説明

配線ボックス

【課題】係止部を変位させてワンタッチで被取付体に取り付けることができるとともに、係止部の変位を防止して取り付け状態を維持することができる配線ボックスを提供する。
【解決手段】一対の第1の側壁部13a,13bにはボス16及び係止片19が一体に設けられるとともに、一対の第2の側壁部14a,14bにおける一方のボス16寄りには、一対のスリット20が形成されている。そして、配線ボックス11における他方の第1の側壁部13b側には、スリット20の開口幅分だけボス16及び係止片19を変位可能であるとともに、変位されると変位前の原位置に向けて変位可能なボス変位部25が設けられている。さらに、一対の第2の側壁部14a,14bにおける開口縁部には、外方に向けて突出する第1フランジ17及び第2フランジ18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンセント等の配線器具を設置するために被取付体に取り付けられる配線ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンセント等の配線器具を設置するために、壁材等の造営材(被取付体)には一面が開口する有底箱状をなす配線ボックスが設置される。このような配線ボックスとしては、壁材等に穿設された取付孔に差し込むだけでワンタッチで壁材等に装着できるものが、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の配線ボックスは、開口側周縁部から外方に向けて突設されるフランジ片を備えるとともに、側板部には、壁内配線孔(取付孔)への差し込み方向と平行な複数の可撓片が所定の間隔をおいて一体に傾斜並列して形成されている。さらに、各可撓片の開放側の前端部には外向きのストッパ(係止部)が突設されている。
【0004】
そして、配線ボックスを壁内配線孔へ差し込むことで、突出状態の各ストッパが壁板の開口端面によって押圧されて、可撓片を内側に撓ませてストッパを開口端面で通過させた後、壁板の厚みと同じ長さに位置する可撓片のストッパが、外側に弾性復位して壁板の裏面に当接することで表側のフランジ片との間で壁板を挟持する。これにより、配線ボックスが壁板にワンタッチで取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−209912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の配線ボックスは、ストッパとフランジ片とで壁板を挟持して壁板に取り付けられている。しかし、ストッパが弾性変形可能であることから、配線ボックスの取り付け状態でストッパが弾性変形してしまうと、ストッパとフランジ片とによる壁板の挟持が解除されてしまい、配線ボックスの壁板に対する取り付け状態が解除されてしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、係止部を変位させてワンタッチで被取付体に取り付けることができるとともに、係止部の変位を防止して取り付け状態を維持することができる配線ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被取付体に配線器具を設置するため、前記被取付体に形成された取付孔に差し込まれて前記被取付体に取り付けられるとともに、周壁により前面に開口を有する箱状に形成された配線ボックスであって、前記周壁に前記配線器具の保持枠を固定するためのボスを互いに対向するように少なくとも一対備えるとともに、前記周壁に分断部を備え、前記分断部により前記ボスのうちの少なくとも一方と共に前記開口の内側に向けて変位可能であり、変位されると変位前の原位置に向けて変位可能なボス変位部を備え、前記ボス変位部に外方へ突出するとともに前記被取付体における前記取付孔の周囲裏面に係止する係止部を備え、さらに、前記被取付体における前記取付孔の周囲表面に当接し前記係止部と共に前記被取付体を挟み込むフランジ部を備え、前記ボスに前記保持枠が固定されることで前記ボス変位部の変位が規制されるように構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記分断部はスリットであるとともに、前記ボス変位部は前記スリットの開口幅分だけ変位可能に形成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記周壁は、底壁部と、該底壁部の側縁から立設された側壁部とから形成されるとともに、前記底壁部における少なくとも一部分は、前記ボスのうちの少なくとも一方側から他方側に向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、係止部を変位させてワンタッチで被取付体に取り付けることができるとともに、係止部の変位を防止して取り付け状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における配線ボックス及び保持枠を示す斜視図。
