説明

部材接続方法および同方法により接続された複合部材

【課題】軸部を挿入した筒部を塑性変形させることにより軸部と筒部とを接続した複合部材において、筒部における塑性変形させた部分が緩んだ場合であっても筒部と軸部との軸線方向の結合強度を維持することができる部材の接続方法を提供する。
【解決手段】アーム部材10の開口部11a,11bから所定の位置の内周面に雌ネジ12a,12bを形成しておく。また、アーム部材10内に挿入されるボールジョイント20の軸部22c上であって雌ネジ12a,12bに対応した位置に雄ネジ22dを形成しておく。このボールジョイント20の軸部22cをアーム部材10の開口部11aから挿入するとともに、同ボールジョイント20を軸部22cの軸線周りに回転させて雄ネジ22dと雌ネジ12aとを噛み合わせる。そして、アーム部材10の筒部をプレス加工することにより、同筒部を塑性変形させてボールジョイント20をアーム部材10に定着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材に形成された軸状の軸部を、第2の部材に形成された筒状の筒部内に挿入して同筒部を塑性変形させることにより両部材を接続する部材接続方法および同接続方法により接続された複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両に採用されるサスペンション機構やステアリング機構には、各構成要素を互いに連結するためにリンク部材が用いられている。一般に、リンク部材は円筒状に形成されたアーム部材の両端部にサスペンション機構などにおける各構成要素を互いに連結するための連結部材を備えて構成されている。この場合、各連結部材は、アーム部材の両端部にプレス加工などによって接続されている。具体的には、各連結部材に軸状に形成された軸部をアーム部材の端部内に挿入した状態で、同端部をプレス加工(カシメ加工)することによりアーム部材と各連結部材とを一体的に接続している。
【0003】
このようなリンク部材においては、アーム部材と連結部材との軸線方向の結合強度を向上させるために、例えば、下記特許文献1〜6に示すように、プレス加工によりアーム部材が押し付けられる連結部材の軸部を凹凸状に形成したものがある。また、下記特許文献3〜6に示したリンク部材においては、更に、アーム部材をプレス加工により塑性変形させる形状を工夫してアーム部材と連結部材との軸線方向の結合強度の向上を図っている。
【特許文献1】特開平11−93997号公報
【特許文献2】特開2000−110810号公報
【特許文献3】特開2001−336542号公報
【特許文献4】特開2002−292439号公報
【特許文献5】特開2003−94129号公報
【特許文献6】特開2003−156017号公報
【0004】
しかしながら、このようなリンク部材(複合部材)においては、アーム部材におけるプレス加工した部分が緩んだ場合、アーム部材と連結部材との軸線方向の結合強度の確保が懸念される。特に自動車のサスペンション機構やステアリング機構に用いられるリンク部材は、軸線方向の荷重および振動の多い環境下で用いられることから、アーム部材と連結部材との軸線方向の結合強度を長期間に亘って安定的に維持することが求められる。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、軸部を挿入した筒部を塑性変形させることにより軸部と筒部とを接続した複合部材において、筒部における塑性変形させた部分が緩んだ場合であっても筒部と軸部との軸線方向の結合強度を維持することができる部材の接続方法および同接続方法により接続された複合部材を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、第1の部材に形成された軸状の軸部を、第2の部材に形成された筒状の筒部内に挿入して同筒部を塑性変形させることにより、第1の部材と第2の部材とを接続する部材接続方法において、第1の部材における軸部に雄ネジを形成するとともに、第2の部材における筒部内に雌ネジを形成しておき、雄ネジと雌ネジとを噛み合わせた状態で、筒部を塑性変形させることにより、第1の部材と第2の部材とを接続することにある。
【0007】
