説明

配管用シール材組成物

【課題】適当な硬度を有し、再シール性が良好な湿気硬化性の配管用シール材組成物の提供。
【解決手段】架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、シラン化合物(B)とを含有する配管用シール材組成物であって、
前記シラン化合物(B)が、下記式(1)で表される構造を有するジメトキシシランであり、
前記シラン化合物(B)の含有量が、架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.5〜18質量部である、配管用シール材組成物。


(式中、R1は炭素数1〜6の分岐していてもよいアルキル基またはビニル基を表し、R2はメチル基を表す。また、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性シリル基含有有機重合体を含有する湿気硬化性の配管用シール材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭内ガス、水道配管等の接合ネジ部分(目地)には、そのわずかな隙間から生じるガス漏れ等を防止すべく、配管工事の際に各種のシール材が塗布されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
また、この配管工事の際は、配管の向きを微調整する等の都合により、シール材を塗布してシール(密栓)した接合ネジ部分のネジを若干(180°程度以下)緩める場合がある。
そのため、このような配管工事においては、工期に時間を要し、調整期間が長くなる場合、例えば、シール材を用いて一度シールしてから2週間程度経過した場合であっても、接合ネジ部分のネジを若干緩めた際のシール性能(以下、「再シール性」という。)が十分に担保できることが要求されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシール材を塗布した場合にあっては、再シール性が劣る場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平3−122186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、特許文献1に記載のシール材を塗布した場合、特に、加水分解性シラン化合物としてメチルトリメトキシシラン等を用いた場合には、シール材の硬度が高くなり、シール性が劣る場合があることが分かった。
そこで、本発明は、適当な硬度を有し、再シール性が良好な湿気硬化性の配管用シール材組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の架橋性シリル基含有有機重合体と、所定の構造を有するシラン化合物とを、特定量含有する組成物が、適当な硬度を有し、再シール性に優れ、配管用シール材組成物として好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記(i)および(ii)を提供する。
【0008】
(i)架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、シラン化合物(B)とを含有する配管用シール材組成物であって、
上記シラン化合物(B)が、下記式(1)で表される構造を有するジメトキシシランであり、
上記シラン化合物(B)の含有量が、架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.5〜18質量部である、配管用シール材組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R1は炭素数1〜6の分岐していてもよいアルキル基またはビニル基を表し、R2はメチル基を表す。また、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0011】
(ii)上記シラン化合物(B)が、ジメチルジメトキシシランである上記(i)に記載の配管用シール材組成物。
【発明の効果】
【0012】
以下に説明するように、本発明によれば、適当な硬度を有し、再シール性が良好な湿気硬化性の配管用シール材組成物を提供することができ、工期に時間を要し、調整期間が長くなる配管工事においても有効に使用することができるため有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の配管用シール材組成物は、架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、シラン化合物(B)とを含有する配管用シール材組成物であって、該シラン化合物(B)が、上記式(1)で表される構造を有するジメトキシシランであり、該シラン化合物(B)の含有量が、架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.5〜18質量部である、配管用シール材組成物である。
次に、架橋性シリル基含有有機重合体(A)およびシラン化合物(B)について詳述する。
【0014】
<架橋性シリル基含有有機重合体(A)>
本発明の配管用シール材組成物に用いられる架橋性シリル基含有有機重合体(A)は、以下に示す架橋性シリル基を末端または側鎖に少なくとも1個有する有機重合体である。
ここで、架橋性シリル基とは、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基やシラノール基のように湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こす基のことであり、代表的なものを示すと、例えば、下記一般式(2)で表される基が挙げられる。
【0015】
【化2】

【0016】
上記一般式(2)中、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R53SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R3またはR4が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここで、R5は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR5は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
