説明

配線基板の製造方法及び配線基板

【課題】電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板の製造方法は、導電層11上に樹脂層10を形成する工程と、樹脂層10に貫通孔Vを形成し、該貫通孔Vに導電層11上面の一部を露出させる工程と、樹脂層10及び導電層11の表面に有機珪素化合物を結合させるとともに、前記有機珪素化合物に前記貴金属化合物を結合させる工程と、導電層11に結合した前記有機珪素化合物を、樹脂層10に結合した有機珪素化合物よりも多く遊離させる工程と、めっき処理を行うことにより、樹脂層10及び導電層11の表面に貫通導体Vを被着させると工程と、を備えている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器及びその周辺機器)等に使用される配線基板の製造方法及び配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
特許文献1には、導体配線層(導電層)上に樹脂からなる絶縁層(樹脂層)を形成する工程と、前記導体配線層上にて前記絶縁層に貫通孔を形成し、該貫通孔に前記導体配線層上面の一部を露出させる工程と、前記貫通孔内壁に陽イオン界面活性剤を付着させた後、メッキ用触媒核を前記貫通孔内壁に付着させる工程と、前記貫通孔内壁に無電解銅メッキを行い、ビア(貫通導体)を形成する工程と、を備えた配線基板の製造方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、基材(樹脂層)にスルーホールを形成する工程と、シランカップリング剤及び貴金属化合物を含む無電解めっき用触媒を前記スルーホール側壁に付着させる工程と、前記スルーホール側壁に無電解銅メッキを行う工程と、を備えた配線基板の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献1の製造方法においては、貫通孔に露出した導電層上面に陽イオン界面活性剤が残存し、導電層と貫通導体との間に有機材料が介在されることになる。
【0006】
また、特許文献1において、陽イオン界面活性剤及びメッキ用触媒核の代わりに、特許文献2の無電解めっき用触媒を用いたとしても、陽イオン界面活性剤は残存しないが、貫通孔に露出した前記導電層上面にシランカップリング剤が残存し、導電層と貫通導体との間に有機材料が介在されることになる。
【0007】
それ故、電子部品の実装時や作動時等に熱が配線基板に印加されると、無機材料と有機材料との熱膨張率の違いにより、導電層と貫通導体との間に応力が印加されてクラックが生じ、導電層と貫通導体とが断線しやすくなり、ひいては配線基板の電気的信頼性が低下しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10‐075038号公報
【特許文献2】WO2007/032222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法は、導電層上に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層に貫通孔を形成し、該貫通孔に前記導電層上面の一部を露出させる工程と、前記樹脂層及び前記導電層の表面に有機珪素化合物を結合させるとともに、前記有機珪素化
合物に前記貴金属化合物を結合させる工程と、前記導電層に結合した前記有機珪素化合物を、前記樹脂層に結合した前記有機珪素化合物よりも多く遊離させる工程と、めっき処理を行うことにより、前記樹脂層及び前記導電層の表面に貫通導体を被着させると工程と、を備えている。
【0011】
本発明の一形態にかかる配線基板は、導電層と、該導電層上に形成された樹脂層と、前記導電層上にて前記樹脂層を厚み方向に貫通した貫通孔と、該貫通孔に形成された、前記導電層に電気的に接続する貫通導体と、前記樹脂層と前記貫通導体との間に介された、有機珪素化合物を含む介在層と、を備え、前記導電層は、前記貫通孔に接続するとともに前記貫通孔よりも開口が大きく、前記導電層上面及び前記樹脂層下面により囲まれた凹部を有し、前記貫通導体は、前記凹部に充填されてなる、前記導電層上面及び前記樹脂層下面に接着された突出部を有し、前記貫通導体の突出部は、前記有機珪素化合物を介して前記樹脂層下面と接着されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一形態にかかる配線基板及びその製造方法によれば、導電層と貫通導体との間にて有機材料の残存量を低減することができる。その結果、電気的信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる実装構造体を厚み方向に切断した断面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示した実装構造体のR1部分を拡大して示した断面図であり、図2(b)は、図2(a)のI−I線に沿う平面方向に切断した断面図である。
【図3】図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図4】図1に示す実装構造体の製造工程を説明する、図3(c)のR2部分を拡大して示した断面図である。
【図5】図1に示す実装構造体の製造工程を説明する、図3(c)のR2部分を拡大して示した断面図である。
