説明

配管用断熱材の取付方法

【課題】断熱材の外側に巻き付けられるシートの使用量を少なくでき且つ結露水の発生を確実に防止できる、配管用断熱材の取付方法を提案する。
【解決手段】配管(5)の外周に所定の間隔をおいて外嵌する2つの筒状断熱材(30,40)の間の配管(5)の露出部位に、筒状の断熱材を軸方向に切断してC型断面形状としたC型断熱材(50)を外嵌させ、C型断熱材(50)の軸方向の両端部と2つの筒状断熱材(30,40)の各々の軸方向の端部とをそれぞれ接着剤で接着し、各筒状断熱材(30,40)の端部とC型断熱材(50)の端部との間の各接着部(31,41)の外周に、各接着部(31,41)に沿うように細長のシート(21)をそれぞれ巻き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の外周に外嵌される断熱材の取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルが行われる空気調和装置等の冷媒配管等には、配管の外周表面での結露水の発生等を防止するために断熱材等が取り付けられることがある。
【0003】
特許文献1には、この種の断熱材の取付方法が開示されている。特許文献1では、冷媒配管の外周に2つの筒状の断熱材を所定の間隔をおいて外嵌させた状態で、これら2つの筒状断熱材の間にC型断面形状の断熱材が外嵌される。より具体的に、このC型断面の断熱材(以下、C型断熱材という)は、筒状の断熱材について軸方向の両端に亘って直線状に切断部が形成されて構成される。C型断熱材は、この切断部を通じて、2つの筒状断熱材の間の冷媒配管の露出部位に外嵌される。
【0004】
特許文献1では、このような状態から、幅広のシートをC型断熱材の外周において略一周させる。この幅広のシートは、C型断熱材の軸方向長さよりも長い幅を有している。このため、この幅広のシートを一周させることで、C型断熱材の両端部と各筒状断熱材の端部との間の隙間や、C型断熱材の切断部の隙間が閉塞される。これにより、特許文献1では、このようなシートを巻き付けることにより、各断熱材の隙間から冷気が漏れて結露が生じてしまうのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−308072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1に開示された断熱材の取付方法では、C型断熱材の両端に跨るように幅広のシートを巻き付けている。このため、この方法では、一連の作業によって消費するシートの量が多くなってしまい、作業コストの増大を招く。また、このようにして断熱材の外周におけるシートの巻き付け部の面積が大きくなると、断熱材に対して余分な締め付け力が作用してしまう。その結果、このような締め付け力に起因して、断熱材の内部の空隙が縮小してしまい、断熱効果の低下を招いて結露を充分に防止できなくなる、という問題も生じ得る。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、断熱材の外側に巻き付けられるシートの消費量を少なくでき且つ結露水の発生を確実に防止できる、配管用断熱材の取付方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、配管用断熱材の取付方法を対象とする。そして、この配管用断熱材の取付方法は、配管(5)の外周に所定の間隔をおいて外嵌する2つの筒状断熱材(30,40)の間の配管(5)の露出部位に、筒状の断熱材を軸方向に切断してC型断面形状としたC型断熱材(50)を外嵌させる外嵌工程と、上記C型断熱材(50)の軸方向の両端部と上記2つの筒状断熱材(30,40)の各々の軸方向の端部とをそれぞれ接着剤で接着する端部接着工程と、上記各筒状断熱材(30,40)の端部と上記C型断熱材(50)の端部との間の各接着部(31,41)の外周に、該各接着部(31,41)に沿うように細長のシート(21)をそれぞれ巻き付ける巻き付け工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、外嵌工程において、配管(5)の外周に外嵌する2つの筒状断熱材(30,40)の間に、軸直角断面がC型形状となるC型断熱材(50)を外嵌させる。次の端部接着工程では、C型断熱材(50)の両端部に、各筒状断熱材(30,40)の端部をそれぞれ接着剤によって接着する。巻き付け工程では、各筒状断熱材(30,40)とC型断熱材(50)との間の2つの接着部(31,41)について、各接着部(31,41)の外周にそれぞれ細長のシート(21)を巻き付ける。このように、各接着部(31,41)の外周にそれぞれ細長のシート(21)を巻き付けることで、シート(21)の消費量を低減できる。また、各接着部(31,41)にそれぞれシート(21)を巻き付けることで、C型断熱材(50)の端部と筒状断熱材(30,40)の端部との間の密着性が高まる。このため、接着部(31,41)の接着性能が向上する。従って、C型断熱材(50)の端部と筒状断熱材(30,40)の端部との間の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0010】
