説明

配管拘束支持体

【課題】プラントに敷設された配管の拘束支持体において、従来例より強度が大きくかつ溶接面積の小さい配管支持構造体を提供し、配管の熱膨張、地震等による変位に対し確実に拘束支持する。
【解決手段】配管の外周に軸を挟んで固定した少なくとも一対の配管ラグと、配管ラグが係合する支持構造物を設け、配管ラグはほぼU字状断面を持ち外周に前記支持構造物と係合する切欠きを有し、前記配管ラグの切欠きと前記支持構造物を係合させて、前記配管を配管軸方向及びこれと直交する一方向又は二方向において拘束支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電、化学、石油及びゴミ処理等の各種プラントで敷設される配管において、配管の軸方向及び軸直交1方向乃至2方向の位置変位を拘束するために使用される配管ラグを有する配管拘束支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラントで敷設される配管が、地震等の外力や熱変位等により動いて損傷することを防止するため、これらの動きを拘束する手段として配管の拘束支持体が存在する。
【0003】
図7、図8に示された拘束支持体は配管2の通される四角形の空間を囲むように支持構造物3を用いる。支持構造物3を構成している水平梁7と垂直柱8に面する配管2の上下左右4ヶ所には4個の配管ラグ(支持金具)1が個々に位置調整されて溶接により固定されている。下部の配管ラグ1は支持構造物3を構成している下部の水平梁7の上面に非固定的に乗せられている。他の配管ラグ1も支持構造物3に囲まれてこれに接している。この構造により配管2の軸と直交する2方向(この場合は上下左右方向)の位置変位を拘束できる。4は躯体5に埋設されて垂直柱8を支持する埋込金物である。
【0004】
図9、図10の拘束支持体は、図7、図8に示す従来例の水平方向の配管ラグ1に配管アタッチメント6を接合して配管2の軸方向変位の拘束を実現したものである。配管アタッチメント6は水平方向の2個の配管ラグ1の各々に溶接接合され、さらには支持構造物3の垂直柱8に配管2の軸方向に噛合う切欠きを介して組合わされている。このため、図7、図8の例に比べ、さらに配管2の軸方向の位置変位を拘束できる。類似の構成は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−218887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
設備の社会的重要度が高く、高い信頼性を求められる原子力プラントの場合は、溶接作業およびその検査に多大な時間を要する。従って、溶接部及び溶接作業量を極力低減することが求められている。また、現地での溶接工程において、作業スペースが狭い場所では溶接作業が困難になり溶接の精度が低くなる恐れがあり、更なる品質向上を図るために現地溶接作業を低減する必要がある。
【0007】
従来例に示す配管アタッチメント6は、配管ラグに溶接固定されるため溶接箇所が増加する問題がある。さらに配管ラグの垂直方向に荷重が加わる際の受圧面積が小さく、大きな圧縮応力により変形する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、配管の熱膨張変位、地震変位等に対して、配管の軸方向及び軸直交1方向乃至2方向の位置変位を確実に拘束できる配管ラグを有する配管支持構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、配管と、配管外周に配管中心軸を挟んで固定した一対の配管ラグと、配管ラグが係合する支持構造物を有する配管支持構造体において、前記配管ラグは外周に前記支持構造物と係合する切欠きを有し、前記配管ラグの切欠きと前記支持構造物を係合させて、前記配管を配管軸方向及びこれと直交する一方向において拘束支持することを特徴とする。
【0010】
また、配管と、配管外周に配管中心軸を挟んで固定した二対の配管ラグと、配管ラグが係合する支持構造物を有する配管支持構造体において、前記配管ラグは外周に前記支持構造物と係合する切欠きを有し、前記配管ラグの切欠きと前記支持構造物を係合させて、前記配管を配管軸方向及びこれと直交する二方向において拘束支持することを特徴とする。
【0011】
また、配管支持構造体において、前記二対の配管ラグは、配管ラグに直交する面内において互いにほぼ直交して配置されたことを特徴とする。
【0012】
また、配管支持構造体において、前記配管ラグはほぼ断面U字状に形成したU字状板の横方向に切欠きを設けたことを特徴とする。
【0013】
また、配管支持構造体において、前記配管ラグはほぼ断面U字状に形成したU字状板の両端に平板を固着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配管支持構造体は、配管ラグに施された切欠きと支持構造物を噛合せることにより配管の軸方向変位を拘束する構造とすることで、配管ラグと支持構造物の溶接が不要となる。また、配管ラグ自体に切欠きを設ける事により別部材の溶接作業が低減され、配管ラグの耐荷重強度が増大する。
【0015】
さらに、配管と配管ラグの溶接は工場で行うことにより、現地での溶接作業を必要としないため、据付精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における配管ラグの斜視図である。
【図2】本発明における配管ラグの変形例の斜視図である。