【図6】図1に示す実装構造体の製造工程を説明する、図3(c)のR2部分を拡大して示した断面図である。
【図7】図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図8】図8(a)は、本発明の他の実施形態にかかる実装構造体において、図1に示した実装構造体のR1部分に相当する部分を拡大して示した断面図であり、図8(b)は、図8(a)のII−II線に沿う平面方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板を含む実装構造体を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置又はその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2及び配線基板3を含んでいる。
【0016】
電子部品2は、例えばIC又はLSI等の半導体素子であり、配線基板3に半田等の導電バンプ4を介してフリップチップ実装されている。この電子部品2は、母材が、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム又は炭化珪素等の半導体材料により形成されている。電子部品2としては、厚みが例えば0.1mm以
上1mm以下のものを使用することができる。なお、厚みは、電子部品2の研摩面若しくは破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、厚み方向(Z方向)に沿った長さを10箇所以上測定し、その平均値を算出することにより測定される。
【0017】
配線基板3は、コア基板5とコア基板5の上下に形成された一対の配線層6とを含んでいる。
【0018】
コア基板5は、配線基板3の強度を高めつつ一対の配線層6間の導通を図るものであり、厚みが例えば0.3mm以上1.5mm以下に形成されている。このコア基板5は、基体7、スルーホールT、スルーホール導体8、及び絶縁体9を含んでいる。なお、厚みは、電子部品2と同様に測定される。
【0019】
基体7は、例えば樹脂により形成され、樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリエーテルケトン樹脂等を使用することができる。
【0020】
また、基体7は、樹脂に被覆された基材を含んでも構わない。基材としては、繊維により構成された織布若しくは不織布又は繊維を一方向に配列したものを使用することができる。繊維としては、例えばガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維又は金属繊維等を使用することができる。また、基体7の熱膨張率は、例えば1ppm/℃以上16ppm/℃以下に設定されている。かかる熱膨張率は、ISO11359‐2:1999に準ずる。
【0021】
基体7には、該基体7を厚み方向(Z方向)に貫通する複数のスルーホールTが設けられており、スルーホールTの内壁に沿ってスルーホール導体8が円筒状に形成されている。スルーホール導体8は、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するものであり、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料により形成されたものを使用することができる。円筒状のスルーホール導体8の内部には、絶縁体9が柱状に形成されている。絶縁体9は、後述するビア導体12の支持面を形成するものであり、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料により形成されたものを使用することができる。
【0022】
一方、コア基板5の両側には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、図2に示すように、複数の樹脂層10と、基体7上又は樹脂層10間又は樹脂層10上に形成された複数の導電層11と、樹脂層10を貫通する複数のビア孔Vの内部に形成された複数のビア導体12(貫通導体)と、樹脂層10とビア導体12との間に介された介在層13と、を含んでいる。導電層11及びビア導体12は、互いに電気的に接続されており、配線部を構成している。この配線部は、接地用配線、電力供給用配線及び/又は信号用配線を含む。
【0023】
複数の樹脂層10は、導電層11を支持する支持部材として機能するだけでなく、導電層11同士の短絡を防ぐ絶縁部材として機能するものであり、厚みが例えば10μm以上50μm以下となるように形成されている。樹脂層10としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリエーテルケトン樹脂等樹脂等の樹脂材料により形成されたものを使用することができ、熱膨張率が例えば0ppm/℃以上60ppm/℃以下に設定されたものを使用することができる。
【0024】
樹脂層10は、フィラー14を含有していることが望ましい。その結果、樹脂層10の熱膨張率を低減させることができる。フィラー14としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、又は水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、等のセラミック材料により形成されたものを用いることができ、熱膨張率が例えば−5ppm/℃以上10ppm/℃以下に設定されたものを用いることができる。