この場合、前記雄ネジおよび前記雌ネジを、例えば、第2の部材における筒部を塑性変形させる位置より奥側にそれぞれ形成しておくとよい。また、これらの場合、前記第2の部材における筒部をプレス加工により塑性変形させるとよい。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、第1の部材における軸部上に形成した雄ネジと第2の部材の筒部内に形成した雌ネジとを噛み合わせた状態で前記筒部を塑性変形させて第1の部材を第2の部材に定着させている。この場合、第2の部材における筒部が塑性変形することにより同筒部内に形成されている雌ネジのネジ山が筒部の軸線方向に沿って流動する。すなわち、筒部内に形成されている雌ネジに軸力が生じる。これにより、雌ネジのネジ山が雄ネジのネジ山に押し付けられて雄ネジと雌ネジとが強固に噛み合った状態となる。この結果、第2の部材における塑性変形させた部分が緩んだ場合であっても雄ネジと雌ネジとが強固に噛み合っているため、第1の部材と第2の部材との軸線方向の結合強度を維持することができる。また、雄ネジと雌ネジとの噛み合いが緩んだ場合であっても、雄ネジと雌ネジとが噛み合っている限り、第1の部材と第2の部材との結合の状態を維持することができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記部材接続方法において、雄ネジおよび雌ネジは、第2の部材における筒部を塑性変形させる位置より同筒部の開口部側にそれぞれ形成されていることにある。これによれば、第2の部材の筒部における塑性変形させる部分より開口部側に雌ネジが形成されている。すなわち、第2の部材における開口部の近傍で第1の部材の雄ネジと第2の部材の雌ネジとが噛み合っている。これにより、第2の部材における開口部から水などの異物が内部に浸入することを防止することができる。この結果、第2の部材の内部および第2の部材内に挿入された第1の部材の軸部の腐食などの劣化を防止することができる。すなわち、第1の部材と第2の部材とから構成される複合部材の耐久性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記部材接続方法において、前記筒部を塑性変形させる位置に、雄ネジおよび雌ネジのうちの少なくとも一方を形成したことにある。これによれば、第2の部材の筒部を塑性変形させる位置に雄ネジおよび雌ネジのうちの少なくとも一方が形成されているため、上記した本各発明に比べてより強固に第1の部材と第2の部材とを接続することができる。
【0011】
また、本発明は部材の接続方法として実施できるばかりでなく、同接続方法を用いて接続された複合部材の発明としても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る部材接続方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る部材接続方法を用いて製造されたスタビライザーリンクSLの全体を示す正面図である。スタビライザーリンクは、自動車に採用されるサスペンション機構においてスタビライザーとサスペンションアームとを連結するリンク部材であり、車体の走行安定性を図るための部材である。なお、図においては、スタビライザーリンクSLの中央部を省略して示している。
【0013】
このスタビライザーリンクSLは、円筒状に形成されたアーム部材10の一端部に略凸状に形成されたボールジョイント20を図示上向きに備えるとともに、同アーム部材10の他端部にボールジョイント20と同一な構成のボールジョイント30を図示下向きに備えて構成されている。アーム部材10は、図2に示すように、アルミニウム合金を引き抜き加工によりパイプ状に形成した部材である。このアーム部材10の内周面には、各開口部11a,11bから所定の位置に雌ネジ12a,12bが所定の長さでそれぞれ形成されている。本実施形態においては、各開口部11a,11bから40mmの位置に、10mmの長さで形成されている。このアーム部材10は、本発明に係る第2の部材に相当し、雌ネジ12a,12bは本発明に係る雌ネジにそれぞれ相当する。なお、図2においては、アーム部材10の中央部を省略して示している。
【0014】
ボールジョイント20は、図3(A),(B)に示すように、ボールスタッド21、軸受部材22,ベアリングシート23,プラグ24およびダストカバー25から構成されている。これらのうち、ボールスタッド21は、鉄鋼材により構成されており、略円柱状に形成されたスタッド部21aの一端部に球状のボール部21bが形成されるとともに、スタッド部21aの他端部に鍔部21cを介して雄ネジ21dが形成されている。
【0015】
