配管の接続部材
【課題】簡易な構成で、しかも超臨界等の高圧流体の配管や容器における接続部に用いた場合においても、上記高圧流体の漏れを生じることなく確実に上記配管等を接続することができる配管継ぎ手を提供する。
【解決手段】配管Aと一体化される第1の継手部材1と、配管Bと一体化される第2の継手部材2とを備え、第2の継手部材2は、配管Bと一体化される第2の接続管9の外周に複数の係合凸部12が周方向に間隔をおいて形成され、第1の継手部材1は、係合凸部12を収納可能な内法寸法に形成され、かつその端部に、第2の接続管9が挿通可能であって係合凸部12が挿通不能となる孔部8aおよび係合凸部12が挿通可能な複数の開口部13が穿設された端板8が一体に形成され、開口部13間に位置する端板の内壁が係合凸部の係止面8bとされている。
【解決手段】配管Aと一体化される第1の継手部材1と、配管Bと一体化される第2の継手部材2とを備え、第2の継手部材2は、配管Bと一体化される第2の接続管9の外周に複数の係合凸部12が周方向に間隔をおいて形成され、第1の継手部材1は、係合凸部12を収納可能な内法寸法に形成され、かつその端部に、第2の接続管9が挿通可能であって係合凸部12が挿通不能となる孔部8aおよび係合凸部12が挿通可能な複数の開口部13が穿設された端板8が一体に形成され、開口部13間に位置する端板の内壁が係合凸部の係止面8bとされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された配管の接続部同士または配管と容器との接続部同士を接続するための配管継ぎ手に係り、特に高圧流体の配管等の接続部に用いて好適な配管継ぎ手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高圧の流体を通す配管の接続部には、当該高圧流体の漏れ防止対策が施された配管継ぎ手が用いられている。
例えば、下記特許文献1においては、内燃機関における燃料供給用配管に用いられる配管継ぎ手として、内燃機関側配管の端部に円筒状の受入部を溶接により一体化し、この受入部内に燃料供給側配管の端部を挿入するとともに、上記受入部の先端に形成されたフランジと燃料供給側配管に拡径・屈曲して形成した挿入側フランジとを互いに当接させた状態で、両フランジの外周側から半円弧状のクランプを嵌合して環状に組み合わせ、これらクランプの外周に環状バネを弾性的に嵌着することにより、上記内燃機関側配管と燃料供給側配管とを受入部を介して互いに連結させるものが提案されている。
【0003】
一方、洗浄装置や抽出装置に20〜30MPaの超臨界二酸化炭素を供給するための配管の接続部や、35〜75MPaといった高圧水素ガスを充填した自動車用燃料タンクと抜き出し配管との接続部においては、より一層確実に上記高圧流体の漏れを防止し得る構造を有する配管継ぎ手を採用することが要請されている。
【0004】
ところが、上記従来の配管継ぎ手にあっては、燃料供給用配管に一体化された受入部のフランジと内燃機関側配管に形成したフランジとを、互いの外周部において半円弧状のクランプを環状に組み合わせて挟持する構造であるために、上述した高圧ガス等が作用する接続部に適用した場合には、上記フランジやクランプおよび環状バネの剛性や弾性を極めて高いものにする必要があり、継ぎ手自体が極端に肉厚かつ大型化するとともに、施工が難しくなるという問題点がある。
【0005】
加えて、内燃機関側配管については、それ自体を拡径・屈曲して上記フランジを形成しているために、上述したような高圧流体を用いる配管については、材質上上記加工が困難であり、実際に適用することができないという問題点もある。
【特許文献1】特開平10−306889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、しかも超臨界等の高圧流体の配管や容器における接続部に用いた場合においても、上記高圧流体の漏れを生じることなく確実に上記配管等を接続することができる配管継ぎ手を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対向配置された配管の接続部同士または配管と容器との接続部同士を接続するための配管継ぎ手であって、一方の上記接続部と一体化される第1の継手部材と、他方の上記接続部と一体化される第2の継手部材とを備え、上記第1の継手部材は、一端部が一方の上記接続部と一体化される第1の接続管と、この第1の接続管の他端部側に設けられた管状の係合部とを有し、かつ上記第2の継手部材は、一端部が他方の上記接続部と一体化される第2の接続管と、この第2の接続管の外周に一体的に設けられて径方向に突出する係合凸部とを有してなり、上記係合凸部は、上記第2の接続管の外周に、周方向に間隔をおいて複数形成されるとともに、上記係合部は、上記係合凸部を収納可能な内法寸法に形成され、かつその上記他方の配管側の端部には、上記第2の接続管が挿通可能であって上記係合凸部が挿通不能となる孔部が穿設された端板が一体に形成され、当該端板に、上記孔部に連通して上記複数の係合凸部が挿通可能な複数の開口部が周方向に間隔をおいて複数穿設されることにより、これら開口部間に位置する上記端板の内壁が、上記係合部内に挿入された上記係合凸部の係止面とされていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記係合凸部が、上記第2の接続管の外周から径方向に突出する扇形状に形成されるとともに、上記周方向に等間隔をおいて複数形成され、かつ上記扇形の円周方向の長さ寸法が、隣接する上記係合凸部間における上記円周方向の間隔以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とが、一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
他方、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とが、別体に形成されるとともに、上記第1の接続管の他端部側には、径方向に突出する鍔部が形成され、上記係合部の上記一方の接続部側の端部には、上記第1の接続管が挿通可能であって、かつ上記鍔部が挿通不能の孔部が穿設されていることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記係合部が、周方向に分割されるとともに、結合手段によって一体化されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とが、一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
