説明

配線基板

【課題】電源用の電子部品接続パッドから電源用の外部接続パッドまでと接地用の電子部品接続パッドから接地用の外部接続パッドまでとの間におけるループインピーダンスを十分に低いものとして、搭載する半導体素子等の電子部品を良好に作動させることが可能な配線基板を提供すること。
【解決手段】絶縁基板1の下面に複数個が集合して配置された全ての接地用または電源用の外部接続パッド6(G),6(P)の上方に接地用または電源用の配線導体2(G),2(P)が配置されているとともに、集合して配置された接地用または電源用の外部接続パッド6(G),6(P)とその上方に配置された接地用または電源用の配線導体2(G),2(P)とが、集合して配置された接地用または電源用の外部接続パッド6(G),6(P)の各々に接続されたビア導体4を介して互いに電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板は、図3に示すように、例えばガラス−エポキシ板等から成るコア用の絶縁層11aとエポキシ樹脂等から成るビルドアップ用の絶縁層11bとを複数層積層して成る絶縁基板11の各絶縁層11a,11bの表面に銅箔や銅めっき膜等の導体層から成る複数の配線導体層12を設けるとともにコア用の絶縁層11aを貫通する貫通導体(以下スルーホール導体と呼ぶ)13およびビルドアップ用の各絶縁層11bを貫通する貫通導体(以下ビア導体と呼ぶ)14により上下の配線導体層12を接続して成る。
【0003】
このような配線基板においては、絶縁基板11の上面側における最外層の絶縁層11bの表面に設けた配線導体層12の一部が半導体素子等の電子部品Eの電極Tに半田バンプB1を介して電気的に接続される電子部品接続パッド15を形成しているとともに絶縁基板11の下面側における最外層の絶縁層11bの表面に設けた配線導体層12の一部が外部電気回路基板(不図示)に半田ボールB2を介して電気的に接続される外部接続パッド16を形成しており、これらの電子部品接続パッド15と外部接続パッド16とは絶縁基板11の上下面の間に設けた配線導体層12およびスルーホール導体13,ビア導体14を介してそれぞれ互いに電気的に接続されている。なお、最外層の絶縁層11bの表面には電子部品接続パッド15や外部接続パッド16を所定の形状および大きさで露出させるソルダーレジスト層17が積層されている。
【0004】
そして、この配線基板は、電子部品Eの電極Tを半田バンプB1を介して電子部品接続パッド15に電気的に接続した後、外部接続パッド16を半田ボールB2を介して外部電気回路基板(不図示)の配線導体に接続することにより搭載する電子部品Eが外部電気回路に電気的に接続されることとなる。
【0005】
ところで、このような配線基板における配線導体層12は、用途によって信号用の配線導体12(S)と接地用の配線導体12(G)と電源用の配線導体12(P)とに機能化されている。このうち信号用の配線導体12(S)は、半導体素子等の電子部品Eと外部電気回路基板との間で電気信号を伝播させるための導電路として機能し、細い帯状の導体パターンを有している。また、接地用の配線導体12(G)や電源用の配線導体12(P)は、配線基板に搭載される電子部品Eにそれぞれ接地電位や電源電位を供給する供給路としての機能を有しているとともに信号用の配線導体12(S)に対する電磁シールド機能や特性インピーダンスの調整機能を有している。
【0006】
そしてこれらの信号用,接地用および電源用の配線導体12(S),12(G),12(P)に接続された電子部品接続パッド15や外部接続パッド16もそれぞれに対応して信号用,接地用および電源用の電子部品接続パッド15(S),15(G),15(P)や信号用,接地用および電源用の外部接続パッド16(S),16(G),16(P)に分類される。これらの電子部品接続パッド15(S),15(G),15(P)や外部接続パッド16(S),16(G),16(P)は、最外層の絶縁層11b表面に設けた配線導体層12の一部をそれぞれソルダーレジスト層17から露出させることで形成されている。なお、接地用の配線導体12(G)や電源用の配線導体12(P)は、例えば絶縁基板11の下面側の配線導体層12において所定の領域を占める広面積のパターンを有して配置されることが多く、これに対応する接地用の外部接続パッド16(G)や電源用の外部接続パッド16(P)もその広面積のパターンの直下およびその近傍に複数個が集合して形成されることが多い。
【0007】