また、各接着部(31,41)の外周に細長のシート(21)を巻き付けるようにすると、幅広のシートを巻き付ける場合と比較して、C型断熱材(50)や筒状断熱材(30,40)に作用する締め付け力を低減できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記C型断熱材(50)の切断部(51)の切断面を互いに接着する切断面接着工程と、上記C型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)の外側に、該接着部(52)に沿うように細長のシート(21)を貼り付ける貼付工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、切断面接着工程において、C型断熱材(50)の切断部(51)の切断面が互いに接着される。これにより、C型断熱材(50)は、実質的には、筒状の断熱材を構成することになる。貼付工程では、C型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)の外側に、該接着部(52)に沿うように細長のシート(21)が貼り付けられる。このように、切断部(51)に沿って軸方向に細長のシート(21)を貼り付けることで、シート(21)の消費量を低減できる。また、C型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)にシート(21)を貼り付けることで、切断部(51)の両者の切断面の密着性が高まる。このため、接着部(52)の接着性能が向上する。従って、C型断熱材(50)の切断部(51)の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0013】
また、C型断熱材(50)の切断部(51)に沿うように細長のシート(21)を貼り付けるようにすると、シートを周方向に巻き付ける場合と比較して、C型断熱材(50)に作用する締め付け力を大幅に低減できる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、上記貼付工程では、上記細長のシート(21)がC型断熱材(50)の切断部(51)の軸方向両端に亘って貼り付けられ、上記巻き付け工程では、上記貼付工程において上記C型断熱材(50)の切断部(51)に貼り付けられたシート(21)の両端部の外側に、細長のシート(21)が巻き付けられることを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、貼付工程において、細長のシート(21)がC型断熱材(50)の軸方向両端に跨るように貼り付けられる。そして、貼付工程の後の巻き付け工程では、C型断熱材(50)の切断部(51)に貼り付けられたシート(21)の両端部の外側に、細長のシート(21)が巻き付けられる。これにより、切断部(51)側に貼り付けられたシート(21)の両端部が剥がれ落ちてしまうことが防止される。
【0016】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記シート(21)と上記断熱材(30,40,50)とは、いずれも発泡ポリエチレンによって構成されることを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、各断熱材(30,40,50)及びシート(21)が、それぞれ発泡ポリエチレンによって構成される。このように、断熱材(30,40,50)とシート(21)とを同じ材質にすると、温度変化に伴う熱収縮量や熱膨張量も、断熱材(30,40,50)とシート(21)とで同程度となる。このため、断熱材(30,40,50)からシート(21)が剥がれ落ちてしまうことを防止し易くなる。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、上記接着剤は、シクロヘキサンとスチレンブタジエンゴムとを含んでいることを特徴とする。
【0019】
第5の発明では、接着剤が、シクロヘキサンとスチレンブタジエンゴムとを含む材料で構成される。これにより、発泡ポリエチレンから成る断熱材(30,40,50)やシート(21)に対する接着剤の接着性能が更に向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、C型断熱材(50)の端部と各筒状断熱材(30,40)の端部とをそれぞれ接着した後、2つの接着部(31,41)にそれぞれ細長のシート(21)を巻き付けている。このため、従来例と比較して、シート(21)の消費量を大幅に削減できる。また、接着部(31,41)の外周にシート(21)を巻き付けることで、C型断熱材(50)の端部と筒状断熱材(30,40)の端部との間の密着性を高め、接着性能を向上できる。従って、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)との間の隙間を確実に塞ぐことができる。その結果、このような隙間から冷気が漏れて結露水が発生してしまうことを防止できる。