【0025】
導電層11は、接地用配線、電力供給用配線及び/又は信号用配線として機能するものであり、第1樹脂接着層12aを介して無機絶縁層11上に形成されており、第2樹脂接着層12b、無機絶縁層11及び第1樹脂接着層12aを介して厚み方向に互いに離間している。導電層11としては、酸化により塩基性化合物となる金属材料により形成されたものを使用することができ、該金属材料としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の金属材料により形成されたものを使用することができ、厚みが3μm以上30μm以下に設定され、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0026】
また、導電層11には、ビア孔Vの直下領域に、導電層11上面から窪んで成るとともにビア孔Vと接続する凹部Cが形成されている。凹部Cは、ビア孔Vの下端開口V1よりも平面方向への幅が大きく、少なくとも一部が、ビア孔Vの下端開口V1周辺において樹脂層10の下方に位置する。すなわち、樹脂層10下面の一部が凹部Cに露出している。また、ビア孔Vの下端開口V1は、平面視において、全体が凹部Cと重畳することが望ましい。
【0027】
ビア導体12は、厚み方向に互いに離間した導電層11同士を相互に接続するものであり、コア基板5に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体12としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロムの金属材料により形成されたものを使用することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0028】
ビア導体12は、ビア孔V内に形成された貫通部12aと、凹部C内に充填された突出部12bと、を有し、突出部12bの少なくとも一部がビア孔Vの下端開口V1周辺において樹脂層10の下方に配されている。その結果、アンカー効果により、導電層11とビア導体12との接着強度を高めることができるため、配線基板3に熱が印加された際、樹脂層10とビア導体12との厚み方向における熱膨張率の違いに起因した導電層11とビア導体12との間のクラックを低減できる。
【0029】
介在層13は、有機珪素化合物(シランカップリング剤)及び貴金属化合物(めっき触媒)を含み、樹脂層10とビア導体12とは、該有機珪素化合物を介して接着されている。具体的には、樹脂層10の樹脂材料と有機珪素化合物とが化学的に結合し、有機珪素化合物と貴金属化合物とが化学的に結合し、貴金属化合物とビア導体12の金属材料とが化学的に結合することにより、樹脂層10とビア導体12とが接着されている。その結果、かかる化学的結合により樹脂層10とビア導体12との接着強度を高めることができ、配線基板に熱が印加された際に、樹脂層10とビア導体12との熱膨張率の違いに起因した樹脂層10とビア導体12との剥離を低減することができるため、該剥離が伸長して樹脂層10の下面と突出部12bの上面との間にまで達することを低減できる。したがって、樹脂層10の下面と突出部12bの上面との剥離を低減できるため、後述するように、突出部12bと導電層11との接続部における接続信頼性を高めることができる。
【0030】
介在層13の厚みは、例えば0.01μm以上0.2μm以下に設定されている。かか
る厚みは、後述する方法により、有機珪素化合物及び貴金属化合物を検出し、その厚み方向(Z方向)に沿った長さを10箇所以上測定し、その平均値を算出することにより測定
される。
【0031】
有機珪素化合物としては、樹脂材料と化学的に結合する官能基と、貴金属化合物と化学的に結合する官能基と、を有するものを用いることができ、樹脂材料と化学的に結合する官能基は、例えばアミノ基、エポキシ基、メルカプト基又はメタクリロキシ基であり、基貴金属化合物と化学的に結合する官能基は、例えばイソシアネート基又はアクリロキシ基等である。また、導電層11表面に金属酸化物が形成されている場合、有機珪素化合物は、イソシアネート基又はアクリロキシ基を介して金属酸化物に結合される。
【0032】
このような有機珪素化合物としては、例えばγ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又はN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を用いること
ができる。この有機珪素化合物は、配線基板3を切断した断面をPerkinElmer社製 顕微FT‐IR装置(フーリエ変換赤外分光光度計) Spotlight200型を用いて観察することにより、検出することができる。
【0033】
貴金属化合物としては、貴金属のハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、有機酸との塩又は貴金属石鹸等を用いることができ、貴金属としては、パラジウム、銀、白金又は金等を用いることができ、なかでも、パラジウム化合物を用いることが望ましい。この貴金属化合物は、配線基板3を切断した断面を日本電子社製 EPMA装置(電子プローブマイクロアナライザ) JXA‐8200型を用いて観察することにより、検出することができる。
