説明

配線冶具および配線方法

【課題】端子盤などに配置された端子台に、配線を容易に、かつ、見栄え良く接続することができる配線冶具および配線方法を提供する。
【解決手段】コネクタ接続可能な端子台に、コネクタが取り付けられた複数の配線を接続する際に用いる配線冶具10において、端子台の前面に配設可能に構成された平板部11と、平板部における端子台の配線接続口に対応した位置に記された目盛部13と、目盛部に対応した位置に形成された配線挿通孔17と、複数の配線の立上り部または立下り部から配線接続口までの横引き長さが略同一になるように配線挿通孔に挿通された複数の配線を切断可能に構成された切断溝19と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線冶具および配線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子盤などに配置されたコネクタに配線を接続する作業は、作業員が一本ずつ手作業で接続作業を行っている。一つの盤内には、かなりの本数の配線が接続されるため、その仕上げ状態の見栄えは個人差が大きく、見栄えを良くするためには長年の経験と勘が必要な作業である。このような問題を解消するために、特許文献1の配電盤、制御盤などの布線方法が提案されている。特許文献1の配電盤、制御盤などの布線方法は、投影盤上に配線ダクトを配設し、投影機により収納機器の配置図を投影盤上に投影し、写し出された収納機器相互間の接続電線を順次配線ダクト内に収納するとともに、各電線の端部を対応する収納機器の端子位置に突出させて配線組を構成した後、その配線ダクトを電気機器内に組み込み、電気機器内に配置された収納機器の端子と電線端部とを接続するものである。
【特許文献1】特開昭63−171103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の特許文献1の布線方法は、配線接続後の見栄えは良くなるものの配線ダクトを用いているため、部品点数が増え、製造コストが上昇するという問題があった。また、この布線方法では、収納機器の端子に接続される側の処理は容易に行うことができるものの、電線の他方の端部が電気機器外に配置された機器類などと接続される場合には、逆に手間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、端子盤などに配置された端子台に、配線を容易に、かつ、見栄え良く接続することができる配線冶具および配線方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、コネクタ接続可能な端子台に、コネクタが取り付けられた複数の配線を接続する際に用いる配線冶具において、前記端子台の前面に配設可能に構成された平板部と、該平板部における前記端子台の配線接続口に対応した位置に記された目盛部と、該目盛部に対応した位置に形成された配線挿通孔と、前記複数の配線の立上り部または立下り部から前記配線接続口までの横引き長さが略同一になるように前記配線挿通孔に挿通された前記複数の配線を切断可能に構成された切断溝と、を有していることを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記平板部の側部に、前記端子台と結束するための凹部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記平板部に対して回動可能に取り付けられ、支持面に支持可能に構成された支持脚が設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載した発明は、前記支持脚の長さが調節可能に構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載した発明は、少なくとも前記平板部が、アクリルで形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項6に記載した発明は、コネクタ接続可能な端子台に、コネクタが取り付けられた複数の配線を接続する際に、前記端子台の前面に配設可能に構成された平板部と、該平板部における前記端子台の配線接続口に対応した位置に記された目盛部と、該目盛部に対応した位置に形成された配線挿通孔と、前記複数の配線の立上り部または立下り部から前記配線接続口までの横引き長さが略同一になるように前記配線挿通孔に挿通された前記複数の配線を切断可能に構成された切断溝と、を有した配線冶具を用いて行う配線方法であって、前記目盛部と前記配線接続口との位置を合わせながら前記平板部を前記端子台の前面に配設する工程と、前記平板部と前記端子台とを結束する工程と、前記配線挿通孔に前記複数の配線を挿通する工程と、前記切断溝に沿って前記複数の配線を切断する工程と、前記複数の配線の端部に前記コネクタを取り付ける工程と、前記コネクタを前記配線接続口に接続する工程と、前記複数の配線の立上り部または立下り部を結束する工程と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、配線冶具を端子台の前面に置き、配線接続口の位置に対応した配線挿通孔に最終的にコネクタ接続する配線を挿通して、カッターなどを用いて切断溝に沿って配線を切断するだけで、横引き長さが略同一になるように配線を切断することができる。つまり、複数の配線の立上り部または立下り部を揃えた状態で配線を切断することにより、配線の横引き長さを略同一にすることができ、配線を見栄え良く納めることができる。また、配線を配線挿通孔に挿通させて、切断溝に沿って配線を切断するだけでよいため、熟練した作業員でなくとも容易に短時間で作業を行うことができ、また、見栄え良く納めることができる。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、凹部に結束線を係止することができ、確実に平板部と端子台とを結束することができる。したがって、配線を所定の長さで切断することができ、配線を見栄え良く納めることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、平板部を支持脚により支持することで、より安定して平板部を配置させることができる。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、支持面の高さに影響されることなく平板部を端子台に配置させることができる。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、軽量化を図ることができ、持ち運びにも便利な配線冶具を提供することができる。また、短絡防止を図ることができるため、作業安全性を確保することができる。
