説明

配管材の接続構造

【課題】フランジ部材によって、配管材のフランジ部を挟み込んで接続する接続構造として、フランジ部材の製造コストを低く抑えることができるとともに、一箇所程度のボルトの緩みや締め忘れでは、接続部からの漏水のおそれが少ない配管材の接続構造を提供する。
【解決手段】フランジ部材2が、リングの中心軸に平行な分割線2aで分割した複数の分割体21からなるとともに、各配管材1a,1bの本体部11側にそれぞれ2枚以上のフランジ部材2が隣接するフランジ部材2と分割体21の分割線2aを周方向にずらせた状態で2枚以上重ね合わされて配置されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管端部にフランジ部を有する配管材同士を接続する配管材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本体部の一端部にフランジ部を有する2つの配管材は、フランジ部同士を、パッキンを介して突きあわせるとともに、それぞれ本体部側にリングをしたフランジ部材を配置し、一方のフランジ部材に設けられたボルト挿通孔から他方の配管材側のフランジ部材のボルト挿通孔にボルトを刺し通し、ボルト先端部にナットをねじ込んでフランジ部材間に両フランジ部を挟み込むことによって水密に接続されるようになっている。
また、配管材の本体部の長さが長く、一体もののリング状をしたフランジ部材では、配管材にフランジ部材を装着が難しいため、図5に示すような2つ割りの分割体100からなるフランジ部材100が既に提案されている(特許文献1)。
【0003】
すなわち、このフランジ部材100は、2つの分割体100から構成されているので、配管材の本体部が長くても、本体部の途中の障害物があったとしても、配管材のフランジ部の近傍で本体部を囲むように2つの分割体100を組み合わせることによって、リング状のフランジ部材100とすることができるので、作業性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−30377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記フランジ部材100は、各分割体100にボルト挿通孔112を備えた重ね合わせ部111を備え、図5に実線で示すように、両分割体100の重ね合わせ部111と重ね合わせ部111とを重ね合わせ、一致したボルト挿通孔112にボルト(図示せず)を挿通することで、リング状に保持される構造となっている。
しかし、上記のように、重ね合わせ部111を設けた構造の場合、フランジ部材100の製造コストが嵩むという問題がある。
【0006】
一方、フランジ部材として、リングの中心軸に沿って分割した2つ割りの分割体からなる形状のものを用いて、配管材の両フランジ部を2つのフランジ部材で挟み込むようにした場合、フランジ部材の製造コストは、低減できるのであるが、一本でもボルトが弛んだり、締め忘れがあると、弛んだり締め忘れがあったボルト近傍の分割体の分割部がボルトが正常に締め込まれた分割体の分割部からずれやすくなる。したがって、フランジ部への周方向に均一な挟着力が得られず、漏水のおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、フランジ部材の製造コストを低く抑えることができるとともに、一箇所程度のボルトの緩みや締め忘れでは、接続部からの漏水のおそれが少ない配管材の接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる配管材の接続構造は、本体部の一端にフランジ部を有する第1の配管材と、フランジ部接合面を有する第2の配管材とが、前記フランジ部を前記フランジ部接合面に突き合わせた状態に配置され、前記フランジ部より大径で、中央に本体部より大径の本体部挿通孔を有し、本体部挿通孔を囲むように、複数のボルト挿通孔が設けられた2つ割りの分割体からなるリング状のフランジ部材が、少なくとも前記第1の配管材の本体部に装着されるとともに、前記複数のボルト挿通孔に通したボルトを第2の配管材側に設けられた雌ねじに締め込むことによって、前記第1の配管材と第2の配管材とが、前記フランジ部と前記フランジ部接合面と水密に圧接状態にされて接続される配管材の接続構造であって、前記フランジ部材が、リングの中心軸に平行な分割線で分割した複数の分割体からなるとともに、各配管材の本体部側にそれぞれ2枚以上の前記フランジ部材が隣接するフランジ部材と分割体の分割線を周方向にずらせた状態で2枚以上重ね合わされて配置されていることを特徴としている。
【0009】
本発明において、第2の配管材は、例えば、第1の配管材と同様に本体部の一端にフランジ部を備える形状としても構わない。
