説明

配管の切断方法

【課題】特殊な技術を用いることなく、配管切断の際の液体の流出を抑制できる配管の切断方法を提供することにある。
【解決手段】配管10の側部に穴11を開ける工程と、該穴11にノズル30を挿入し、該ノズル30を介して薬液31を前記配管内部に注入することで、液体20の少なくも一部を硬化させる工程と、前記配管10を切断する工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な技術を用いることなく、配管切断の際の液体の流出を抑制できる配管の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の液体の搬送に用いられる配管は、一定期間使用した後に廃棄を行う際には、いくつかに切断・分解し、廃棄することが一般的である。ただし、前記配管を切断する際、配管中に充填された液体が外部へと流出という問題があった。特に、前記配管中の液体が、汚染物質を含んでいる場合には、より厳密に液体の流出を抑制する必要がある。
【0003】
内部に液体が存在する配管を切断する技術として、例えば、特許文献1では、放射線源に連通する配管を切断するための配管切断方法であって、配管の切断位置より放射線源側の側面に貫通孔を空けるとともに、該貫通孔より伸縮性を有する袋体を前記配管内に配置する工程と、前記袋体内に流体を流入させて膨張させ、その袋体を配管内面に全周にわたって液密に接触させて配管通路を閉塞させる工程と、前記切断位置で前記配管を切断する工程と、その切断した開口に蓋部材を取り付けるとともに、前記貫通孔を閉塞する工程と、を有することを特徴とする配管切断方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、流体管の分岐基部に一端が連設され、他端に形成された連結部に仕切弁が連結されている分岐管を、前記流体管での流体輸送を維持したまま更新する流体配管系の分岐管更新工法であって、1)仕切弁を通して挿入された閉塞装置の閉塞部で分岐管内の流路を閉塞するステップと、2)閉塞部を分岐管内に残したまま当該分岐管の連結部から前記仕切弁を撤去するステップと、3)流体管又は分岐基部に、分断した残置分岐管部の切断開口に連通する分岐接続口を備え、かつ、残置分岐管部全体の外側を覆い包むことが可能な新設分岐部材を密着状態で取付けるステップと、4)前記新設分岐部材の分岐接続口側に形成された連結部に仕切弁を連結したのち、開弁状態にある仕切弁を通して前記閉塞装置の閉塞部を撤去するステップとを備えることを特徴とする技術が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、配管の閉止する閉止箇所を、少なくとも一対の金型によって押し潰す押潰手段と、押潰手段によって押し潰された前記閉止箇所の内面が密着するように接合する接合手段とを備え、前記押潰手段は、前記閉止箇所を押し潰す第1の金型と、前記第1の金型によって押し潰された前記閉止箇所を逆方向に押し潰して変形させることにより塑性変形させる第2の金型とから構成され、前記第1の金型は、円弧状の凸状面が形成された雄金型と円弧状の凹状面が形成された雌金型とからなり、前記第2の金型は、平坦面が形成された金型と前記閉止箇所を略線状に支持する金型とからなることを特徴とする配管の閉止装置が開示されている。
【0006】
特許文献1〜3のいずれの技術についても、配管切断時の液体の流出を抑制するという点では一定の効果を奏することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−32253号公報
【特許文献2】特開2009−24729号公報
【特許文献3】特開2007−160330号公報
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、いずれも特殊な装置を必要とすることから、配管を切断する作業が煩雑になることに加え、切断に要するコストが大きいという問題があった。
また、特許文献1の技術では、袋体が破裂し、外部へ液体が流出するおそれがあった。
さらに、特許文献2及び3の技術では、大掛かりな装置を必要とするため、配管が地中深くにある場合など、作業を行うことが困難であるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、内部に液体が充填された配管を切断する方法について、特殊な技術を用いることなく、配管切断の際の液体流出の抑制を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、内部に液体が充填された配管を切断する方法について、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、前記配管の側部に穴を開ける工程と、該穴にノズルを挿入し、該ノズルを介して薬液を前記配管内部に注入することで、前記液体の少なくとも一部を硬化させる工程と、前記配管を切断する工程とを備えることで、配管の切断部分の液体が硬化し、外部への流出を防ぐ蓋の代わりとなるため、配管切断の際の液体の流出を抑制しつつ、配管の切断を行うことができ、さらに、従来技術のように特殊な技術を用いる必要がないことを見出した。
【0011】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)内部に液体が充填された配管を切断する方法であって、前記配管の側部に穴を開ける工程と、該穴にノズルを挿入し、該ノズルを介して薬液を前記配管内部に注入することで、前記液体の少なくとも一部を硬化させる工程と、前記配管を切断する工程とを備えることを特徴とする配管の切断方法。
【0012】
(2)前記薬液は、3号珪酸ソーダであることを特徴とする上記(1)に記載の配管の切断方法。
【0013】