【図2】柱にコンセントが取り付けられた状態を示す部分断面図。
【図3】取付孔に配線ボックスが差し込まれている状態を示す部分断面図。
【図4】ボス変位部が取付孔の縁部に押圧されて開口内側に変位している状態を示す部分断面図。
【図5】配線ボックスが柱に取り付けられた状態を示す部分断面図。
【図6】保持枠が配線ボックスに取り付けられた状態を示す部分断面図。
【図7】別の実施形態における配線ボックスを示す斜視図。
【図8】別の実施形態における配線ボックスを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。
まず、配線ボックス11が取り付けられる被取付体としての柱Hについて説明する。
図2に示すように、柱Hはその下部側が地面Lに埋設されることで地面Lから立設された状態で屋外に設置されるものである。中空状の柱Hの一側面下部側には挿通孔(図示せず)が形成されるとともに、この挿通孔を介して図示しない電力供給源から地面L内に延びる電線管Caが柱H内に引き込まれるようになっている。電線管Ca内には、電力供給源に電気的に接続された図示しないケーブルが挿通されるとともに、ケーブルは、電線管Caによって保護されている。また、電線管Caにおける配線ボックス11に取り付けられる側の先端にはコネクタCTが設けられている。
【0014】
柱Hの一側面上部側には、矩形状をなす取付孔H1が穿設されている。そして、配線ボックス11は、取付孔H1に差し込まれてワンタッチで柱Hに取り付けられるとともに、この配線ボックス11には保持枠21を介して配線器具としてのコンセントCNが取り付けられるようになっている。
【0015】
次に、配線ボックス11について説明する。
図1に示すように、配線ボックス11は、合成樹脂材料により前面に四角形状の開口11aを有する有底箱状に形成されている。配線ボックス11は、正面視が矩形状をなすとともに側面視が弧状をなす底壁部12を備えている。また、配線ボックス11は、底壁部12の直線状に延びる短側縁から立設される一対の第1の側壁部13a,13bと、底壁部12の弧状に延びる長側縁から立設される一対の第2の側壁部14a,14bとを備える。そして、一対の第1の側壁部13a,13b及び一対の第2の側壁部14a,14bは、対向する一対の開口縁を形成する。一対の第1の側壁部13a,13bは、それぞれ四角板状に形成されている。また、一対の第2の側壁部14a,14bは、底壁部12側の縁部が、一方の第1の側壁部13aから他方の第1の側壁部13bに向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように略扇形状に形成されている。よって、底壁部12、一対の第1の側壁部13a,13b及び一対の第2の側壁部14a,14bにより配線ボックス11の周壁が形成されている。
【0016】
一方の第1の側壁部13aには、電線管取付孔15aが二つ形成されるとともに、電線管取付孔15aはノック部15bによって閉鎖されている。そして、電線管Caを配線ボックス11に取り付ける際には、ノック部15bを除去して電線管取付孔15aを開放するとともに、電線管取付孔15aにコネクタCTを取り付ける。これにより、電線管CaがコネクタCTを介して配線ボックス11に取り付けられる。
【0017】
一対の第1の側壁部13a,13bにおける開口11a寄りの内面中央部には、一対のボス16が互いに対向するように設けられている。各ボス16の一端面にはボス孔16aが形成されるとともに、ボス孔16aには、コンセントCNを保持可能な保持枠21を一対のボス16に取り付けるための螺子部材B1が挿通可能になっている。
【0018】
他方の第1の側壁部13bの上面における開口11a側には、上方へ突出する係止部としての係止片19が二つ設けられている。同様に、一方の第1の側壁部13aの下面における開口11a側には、下方へ突出する係止片19が二つ設けられている。各係止片19は、開口縁部端面と平行に延びる平坦面19aと、平坦面19aに対して交差する方向へ延びる傾斜面19bとを有する。
【0019】
また、一対の第2の側壁部14a,14bにおける開口縁部には、外方に向けて突出するフランジ部としての第1フランジ17がその開口縁部に沿って延びるように設けられている。第1フランジ17は、一対の第2の側壁部14a,14bにおける開口縁部の略中央部に設けられている。
【0020】
