説明

配管接続部切断装置

【課題】配管やフランジへの取り付け、取り外し及び運搬が容易であって、配管の径や設置方向によらず、その接続部に設けられたフランジの溶接を効率よく正確に切除することが可能な小型で安価な配管接続部切断装置を提供する。
【解決手段】配管接続部切断装置は、フランジ18の外周面上を矢印Cの方向へ移動可能に設置される本体1と、エアモータによって駆動されるエンドミル3と、フランジ18の外周面に巻回される無端チェーン4と、保持具6,6によって軸支され,無端チェーン4に噛合するスプロケット5a及びローラ5bと、電気モータの駆動力をスプロケット5aに伝達する減速機7と、ハンドル8aの操作により矢印Aの方向にエンドミル3を進退させるエンドミルギアと、フランジ18に対して係合可能にローラ保持具10,10によって軸支される移動支持ローラ9,9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の接続部に設けられたフランジの接合部を切断する装置に係り、特に、その外周面に装着された状態で円周方向に自走しながらフランジの接続部の溶接を効率よく切除することが可能な配管接続部切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、配管の接続部は、内部流体の漏れ出しを防ぐために、突き合わせ面が溶接された一対のフランジを介して接合される。さらに、フランジの突き合わせ面は、リップリング等を用いてシールされる。
配管の接続部を切断して点検する場合、フランジの溶接を除去する必要があり、点検の終了とともに、フランジを再び溶接する必要がある。通常、配管の接続部の点検は、定期的に繰り返し行われ、その都度、フランジの溶接を除去したり、再びフランジを溶接したりといった作業が発生する。そのため、フランジの接合部から溶接を除去する場合には、その後に行われる溶接作業が容易となるように、接合部に対する工具の位置合わせを精度よく行って溶接を正確に除去する必要がある。従来、上記位置合わせを専用の治具を用いて行った後、工具を配管の円周方向に手動で移動させながら、フランジの接合部の全周にわたって溶接を除去することが行われていた。しかしながら、このような方法では、工具の位置合わせや円周方向への移動に時間を要し、作業効率が悪いという課題があった。
【0003】
フランジの接合部に施された溶接を切除するものではないが、配管の外周面を全周にわたって切断する技術については、既にいくつかの発明や考案が開示されている。
例えば、特許文献1には、「既設管切断装置」という名称で、水密的に密封した筐体内で水道管等の既設管の一部を切断する装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、既設水道管の周壁を円周方向に沿って切断する切削バイトからなる切断ユニットと、この切断ユニットを円周方向に回転自在に保持するガイド部と、切断ユニットを回転駆動させる駆動部とを備えるものである。
このような構造の「既設管切断装置」においては、切断ユニットが取り付けられたガイド部を回転既設水道管の管軸周りに回転駆動させることにより、既設水道管の周壁を円周方向に沿って切断することができる。
【0004】
また、特許文献2には、「円周シール溶接部を切断する装置」という名称で、原子炉容器の管台とこれに継合した管状部材の間のキャノピーシール部をその場で切断する装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、小径管状物と大径管状物との間に形成された円周シール溶接部を切断する装置であって、小径管状物の端部に内筒を着脱自在に取り付け、この内筒の一端に固定された円板状固定ベースに単一の駆動モータを取り付けるとともに、内筒の外周面に旋回自在に支持された回転ベースに,切削工具及びローラーカッターをそれぞれ別個に送り可能に配設し、動力伝達機構によって駆動モータの駆動力を回転ベースと切削工具及びローラーカッターに伝達することを特徴としている。
このような構造の「円周シール溶接部の切断装置」によれば、円周シール溶接部において外側の大部分が切削工具により機械的に削り取られた後、残された最内側部分がローラーカッターにより押し切られるという作用を有する。この場合、切屑の発生量を少なくすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−38316号公報
【特許文献2】特許第3035182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明においては、切断可能な水道管の径が限定されるという課題があった。また、水平方向に設置された状態でなければ、水道管を切断できないという課題があった。さらに、装置が大型で重く、構造も複雑なため、装置の取り付けや運搬が容易でなく、また、製造コストが高くなってしまうという課題があった。加えて、本発明は、そもそも配管の接続部に設けられたフランジの溶接を効率よく切除できるような構造となっていない。