【0021】
更に、本発明では、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)の接着部(31,41)の外周に細長のシート(21)を巻き付けることで、C型断熱材(50)や筒状断熱材(30,40)に作用する締め付け力を抑えることができる。このため、このような締め付けに起因して、各断熱材(30,40,50)の内部の空隙が縮小してしまうことを防止できる。その結果、各断熱材(30,40,50)では、所望とする断熱効果を得ることができ、結露水の発生を一層効果的に防止できる。
【0022】
また、このようにC型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)との接着部(31,41)の外周にシート(21)を巻き付けることで、接着部(31,41)の接着剤が充分に乾燥していなくても、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)とを密着させた状態で保持できる。従って、接着部(31,41)の接着剤の乾燥を待つことなく、別の作業を行うことができる。更に、接着部(31,41)に巻き付けるシート(21)を細長形状とすることで、幅広のシートと比較して、接着部(31,41)の接着剤の自然乾燥を促すこともできる。
【0023】
第2の発明によれば、C型断熱材(50)の切断部(51)の切断面を接着した後、この切断部(51)の接着部(52)に細長のシート(21)を貼り付けている。このため、C型断熱材(50)の全周に亘ってシートを巻き付ける場合と比較して、シート(21)の消費量を大幅に削減できる。また、接着部(52)の外側に細長のシート(21)を貼り付けることで、切断部(51)の2つの切断面同士の密着性を高め、接着性能を向上できる。従って、C型断熱材(50)の切断部(51)の隙間を確実に塞ぐことができる。その結果、このような隙間から冷気が漏れて結露水が発生してしまうことを防止できる。
【0024】
更に、本発明では、C型断熱材(50)の切断部(51)に沿うように軸方向に細長のシート(21)を貼り付けることで、C型断熱材(50)に作用する締め付け力を効果的に抑制できる。このため、このような締め付けに起因して、各断熱材(30,40,50)の内部の空隙が縮小してしまうことを防止できる。その結果、各断熱材(30,40,50)では、所望とする断熱効果を得ることができ、結露水の発生を一層効果的に防止できる。
【0025】
また、このようにC型断熱材(50)の切断部(51)にシート(21)を貼り付けることで、接着部(52)の接着剤が充分に乾燥していなくても、C型断熱材(50)の切断部(51)の切断面同士を密着させた状態で保持できる。従って、接着部(52)の接着剤の乾燥を待つことなく、別の作業を行うことができる。更に、接着部(52)に貼り付けるシート(21)を細長形状とすることで、幅広のシートと比較して、接着部(52)の接着剤の自然乾燥を促すこともできる。
【0026】
第3の発明によれば、C型断熱材(50)の切断部(51)の両端に亘ってシート(21)を貼り付けた後、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)の接着部(31,41)の外周にシート(21)を巻き付けている。このため、切断部(51)側のシート(21)の両端の外側にシート(21)が巻き付けられるため、切断部(51)側のシート(21)の両端が剥がれ落ちてしまうのを確実に防止できる。
【0027】
第4の発明では、各断熱材(30,40,50)及びシート(21)をそれぞれ同じ発泡ポリエチレンで構成しているため、断熱材(30,40,50)及びシート(21)について、温度変化に起因する熱変形量を同意程度とすることができる。従って、断熱材(30,40,50)の外側にシート(21)を長期に亘って保持することができる。その結果、冷気漏れに起因する結露水の発生を一層効果的に防止できる。
【0028】
また、第5の発明では、接着剤が、シクロヘキサンとスチレンブタジエンゴムとを含んでいる材料となっているため、発泡ポリエチレンから成る各断熱材(30,40,50)の接着性能を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、実施形態に係る補修シートユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態に係る冷媒配管、及び冷媒配管の外周に嵌め込まれた断熱材の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、実施形態に係るC型断熱材の軸直角方向の断面図である。