【0034】
ところで、ビア導体12の突出部12bと導電層11との接続部は、一体形成されたビア導体12の貫通部12aと突出部12bとの接続部と比較して、接着強度が低くなりやすい。したがって、配線基板に熱が印加された際に、樹脂層10がビア導体12よりも厚み方向に大きく熱膨張し、樹脂層10によって上方に位置する導電層11と下方に位置する導電層11とが押圧されると、ビア導体12の突出部12bと導電層11との接続部に応力が印加され、該接続部にクラックが生じることがある。
【0035】
また、配線基板に熱が印加された際に、樹脂層10とビア導体12の突出部12bとの平面方向における熱膨張率の違いに起因して、樹脂層10下面と突出部12b上面との間に剥離が生じると、該剥離が突出部12bと導電層11との接続部の端部に達し、該剥離を起点として、突出部12bと導電層11との接続部にクラックが生じやすくなる。
【0036】
一方、本実施形態の配線基板3においては、介在層13が、樹脂層10下面とビア導体12の突出部12b上面との間に介されており、樹脂層10下面とビア導体12の突出部12b上面とは、有機珪素化合物を介して接着されている。その結果、樹脂層10下面とビア導体12の突出部12b上面との接着強度を高め、樹脂層10下面とビア導体12の突出部12b上面との剥離を低減することができるため、ビア導体12の突出部12bと導電層11との接続部におけるクラックを低減することにより、該接続部における接続信頼性を高め、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【0037】
また、介在層13は、ビア導体12の突出部12a下面と導電層11上面との間に介されている場合、有機珪素化合物の含有量が、ビア導体12の突出部12a下面と導電層11上面との間よりも、ビア導体12の突出部12a上面と樹脂層10下面との間において大きい。それ故、ビア導体12の突出部12a下面と導電層11上面との間においては、有機珪素化合物の含有量を低減することにより、有機材料と無機材料との熱膨張率の違いに起因したビア導体12の突出部12bと導電層11との接続部のクラックを低減することができる。
【0038】
また、かかるクラック低減の観点から、ビア導体12の突出部12a下面と導電層11上面との間には、介在層13が介されておらず、有機珪素化合物が上述した検出方法の検出感度未満の含有量であることが望ましい。
【0039】
かくして、上述した実装構造体1は、配線基板3を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0040】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図3から図7に基づいて説明する。
【0041】
(1)図3(a)に示すように、コア基板5を準備する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0042】
まず、例えば未硬化樹脂と基材とを含む複数の樹脂シートを積層し、加熱加圧して未硬化樹脂を硬化させることにより、基体7を作製する。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA‐ステージ又はB‐ステージの状態である。次に、例えばドリル加工やレーザー加工等により、基体7を厚み方向に貫通したスルーホールTを形成する。次に、例えば無電解めっき法、電気めっき法、蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等により、スルーホールTの内壁に導電材料を被着させて、円筒状のスルーホール導体8を形成する。また、基体7の上面及び下面に導電材料を被着させて、導電材料層を形成する。次に、円筒状のスルーホール導体8の内部に、樹脂材料等を充填し、絶縁体9を形成する。次に、導電材料を絶縁体9の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術、エッチング等により、導電層材料層をパターニングして導電層11を形成する。
【0043】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0044】
(2)図3(b)及び(c)に示すように、コア基板7の両側に樹脂層10を形成し、該樹脂層10にビア孔Vを形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0045】
まず、未硬化の樹脂を導電層11上に配置し、樹脂を加熱して流動密着させつつ、更に加熱して樹脂を硬化させることにより、導電層11上に樹脂層10を形成する。次に、例えばYAGレーザー装置又は炭酸ガスレーザー装置により、樹脂層10にビア孔Vを形成し、ビア孔V内に導電層11の少なくとも一部を露出させる。
【0046】
(3)図4に示すように、ビア孔V内に露出した導電層11の上面に凹部Cを形成する。
【0047】
具体的には、過酸化水素水と硫酸との混合水溶液又は過硫酸ナトリウムの水溶液等のエッチング液を用いて、ビア孔Vから厚み方向及び平面方向に沿って導電層11をエッチングすることにより、導電層11から窪んでなるとともにビア孔Vと接続する凹部Cを形成し、該凹部Cに樹脂層10下面の一部を露出させる。かかるエッチングは、ビア孔Vが形成された樹脂層10及び該ビア孔V内に露出した導電層11を例えば25℃以上35℃以下のエッチング液に例えば1分以上5分以下浸漬することにより行うことができる。