(3)前記ノズルを挿入するための穴は、前記配管の切断位置から0.1〜1.0mの範囲内に設けられることを特徴とする上記(1)に記載の配管の切断方法。
【0014】
(4)前記薬液を注入するための穴の直径は、5〜40mmの範囲であることを特徴とする上記(1)に記載の配管の切断方法。
【0015】
(5)前記配管の切断は、ガス溶断、カッターを用いた切断又はジグソーによる切断によって行われることを特徴とする上記(1)に記載の配管の切断方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特殊な技術を用いることなく、配管切断の際の液体の流出を抑制できる配管の切断方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従う切断方法により切断される配管の模式的断面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の配管の切断方法について説明する。図1は、本発明による配管の切断方法を説明するため、切断される配管の断面を模式的に示した図である。
【0019】
本発明による配管の切断方法は、図1に示すように、内部に液体20が充填された配管10を切断する方法である。
そして本発明は、前記配管10の側部に穴11を開ける工程と、該穴11にノズル30を挿入し、該ノズル30を介して薬液31を前記配管内部に注入することで、前記液体20の少なくとも一部を硬化させる工程と、前記配管10を切断する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
前記薬液31を注入し、前記液体20を硬化させることで、前記配管10を切断位置10Xで切断したとき、硬化した液体21が切断部分10Xで蓋の役目を果たすことによって、配管10からの液体20の流出を有効に抑制できる。また、本発明による方法は、配管10に穴11を空け、薬液を注入するだけで切断を行えるため、従来技術のように特殊な設備や制御を必要とせず、比較的容易に効果を得ることができる。
【0021】
以下に、本発明による配管の切断方法の各工程及び条件について説明する。
(穴開け工程)
本発明による配管の切断方法は、図1に示すように、前記配管10の側部に穴11を開ける工程を備える。次工程において、前記配管10の内部にノズル30を挿入できるようにするためである。
【0022】
前記穴11を空けるための方法としては特に限定はされない。例えば、ドリルやホルソーを用いて、前記配管10の側部に穴11を空けることができる。その中でも、前記穴11のサイズを精密に調整できる点から、ホルソーを用いることが好ましい。
【0023】
また、前記ノズル30を挿入するための穴11は、前記配管10の切断位置10Xから0.1〜1.0mの範囲内に設けられることが好ましい(0.1m≦L1≦1.0m)。前記穴11の形成位置と切断位置10Xとの距離L1が0.1m未満の場合、切断位置に近すぎるため、切断時に穴11が破損し、正確な切断を行えないおそれがあり、一方、前記距離L1が1.0mを超えると、前記薬液31の注入位置と切断位置10Xとが離れすぎるため、切断位置10Xにおける前記液体20が硬化しておらず、配管切断時に外部へ流出おそれがあるからである。
【0024】
前記薬液を注入するための穴の直径Doは、5〜40mmの範囲であることが好ましい。前記直径Doが5mm未満の場合、穴11が小さすぎるため、前記配管30の挿入が困難となるおそれがあり、一方、前記直径Doが40mmを超えると、穴11が大きくなりすぎるため、該穴11を形成した際、液体20が流出するおそれがあるからである。
【0025】
(薬液注入工程)
本発明による配管の切断方法は、図1に示すように、前記穴11にノズル30を挿入し、該ノズル30を介して薬液31を前記配管内部に注入することで、前記液体20の少なくとも一部を硬化させる工程を備える。
前記薬液31を注入して、前記液体20を硬化させることで、上述のように、硬化した液体21を配管切断時の蓋のようにすることができる。
【0026】
ここで、前記液体20の少なくとも一部とは、前記配管の切断が行われる部分10Xを含む範囲のことをいう。その範囲については特に限定はされないが、前記切断部分10Xの液体20が確実に硬化されるように、前記穴11から0.1m以上離れた部分まで硬化させることが好ましい。また、配管10中の液体20を全て硬化させることもできる。
【0027】
前記薬液31については、前記液体20を硬化させることができれば特に限定はされず、液体の種類や、含有される汚染成分の種類によって、適宜選択することができる。例えば、前記液体20の硬化作用が大きく、有害な点が少ない理由から、3号珪酸ソーダ(3号珪酸ナトリウム)を用いることが好ましい。
【0028】
ここで、前記液体20を硬化するための薬品を、固体状ではなく液体状の薬液31に限定した理由としては、前記液体20と均一に混合することができ、確実に前記液体20の硬化を行うことができるからである。固体状の薬品を用いた場合、前記液体20と均一に混合することが困難となり、前記切断部30Xの液体20を硬化できないおそれがある。
【0029】
前記薬液31を注入するためのノズル30とは、前記薬液31を注入する手段の先端部分のことをいう。該ノズル30の形状については特に限定はされないが、形成した穴11に挿入しやすいという点からは、図1に示すように円筒状であることが好ましい。また、その場合、前記ノズル30の外径Dnは、4〜40mmの範囲であることが好ましい。前記配管10の穴11との関係で、4mm未満では穴11との径差が大きくなりすぎるため、外部へと前記液体20が流出する恐れがあり、一方、40mmを超えると、前記穴11に挿入するのが困難となるからである。
さらに、前記薬液31を注入する手段については特に限定はされず、ポンプ等の装置や、手動の操作によって、前記ノズル30を介して配管10の内部へと薬液を注入することができる。
【0030】