【0016】
請求項6に記載した発明によれば、配線冶具を端子台の前面に置き、配線接続口の位置に対応した配線挿通孔に最終的にコネクタ接続する配線を挿通して、カッターなどを用いて切断溝に沿って配線を切断するだけで、横引き長さが略同一になるように配線を切断することができる。つまり、複数の配線の立上り部または立下り部を揃えた状態で配線を切断することにより、配線の横引き長さを略同一にすることができ、配線を見栄え良く納めることができる。また、配線を配線挿通孔に挿通させて、切断溝に沿って配線を切断するだけでよいため、熟練した作業員でなくとも容易に短時間で作業を行うことができ、また、見栄え良く納めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(配線冶具)
次に、本発明の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
図1に示すように、配線冶具10は、例えば透明なアクリル板で形成された平板部11と、該平板部11の表面11aにおける配線31を接続する端子台41の配線接続口42に対応した位置に記された目盛13と、平板部11の表面11aに設けられた配線挿通部15と、該配線挿通部15における目盛13に対応した位置に形成された配線挿通孔17と、配線挿通部15に形成され、配線挿通孔17に挿通された配線31を切断可能な切断溝19と、を備えている。
【0018】
平板部11は、端子台41の形状に対応した形状を有しており、本実施形態では縦方向(垂直方向)に40端子分の大きさを有したものを採用している。また、透明なアクリル板を用いることにより、端子台41の前面41aに平板部11を配置したときに端子台41を視認することができるため、平板部11に記された目盛13と端子台41の配線接続口42との位置合わせを容易に行うことができる。
【0019】
配線挿通部15は、平板部11の縦方向(垂直方向)に沿って略直方体形状に形成され、平板部11の表面11aに設けられている。配線挿通部15には、目盛13に対応した位置に横方向(水平方向)に貫通した配線挿通孔17が形成されている。一つの配線挿通孔17には一本の配線31が挿通できるようになっている。つまり、本実施形態では40個の配線挿通孔17が縦方向(垂直方向)に形成されている。また、配線挿通部15の表面には縦方向(垂直方向)に沿って切断溝19が形成されている。切断溝19は、配線挿通孔17を臨む深さまで形成されている。つまり、切断溝19にカッターなどを挿入して、切断溝19に沿ってカッターを移動させることにより、配線挿通孔17に挿通された配線31を切断できるようになっている。
【0020】
また、本実施形態では、平板部11が40端子分の大きさを有しているが、一般的な端子台41は縦方向に20端子ずつ分離して配置されている。この形状に対応するように配線端子部15は、縦方向に20端子分ずつの大きさを有するように形成されている。
【0021】
さらに、平板部11における、2つに分割配置された配線端子部15の境界部に対応した位置には、凹部21が一方の側部に形成されている(本実施形態では、2箇所)。この凹部21に結束線を用いることで、端子台41と平板部11とを結束し易くなっている。
【0022】
そして、平板部11の上端近傍に回動軸23が水平方向に沿うように設けられており、回動軸23には支持脚25が回動自在に設けられている。支持脚25は回動軸23の両端部から2本延設されている。また、2本の支持脚25はそれぞれ伸縮自在に構成されている。
【0023】
一方、図2に示すように、端子台41は、端子盤40に取り付けられ、配線31とコネクタ接続できるように構成されたものである。本実施形態では、縦方向(垂直方向)に20個の配線接続口42が形成された端子台41が用いられ、その端子台41が2個縦方向に直列に配置されている。つまり、縦方向に40個の配線接続口42が並んでいる。
【0024】
(配線接続工程)
次に、端子台41に配線31を接続する工程を説明する。なお、本実施形態では配線31の束を端子盤40の下方から立ち上げて端子台41に接続する場合の説明をする。
まず、図3に示すように、端子盤40に取り付けられた端子台41の前面41aに配線冶具10の平板部11を配置する。このとき、目盛13と配線接続口42との位置を合わせるようにして平板部11を配置する。
【0025】
平板部11が適正位置に配置されたら、平板部11と端子台41とを結束線32にて結束する。このとき、平板部11の凹部21に結束線32を係止させるようにすると、確実に結束させることができる。また、平板部11を端子台41に取り付ける際に、作業床などの支持面に支持脚25を当接させて、平板部11を適正位置に保持するようにすることができる。
【0026】
図4に示すように、端子盤40の下方から案内されてきた複数の配線31の束を端子台41の側部に沿うように立ち上げる。そして、各配線31を接続する適正な位置の配線接続口42に対応した配線挿通孔17に配線31を挿通する。
【0027】
図5に示すように、全ての配線31を配線挿通孔17に挿通した後、配線31の立上り部33をたるみなどがないように束ねた状態で、配線31の立上り部33を結束バンド36などで結束した後、切断溝19にカッターなどを挿入して全ての配線31を切断する。
【0028】
図6に示すように、配線31を全て切断した後、配線挿通孔17から配線31を取り出し、その先端部にコネクタ35を取り付ける。
【0029】
そして、図7に示すように、コネクタ35を取り付けた配線31を、端子台41の適正な配線接続口42に接続することで、配線接続作業が完了する。
なお、配線冶具10は、配線31を切断して、配線挿通孔17から取り出した後に、端子台41から取り外してよい。
