説明

配光特性可変型照明装置

【課題】 パン角・チルト角に加え映像光線放射手段の位置・姿勢を制御して配光特性を柔軟に変更することができる配光特性可変型照明装置を提供する。
【解決手段】配光特性可変型照明装置1は、映像光線を発生する映像光線発生手段11と、一端で受光した映像光線を他端に伝達する映像光線伝達手段12と、映像光線伝達手段12の他端に到達した映像光線を被照明体に向けて放射する映像光線放射手段13とを含み、映像光線放射手段13を映像光線発生手段11から分離して軽量化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配光特性可変型照明装置に係り、特に、配光特性を柔軟に変更することのできる配光特性可変型照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配光特性を変更することのできる照明装置としては、ムービングライトと総称される照明装置が公知である。
【0003】
ムービングライトは、光源が放射する光を反射鏡で反射し、色フィルタを介して光を被照明体に投射する。反射鏡の角度および色フィルタを遠隔から制御することにより配光特性を変更することを可能としている。
【0004】
また、ムービングライトより一層柔軟な配光特性を得るために、光源としてプロジェクタを用いたアートライティング装置も既に提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
上記のアートライティング装置は、液晶プロジェクタをパン角およびチルト角を変更可能な操作ロボットに搭載し、プロジェクタから放射されるカラー映像光線で被照明体を照明するものである。
【非特許文献1】http://www.tlt.co.jp/tlt/art/catalogue/av/av.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のアートライティング装置は、プロジェクタ自体が相当の重量を有しているため、プロジェクタのパン角およびチルト角の少なくとも一方を変更できるものの、プロジェクタ自体の位置・姿勢を制御することはできないので、配光特性を柔軟に変更することはできないという課題があった。
【0007】
例えば、別個に撮影した背景映像と被写体映像とを1つの映像に合成する映像合成の分野においては、背景撮影時の照明の配光特性と被写体撮影時の照明の配光特性とが一致していなければ合成画面に不自然さが生じることとなるが、上記の従来のアートライティング装置は位置・姿勢を制御できないので、被写体映像撮影時に背景映像撮影時の配光特性を正確に再現することは困難であった。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであって、パン角・チルト角に加え映像光線放射手段の位置・姿勢も制御可能とし配光特性を柔軟に変更することのできる配光特性可変型照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配光特性可変型照明装置は、映像光線を発生する映像光線発生手段と、一端で受光した前記映像光線を他端に伝達する映像光線伝達手段と、前記映像光線伝達手段の他端に伝達された前記映像光線を被照明体に向けて放射する映像光線放射手段とを含む構成を有している。
【0010】
この構成により、映像光線放射部を映像光線発生部から分離することにより映像光線放射手段を軽量化できることとなる。
【0011】
本発明の配光特性可変型照明装置は、前記映像光線放射手段が前記映像光線を放射するときの放射条件を遠隔操作により変更できるレンズ系を含む構成を有している。
【0012】
この構成により、映像光線の放射条件を遠隔操作により変更できることとなる。
【0013】
本発明の配光特性可変型照明装置は、前記映像光線放射手段の位置および姿勢を制御する位置・姿勢制御手段を含む構成を有している。
【0014】
この構成により、映像光線放射手段の位置および姿勢を遠隔操作により変更できることとなる。
【0015】
本発明の配光特性可変型照明装置は、前記映像光線放射手段が、前記映像光線の拡散度を変更する拡散度変更部を含む構成を有している。
【0016】
この構成により、放射される映像光線の拡散度を変更できることとなる。
【0017】
本発明の配光特性可変型照明装置は、前記映像光線発生手段が、映像生成手段によって生成された映像に基づいて前記映像光線を発生するものである構成を有している。
【0018】
この構成により、動画映像に基づいて映像光線を生成できることとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、パン角・チルト角に加え、映像光線放射手段の位置・姿勢も制御可能とし配光特性を柔軟に変更することができるという効果を有する配光特性可変型照明装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の配光特性可変型照明装置について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の配光特性可変型照明装置1は、図1に示すように、映像光線を発生する映像光線発生手段11と、一端で受光した映像光線を他端に伝達する映像光線伝達手段12と、映像光線伝達手段12の他端に伝達された映像光線を被照明体に向けて放射する映像光線放射手段13とを含む。