軸受部材22は、アルミニウム合金を鋳造して成形されており、円筒状に形成されたソケット部22aと、同ソケット部22aから水平方向に延びて形成された支持部22bとから構成されている。これらのうち、ソケット部22aは、その円筒内にて前記ボールスタッド21のボール部21bを収容する部分である。また、支持部22bは、軸受部材22、すなわち、ボールジョイント20をアーム部材10に接続する部分である。支持部22bには、円柱状(軸状)の軸部22cがソケット部22aとは反対側に延びて形成されている。この軸部22cの先端部の外周面には雄ネジ22dが形成されている。
【0016】
雄ネジ22dは、前記アーム部材10の内周面に形成された雌ネジ12a,12bに噛み合うネジ部であり、本発明に係る雄ネジに相当する。すなわち、軸部22cの長さは前記アーム部材10における開口部11a,11bから雌ネジ12a,12bの終端までの長さに対応しており、雄ネジ22dが形成される位置および長さはアーム部材10の内周面に形成される雌ネジ12a,12bの位置および長さに対応している。本実施形態においては、軸部22cの長さは50mmである。また、雄ネジ22dは軸部22cの一方(図示左側)の端部から40mmの位置に、10mmの長さで形成されている。
【0017】
軸受部材22のソケット部22aの内部におけるソケット部22aの内壁とボールスタッド21のボール部21bとの間にはベアリングシート23が設けられている。ベアリングシート23は、合成樹脂材にて構成されており、軸受部材22のソケット22a内においてボールスタッド21のボール部21bを回動自在に保持する。このベアリングシート23は、鉄鋼材により構成された略凹形状のプラグ24によってソケット22a内に保持されている。また、軸受部材22のソケット部22aの上部には、ボールスタッド21のスタッド部21aを覆う状態で、ゴム材により構成されたダストカバー25が設けられている。なお、ボールジョイント30は、ボールジョイント20と同一な構成であるため、その説明は省略する。また、これらボールジョイント20またはボールジョイント30が、本発明に係る第1の部材に相当する。
【0018】
このように構成されたスタビライザーリンクSLを製造する過程におけるアーム部材10とボールジョイント20,30との接続方法について説明する。なお、ボールジョイント20とボールジョイント30とは同一の構成であるため、アーム部材10とボールジョイント20との接続方法についてのみ説明し、アーム部材10とボールジョイント30との接続方法については省略する。
【0019】
まず、作業者は、ボールジョイント20を構成する部品であるボールスタッド21、軸受部材22,ベアリングシート23,プラグ24およびダストカバー25をそれぞれ用意する。この場合、軸受部材22は、鋳造により軸部22cに雄ネジ22dが形成された状態で一体的に成形される。なお、雄ネジ22dは、雄ネジ22dを有さない状態で軸受部材22を鋳造した後、例えば、切削加工により形成するようにしてもよい。作業者は、ボールスタッド21、軸受部材22,ベアリングシート23,プラグ24およびダストカバー25を所定の作業工程により組み付けてボールジョイント20を完成させる。このボールジョイント20を完成させるための所定の作業工程は、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0020】
次に、作業者は、スタビライザーリンクSLを構成する部材であるアーム部材10を用意する。この場合、雌ネジ12a,12bは、アーム部材10を引き抜き加工により成形した後、切削加工によりそれぞれ形成される。作業者は、図4(A)に示すように、アーム部材10の一端部(図示左側の端部)にボールジョイント20の軸部22cを挿入するとともに、ボールジョイント20を軸部22cの軸線回りに回転させることにより雄ネジ22dと雌ネジ12aとを噛み合わせる。
【0021】
次に、作業者は、図示しないプレス装置を用いてアーム部材10とボールジョイント20とを接続する。プレス装置は、アーム部材10の端部における軸部22cが挿入されている部分(以下、「筒部」という)を圧縮変形させてアーム部材10とボールジョイント20とを接続するための加工装置であり、2つのプレス型40,50を備えている。
【0022】
プレス型40は、アーム部材10における軸部22cが挿入されている部分を載置するための不動の静金型である。プレス型40におけるアーム部材10が載置されるプレス面41には、アーム部材10の外周面に沿った半円形状に形成された外周プレス面42と、外周プレス面42(またはアーム部材10)の円周方向に沿って外周プレス面42から凸状に突出したカシメ凸部43がプレス型40の長手方向に沿って3つ設けられている。一方、プレス型50は、プレス型40に対して進退可能な状態で配置される動金型である。このプレス型50には、プレス型40に対応するプレス面51,外周プレス面52およびカシメ凸部53がそれぞれ形成されている。
【0023】
作業者は、軸部22cがアーム部材10内に挿入されて雄ネジ22dと雌ネジ12aとが噛み合った状態のアーム部材10およびボールジョイント20をプレス装置のプレス型40上にセットする。そして、作業者は、プレス装置を作動させることにより、軸部22cが挿入されているアーム部材10の筒部を圧縮変形させてアーム部材10とボールジョイント20とを接続(カシメ固定)する。この場合、図4(B)に示すように、アーム部材10の端部の筒部は、プレス型40,50のプレス面41,51の形状に沿って塑性変形し軸部22cに密着する。これにより、ボールジョイント20はアーム部材10に定着する。
【0024】
また、このアーム部材10のプレス加工によってアーム部材10の雌ネジ12aのネジ山が雄ネジ22dのネジ山に押し付けられ雄ネジ22dと雌ネジ12aとが強固に噛み合った状態となる。すなわち、図5(A)に示すように、プレス型40にアーム部材10およびボールジョイント20をセットした際、雄ネジ22dは、同雄ネジ22dのネジ山が雌ネジ12aのネジ山に対してアーム部材10内の奥側に位置した状態で雌ネジ12aと噛み合っている。そして、アーム部材10の筒部がプレス型40,50によって圧縮されると、同筒部はプレス型40,50のプレス面41,51の形状に沿って塑性変形するとともに、プレス型40,50を中心としてアーム10の軸線方向に沿ってそれぞれ流動する。これにより、図5(B)に示すように、雌ネジ12aのネジ山はアーム10の軸線方向(図示矢印の示す方向)に沿って流動するため、雌ネジ12aのネジ山が雄ネジ22dのネジ山に押し付けられる。すなわち、アーム部材10の筒部を含む外周部がプレス型40,50によって圧縮されることにより同筒部を含む外周部に軸力が発生し、この軸力によって雄ネジ22dと雌ネジ12aとが強固に噛み合った状態となる。
【0025】
次に、作業者は、ボールジョイント20が接続されたアーム部材10をプレス装置から取り出し、ボールジョイント20と同様な手順によってボールジョイント30をアーム部材10の他端部に接続する。これにより、アーム部材10の両端部にボールジョイント20およびボールジョイント30がそれぞれ接続され、スタビライザーリンクSLが略完成する。スタビライザーリンクSLを完成させるための他の工程は、本発明に直接関係しないため、その説明は省略する。
【0026】
上記接続方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、軸受部材22(ボールジョイント20)における軸部22cに形成した雄ネジ22dとアーム部材10の筒部内に形成した雌ネジ12aとを噛み合わせた状態で筒部を塑性変形させて軸受部材22をアーム部材10に定着させている。この場合、アーム部材10における筒部が塑性変形することにより内周面に形成されている雌ネジ12aのネジ山がアーム部材10の軸線方向に沿って流動する。すなわち、アーム部材10の内周面に形成されている雌ネジ12aに軸力が生じる。これにより、雌ネジ12aのネジ山が雄ネジ22dのネジ山に押し付けられて雄ネジ22dと雌ネジ12aとが強固に噛み合った状態となる。この結果、アーム部材10における塑性変形させた部分が緩んだ場合であっても雄ネジ22dと雌ネジ12aとが強固に噛み合っているため、軸受部材22とアーム部材10との軸線方向の結合強度を維持することができる。また、雄ネジ22dと雌ネジ12aとの噛み合いが緩んだ場合であっても、雄ネジ22dと雌ネジ12aとが噛み合っている限り、軸受部材22とアーム部材10との結合の状態、すなわち、ボールジョイント20とアーム部材10との結合状態を維持することができる。これらにより、プレス加工によるスタビライザーリンクSLの部品の信頼性を向上させることができる。
【0027】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0028】