【図4】図4は、実施形態に係る冷媒配管用の断熱材の取付方法を説明する図であり、図4(A)は、冷媒配管に2つの筒状断熱材を取り付けた状態を示し、図4(B)は、冷媒配管にC型断熱材を取り付ける直前の状態を示し、図4(C)は、冷媒配管にC型断熱材を取り付けた直後の状態を示し、図4(D)は、C型断熱材の切断部を接着した状態を示し、図4(E)は、C型断熱材の両端部と各筒状断熱材の端部とを接着した状態を示し、図4(F)は、C型断熱材の切断部にシート本体を貼り付けた状態を示し、図4(G)は、C型断熱材と筒状断熱材の各接着部にそれぞれシート本体を巻き付けた状態を示している。
【図5】図5は、本実施形態に係る補修シートを用いた冷媒配管用の断熱材の他の取付方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
実施形態に係る配管用断熱材の取付方法では、補修シート(20)と複数の断熱材(30,40,50)とが用いられる。まず、実施形態に係る補修シート(20)、及び断熱材(30,40,50)の構成について説明する。
【0032】
〈補修シート〉
図1に示すように、補修シート(20)は、補修シートユニット(10)に組み込まれている。補修シートユニット(10)は、補修シート(20)が収容されるケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)は、扁平な直方体形であって、厚み方向に直角な断面形状が略正方形となる箱形に構成されている。ケーシング(11)には、その高さ方向の一端面(図1における上端面)に、引出口(12)が形成されている。引出口(12)は、ケーシング(12)の上端面について、略コの字状に切り込みを入れることで形成される。つまり、引出口(12)には、コの字状の切り込みの内側に、長方形板状の舌部(13)が形成されている。
【0033】
ケーシング(11)には、その厚さ方向の一方の端面(図1における手前側の面)に、覗き窓(14)が形成されている。覗き窓(14)は、ケーシング(11)の手前側の面の中心部から径方向外側(図1における右方向)に向かって延びている。覗き窓(14)の内部には、ロール状に巻かれた状態の補修シート(20)が位置している。これにより、使用者は、覗き窓(14)を通じて補修シート(20)の残量を確認することができる。
【0034】
また、ケーシング(11)には、その厚さ方向の両端面の角部近傍に、保持穴(15,15)が形成されている。2つの保持穴(15,15)は、ケーシング(11)の内部の補修シート(20)に対して干渉しないように、互いに対向して配置されている。この2つの保持穴(15,15)に樹脂製の結束バンド(18)等を挿通させることで、補修シートユニット(10)の持ち運び等が簡便となる。
【0035】
補修シート(20)は、細長の帯状ないしシート状に形成されている。補修シート(20)は、ロール状に巻き付けられた状態で、ケーシング(11)の内部に収容される。補修シート(20)の一端は、引出口(12)を通じてケーシング(11)の外部に引き出される。補修シート(20)を引っ張ると、ケーシング(11)内で補修シート(20)が回動し、補修シート(20)の一端が更に引き出される。
【0036】
補修シート(20)は、シート本体(21)と剥離紙(22)とで構成されている。シート本体(21)は、その一方の面(図1における上面)が粘着性を有するシール面(23)を構成している。剥離紙(22)は、シート本体(21)のシール面(23)の全域を覆うように該シール面(23)に貼り付けられている。
【0037】
補修シート(20)のシート本体(21)は、その厚み寸法が約2mm、その幅寸法が約50mm、その長さ寸法が約10mとなっている。また、補修シート(20)のシート本体(21)は、発泡ポリエチレンによって構成されている。
【0038】
〈断熱材〉
図2に示すように、本実施形態に係る断熱材の取付方法では、冷媒配管(5)の外周面に外嵌される、少なくとも3つの断熱材(30,40,50)が用いられる。具体的に、この取付方法では、第1の筒状断熱材(30)と、第2の筒状断熱材(40)と、C型断熱材(50)とが用いられる。これらの断熱材(30,40,50)は、その外周面に複数の凹部と凸部とが交互に形成される、いわゆるディンプル構造となっている(図3を参照。なお、図3では、各断熱材(30,40,50)のうちC型断熱材(50)の軸直角断面を代表して表している)。断熱材(30,40,50)では、その表面において水分が結露した場合にも、このディンプル構造に起因する表面張力によって、断熱材(30,40,50)の表面に水分を保持できる。従って、結露した水分が断熱材(30,40,50)の外表面より下方に滴下してしまうことが防止される。また、各断熱材(30,40,50)は、補修シート(20)のシート本体(21)と同様、発泡ポリエチレンによって構成されている。
【0039】