【0021】
映像光線発生手段11は、白色光を発生する光源111と、光源111の前方に設置され、光源111から放射された白色光を透過・拡散度に応じた映像光線に変換する液晶板112と、映像光線を集光するファイバーテーパ113と、映像生成手段14で生成された映像に基づいて液晶板112の透過・拡散度を制御する液晶板制御部114とから構成される。
【0022】
映像光線伝達手段12は、ファイバーテーパ113で集光された映像光線を伝達するために複数本の光ファイバを束ねたイメージファイバ121である。
【0023】
映像光線放射手段13は、映像光線を放射するときの放射条件を遠隔操作により変更可能なレンズ系131を含む。ここで放射条件とは、映像光線を放射するときの放射角度、焦点位置、絞り径、焦点深度等を意味する。
【0024】
映像光線放射手段13は、さらに、映像光線の拡散度を変更するために、液晶板と液晶板の偏光度を制御する制御装置とで構成される拡散度変更部132を備えていてもよい。
【0025】
次に、本発明の第1の実施の形態の配光特性可変型照明装置1の動作を説明する。
【0026】
映像生成手段14により生成された入力映像は、液晶板制御部114を介して液晶板112に表示される。液晶板制御部114は入力映像に応じて液晶板112の透過・拡散度を制御し、光源111から放射された白色光を映像光線に変換する。映像光線は、ファイバーテーパ113により受光され、イメージファイバ121により伝達される。
【0027】
イメージファイバ121により伝達された映像光線は、イメージファイバ121の他端から放射され、レンズ系131を介して被照明体15に放射される。映像光線を放射するときの放射角度、焦点位置、絞り径および焦点深度は、レンズ系131を遠隔操作することにより変更可能である。
【0028】
また、拡散度変更部132により映像光線放射手段13から放射される映像光線の拡散度を変更することも可能である。
【0029】
なお、レンズ系131と拡散度変更部132の液晶板との間の距離を変更可能として、映像光線をより大幅に変更できるようにしてもよい。
【0030】
以上説明したように、第1の実施の形態の配光特性可変型照明装置1は、映像光線放射手段13を映像光線発生手段11から分離したので、映像光線放射手段13を軽量化でき、映像光線放射手段13の位置・姿勢を柔軟に制御することが可能となる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の配光特性可変型照明装置は、図2に示すように、映像光線放射手段13は、パン角・チルト角に加えて位置・姿勢を制御可能な姿勢制御手段2に搭載される。
【0031】
図2の姿勢制御手段2は、略1/4円弧の方位角レール21および方位角レール21に直交する略1/4円弧の仰角レール22と、仰角レール22を搭載して方位角レール21に沿って走行する方位角レール走行部23と、仰角レール22に沿って走行する仰角レール走行部24と、仰角レール走行部24に対して回転およびスライド可能に設置されるアーム25とから構成され、映像光線放射手段13はアーム25の先端に取り付けられる。
【0032】
アーム25は、中間に折り曲げ可能な関節を有していてもよく、映像光線放射手段13との接続部に映像光線放射手段13のチルト角を調整するチルト関節および映像光線放射手段13のパン角を調整するパン関節を有していてもよい。なお、図2の矢印は、方位角レール走行部23、仰角レール走行部24、および各関節の動作方向を表す。
【0033】
次に、本発明の第2の実施の形態の配光特性可変型照明装置の動作を説明する。
【0034】
バーチャルリアリティシステム28で生成された照明条件を受信した制御装置27は、映像情報に基づいて姿勢制御手段2を操作し、映像光線放射手段13の位置および姿勢を制御する。
【0035】
バーチャルリアリティシステム28で生成された映像情報を受信した映像生成手段14は映像情報に基づいて映像光線発生用の映像を生成し、映像光線発生手段11に伝送する。
【0036】
映像光線発生手段11は映像光線を発生し、イメージファイバ121は映像光線を映像光線放射手段13に伝達する。映像光線放射手段13は、姿勢制御手段2により制御された姿勢で映像光線を放射する。
【0037】
なお、姿勢制御手段2は、図3に示すアーム型ロボットであってもよい。なお、図中の矢印は関節の動作方向を表す。
【0038】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態の配光特性可変型照明装置は、映像光線放射手段13が姿勢制御手段2に搭載されているので、被照明体15への映像光線の放射条件を広範囲に変更することができるとともに、拡散度変更部132により映像光線の拡散度を制御することも可能となる。
(第3の実施の形態)
本出願人は、既に、自然な色調および陰影関係で背景と合成することの可能な動的映像を撮影することのできる映像撮影システムを提案しているが、この映像撮影システムにも本発明に係る配光特性可変型照明装置を適用できる。