上記一般式(2)におけるR3およびR4としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;R5がメチル基やフェニル基などである(R53SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基;等が挙げられる。R3、R4、R5としてはメチル基が特に好ましい。
【0018】
また、上記一般式(2)中、Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示す。ここで、t個の下記一般式(3)で表される基におけるbは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。tは0〜19の整数を示す。ただし、a+t×b≧1を満足するものとする。
【0019】
【化3】

【0020】
上記一般式(2)におけるYで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよく、その具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。中でも、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基であるのが好ましく、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという理由からメトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
【0021】
このような架橋性シリル基のうち、下記一般式(4)で表される架橋性シリル基が、入手容易の点から好ましい。下記一般式(4)中、R4、Y、aは上述のR4、Y、aと同義である。
【0022】
【化4】

【0023】
上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)は、末端または側鎖に、上記一般式(2)で表される架橋性シリル基を少なくとも1個有する有機重合体であれば特に限定されず、その具体例としては、シリル基含有ポリエーテル、シリル基含有ポリエステル、シリル基含有ビニル系重合体、シリル基含有ポリエステル変性ビニル系重合体、シリル基含有ジアリルフタレート系重合体、シリル基含有ジアリールフタレート系重合体、シリル基含有ポリイソブチレン、シリル基含有エチレン・α−オレフィン系共重合体、これらの混合物およびこれらの共重合体(ブロック共重合体、グラフト共重合体)のシリル基含有有機重合体等が挙げられる。
【0024】
上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)がシリル基含有ポリエーテルである場合、主鎖のポリエーテルとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキシド、テトラヒドロフランなどを原料物質として、カチオン重合、アニオン重合の方法を用いて製造されるもの等が好適に例示される。
【0025】
また、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)がシリル基含有ポリエステルである場合、主鎖のポリエステルとしては、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸などのカルボン酸、その無水物、そのエステルまたはハロゲン化物と、化学量論的過剰のエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのポリオールと、を反応させることにより調整されるポリエステルポリオール類、または、ラクトン類の開環重合により得られるラクトンポリオール類等が好適に例示される。
【0026】
また、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)がシリル基含有ビニル系重合体である場合、ビニルモノマーとしてアクリルモノマーを主成分に用いることが、得られる架橋性シリル基含有有機重合体(A)を含有する本発明の配管用シール材組成物の耐候性および物性(伸び、モジュラス)が向上するため好ましい。
ここで、上記ビニルモノマーの具体例としては、特開2002−97449号公報に記載されているシクロヘキシルアクリレートおよび/またはブチルアクリレートを主成分とするビニルモノマーが挙げられる。また、上記公報では、上記ビニルモノマーとアルコキシシリル基含有モノマーとを共重合させることによって、シリル基含有ビニル系重合体が得られることが記載されている。更に、重合方法は、通常のラジカル重合に加え、特開昭57−502171号公報および特開昭59−6207号公報に記載されている高温連続重合を用いることもできる。
【0027】
また、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)が、シリル基含有ポリイソブチレンやシリル基含有エチレン・α−オレフィン系共重合体である場合、主鎖としては、それぞれ、特開平4−154816号公報、および特開2001−31719号公報に記載された方法により製造されたものが用いられる。
【0028】
これらのうち、本発明においては、主鎖が本質的にポリエーテルで、分子中に末端としてまたは側鎖に少なくとも1個のメチルジメトキシシリル基を有するポリエーテルオリゴマー、または、該ポリエーテルオリゴマーとメチルジメトキシシリル基を有するアクリルオリゴマーとの混合物を含む架橋性シリル基含有有機重合体を用いることが好ましい。
【0029】
また、本発明においては、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の数平均分子量は1000以上であるのが好ましく、6000〜30000であるのがより好ましい。数平均分子量がこの範囲であると、架橋性シリル基含有有機重合体(A)を含有する本発明の配管用シール材組成物の硬化前の粘度が低くなるため取り扱い易く、硬化後の強度、伸び、モジュラス等の物性が良好となるため好ましい。
【0030】
更に、本発明においては、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)として市販品をも用いることができる。
