説明

配管内流体の磁気活性方法及び配管取付用磁気活性装置

【課題】配管の径が大きい場合や配管内を流れる流体の流速が速い場合などであっても、効率的且つ確実に流体の磁気活性が行えるようにする。
【解決手段】ホースHの外周を取り囲むように、少なくとも2つの磁石5を対向配置した磁石群を、ホースHの軸方向に所定間隔で2以上設ける。そして、磁石群の少なくとも1つにおける配管側の磁極を全て同極とし、且つ残る磁石群の少なくとも1つにおける、対向する磁石の磁極を全て異極とする。ここで、流体の磁気活性を一層効率的に行う観点からは、配管内流体の流動方向最下流側の磁石群の配管側の磁極を全て同極とするのが好ましい。さらには、前記の配管側の磁極を全て同極とした磁石群の、配管側の磁極をS極とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に取り付けて、配管内を流れる液体に磁場を照射して磁気活性させる方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯留液体や流動液体に磁場を照射して液体の状態を変化させると、種々の効果が得られることはこれまでから知られている。例えば、導水管路の外周部に磁石を設置して、管内面に付着したスケールの除去やカルキ臭の低減、水質の改善を行うことは既に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、配管の両側に磁石のN極とS極とを対向して配置し、この対向して配置されたN極とS極の磁石を配管の流れ方向に所定間隔で複数個設け、配管内の水を磁気化する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-309361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、大規模農場における農作物への散水量は、一般家庭の水使用量よりも遙かに多いため、農場で使用される配管は一般家庭のものより太いものがある。また、配管内を流れる水の流速も速い。そこで、このような配管内を流れる単位時間当たりの液体流量が多い場合であっても、より効率的且つ確実に流体の磁気活性を行える装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討した結果、配管の周りに設置する磁石の位置及び極性を特定の組み合わせとすることにより、より効率的且つ確実に流体の磁気活性が行えるとの知見を得、本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る配管内流体の磁気活性方法は、配管の外周を取り囲むように、少なくとも2つの磁石を対向配置させた磁石群を、配管の軸方向に所定間隔で2以上設け、前記磁石群の少なくとも1つは、配管側の磁極を全て同極とし、且つ残る磁石群の少なくとも1つは、配管を挟んで対向する磁石の磁極を全て異極とすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る配管取付用磁気活性装置(以下、単に「磁気活性装置」と記すことがある)は、分割可能で、配管に対して挟み込むようにして取り付けられるケースと、前記ケース内に、配管に臨むように配置された複数の磁石とを備え、配管内流体を磁気活性する装置であって、配管の外周を取り囲むように、少なくとも2つの磁石が対向配置された磁石群が、配管の軸方向に所定間隔で2以上設けられ、前記磁石群の少なくとも1つは配管側の磁極は全て同極とされ、且つ残る磁石群の少なくとも1つは対向する磁石の磁極は全て異極とされていることを特徴とする。
【0009】
ここで、流体の磁気活性を一層効率的に行う観点からは、配管内流体の流動方向最下流側の磁石群の配管側の磁極を全て同極とするのが好ましい。さらには、前記の配管側の磁極を全て同極とした磁石群の、配管側の磁極をS極とするのが好ましい。
【0010】
前記磁石群は、4〜8つの磁石から構成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気活性方法及び磁気活性装置によれば、配管の径が大きい場合や配管内を流れる流体の流速が速い場合などであっても、効率的且つ確実に流体の磁気活性が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る磁気活性装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の磁気活性装置の組立て斜視図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図、B−B線断面図、C−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る磁気活性方法及び磁気活性装置について図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る磁気活性装置の一実施形態を示す斜視図であって、ケース1の内部に配置されている磁石5が透視されて描かれている。同図(a)は、配管としてのホースHに磁気活性装置Sが取り付けられる前の状態であり、同図(b)は、ホースHに磁気活性装置Sが取り付けられた後の状態である。磁気活性装置Sは、ケース1と、ケース1内に内蔵される複数個の磁石5とを有する。ケース1は、上ケース1aと下ケース1bとに分割可能で、上ケース1aと下ケース1bとでホースHを挟み込むことによってホースHに固定される。上ケース1aと下ケース1bとは略同一の構造を有するので、上ケース1aを例にその構造を説明する。