図2に示すように、第1筒状断熱材(30)及び第2筒状断熱材(40)は、冷媒配管(5)の外周面に外嵌される正円筒状に形成されている。また、C型断熱材(50)は、これらの第1筒状断熱材(30)や第2筒状断熱材(40)と同種となる筒状の断熱材について、その一部を軸方向の両端に亘って直線的に切断したものである。つまり、C型断熱材(50)は、その軸直角断面がC型断面形状となるように切断部(51)が形成されている。
【0040】
−断熱材の取付方法−
次いで、本実施形態に係る冷媒配管用の断熱材(30,40,50)の取付方法について、図4を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
まず、図4(A)〜(C)においては、冷媒配管(5)の外周面に断熱材(30,40,50)を外嵌させる外嵌工程が行われる。具体的に、まず、冷媒配管(5)の外周面に所定の間隔をおいて第1筒状断熱材(40)と第2筒状断熱材(40,50)とを外嵌させる状態とする。なお、ここで、2つの筒状断熱材(40,50)の間では、2つの冷媒配管(5a,5b)の端部がろう付けによって接合される(図4(A)を参照)。次いで、2つの筒状断熱材(40,50)の間における冷媒配管の露出部位の外周面に、C型断熱材(50)を外嵌させる。この際、C型断熱材(50)の切断部(51)を通じて、該C型断熱材(50)の内部に冷媒配管(5)が嵌め込まれる(図4(B)及び図4(C)を参照)。
【0042】
次に、図4(D)〜(E)においては、各断熱材(30,40,50)の間に形成される隙間を埋めるための接着工程が行われる。具体的に、まず、C型断熱材(50)においては、軸方向の両端に亘って形成される切断部(51)を接着する。即ち、図4(D)に示すように、C型断熱材(50)の切断部(51)の切断面を互いに接着する切断面接着工程が行われる。これにより、C型断熱材(50)は、実質的には筒状の断熱材となる。次いで、C型断熱材(50)の軸方向の両端部と、該C型断熱材(50)に隣り合う各筒状断熱材(30,40)の端部とをそれぞれ接着する。即ち、図4(E)に示すように、C型断熱材(50)の軸方向の両端部と2つの筒状断熱材(30,40)の各々の軸方向の端部とをそれぞれ接着剤で接着する端部接着工程が行われる。
【0043】
なお、この接着工程で用いられる接着剤は、スチレンブタジエンゴム、石油樹脂、及び老化防止剤、及び有機溶剤を主成分とする材料で構成されている。ここで、この接着剤では、接着剤の全量に対する、スチレンブタジエンゴム、石油樹脂、及び老化防止剤の混合材料の質量%が、35〜45%であることが好ましい。また、この接着剤では、接着剤の全量に対する、上記有機溶剤の質量%が、55〜65%であることが好ましい。更に、この有機溶剤としては、シクロヘキサンとアセトンの混合材料であることが好ましい。更に、有機溶剤の全量に対する、シクロヘキサンの質量%は、50〜60%であることが好ましく、有機溶剤の全量に対する、アセトンの質量%は、1〜5%であることが好ましい。
【0044】
以上のような接着工程が行われた後には、C型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)と、C型断熱材(50)と各筒状断熱材(30,40)との間の接着部(31,41)とにおいて、接着剤が完全に乾燥する前に、図4(F)〜(G)に示すような、シール工程が行われる。
【0045】
具体的に、まず、図1に示す補修シート(20)をケーシング(11)から引き出し、この補修シート(20)を所定の長さL1として切り離す。この補修シート(20)の長さL1は、C型断熱材(50)の軸方向の全長と同じか、それよりも若干長めとするのが良い。また、この補修シート(20)の長さL1は、補修シート(20)の幅Wよりも長くなっている。
【0046】
次いで、長さL1とした補修シート(20)について、シート本体(21)から剥離紙(22)を剥がした後、シート本体(21)のシール面(23)をC型断熱材(50)の切断部(51)に貼り付ける。即ち、図4(F)に示すように、長さL1としたシート本体(21)をC型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)の外側に貼り付ける貼付工程が行われる。この貼付工程では、シート本体(21)が、C型断熱材(50)の軸方向の両端に跨るように貼り付けられる。
【0047】
以上のような貼付工程により、C型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)が、シート本体(21)によって確実に覆われると共に、切断部(51)の切断面同士の密着性が高まる。よって、切断部(51)の接着部(52)における接着剤の接着効果が高まり、切断部(51)の隙間を確実に埋めることができる。
【0048】
次いで、図1に示す補修シート(20)をケーシング(11)から引き出し、所定の長さL2として切り離す。この補修シート(20)の長さL2は、筒状断熱材(30,40)若しくはC型断熱材(50)の外周の長さと同じか、それよりも若干長めとするのが良い。また、この補修シート(20)の長さL2は、補修シート(20)の幅Wよりも長くなっている。