【0007】
また、特許文献2に開示された発明においては、管状部材の径や設置方向が異なる場合には適用できないという課題があった。また、装置の小型化及び軽量化が容易でないという課題があった。さらに、安価に製造できないという課題があった。また、本発明においても、配管の接続部に設けられたフランジの溶接を効率よく切除することはできない。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、配管やフランジへの取り付け、取り外し及び運搬が容易であって、配管の径や設置方向によらず、その接続部に設けられたフランジの溶接を効率よく正確に切除することが可能な小型で安価な配管接続部切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である配管接続部切断装置は、配管の接続部に設けられるフランジの接合部を切断する配管接続部切断装置において、配管の軸方向に直交するようにフランジの外周面に巻回される無端チェーンと、配管の軸方向に垂直な平面内で回転可能に設置され,この無端チェーンに噛合するスプロケットと、このスプロケットを回転駆動するスプロケット駆動手段と、配管の半径方向に対して進退自在に,かつ配管の半径方向に平行な軸周りに回転可能に設置される切削工具と、この切削工具を回転駆動する工具駆動手段と、切削工具を前進又は後退させる切り込み量調節手段とを備え、スプロケットは無端チェーンによってフランジに締結されることを特徴とするものである。
このような構造によれば、配管接続部切断装置が無端チェーンによってフランジの外周面に締結されるとともに、スプロケットの回転により無端チェーンに案内されてフランジの外周面上を円周方向へ移動するという作用を有する。また、切削工具の回転軸が配管の円周方向に対して直交しているため、切削工具の移動方向を逆転させた場合でも切削抵抗が変動し難い。すなわち、切削工具の移動方向に関わらず加工状態が安定するという作用を有する。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の配管接続部切断装置において、フランジに係合しつつ、その外周面上を配管の円周方向へ移動可能に設置される移動支持ローラを備えたことを特徴とするものである。
このような構造の配管接続部切断装置においては、移動支持ローラによって切削工具が配管の軸方向に対して位置決めされるという作用を有する。また、配管が鉛直方向に設置されている場合には、無端チェーンに加わる配管接続部切断装置の重量が移動支持ローラによって軽減されるという作用を有する。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の配管接続部切断装置において、フランジとスプロケットの間隔を変更して無端チェーンの張り具合を調節するチェーン調節手段を備え、無端チェーンは複数の枠状体によって構成され、この枠状体は互いに連結可能に側面視カギ状をなす掛合部を有することを特徴とするものである。
このような構造によれば、環状をなす無端チェーンは、連続する任意の2つの枠状体の掛合状態を解除することによって一部が切り離されて帯状となる。また、上記2つの枠状体を掛合させることにより、無端チェーンが再び環状となる。従って、フランジや配管への取り付けが容易である。さらに、帯状となった無端チェーンにおいて枠状体の数を増減させることにより、無端チェーンの長さが調節される。そして、フランジ等に巻回された無端チェーンは、チェーン調節手段によって適正な張り具合に調節される。これにより、配管接続部切断装置をフランジ等に締結するという無端チェーンの作用がより確実に発揮される。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配管接続部切断装置において、スプロケット駆動手段は、電気モータと、この電気モータに電気を供給する電源部と、モータ回転速度調節手段と、スプロケットに対して電気モータの駆動力を伝達若しくは遮断するクラッチとからなることを特徴とするものである。
このような構造の配管接続部切断装置においては、スプロケットの回転速度及び回転方向を変更することにより、配管の円周方向に対する切削工具の移動速度及び移動方向が切り替わるという作用を有する。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の配管接続部切断装置において、工具駆動手段は、エアモータと、このエアモータにエアホースを介してエアを供給するエア源と、エアホースに介装されてエアの流量を制御する流量調節弁とからなることを特徴とするものである。
このような構造の配管接続部切断装置においては、電気モータを使用する場合に比べて工具駆動手段が小型化及び軽量化されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0014】