他方、請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とが、別体に形成されるとともに、上記第2の接続管が挿入される筒状部の外周に上記係合凸部が一体に形成され、かつ上記第2の接続管の上記一方の接続部側の端部には、上記筒状部を係止する段部が形成されるとともに、上記端板に穿設された上記孔部は、上記筒状部が挿通可能となる形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、上記第2の接続管の外周には、上記第1の継手部材の内周面との間を気密に封じるシール部材が装着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜8のいずれかに記載の配管継ぎ手によれば、第1の継手部材の係合部の端板に形成した孔部および開口部に、第2の継手部材の第2の接続管および係合凸部を挿通させることにより、係合凸部を上記係合部内に位置させ、次いで上記係合凸部を第2の接続管と一体に周方向に回転させて上記開口部間に位置させることにより、容易に両者を接続することができる。
【0016】
また、内部を流れる高圧流体によって、第1および第2の継手部材を互いに離間させる方向にスラスト力が作用した場合においても、上記係合凸部が係合部の端板の内壁に当接することにより係止されるために、簡易な構成によって上記高圧ガス等の漏れを生じることなく確実に上記配管等を接続することができる
【0017】
この際に、請求項2に記載の発明のように、上記係合凸部を扇形状であって、かつ周方向に等間隔をおいて形成するとともに、さらに当該扇形の円周方向の長さ寸法が、隣接する係合凸部間における円周方向の間隔以下に設定すれば、上記スラスト力を端板の全面において均等に負担することができる。
【0018】
また、請求項3または6に記載の発明のように、第1の継手部材または第2の継手部材を一体に形成すれば、強度的に有利になり、継ぎ手全体の軽量化を図ることができる。
これに対して、請求項4または7に記載の発明によれば、第1の継手部材における第1の接続管と係合部、あるいは第2の継手部材における第2の接続管と係合凸部とを別体に形成しているために、第1の継手部材と第2の継手部材とを連結すべく上記係合部と係合凸部とを相対的に回転させる際に、係合部または係合凸部を他の部材に対して独立的に回転させることができ、よって配管または容器の接続部を回転させることができない箇所に用いた場合に好適である。
【0019】
さらに、請求項5に記載の発明においては、係合部を周方向に分割しているために、例えば、第1の接続管に容器が一体的に接続されている場合においても、分割体を鍔部等の外周側から被せて結合手段によって一体化させることにより、当該鍔部等を内包させた状態で第1の接続管に取り付けることができる。
【0020】
また、第1の継手部材と第2の継手部材との間には、何等かの手段によって両者間を気密に封じるシールを設ける必要がある。そして、当該シールは、例えば上記特許文献1に見られるように、第1の継手部材の内周面に溝を形成してOリングを嵌着し、このOリング内第2の継手部材における第2の接続管を挿入することも可能である。しかしながら、かかる構成を採用した場合には、第1および第2の継手部材間の高い気密性を確保すべく、第1の継手部材の内周面と第2の接続管の外周面との間の隙間を極力小さく設定すると、第2の接続管を挿入する際にOリングに損傷を与えるおそれがある。
【0021】
この点、請求項8に記載の発明によれば、上記第2の接続管の外周に、上記第1の継手部材の内周面との間を気密に封じるシール部材を装着しているために、第2の接続管を第1の継手部材内に密に挿入する場合にも、当該シール部材に損傷を与えるおそれが少なく、よって高い気密性を確保することができる。また、第2の接続管の外周にシール部材を装着することにより、当該シール部材の交換作業も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、対向配置された配管A、Bの接続部同士を接続するための本発明に係る配管継ぎ手の第1の実施形態を示すもので、図中符号1が一方の配管Aと一体化される第1の継手部材であり、符号2が他方の配管Bと一体化される第2の継手部材である。
この第1の継手部材1は、一端部が配管Aの接続部と溶接Wにより一体化される第1の接続管3と、この第1の接続管3の他端部側に形成された円管状の係合部4とから概略構成されている。
【0023】
ここで、第1の接続管3は、内外径共に配管Aと同径に形成されており、その他端部側に係合部4が一体に形成されている。この係合部4は、内部に上記一端部側から他端部側に向けて第1の接続管3の内径よりも大径の嵌合部5と、この嵌合部5よりもさらに大径の収納部6とが順次形成されている。また、嵌合部5の内壁には、収納部6側に向けて漸次内径が増加するテーパ面5aが形成されている。そして、収納部6の端部には、円板状の端板8が一体に形成されており、この端板8の中心部には、孔部8aが穿設されている。
【0024】
他方、第2の継手部材2は、一端部が他方の配管Bの接続部と溶接Wにより一体化される第2の接続管9と、この第2の接続管9の外周に設けられた円筒部材10とから概略構成されている。
ここで、第2の接続管9は、配管Bとの接続部から円筒部材10が外装されている本体部9aが、内外径共に配管Bと同径に形成されており、この本体部9aから他端部に至る嵌合部9bが、第1の継手部材1の嵌合部5と極僅かの間隙を形成する外径に形成されている。
【0025】
これにより、本体部9aと嵌合部9bとの間には、円筒部材10を係止するための段部7が形成されている。そして、この嵌合部9bの外周に形成された溝部9c内に、図示されないUシール(シール部材)がその開口を第1の接続管3側に向けて装着されている。
【0026】
また、円筒部材10は、円筒状の本体(円筒部)11の端部に4つの係合凸部12が一体に形成されたもので、これら係合凸部12は、本体11の円周方向に等間隔を隔てて形成されている。さらに各々の係合凸部12は、円周方向の長さ寸法が、隣接する係合凸部12間における円周方向の間隔以下となる扇形に形成されている。そして、この円筒部材10の本体11内に、第2の接続管9が相対回転自在に挿入されている。
【0027】
一方、上述した第1の継手部材1の端板8の孔部8aは、この円筒部材10が緩く挿通可能な内径に形成されている。さらに、この端板8には、孔部8aに連通するとともに、円筒部材10の係合凸部12が挿通可能な4つの扇形状の開口部13が、円周方向に等間隔をおいて穿設されている。そして、これら開口部13間に位置する端板8の内壁が、係合凸部13の係止面8bとされている。
【0028】
そして、嵌合部5、収納部6、嵌合部9bおよび円筒部材10の係合凸部12の軸線方向長さは、嵌合部9bが十分に嵌合部5に挿入された位置において、係合凸部12が収納部6に収まる寸法に形成されている。
【0029】
以上の構成からなる配管継ぎ手によって配管A、Bを接続するには、先ず第1の継手部材1の第1の接続管3と配管Aとを溶接Wにより接合するとともに、第2の継手部材2の第2の接続管9と配管Bとを溶接Wにより接合する。
次いで、第1および第2の継手部材1、2を相対的に接近させて、第2の接続管9の嵌合部9bを端板8の孔部8a内に挿入し、さらに端板8の開口部13に円筒部材10の係合凸部12を一致させて円筒部材10を係合部4の収納部6内に挿入する。
【0030】
この際に、第2の接続管9の嵌合部9bは、係合部5の嵌合部5に形成したテーパ面5aによって案内されて嵌合部5内に嵌合する。なお、この嵌合が十分に行われたか否かは、円筒部材10の嵌合凸部12が開口部13を通過する前に、円筒部材10が段部7に当接したか否かによって確認することができる。