上記実施形態においては、雌ネジ12a,12bをアーム部材10内における各開口部11a,11bから40mmの位置に形成するとともに、軸受部材22の軸部22cに雄ネジ22dを前記雌ネジ12a,12bに対応する位置、具体的には、軸部22cの一方(図示左側)の端部から40mmの位置に形成した。すなわち、雄ネジ22dおよび雌ネジ12a,12bをアーム部材10におけるプレス加工する位置よりも奥側にそれぞれ形成した。また、これらの雄ネジ22dおよび雌ネジ12a,12bの長さをそれぞれ10mmとした。しかし、これら雄ネジ22dおよび雌ネジ12a,12bの位置および長さは、上記実施形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、図6に示すように、雄ネジ22dおよび雌ネジ12a,12bをアーム部材10におけるプレス加工する位置よりも開口部11a,11b側にそれぞれ形成するようにしてもよい。これによれば、雄ネジ22dと雌ネジ12a,12bとの噛み合いによりアーム部材10の開口部11a,11bから水などの異物がアーム部材10内に浸入することを防止することができる。この結果、アーム部材10や軸受部材22が腐食する材料で構成されている場合には、アーム部材10の内部およびアーム部材10内に挿入された軸受部材22の軸部22cの腐食などの劣化を防止することができる。すなわち、スタビライザーリンクSLの耐久性を向上させることができる。
【0030】
また、図7に示すように、雄ネジ22dを軸部22cの全周に亘って形成してもよい。この場合、雌ネジ12a,12bを、雄ネジ22dの長さに対応した長さで形成してもよいし、アーム部材10をプレス加工する部分を除いた位置に形成するようにしてもよい。また、これに代えて、雌ネジ12a,12bを開口部11a,11bから軸部22cの長さに対応した長さで形成してもよい。この場合、前記と同様に、アーム部材10をプレス加工する部分を除いた軸部22c上の位置に雄ネジ22dを形成するようにしてもよい。すなわち、アーム部材10におけるプレス加工する位置に雄ネジ22dおよび/または雌ネジ12a,12bを形成するようにしてもよい。これによれば、アーム部材10を塑性変形させる位置に雄ネジ22dおよび雌ネジ12a,12bのうちの少なくとも一方が形成されているため、上記実施形態に比べてより強固に軸受部材22(ボールジョイント20)とアーム部材10とをカシメ固定することができる。なお、上記実施形態においては、軸部22cを中実部材で構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、軸部22cを中空部材(パイプ状の部材)で構成してもよいのは当然である。
【0031】
また、上記実施形態においては、アーム部材10および軸受部材22をアルミニウム合金により構成したが、これらを構成する材料はアルミニウム合金に限定されるものではない。例えば、鉄鋼材、ステンレス材、樹脂材などであってもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0032】
また、上記実施形態においては、スタビライザーリンクSLにおけるアーム部材10とボールジョイント20,30の接続について本発明を適用したが、これに限定されるものではない。本発明は、軸部を筒部内に挿入して同筒部を塑性変形させることにより軸部と筒とを固定する接続方法に広く適用できるものである。例えば、自動車のサスペンション機構に用いられるサスペンションアームや、ステアリング機構に用いられるタイロッドエンド、ラックエンド、これらに用いられるインナーボールジョイントなどにも広く適用することができる。また、自動車以外の分野、例えば、各種ロボットを構成する各種部品や、プラモデル等の玩具を構成する各種部品にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る接続方法を用いて製作されたスタビライザーリンクの全体を示す正面図である。
【図2】図1のスタビライザーリンクのアーム部材を示す断面図である。
【図3】(A)は図1のスタビライザーリンクのボールジョイントを示す平面図であり、(B)は同ボールジョイントを示す一部破断正面図である。
【図4】(A),(B)は、アーム部材にボールジョイントを挿入してアーム部材をプレス加工する状態を示す説明図であり、(A)は一部破断平面図であり、(B)は一部破断正面図である。
【図5】(A),(B)は、アーム部材をプレス加工した際の雌ネジの状態を示す説明図であり、(A)はプレス加工前の雌ネジおよび雄ネジの状態を示す一部断面図であり、(B)はプレス加工後の雌ネジおよび雄ネジの状態を示す一部断面図である。