さらに、一対の第2の側壁部14a,14bにおける開口縁部両端には、外方に向けて突出するフランジ部としての第2フランジ18がそれぞれ設けられている。第1フランジ17及び第2フランジ18の両端面は平坦面に形成されるとともに、第1フランジ17の両端面と第2フランジ18の両端面とはそれぞれ同一平面上に位置している。また、平坦面19aと第1フランジ17及び第2フランジ18の裏面との間の間隔は、取付孔H1の縁部の厚みと同じになっている。
【0021】
一対の第2の側壁部14a,14bにおける開口縁部において、第1フランジ17と第2フランジ18との間には凹部11bが形成されている。また、一対の第1の側壁部13a,13bにおける開口縁部において、隣り合う第2フランジ18同士の間には、凹部11cが形成されている。凹部11cの底面とボス16の一端面とは同一平面上に位置している。
【0022】
また、一対の第2の側壁部14a,14bにおいて、一方のボス16側の凹部11bに対応する位置には、分断部として、開口11aから底壁部12に向かって延びる一対のスリット20が形成されている。スリット20は、開口11a側が開放されるとともに、底壁部12側が第2の側壁部14a,14bの範囲内で閉塞している。よって、一対の第2の側壁部14a,14bには、開口11a側に分断された部位が形成されるとともに、底壁部12側に連続した部位が形成されている。
【0023】
そして、配線ボックス11において、他方の第1の側壁部13bと、スリット20よりも他方の第1の側壁部13b側に位置し、他方の第1の側壁部13bに連続する第2の側壁部14a,14bの一部とからなる部位によりボス変位部25が形成されている。ボス変位部25は、ボス16、係止片19及び第2フランジ18を一体に備え、底壁部12が弾性変形するとスリット20の開口幅分だけ上下方向へ変位可能であるとともに、変位されると変位前の原位置に向けて変位可能に形成されている。よって、スリット20の開口幅分だけボス変位部25が変位すると、ボス16、係止片19及び第2フランジ18も同時に変位するようになっている。
【0024】
次に、保持枠21について説明する。
保持枠21は矩形枠状をなすとともに、一対のボス16と対応する位置には挿通孔21aが形成されている。また、保持枠21の長手方向において、挿通孔21aよりも外側には一対の取付体22が設けられている。各取付体22には取付孔22aが形成されている。そして、ボス孔16aと挿通孔21aとが重合するように、保持枠21を配線ボックス11に対して配置すると、保持枠21の四隅角部が凹部11bに位置するとともに、保持枠21の内側に第1フランジ17が位置するようになっている。
【0025】
次に、配線ボックス11を柱Hの取付孔H1に取り付ける手順、及び配線ボックス11の取付構造について説明する。なお、配線ボックス11には電線管Caが配線ボックス11に既に取り付けられているものとする。
【0026】
図3に示すように、まず、取付孔H1の下周縁部裏面に対して一方の第1の側壁部13aにおける係止片19の平坦面19aを当接させて、係止片19を取付孔H1の下周縁部裏面に係止させる。そして、取付孔H1の下周縁部裏面と係止片19の平坦面19aとの当接部位を基点として、配線ボックス11を回動させながら配線ボックス11を取付孔H1に差し込む。すると、他方の第1の側壁部13bにおける係止片19の傾斜面19bが取付孔H1の上周縁部表面に当接する。
【0027】
係止片19の傾斜面19bと取付孔H1の上周縁部表面とが当接した状態において、さらに、配線ボックス11を強制的に差し込むと、図4に示すように、ボス変位部25が取付孔H1の上周縁部に押圧されて、スリット20により開口11a内側にボス変位部25が変位する。このボス変位部25の変位に伴い、ボス16、係止片19及び第2フランジ18も変位する。
【0028】
すると、図5に示すように、ボス変位部25が原位置に向けて変位しながら係止片19が取付孔H1の上縁部を乗り越えるとともに、ボス変位部25が原位置に変位すると取付孔H1の上周縁部裏面に係止される。そして、第1フランジ17及び第2フランジ18の裏面が取付孔H1における両側縁部の表面に当接する。その結果、係止片19と第1フランジ17及び第2フランジ18とにより、取付孔H1の周縁部が挟持されて、配線ボックス11が取付孔H1に取り付けられる。
【0029】
次に、図6に示すように、ボス孔16aと挿通孔21aとが重合するように、保持枠21を配線ボックス11に対して配置するとともに、螺子部材B1を挿通孔21a及びボス孔16aに対して螺進させて螺子止めする。すると、保持枠21が一対のボス16に対して取り付けられ、ボス変位部25が開口11a内側に変位することが規制される。そして、保持枠21にコンセントCNを取り付けることで、柱HにコンセントCNが設置される。