図4は、従来の配線基板における接地用の配線導体12(G)およびこれに接続される接地用の外部接続パッド16(G)ならびに電源用の配線導体12(P)およびこれに接続される電源用の外部接続パッド16(P)の例を示す要部分解斜視図である。この図4においては、図3に示した絶縁基板11の下面側における配線導体層12ならびにそれらに接続されるスルーホール導体13およびビア導体14の一部を示しており、破線の矢印が下層の配線導体層12からのビア導体14の接続位置を示している。
【0008】
図4に示すように、絶縁基板11の下面側における最上層の配線導体層12は、或る領域において広面積の接地用の配線導体12(G)と広面積の電源用の配線導体12(P)とを互いに隣接して備えている。これらの接地用の配線導体12(G)および電源用の配線導体12(P)には対応する複数のスルーホール導体13がそれぞれ接続されている。
【0009】
その下層に位置する配線導体層12では、広面積の接地用の配線導体12(G)がその大部分を占めている。この層のこの領域においては、電源用の配線導体12(P)はビア導体14を接続するための小さな円形のランドパターンのみが存在する。これらの電源用の配線導体12(P)のランドパターンと接地用の配線導体12(G)とは、接地用の配線導体12(G)に電源用の配線導体12(P)のランドパターンを取り囲むように形成された開口部により互いに電気的に絶縁されている。そしてこれらの接地用の配線導体12(G)および電源用の配線導体12(P)は、ビア導体14を介してそれぞれ対応する上層の接地用の配線導体12(G)または電源用の配線導体12(P)に接続されている。
【0010】
最下層の配線導体層12においては、広面積の電源用の配線導体12(P)がその大部分を占めている。電源用の配線導体12(P)には、複数の電源用の外部接続パッド16(P)としての部位が互いに集合した配置で包含されている。この層のこの領域においては、接地用の配線導体12(G)としては接地用の外部接続パッド16(G)のみが存在する。接地用の外部接続パッド16(G)と電源用の配線導体12(P)とは、電源用の配線導体12(P)に接地用の外部接続パッド16(G)を取り囲むように形成された開口部により互いに電気的に絶縁されている。そしてこれらの接地用の外部接続パッド16(G)および電源用の配線導体12(P)は、ビア導体14を介してそれぞれ対応する上層の接地用の配線導体12(G)または電源用の配線導体12(P)に接続されている。なお、一部の電源用の外部接続パッド16(P)は、その上方に広面積の電源用の配線導体12(P)が配置されておらず、最下層の電源用の配線導体12(P)を通してのみ上層の電源用の配線導体12(P)に接続されている。
【0011】
ところで、配線基板に搭載される半導体素子等の電子部品Eを良好に作動させるためには、電源用の電子部品接続パッド15(P)から電源用の外部接続パッド16(P)までと接地用の電子部品接続パッド15(G)から接地用の外部接続パッド16(G)までとの間のループインピーダンスが低いことが求められる。しかしながら、本発明者の解析によると、図4に示したように、例えば一部の電源用の外部接続パッド16(P)の上方に広面積の電源用の配線導体12(P)が配置されておらず、それらの一部の電源用の外部接続パッド16(P)が最下層の電源用の配線導体12(P)を通してのみ上層の電源用の配線導体12(P)に接続されている場合、電源用の電子部品接続パッド15(P)から電源用の外部接続パッド16(P)までと接地用の電子部品接続パッド15(G)から接地用の外部接続パッド16(G)までとの間におけるループインピーダンスを十分に低いものとすることができないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−172141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電源用の電子部品接続パッドから電源用の外部接続パッドまでと接地用の電子部品接続パッドから接地用の外部接続パッドまでとの間におけるループインピーダンスを十分に低いものとして、搭載する半導体素子等の電子部品を良好に作動させることが可能な配線基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の配線基板は、複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板の内部に、前記絶縁層の層間の一部を占有する接地用または電源用の配線導体を有するとともに、前記絶縁基板の上面に前記接地用または電源用の配