すなわち、上記のように第2の配管材として第1の配管材と同様の形状のものを用いた場合、第2の配管材のフランジ部がフランジ部接合面となり、第2の配管材側にも同様のフランジ部材を配置し、第2の配管材側のフランジ部材側のボルト挿通孔から突出したボルトの先端に雌ねじとしてのナットを螺合する構造とすればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に配管材の接続構造は、以上のように、本体部の一端にフランジ部を有する第1の配管材と、フランジ部接合面を有する第2の配管材とが、前記フランジ部を前記フランジ部接合面に突き合わせた状態に配置され、前記フランジ部より大径で、中央に本体部より大径の本体部挿通孔を有し、本体部挿通孔を囲むように、複数のボルト挿通孔が設けられた2つ割りの分割体からなるリング状のフランジ部材が、少なくとも前記第1の配管材の本体部に装着されるとともに、前記複数のボルト挿通孔に通したボルトを第2の配管材側に設けられた雌ねじに締め込むことによって、前記第1の配管材と第2の配管材とが、前記フランジ部と前記フランジ部接合面と水密に圧接状態にされて接続される配管材の接続構造であって、前記フランジ部材が、リングの中心軸に平行な分割線で分割した複数の分割体からなるとともに、各配管材の本体部側にそれぞれ2枚以上の前記フランジ部材が隣接するフランジ部材と分割体の分割線を周方向にずらせた状態で2枚以上重ね合わされて配置されている。
すなわち、配管材の本体部側に隣接するフランジ部材と分割体の分割線を周方向にずらせた状態で2枚以上のフランジ部材が重ね合わされて配置されているので、常に、重ね合わされた他方のフランジ部材が分割体の分割線に沿ったずれを防止する。したがって、一箇所程度のボルトの緩みや締め忘れでは、接続部からの漏水のおそれが少ない。
また、フランジ部材が、リングの中心軸に平行な分割線で分割した複数の分割体からなる単純な構造であるので、複雑な金型などが不要で低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる配管材の接続構造の1つの実施の形態をあらわし、その接続部分の斜視図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図1のY方向矢視図である。
【図4】図1の接続構造に用いるフランジ部材の平面図である。
【図5】公知のフランジ部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明にかかる配管材の接続構造の1つの実施の形態をあらわしている。
【0013】
この接続構造は、図1及び図2に示すように、2本の配管材1a,1bと、それぞれ1対の分割体からなる4枚のフランジ部材2と、4本のボルト3と、雌ねじとしての4つのナット4と、8枚のワッシャ5とから形成されている。
すなわち、配管材1aは、ポリエチレン樹脂やポリ塩化ビニル等の樹脂からなり、直管状の本体部11とこの本体部11の一端に設けられたフランジ部12とを備えている。
フランジ部12は、図2に示すように、その接合面12aに環状溝12bが設けられ、この環状溝12bにOリング等のリング状をしたパッキン14が嵌め込まれている。
【0014】
配管材1bは、上記配管材1aと同様に直管状の本体部11とこの本体部11の一端に設けられたフランジ部13とを備えている。
フランジ部13は、その接合面13aが平滑面となっている。
【0015】
フランジ部材2は、図4に示すように、平面視半円弧状をした対称形状の一対の分割体21からなり、2つの分割体21が、分割線となる mm程度の隙間2aが形成された状態に配置されて、外径がフランジ部12の外径より大きく、内径が上記配管材1a,1bの本体部11の外径より少し大きい本体部挿通孔23を備えたリング状となる。
また、各フランジ部材2には、ボルト挿通孔22が各分割体21毎に2つずつ合計4つのボルト挿通孔22が使用状態でフランジ部12より外側にはみ出る部分に穿設されている。
【0016】
4つのボルト挿通孔22は、フランジ部材2の中心軸を中心とする同心円上に当ピッチで並ぶように設けられている。
【0017】
つぎに、この接続構造を詳しく説明する。
すなわち、この接続構造は、図1〜図3に示すように、2本の配管材1a,1bが、そのフランジ部12の接合面12aとフランジ部13の接合面13aとをパッキン14を介在した状態で水密に接合されている。
【0018】
また、両配管材1a,1bの本体部11側には、それぞれ重ねあわされた2つのフランジ部材2,2が本体部挿入孔23内に本体部11が入り込ませるとともに、フランジ部12,13に密着した状態に配置されている。