【0039】
本出願人が提案済みの映像撮影システムは、図4に示すように、例えば円柱状の全隔壁が透明であるステージ41と、ステージ41の隔壁をステージ41の外側から可視光で照明する少なくとも1つの照明装置42と、照明装置42で照射されたステージ41の内部を撮影する撮影装置43とを備える。なお、ステージ41の隔壁の内面は、透明な再帰性反射材で覆われている。
【0040】
撮影装置43は、ステージ41の内部の可視光映像を撮影する可視光映像撮影部と、可視光映像撮影部の光軸上で、ステージ41の内壁面に赤外光を照射する赤外光照射部と、ステージ内部の赤外光映像を、可視光映像撮影部の光軸上で撮影する赤外光映像撮影部とを備えている。
【0041】
また、本出願人が提案済みの映像撮影システムは、ステージ41の内部の被照明体15を照明するために、ロボット・アーム45に搭載したキー照明装置44を備えてもよいが、このキー照明装置44として本発明に係る配光特性可変型照明装置を適用することができる。
【0042】
この場合、キー照明装置44は、映像光線を発生する映像光線発生手段11と、一端で受光した映像光線を他端に伝達する映像光線伝達手段12と、映像光線伝達手段12の他端に伝達された映像光線を被照明体15に向けて放射する映像光線放射手段13とで構成される。
【0043】
即ち、キー照明装置44として本発明に係る配光特性可変型照明装置を適用した場合には、映像光線で被照明体15を照射することができることとなる。
【0044】
バーチャルリアリティシステム28で生成されたキー照明用の映像は、映像生成手段14を介して映像光線発生手段11に伝送される。映像光線発生手段11が発生した映像光線は、映像光線伝達手段12を介して映像光線放射手段13に伝達される。映像光線放射手段13が放射した映像光線は被照明体15を照射する。
【0045】
バーチャルリアリティシステム28で生成されたキー照明の照明条件は、ロボット・アーム制御装置46に伝送され、ロボット・アーム45により映像光線放射手段13の姿勢を制御する。
【0046】
以上説明したように、第3の実施の形態の配光特性可変型照明装置によれば、バーチャルリアリティシステムで生成された背景の照明と無理なく合成可能な配光特性で被写体を照明することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係る配光特性可変型照明装置は、映像光線放射手段を映像光線発生手段から分離して軽量化し、パン角・チルト角に加え映像光線放射手段の位置・姿勢を制御することにより、配光特性を柔軟に変更できるという効果を有し、照明装置等として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態における配光特性可変型照明装置のブロック図
【図2】本発明の第2の実施の形態における配光特性可変型照明装置のブロック図
【図3】本発明の第2の実施の形態における別の配光特性可変型照明装置のブロック図
【図4】本発明の第3の実施の形態における配光特性可変型照明装置のブロック図
【符号の説明】
【0049】
1 配光特性可変型照明装置
11 映像光線発生手段
12 映像光線伝達手段
13 映像光線放射手段
14 映像生成手段
15 被照明体
111 光源
112 液晶板
113 ファイバーテーパ
121 イメージファイバ
131 レンズ系
132 拡散度変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光線を発生する映像光線発生手段と、
一端で受光した前記映像光線を他端に伝達する映像光線伝達手段と、
前記映像光線伝達手段の他端に伝達された前記映像光線を被照明体に向けて放射する映像光線放射手段とを含む配光特性可変型照明装置。
【請求項2】
前記映像光線放射手段が、前記映像光線を放射するときの放射条件を遠隔操作により変更できるレンズ系を含む請求項1に記載の配光特性可変型照明装置。
【請求項3】
前記映像光線放射手段の位置および姿勢を制御する位置・姿勢制御手段を含む請求項1または請求項2に記載の配光特性可変型照明装置。
【請求項4】
前記映像光線放射手段が、前記映像光線の拡散度を変更する拡散度変更部を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配光特性可変型照明装置。
【請求項5】
前記映像光線発生手段が、映像生成手段によって生成された映像に基づいて前記映像光線を発生するものである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配光特性可変型照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−251172(P2006−251172A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65531(P2005−65531)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】