【0031】
そして、係合凸部12が係合部4の収納部6内に収納された後に、円筒部材10を回転させて、係合凸部12を開口部13間に位置する端板8の係止面8bに臨ませた位置に留める。次いで、後述するように開口部13から収納部6内の係合凸部12間に至る空間部分に、円筒部材10の回り止め用の固定具を挿入しておく。
【0032】
このように、上記配管継ぎ手によれば、配管A、Bを回転させることができない接続箇所においても、極めて容易に配管A、Bを接続することができる。また、内部を流れる高圧流体によって、第1および第2の継手部材1、2を互いに離間させる方向にスラスト力が作用した場合においても、係合凸部12が端板8の内壁8bに当接して係止されるために、簡易な構成によって上記高圧ガス等の漏れを生じることなく確実に上記配管等を接続することができる
【0033】
しかも、4つの係合凸部12を扇形状であって、かつ周方向に等間隔をおいて形成するとともに、さらに係合凸材12の円周方向の長さ寸法を、隣接する係合凸部12間における円周方向の間隔以下に設定しているために、上記スラスト力を端板8の全面において均等に負担することができる。
【0034】
さらに、第1の継手部材1の嵌合部5にテーパ面5aを形成しているために、第2の接続管9bの嵌合部9bの挿入および嵌合を円滑に行うことができ、しかも万一の上記嵌合の不良は、段部7への円筒部材10の先行当接によって、係合凸部12が開口部13を通過できなくなることにより、容易に確認することができる。
【0035】
加えて、第2の接続管9の外周に、第1の継手部材1の嵌合部5の内周面との間を気密に封じるUシールを装着しているために、第2の接続管9を嵌合部5内に密に挿入する場合にも、当該Uシールに損傷を与えるおそれが少なく、よって高い気密性を確保することができる。また、第2の接続管9の外周にUシールを装着することにより、当該Uシールの交換作業も容易になる。
【0036】
(第2の実施形態)
図5〜図8は、本発明の配管継ぎ手の第2の実施形態を示すもので、この配管継ぎ手においては、第1の継手部材20が、別体の第1の接続管22と係合部23とによって構成されるとともに、第2の継手部材21における第2の接続管24と係合凸部25とが、一体に形成されている。
【0037】
すなわち、第1の接続管22は、配管Aとの接続端部が内外径共に配管Aと同径に形成されるとともに他端側には大径部22aが形成され、さらにその端部には径方向に突出する鍔部22bが形成されている。そして、大径部22aの内部に嵌合部26が形成されるとともに、当該嵌合部26の開口側には、鍔部22b側に向けて漸次内径が増加するテーパ面26aが形成されている。
【0038】
他方、係合部23は、鍔部22bよりもさらに大径の円筒状に形成されており、配管A側の端部には、第1の接続管22の大径部22a挿通可能であって、かつ鍔部22bが挿通不能の孔部23aが穿設されている。また、配管B側の端部には、中心部に孔部27aが穿設された端板27が一体に形成されている。そして、この係合部23の内部には、鍔部22bの外径よりも僅かに大径の収納部28が形成されている。
【0039】
他方、第2の継手部材21は、一端部が他方の配管Bの接続部と溶接Wにより一体化される第2の接続管24と、この第2の接続管24の外周に一体に形成された4つの係合凸部25とから構成されている。
ここで、第2の接続管24は、その内外径が全長に亘って配管Bと同径に形成されており、その中間部に上記係合凸部25が形成されている。そして、この係合凸部25よりも配管A側の部分が嵌合部24aとされている。これにより、第1の接続管22の嵌合部26は、嵌合部24aと極僅かの間隙を形成する内径に形成されている。また、この嵌合部24aの外周に形成された溝部24b内には、同様に図示されないUシール(シール部材)がその開口を配管A側に向けて装着されている。
【0040】
また、係合凸部25は、第2の接続管本体24の円周方向に等間隔を隔てて形成されている。さらに各々の係合凸部25は、円周方向の長さ寸法が、隣接する係合凸部25間における円周方向の間隔以下となる扇形に形成されている。
【0041】
そして、上述した第1の継手部材20の端板27の孔部27aは、この第2の接続管24が緩く挿通可能な内径に形成されている。さらに、この端板27には、孔部27aに連通するとともに、第2の継手部材21の係合凸部25が挿通可能な4つの扇形状の開口部29が、円周方向に等間隔をおいて穿設されている。そして、これら開口部29間に位置する端板27の内壁が、係合凸部25の係止面27bとされている。
【0042】
ここで、鍔部22b、収納部28、嵌合部24a、および係合凸部25の軸線方向長さは、嵌合部24aが十分に嵌合部26に挿入された位置において、係合凸部25が収納部28に収まる寸法に形成されている。
【0043】
以上の構成からなる配管継ぎ手によって配管A、Bを接続するには、第1の実施形態と同様に、先ず第1の継手部材20の第1の接続管22と配管Aとを溶接Wにより接合するとともに、第2の継手部材21の第2の接続管24と配管Bとを溶接Wにより接合する。
次いで、第1および第2の継手部材20、21を相対的に接近させて、第2の接続管24の嵌合部24aを端板27の孔部27a内に挿入し、さらに係合部23を回転させて端板27の開口部29に係合凸部25を一致させ、当該係合凸部25を収納部28内に挿入する。
【0044】
この際も、第2の接続管24の嵌合部24aは、第1の接続管22の嵌合部26に形成したテーパ面26aによって案内されて嵌合部26内に嵌合する。
そして、係合凸部25が係合部23の収納部28内に収納された後に、係合部23を回転させて、係合凸部25を開口部29間に位置する端板27の係止面27bに臨ませた位置に留める。次いで、後述するように開口部29から収納部28内の係合凸部25間に至る空間部分に、第2の接続管24の回り止め用の固定具を挿入しておく。
【0045】
このように、上記配管継ぎ手によっても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。加えて、第1の継手部材20を構成する第1の接続管22と係合部23とを別体に形成しているために、第2の接続管24の係合凸部25の挿入や位置合わせを、係合部23を回転させることによって行うことができる。
【0046】
図9は、上記構成からなる第2の実施形態を、配管Bと高圧容器30の接続部Cとの接続に適用した例を示すものである。
この容器30は、例えば35〜75MPaの高圧水素ガスを充填した自動車用燃料タンクであり、アルミニウム合金からなる本体31の外周に、図示されない炭素繊維等からなる補強部材が被覆されることにより構成されたものである。
【0047】
そして、この容器30のアルミニウム合金製の接続部Cの内面には、雌ねじ32が螺設されている。
他方、第1の継手部材20の第1の接続管22の外周には、上記雌ねじ32に螺合する雄ねじ33が螺設されている。そして、第1の継手部材20は、この雄ねじ33を容器30の雌ねじ32に螺合させることにより、容器30の接続部Cに一体化されている。
【0048】