さらに、フランジ部材2は、隣接するフランジ部材2と分割線が90°周方向にずれるとともに、図2に示すように、ボルト挿通孔22が他のフランジ部材2のボルト挿通孔22と一直線上に並んだ状態になっている。
【0019】
そして、配管材1a側のフランジ部材2のボルト挿通孔22からボルト先端部が突出するようにボルト3がワッシャ5を介在させた状態で配管材1b側のフランジ部材2側から配管材1aのフランジ部材2側に向かって軸方向に並ぶすべてのボルト挿通孔22に挿通され、突出したボルト先端部にワッシャ5を介在させた状態でナット4が締め込まれている。
【0020】
この接続構造によれば、フランジ部材2が2枚重ねで使用されるとともに、重ねあわされた2つのフランジ部材2は、その分割線である隙間2aが周方向に90°ずれて重なり合わないようになっているので、すなわち、一方のフランジ部材2の分割体21の隙間2a近傍部分が、他方のフランジ部材2の分割体21に常に当接した状態になるので、1本程度では、ボルト3が弛んだり、ボルト3の締め忘れがあっても分割体21と分割体21とがずれることがない。したがって、一箇所程度のボルト3の弛みでは、フランジ部12,13の挟着が弛むことがなく、水密性が確保され、漏水の危険性が低い。
また、分割体21が、平面視半円弧状をした対称形状しているので、金型が1つで済むとともに、単純な構造であるので、低コストで製造することができる。
【0021】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、一方の配管材のフランジ部の接合面に環状溝が形成され、この環状溝に嵌合されたOリング等のパッキンによって接続部分からの漏水を防止するようにしているが、両配管材のフランジ部によってゴム製のガスケットを接合面間で挟着して接続部分からの漏水を防止するようにしても構わない。
上記の実施の形態では、配管材が、ポリエチレン等の樹脂製であったが、鋳鉄などの金属製であっても構わない。
【0022】
上記の実施の形態では、本体部が直管状となっていたが、フランジ部材が装着可能な直管部分をフランジ部に隣接して備えていれば、曲がり部を備えていても構わない。
上記の実施の形態では、フランジ部材がステンレス製であったが、亜鉛メッキ鋼や鋳鉄製やこれらにFRPコーティングされたものでも構わない。
【0023】
上記の実施の形態では、一方の配管材側に配置される2つのフランジ部材の分割ラインが90°ずれるようになっていたが、分割ラインが本体部の管軸方向に重なり合わなければ、少しのずれでも構わない。
上記の実施の形態では、配管材ごとに2つずつフランジ部材が配置されていたが、3つ以上重ね合わせるようにしてもよいし、3つと2つというように重ね合わせる枚数が異なっていてもよい。
上記の実施の形態では、1枚のフランジ部材は、分割体同士が、分割線となる隙間を少し隔てた状態に配置されるようになっていたが、分割面を密着させるようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかる配管材の接続構造は、特に限定されないが、給水・給湯配管や排水配管に使用される。
【符号の説明】
【0025】
1a,1b 配管材
11 本体部
12 フランジ部
12a 接合面
12b 環状溝
13 フランジ部
13a 接合面
14 パッキン
2 フランジ部材
2a 隙間(分割線)
21 分割体
22 ボルト挿通孔
23本体部挿入孔
3 ボルト
4 ナット
5 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部の一端にフランジ部を有する第1の配管材と、フランジ部接合面を有する第2の配管材とが、前記フランジ部の接合面を前記フランジ部接合面に突き合わせた状態に配置され、
前記フランジ部より大径で、中央に本体部より大径の本体部挿通孔を有し、本体部挿通孔を囲むように、複数のボルト挿通孔が設けられた2つ割りの分割体からなるリング状のフランジ部材が、少なくとも前記第1の配管材の本体部に装着されるとともに、前記複数のボルト挿通孔に通したボルトを第2の配管材側に設けられた雌ねじに締め込むことによって、
前記第1の配管材と第2の配管材とが、前記フランジ部と前記フランジ部接合面と水密に圧接状態にされて接続される配管材の接続構造であって、
前記フランジ部材が、リングの中心軸に平行な分割線で分割した複数の分割体からなるとともに、2枚以上の前記フランジ部材が隣接するフランジ部材と分割体の分割線を周方向にずらせた状態で2枚以上重ね合わされて配置されていることを特徴とする配管材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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