説明

配管閉止装置及び方法

【課題】マンホールから構成部材を入れることができ、対象配管径が大径であっても配管内部への流体の流れを閉止できる配管閉止装置及び方法を提供することである。
【解決手段】複数の骨組み部材13a〜13fはプラントの配管内で縦横方向に組み立てられ、骨組み部材13a〜13fと配管12の内壁とで区画された区画窓に円周隔壁15a〜15hが配置され、円周隔壁15a〜15hは骨組み部材13a〜13fに着脱可能に固定されて区画窓を閉塞し、一方、骨組み部材13a〜13fで区画された区画窓には中央隔壁16a〜16dが配置され、中央隔壁16a〜16dは骨組み部材13a〜13fに着脱可能に固定されて区画窓を閉塞する。そして、シール部は円周隔壁15a〜15hと配管内壁16a〜16dとの間をシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの配管内に人が入って作業を行う際に配管内部への流体の流れを止める配管閉止装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汽力発電設備には、蒸気タービン出口の蒸気を復水器冷却するために海水を利用しており、海水を送水するために循環水管と呼ばれる大径管を使用している。循環水管の配管の口径はプラントの容量にもよるが、直径1,000mmを越える。このような循環水管では、最下流にある弁(復水器出口弁)の開閉操作により乱流が発生し、その乱流により当該復水器出口弁の下流側の循環水管内のゴムライニングがエロージョン等により剥離することがある。
【0003】
そこで、当該復水器出口弁の下流側の循環水管内に作業員が入って管内面を点検し必要に応じて修理することになるが、当該復水器出口弁より下流側の循環水管は他ユニットの放水路や海と直結している場合、海と分離できない。その場合、潮位により循環水管内に海水が逆流してくるため、循環水管の長時間に亘る補修作業に支障が生じる。すなわち、潮位の変化によって循環水管内が海水で充満されたり海水が排出されたりするので、補修作業実施においては、水止めが不可欠となる。
【0004】
配管内部で分離する環境間に圧力差がある場合であっても、配管内部への流体の流れを止められるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。これは、プラントの配管内に人が入って作業を行う際に、米俵状に形成された流体封入体(バルーン)を内部に流体を封入して膨張させ、配管の内部を閉塞して配管内への流体の流れを止められる状態とし、流体封入体の内部への流体の供給は、流体封入体の端面部に設けられた流体供給部から行い、配管の内壁と流体封入体の胴体部との隙間が塞がれるように、流体封入体を膨張させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−162785
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のものでは、米俵状に形成された流体封入体を使用し配管内の閉止を実施しているが、当該閉止装置の対象配管径が1,350mmのものであり、さらに大径の配管においては、流体封入体の強度が不足する。そのため、流体封入体の素材自体に補強が必要となるが、そうした場合には、装置全体が大きくなりすぎて、既存のマンホール(580mm)から入れることができなくなる問題がある。
【0007】
本発明の目的は、マンホールから構成部材を入れることができ、対象配管径が大径であっても配管内部への流体の流れを閉止できる配管閉止装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る配管閉止装置は、プラントの配管内で縦横方向に組み立てられた複数の骨組み部材と、前記骨組み部材と前記配管の内壁とで区画された区画窓に配置され前記骨組み部材に着脱可能に固定されて前記区画窓を閉塞する円周隔壁と、前記骨組み部材で区画された区画窓に配置され前記骨組み部材に着脱可能に固定されて前記区画窓を閉塞する中央隔壁と、前記円周隔壁と前記配管内壁との間をシールするためのシール部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係る配管閉止装置は、請求項1の発明において、前記配管内壁に設けられ前記骨組み部材の端部を取り付けるための固定金具を