線導体に電気的に接続された複数の接地用または電源用の電子部品接続パッドおよび前記絶縁基板の下面に前記接地用または電源用の配線導体に電気的に接続された複数の接地用または電源用の外部接続パッドを有し、前記接地用または電源用の外部接続パッドのうちの複数個が互いに集合して配置されて成る配線基板であって、集合して配置された全ての前記接地用または電源用の外部接続パッドの上方に前記接地用または電源用の配線導体が配置されているとともに、集合して配置された前記接地用または電源用の外部接続パッドとその上方に配置された前記接地用または電源用の配線導体とが、集合して配置された前記接地用または電源用の外部接続パッドの各々に接続されたビア導体を介して互いに電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配線基板によれば、絶縁基板の下面に互いに集合して配置された全ての接地用または電源用の外部接続パッドの上方に、絶縁基板における絶縁層間の一部を占有する接地用または電源用の配線導体が配置されているとともに、両者が外部接続パッドの各々に接続されたビア導体を介して互いに電気的に接続されていることから、集合して配置された接地用または電源用の外部接続パッドとその上方に配置された接地または電源用の配線導体との間のビア導体を介した電流経路が多くなる。したがって、電源用の電子部品接続パッドから電源用の外部接続パッドまでと接地用の電子部品接続パッドから接地用の外部接続パッドまでとの間におけるループインピーダンスが低いものとなり、それにより搭載する半導体素子等の電子部品を良好に作動させることが可能な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す配線基板における要部分解斜視図である。
【図3】図3は、従来の配線基板を示す概略断面図である。
【図4】図4は、図3に示す配線基板における要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の配線基板の実施形態の一例を添付の図を基に説明する。図1は本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図である。この図1において、1は絶縁基板、2は配線導体層、3,4は貫通導体、5は電子部品接続パッド、6は外部接続パッドであり、主としてこれらで半導体素子等の電子部品Eを搭載するための配線基板が構成される。
【0018】
絶縁基板1は、例えばガラス繊維を縦横に織り込んだガラス織物にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて成るコア用の絶縁層1aの上下面にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂から成るビルドアップ用の絶縁層1bがそれぞれ複数層ずつ積層されて成り、各絶縁層1a,1bの表面に銅箔や銅めっき膜等の導体層から成る複数の配線導体層2が形成されているとともに、コア用の絶縁層1aを貫通して貫通導体(以下スルーホール導体と呼ぶ)3および各ビルドアップ用の絶縁層1bを貫通して貫通導体(以下ビア導体と呼ぶ)4が形成されている。
【0019】
絶縁基板1を構成するコア用の絶縁層1aは、厚みが0.2〜1.5mm程度であり、その上面から下面にかけて直径が75〜300μm程度の複数の貫通孔(以下スルーホールと呼ぶ)7を有している。そして、その上下面には配線導体層2が被着されているとともに各スルーホール7の内面には、スルーホール導体3が被着されており、絶縁層1aの上下面の配線導体層2がスルーホール導体3を介して電気的に接続されている。
【0020】
このような絶縁層1aは、ガラス織物に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたシートを熱硬化させた後、これに上面から下面にかけてドリル加工を施すことにより製作される。なお、絶縁層1a上下面の配線導体層2は、絶縁層1a用のシートの上下全面に厚みが5〜50μm程度の銅箔を貼着しておくとともに、この銅箔をシートの硬化後にエッチング加工することにより所定のパターンに形成される。また、スルーホール7内面のスルーホール導体3は、絶縁層1aにスルーホール7を設けた後に、このスルーホール7内面に無電解めっき法および電解めっき法により厚みが5〜50μm程度の銅めっき膜を析出させることにより形成される。
【0021】