また、係合凸部25を係合部23の収納部28内に収納して、係合部23を回転させることにより、係合凸部25を開口部29間に位置する端板27の係止面27bに臨ませた後に、開口部29から収納部28内の係合凸部25間に至る空間部分に、第2の接続管24の回り止め用の固定具34が図中矢印で示すように挿入される。
【0049】
この固定具34は、配管Bの外周に移動自在に外装された円筒状の本体35と、この本体35の第2の継手部材21に臨む端面に一体に形成された凸部36とから構成されている。ここで、凸部36は、開口部29よりも僅かに小さい相似形に形成されたもので、円周方向に等間隔をおいた4箇所に形成されている。
そして、これら凸部36が、開口部29から係合凸部25間に至る空間部分に挿入されることにより、第2の接続管24の回転が阻止されている。
【0050】
さらに、図10は、上記容器30の接続部Dと配管Bとを接続する場合の他の接続例を示すものである。
この配管継ぎ手においては、容器30の接続部Dに加工を施すことにより、第1の継手部材20における第1の接続管22および鍔部22bを一体に形成したものである。
【0051】
なお、図9および図10においては、第2の実施形態に示した配管継ぎ手を、配管Bと容器30の接続部C、Dとの接続に適用した場合についてのみ示したが、第1の実施形態に示した配管継ぎ手によっても、同様に配管Bと容器30の接続部C、Dとの接続に適用することができる。
このように、本発明に係る配管継ぎ手は、各種の配管A、Bの接続部同士、あるいは配管A、Bと容器30の接続部C、Dに好適に用いることができる。
【0052】
さらに、第2の実施形態に示した係合部23については、図11に示すように、周方向に2分割して半円状の分割体40とし、これら分割体40を、ボルト41等の結合手段によって一体化させることもできる。
【0053】
このように係合部23を周方向に2分割すれば、第1の接続管22に図9や図10に示すような容器30が一体的に接続されている場合においても、半円状の分割体40を、鍔部22bの外周側から被せてボルト41等の結合手段によって一体化させることにより、当該鍔部22bを内包させた状態で第1の接続管22に取り付けることができる。
【0054】
また、上記実施の形態においては、いずれも第1の接続管3、22と配管A、第2の接続管9、24と配管Bが、それぞれ同径である場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、これら第1および第2の接続管と配管A、Bとが異径の場合についても、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図2】図1の第1の継手部材を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はそのb−b線視縦断面図、(c)は側面図である。
【図3】図1の第2の接続管を示す縦断面図である。
【図4】図1の円筒部材を示すもので、(a)は側面図、(b)はその縦断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図6】図5の第1の接続管を示すもので、(a)は側面図、(b)はその縦断面図である。
【図7】図5の第2の継手部材を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図8】図5の係合部を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図9】第2の実施形態の他の適用例を示す縦断面図である。
【図10】第2の実施形態のその他の適用例を示す縦断面図である。
【図11】係合部の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1、20 第1の継手部材
2、21 第2の継手部材
3、22 第1の接続管
4、23 係合部
7 段部
8、27 端板
8a、27a 孔部
8b、27b 係止面
9、24 第2の接続管
9c、24b シール部材装着用の溝部
11 本体(円筒部)
12、25 係合凸部
13、29 開口部
22b 鍔部
23a 孔部
A、B 配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された配管の接続部同士または配管と容器との接続部同士を接続するための配管継ぎ手に係り、特に高圧流体の配管等の接続部に用いて好適な配管継ぎ手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高圧の流体を通す配管の接続部には、当該高圧流体の漏れ防止対策が施された配管継ぎ手が用いられている。
例えば、下記特許文献1においては、内燃機関における燃料供給用配管に用いられる配管継ぎ手として、内燃機関側配管の端部に円筒状の受入部を溶接により一体化し、この受入部内に燃料供給側配管の端部を挿入するとともに、上記受入部の先端に形成されたフランジと燃料供給側配管に拡径・屈曲して形成した挿入側フランジとを互いに当接させた状態で、両フランジの外周側から半円弧状のクランプを嵌合して環状に組み合わせ、これらクランプの外周に環状バネを弾性的に嵌着することにより、上記内燃機関側配管と燃料供給側配管とを受入部を介して互いに連結させるものが提案されている。
【0003】
一方、洗浄装置や抽出装置に20〜30MPaの超臨界二酸化炭素を供給するための配管の接続部や、35〜75MPaといった高圧水素ガスを充填した自動車用燃料タンクと抜き出し配管との接続部においては、より一層確実に上記高圧流体の漏れを防止し得る構造を有する配管継ぎ手を採用することが要請されている。
【0004】
ところが、上記従来の配管継ぎ手にあっては、燃料供給用配管に一体化された受入部のフランジと内燃機関側配管に形成したフランジとを、互いの外周部において半円弧状のクランプを環状に組み合わせて挟持する構造であるために、上述した高圧ガス等が作用する接続部に適用した場合には、上記フランジやクランプおよび環状バネの剛性や弾性を極めて高いものにする必要があり、継ぎ手自体が極端に肉厚かつ大型化するとともに、施工が難しくなるという問題点がある。
【0005】
加えて、内燃機関側配管については、それ自体を拡径・屈曲して上記フランジを形成しているために、上述したような高圧流体を用いる配管については、材質上上記加工が困難であり、実際に適用することができないという問題点もある。