【0015】
図2に、磁気活性装置Sの組み立て斜視図を示す。上ケース1aは、外カバー11aと、磁石5を保持するための保持部材12aと、保持部材12aから磁石5が外れないように磁石5の露出面を覆う内カバー13aとを有する。上ケース1aは、長手方向の両側面にそれぞれ2つの円柱状の突起111を有する。これらの突起111の先端部の外周面には雄ネジが螺刻されている。保持部材12aは、断面コ字状の長尺部材が3つ略同心円状に連なった形状を有し、長尺方向の任意の位置で磁石5を保持できるようになっている。なお、保持部材12aの断面形状は、磁石5を位置決め保持できる形状であれば特に限定はなく、使用する磁石の形状・大きさに合わせて適宜決定すればよい。また、ホースHの外周に同心円状に配置する磁石5の個数に合わせて、前記長尺部材の連なり数を定めればよい。
【0016】
内カバー13aは、外カバー11a及び保持部材12aとで磁石5を上ケース内に密封する。これによって、磁石5はホースHと直接接触することはない。また、内カバー13aの、短手方向の中央部にケース内側に窪んだ凹部131aが長手方向に連続して形成されており、上ケース1aの凹部131aと下ケース1bの凹部131bとでホースHを挟み込むと共に、保持部材12a、12bから磁石5が外れないように固定する。なお、内カバー13aの材質としては、ホースH内に磁力を効果的に及ぼす観点から、非磁性部材が好ましく、例えば磁性を有さないステンレス鋼(SUS304,SUS316など)が強度等の点から好ましい。
【0017】
上ケース1a及び下ケース1bの組み立ては、外カバー11a内に保持部材12aを配置し、保持部材12aの所定位置に磁石5を取り付ける。磁石5の取付方向及び位置については後述する。そして、磁石5の露出面を覆うように、内カバー13aを外カバー11aに取り付け、内カバー13aの貫通孔と外カバー11aの貫通孔とを一致させ、不図示のビスで固定する。なお、上ケース11a内で保持部材12aが動かないように、外カバー11aと保持部材12aとの間に、板バネや押しバネなどの付勢部材を介装してもよい。
【0018】
次いで、上ケース1a及び下ケース1bの側面から突出した突起111を、左右方向に分割可能な一組の支持板2,3に形成された長孔21にそれぞれ挿通する。これにより、上ケース1aと下ケース1bとは、長孔21内を突起111が移動できる範囲で移動可能に一組の支持板2,3で支持される。
【0019】
前記構成の磁気活性装置SをホースHに取り付ける場合は、上ケース1aの凹部131aと下ケース1bの凹部131bとでホースHを挟み込む。また、分割した支持板2及び支持板3とを、穴22及び穴32の中にホースが位置するように接合する。そして、上ケース1a及び下ケース1bの突起111を、支持板2及び支持板3の長孔21及び長孔31に差し入れ、支持板2及び支持板3から外方に突出した突起111に、不図示のナットを螺合させて上ケース1a及び下ケース1bを支持板2,3に固定する。これにより、磁気活性装置SはホースHに固定される。
【0020】
図3に、図1のA−A線断面図、B−B線断面図、C−C線断面図をそれぞれ示す。各断面図は、ホースHの外周を取り囲むように6つの磁石5が対向配置された各磁石群の位置における断面図である。各磁石5は、薄い直方体形状を有し、一方面をS極と他方面をN極としたものである。図3(a)に示す磁石群イでは、上ケース1aの磁石は、ホースHに臨む側の磁極が全てN極となるように取り付けられ、下ケース1bの磁石は、ホースHに臨む側の磁極が全てS極となるように取り付けられている。これにより、ホースHを挟んで対向する磁石の磁極は異極となり、磁力線はおおよそ上から下へホースHを横断するような形で形成される。
【0021】
図3(b)に示す磁石群ロでは、磁石群Aとは逆に、上ケース1aの磁石は、ホースHに臨む側の磁極が全てS極となるように取り付けられ、下ケース1bの磁石は、ホースHに臨む側の磁極が全てN極となるように取り付けられている。これにより、ホースHを挟んで対向する磁石の磁極は異極となり、磁力線はおおよそ下から上へホースHを横断するような形で形成される。
【0022】
さらに、図3(c)に示す磁石群ハでは、上ケース1a及び下ケース1bの磁石は、ホースHに臨む側の磁極を全てS極となるように取り付けられている。これにより、磁力線はホースHを横断することなく、ホースの中心部付近で曲がって半径方向外方へ逸れる形で形成される。
【0023】
このように本実施形態の磁気活性装置Sでは、6個の磁石を対向配置させた磁石群を、ホースHの軸方向に所定間隔で3つ設け、そのうち2つの磁石群イ及び磁石群ロは、ホースHを挟んで対向する磁石の磁極を全て異極とし、残る1つ磁石群ハは、配管側の磁極を全て同極としている。従来の磁気活性装置には、複数の磁石群を設けたものもあるが、いずれの磁石群も、対向する磁石の磁極を異極としていた。また、従来の磁気活性装置には、対向する磁石の磁極を同極とするものもあるが、1つの磁極群のみを備えたものであった。これに対し、本発明の磁気活性装置は、対向する磁石の磁極を異極とした磁石群と、対向する磁石の磁極を同極とした磁石群とをそれぞれ少なくとも1つ設ける構成としたので、従来の装置に比べて、磁気活性能が遙かに高くなり、配管の径が大きい場合や配管内を流れる流体の流速が速い場合などであっても、効率的且つ確実に流水の磁気活性が行えるようになる。