【0030】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)一対の第1の側壁部13a,13bにはボス16及び係止片19が一体に設けられるとともに、一対の第2の側壁部14a,14bにおける一方のボス16寄りには、一対のスリット20が形成されている。そして、配線ボックス11における他方の第1の側壁部13b側には、スリット20の開口幅分だけボス16及び係止片19を変位可能にするボス変位部25が設けられている。さらに、一対の第2の側壁部14a,14bにおける開口縁部には、外方に向けて突出する第1フランジ17及び第2フランジ18が設けられている。よって、配線ボックス11が取付孔H1に差し込まれると、ボス変位部25が取付孔H1の上周縁部に押圧されて、スリット20により開口11a内側に変位して、係止片19が取付孔H1の上周縁部を乗り越えて取付孔H1の上周縁部裏面に係止される。その結果、係止片19と第1フランジ17及び第2フランジ18により取付孔H1の周縁部を挟持して、配線ボックス11をワンタッチで柱Hに取り付けることができる。さらに、配線ボックス11が柱Hに取り付けられた状態において、保持枠21を螺子部材B1により一対のボス16に取り付けることで、保持枠21により一対のボス16の間隔が維持される。よって、ボス変位部25が開口11a内側に変位することが規制されることで、係止片19が変位することが規制される。その結果、係止片19における取付孔H1の上周縁部裏面に対する係止状態が解除されてしまうことが無く、配線ボックス11における柱Hに対する取り付け状態を維持することができる。
【0031】
(2)配線ボックス11は底壁部12と、該底壁部12の側縁から立設される第1の側壁部13a,13b及び第2の側壁部14a,14bとを備える。そして、第1の側壁部13a,13bにボス16及び係止片19が形成され、第2の側壁部14a,14bに第1フランジ17が設けられている。よって、例えば、配線ボックス11に一対の第2の側壁部14a,14bが存在しておらず、底壁部12及び一対の第1の側壁部13a,13bにより外郭が形成されている場合に比べて、第2の側壁部14a,14bにより配線ボックス11における上下方向の強度を高くすることができる。その結果、配線ボックス11が柱Hに取り付けられたときに、第2の側壁部14a,14bにより配線ボックス11自体が上下方向に撓み難くすることができ、係止片19の係止状態が解除され難くなる。
【0032】
(3)一対の第2の側壁部14a,14bには、一対のスリット20が形成されるとともに、そのスリット20よりも一方のボス16側にボス変位部25が形成されている。よって、例えば、第1の側壁部13bにおけるボス16を挟む部位にスリットを形成して、第1の側壁部13bの一部によりボス変位部を形成する場合に比べて、ボス変位部25を変位し難くすることができる。
【0033】
(4)底壁部12は、一方の第1の側壁部13aにおけるボス16から他方の第1の側壁部13bにおけるボス16に向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように形成されている。よって、配線ボックス11を取付孔H1に差し込む際に、配線ボックス11の底壁部12側が取付孔H1の周縁部に対して邪魔にならずにスムーズに差し込むことができる。
【0034】
(5)配線ボックス11において、第2の側壁部14a,14bには第1フランジ17及び第2フランジ18が外方に向けて突出するように設けられている。第2の側壁部14a,14bは、スリット20により上下方向へ撓むが、左右方向へは撓み難く、その左右方向へ第1フランジ17及び第2フランジ18が延びている。よって、配線ボックス11を柱Hに取り付ける際に、第1フランジ17及び第2フランジ18が取付孔H1における両側縁部の表面に当接し、この当接により配線ボックス11が柱H内部へそれ以上挿入されてしまうことが規制される。その結果、配線ボックス11が取付孔H1に対して傾いた状態で取り付けられてしまうことを抑制することができる。
【0035】
(6)底壁部12は、一方の第1の側壁部13aから他方の第1の側壁部13bに向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように形成されている。よって、電線管Caを取付孔H1から外部へ引き出すとともにコネクタCTを電線管取付孔15aに接続して、電線管Caが配線ボックス11に取り付けられた状態で、取付孔H1の下周縁部裏面に対して係止片19の平坦面19aを当接させて、この当接部位を基点として配線ボックス11を回動させながら取付孔H1に差し込むことができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図7に示す実施形態では、配線ボックス41は、一面に開口41aを有する有底四角箱状に形成されるとともに、矩形板状をなす底壁部42と、底壁部42の短側縁から立設される一対の第1の側壁部43a,43bと、底壁部42の長側縁から立設される一対の第2の側壁部44a,44bとを備える。そして、第1の側壁部43a,43b及び第2の側壁部44a,44bは、対向する一対の開口縁を形成する。第1の側壁部43a,43b及び第2の側壁部44a,44bそれぞれは矩形板状に形成されている。よって、底壁部42、一対の第1の側壁部43a,43b及び一対の第2の側壁部44a,44bにより配線ボックス41の周壁が形成されている。
