケット10の貫通穴11の長さL1よりも長く構成されている。尚、釘20はビス等、壁材50に対してブラケット10を固定することができれば何であってもよい。
【0016】
(ブラケット10の壁材に対する取付け構造)
ブラケット10の壁材に対する取付け構造を図2を用いて説明する。図2は壁材50に対してブラケット10を取付ける状態を示す断面図である。図2(a)はブラケット10を取付ける前の状態図であり、図2(b)はブラケット10を取付けた時の状態図であり、図2(c)はブラケット10に更に部材を取付けた時の状態図である。尚、本実施形態の壁材は、ALC(軽量気泡コンクリート)パネルのような、軟質の壁材50を用いる。
【0017】
まず、図2(a)に示すように、ブラケット10を壁材50に取付ける際には、予め壁材50に溝を形成しておく。溝としては、ブラケット10の凸部13が嵌合するための溝50aと、ブラケット10の鍔部12が嵌合するための溝50bと、を形成しておく。溝は、壁材50を削りとることで形成してもよいし、壁材50の作成時に予め形成するものとしてもよい。一方、ブラケット10の鍔部12の壁材側の面12aには、接着剤又は充填材Gを塗布しておく。
【0018】
次に、図2(b)に示すように、壁材50の溝50a及び溝50bに対して、ブラケット10の凸部13及び鍔部12を嵌合させる。ここで、前述のようにブラケット10の鍔部12には接着剤又は充填材Gが塗布されている。このため、接着剤又は充填材Gがブラケット10と壁材50とを接着し、壁材50の溝において、ブラケット10のガタツキを防止することができる。
【0019】
この状態で、釘20の先端部20aをブラケット10の貫通穴11に貫通させて、抜け止め部20bを壁材50側へ打ち込む。すると、釘20の先端部20aは、壁材50内に差し込まれる。この状態において、ブラケット10は、貫通穴11内に釘20があることにより上下方向の位置が規定され、壁材50と抜け止め部20bとに挟持されることにより左右方向の位置が規定される。
【0020】
その後、図2(c)に示すように、ブラケット10のネジ部14に対して、外装材60を固定するための胴縁61等の部材固定する。尚、壁材50の外部で外装材60の内部に、断熱材を配置し、該断熱材を固定するための断熱材固定部材を配設してもよい。
【0021】
(ブラケット10の取付構造の作用・効果)
以上のブラケット10の取付構造により、次のような作用効果がある。
【0022】
まず、従来のように、ブラケットが壁材の外部にのみにある構成であると、ブラケットに断熱材や胴縁等を固定するとき、ブラケットを介してボルトと壁材の間に荷重が1点に集中する。このため、ボルトと壁材との間で、壁材の欠けや割れが生じるおそれがあった。
【0023】
これに対して、本実施形態は壁材50に溝50a、50bを形成し、溝50a、50bの内部にブラケット10の一部(鍔部12及び凸部13)を嵌合させて取付ける構造である。このため、外装材60の荷重は、ブラケット10を支持する釘20の1点に集中することはなく、壁材50と鍔部12、凸部13及び釘20等との間に分散する。従って、壁材50として、例えばALC(軽量気泡コンクリート)パネル等のように、軟質の壁材を使用した場合であっても、ブラケット10を介して釘20からかかる荷重が集中することを避け、割れや欠けという問題を防止することができる。
【0024】
また、従来のブラケットには、鍔部のみが形成されていたが、本実施形態においてはブラケット10に鍔部12に加えて凸部13を設けている。すると、壁材50の溝との接触する面積が増えることにより、ブラケット10を壁材50の溝に更に確実に嵌合保持させることができる。
【0025】
更に、本実施形態のブラケット10は、従来のブラケットの構造に、凸部13を加えたものである。凸部13を形成することは、従来のブラケットの型を変更するのみで形成することができるため、容易に形成することができる。このため、特に他の部材等を加えるようなコストをかけることをする必要はなく、安価な構成でブラケット10の強度を上げることができる。
【0026】
〔他の実施形態〕
前述した実施形態においては、ブラケット10の凸部13及び鍔部12の全てを壁材50内に嵌合させたが、これに限るものではない。次のように、鍔部の一部又は全部が壁材50の外側に配置される構成であってもよい。尚、前述と同様の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0027】
例えば、図3(a)に示すように、鍔部112に段差をつけたブラケット110としてもよい。このように構成されたブラケット110を壁材50に対して固定する時には、まず、壁材50に凸部113と鍔部112の一部112bのみが入る溝を形成する。その後、ブラケット110を溝に嵌合し、最後に釘20によって固定する。この場合、図に示すように、凸部113と鍔部112の一部112bのみが壁材50の中に挿入された状態になる。
【0028】
また、図3(b)に示すようなブラケット210としてもよい。このように構成されたブラケット210を壁材50に対して固定するときには、まず、壁材50に凸部213のみが入る溝を形成する。その後、ブラケット210を溝に嵌合し、最後に釘20によって固定する。この場合、図に示すように、凸部213のみが壁材50の中に挿入された状態になる。
【0029】
また、ブラケット210は、ブラケット本体210aよりも凸部213の径を大きくなるように構成している。このように構成すると、壁材50と凸部213との当接する表面積が増える。このため、ブラケット210を壁材50に対してより確実に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ALCパネル以外の軟質の壁材にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ブラケット10の構造を示す断面図。
【図2】壁材50に対してブラケット10を取付ける状態を示す断面図。
【図3】他の実施形態の構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0032】
G…接着剤又は充填材、10…ブラケット、10a…ブラケット本体、11…貫通穴、12…鍔部、13…凸部、14…ネジ部、20…釘、20a…先端部、20b…抜け止め部、50…壁材、50a…溝、50b…溝、60…外装材、61…胴縁、110…ブラケット、112…鍔部、113…凸部、210…ブラケット、212…鍔部、213…凸部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材に対して部材を固定するための部材固定用ブラケットの取付構造であって、
前記部材固定用ブラケットは、貫通穴と、ブラケット本体の径より大きい径で構成される鍔部と、該鍔部よりも壁材側に配置される凸部と、を有し、
前記壁材は、前記凸部を嵌合させる溝を有し、
前記壁材の前記溝に対して、前記部材固定用ブラケットの前記凸部を嵌合させた後、前記貫通穴に挿通させた釘又はビス等を前記壁材に打ち込み、又はねじ込むことによって、前記部材固定用ブラケットを前記壁材に取付けることを特徴とする部材固定用ブラケットの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の部材固定用ブラケットの取付構造であって、
前記壁材は、前記凸部及び前記鍔部の全部又は一部を嵌合させる溝を有し、
前記壁材の前記溝に対して、前記部材固定用ブラケットの前記凸部及び前記鍔部の全部又は一部を嵌合させた後、前記貫通穴に挿通させた釘又はビス等を前記壁材に打ち込み、又はねじ込むことによって、前記部材固定用ブラケットを前記壁材に取付けることを特徴とする部材固定用ブラケットの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−70892(P2007−70892A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259054(P2005−259054)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】