【特許文献1】特開平10−306889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、しかも超臨界等の高圧流体の配管や容器における接続部に用いた場合においても、上記高圧流体の漏れを生じることなく確実に上記配管等を接続することができる配管継ぎ手を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対向配置された配管の接続部同士または配管と容器との接続部同士を接続するための配管継ぎ手であって、一方の上記接続部と一体化される第1の継手部材と、他方の上記接続部と一体化される第2の継手部材とを備え、上記第1の継手部材は、一端部が一方の上記接続部と一体化される第1の接続管と、この第1の接続管の他端部側に設けられた管状の係合部とを有し、かつ上記第2の継手部材は、一端部が他方の上記接続部と一体化される第2の接続管と、この第2の接続管の外周に一体的に設けられて径方向に突出する係合凸部とを有してなり、上記係合凸部は、上記第2の接続管の外周に、周方向に間隔をおいて複数形成されるとともに、上記係合部は、上記係合凸部を収納可能な内法寸法に形成され、かつその上記他方の配管側の端部には、上記第2の接続管が挿通可能であって上記係合凸部が挿通不能となる孔部が穿設された端板が一体に形成され、当該端板に、上記孔部に連通して上記複数の係合凸部が挿通可能な複数の開口部が周方向に間隔をおいて複数穿設されることにより、これら開口部間に位置する上記端板の内壁が、上記係合部内に挿入された上記係合凸部の係止面とされていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記係合凸部が、上記第2の接続管の外周から径方向に突出する扇形状に形成されるとともに、上記周方向に等間隔をおいて複数形成され、かつ上記扇形の円周方向の長さ寸法が、隣接する上記係合凸部間における上記円周方向の間隔以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とが、一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
他方、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とが、別体に形成されるとともに、上記第1の接続管の他端部側には、径方向に突出する鍔部が形成され、上記係合部の上記一方の接続部側の端部には、上記第1の接続管が挿通可能であって、かつ上記鍔部が挿通不能の孔部が穿設されていることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記係合部が、周方向に分割されるとともに、結合手段によって一体化されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とが、一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
他方、請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とが、別体に形成されるとともに、上記第2の接続管が挿入される筒状部の外周に上記係合凸部が一体に形成され、かつ上記第2の接続管の上記一方の接続部側の端部には、上記筒状部を係止する段部が形成されるとともに、上記端板に穿設された上記孔部は、上記筒状部が挿通可能となる形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、上記第2の接続管の外周には、上記第1の継手部材の内周面との間を気密に封じるシール部材が装着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜8のいずれかに記載の配管継ぎ手によれば、第1の継手部材の係合部の端板に形成した孔部および開口部に、第2の継手部材の第2の接続管および係合凸部を挿通させることにより、係合凸部を上記係合部内に位置させ、次いで上記係合凸部を第2の接続管と一体に周方向に回転させて上記開口部間に位置させることにより、容易に両者を接続することができる。
【0016】
また、内部を流れる高圧流体によって、第1および第2の継手部材を互いに離間させる方向にスラスト力が作用した場合においても、上記係合凸部が係合部の端板の内壁に当接することにより係止されるために、簡易な構成によって上記高圧ガス等の漏れを生じることなく確実に上記配管等を接続することができる
【0017】
この際に、請求項2に記載の発明のように、上記係合凸部を扇形状であって、かつ周方向に等間隔をおいて形成するとともに、さらに当該扇形の円周方向の長さ寸法が、隣接する係合凸部間における円周方向の間隔以下に設定すれば、上記スラスト力を端板の全面において均等に負担することができる。
【0018】
また、請求項3または6に記載の発明のように、第1の継手部材または第2の継手部材を一体に形成すれば、強度的に有利になり、継ぎ手全体の軽量化を図ることができる。
これに対して、請求項4または7に記載の発明によれば、第1の継手部材における第1の接続管と係合部、あるいは第2の継手部材における第2の接続管と係合凸部とを別体に形成しているために、第1の継手部材と第2の継手部材とを連結すべく上記係合部と係合凸部とを相対的に回転させる際に、係合部または係合凸部を他の部材に対して独立的に回転させることができ、よって配管または容器の接続部を回転させることができない箇所に用いた場合に好適である。
【0019】
さらに、請求項5に記載の発明においては、係合部を周方向に分割しているために、例えば、第1の接続管に容器が一体的に接続されている場合においても、分割体を鍔部等の外周側から被せて結合手段によって一体化させることにより、当該鍔部等を内包させた状態で第1の接続管に取り付けることができる。
【0020】
また、第1の継手部材と第2の継手部材との間には、何等かの手段によって両者間を気密に封じるシールを設ける必要がある。そして、当該シールは、例えば上記特許文献1に見られるように、第1の継手部材の内周面に溝を形成してOリングを嵌着し、このOリング内第2の継手部材における第2の接続管を挿入することも可能である。しかしながら、かかる構成を採用した場合には、第1および第2の継手部材間の高い気密性を確保すべく、第1の継手部材の内周面と第2の接続管の外周面との間の隙間を極力小さく設定すると、第2の接続管を挿入する際にOリングに損傷を与えるおそれがある。
【0021】
この点、請求項8に記載の発明によれば、上記第2の接続管の外周に、上記第1の継手部材の内周面との間を気密に封じるシール部材を装着しているために、第2の接続管を第1の継手部材内に密に挿入する場合にも、当該シール部材に損傷を与えるおそれが少なく、よって高い気密性を確保することができる。また、第2の接続管の外周にシール部材を装着することにより、当該シール部材の交換作業も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、対向配置された配管A、Bの接続部同士を接続するための本発明に係る配管継ぎ手の第1の実施形態を示すもので、図中符号1が一方の配管Aと一体化される第1の継手部材であり、符号2が他方の配管Bと一体化される第2の継手部材である。
この第1の継手部材1は、一端部が配管Aの接続部と溶接Wにより一体化される第1の接続管3と、この第1の接続管3の他端部側に形成された円管状の係合部4とから概略構成されている。
【0023】
ここで、第1の接続管3は、内外径共に配管Aと同径に形成されており、その他端部側に係合部4が一体に形成されている。この係合部4は、内部に上記一端部側から他端部側に向けて第1の接続管3の内径よりも大径の嵌合部5と、この嵌合部5よりもさらに大径の収納部6とが順次形成されている。また、嵌合部5の内壁には、収納部6側に向けて漸次内径が増加するテーパ面5aが形成されている。そして、収納部6の端部には、円板状の端板8が一体に形成されており、この端板8の中心部には、孔部8aが穿設されている。
【0024】