【0049】
次いで、長さL2とした補修シート(20)について、シート本体(21)から剥離紙(22)を剥がした後、シート本体(21)のシール面(23)をC型断熱材(50)と例えば第1筒状断熱材(30)との間の接着部(31)の外周面に貼り付ける。同様の手順で、長さL2の補修シート(20)をもう一枚用意し、この補修シート(20)のシート本体(21)のシール面(23)をC型断熱材(50)と第2筒状断熱材(40)との間の接着部(41)の外周面にも貼り付ける。即ち、図4(G)に示すように、各筒状断熱材(30,40)の軸端とC型断熱材(50)の軸端との間の各接着部(31,41)の外周に、該各接着部(31,41)に沿うようにそれぞれ細長のシート本体(21)を巻き付ける巻き付け工程が行われる。なお、巻き付け工程では、第2筒状断熱材(40)の接着部(41)にシート本体(21)を巻き付けた後、第1筒状断熱材(30)の接着部(31)にシート本体(21)を巻き付けても良い。
【0050】
また、巻き付け工程においては、上述した貼付工程によってC型断熱材(50)の切断部(51)に貼り付けられた長さL1のシート本体(21)の両端部の外側に、長さL2のシート本体(21)を巻き付けると良い。このようにすることで、切断部(51)側に貼り付けられたシート本体(21)の両端部が、断熱材(30,40,50)から剥がれてしまうことを確実に回避できる。
【0051】
以上のような巻き付け工程により、各筒状断熱材(30,40)とC型断熱材(50)との軸方向間における接着部(31,41)が、シート本体(21)によって確実に覆われると共に、これらの接着部(31,41)の密着性が高まる。よって、これらの接着部(31,41)における接着剤の接着効果が高まり、各筒状断熱材(30,40)とC型断熱材(50)との間の隙間を確実に埋めることができる。
【0052】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、筒状断熱材(30,40)の端部とC型断熱材(50)の端部との間の各接着部(31,41)や、C型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)に、それぞれ細長のシート本体(21,21,21)を貼り付けるようにしている。このため、従来例と比較すると、シート(21)の消費量を大幅に削減できる。また、このように各接着部(31,41,52)の外側にシート本体(21)を貼り付けることで、各接着部(31,41,52)における接着性能の向上を図ることができる。従って、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)との間の隙間や、C型断熱材(50)の切断部(51)の隙間を確実に塞ぐことができる。その結果、このような隙間から冷気が漏れて結露水が発生してしまうことを防止できる。
【0053】
また、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)の接着部(31,41)の外周に細長のシート本体(21)を巻き付けることで、C型断熱材(50)や筒状断熱材(30,40)に作用する締め付け力を抑えることができる。加えて、C型断熱材(50)の切断部(51)に沿うように軸方向に細長のシート本体(21)を貼り付けることで、C型断熱材(50)に作用する締め付け力を効果的に抑制できる。このため、本実施形態では、シート本体(21)の締め付け力に起因して、各断熱材(30,40,50)の内部の空隙が縮小してしまうことを効果的に防止できる。その結果、各断熱材(30,40,50)では、所望とする断熱効果を得ることができ、結露水の発生を一層効果的に防止できる。
【0054】
また、このようにC型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)との周囲にシート本体(21)を巻き付けることで、接着部(31,41)の接着剤が充分に乾燥していなくても、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)とを密着させた状態で保持できる。従って、接着部(31,41)の接着剤の乾燥を待つことなく、別の作業を行うことができる。更に、接着部(31,41)に巻き付けるシート本体(21)を細長形状とすることで、幅広のシートと比較して、接着部(31,41)の接着剤の自然乾燥を促すこともできる。
【0055】
同様に、C型断熱材(50)の切断部(51)にシート本体(21)を貼り付けることで、接着部(52)の接着剤が充分に乾燥していなくても、C型断熱材(50)の切断部(51)の切断面同士を密着させた状態で保持できる。従って、接着部(52)の接着剤の乾燥を待つことなく、別の作業を行うことができる。更に、接着部(52)に貼り付けるシート本体(21)を細長形状とすることで、幅広のシートと比較して、接着部(52)の接着剤の自然乾燥を促すこともできる。
【0056】