【図3】本発明における実施例1の配管支持構造体の正面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】本発明における実施例2の配管支持構造体の正面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】従来例による2方向拘束の配管支持構造体の正面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】従来例による3方向拘束の配管支持構造体の正面図である。
【図10】図9の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施例を図面に付き説明する。
【実施例1】
【0018】
図1、図2は、本発明の各実施例に使用される配管ラグ11、14を示している。図1は、本発明の切欠き13が施された配管ラグ11の構造を示している。U字型に曲げたU字状板12の底部に切欠き13が直角方向に施されている。切欠き13の形状は係合する支持構造体3の水平梁7に合わせて形成される。
【0019】
図2は、変形例による配管ラグ14を示し、図1のU字型に曲げたU字状板12の両側に平板15を溶接接合して強度を高めたものである。配管ラグ14の全周にわたって配管2に溶接されるため、固着強度が増す。
【0020】
図1、図2に示された配管ラグ11、14は、以下のように使用される。図3、4に示す実施例1は、配管2が配管軸方向及び軸直交1方向に拘束される支持構造を示す。
【0021】
図3において、配管ラグ11は配管2の上下2箇所に固定されている。配管ラグ1と配管2との固定手段は溶接による。
【0022】
また、躯体5に埋込固定した埋込金物4に垂直な各鋼材を各垂直柱8に利用し、各垂直柱8間に溶接接合により上下2段の鋼材からなる水平梁7を、配管ラグ11の切欠き13と噛合せつつ固定して、全体で支持構造物3を構成する。
【0023】
このため、支持構造物3には上下の水平梁7と左右の垂直柱8とで囲われた四角形の空間が形成され、配管2を通す通路として利用されている。
【0024】
このような実施例1によれば、配管2が配管ラグ11に固定され、その配管ラグ11が支持構造物3に配管軸方向及び配管軸直交1方向に固定されているから、配管2は地震などの外部からの力や配管2自身の熱変位による動きに対しても、拘束方向に対しての動きは阻止されて一定の位置に拘束されて支持構造物3により支持される。
【実施例2】
【0025】
図5、図6に示した実施例2は、配管2の軸方向及び軸直交2方向の位置変位が拘束される配管支持構造体である。
【0026】
実施例1と同じく支持構造物3の垂直柱8が躯体5に設けた埋込金物4に固定され、支持構造物3で形成された四角形の空間内に、配管2に固定された配管ラグ11が配置される。
【0027】
実施例2は、実施例1と比べて配管ラグ11が配管の上下左右に溶接接合されており、配管ラグ11が支持構造物3の水平梁7と垂直柱8とに噛合って組み合わされている。
【0028】
このような構成によれば、配管2が配管ラグ11に固定され、配管ラグ11が支持構造物3に固定され、配管軸方向及び軸直交2方向の動きが確実に阻止されて、配管2は一定の位置に拘束され支持構造物3により安定的に支持される。
【0029】
本発明の配管支持構造体は、溶接作業量削減により現地作業工数を低減することができる。また、溶接作業量削減により配管ラグの構造信頼性が向上しプラント運転時のトラブルポテンシャルを軽減できる。さらに、配管ラグに工場での加工品を使用することで現地調整作業低減による現地据付性が向上する。
【符号の説明】
【0030】
1、11、14 配管ラグ
2 配管
3 支持構造物
4 埋込金物
5 躯体
6 配管アタッチメント
7 水平梁
8 垂直柱
12 U字状板
13 切欠き
15 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管と、配管外周に配管中心軸を挟んで固定した一対の配管ラグと、配管ラグが係合する支持構造物を有する配管支持構造体において、
前記配管ラグは外周に前記支持構造物と係合する切欠きを有し、前記配管ラグの切欠きと前記支持構造物を係合させて、前記配管を配管軸方向及びこれと直交する一方向において拘束支持することを特徴とする配管支持構造体。
【請求項2】
配管と、配管外周に配管中心軸を挟んで固定した二対の配管ラグと、配管ラグが係合する支持構造物を有する配管支持構造体において、
前記配管ラグは外周に前記支持構造物と係合する切欠きを有し、前記配管ラグの切欠きと前記支持構造物を係合させて、前記配管を配管軸方向及びこれと直交する二方向において拘束支持することを特徴とする配管支持構造体。
【請求項3】
請求項2に記載された配管支持構造体において、前記二対の配管ラグは、配管ラグに直交する面内において互いにほぼ直交して配置されたことを特徴とする配管支持構造体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された配管支持構造体において、前記配管ラグはほぼ断面U字状に形成したU字状板の横方向に切欠きを設けたことを特徴とする配管支持構造体。
【請求項5】
請求項4に記載された配管支持構造体において、前記配管ラグはほぼ断面U字状に形成したU字状板の両端に平板を固着したことを特徴とする配管支持構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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