また、前記ノズル30の前記配管内部への挿入深さB(図1を参照。)は、10〜200mmの範囲であることが好ましい。前記深さBが10mm未満の場合、前記ノズル30が十分に挿入されておらず、一方、前記深さBが200mmを超えると、前記ノズル30を深く挿入しすぎているため、いずれも前記薬液31を前記液体20中に行き渡らせることができず、十分に前記液体20の硬化にムラが生じるおそれがあるからである。
【0031】
前記ノズル30からの薬液31の注入速度については、前記配管20のサイズや前記薬液31の種類・濃度によって適宜選択することが可能であるが、前記液体20を効率的に硬化できる点からは10〜30L/minの速度であることが好ましい。前記注入速度が10L/min未満の場合、速度が十分でないため、効率的に前記液体20を硬化することができず、一方、前記注入速度が30L/minを超えると、速度が大きすぎるため、前記液体20の硬化にムラが生じるおそれがあるからである。
【0032】
(配管切断工程)
本発明による配管の切断方法は、図1に示すように、前記配管10を切断する工程を備える。ここで、前記配管10の切断10については、前記薬液31を注入し、硬化液体21が存在する配管10部分Xを切断する。
【0033】
前記切断は、特に限定はされないが、ガス溶断、カッターを用いた切断又はジグソーによる切断によって行うことが好ましい。これらの手段を用いることで、切断時に前記配管10内部の液体20、21を外部へと飛散させることなく、確実に前記配管10の切断を行えるためである。
【0034】
(その他条件)
前記配管10の内部に充填された液体20の種類については、特に限定はされないが、放射性物質や、泥等の汚染成分を含有する液体20の場合に、本発明による効果が最も発揮される。
【0035】
また、前記液体20は、前記配管10の内部で止まっていても、流れていても構わない。ただし、前記液体20が流れている場合、その流速は、10L/min以下であることが好ましい。10L/minを超えると、流速が大きすぎるため、前記薬液31によって硬化させることが困難となるおそれがある。
【0036】
なお、図1では、前記配管10は一方が、10Aで示されているように閉塞しているが、内部に液体10が充填されていれば、両端が開口している配管10についても、本発明に従った切断を行うことができる。
【0037】
また、前記配管10の直径Dcについては、特に限定はされないが、本発明による切断を効果的に行える点からは、400mm以下であることが好ましい。直径Dcが400mmを超える場合、直径が大きすぎるため、前記液体20を硬化させた場合であっても、切断後、硬化した液体21が外部へとこぼれ出るおそれがあるからである。
【0038】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、特許請求の範囲の記載内容に応じて種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例)
以下の工程で配管の切断を行った。
まず、内部に汚染成分として泥を10質量%の濃度で含有する液体20を充填した配管10(長さ:300mm)を用意した。なお、前記充填された液体20については、前記配管10の内部で流れておらず止まった状態である。
図1に示すように、前記配管10の側部に直径Do20mmの穴11を開けた。
その後、該穴11に外径Dn20mmの円筒状のノズルを挿入し、該ノズルを介して3号水ガラス(薬液)を、ポンプを用いて前記配管10の内部に注入し(注入速度:10L/min)、その後、10分間放置することで、前記液体20の一部をゲル状に硬化させた。
そして、前記穴11から200mmはなれた位置10X(距離L1=200mm)において前記配管10の切断を行った。切断には、ガス溶断を用いた。
【0040】
(評価)
実施例による切断方法で配管の切断を行った結果、前記配管の切断作業の間、内部に充填された汚染水の流出はなく、有効に抑制できることがわかった。
さらに、特殊な装置等を必要とせず、配管に穴を開けて薬液を注入した後、切断を行うという比較的容易に切断作業を行えることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、特殊な技術を用いることなく、配管切断の際の液体の流出を抑制できる配管の切断方法を提供することが可能となる。その結果、より安全かつ低コストに配管の切断を行えることから、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0042】
10 配管
11 穴
20 液体
30 ノズル
31 薬液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体が充填された配管を切断する方法であって、
前記配管の側部に穴を開ける工程と、
該穴にノズルを挿入し、該ノズルを介して薬液を前記配管内部に注入することで、前記液体の少なくとも一部を硬化させる工程と、
前記配管を切断する工程とを備えることを特徴とする配管の切断方法。
【請求項2】
前記薬液は、3号珪酸ソーダであることを特徴とする請求項1に記載の配管の切断方法。
【請求項3】
前記ノズルを挿入するための穴は、前記配管の切断位置から0.1〜1.0mの範囲内に設けられることを特徴とする請求項1に記載の配管の切断方法。
【請求項4】
前記薬液を注入するための穴の直径は、5〜40mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の配管の切断方法。
【請求項5】
前記配管の切断は、ガス溶断、カッターを用いた切断又はジグソーによる切断によって行われることを特徴とする請求項1に記載の配管の切断方法。



【図1】
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