また、上記実施形態では、C型断熱材(50)の切断部(51)の両端に亘ってシート本体(21)を貼り付けた後(図4(F))、C型断熱材(50)と筒状断熱材(30,40)の接着部(31,41)の外周にシート本体(21)を巻き付けている(図4(G))。このため、切断部(51)側のシート本体(21)の両端の外側にシート本体(21)が巻き付けられるため、切断部(51)側のシート本体(21)の両端が剥がれ落ちてしまうのを確実に防止できる。
【0057】
更に、各断熱材(30,40,50)及びシート本体(21)は、それぞれ同じ材料となる発泡ポリエチレンであるため、各断熱材(30,40,50)及びシート本体(21)について、温度変化に起因する熱変形量を同意程度とすることができる。従って、断熱材(30,40,50)の外側にシート本体(21)を長期に亘って保持することができる。その結果、冷気漏れに起因する結露水の発生を一層効果的に防止できる。
【0058】
また、接着工程で用いられる接着剤が、シクロヘキサンとスチレンブタジエンゴムとを含んでいる材料となっているため、発泡ポリエチレンから成る各断熱材(30,40,50)の接着性能を更に向上できる。
【0059】
《その他の実施形態》
上記実施形態で述べた補修シート(20)を用いて、以下のように2つの断熱材(30,40)を取り付けることもできる。つまり、冷媒配管(5)の周囲に2つの筒状断熱材(30,40)を外嵌させ(図5(A))、その後に筒状断熱材(30,40)の端部同士を接着剤によって接着する(図5(B))。その後、両者の筒状断熱材(30,40)の接着部(60)の外周に、補修シート(20)のシート本体(21)を巻き付ける。これにより、2つの筒状断熱材(30,40)の間の隙間を確実に塞いで、結露水の発生を防止できる。
【0060】
また、実施形態では、冷媒配管(5)の断熱材の取付方法について述べたが、結露水が発生し易い配管であれば、例えば水道配管等においても、本発明を適用できる。
【0061】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、配管の外周に外嵌される断熱材の取付方法に関し、有用である。
【符号の説明】
【0063】
5 冷媒配管(配管)
21 シート本体(シート)
30 筒状断熱材
31 接着部
40 筒状断熱材
41 接着部
50 C型断熱材
51 切断部
52 接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管(5)の外周に所定の間隔をおいて外嵌する2つの筒状断熱材(30,40)の間の配管(5)の露出部位に、筒状の断熱材を軸方向に切断してC型断面形状としたC型断熱材(50)を外嵌させる外嵌工程と、
上記C型断熱材(50)の軸方向の両端部と上記2つの筒状断熱材(30,40)の各々の軸方向の端部とをそれぞれ接着剤で接着する端部接着工程と、
上記各筒状断熱材(30,40)の端部と上記C型断熱材(50)の端部との間の各接着部(31,41)の外周に、該各接着部(31,41)に沿うように細長のシート(21)をそれぞれ巻き付ける巻き付け工程と、
を含むことを特徴とする配管用断熱材の取付方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記C型断熱材(50)の切断部(51)の切断面を互いに接着する切断面接着工程と、
上記C型断熱材(50)の切断部(51)の接着部(52)の外側に、該接着部(52)に沿うように細長のシート(21)を貼り付ける貼付工程と、
を含むことを特徴とする配管用断熱材の取付方法。
【請求項3】
請求項2において、
上記貼付工程では、上記細長のシート(21)がC型断熱材(50)の切断部(51)の軸方向両端に亘って貼り付けられ、
上記巻き付け工程では、上記貼付工程において上記C型断熱材(50)の切断部(51)に貼り付けられたシート(21)の両端部の外側に、細長のシート(21)が巻き付けられることを特徴とする配管用断熱材の取付方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
上記シート(21)と上記断熱材(30,40,50)とは、いずれも発泡ポリエチレンによって構成されることを特徴とする配管用断熱材の取付方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記接着剤は、シクロヘキサンとスチレンブタジエンゴムとを含んでいることを特徴とする配管用断熱材の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−74944(P2011−74944A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224390(P2009−224390)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(595099144)株式会社ナカツ (1)
【Fターム(参考)】