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係る配管閉止装置は、請求項1または請求項2において、前記シール部は、一方が前記配管内壁に接触し他方が前記円周隔壁に取り付けられて前記円周隔壁と前記配管内壁との間に配置された接触部材と、前記接触部材を前記円周隔壁に取り付けるための押さえ部材と、前記押さえ部材で前記円周隔壁に取り付けられた前記接触部材の前記配管内壁に接触する部分及び前記押さえ部材を圧着するための圧着部材と、前記圧着部材を圧縮した状態で係止する係止部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係る配管閉止装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項の発明において、請求項1乃至請求項3に記載の配管閉止装置の上流側及び下流側を連絡するベント管を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明に係る配管閉止装置は、請求項1の発明において、前記ベント管にベント弁を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明に係る配管閉止方法は、プラントの配管内に流体が流れていない状態で配管閉止装置の構成部材である骨組み部材、隔壁及びシール部材を配管内に搬入し、前記骨組み部材の端部が配管内壁に接触するように配置して前記骨組み部材を縦横方向に組み立て、前記骨組み部材と前記配管の内壁とで区画された区画窓に円周隔壁を配置し、前記円周隔壁と前記配管内壁との間をシール部でシールして前記円周隔壁を前記骨組み部材に固定し、前記骨組み部材で区画された区画窓に中央隔壁を配置して前記中央隔壁を前記骨組み部材に固定することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明に係る配管閉止方法は、プラントの配管内に流体が流れていない状態で配管閉止装置の構成部材である骨組み部材、隔壁及びシール部材を配管内に搬入し、前記骨組み部材の端部を前記配管内壁に設けられた固定金具に固定して前記骨組み部材を縦横方向に組み立て、前記骨組み部材と前記配管の内壁とで区画された区画窓に円周隔壁を配置し、前記円周隔壁と前記配管内壁との間をシール部でシールして前記円周隔壁を前記骨組み部材に固定し、前記骨組み部材で区画された区画窓に中央隔壁を配置して前記中央隔壁を前記骨組み部材に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管閉止装置を構成する部材として、骨組み部材と、中央隔壁と、円周隔壁と、シール部との分割構成とするので、マンホールからの搬入を容易に行うことができ、また、従来のバルーン方式の配管閉止装置を採用できない大径管においても採用することができる。従って、安全に配管の補修工事を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る配管閉止装置の正面図。
【図2】本発明の実施の形態における円周隔壁の構成図。
【図3】本発明の実施の形態における骨組み部材に円周隔壁を取り付けた状態での配管閉止装置の背面図。
【図4】本発明の実施の形態におけるシール部を構成する接触部材の平面図。
【図5】本発明の実施の形態におけるシール部を構成する押さえ部材、圧着部材及び係止部材の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態における骨組み部材に円周隔壁を取り付けるとともにシール部を取り付けた状態での配管閉止装置の背面図。
【図7】図6のA−A線での断面図。
【図8】本発明の実施の形態における中央隔壁の構成図。
【図9】本発明の実施の形態に係る配管閉止装置の背面図。
【図10】図9のB−B線での断面図。
【図11】本発明の実施の形態に係る配管閉止装置の他の一例の正面図。
【図12】図11のC−C線での断面図。
【図13】本発明の実施の形態に係る配管閉止装置の別の他の一例の一部切欠正面図。
【図14】本発明の実施の形態に係る配管閉止方法の工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る配管閉止装置の正面図である。配管閉止装置11は、プラントの配管内、例えば、汽力発電所における海水を送水するための循環水管のような大径の配管12内に設けられる。配管閉止装置11の正面側が復水器側であり背面側が海側となる。従って、配管閉止装置11は背面側が水圧を受けることになる。