【0037】
一対の第1の側壁部43a,43bにおける開口41a寄りの内面中央部には、一対のボス16が互いに対向するように設けられている。一対の第2の側壁部44a,44bにおける開口縁部には、第1フランジ17及び第2フランジ18が設けられている。また、一対の第1の側壁部43a,43bにおけるボス16を挟む部位には、分断部としてのスリット51が形成されている。そして、一対の第1の側壁部43a,43bにおいて、このスリット51によって、開口41a内側に変位可能になる部位によりボス変位部45が形成されている。ボス変位部45は、上下方向へ変位可能であるとともに、変位されると変位前の原位置に向けて変位可能に形成されている。また、ボス変位部45には、係止片19がそれぞれ設けられている。
【0038】
上記構成の配線ボックス41を取付孔H1に差し込む。すると、係止片19の傾斜面19bが取付孔H1の周縁部表面に当接する。係止片19の傾斜面19bと取付孔H1の周縁部表面とが当接した状態において、さらに、配線ボックス41を強制的に挿入すると、ボス変位部45が取付孔H1の周縁部に押圧されて、スリット51により開口41a内側にボス変位部45が変位する。このボス変位部45の変位に伴い、ボス16及び係止片19も変位する。
【0039】
すると、ボス変位部45が原位置に向けて変位しながら係止片19が取付孔H1の周縁部を乗り越えるとともに、ボス変位部45が原位置に変位すると取付孔H1の周縁部裏面に係止される。そして、第1フランジ17及び第2フランジ18の裏面が取付孔H1における両側縁部の表面に当接する。その結果、係止片19と第1フランジ17及び第2フランジ18とにより、取付孔H1の周縁部が挟持されて、配線ボックス41が柱Hに取り付けられる。このように、配線ボックス41の外郭を有底四角箱状に形成するとともに、一対の第1の側壁部43a,43bにおけるボス16を挟む部位にスリット51を形成してもよい。
【0040】
○ 図8に示す実施形態では、配線ボックス81は、前面に四角形状の開口81aを有する有底箱状に形成されるとともに、正面視が矩形状をなすとともに側面視が弧状をなす底壁部82を備えている。また、配線ボックス81は、底壁部82の直線状に延びる短側縁から立設される一対の第1の側壁部83a,83bと、底壁部82の弧状に延びる長側縁から立設される一対の第2の側壁部84a,84bとを備えている。他方の第1の側壁部83bにおける左右方向に沿う長さは、一方の第1の側壁部83aにおける左右方向に沿う長さよりも短くなっているとともに、一対の第2の側壁部84a,84bと他方の第1の側壁部83bとは離間している。
【0041】
他方の第1の側壁部83bにおける左右方向の両側縁、及び底壁部82の長側縁の一部には、一対の第2の側壁部84a,84bの内側に入り込むように延在する一対の延在部85が立設されている。一対の延在部85の一部分と一対の第2の側壁部84a,84bの一部分とは、配線ボックス81の左右方向において重合するとともに、一対の延在部85と一対の第2の側壁部84a,84bとは連続していない。よって、一対の延在部85と一対の第2の側壁部84a,84bとの間に分断部として機能する分断された部位が形成されるとともに、底壁部82、一対の第1の側壁部83a,83b、一対の第2の側壁部84a,84b及び一対の延在部85により配線ボックス81の周壁が形成されている。
【0042】
そして、配線ボックス81において、一対の延在部85と、他方の第1の側壁部83bと、底壁部82における一対の延在部85が立設された一部分とからなる部位によりボス変位部86が形成されている。ボス変位部86は、底壁部82が弾性変形すると一対の第2の側壁部84a,84bの内側に入り込むように上下方向へ変位可能であるとともに、変位されると変位前の原位置に向けて変位可能に形成されている。
【0043】
○ 実施形態において、ボス変位部25におけるスリット20よりも他方の第1の側壁部13b側に位置し、他方の第1の側壁部13bに連続する第2の側壁部14a,14bの一部が、一対の第2の側壁部14a,14bの外側を通過するように、ボス変位部25が上下方向へ変位可能に形成されていてもよい。
【0044】
