説明

配線基板

【課題】外部接続パッドの配置に対する設計自由度が高いとともに小型化が可能な配線基板を提供すること。
【解決手段】複数の差動線路が形成された絶縁基板1の下面に、前記差動線路に接続された複数の信号用外部接続パッド4Sのペアと該ペアに隣接して配置された複数の接地用外部接続パッド4Gとを含む多数の外部接続パッド4を格子状の配列で配設してなる配線基板であって、外部接続パッド4は、複数の信号用外部接続パッド4Sのペアが前記配列の最外周と最外周から2番目の列に互いに横に1格子ずれて横向きに並ぶように配置されているとともに、各ペアの両側に隣接する格子に接地用外部接続パッド4Gが1個ずつ配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路素子等の半導体素子を搭載するための配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に現在の電子機器は、高速化、大容量伝送化が顕著になってきている。それに伴い、電子機器に使用される配線基板は高周波伝送における電気的ロスの少ない形態が要求されている。そのため、特に高周波信号を伝送する伝送路を有する配線基板においては、二本の帯状配線導体が対になって互いに差動線路として機能するペア伝送路を備えたものが使用されている。このようなペア伝送路を備えた配線基板においては、配線基板を構成する絶縁基板の上面中央部に半導体素子の電極と半田バンプ等を介して電気的に接続される半導体素子接続パッドが形成されているとともに、この半導体素子接続パッドから絶縁基板の上面を外周部に向けて互いに所定の間隔で隣接して延びる一対の帯状配線導体を有している。さらに帯状配線導体における絶縁基板の外周側端部に絶縁基板を貫通する貫通導体の上端が接続されており、該貫通導体の下端は絶縁基板の下面に形成された外部接続パッドに接続されている。そして、前記半導体素子接続パッドから帯状配線導体および貫通導体を介して外部接続パッドに至るペア伝送路を介して配線基板に搭載される半導体素子と外部の電気回路基板との間で高速の信号が授受されることとなる。
【0003】
このような配線基板における外部接続パッドの配置を図4に示す。図4は、外部接続パッド14が形成された絶縁基板11の下面を示した平面図である。図4に示すように、絶縁基板11の下面には、多数の外部接続パッド14が格子状の配列で配設されている。外部接続パッド14は、信号用の差動線路に接続された複数の信号用外部接続パッド(図中、Sと記されているパッド)14Sと、接地電位に接続された接地用外部接続パッド(図中、Gと記され、ハッチングされたパッド)14Gとを含んでいる。
【0004】
信号用外部接続パッド14Sは、外部接続パッド14の配列の最外周の列に2個がペアになってそれぞれ横向きに並ぶように配置されている。この2個のペアと差動線路とが1対1で対応するように接続されている。信号用外部接続パッド14Sのペアの周りには、各ペアをそれぞれ6個の接地用外部接続パッド14Gが絶縁基板11の中央部側から取り囲むよう配置されている。これにより信号用外部接続パッド14Sのペアがこれを取り囲む6個の接地用外部接続パッド14Gでガードされ、他の外部接続パッド14からの影響を受けにくくなるので信号用外部接続パッド14Sにおける信号の伝送損失が少なくなっている。
【0005】
しかしながら、上述したように、外部接続パッド14の配列の最外周の列に6個の接地用外部接続パッド14Gで囲まれた信号用外部接続パッド14Sのペアを並べると、外部接続パッド14の配列の最外周から2番目の列は、接地用外部接続パッド14Gで占められてしまう。そのため、外部接続パッド14の配列の最外周から2番目の列には、信号用外部接続パッド14Sのペアを配置することができなくなり、外部接続パッド14の配置に対する設計自由度が低いものとなってしまう。また、信号用外部接続パッド14Sのペアの周りに6個ずつの接地用外部接続パッド14Gを配置することから、接地用外部接続パッド14Gを多く設ける必要があり、その分、絶縁基板の面積が大きくなり、配線基板の小型化が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−158553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、差動線路に接続された信号用外部接続パッドのペアを、外部接続パッドの配列の最外周の列のみならず、最外周から2番目の列にも配置し、それにより外部接続パッドの配置に対する設計自由度が高いとともに、信号用外部接続パッドのペアに対するガードを大きく低下させることなく接地用外部接続パッドの数を減らすことにより、絶縁基板の面積が小さな小型の配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板は、複数の差動線路が形成された絶縁基板の下面に、前記差動線路に接続された複数の信号用外部接続パッドのペアと該ペアに隣接して配置された複数の接地用外部接続パッドとを含む多数の外部接続パッドを格子状の配列で配設してなる配線基板であって、前記外部接続パッドは、複数の信号用外部接続パッドのペアが前記配列の最外周と最外周から2番目の列に互いに横に1格子ずれて横向きに並ぶように配置されているとともに、信号用外部接続パッドの各ペアの両側に隣接する格子に前記接地用外部接続パッドが1個ずつ配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の配線基板によれば、前記外部接続パッドは、複数の信号用外部接続パッドのペアが前記配列の最外周と最外周から2番目の列に互いに横に1格子ずれて横向きに並ぶように配置されているので、信号用外部接続パッドのペアを外部接続パッドの配列の最外周の列のみならず、最外周から2番目の列にも配置することで、外部接続パッドの配置に対する設計自由度が大きくなる。また、信号用外部接続パッドの各ペアの両側に隣接する格子に接地用外部接続パッドが1個ずつ配置されていることから、信号用外部接続パッドの各ペアの周囲を少なくとも3個の接地用外部接続パッドが取り囲むことになり、それにより信号用外部接続パッドのペアに対するガードを大きく低下させることなく接地用外部接続パッドの数を減らすことができ、その分、小型の配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す配線基板の要部斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す配線基板の下面を示す平面図である。
【図4】図4は、従来の配線基板の下面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の配線基板における実施形態の一例を説明する。図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図であり、図中、1は絶縁層1aおよび絶縁層1b,1cから成る絶縁基板、2は配線導体、3は半導体素子接続パッド、4は外部接続パッド、5はソルダーレジスト層である。なお、本例では、ガラス織物に熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁層1aの上下面に熱硬化性樹脂から成る絶縁層1b,1cを順次積層して絶縁基板1を形成しており、最表層の絶縁層1c上にソルダーレジスト層5が積層されている。また、絶縁基板1の上面中央部には半導体素子Sの電極が半田バンプB1を介して電気的に接続される半導体素子接続パッド3が形成されているとともに絶縁基板1の下面には図示しない外部電気回路基板に半田ボールB2を介して電気的に接続される外部接続パッド4が形成されており、絶縁基板1の上面から下面にかけてはそれぞれ対応する半導体素子接続パッド3と外部接続パッド4とを互いに電気的に接続する配線導体2が配設されている。
【0012】
絶縁層1aは、本例の配線基板のコア基板となる部材であり、例えばガラス繊維束を縦横に織り込んだガラス織物にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて成り、厚みが0.3〜1.5mm程度であり、その上面から下面にかけて直径が0.1〜1mm程度の複数のスルーホール6を有している。そして、その上下面および各スルーホール6の内面には配線導体2の一部が被着されており、上下面の配線導体2がスルーホール6を介して電気的に接続されている。なお、絶縁層1aの上下面に被着された配線導体2は、主として接地導体層または電源導体層として機能し、それぞれ異なる接地または電源電位に接続されている。
【0013】
このような絶縁層1aは、ガラス織物に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁シートを熱硬化させた後、これに上面から下面にかけてドリル加工を施すことにより製作される。なお、絶縁層1a上下面の配線導体2は、絶縁層1a用の絶縁シートの上下全面に厚みが3〜50μm程度の銅箔を貼着しておくとともに、この銅箔をシートの硬化後にエッチング加工することにより所定のパターンに形成される。また、スルーホール6内面の配線導体2は、絶縁層1aにスルーホール6を設けた後に、このスルーホール6内面に無電解めっき法および電解めっき法により厚みが3〜50μm程度の銅めっき膜を析出させることにより形成される。