【0018】
配管閉止装置11は、複数の骨組み部材13a〜13f、円周隔壁15a〜15h、中央隔壁16a〜16dを有し、これらを配管内で組み立てて構成される。各々の骨組み部材13a〜13fの端部には弾力性を有した緩衝部材14が取り付けられている。すなわち、分割構成となっている複数の骨組み部材13a〜13f、円周隔壁15a〜15h、中央隔壁16a〜16dを配管のマンホールから配管内12に搬入し、配管内での海水を塞き止める部分で組み立てる。
【0019】
まず、複数の骨組み部材13a〜13fが配管12内に搬入され、各々の骨組み部材13a〜13fは端部に取り付けられた緩衝部材14が配管12の内壁に接触するように縦横方向に組み立てられる。各々の骨組み部材13a〜13fの組み立てにあたっては、端部に取り付けられた弾力性を有した緩衝部材14が直接配管12の内面に接触し、配管12の内面を傷つけないように接触できるようになっている。図1では、縦方向に3本の骨組み部材13a、13b、13cが設けられ、横方向に3本の骨組み部材13d、13e、13fが設けられたものを示している。
【0020】
そして、骨組み部材13a〜13fと配管12の内壁とで区画された区画窓には、円周隔壁15a〜15hが配置され、また、骨組み部材13a〜13fで区画された区画窓には中央隔壁16a〜16dが配置される。円周隔壁15a〜15h及び中央隔壁16a〜16dには、取っ手17及び後述の取付ボルトが設けられており、円周隔壁15a〜15h及び中央隔壁16a〜16dの取っ手17を持って、骨組み部材13a〜13fの取付穴18に取付ボルトを挿入して、円周隔壁15a〜15h及び中央隔壁16a〜16dを骨組み部材13a〜13fに配置する。そして、取付ボルトにナットを装着して骨組み部材13a〜13fに円周隔壁15a〜15h及び中央隔壁16a〜16dを着脱可能に取り付ける。また、円周隔壁15a〜15hと配管12の内壁との間には、後述するようにシール部が設けられる。
【0021】
図2は円周隔壁15の構成図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は背面図、図2(c)は正面側斜視図、図2(d)は背面側斜視図である。円周隔壁15の正面側には縁部19が形成されており、この縁部19に取付ボルト20が設けられている。この縁部19はゴムなどの弾力性及び密着性を有する材料で形成される。また、円周隔壁15の背面側にも後述のシール部の取付用の取付ボルト21が形成されている。
【0022】
円周隔壁15は、図1に示した配管閉止装置11の骨組み部材13a〜13fの背面側から骨組み部材13a〜13fに配置される。すなわち、配管閉止装置11の正面側及び背面側にそれぞれ作業員が位置し、配管閉止装置11の背面側の作業員が円周隔壁15の背面側の取っ手17を持ち、配管閉止装置11の正面側の作業員が円周隔壁15の正面側の取っ手17を持ち、骨組み部材13a〜13fの背面側から取付ボルト20を取付穴18に挿入する。そして、正面側の作業員は取付穴18に挿入された取付ボルト19にナットを締め付ける。
【0023】
図3は、骨組み部材13a〜13fに円周隔壁15a〜15hを取り付けた状態での配管閉止装置11の背面図である。中央隔壁16がまだ取り付けられていないので、骨組み部材13a〜13fで形成される区画窓は閉塞されておらず空いたままである。従って、作業員は、骨組み部材13a〜13fで形成される区画窓を通って、配管閉止装置11の正面側及び背面側に行き来できる。
【0024】
配管閉止装置11の背面側において、骨組み部材13a〜13fに円周隔壁15a〜15hが取り付けられた状態では、円周隔壁15a〜15hの背面側に設けられたシール部取付用の取付ボルト21が配管12の円周近傍に突出して配置された状態となる。
【0025】
次に、円周隔壁15a〜15hと配管12の内壁との間をシールするためのシール部について説明する。シール部材は、図4に示す接触部材22と、図5に示す押さえ部材23、圧着部材24及び係止部材25とから構成される。
【0026】