他方、第2の継手部材2は、一端部が他方の配管Bの接続部と溶接Wにより一体化される第2の接続管9と、この第2の接続管9の外周に設けられた円筒部材10とから概略構成されている。
ここで、第2の接続管9は、配管Bとの接続部から円筒部材10が外装されている本体部9aが、内外径共に配管Bと同径に形成されており、この本体部9aから他端部に至る嵌合部9bが、第1の継手部材1の嵌合部5と極僅かの間隙を形成する外径に形成されている。
【0025】
これにより、本体部9aと嵌合部9bとの間には、円筒部材10を係止するための段部7が形成されている。そして、この嵌合部9bの外周に形成された溝部9c内に、図示されないUシール(シール部材)がその開口を第1の接続管3側に向けて装着されている。
【0026】
また、円筒部材10は、円筒状の本体(円筒部)11の端部に4つの係合凸部12が一体に形成されたもので、これら係合凸部12は、本体11の円周方向に等間隔を隔てて形成されている。さらに各々の係合凸部12は、円周方向の長さ寸法が、隣接する係合凸部12間における円周方向の間隔以下となる扇形に形成されている。そして、この円筒部材10の本体11内に、第2の接続管9が相対回転自在に挿入されている。
【0027】
一方、上述した第1の継手部材1の端板8の孔部8aは、この円筒部材10が緩く挿通可能な内径に形成されている。さらに、この端板8には、孔部8aに連通するとともに、円筒部材10の係合凸部12が挿通可能な4つの扇形状の開口部13が、円周方向に等間隔をおいて穿設されている。そして、これら開口部13間に位置する端板8の内壁が、係合凸部13の係止面8bとされている。
【0028】
そして、嵌合部5、収納部6、嵌合部9bおよび円筒部材10の係合凸部12の軸線方向長さは、嵌合部9bが十分に嵌合部5に挿入された位置において、係合凸部12が収納部6に収まる寸法に形成されている。
【0029】
以上の構成からなる配管継ぎ手によって配管A、Bを接続するには、先ず第1の継手部材1の第1の接続管3と配管Aとを溶接Wにより接合するとともに、第2の継手部材2の第2の接続管9と配管Bとを溶接Wにより接合する。
次いで、第1および第2の継手部材1、2を相対的に接近させて、第2の接続管9の嵌合部9bを端板8の孔部8a内に挿入し、さらに端板8の開口部13に円筒部材10の係合凸部12を一致させて円筒部材10を係合部4の収納部6内に挿入する。
【0030】
この際に、第2の接続管9の嵌合部9bは、係合部5の嵌合部5に形成したテーパ面5aによって案内されて嵌合部5内に嵌合する。なお、この嵌合が十分に行われたか否かは、円筒部材10の嵌合凸部12が開口部13を通過する前に、円筒部材10が段部7に当接したか否かによって確認することができる。
【0031】
そして、係合凸部12が係合部4の収納部6内に収納された後に、円筒部材10を回転させて、係合凸部12を開口部13間に位置する端板8の係止面8bに臨ませた位置に留める。次いで、後述するように開口部13から収納部6内の係合凸部12間に至る空間部分に、円筒部材10の回り止め用の固定具を挿入しておく。
【0032】
このように、上記配管継ぎ手によれば、配管A、Bを回転させることができない接続箇所においても、極めて容易に配管A、Bを接続することができる。また、内部を流れる高圧流体によって、第1および第2の継手部材1、2を互いに離間させる方向にスラスト力が作用した場合においても、係合凸部12が端板8の内壁8bに当接して係止されるために、簡易な構成によって上記高圧ガス等の漏れを生じることなく確実に上記配管等を接続することができる
【0033】
しかも、4つの係合凸部12を扇形状であって、かつ周方向に等間隔をおいて形成するとともに、さらに係合凸材12の円周方向の長さ寸法を、隣接する係合凸部12間における円周方向の間隔以下に設定しているために、上記スラスト力を端板8の全面において均等に負担することができる。
【0034】
さらに、第1の継手部材1の嵌合部5にテーパ面5aを形成しているために、第2の接続管9bの嵌合部9bの挿入および嵌合を円滑に行うことができ、しかも万一の上記嵌合の不良は、段部7への円筒部材10の先行当接によって、係合凸部12が開口部13を通過できなくなることにより、容易に確認することができる。
【0035】
加えて、第2の接続管9の外周に、第1の継手部材1の嵌合部5の内周面との間を気密に封じるUシールを装着しているために、第2の接続管9を嵌合部5内に密に挿入する場合にも、当該Uシールに損傷を与えるおそれが少なく、よって高い気密性を確保することができる。また、第2の接続管9の外周にUシールを装着することにより、当該Uシールの交換作業も容易になる。
【0036】
(第2の実施形態)
図5〜図8は、本発明の配管継ぎ手の第2の実施形態を示すもので、この配管継ぎ手においては、第1の継手部材20が、別体の第1の接続管22と係合部23とによって構成されるとともに、第2の継手部材21における第2の接続管24と係合凸部25とが、一体に形成されている。
【0037】
すなわち、第1の接続管22は、配管Aとの接続端部が内外径共に配管Aと同径に形成されるとともに他端側には大径部22aが形成され、さらにその端部には径方向に突出する鍔部22bが形成されている。そして、大径部22aの内部に嵌合部26が形成されるとともに、当該嵌合部26の開口側には、鍔部22b側に向けて漸次内径が増加するテーパ面26aが形成されている。
【0038】
他方、係合部23は、鍔部22bよりもさらに大径の円筒状に形成されており、配管A側の端部には、第1の接続管22の大径部22a挿通可能であって、かつ鍔部22bが挿通不能の孔部23aが穿設されている。また、配管B側の端部には、中心部に孔部27aが穿設された端板27が一体に形成されている。そして、この係合部23の内部には、鍔部22bの外径よりも僅かに大径の収納部28が形成されている。
【0039】
他方、第2の継手部材21は、一端部が他方の配管Bの接続部と溶接Wにより一体化される第2の接続管24と、この第2の接続管24の外周に一体に形成された4つの係合凸部25とから構成されている。
ここで、第2の接続管24は、その内外径が全長に亘って配管Bと同径に形成されており、その中間部に上記係合凸部25が形成されている。そして、この係合凸部25よりも配管A側の部分が嵌合部24aとされている。これにより、第1の接続管22の嵌合部26は、嵌合部24aと極僅かの間隙を形成する内径に形成されている。また、この嵌合部24aの外周に形成された溝部24b内には、同様に図示されないUシール(シール部材)がその開口を配管A側に向けて装着されている。
【0040】
また、係合凸部25は、第2の接続管本体24の円周方向に等間隔を隔てて形成されている。さらに各々の係合凸部25は、円周方向の長さ寸法が、隣接する係合凸部25間における円周方向の間隔以下となる扇形に形成されている。
【0041】
そして、上述した第1の継手部材20の端板27の孔部27aは、この第2の接続管24が緩く挿通可能な内径に形成されている。さらに、この端板27には、孔部27aに連通するとともに、第2の継手部材21の係合凸部25が挿通可能な4つの扇形状の開口部29が、円周方向に等間隔をおいて穿設されている。そして、これら開口部29間に位置する端板27の内壁が、係合凸部25の係止面27bとされている。