市販品としては、MSポリマー、サイリル、エピオン(いずれも鐘淵化学工業社製)、エクセスター(旭硝子社製)等が好適に挙げられる。
【0031】
<シラン化合物(B)>
本発明の配管用シール材組成物に用いられるシラン化合物(B)は、下記式(1)で表される構造を有するジメトキシシランである。
【0032】
【化5】

【0033】
式中、R1は炭素数1〜6の分岐していてもよいアルキル基またはビニル基を表し、R2はメチル基を表す。また、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
上記式(1)におけるR1のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。中でも、メチル基であるのが、シラン化合物(B)の上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)に対する反応性と加水分解性のバランスが良好となるため好ましい。
【0035】
本発明においては、上記シラン化合物(B)を上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して0.5〜18質量部含有することにより、得られる本発明の配管用シール材組成物が適当な硬度を有し、再シール性が良好となる。ここで、適当な硬度とは、シール性を確保できる変形性を有する硬度であるが、本発明においては、JIS−A硬度が20〜23であるのが好ましい。
この硬度が適当となる理由は、上記シラン化合物(B)の加水分解物が、反応性基(シラノール基)を2つ有するため、上記シラン化合物(B)と上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)との反応により上記シラン化合物(B)が主骨格中に取り込まれても、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)のみで硬化した場合と同様の硬度を維持できるためと考えられる。
この再シール性が良好となる理由は、詳細には明らかではないが、発明者は、次のように考えている。即ち、この特定構造のシラン化合物(B)を所定量含有することにより、水道配管等の接合ネジ部分に塗布した本発明の配管用シール材組成物の内部(深部)硬化が遅れるとともに、硬化している部分においてもネジ部分と接着していないため、シール材を塗布した後2週間程度経過した後に接合ネジ部分のネジを若干緩めた場合であっても、シール材の破壊が起こらないためであると考えられる。
また、この特定構造のシラン化合物(B)を所定量含有することにより、本発明の配管用シール材組成物の表面硬化性は、シラン化合物(B)を含有しない従来品(後述する比較例1)と比べて同等以上に優れる。
更に、この特定構造のシラン化合物(B)を所定量含有することにより、本発明の配管用シール材組成物の硬度、表面硬化性および内部硬化性は、一般的な湿気硬化型の硬化性樹脂組成物で用いられる脱水剤(例えば、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等)、硬化性調整剤(例えば、メタノール、オクチル酸等)、接着付与剤(例えば、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン等)を用いた例(後述する比較例4〜7)に比べて同等以上に優れる。
【0036】
上記シラン化合物(B)としては、具体的には、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
これらのうち、ジメチルジメトキシシランであるのが、シラン化合物(B)の添加前後の硬化物性(例えば、硬度、破断伸び等)が大きく変化しない理由から好ましい。
【0038】
本発明においては、上記シラン化合物(B)の含有量は、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.5〜18質量部であり、2〜15質量部であるのが好ましい。含有量がこの範囲であると、上述したように、得られる本発明の配管用シール材組成物が適当な硬度を有し、再シール性が良好となる。
【0039】
本発明の配管用シール材組成物は、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)および上記シラン化合物(B)に加え、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加剤、例えば、可塑剤、充填剤、硬化触媒、チクソトロピー性付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤を含有することができる。
一方、本発明の配管用シール材組成物は、接着付与剤(例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、各種シランカップリング剤等)を含有しないのが好ましい。これは、このような接着付与剤を含有していると、水道配管等の接合ネジ部分に塗布した本発明の配管用シール材組成物が、接合ネジ部分と接着してしまい、シール材を塗布した後2週間程度経過した後に接合ネジ部分のネジを若干緩めた場合にシール材の破壊が起こりやすくなると考えられるためである。
【0040】
可塑剤としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸およびこれらの誘導体;ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系、パラフィン系、ナフテン系および芳香族系のプロセスオイル;等が挙げられる。
これらのうち、フタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等のエステル系可塑剤が好ましい。
【0041】
具体的には、フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートが挙げられる。これらのうち、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレートが好ましい。
アジピン酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジぺート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジぺート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルが挙げられる。これらのうち、ジイソノニルアジペートが好ましい。