例えば、配管の軸方向に垂直な平面内で回転するディスクカッター等の工具をフランジの外周面に沿って円周方向へ移動させる場合、移動方向により工具に対して発生する摩擦抵抗が異なる。そのため、移動方向を逆転させる際に、工具の切り込み量や回転速度あるいは送り量(円周方向への移動量)を再度調節し直す必要がある。これに対し、本発明の請求項1記載の配管接続部切断装置においては、切削工具の移動方向が切削抵抗に影響を与えないため、切削工具の移動方向を容易に反転させることが可能である。従って、切削工具の移動方向を適宜逆転させることにより、配管に対する切削工具の周回数を少なくして配管に対するケーブル類の絡まりを防止することができる。また、フランジの外周面に締結された状態で円周方向に自走しながら接合部の溶接等を切除する構造となっていることから、配管の設置方向によらず、その接合部を切断することが可能である。加えて、装置本体を支持する部材が必要でないため、小型化が可能であり、また、製造コストも削減できる。
【0015】
本発明の請求項2記載の発明においては、切削工具をフランジの接合部に当てて溶接等を正確に切除することができる。これにより、フランジの再利用が可能となる。また、鉛直方向に配置された配管の接続部の切断に用いる場合でも、無端チェーンに対する引っ張り強度の要求仕様が緩和されることから、製造コストの削減を図ることができる。
【0016】
本発明の請求項3記載の発明においては、フランジ等に対する取り付けや取り外しが容易である。また、フランジ等の径に応じて無端チェーンの長さと張り具合を調整することができる。従って、フランジ等の径によらず、無端チェーンから配管接続部切断装置が外れて落下するという事故を確実に防止することが可能である。
【0017】
本発明の請求項4記載の発明においては、配管の円周方向に対する切削工具の移動速度を安定化させることができる。また、エアモータを利用する場合に比べて切削工具の移動方向の切り替えを容易に行うことができる。
【0018】
本発明の請求項5記載の発明においては、工具駆動手段が小型化及び軽量化されるため、フランジ等への取り付けや取り外し及び運搬が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る配管接続部切断装置の実施例の外観図である。
【図2】本実施例の配管接続部切断装置の平面図である。
【図3】本実施例の配管接続部切断装置の正面図である。
【図4】(a)は本実施例の配管接続部切断装置の側面図であり、(b)は移動支持ローラの正面図である。
【図5】(a)乃至(c)は本実施例の配管接続部切断装置を構成する無端チェーンの一部を拡大した図であり、(a)は正面図、(b)及び(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の最良の実施の形態に係る配管接続部切断装置の実施例について図1乃至図5を用いて説明する。
【実施例】
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係る配管接続部切断装置の実施例の外観図である。図2及び図3はそれぞれ本実施例の配管接続部切断装置の平面図及び正面図である。さらに、図4(a)は本実施例の配管接続部切断装置の側面図であり、(b)は移動支持ローラの正面図である。なお、図1乃至図4では、電源ケーブル類等の装置本体以外の構成要素については図示を省略している。また、図5(a)乃至(c)は本実施例の配管接続部切断装置を構成する無端チェーンの一部を拡大した図であり、(a)は正面図、(b)及び(c)は側面図である。
【0022】
本実施例の配管接続部切断装置は、フランジ18の外周面上を配管の円周方向(以下、矢印Cの方向という。)へ移動可能に設置される本体1と、給油器(リュブリケータ)及び流量制御弁が介装されたエアホースと、電源ケーブルと、エアホース及び電源ケーブルを介して本体1にそれぞれ接続されるエア源及び電源と、操作盤によって構成される。なお、操作盤には、電源スイッチ、電気モータの運転−停止切り替えスイッチ、回転速度調整つまみ及び回転方向切り替えスイッチの他、クラッチ切り替えスイッチや電源のON−OFF切り替えスイッチが取り付けられている。
【0023】
図1乃至図3に示すように、本体1は、ケーシング2a(図3参照)に内蔵されたエアモータによって駆動され,配管の半径方向(以下、矢印Aの方向という。)に平行な軸周りに回転して溶接20を切除するエンドミル3と、配管の軸方向(以下、矢印Bの方向という。)に直交するように,フランジ18の外周面に巻回される無端チェーン4と、矢印Bの方向に垂直な平面内で回転可能に,かつ矢印Aの方向に対して進退自在に設置され,無端チェーン4に噛合するスプロケット5a及びローラ5bと、スプロケット5a及びローラ5bを軸支する保持具6,6と、電気モータ及びクラッチとともにケーシング2bに内蔵され,電気モータの駆動力をスプロケット5aに伝達する複数のギアからなる減速機7と、ケーシング2cに内蔵され,矢印Aの方向にエンドミル3を進退させるエンドミルギアと、エンドミルギアを回動させるハンドル8aと、ローラ保持具10,10によってフランジ18に対して係合可能に,かつ矢印Bの方向に垂直な平面内で回転可能にそれぞれ軸支される移動支持ローラ9,9とを備えている。