さらに、絶縁層1aは、そのスルーホール7の内部にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂から成る孔埋め樹脂8が充填されている。孔埋め樹脂8は、スルーホール7を塞ぐことによりスルーホール7の直上および直下にビルドアップ用の絶縁層1bを形成可能とするためのものであり、未硬化のペースト状の熱硬化性樹脂をスルーホール7内にスクリーン印刷法により充填し、これを熱硬化させた後、その上下面を略平坦に研磨することにより形成される。そして、この孔埋め樹脂8を含む絶縁層1aの上下面に絶縁層1bが積層されている。
【0022】
絶縁層1aの上下面に積層された絶縁層1bは、それぞれの厚みが20〜50μm程度であり、各層の上面から下面にかけて直径が30〜100μm程度の複数の貫通孔(以下ビアホールと呼ぶ)9を有している。これらの絶縁層1bは、複数の配線導体層2を高密度に配線するための絶縁間隔を提供するためのものであり、絶縁層1bにはその表面に配線導体層2およびビアホール9内にビア導体4が形成されている。そして、上層の配線導体層2と下層の配線導体層2とをビアホール9内のビア導体4を介して電気的に接続することにより高密度配線を立体的に形成可能としている。
【0023】
このような絶縁層1bは、厚みが20〜50μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂フィルムを絶縁層1aの上下面に貼着し、これを熱硬化させるとともにレーザ加工によりビアホール9を穿孔し、さらにその上に同様にして次の絶縁層1bを順次積み重ねることによって形成される。なお、各絶縁層1b表面に形成された配線導体層2およびビアホール9内に形成されたビア導体4は、各絶縁層1bを形成する毎に各絶縁層1bの表面およびビアホール9内に5〜50μm程度の厚みの銅めっき膜を公知のセミアディティブ法やサブトラクティブ法等のパターン形成法により所定のパターンに被着させることによって形成される。
【0024】
さらに、この例では最外層の絶縁層1b上にソルダーレジスト層10が被着されている。ソルダーレジスト層10は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂にシリカやタルク等の無機物粉末フィラーを30〜70質量%程度分散させた絶縁材料から成り、最外層の配線導体層2同士の電気的絶縁信頼性を高める作用をなす。
【0025】
このようなソルダーレジスト層10は、その厚みが10〜50μm程度であり、感光性を有するソルダーレジスト層10用の未硬化樹脂ペーストをロールコーター法やスクリーン印刷法を採用して最外層の絶縁層1b上に塗布し、これを乾燥させた後、露光および現像処理を行なって電子部品接続パッド5や外部接続パッド6を露出させる開口を形成した後、これを熱硬化させることによって形成される。あるいは、ソルダーレジスト層10用の未硬化の樹脂フィルムを最上層の絶縁層1b上に貼着した後、これを熱硬化させ、しかる後、電子部品接続パッド5や外部接続パッド6に対応する位置にレーザ光を照射し、硬化した樹脂フィルムを部分的に除去することによって電子部品接続パッド5や外部接続パッド6を露出させる開口を有するように形成される。
【0026】
絶縁基板1の絶縁層1a,1bの表面に形成された配線導体層2は、半導体素子等の電子部品Eの各電極T(信号用,接地用および電源用電極)を外部電気回路基板(不図示)に電気的に接続するための導電路として機能し、電子部品Eの各電極Tに対応して信号用の配線導体2(S),接地用の配線導体2(G),電源用の配線導体2(P)をそれぞれ有している。これらの配線導体層2のうち、絶縁基板1の上面側における最外層の絶縁層1bの表面に設けたの一部が半導体素子等の電子部品Eの電極Tに半田バンプB1を介して電気的に接続される電子部品接続パッド5を形成しているとともに絶縁基板1の下面側における最外層の絶縁層1bの表面に設けた一部が外部電気回路基板(不図示)に半田ボールB2を介して電気的に接続される外部接続パッド6を形成している。これらの電子部品接続パッド5と外部接続パッド6とは絶縁基板1の上下面の間に設けた配線導体層2およびスルーホール導体3,ビア導体4を介してそれぞれ互いに電気的に接続されている。なお、電子部品接続パッド5および外部接続パッド6も、これらに接続される配線導体層2に対応して信号用の電子部品接続パッド5(S),接地用の電子部品接続パッド5(G)および電源用の電子部品接続パッド5(P)と、信号用の外部接続パッド6(S),接地用の外部接続パッド6(G)および電源用の外部接続パッド6(P)とを有している。
【0027】