【0048】
なお、本工程にて、エッチング液は、過酸化水素水溶液等の酸化剤を含むため、エッチングされた導電層11の表面が酸化され、導電層11の表面にて金属酸化物が形成される。
【0049】
(4)図5(a)に示すように、貴金属化合物及び有機珪素化合物を含む触媒溶液を用いて、樹脂層10及び導電層11の表面に貴金属化合物及び有機珪素化合物を吸着させる。
【0050】
かかる吸着は、ビア孔Vが形成された樹脂層10及びエッチングされた導電層11を例えば20℃以上40℃以下の触媒溶液に例えば1分以上5分以下浸漬することにより行うことができる。このような、触媒溶液は、貴金属化合物及び有機珪素化合物を例えば1体積%以上30体積%以下含む。
【0051】
なお、触媒溶液において、貴金属化合物及び有機珪素化合物は、化学的に結合していることが望ましい。また、本工程においては、貴金属化合物及び有機珪素化合物は、樹脂層10及び導電層11の表面に、電気的な弱い結合、すなわち吸着をした状態となっていると推定される。
【0052】
(5)図5(b)に示すように、塩酸又は硫酸等の酸性溶液を用いて、導電層11に吸着した有機珪素化合物を、樹脂層10に吸着した有機珪素化合物よりも多く遊離させる。
【0053】
有機珪素化合物の遊離は、有機珪素化合物が吸着した樹脂層10及び導電層11を例えば20℃以上50℃以下の酸性溶液に例えば1分以上10分以下浸漬することにより行うことができる。
【0054】
ここで、導電層11は表面に金属酸化物が形成されており、該金属酸化物に有機珪素酸化物が吸着しているため、酸と酸化物の化学反応によって、酸性溶液に金属酸化物を溶解させることにより、導電層11から有機珪素化合物を遊離させることができる。
【0055】
ところで、有機珪素化合物を用いない場合、例えば、樹脂層10表面を陽イオン界面活性剤で処理させた後、樹脂層10表面にマイナスに帯電した貴金属を含むコロイドの触媒を吸着させる方法があるが、この方法では、導電層11上面に残存した陽イオン界面活性剤をエッチングで除去するため、エッチング工程の前に陽イオン界面活性剤処理を行う必要がある。このため、エッチング工程にて凹部Cに露出する樹脂層10の下面に陽イオン界面活性剤処理を行うことができず、触媒の吸着が抑制されるため、めっき処理により凹部C内にビア導体12の突出部12a形成した場合、凹部内に露出した樹脂層10の下面にめっきが被着しにくい。
【0056】
一方、本実施形態の配線基板3の製造方法においては、貴金属化合物及び有機珪素化合物を用いて、凹部Cに露出した樹脂層10下面に貴金属化合物を吸着させつつ、酸性溶液を用いて導電層11上面に吸着した貴金属化合物及び有機珪素化合物を遊離させて除去できるため、凹部内に露出した樹脂層10の下面にめっきを良好に被着させるとともに、導電層11とビア導体12との間における貴金属化合物及び有機珪素化合物の残存量を低減することができる。なお、導電層11に吸着した有機珪素化合物は、上述した方法の検出感度未満の残存量となるまで遊離させることが望ましい。
【0057】
(6)水酸化ホウ素ナトリウム水溶液又次亜リン酸ナトリウム水溶液等の還元剤を用いて、貴金属化合物を還元させる。その結果、イオン化した貴金属化合物を脱イオン化させることにより、貴金属化合物の触媒活性を発現させることができる。
【0058】
貴金属化合物の還元は、貴金属化合物が結合した樹脂層10及び導電層11を例えば50℃以上90℃以下の還元剤に例えば1分以上10分以下浸漬することにより行うことができる。
【0059】
(7)図6及び図7(a)に示すように、めっき処理を行うことにより、樹脂層10の表面及び導電層11の表面にビア導体12を被着させるとともに、樹脂層10上面に導電層11を被着させる。
【0060】
具体的には、無電解めっき法及び電気めっき法を用いて、例えばセミアディティブ法、フルアディティブ法又はサブトラクティブ法により、ビア導体12及び導電層11を形成する。すなわち、樹脂層10表面に結合した貴金属化合物を触媒として、無電解めっき法により金属材料を被着させることができ、さらに電気めっき法により金属材料を被着させることにより、ビア孔V内にビア導体12を形成するとともに、樹脂層10上に導電層11を形成することができる。かかる金属材料の被着は、貴金属化合物が結合した樹脂層10及び導電層11を、例えば20℃以上40℃以下の無電解めっき液に例えば5分以上30分以下浸漬した後、例えば30℃以上50℃以下の電気めっき液に例えば1a/dm
以上2a/dm以下の電流密度で30分以上60分以下浸漬することにより行うことが
できる。
【0061】
ここで、無電解めっき法により金属材料を被着させた後、熱処理を行うことが望ましい。これにより、貴金属化合物及び有機珪素化合物を樹脂層10の樹脂材料に化学的に結合させることができると推定される。なお、かかる熱処理は、例えば60℃以上100℃以下の温度で3分以上10分以下行われる。
【0062】
(8)図7(b)に示すように、上述した(2)乃至(7)の工程を繰り返すことにより、配線層6を形成し、配線基板3を作製することができる。
【0063】