その他の可塑剤としては、例えば、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、トリオクチルフォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、リン酸トリクレジル、トリブチルトリメリテート(TBTM)、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油;分子量500〜10,000のブチルアクリレート等のアクリルオリゴマーが挙げられる。
【0042】
所望により添加する可塑剤の含有量は、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、10〜100質量部であるのが好ましく、15〜40質量部であるのがより好ましい。可塑剤の含有量がこの範囲であれば、得られる本発明の配管用シール材組成物の粘度が良好となり作業性を良好にすることができるため好ましい。
【0043】
充填剤としては、各種形状の有機または無機のもの、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ(ホワイトカーボン)、クレー・タルク類、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、生石灰、炭酸塩類(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、胡粉)、アルミナ水和物(例えば、含水水酸化アルミニウム)、ケイソウ土、硫酸バリウム(例えば、沈降性硫酸バリウム)、マイカ、硫酸アルミナ、リトポン、アスベスト、グラファイト、二硫化モリブデン、軽石粉、ガラス粉、ケイ砂、ゼオライト;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物などによる表面処理物;ガラスバルーン;樹脂バルーン;等が挙げられる。
【0044】
カーボンブラックとしては、例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
具体的には、上記SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、ISAFとしてはショウワブラックN220(昭和キャボット社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(中部カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シースト5(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱#5(三菱化学社製)、FTとしては旭サーマル(旭カーボン社製)、HTC#20(中部カーボン社製)、MTとしては旭#15(旭カーボン社製)等が例示される。
【0045】
炭酸カルシウムとしては、具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
また、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等により表面処理された表面処理炭酸カルシウムも用いることができる。具体的には、脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、カルファイン200(丸尾カルシウム社製)、ホワイトン305(重質炭酸カルシウム、白石カルシウム社製)、脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムとして、シーレッツ200(丸尾カルシウム社製)等が好適に用いられる。これらのうち、脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等で表面処理されたものが特に好ましい。表面処理炭酸カルシウムは、粘度を高くするため形状保持性および作業性に寄与し、また、表面が疎水性であるため貯蔵安定性に寄与する。
【0046】
シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、無水微粉ケイ酸、含水微粉ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
クレーとしては、具体的には、例えば、ろう石クレー、カオリン質クレー(カオリナイト、ハロイサイト)、パイロフィライト質クレー、セリサイト質クレー、焼成クレー等が挙げられる。
【0047】
所望により添加する充填剤の含有量は、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、50〜200質量部であるのが好ましく、80〜150質量部であることがより好ましい。充填剤の含有量がこの範囲であれば、得られる本発明の配管用シール材組成物の作業性を確保でき、補強効果にも優れるため好ましい。
【0048】
硬化触媒としては、例えば、金属触媒、第三級アミン触媒が挙げられる。
金属触媒としては、具体的には、例えば、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫シリレート、オクチル酸ビスマス等が挙げられる。
【0049】
第三級アミン触媒としては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルアミルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリアリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、4,4′−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス−モルフォリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−1、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、トリエタノールアミン、N,N′−ジメチルピペラジン、テトラメチルブタンジアミン、ビス(2,2−モルフォリノエチル)エーテル、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ビス(2,2−モルフォリノエチル)エーテル、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルが好ましい。
