説明

配管保温保冷用断熱材

【目的】 配管の断熱性を長期間維持させる。更に、耐薬品性に優れているため接着剤の制限も少なく、また高断熱性より成形肉厚を薄くできるため、工事施工を簡略化させる。
【構成】 塩化ビニリデン系樹脂発泡体1を使用する配管3保温保冷用断熱材である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】配管保温保冷用断熱材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、配管保温保冷用に使用する断熱材は、押し出し発泡により成形したポリスチレンのボード(以下、押し出しPSと略する)、型内成形により成形したビーズ発泡ポリスチレンのボード(以下、EPSと略する)を使用している。しかしながら、EPSの成形方法は型内成形法であるため、複雑な成形体の成形はできるが、熱伝導率が高いため、成形肉厚を薄くすることができない。EPSの熱伝導率は、成形品密度35kg/m3 で、0.028kcal/m・h・℃(0℃の値)である。配管保温保冷材を薄肉化すると、断熱性能が低いため、熱効率が悪くなる。また、水蒸気透過性も高いため、水が凝縮し、熱伝導率の劣化が起こる。水蒸気透過量は、成形密度35kg/m3 で、0.001g/m・h・mmHgである。
【0003】押し出しPSも同様に熱伝導率および水蒸気透過性が高いためEPS同様に、成形肉厚を薄くできず、また熱伝導率の劣化が起こる。なお、押し出し成形法であるため複雑な成形品はできない。成形密度28kg/m3 で、熱伝導率0.029kcal/mh℃(0℃の値)、水蒸気透過量0.002g/m・h・mmHgである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】断熱性にすぐれ、水蒸気透過性の高い配管保温保冷用断熱材を提供するものである。
【0005】
【課題を解決しようとする手段】本発明は塩化ビニリデン系樹脂発泡体を使用する配管保温保冷用断熱材である。塩化ビニリデン系樹脂発泡体の熱伝導率は、成形密度に依存するため、必要な熱伝導性を自由に選択することができる。例えば、発泡剤としてモノクロロジフルオロエタンを用いて、成形密度を40kg/m3 に調整すれば、熱伝導率が0.019kcal/m・h・℃(0℃の値)、水蒸気透過率が0.0002g/m・h・mmHgの成形体ができる。
【0006】塩化ビニリデン系樹脂発泡体とは、非晶質の塩化ビニリデン共重合体に発泡剤を含浸したビーズを、予備発泡後、型内成形により得られる発泡成形体を言う。非晶質の塩化ビニリデン共重合体とは、塩化ビニリデンが30重量%以上、85重量%以下、共重合可能なモノマーが15重量%以上、70重量%以下からなる共重合体である。塩化ビニリデンが30重量%未満であると、発泡剤の保持性が低下し、熱伝導率が高くなる。85重量%を越えると塩化ビニリデン共重合体は、結晶性となり発泡性が低下する。
【0007】共重合可能なモノマーとしては塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、およびアクリル酸メチルといったアクリル酸エステル類、メタアクリル酸メチルといったメタアクリル酸エステル類、N−フェニルマレイミドといったN−置換マレイミド等が挙げられる。これらは単独、もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0008】また、塩化ビニリデン共重合体を架橋構造にしてもよい。架橋構造を持たせると発泡体の独立気泡に富み、発泡成形性は向上する。架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール系ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール系ジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0009】重合方法としては公知の重合方法、例えば懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の中から任意の方法を用いて製造することができる。重合開始剤としては公知のラジカル開始剤が使用できる。発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン等の塩素化炭化水素類、モノクロロジフルオロエタン、トリフロロエタン、ジフロロエタン、ジクロロトリフロロエタン、1,1−ジクロロ−1フロロエタン、2,2−ジクロロ−1,1,1トリフロロエタン、1,1,1,2−テトラフロロエタン等のフッ素化炭化水素類およびこれらの混合物が使用できる。
【0010】以上の塩化ビニリデン系樹脂発泡体は、例えば、特公昭63−33781号、特公昭63−33782号、特開昭63−170435号および特願平2−199125号公報に記載されている。発泡成形体を得る方法としては、公知の型内発泡成形法を使用するとよい。まず、発泡剤を含有した樹脂粒子を蒸気、熱水、熱風等の加熱媒体で加熱することにより予備発泡させ、多泡質発泡粒子を得る。加熱する条件としては、目標とする発泡倍率に応じて選択される。次に、目的に応じた金型内にこの多泡質発泡粒子を充填し、水蒸気等により加熱することにより発泡成形体を得る。
【0011】本発明の低熱伝導率の塩化ビニリデン系樹脂発泡体を用いた断熱材においては、同一の断熱性を持つ成形体の厚みはEPS成形体に比べて薄くすることができ、同厚みでは配管の断熱性能を上げることができる。結露を防止するのに有効的である。型内成形法であるため、非常に複雑な部位の成形体も作ることができる。石油化学プラントのように配管が複雑である場合、特に有効的である。水蒸気の透過率も低いため、水の凝縮による熱伝導率の劣化も避けられ、長期間断熱性能を維持できる。
【0012】また、EPSに比べると接着剤の制限が少ないため、得られた断熱材をABS、PP、PS等の合成樹脂、アルミ、ステンレス等の金属との張り合せも可能である。配管施工する際に用いられていた針金、ロープ等による作業を接着剤による張り合せに変えることができるので、工事施工の時間短縮、コストダウンになる。耐薬品性に優れているので配管内容物と接触しても形状、物性を保持できるため、使用範囲が広い。
【0013】本発明で使用した測定方法は以下のとうりである。
・成形密度:JIS−K−6767に基づく。
・熱伝導率:ASTM D−518に基づく。
・水蒸気透過率:ASTM C−355に基づく。
【0014】
【実施例】以下本発明の塩化ビニリデン系樹脂発泡体を用いた配管保温保冷用断熱材を図1、2をもとに説明する。
【0015】
【実施例1】塩化ビニリデン系樹脂発泡体を断熱材として用いた、配管保温保冷用断熱材を図1に示す。1は塩化ビニリデン系樹脂発泡体を、2は外蓋を、3は配管を示している。図2は配管保温保冷用断熱材の分解図を示している。
【0016】
【発明の効果】本発明は、配管保温保冷用断熱材とし、複雑成形が可能な、熱伝導率の低い、かつ水蒸気透過量の低い塩化ビニリデン系発泡体を使用することにより、配管保温保冷材の肉厚を薄くでき、断熱性の劣化の少なく、複雑な成形ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を使用した配管保温保冷用断熱材の模式図。
【図2】本発明を使用した配管保温保冷用断熱材の分解模式図。
【符号の説明】
1 塩化ビニリデン系樹脂発泡体
2 外蓋
3 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩化ビニリデン系樹脂発泡体を使用する配管保温保冷用断熱材。

【図1】
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【図2】
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