○ 実施形態において、スリット20は、一対の第2の側壁部14a,14bにおける一方のボス16側に形成されていたが、これに限らず、一対の第2の側壁部14a,14bにおいて、スリット20の形成位置は特に限定されなくてもよい。
【0045】
○ 実施形態において、スリット20を、一対の第2の側壁部14a,14bにおける一方のボス16寄りに形成し、ボス変位部25を一方のボス16側のみに設けたが、スリット20を両方のボス16寄りに形成し、ボス変位部25を両方のボス16側に形成してもよい。
【0046】
○ 実施形態において、スリット20は、開口11a側が開放されるとともに、底壁部12側が第2の側壁部14a,14bの範囲内で閉塞していたが、これに限らず、例えば、スリット20は、開口11a側が開放されるとともに、底壁部12側が第2の側壁部14a,14bを貫通して底壁部12の範囲内で閉塞していてもよい。
【0047】
○ 実施形態において、底壁部12は、一方の第1の側壁部13aから他方の第1の側壁部13bに向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように形成されていたが、これに限らない。例えば、底壁部12は、一方の第1の側壁部13a及び他方の第1の側壁部13bと交差するとともに、他方の第1の側壁部13bから一方の第1の側壁部13aに向かうにつれて開口11a側から離れるに従って直線状に降って延びるように形成されていてもよい。
【0048】
○ 実施形態において、配線ボックス11の周壁は、底壁部12、一対の第1の側壁部13a,13b及び一対の第2の側壁部14a,14bにより形成されていたが、これに限らない。例えば、他方の第1の側壁部13bを削除するとともに、底壁部12の直線状に延びる一方の短側縁及び一方の第1の側壁部13aの短側縁により、対向する一対の開口縁を形成する。このようにして、配線ボックス11の周壁が、底壁部12、一方の第1の側壁部13a及び一対の第2の側壁部14a,14bにより形成されていてもよい。また、当該底壁部12が一方の第1の側壁部13a側に向かうにつれて開口11a側から離れるに従って直線状に降って延びるように形成されていてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、配線ボックス11の周壁は、底壁部12、一対の第1の側壁部13a,13b及び一対の第2の側壁部14a,14bにより形成されていたが、これに限らない。例えば、他方の第1の側壁部13bを削除するとともに、底壁部12の直線状に延びる一方の短側縁及び一方の第1の側壁部13aの短側縁により、対向する一対の開口縁を形成する。そして、底壁部12が、底壁部12の直線状に延びる一方の短側縁から一方の第1の側壁部13a側に向かうにつれて膨出しながら弧状に湾曲するように形成されるとともに、その途中から一方の第1の側壁部13aに対して直交する方向へ直線状に延びるように形成されていてもよい。
【0050】
○ 実施形態において、配線ボックス11の周壁は、底壁部12、一対の第1の側壁部13a,13b及び一対の第2の側壁部14a,14bにより形成されていたが、これに限らない。例えば、他方の第1の側壁部13bを削除するとともに、底壁部12の直線状に延びる一方の短側縁及び一方の第1の側壁部13aの短側縁により、対向する一対の開口縁を形成する。そして、底壁部12が、底壁部12の直線状に延びる一方の短側縁から一方の第1の側壁部13a側に向かうにつれて開口11a側から離れるに従って直線状に降って延びる第1延設部と、第1延設部と一方の第1の側壁部13aとを繋ぐとともに一方の第1の側壁部13aに対して直交する方向へ直線状に延びる第2延設部とから構成されていてもよい。
【0051】
○ 実施形態において、底壁部12は、一方の第1の側壁部13aから他方の第1の側壁部13bに向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように形成されていたが、これに限らない。例えば、底壁部12の一部分であって、且つ底壁部12と他方の第1の側壁部13bとを繋ぐ部位が、一対のボス16のうちの一方側から他方側に向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように形成されていてもよい。また、底壁部12の一部分であって、且つ底壁部12と他方の第1の側壁部13bとを繋ぐ部位が、底壁部12及び他方の第1の側壁部13bと交差するとともに、他方の第1の側壁部13bから一方の第1の側壁部13a側に向かうにつれて開口11a側から離れるに従って直線状に降って延びるように形成されていてもよい。
【0052】