【0042】
ここで、鍔部22b、収納部28、嵌合部24a、および係合凸部25の軸線方向長さは、嵌合部24aが十分に嵌合部26に挿入された位置において、係合凸部25が収納部28に収まる寸法に形成されている。
【0043】
以上の構成からなる配管継ぎ手によって配管A、Bを接続するには、第1の実施形態と同様に、先ず第1の継手部材20の第1の接続管22と配管Aとを溶接Wにより接合するとともに、第2の継手部材21の第2の接続管24と配管Bとを溶接Wにより接合する。
次いで、第1および第2の継手部材20、21を相対的に接近させて、第2の接続管24の嵌合部24aを端板27の孔部27a内に挿入し、さらに係合部23を回転させて端板27の開口部29に係合凸部25を一致させ、当該係合凸部25を収納部28内に挿入する。
【0044】
この際も、第2の接続管24の嵌合部24aは、第1の接続管22の嵌合部26に形成したテーパ面26aによって案内されて嵌合部26内に嵌合する。
そして、係合凸部25が係合部23の収納部28内に収納された後に、係合部23を回転させて、係合凸部25を開口部29間に位置する端板27の係止面27bに臨ませた位置に留める。次いで、後述するように開口部29から収納部28内の係合凸部25間に至る空間部分に、第2の接続管24の回り止め用の固定具を挿入しておく。
【0045】
このように、上記配管継ぎ手によっても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。加えて、第1の継手部材20を構成する第1の接続管22と係合部23とを別体に形成しているために、第2の接続管24の係合凸部25の挿入や位置合わせを、係合部23を回転させることによって行うことができる。
【0046】
図9は、上記構成からなる第2の実施形態を、配管Bと高圧容器30の接続部Cとの接続に適用した例を示すものである。
この容器30は、例えば35〜75MPaの高圧水素ガスを充填した自動車用燃料タンクであり、アルミニウム合金からなる本体31の外周に、図示されない炭素繊維等からなる補強部材が被覆されることにより構成されたものである。
【0047】
そして、この容器30のアルミニウム合金製の接続部Cの内面には、雌ねじ32が螺設されている。
他方、第1の継手部材20の第1の接続管22の外周には、上記雌ねじ32に螺合する雄ねじ33が螺設されている。そして、第1の継手部材20は、この雄ねじ33を容器30の雌ねじ32に螺合させることにより、容器30の接続部Cに一体化されている。
【0048】
また、係合凸部25を係合部23の収納部28内に収納して、係合部23を回転させることにより、係合凸部25を開口部29間に位置する端板27の係止面27bに臨ませた後に、開口部29から収納部28内の係合凸部25間に至る空間部分に、第2の接続管24の回り止め用の固定具34が図中矢印で示すように挿入される。
【0049】
この固定具34は、配管Bの外周に移動自在に外装された円筒状の本体35と、この本体35の第2の継手部材21に臨む端面に一体に形成された凸部36とから構成されている。ここで、凸部36は、開口部29よりも僅かに小さい相似形に形成されたもので、円周方向に等間隔をおいた4箇所に形成されている。
そして、これら凸部36が、開口部29から係合凸部25間に至る空間部分に挿入されることにより、第2の接続管24の回転が阻止されている。
【0050】
さらに、図10は、上記容器30の接続部Dと配管Bとを接続する場合の他の接続例を示すものである。
この配管継ぎ手においては、容器30の接続部Dに加工を施すことにより、第1の継手部材20における第1の接続管22および鍔部22bを一体に形成したものである。
【0051】
なお、図9および図10においては、第2の実施形態に示した配管継ぎ手を、配管Bと容器30の接続部C、Dとの接続に適用した場合についてのみ示したが、第1の実施形態に示した配管継ぎ手によっても、同様に配管Bと容器30の接続部C、Dとの接続に適用することができる。
このように、本発明に係る配管継ぎ手は、各種の配管A、Bの接続部同士、あるいは配管A、Bと容器30の接続部C、Dに好適に用いることができる。
【0052】
さらに、第2の実施形態に示した係合部23については、図11に示すように、周方向に2分割して半円状の分割体40とし、これら分割体40を、ボルト41等の結合手段によって一体化させることもできる。
【0053】
このように係合部23を周方向に2分割すれば、第1の接続管22に図9や図10に示すような容器30が一体的に接続されている場合においても、半円状の分割体40を、鍔部22bの外周側から被せてボルト41等の結合手段によって一体化させることにより、当該鍔部22bを内包させた状態で第1の接続管22に取り付けることができる。
【0054】
また、上記実施の形態においては、いずれも第1の接続管3、22と配管A、第2の接続管9、24と配管Bが、それぞれ同径である場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、これら第1および第2の接続管と配管A、Bとが異径の場合についても、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図2】図1の第1の継手部材を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はそのb−b線視縦断面図、(c)は側面図である。
【図3】図1の第2の接続管を示す縦断面図である。
【図4】図1の円筒部材を示すもので、(a)は側面図、(b)はその縦断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図6】図5の第1の接続管を示すもので、(a)は側面図、(b)はその縦断面図である。
【図7】図5の第2の継手部材を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図8】図5の係合部を示すもので、(a)は縦断面図、(b)はその側面図である。
【図9】第2の実施形態の他の適用例を示す縦断面図である。
【図10】第2の実施形態のその他の適用例を示す縦断面図である。
【図11】係合部の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1、20 第1の継手部材
2、21 第2の継手部材
3、22 第1の接続管
4、23 係合部
7 段部
8、27 端板
8a、27a 孔部
8b、27b 係止面
9、24 第2の接続管
9c、24b シール部材装着用の溝部
11 本体(円筒部)
12、25 係合凸部
13、29 開口部
22b 鍔部
23a 孔部
A、B 配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された配管の接続部同士または配管と容器との接続部同士を接続するための配管継ぎ手であって、
一方の上記接続部と一体化される第1の継手部材と、他方の上記接続部と一体化される第2の継手部材とを備え、
上記第1の継手部材は、一端部が一方の上記接続部と一体化される第1の接続管と、この第1の接続管の他端部側に設けられた管状の係合部とを有し、かつ上記第2の継手部材は、一端部が他方の上記接続部と一体化される第2の接続管と、この第2の接続管の外周に一体的に設けられて径方向に突出する係合凸部とを有してなり、