図4はシール部を構成する接触部材22の平面図である。接触部材22は、弾力性及び密着性を有した材料、例えばゴムで円環状に形成され、円周隔壁15a〜15hの背面側に設けられたシール部取付用の取付ボルト21を貫通するための貫通孔26を有している。配管12の円周近傍に突出して配置された円周隔壁15a〜15hの取付ボルト21に接触部材22の貫通孔26を通して、接触部材22は円周隔壁15a〜15hに配置される。これにより、接触部材22の外周側円環部22aは配管11の内壁に接触し、接触部材22の内周側円環部22bは取付ボルト21に挿入されて円周隔壁15a〜15hに接触する。そして、図5(a)に示す押さえ部材23にて押さえ付けられて円周隔壁15a〜15hに取り付けられる。
【0027】
図5(a)に示すように、押さえ部材23は円弧状に形成され、円周隔壁15a〜15hの背面側に設けられたシール部取付用の取付ボルト21を貫通するための貫通孔27を有している。円周隔壁15a〜15hの取付ボルト21が接触部材22の貫通孔26に挿入されて接触部材22が円周隔壁15a〜15hに配置された後に、押さえ部材23の貫通孔27を円周隔壁15a〜15hの取付ボルト21に通してナットで締め付けて、押さえ部材23を円周隔壁15a〜15hに取り付ける。この状態では、円周隔壁15a〜15hの取付ボルト21の先端部は、まだ、突出した状態となっている。
【0028】
次に、圧着部材24は、図5(b)に示すように、ある程度の硬度を有した弾力性の材料、例えば硬質ゴムで棒状に形成される。圧着部材24は、接触部材22の外周側円環部22a、押さえ部材23、突出した取付ボルト21の間に配置される。すなわち、棒状の圧着部材24を屈曲させて円環状の接触部材22と同じ大きさの円形にし、円環状の接触部材22の外周側円環部22a及び押さえ部材23を押圧するように、突出した取付ボルト21と接触部材22の外周側円環部22aとの間に配置される。そして、図5(c)に示す係止部材25を取付ボルト21に通し、ナットで締め付けて圧着部材24を圧縮した状態で係止する。
【0029】
図6は、本発明の実施の形態における骨組み部材に円周隔壁を取り付けるとともにシール部を取り付けた状態での配管閉止装置の背面図である。図6に示すように、円周隔壁15a〜15fと配管12の内壁との間をシールするためのシール部を取り付けた状態では、配管閉止装置の背面側においては、係止部材25で圧着部材24を圧縮して、圧着部材24で接触部材22の外周側円環部22aを配管12の内壁に押圧している。このシール部の取り付け作業が完了した状態では、中央隔壁16がまだ取り付けられていないので、作業員は、中央隔壁16が取り付けられる区画窓を通って、配管閉止装置11の正面側及び背面側に行き来できる。
【0030】
図7は、図6のA−A線での断面図である。円周隔壁15dは骨組み部材13aに取り付けられ、円周隔壁15dの背面側に設けられたシール部取付用の取付ボルト21は、配管12の円周近傍に突出して配置された状態となる。この取付ボルト21に接触部材22の貫通孔26が挿入されて接触部材22が配置される。すなわち、接触部材22の外周側円環部22aが配管11の内壁に接触し、接触部材22の内周側円環部22bが取付ボルト21に挿入されて円周隔壁15dに接触する。そして、押さえ部材23の貫通孔27を取付ボルト21に通してナット32で締め付けて、押さえ部材23を円周隔壁15dに取り付ける。次に、圧着部材24を、接触部材22の外周側円環部22a、押さえ部材23、突出した取付ボルト21の間に押圧しながら配置し、係止部材25を取付ボルト21に通してナット33で締め付けて圧着部材24を圧縮した状態で係止する。
【0031】
このように、圧着部材24は接触部材22の外周側円環部22aを配管12の径方向に押圧し、また接触部材22の内周側円環部22bを配管12の長手方向に押圧して円周隔壁と前記配管内壁との間をシールする。
【0032】
次に、シール部の取り付け作業が完了すると、中央隔壁16を取り付けることになる。図8は中央隔壁16の構成図であり、図8(a)は正面図、図8(b)は背面図、図8(c)は斜視図である。中央隔壁16の正面側には縁部19が形成されており、この縁部19に取付ボルト20が設けられている。縁部19はゴムなどの弾力性及び密着性を有した材料で形成される。中央隔壁16は、図1に示した配管閉止装置11の骨組み部材13a〜13fの背面側から骨組み部材13a〜13fに配置される。
【0033】