信号用の配線導体2(S)は、搭載される電子部品Eと外部電気回路基板(不図示)との間で周波数が100M〜10GHz程度の高速の電気信号を伝播させるための細い帯状パターンを例えば絶縁基板1の上面側における最外層の絶縁層1bと次層の絶縁層1bとの間に有している。そして、この帯状パターンの一端部は絶縁基板1の上面側における最外層の絶縁層1bを貫通するビア導体4を介して最外層の絶縁層1bの表面に設けた信号用の電子部品接続パッド5(S)に接続されており、他端部はこの帯状パターンより下側の絶縁層1bに設けたビア導体4および絶縁層1aに設けたスルーホール導体3を介して絶縁基板1の下面側における最外層の絶縁層1bの表面に設けた信号用の外部接続パッド6(S)に電気的に接続されている。
【0028】
接地用の配線導体2(G)は、搭載される電子部品Eに接地電位を供給するとともに信号用の配線導体2(S)に対して電磁シールする機能や特性インピーダンス調整する機能を有している。このうち、絶縁基板1の上面側における最外層の絶縁層1bの表面に形成された接地用の配線導体2(G)の一部はソルダーレジスト層10から露出して接地用の電子部品接続パッド5(G)を形成しており、絶縁基板1の下面側における最外層の絶縁層1bの表面に形成された接地用の配線導体2(G)の一部はソルダーレジスト層10から露出して接地用の外部接続パッド6(G)を形成している。また、絶縁基板1の表面や内部に形成された接地用の配線導体2(G)の別の一部は、上面側や下面側の配線導体層2における所定の領域を占めるように二次元的な広がりを有して延在する広面積のパターンを有している。そして、これらの接地用の配線導体2(G)同士は絶縁層1aに設けたスルーホール導体3および絶縁層1bに設けたビア導体4を介して互に電気的に接続されている。
【0029】
電源用の配線導体2(P)は、搭載される電子部品Eに電源電位を供給するとともに信号用の配線導体2(S)に対して電磁シールする機能や特性インピーダンス調整する機能を有している。このうち、絶縁基板1の上面側における最外層の絶縁層1bの表面に形成された電源用の配線導体2(P)の一部はソルダーレジスト層10から露出して電源用の電子部品接続パッド5(P)を形成しており、絶縁基板1の下面側における最外層の絶縁層1bの表面に形成された電源用の配線導体2(P)の一部はソルダーレジスト層10から露出して電源用の外部接続パッド6(P)を形成している。また、絶縁基板1の表面や内部に形成された電源用の配線導体2(P)の別の一部は、上面側や下面側の配線導体層2における所定の領域を占めるように二次元的な広がりを有して延在する広面積のパターンを有している。そして、これらの電源用の配線導体2(P)同士は絶縁層1aに設けたスルーホール導体3および絶縁層1bに設けたビア導体4を介して互に電気的に接続されている。
【0030】
ここで、本例における接地用の配線導体2(G)およびこれに接続される接地用の外部接続パッド6(G)ならびに電源用の配線導体2(P)およびこれに接続される電源用の外部接続パッド6(P)の例を図2に要部分解斜視図で示す。この図2においては、図1に示した絶縁基板1の下面側における配線導体層2ならびにそれらに接続されるスルーホール導体3およびビア導体4の一部を示しており、破線の矢印が下層の配線導体層2からのビア導体4の接続位置を示している。
【0031】
図2に示すように、絶縁基板1の下面側における最上層の配線導体層2は、或る領域において広面積の接地用の配線導体2(G)と広面積の電源用の配線導体2(P)とを互いに隣接して備えている。これらの接地用の配線導体2(G)および電源用の配線導体2(P)には対応する複数のスルーホール導体3がそれぞれ接続されている。
【0032】
その下層に位置する配線導体層2では、広面積の電源用の配線導体2(P)がその大部分を占めている。この層のこの領域においては、接地用の配線導体2(G)はビア導体4を接続するための小さな円形のランドパターンのみが存在する。これらの電源用の配線導体2(P)と接地用の配線導体2(G)のランドパターンとは、電源用の配線導体2(P)に接地用の配線導体2(G)のランドパターンを取り囲むように形成された開口部により互いに電気的に絶縁されている。そしてこれらの接地用の配線導体2(G)および電源用の配線導体2(P)は、ビア導体4を介してそれぞれ対応する上層の接地用の配線導体2(G)または電源用の配線導体2(P)に接続されている。
【0033】