【0050】
所望により添加する硬化触媒の含有量は、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0051】
チクソトロピー性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
【0052】
顔料としては、無機顔料および有機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、具体的には、例えば、亜鉛華、酸化チタン、弁柄、酸化クロム、鉄黒、複合酸化物(例えば、チタンエロー系、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック)などの酸化物;黄鉛、モリブデートオレンジなどのクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化亜鉛などの硫化物;硫酸バリウムなどの硫酸塩;塩酸塩;群青などのケイ酸塩;炭酸カルシウムなどの炭酸塩;マンガンバイオレットなどのリン酸塩;黄色酸化鉄などの水酸化物;カーボンブラックなどの炭素;アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉;チタン被覆雲母;等が挙げられる。
【0053】
有機顔料としては、具体的には、例えば、モノアゾレーキ系(例えば、レーキレッドC、パーマネンレッド2B、ブリリアントカーミン6B)、モノアゾ系(例えば、トルイジンレッド、ナフトールレッド、ファストエローG、ベンズイミダロンボルドー、ベンズイミダゾロンブラウン)、ジスアゾ系(例えば、ジスアゾエローAAA、ジスアゾエローHR、ピラゾロンレッド)、縮合アゾ系(例えば、縮合アゾエロー、縮合アゾレッド、縮合アゾブラウン)、金属錯塩アゾ系(例えば、ニッケルアゾエロー)などのアゾ系顔料;銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、臭素化銅フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;塩基性染料レーキ(例えば、ローダミン6レーキ)などの染付顔料;アンスラキノン系(例えば、フラバンスロンエロー、ジアンスラキノリルレッド、インダンスレンブルー)、チオインジゴ系(例えば、チオインジゴボルドー)、ペリノン系(例えば、ペリノンオレンジ)、ペリレン系(例えば、ペリレンスカーレット、ペリレンレッド、ペリレンマルーン)、キナクリドン系(例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット)、ジオキサジン系(例えば、ジオキサジンバイオレット)、イソインドリノン系(例えば、イソインドリノンエロー)、キノフタロン系(例えば、キノフタロンエロー)、イソインドリン系(例えば、イソインドリンエロー)、ピロール系(例えば、ピロールレッド)などの縮合多環顔料;銅アゾメチンエローなどの金属錯塩アゾメチン;アニリンブラック;昼光蛍光顔料;等が挙げられる。
【0054】
染料としては、具体的には、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、弁柄等が挙げられる。
老化防止剤は、具体的には、例えば、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、2,2,4−トリメチル−1,3−ジヒドロキノリン(TMDQ)、N−フェニル−1−ナフチルアミン(PAN)、ヒンダードフェノール系化合物等が挙げられる。
酸化防止剤は、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)などのヒンダードフェノール系化合物;亜リン酸トリフェニル:等が挙げられる。
帯電防止剤は、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩、アミンなどのイオン性化合物;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物;等が挙げられる。
難燃剤は、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ジエチルビスヒドロキシエチルアミノホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0055】
分散剤は、具体的には、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、リノール酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩;ステアリン酸エチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、ステアリン酸モノグリセライドなどの脂肪酸エステル;等が挙げられる。
脱水剤は、具体的には、例えば、メチルスアテアロキシポリシロキサン等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、具体的には、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤、フォルムアミジン系紫外線吸収剤、トリアジン環系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0056】
本発明の配管用シール材組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)および上記シラン化合物(B)ならびに所望により含有させる各種添加剤を混合し、ロール、ニーダー、押出し機、万能撹拌機等を用いて室温下または加熱下(40〜60℃、例えば40℃)で十分に混合し、均一に分散させることにより製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1〜3および比較例1〜10)
架橋性シリル基含有有機重合体(A1)100質量部に対して、下記表1に示す組成成分(質量部)を添加し、高粘度用混合ミキサーで均一に分散させて実施例1〜3、比較例1〜10の配管用シール材組成物を調製した。