【0024】
なお、以上説明した実施形態では、3つの磁石群を設けているが、磁石群の数は2つ以上であれば特に限定はない。また、磁石群を構成する磁石の個数は2つ以上であれば特に限定はないが、通常は2〜8個の範囲が好ましい。ただし、磁石群を構成する磁石はホースを挟んで対向配置する必要があるため、偶数個であるのが好ましい。
【0025】
また、磁石群の配置順序に限定はないが、対向する磁石の磁極を全て同極とした磁石群を、配管内流体の流動方向最下流側に設けるのが好ましい。また、対向する磁石の磁極を全て同極とする場合、対向側の磁極はS極とするのが好ましい。
【0026】
磁石群の配置間隔としては、隣り合う磁石群の磁力が他方に大きく影響しない程度の間隔が好ましく、使用する磁石の磁力を考慮して適宜決定すればよいが、通常、5〜25mm程度が好ましい。
【0027】
本発明の磁気活性装置を取り付ける配管としては、ホースに限定されるものではなく、金属管や樹脂管など従来公知の管が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する磁石に限定はなく、例えば、バリウムフェライト磁石やストロンチウムフェライト磁石などのフェライト磁石;アルニコ磁石やサマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石などの希土類磁石;フェライトゴム磁石やネオジムゴム磁石などのゴム磁石;フェライトプラスチック磁石やネオジムプラスチック磁石などのプラスチック磁石などが挙げられる。これらの中でも磁力が高いことから希土類磁石が好ましく、ネオジム磁石がより好ましい。磁石の磁力としては1000〜5000ガウスの範囲が好ましい。
【0029】
配管内を流動させる流体に限定はなく、水道水や水溶液、オイル、各種飲み物など従来公知の液体に本発明は適用でき、僅かながらでも導電性を有する液体に好ましく適用できる。
【0030】
本発明者らの実験によれば、本発明の磁気活性方法及び磁気活性装置を、農作物への散布用水に用いると、農作物の生長が通常に比べて格段に促進される効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る磁気活性方法及び磁気活性装置によれば、配管の径が大きい場合や配管内を流れる流体の流速が速い場合などであっても、効率的且つ確実に流体の磁気活性が行え有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 ケース
1a 上ケース
1b 下ケース
2,3 支持部材
5 磁石
イ,ロ,ハ 磁石群
H ホース(配管)
S 磁気活性装置
11a,11b 外カバー
12a,12b 保持部材
13a,13b 内カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外周を取り囲むように、少なくとも2つの磁石を対向配置させた磁石群を、配管の軸方向に所定間隔で2以上設け、
前記磁石群の少なくとも1つは、配管側の磁極を全て同極とし、且つ残る磁石群の少なくとも1つは、配管を挟んで対向する磁石の磁極を全て異極とすることを特徴とする配管内流体の磁気活性方法。
【請求項2】
配管内流体の流動方向最下流側の磁石群の配管側の磁極を全て同極とする請求項1記載の磁気活性方法。
【請求項3】
前記の配管側の磁極を全て同極とした磁石群の、配管側の磁極をS極とする請求項1又は2記載の磁気活性方法。
【請求項4】
前記磁石群は、4〜8つの磁石から構成される請求項1〜3のいずれかに記載の磁気活性方法。
【請求項5】
分割可能で、配管に対して挟み込むようにして取り付けられるケースと、前記ケース内に、配管に臨むように配置された複数の磁石とを備え、配管内流体を磁気活性する装置であって、
配管の外周を取り囲むように、少なくとも2つの磁石が対向配置された磁石群が、配管の軸方向に所定間隔で2以上設けられ、
前記磁石群の少なくとも1つは配管側の磁極は全て同極とされ、且つ残る磁石群の少なくとも1つは対向する磁石の磁極は全て異極とされていることを特徴とする配管取付用磁気活性装置。
【請求項6】
配管内流体の流動方向最下流側の磁石群の配管側の磁極が全て同極とされている請求項5記載の配管取付用磁気活性装置。
【請求項7】
前記の配管側の磁極が全て同極とされた磁石群の、配管側の磁極をS極とする請求項5又は6記載の配管取付用磁気活性装置。
【請求項8】
前記磁石群は、4〜8つの磁石から構成される請求項5〜7のいずれかに記載の配管取付用磁気活性装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−167583(P2011−167583A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30858(P2010−30858)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(596062510)
【Fターム(参考)】