上記係合凸部は、上記第2の接続管の外周に、周方向に間隔をおいて複数形成されるとともに、上記係合部は、上記係合凸部を収納可能な内法寸法に形成され、かつその上記他方の配管側の端部には、上記第2の接続管が挿通可能であって上記係合凸部が挿通不能となる孔部が穿設された端板が一体に形成され、当該端板に、上記孔部に連通して上記複数の係合凸部が挿通可能な複数の開口部が周方向に間隔をおいて複数穿設されることにより、これら開口部間に位置する上記端板の内壁が、上記係合部内に挿入された上記係合凸部の係止面とされていることを特徴とする配管継ぎ手。
【請求項2】
上記係合凸部は、上記第2の接続管の外周から径方向に突出する扇形状に形成されるとともに、上記周方向に等間隔をおいて複数形成され、かつ上記扇形の円周方向の長さ寸法は、隣接する上記係合凸部間における上記円周方向の間隔以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の配管継ぎ手。
【請求項3】
上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とは、一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配管継ぎ手。
【請求項4】
上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とは、別体に形成されるとともに、上記第1の接続管の他端部側には、径方向に突出する鍔部が形成され、上記係合部の上記一方の接続部側の端部には、上記第1の接続管が挿通可能であって、かつ上記鍔部が挿通不能の孔部が穿設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配管継ぎ手。
【請求項5】
上記係合部は、周方向に分割されるとともに、結合手段によって一体化されていることを特徴とする請求項4に記載の配管継ぎ手。
【請求項6】
上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とは、一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の配管継ぎ手。
【請求項7】
上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とは、別体に形成されるとともに、上記第2の接続管が挿入される筒状部の外周に上記係合凸部が一体に形成され、かつ上記第2の接続管の上記一方の接続部側の端部には、上記筒状部を係止する段部が形成されるとともに、上記端板に穿設された上記孔部は、上記筒状部が挿通可能となる形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の配管継ぎ手。
【請求項8】
上記第2の接続管の外周には、上記第1の継手部材の内周面との間を気密に封じるシール部材が装着されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の配管継ぎ手。
【請求項1】
対向配置された配管の接続部同士または配管と容器との接続部同士を接続するための配管継ぎ手であって、
一方の上記接続部と一体化される第1の継手部材と、他方の上記接続部と一体化される第2の継手部材とを備え、
上記第1の継手部材は、一端部が一方の上記接続部と一体化される第1の接続管と、この第1の接続管の他端部側に設けられた管状の係合部とを有し、かつ上記第2の継手部材は、一端部が他方の上記接続部と一体化される第2の接続管と、この第2の接続管の外周に一体的に設けられて径方向に突出する係合凸部とを有してなり、
上記係合凸部は、上記第2の接続管の外周に、周方向に間隔をおいて複数形成されるとともに、上記係合部は、上記係合凸部を収納可能な内法寸法に形成され、かつその上記他方の配管側の端部には、上記第2の接続管が挿通可能であって上記係合凸部が挿通不能となる孔部が穿設された端板が一体に形成され、当該端板に、上記孔部に連通して上記複数の係合凸部が挿通可能な複数の開口部が周方向に間隔をおいて複数穿設されることにより、これら開口部間に位置する上記端板の内壁が、上記係合部内に挿入された上記係合凸部の係止面とされていることを特徴とする配管継ぎ手。
【請求項2】
上記係合凸部は、上記第2の接続管の外周から径方向に突出する扇形状に形成されるとともに、上記周方向に等間隔をおいて複数形成され、かつ上記扇形の円周方向の長さ寸法は、隣接する上記係合凸部間における上記円周方向の間隔以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の配管継ぎ手。
【請求項3】
上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とは、一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配管継ぎ手。
【請求項4】
上記第1の継手部材における上記第1の接続管と上記係合部とは、別体に形成されるとともに、上記第1の接続管の他端部側には、径方向に突出する鍔部が形成され、上記係合部の上記一方の接続部側の端部には、上記第1の接続管が挿通可能であって、かつ上記鍔部が挿通不能の孔部が穿設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配管継ぎ手。
【請求項5】
上記係合部は、周方向に分割されるとともに、結合手段によって一体化されていることを特徴とする請求項4に記載の配管継ぎ手。
【請求項6】
上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とは、一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の配管継ぎ手。
【請求項7】
上記第2の継手部材における上記第2の接続管と上記係合凸部とは、別体に形成されるとともに、上記第2の接続管が挿入される筒状部の外周に上記係合凸部が一体に形成され、かつ上記第2の接続管の上記一方の接続部側の端部には、上記筒状部を係止する段部が形成されるとともに、上記端板に穿設された上記孔部は、上記筒状部が挿通可能となる形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の配管継ぎ手。
【請求項8】
上記第2の接続管の外周には、上記第1の継手部材の内周面との間を気密に封じるシール部材が装着されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の配管継ぎ手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−111474(P2008−111474A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294288(P2006−294288)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
[ Back to top ]