得られた各配管用シール材組成物について、以下に示すJIS−A硬度、表面硬化性、内部硬化性および再シール性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0058】
<JIS−A硬度>
得られた各配管用シール材組成物を温度23℃、相対湿度50%の条件で50%RHで7日間養生した後、平板サンプル(サイズ:厚さ2mm×縦15cm×横15cm)を切り出した。切り出した平板サンプルを5枚重ね、JIS K6301-1995(加硫ゴム物理試験方法)に準拠して、JIS−A硬度を測定した。
その結果、JIS−A硬度が20〜23であるものを「○」と評価し、JIS−A硬度が20未満であるか23超であるものを「×」と評価した。なお、下記表1中、括弧内の数値は、JIS−A硬度の測定値である。
【0059】
<表面硬化性>
得られた各配管用シール材組成物を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で硬化させ、JIS A5758に準じて、タックフリータイム(時間)を測定した。タックフリータイムが5〜10時間であれば、従来品である比較例1と同等程度の表面硬化性を有していると判断できる。
【0060】
<内部硬化性>
(1)23℃×50%RH×7日
得られた各配管用シール材組成物を、温度23℃、相対湿度50%の条件で硬化させ、そのまま1週間養生させた後の表面から内部への硬化の進行を目視により確認し、硬化が進行している深さを測定した。
測定の結果、いずれの組成物においても、その硬化の進行が5mm以下となるため内部硬化性が十分に遅く、「○」と評価できた。
【0061】
(2)23℃×50%RH×14日
得られた各配管用シール材組成物を、温度23℃、相対湿度50%の条件で硬化させ、そのまま2週間養生させた後の表面から内部への硬化の進行を目視により確認し、硬化が進行している深さを測定した。
測定の結果、その硬化の進行が5mm以下となるものを「○」と評価し、5mm超となるものを内部硬化性が速すぎるものとして「×」と評価した。
【0062】
<再シール性>
再シール性は、内部硬化性の評価結果から推定した。即ち、2週間養生させた後の内部硬化性も「○」と評価できるものは、上述したようにシール材の破壊も起こらないと考えられることから、再シール性が良好であると評価できる。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
上記表1中の各成分は、以下のものを使用した。
・架橋性シリル基含有有機重合体(A1):変成シリコーン(MSP S203、鐘淵化学工業社製)
・炭酸カルシウム:カルファイン200(丸尾カルシウム社製)
・可塑剤:DINP(ジェイ・プラス社製)
・ジブチル錫ジラウレート:関東化学社製試薬
【0066】
・シラン化合物(B1):ジメチルジメトキシシラン(KBM−22、信越化学工業社製)
・シラン化合物1:ビニルトリメトキシシラン(KBM−1003、信越化学工業社製)
・シラン化合物2:メチルトリメトキシシラン(KBM−13、信越化学工業社製)
・シラン化合物3:ビニルトリエトキシシラン(KBE−1003、信越化学工業社製)
・シラン化合物4:3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業社製)
・硬化性調整剤1:メタノール(関東化学社製試薬)
・硬化性調整剤2:オクチル酸(関東化学社製試薬)
【0067】
上記表1から明らかなように、特定構造のシラン化合物(B)を所定量含有する実施例1〜3で得られた配管用シール材組成物は、シラン化合物(B)を含有しない従来品に相当する比較例1で得られた配管用シール材組成物に比べて、硬度および表面硬化性を同等に保持しつつ、14日養生した後の内部硬化性が遅くなり、再シール性が良好となることが分かった。
また、シラン化合物(B)を所定量含有しない比較例2は、硬度および表面硬化性を同等に保持するものの、14日養生した後の内部硬化性が速く、再シール性が劣ることが分かった。同様に、シラン化合物(B)を所定量以上含有する比較例3は、硬度が低くなり、14日養生した後の内部硬化性が速く、再シール性が劣ることが分かった。
また、シラン化合物(B)以外のシラン化合物を含有する比較例4および5は、硬度および表面硬化性を同等に保持するものの、14日養生した後の内部硬化性が速く、再シール性が劣ることが分かった。
更に、シラン化合物(B)以外の硬化性調整剤1を含有する比較例6は、硬度を同等に保持するものの、14日養生した後の内部硬化性が速く、再シール性が劣ることが分かった。同様に、シラン化合物(B)以外の硬化性調整剤2を含有する比較例7は、硬度が低くなり、14日養生した後の内部硬化性が速く、再シール性が劣ることが分かった。また、比較例6および7は、いずれも表面硬化性が劣ることが分かった。
また、シラン化合物(B)以外のシラン化合物を含有する比較例8〜10は、いずれも硬度が高くなり、14日養生した後の内部硬化性が速く、再シール性が劣ることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、シラン化合物(B)とを含有する配管用シール材組成物であって、
前記シラン化合物(B)が、下記式(1)で表される構造を有するジメトキシシランであり、
前記シラン化合物(B)の含有量が、架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.5〜18質量部である、配管用シール材組成物。
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜6の分岐していてもよいアルキル基またはビニル基を表し、R2はメチル基を表す。また、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記シラン化合物(B)が、ジメチルジメトキシシランである請求項1に記載の配管用シール材組成物。

【公開番号】特開2008−120944(P2008−120944A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308078(P2006−308078)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】