最下層の配線導体層2においては、広面積の接地用の配線導体2(G)がその大部分を占めている。接地用の配線導体2(G)には、接地用の外部接続パッド6(G)としての部位が包含されている。この層のこの領域においては、電源用の配線導体2(G)としては電源用の外部接続パッド6(P)のみが存在する。これらの電源用の外部接続パッド6(P)は複数個が互いに集合して配置されている。電源用の外部接続パッド6(P)と接地用の配線導体2(G)とは、接地用の配線導体2(G)に電源用の外部接続パッド6(P)を取り囲むように形成された開口部により互いに電気的に絶縁されている。そしてこれらの接地用の配線導体2(G)および電源用の外部接続パッド6(P)は、ビア導体4を介してそれぞれ対応する上層の接地用の配線導体2(G)または電源用の配線導体2(P)に接続されている。
【0034】
そして本発明においては、集合して配置された全ての電源用の外部接続パッド6(P)の上方に電源用の配線導体2(P)が配置されているとともに、電源用の外部接続パッド6(P)とその上方の電源用の配線導体2(P)とが電源用の外部接続パッド6(P)の各々に接続されたビア導体4を介して互いに電気的に接続されている。このような配置とることによって、集合して配置された電源用の外部接続パッド6(P)とその上方の電源用の配線導体2(P)との間のビア導体4を介した電流経路を多く確保することができる。その結果、電源用の電子部品接続パッド5(P)から電源用の外部接続パッド6(P)までと接地用の電子部品接続パッド5(G)から接地用の外部接続パッド6(G)までとの間におけるループインピーダンスが低いものとなり、それにより搭載する半導体素子等の電子部品Eを良好に作動させることが可能な配線基板を提供することができる。
【0035】
本発明者が、図2に示した本発明に対応する解析モデルと、図4に示した従来技術に対応する解析モデルとで、電磁界シミュレータを用いて電磁界解析した結果によると、本発明に対応する解析モデルにおけるループインピーダンスが従来技術に対応する解析モデルにおけるループインダクタンスよりも5〜15%程度低下する結果が得られた。
【0036】
なお、本発明は上述の実施形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の一例では、電源用の外部接続パッド6(P)を集合して配置した場合について説明したが、接地用の外部接続パッド6(G)を集合して配置する場合にも当然に適用され、この場合、集合して配置された全ての接地用の外部接続パッド6(G)の上方に接地用の配線導体2(G)を配置するとともに、接地用の外部接続パッド6(G)とその上方の接地用の配線導体2(G)とを接地用の外部接続パッド6(G)の各々に接続されたビア導体4を介して互いに電気的に接続することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 絶縁基板
1a,1b 絶縁層
2(G) 接地用の配線導体
2(P) 電源用の配線導体
4 ビア導体
5(G) 接地用の電子部品接続パッド
5(P) 電源用の電子部品接続パッド
6(G) 接地用の外部接続パッド
6(P) 電源用の外部接続パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板の内部に、前記絶縁層の層間の一部を占有する接地用または電源用の配線導体を有するとともに、前記絶縁基板の上面に前記接地用または電源用の配線導体に電気的に接続された複数の接地用または電源用の電子部品接続パッドおよび前記絶縁基板の下面に前記接地用または電源用の配線導体に電気的に接続された複数の接地用または電源用の外部接続パッドを有し、前記接地用または電源用の外部接続パッドのうちの複数個が互いに集合して配置されて成る配線基板であって、集合して配置された全ての前記接地用または電源用の外部接続パッドの上方に前記接地用または電源用の配線導体が配置されているとともに、集合して配置された前記接地用または電源用の外部接続パッドとその上方に配置された前記接地用または電源用の配線導体とが、集合して配置された前記接地用または電源用の外部接続パッドの各々に接続されたビア導体を介して互いに電気的に接続されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89840(P2013−89840A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230465(P2011−230465)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)