【0024】
電源ケーブル、電源、電気モータ、クラッチ及び減速機7はスプロケット5aを回転駆動するスプロケット駆動手段を構成している。電気モータはブラシレスDCモータ(整流用刷子の無い直流モータ)であり、モータ回転速度調節手段が内蔵されている。従って、操作盤の回転速度調整つまみ及び回転方向切り替えスイッチをそれぞれ操作することによって回転速度の調整と回転方向の切り替えが可能となっている。なお、電気モータの回転速度を変更すると、スプロケット5aの回転速度が変化し、それに伴い、本体1に取り付けられたエンドミル3の矢印Cの方向への移動速度が変化する。
【0025】
クラッチは、歯(ツース)の噛み合いによってトルクを伝達する、いわゆる電磁ツースクラッチであり、操作盤のクラッチ切り替えスイッチを操作することにより、減速機7に対する電気モータの駆動力の伝達及び遮断の切り替えが可能となっている。そして、クラッチ切り替えスイッチを操作して減速機7に対する電気モータの駆動力の伝達を一旦遮断し、操作盤の回転方向切り替えスイッチを操作して電気モータの回転方向を逆転した後、再度クラッチ切り替えスイッチを操作して減速機7に電気モータの駆動力を伝達することによって、スプロケット5aの回転方向が反転される。これに伴い、配管の円周方向に対するエンドミル3の移動方向が切り替わる。
【0026】
また、エアホース、エア源及びエアモータはエンドミル3を回転駆動する工具駆動手段を構成している。そして、流量制御弁を操作してエアホース内のエアの流量を変化させることにより、エアモータの回転速度を変更可能な構造となっている。なお、エアモータは電気モータに比べてサイズが小さい割に大きなトルクを発生するという特徴がある。従って、エアモータを使用することにより、工具駆動手段が小型化及び軽量化される。
【0027】
このように本実施例の配管接続部切断装置では、スプロケット駆動手段としてモータ回転速度調節手段が内蔵された電気モータを使用しているため、エアモータを用いる場合に比べてエンドミル3を矢印Cの方向へ安定的に移動させることができる。また、電気モータはエアモータに比べて回転方向の切り替えが容易であることから、エンドミル3の移動方向の切り替えも容易に行うことができる。さらに、工具駆動手段が小型化及び軽量化されるため、本体1の小型化及び軽量化を図ることができる。この場合、フランジ18に対する本体1の取り付けや取り外し及び本体1の運搬を容易に行うことができる。
【0028】
なお、ハンドル8aを介して操作されるエンドミルギアはエンドミル3の切り込み量調節手段を構成している。また、ケーシング2a,2bにはエアホース及び電源ケーブルを接続するために、エアホースカプラ11及びコネクタ12がそれぞれ設けられており、ケーシング2cの前面からはエンドミル軸3aが突出している。
さらに、矢印Aの方向に対して平行に配置される支柱13a,13aは、矢印Bの方向に対して平行に配置される連結板14によって先端部が互いに連結されるとともに、基端部が本体1に固定されている。そして、保持具6は支柱13a,13aによって、矢印Aの方向に対して進退自在に保持されている。また、先端部にハンドル8bを有し、基端部が保持具6に固定されるネジ軸13bは、支柱13a,13aに対して平行に配置されるとともに、連結板14のネジ孔14a(図4(a)参照)に螺入されている。従って、ハンドル8bを回動すると、ネジ軸13bが連結板14及び支柱13a,13aに対して相対的に移動する。その結果、保持具6が矢印Aの方向に前進又は後退し、これに伴い、スプロケット5a及びローラ5bも矢印Aの方向に前進又は後退する。これにより、無端チェーン4の張り具合が変化する。すなわち、スプロケット5a及びローラ5b、連結板14によって先端部が連結された支柱13a,13a、この支柱13a,13aによって矢印Aの方向に対して進退自在に保持される保持具6及び先端部にハンドル8bを有するネジ軸13bは、無端チェーン4の張り具合を調節するチェーン調節手段を構成している。
【0029】
図4(a)及び(b)に示すように、移動支持ローラ9は、支軸(図示せず)の両端に段付円盤部9a,9bが設けられた構造となっており、支軸はローラ保持具10によって矢印Bの方向に対して平行に、かつ回動自在に保持されている。さらに、ローラ保持具10の側面には、ガイド板15がネジ16,16を用いて螺着されている。なお、ネジ16が挿入されるガイド板15のネジ孔15a(図4(b)参照)は矢印Bの方向に長く形成されている。そして、ネジ16,16を緩めた場合、ガイド板15は矢印Bの方向に対して平行に最大2mm程度上下可能となっている。また、ガイド板15の一端にはガイドローラ17がフランジ18のテーパ面18a(図4(b)参照)に対して平行な軸周りに回動可能に取り付けられている。