【0014】
さらに、絶縁層1aは、そのスルーホール6の内部にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂から成る孔埋め樹脂7が充填されている。孔埋め樹脂7は、スルーホール6を塞ぐことによりスルーホール6の直上および直下に配線導体2および各絶縁層1bを形成可能とするためのものであり、未硬化のペースト状の熱硬化性樹脂をスルーホール6内にスクリーン印刷法により充填し、それを熱硬化させた後、その上下面を略平坦に研磨することにより形成される。そして、この孔埋め樹脂7を含む絶縁層1aの上下面に絶縁層1b,1cが順次積層されている。
【0015】
絶縁層1aの上下面に積層された各絶縁層1b,1cは、ビルドアップ絶縁層であり、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に酸化珪素粉末等の無機絶縁物フィラーを30〜70質量%程度分散させた絶縁材料から成る。絶縁層1b,1cは、それぞれの厚みが20〜60μm程度であり、各層の上面から下面にかけて直径が30〜100μm程度の複数のビアホール8を有している。これらの各絶縁層1b,1cは、配線導体2を高密度に配線するための絶縁間隔を提供するためのものである。そして、上層の配線導体2と下層の配線導体2とをビアホール8を介して電気的に接続することにより高密度配線が立体的に形成可能となっている。このような各絶縁層1b,1cは、厚みが20〜60μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂から成る絶縁フィルムを絶縁層1aの上下面に貼着し、これを熱硬化させるとともにレーザ加工によりビアホール8を穿孔し、さらにその上に同様にして次の絶縁層1cを順次積み重ねることによって形成される。なお、各絶縁層1b,1cの表面およびビアホール8内に被着された配線導体2は、各絶縁層1b,1cを形成する毎に各絶縁層1b,1cの表面およびビアホール8内に5〜50μm程度の厚みの銅めっき膜を公知のセミアディティブ法等のパターン形成法により所定のパターンに被着させることによって形成される。
【0016】
また、絶縁基板1の上面に形成された半導体素子接続パッド3および絶縁基板1の下面に形成された外部接続パッド4は、厚みが3〜50μm程度の銅めっき膜から成り、最表層の配線導体2の一部として外部に露出するように形成されている。そして、半導体素子接続パッド3は半導体素子Sを配線基板に接続するための端子として機能し、外部接続パッド4は配線基板を外部電気回路に接続するための端子として機能する。このような半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4は、絶縁層1cの表面に配線導体2を形成する際にセミアディティブ法による銅めっき膜を所定のパターンに被着させることにより形成される。
【0017】
また、絶縁層1cの上には、ソルダーレジスト層5が被着されている。ソルダーレジスト層5は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂にシリカやタルク等のフィラーを含有させて成り、上面側のソルダーレジスト層5であれば、半導体素子接続パッド3の中央部を露出させる開口部を有しているとともに、下面側のソルダーレジスト層5であれば、外部接続パッド4の中央部を露出させる開口部を有している。これらのソルダーレジスト層5は、半導体素子接続パッド3同士や外部接続パッド4同士の電気的な絶縁信頼性を高めるとともに、半導体素子接続パッド3や外部接続パッド4の絶縁層1cへの接合強度を大きなものとする作用をなす。このようなソルダーレジスト層5は、その厚みが10〜50μm程度であり、感光性を有するソルダーレジスト層5用の未硬化樹脂ペーストをロールコーター法やスクリーン印刷法を採用して絶縁層1cの上に塗布し、これを乾燥させた後、露光および現像処理を行なって半導体素子接続パッド3や外部接続パッド4の中央部を露出させる開口部を形成した後、これを熱硬化させることによって形成される。あるいは、ソルダーレジスト層5用の未硬化の樹脂フィルムを絶縁層1c上に貼着した後、これを熱硬化させ、しかる後、半導体素子接続パッド3や外部接続パッド4の中央部に対応する位置にレーザ光を照射し、硬化した樹脂フィルムを部分的に除去することによって半導体素子接続パッド3や外部接続パッド4の中央部を露出させる開口部を有するように形成される。