すなわち、配管閉止装置11の正面側及び背面側にそれぞれ作業員が位置し、配管閉止装置11の背面側の作業員が中央隔壁16の背面側の取っ手17を持ち、配管閉止装置11の正面側の作業員が中央隔壁16の正面側の取っ手17を持ち、骨組み部材13a〜13fの背面側から取付ボルト20を取付穴18に挿入する。そして、正面側の作業員は取付穴18に挿入された取付ボルト19にナットを締め付ける。4個の中央隔壁16のうち3個の中央隔壁16は、配管閉止装置11の正面側の作業員及び背面側の作業員により取付作業を行う。そして、4個めの最後の中央隔壁16については、配管閉止装置11の背面側の作業員は区画窓を通って正面側に移動し、正面側から取り付けることになる。
【0034】
図9は本発明の実施の形態に係わる配管閉止装置の背面図である。すなわち、図6に示した骨組み部材に円周隔壁を取り付けるとともにシール部を取り付けた状態から、さらに中央隔壁16a〜16dを取り付けたものである。図9に示す状態で海水からの水圧を受けることになる。
【0035】
図10は図9のB−B線での断面図である。図10に示すように、円周隔壁15a〜15hと配管12の内壁との間をシールするためのシール部28が配管閉止装置の背面側に設けられている。図10の左側が配管閉止装置の背面側であり、海水からの水圧を受ける側となる。一方、右側が配管閉止装置の正面側であり復水器側である。海水からの水圧は円周隔壁15a〜15h及び中央隔壁16a〜16dで受け、骨組み部材13a〜13fの配管12の内壁と接触する緩衝部材14で受け止めることになる。
【0036】
以上の説明では、骨組み部材13a〜13fは配管12の内壁に緩衝部材14で接触して配置するようにしたが、配管12内で海水を塞き止める部分に、予め固定金具を設けておき、骨組み部材13a〜13fを固定金具に取り付けるようにしてもよい。
【0037】
図11は配管12内に予め設けた固定金具29に横方向の骨組み部材13d〜13fを取り付けた場合の配管閉止装置の正面図である。横方向の骨組み部材13d〜13fの両端部に取付アーム30を設け、また、配管12の内壁には固定金具29が溶接により取り付けられている。そして、横方向の骨組み部材13d〜13fの取付アーム30を固定金具29にボルトナットで固定する。これにより、横方向の骨組み部材13d〜13fは固定金具29に固定される。そして、縦方向の骨組み部材13a〜13cを横方向の骨組み部材13d〜13fに取り付けて固定する。
【0038】
図12は図11のC−C線での断面図である。図12に示すように、横方向の骨組み部材13d〜13fの取付アーム30は配管12の内壁に設けられた固定部材29にボルトナットで固定される。この場合、配管12の内壁に接触する緩衝部材14は必ずしも設ける必要はないので、図12では設けていない場合を示している。なお、円周隔壁15a〜15hと配管12の内壁との間をシールするためのシール部28が配管閉止装置の背面側に設けられている。これにより、骨組み部材13a〜13fは配管12内で海水を塞き止める部分で確実に固定されるので、海水からの水圧により配管閉止装置が配管12内で移動することを防止できる。
【0039】
ここで、配管12の上部に位置する円周隔壁15a、15hのいずれか一方に、配管閉止装置の正面側と背面側との空気圧を均一にするためのベント管を設けるようにしてもよい。配管12の内部を配管閉止装置で分離した場合、配管閉止装置の正面側と背面側との空気圧が変動することがある。これは、自己以外の循環水管の復水器出口弁の開閉操作により、自己の循環水管の海側の空気圧が変動するからである。配管閉止装置の正面側と背面側との空気圧が変動すると、海水による水圧がなくても配管閉止装置の正面側と背面側とで圧力差が生じることになり、余計な圧力が配管閉止装置にかかる。
【0040】
そこで、図13に示すように、配管12の上部の円周隔壁15aにベント管31を設ける。配管12の上部の円周隔壁15aにベント管31を設けたのは、配管閉止装置で海水を閉止している状態で、ベント管31から配管閉止装置の正面側に海水が浸水するのを防止するためである。通常は、海水が配管12の上部の円周隔壁15aに至ることはないが、ベント管31にベント弁を設けて、海水を閉止しているとき(満潮となっているとき)は、ベント弁を閉じるようにしてもよい。これにより、海水が配管閉止装置の正面側に浸水するのを確実に防止できる。
【0041】