【0030】
本体1をフランジ18に取り付けると、図4(b)に示すように、移動支持ローラ9の段付円盤部9a,9bは、端面23a,23bがフランジ18の平坦面18b及びフランジ19のテーパ面19aに対してそれぞれ当接する。これにより、溶接20に対するエンドミル3の位置決めが行われる。なお、段付円盤部9a,9bの間隔は、スペーサを利用することにより調整可能となっている。
また、ガイド板15は、ガイドローラ17がフランジ18のテーパ面18aに当接するように取り付け位置が調整可能となっている。これにより、溶接20に対するエンドミル3の上記位置決めがより正確に行われることになる。
【0031】
図5(a)及び(b)に示すように、無端チェーン4は、互いに連結した複数の枠状体21によって環状に形成されており、スプロケット5aは、この枠状体21の開口部21bに歯22を挿入するようにして、無端チェーン4と噛合する。また、枠状体21の一辺には、側面視カギ状をなす掛合部21aが設けられており、掛合部21aと対向する辺には、他の枠状体21の掛合部21aが掛合可能な形状となっている。なお、本願において側面視カギ状というときは、側面視略カギ状の場合も含むものとする。
図5(c)に示すように、隣り合う2つの枠状体21,21を側面視略90°をなすように回転させた後、一方の枠状体21を矢印Dの方向に移動させると、枠状体21,21の掛合状態が解除される。枠状体21,21の掛合状態が解除されると、環状をなす無端チェーン4は、その箇所で切り離されて帯状となる。そして、切り離された箇所の枠状体21,21を再び掛合させると、無端チェーン4は環状となる。このように、無端チェーン4は簡単に切り離され、あるいは連結される。従って、フランジ18への取り付けや取り外しを容易に行うことができる。また、上述の手順と逆の手順を行うことによって、別の枠状体21を新たに追加することが可能である。すなわち、枠状体21を取り外したり、追加したりすることによって、無端チェーン4は長さが自由に調節可能となっている。
【0032】
このような構造の配管接続部切断装置においては、本体1が無端チェーン4によってフランジ18の外周面に締結されるという作用を有する。そして、この作用が確実に発揮されるように、フランジ18に巻回された無端チェーン4の張り具合は、チェーン調節手段によって適正に調節される。
また、本実施例の配管接続部切断装置においては、スプロケット5aの回転に伴って本体1が無端チェーン4に案内されながら矢印Cの方向に移動し、エアモータに駆動されて回転するエンドミル3によって、フランジ18の全周にわたって溶接20が切除されるという作用を有する。そして、エンドミル3の回転軸が移動方向(矢印Cの方向)に対して直交しており、移動方向を逆方向(矢印Cに対して逆の方向)に切り替えた場合でも切削抵抗が変動し難いことから、エンドミル3による加工状態がその移動方向に関わらず安定するという作用を有する。さらに、エンドミル3の矢印Bの方向に対する位置決めは、移動支持ローラ9によって行われる。そして、移動支持ローラ9がフランジ18に係合していることから、配管が鉛直方向に設置されている場合でも、無端チェーン4に加わる本体1の重量は移動支持ローラ9によって軽減されることになる。
【0033】
一般に、配管の軸方向に垂直な平面内で回転するディスクカッター等の工具をフランジ18の外周面に沿って円周方向へ移動させる場合には、移動方向により工具に対して異なる摩擦抵抗が発生する。この場合、工具の移動方向を反転させる際に、工具の切り込み量や回転速度あるいは送り量(円周方向への移動量)を再度調節し直す必要がある。これに対し、本実施例の配管接続部切断装置においては、エンドミル3の移動方向が切削抵抗に影響を与えないため、エンドミル3の移動方向を容易に反転させることができる。従って、エンドミル3の移動方向を適宜反転させることにより、配管に対するエンドミル3の周回数を少なくして配管にケーブル類が絡まり難くすることができる。また、本実施例の配管接続部切断装置においては、フランジ18の外周面に締結された状態で円周方向に自走する本体1によって接合部の溶接20が切除されることから、配管の設置方向によらず、その接続部を切断することが可能である。加えて、本体1を支持する部材が不要なため、装置の小型化及び製造コストの削減が可能である。さらに、エンドミル3が移動支持ローラ9によって矢印Bの方向に正確に位置決めされることから、フランジ18の接合部に施された溶接20を確実に切除することができる。これにより、フランジ18の再利用が可能となる。また、配管が鉛直方向に配置されている場合でも、無端チェーン4に加わる本体1の重量が軽減されるため、無端チェーン4に対する引っ張り強度の要求仕様が緩和される。従って、無端チェーン4を安価なものにして、製造コストを安くすることができる。さらに、フランジ18の径に応じて無端チェーン4の長さと張り具合を調整することができる。従って、フランジ18の径によらず、無端チェーン4から本体1が外れて落下するという事故を確実に防止することが可能である。