【0018】
なお、本例の配線基板においては、差動線路として機能するペア伝送路を備えている。ペア伝送路は、図2に一部の配線導体2のみを抜き出した要部斜視図で示すように、絶縁基板1の上面中央部に差動線路用のペア伝送路に接続された信号用半導体素子接続パッド3Sのペアを有しているとともに、絶縁基板1の下面の外周部に同じく差動線路用のペア伝送路に接続された信号用外部接続パッド4Sのペアを有している。そして、信号用半導体素子接続パッド3Sのペアと信号用外部接続パッド4Sのペアとの間が絶縁基板1の上面側の絶縁層1c上を互いに隣接して延在するように形成された差動線路用の帯状配線導体のペア2a、スルーホール6およびビアホール8により電気的に接続されている。
【0019】
ここで、この例の配線基板における外部接続パッド4の配置を図3に示す。図3は、外部接続パッド4が形成された絶縁基板1の下面を示した平面図である。図3に示すように、絶縁基板1の下面には、多数の外部接続パッド4が格子状の配列で配設されている。外部接続パッド4は、信号用の差動線路に接続された複数の信号用外部接続パッド(図中、Sと記されているパッド)4Sと、接地電位に接続された接地用外部接続パッド(図中、Gと記され、ハッチングされたパッド)4Gとを含んでいる。
【0020】
信号用外部接続パッド4Sは2個がペアをなし、複数のペアが外部接続パッド4の配列の最外周と最外周から2番目の列に互いに1格子ずれてそれぞれ横向きに並ぶように配置されている。信号用外部接続パッド4Sのペアの両側に隣接する格子には、接地用外部接続パッド4Gが1個ずつ配置されている。これにより信号用外部接続パッド4Sのペアの周囲を少なくも3個の接地用外部接続パッド4Gが取り囲むこととなる。このような構成により、本例の配線基板においては、信号用外部接続パッド4Sのペアを外部接続パッド4の配列の最外周の列のみならず、最外周から2番目の列にも配置することで、外部接続パッド4の配置に対する設計自由度が大きくなる。また、信号用外部接続パッド4Sの各ペアの両側に隣接する格子に接地用外部接続パッド4Gが1個ずつ配置されていることから、信号用外部接続パッド4Sの各ペアの周囲を少なくとも3個の接地用外部接続パッド4Gが取り囲むことになり、それにより信号用外部接続パッド4Sのペアに対するガードを大きく低下させることなく接地用外部接続パッド4Gの数を減らすことができ、その分、小型の配線基板とすることができる。さらに本例の配線基板によれば、信号用外部接続パッド4Sのペアが外部接続パッド4の配列の最外周と最外周から2番目の列とで1格子ずれて配置されていることから、これらのペアの配置が互い違いになるので、これらのペアからの配線の引き出しが容易となる。なお、本発明者が図4に示した従来の外部接続パッドの配置の解析モデルと図3に示した本発明の外部接続パッドの配置の解析モデルとで0〜20GHzの周波数で反射損と挿入損とを電磁界シミュレータを用いてシミュレーションした結果、両者の反射損および挿入損には殆ど差異が見られず、また両者ともに特定の周波数での共振は見られなかった。
【符号の説明】
【0021】
10・・・絶縁基板
4S・・・信号用外部接続パッド
4G・・・接地用外部接続パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の差動線路が形成された絶縁基板の下面に、前記差動線路に接続された複数の信号用外部接続パッドのペアと該ペアに隣接して配置された複数の接地用外部接続パッドとを含む多数の外部接続パッドを格子状の配列で配設してなる配線基板であって、前記外部接続パッドは、複数の信号用外部接続パッドのペアが前記配列の最外周と最外周から2番目の列に互いに横に1格子ずれて横向きに並ぶように配置されているとともに、前記各ペアの両側に隣接する格子に前記接地用外部接続パッドが1個ずつ配置されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−33786(P2012−33786A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173211(P2010−173211)
【出願日】平成22年7月31日(2010.7.31)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)