【図6】本発明の変形例を示すスタビライザーリンクの一部破断正面図である。
【図7】本発明の他の変形例を示すスタビライザーリンクの一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0034】
SL…スタビライザーリンク、10…アーム部材、11a,11b…開口部、12a,12b…雌ネジ、20,30…ボールジョイント、21…ボールスタッド、22…軸受部材、22a…ソケット部、22b…支持部、22c…軸部、22d…雄ネジ、23…ベアリングシート、24…プラグ、25…ダストカバー、40,50…プレス型、41,51…プレス面、42,52…外周プレス面、43,53…カシメ凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に形成された軸状の軸部を、第2の部材に形成された筒状の筒部内に挿入して同筒部を塑性変形させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを接続する部材接続方法において、
前記第1の部材における前記軸部に雄ネジを形成するとともに、前記第2の部材における前記筒部内に雌ネジを形成しておき、
前記雄ネジと前記雌ネジとを噛み合わせた状態で、前記筒部を塑性変形させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを接続することを特徴とする部材接続方法。
【請求項2】
請求項1に記載した部材接続方法において、
前記雄ネジおよび前記雌ネジは、前記第2の部材における前記筒部を塑性変形させる位置より奥側にそれぞれ形成されている部材接続方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した部材接続方法において、
前記雄ネジおよび前記雌ネジは、前記第2の部材における前記筒部を塑性変形させる位置より同筒部の開口部側にそれぞれ形成されている部材接続方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した部材接続方法において、
前記筒部を塑性変形させる位置に、前記雄ネジおよび前記雌ネジのうちの少なくとも一方を形成した部材接続方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した部材接続方法において、
前記第2の部材における前記筒部をプレス加工により塑性変形させる部材接続方法。
【請求項6】
第1の部材に形成された軸状の軸部を、第2の部材に形成された筒状の筒部内に挿入して同筒部を塑性変形させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを接続した複合部材において、
前記第1の部材は、前記軸部に雄ネジを備え、
前記第2の部材は、前記筒部内に雌ネジを備え、
前記雄ネジと前記雌ネジとを噛み合わせた状態で、前記筒部を塑性変形させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが接続されていることを特徴とする複合部材。
【請求項7】
請求項6に記載した複合部材において、
前記雄ネジおよび前記雌ネジは、前記第2の部材における前記筒部を塑性変形させる位置より奥側にそれぞれ形成されている複合部材。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載した複合部材において、
前記雄ネジおよび前記雌ネジは、前記第2の部材における前記筒部を塑性変形させる位置より同筒部の開口部側にそれぞれ形成されている複合部材。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載した複合部材において、
前記筒部を塑性変形させる位置に、前記雄ネジおよび前記雌ネジのうちの少なくとも一方を形成した複合部材。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載した複合部材において、
前記第2の部材における前記筒部をプレス加工により塑性変形させた複合部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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