図14は本発明の実施の形態に係わる配管閉止方法の工程を示すフローチャートである。まず、作業を行う配管内に配管閉止装置の構成部材を搬入する(S1)。例えば、干潮時のように循環水管の配管内に海水が流れていない状態で、配管閉止装置の構成部材である、その端部に弾力性を有した緩衝部材14が取り付けられた骨組み部材13a〜13f、円周隔壁15a〜15hや中央隔壁16a〜16d、シール部材を構成する接触部材22、押さえ部材23、圧着部材24及び係止部材25などをマンホールから順次配管12内に搬入する。
【0042】
そして、骨組み部材13a〜13fを組み立てる(S2)。すなわち、骨組み部材13a〜13fの端部に取り付けられた緩衝部材14が配管12の内壁に接触するように配置して、骨組み部材13a〜13fを縦横方向に組み立てる。配管内で海水を塞き止める部分の配管12の内壁に固定金具29が予め設けられている場合には、骨組み部材13a〜13fを配管12の内壁に接触させる必要はなく、固定金具29に骨組み部材13a〜13fを固定する。この場合には、必ずしも各々の骨組み部材13a〜13fの端部には緩衝部材14を取り付けなくても良い。また、固定金具29が設けられていない場合に、固定金具29を溶接にて配管12の内壁に取り付け、その後に、固定金具29に骨組み部材13a〜13fを固定するようにしてもよい。
【0043】
骨組み部材13a〜13fの組み立てが完了すると、骨組み部材13a〜13fと配管12の内壁とで区画された区画窓に円周隔壁15a〜15hを配置する(S3)。円周隔壁15a〜15hの配置は、例えば、配管閉止装置の正面側と背面側に作業員が位置して、背面側の作業員が円周隔壁15a〜15hを骨組み部材13a〜13fの取付ボルト20を取付穴18に通して配置する。
【0044】
次に、円周隔壁15a〜15hと配管12の内壁との間をシール部でシールして円周隔壁15a〜15hを骨組み部材に固定する(S4)。シール部材の取り付けは、背面側の作業員により行う。すなわち、配管閉止装置11の背面側において、配管12の円周近傍に突出して配置された円周隔壁15a〜15hの背面側の取付ボルト21に接触部材22の貫通孔26を通して、接触部材22の内周側円環部22bが取付ボルト21に挿入されて円周隔壁15a〜15hに接触し、接触部材22の外周側円環部22aが配管11の内壁に接触するように、接触部材22を円周隔壁15a〜15hに配置する。そして、押さえ部材23を取付ボルト21に通しナットにて締め付けることにより、押さえ部材23で接触部材22の内周側円環部22bを押さえ付けて円周隔壁15a〜15hに取り付ける。さらに、棒状の圧着部材24を屈曲させて円環状の接触部材22と同じ大きさの円形にし、円環状の接触部材22の外周側円環部22a及び押さえ部材23を押圧するように、突出した取付ボルト21と接触部材22の外周側円環部22aとの間に配置し、係止部材25を取付ボルト21に通しナットで締め付けて圧着部材24を圧縮した状態で係止する。
【0045】
このようにして、シール部で円周隔壁15a〜15hと配管12の内壁との間のシールが完了すると、骨組み部材13a〜13fで区画された区画窓に中央隔壁16a〜16dを配置して中央隔壁16a〜16dを骨組み部材13a〜13fに固定する(S5)。
【0046】
すなわち、配管閉止装置11の正面側及び背面側にそれぞれ作業員が位置し、背面側の作業員が骨組み部材13a〜13fの背面側から中央隔壁16の取付ボルト20を取付穴18に挿入する。そして、正面側の作業員は取付穴18に挿入された取付ボルト19にナットを締め付ける。4個の中央隔壁16のうち3個の中央隔壁16は、配管閉止装置11の正面側の作業員及び背面側の作業員により取付作業を行う。そして、4個めの最後の中央隔壁16については、配管閉止装置11の背面側の作業員は区画窓を通って正面側に移動し、正面側から取り付けることになる。
【0047】
本発明の実施の形態によれば、配管閉止装置を構成する部材として、骨組み部材13a〜13fと、円周隔壁15a〜15hと、中央隔壁16a〜16dと、シール部(接触部材22、押さえ部材23、圧着部材24及び係止部材25)との分割構成とし、配管12の内部で組み立てるので、配管閉止装置が大型のものであっても、マンホールから容易に搬入できる。また、骨組み部材13a〜13fと配管12の内壁とで区画された区画窓ごとに、円周隔壁15a〜15hや中央隔壁16a〜16dを設けるので、最後の中央隔壁16を取り付けるまでは、配管閉止装置の組み立て過程において配管閉止装置の背面側での作業が可能となる。従って、配管閉止装置の取付作業が効率よく行える。