○ 実施形態において、配線ボックス11における開口11a側の内面には一対のボス16が設けられていたが、これに限らず、例えば、開口11a側の内面に、二対以上のボス16が設けられていてもよい。
【0053】
○ 実施形態において、配線ボックス11の開口11aは四角形状であったが、これに限らず、楕円形状、真円形状、小判形状、又は真円を一部分が重合するように二つ形成した略瓢箪状をなす開口であってもよい。なお、このような開口の形状を有する配線ボックス11は、その外郭が、柱H又は被取付体としての壁材に取付孔H1を穿設する際に使用される電動穿孔具の開口形状と略同一形状の外郭になるように周壁が形成されているのが好ましい。これによれば、電動穿孔具により穿設された取付孔H1の形状と、配線ボックス11の外郭の形状とが略同一になるため、例えば、鋸を用いて手作業で柱H又は壁材に取付孔H1を穿設する場合に、配線ボックス11の外郭の形状に合うように調整しながら取付孔H1を穿設するといった手間を省くことができる。よって、柱H又は壁材に取付孔H1を穿設した後、素早く配線ボックス11を柱H又は壁材に設置することができる。
【0054】
○ 実施形態において、保持枠21に取り付けられる配線器具はコンセントCNであったが、これに限らず、保持枠21に取り付けられる配線器具は、例えば、スイッチであってもよい。
【0055】
○ 実施形態において、配線ボックス11が設置される被取付体は屋外に設置される柱Hであったが、これに限らず、例えば、配線ボックス11が設置される被取付体が軽量間仕切壁を構築する壁材であってもよい。
【0056】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記被取付体は屋外に設置される柱であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の配線ボックス。
【0057】
(ロ)前記配線器具はコンセントであることを特徴とする請求項1〜請求項3、及び前記技術的思想(イ)のいずれか一項に記載の配線ボックス。
【符号の説明】
【0058】
CN…配線器具としてのコンセント、H…被取付体としての柱、H1…取付孔、11,41,81…配線ボックス、11a,41a,81a…開口、12,42,82…周壁の一部を形成する底壁部、13a,13b,43a,43b,83a,83b…周壁の一部を形成する第1の側壁部、14a,14b,44a,44b,84a,84b…周壁の一部を形成する第2の側壁部、16…ボス、17…フランジ部としての第1フランジ、18…フランジ部としての第2フランジ、19…係止部としての係止片、20,51…分断部としてのスリット、21…保持枠、25,45,86…ボス変位部、85…周壁の一部を形成する延在部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体に配線器具を設置するため、前記被取付体に形成された取付孔に差し込まれて前記被取付体に取り付けられるとともに、周壁により前面に開口を有する箱状に形成された配線ボックスであって、
前記周壁に前記配線器具の保持枠を固定するためのボスを互いに対向するように少なくとも一対備えるとともに、
前記周壁に分断部を備え、
前記分断部により前記ボスのうちの少なくとも一方と共に前記開口の内側に向けて変位可能であり、変位されると変位前の原位置に向けて変位可能なボス変位部を備え、
前記ボス変位部に外方へ突出するとともに前記被取付体における前記取付孔の周囲裏面に係止する係止部を備え、
さらに、前記被取付体における前記取付孔の周囲表面に当接し前記係止部と共に前記被取付体を挟み込むフランジ部を備え、
前記ボスに前記保持枠が固定されることで前記ボス変位部の変位が規制されるように構成されていることを特徴とする配線ボックス。
【請求項2】
前記分断部はスリットであるとともに、前記ボス変位部は前記スリットの開口幅分だけ変位可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線ボックス。
【請求項3】
前記周壁は、底壁部と、該底壁部の側縁から立設された側壁部とから形成されるとともに、
前記底壁部における少なくとも一部分は、前記ボスのうちの少なくとも一方側から他方側に向けて外方へ膨出しながら弧状に湾曲するように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配線ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−239548(P2011−239548A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108200(P2010−108200)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】