【0034】
本願発明の配管接続部切断装置は、本実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、本体1がフランジ18ではなく、配管の外周面に締結される構造であっても良い。また、電源が本体1に搭載された構造とすることもできる。この場合、電源ケーブルが短くなるため、配管やフランジ18に絡まるおそれがない。さらに、エンドミル3の駆動をエアモータの代わりに電気モータで行うようにしても良い。この場合には、エアホースが不要となり、本体1が配管接続部切断装置そのものとなる。また、配管の軸方向に対するエンドミル3の位置決めの要求精度が高くない場合には、移動支持ローラ9を省略することもできる。この場合、フランジ18が設けられていない配管の接続部の切断あるいは配管の接続部以外の箇所の切断に対しても本装置を用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、請求項1乃至請求項5に記載された発明は、フランジが取り付けられた管状部材を切断する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…本体 2a〜2c…ケーシング 3…エンドミル 3a…エンドミル軸 4…無端チェーン 5a…スプロケット 5b…ローラ 6…保持具 7…減速機 8a,8b…ハンドル 9…移動支持ローラ 9a,9b…段付円盤部 10…ローラ保持具 11…エアホースカプラ 12…コネクタ 13a…支柱 13b…ネジ軸 14…連結板 14a…ネジ孔 15…ガイド板 15a…ネジ孔 16…ネジ 17…ガイドローラ 18…フランジ 18a…テーパ面 18b…平坦面 19…フランジ 19a…テーパ面 20…溶接 21…枠状体 21a…掛合部 21b…開口部 22…歯 23a,23b…端面 A〜D…矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の接続部に設けられるフランジの接合部を切断する配管接続部切断装置において、
前記配管の軸方向に直交するように前記フランジの外周面に巻回される無端チェーンと、
前記配管の軸方向に垂直な平面内で回転可能に設置され,この無端チェーンに噛合するスプロケットと、
このスプロケットを回転駆動するスプロケット駆動手段と、
前記配管の半径方向に対して進退自在に,かつ前記配管の半径方向に平行な軸周りに回転可能に設置される切削工具と、
この切削工具を回転駆動する工具駆動手段と、
前記切削工具を前進又は後退させる切り込み量調節手段とを備え、
前記スプロケットは前記無端チェーンによって前記フランジに締結されることを特徴とする配管接続部切断装置。
【請求項2】
前記フランジに係合しつつ、その外周面上を前記配管の円周方向へ移動可能に設置される移動支持ローラを備えたことを特徴とする請求項1記載の配管接続部切断装置。
【請求項3】
前記フランジと前記スプロケットの間隔を変更して前記無端チェーンの張り具合を調節するチェーン調節手段を備え、
前記無端チェーンは複数の枠状体によって構成され、
この枠状体は互いに連結可能に側面視カギ状をなす掛合部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管接続部切断装置。
【請求項4】
前記スプロケット駆動手段は、電気モータと、この電気モータに電気を供給する電源部と、モータ回転速度調節手段と、前記スプロケットに対して前記電気モータの駆動力を伝達若しくは遮断するクラッチとからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配管接続部切断装置。
【請求項5】
前記工具駆動手段は、エアモータと、このエアモータにエアホースを介してエアを供給するエア源と、前記エアホースに介装されて前記エアの流量を制御する流量調節弁とからなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の配管接続部切断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179384(P2010−179384A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23056(P2009−23056)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000123170)岡野バルブ製造株式会社 (7)
【出願人】(507387099)株式会社東亜機工 (2)
【出願人】(502453643)水口電装株式会社 (5)