【0048】
また、固定金具29を設けて、骨組み部材13a〜13fを固定金具29に取り付ける場合には、配管閉止装置が移動することがなくなり、ベント管を設けた場合には、配管閉止装置の正面側と背面側との空気圧差をなくすことができるので、より安全に配管の補修工事を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
11…配管閉止装置、12…配管、13…骨組み部材、14…緩衝部材、15…円周隔壁、16…中央隔壁、17…取っ手、18…取付穴、19…縁部、20、21…取付ボルト、22…接触部材、23…押さえ部材、24…圧着部材、25…係止部材、26、27…貫通孔、28…シール部、29…固定金具、30…取付アーム、31…ベント管、32,33…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの配管内で縦横方向に組み立てられた複数の骨組み部材と、
前記骨組み部材と前記配管の内壁とで区画された区画窓に配置され前記骨組み部材に着脱可能に固定されて前記区画窓を閉塞する円周隔壁と、
前記骨組み部材で区画された区画窓に配置され前記骨組み部材に着脱可能に固定されて前記区画窓を閉塞する中央隔壁と、
前記円周隔壁と前記配管内壁との間をシールするためのシール部と、
を備えたことを特徴とする配管閉止装置。
【請求項2】
前記配管内壁に設けられ前記骨組み部材の端部を取り付けるための固定金具を備えたことを特徴とする請求項1に記載の配管閉止装置。
【請求項3】
前記シール部は、一方が前記配管内壁に接触し他方が前記円周隔壁に取り付けられて前記円周隔壁と前記配管内壁との間に配置された接触部材と、
前記接触部材を前記円周隔壁に取り付けるための押さえ部材と、
前記押さえ部材で前記円周隔壁に取り付けられた前記接触部材の前記配管内壁に接触する部分及び前記押さえ部材を圧着するための圧着部材と、
前記圧着部材を圧縮した状態で係止する係止部材と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配管閉止装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の配管閉止装置の上流側及び下流側を連絡するベント管を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配管閉止装置。
【請求項5】
前記ベント管にベント弁を設けたことを特徴とする請求項4記載の配管閉止装置。
【請求項6】
プラントの配管内に流体が流れていない状態で配管閉止装置の構成部材である骨組み部材、隔壁及びシール部材を配管内に搬入し、
前記骨組み部材の端部が配管内壁に接触するように配置して前記骨組み部材を縦横方向に組み立て、
前記骨組み部材と前記配管の内壁とで区画された区画窓に円周隔壁を配置し、
前記円周隔壁と前記配管内壁との間をシール部でシールして前記円周隔壁を前記骨組み部材に固定し、
前記骨組み部材で区画された区画窓に中央隔壁を配置して前記中央隔壁を前記骨組み部材に固定することを特徴とする配管閉止方法。
【請求項7】
プラントの配管内に流体が流れていない状態で配管閉止装置の構成部材である骨組み部材、隔壁及びシール部材を配管内に搬入し、
前記骨組み部材の端部を前記配管内壁に設けられた固定金具に固定して前記骨組み部材を縦横方向に組み立て、
前記骨組み部材と前記配管の内壁とで区画された区画窓に円周隔壁を配置し、
前記円周隔壁と前記配管内壁との間をシール部でシールして前記円周隔壁を前記骨組み部材に固定し、
前記骨組み部材で区画された区画窓に中央隔壁を配置して前記中央隔壁を前記骨組み部材に固定することを特徴とする配管閉止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−196721(P2010−196721A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39081(P2009−39081)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591008823)株式会社カナエ (14)
【出願人】(000221535)東電工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】