【0030】
本実施形態によれば、配線冶具10を端子台41の前面41aに置き、配線接続口42の位置に対応した配線挿通孔17に最終的にコネクタ接続する配線31を挿通して、カッターなどを用いて切断溝19に沿って配線31をまとめて切断するだけで、横引き長さが略同一になるように配線31を切断することができる。つまり、複数の配線31の立上り部33を揃えた状態で配線31を切断することにより、配線31の横引き長さを略同一にすることができ、配線31を見栄え良く納めることができる。また、配線31を配線挿通孔17に挿通させて、切断溝19に沿って配線31を切断するだけでよいため、熟練した作業員でなくとも容易に短時間で作業を行うことができ、また、見栄え良く納めることができる。
【0031】
また、平板部11に凹部21を形成することで、凹部21に結束線32を係止することができ、確実に平板部11と端子台41とを結束することができる。したがって、配線31を所定の長さで切断することができ、配線31を見栄え良く納めることができる。
【0032】
また、平板部11を支持脚25により支持するようにすることで、より安定して平板部11を配置させることができる。さらに、支持脚25を伸縮自在にすることで、支持面の高さに影響されることなく平板部11を端子台41の適正位置に配置させることができる。
【0033】
そして、平板部11をアクリルで形成することにより、軽量化を図ることができ、持ち運びにも便利な配線冶具10を提供することができる。また、短絡防止を図ることができるため、作業安全性を確保することができる。
【0034】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、配線を端子盤の下方から盤内で立ち上げるようにして接続する場合の説明をしたが、配線を端子盤の上方から盤内で立ち下げるようにして接続する場合に採用してもよい。
また、本実施形態では、平板部をアクリルで形成した場合の説明をしたが、樹脂材料であればよい。また、本実施形態では、平板部に透明なアクリル板を用いたが、透明でなくてもよい。
また、本実施形態では、支持脚を伸縮できるように構成したが、支持脚の長さは固定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態における配線冶具の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における端子台の正面図である。
【図3】本発明の実施形態における配線方法の説明図(1)である。
【図4】本発明の実施形態における配線方法の説明図(2)である。
【図5】本発明の実施形態における配線方法の説明図(3)である。
【図6】本発明の実施形態における配線方法の説明図(4)である。
【図7】本発明の実施形態における配線方法の説明図(5)である。
【符号の説明】
【0036】
10…配線冶具 11…平板部 13…目盛(目盛部) 17…配線挿通孔 19…切断溝 21…凹部 25…支持脚 31…配線 33…立上り部 35…コネクタ 41…端子台 41a…前面 42…配線接続口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ接続可能な端子台に、コネクタが取り付けられた複数の配線を接続する際に用いる配線冶具において、
前記端子台の前面に配設可能に構成された平板部と、
該平板部における前記端子台の配線接続口に対応した位置に記された目盛部と、
該目盛部に対応した位置に形成された配線挿通孔と、
前記複数の配線の立上り部または立下り部から前記配線接続口までの横引き長さが略同一になるように前記配線挿通孔に挿通された前記複数の配線を切断可能に構成された切断溝と、を有していることを特徴とする配線冶具。
【請求項2】
前記平板部の側部に、前記端子台と結束するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線冶具。
【請求項3】
前記平板部に対して回動可能に取り付けられ、支持面に支持可能に構成された支持脚が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の配線冶具。
【請求項4】
前記支持脚の長さが調節可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の配線冶具。
【請求項5】
少なくとも前記平板部が、アクリルで形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配線冶具。
【請求項6】
コネクタ接続可能な端子台に、コネクタが取り付けられた複数の配線を接続する際に、
前記端子台の前面に配設可能に構成された平板部と、
該平板部における前記端子台の配線接続口に対応した位置に記された目盛部と、
該目盛部に対応した位置に形成された配線挿通孔と、
前記複数の配線の立上り部または立下り部から前記配線接続口までの横引き長さが略同一になるように前記配線挿通孔に挿通された前記複数の配線を切断可能に構成された切断溝と、を有した配線冶具を用いて行う配線方法であって、
前記目盛部と前記配線接続口との位置を合わせながら前記平板部を前記端子台の前面に配設する工程と、
前記平板部と前記端子台とを結束する工程と、
前記配線挿通孔に前記複数の配線を挿通する工程と、
前記切断溝に沿って前記複数の配線を切断する工程と、
前記複数の配線の端部に前記コネクタを取り付ける工程と、
前記コネクタを前記配線接続口に接続する工程と、
前記複数の配線の立上り部または立下り部を結束する工程と、を備えていることを特徴とする配線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−11614(P2010−11614A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167006(P2008−167006)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(399039719)東日本電気エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】