(9)配線基板3にバンプ4を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1に示す実装構造体1を作製することができる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0065】
例えば、図8に示すように、介在層13Aは、導電層11Aとビア導体12Aとの間に部分的に形成されても構わない。
【0066】
また、上述した実施形態において、2層の樹脂層により配線層を形成した構成を例に説明したが、樹脂層は3層以上であっても構わない。
【0067】
また、上述した実施形態において、(4)の工程にて有機珪素化合物及び貴金属化合物を含む触媒溶液を用いた構成を例に説明したが、ビア孔内に導電層が露出した樹脂層を、有機珪素化合物を含む水溶液に浸漬して、樹脂層及び導電層の表面に有機珪素化合物を結合させた後、貴金属化合物を含む触媒溶液に浸漬して、有機珪素化合物に貴金属化合物を結合させても構わない。
【符号の説明】
【0068】
1 実装構造体
2 電子部品
3 配線基板
4 バンプ
5 コア基板
6 配線層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10、10A 樹脂層
11、11A 導電層
12、12A ビア導体
12a、12aA 突出部
13、13A 介在層
14、14A フィラー
T スルーホール
V、VA ビア孔
V1、V1A 下端開口
C、CA 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層上に樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層に貫通孔を形成し、該貫通孔に前記導電層上面の一部を露出させる工程と、
前記樹脂層及び前記導電層の表面に有機珪素化合物を結合させるとともに、前記有機珪素化合物に前記貴金属化合物を結合させる工程と、
前記導電層に結合した前記有機珪素化合物を、前記樹脂層に結合した前記有機珪素化合物よりも多く遊離させる工程と、
めっき処理を行うことにより、前記樹脂層及び前記導電層の表面に貫通導体を被着させると工程と、
を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記有機珪素化合物及び前記貴金属化合物を結合させる工程の前に、
前記貫通孔から厚み方向及び平面方向に沿って前記導電層をエッチングすることにより、前記導電層上面から窪んでなるとともに前記貫通孔と接続する凹部を形成し、該凹部に前記樹脂層下面の一部を露出させる工程を更に備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記導電層は、酸化により塩基性酸化物となる金属材料を含み、
前記有機珪素化合物を遊離させる工程は、
酸性溶液を用いることにより、前記導電層に結合した前記有機珪素化合物を遊離させることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記貴金属化合物は、パラジウム化合物であることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記有機珪素化合物を遊離させる工程の後、
還元剤を含む溶液を用いることにより、前記貴金属化合物を還元させる工程を更に備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の配線基板の製造方法により得られた配線基板上に電子部品を搭載し、該電子部品と前記貫通導体及び前記導電層とを電気的に接続させる工程を備えたことを特徴とする実装構造体の製造方法。
【請求項7】
導電層と、該導電層上に形成された樹脂層と、前記導電層上にて前記樹脂層を厚み方向に貫通した貫通孔と、該貫通孔に形成された、前記導電層に電気的に接続する貫通導体と、前記樹脂層と前記貫通導体との間に介された、有機珪素化合物を含む介在層と、を備え、
前記導電層は、前記貫通孔に接続するとともに前記貫通孔よりも開口が大きく、前記導電層上面及び前記樹脂層下面により囲まれた凹部を有し、
前記貫通導体は、前記凹部に充填されてなる、前記導電層上面及び前記樹脂層下面に接着された突出部を有し、
前記貫通導体の突出部は、前記有機珪素化合物を介して前記樹脂層下面と接着されていることを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項7に記載の配線基板において、
前記介在層は、前記貫通導体の突出部と前記導電層上面との間に介されており、前記有
機珪素化合物の含有量が、前記貫通導体の突出部と前記導電層上面との間よりも、前記貫通導体の突出部と前記樹脂層下面との間において大きいことを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項7に記載の配線基板と、
前記配線基板上に搭載され、前記貫通導体及び前記導電層に電気的に接続された電子部品と、
を備えたことを特徴とする実装構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−155196(P2011−155196A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16803(P2010−16803)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】