説明

配線用遮断器および直流電力システム

【課題】太陽光発電システムなどの直流系統に適用する配線用遮断器として、その系統内の配線ケーブル断線などに起因して発生するアークの抑制機能を付した配線用遮断器を提供する。
【解決手段】外郭ケース7に複数極の接点機構10,接点開閉機構11,過電流引外し装置13、および電源側端子8,負荷側端子9を搭載した直流回路用の配線用遮断器において、負荷側端子の+極端子9aと−極端子9bとの間にコンデンサ素子16を含むアーク抑制回路15を接続して外郭ケース7に内装する。そして、太陽光発電システムなどの直流系統に対し、このコンデンサ素子内蔵形の配線用遮断器4を系統内の配線路に階層的に接続して使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流回路用の配線用遮断器、およびこの配線用遮断器を適用する太陽光発電システムなどの直流電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
まず、太陽光発電システムを例に、複数基の太陽電池パネルを連係して構築した直流電力システムの系統図を図2に示す。
図2において、1は太陽電池モジュールの集合体からなる太陽電池パネル、2はグループに分けて太陽電池パネル1に接続した接続箱、3は集電箱、4は接続箱2,集電箱3に設置して各系統の過電流保護,切換えを行う配線用遮断器、5は商用電源系統(不図示)に連系するパワーコンディショナ、6は配線ケーブルであり、図示例では8基の太陽電池パネル1を4基ずつ二つのグループに分けた上で、パワーコンディショナ5との間に接続箱2,集電箱3を介して配線用遮断器4を階層的に接続し、その相互間をケーブル6で連係接続している。
【0003】
なお、図2の太陽光発電システムはパワーコンディショナ5を介して商用電源系統に連系させた系統連系タイプであるが、直流出力をそのまま直流負荷(直流用の機器)に給電するようにした独立系の太陽光発電システムではパワーコンディショナ5の代わりDC/DCコンバータを使用して直流配電路に連係する。また、前記の配線用遮断器4は直流回路用の遮断器として必要な責務,機能を備えたものを使用している。
【0004】
ところで、図2の直流電力システムにおいて、各基の太陽電池パネル1とパワーコンディショナ5との間に配線用遮断器4を階層的に接続するケーブル6の途中地点が通電中に万一断線したり、ケーブル6が機器の端子から外れたりして回路がオープンすると、交流(サイクルごとに電流ゼロ点を通過する)とは異なり、オープン箇所に発弧したアークが持続して火災などの二次災害を引き起こす危険がある。
【0005】
そこで、前記したケーブル6の不測な断線事故などに起因するアークの発生を防止するための対策として、直流配線路の途中で回路の+極と−極との間にコンデンサ素子を接続して常時はコンデンサ素子を配線路の電位とほぼ同じ電位に充電しておき、このコンデンサ素子の接続地点よりも上流側で配線ケーブルの断線事故が生じた場合に、その断線箇所の両端の電位差を小さく抑えてアークの発生を防ぐようにした電流遮断支援回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−181864号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2に示した太陽光発電システムなどの直流電力システムに前記特許文献1の電流遮断支援回路を適用すれば、系統内の配線路に生じたケーブル断線事故などに起因してその断線箇所に発生するアークを抑制することが期待できるものの、電流遮断支援回路のコンデンサ接続地点と配線路の断線地点との間の距離が離れていると、線路インピーダンスの影響を受けて断線箇所の電位差が拡大することになるためにアーク抑制機能の効果が発揮できなくなる。
【0008】
一方、多数基の太陽電池パネルを分散配置して構築した大規模な太陽光発電システムでは、各基の太陽電池パネル,接続箱,集電箱の相互間に配線したケーブルの長さが数百メートルにも達することから、その線路インピーダンスの影響を無視することができない。そこで、このような大規模の系統で前記電流遮断支援回路のアーク抑制機能を有効に発揮させるには、系統内の配線経路に電流遮断支援回路を短い間隔距離ごとに多数配置する必要があり、その施工に要する配線作業,費用も嵩むことになる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、先記した太陽光発電システムなどの直流電力システムを構築する上で、その系統内の要所に配置した接続箱,集電箱の配線用遮断器を活用することで、その系統配線路のケーブル断線,端子からの抜けなどに伴うアーク発生を抑制できるようにした配線用遮断器,および直流電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、外郭ケースに複数極の接点機構,接点開閉機構,過電流引外し装置、および電源側端子,負荷側端子を搭載した構成になる直流回路用の配線用遮断器において、
負荷側端子の+極端子と−極端子との間にコンデンサ素子を接続して配線用遮断器の外郭ケースに内装する(請求項1)。また、前記コンデンサ素子は、整流素子と抵抗素子の並列回路を介して負荷側端子の+極端子と−極端子との間に直列接続する(請求項2)。
【0011】
そして、複数の分散型直流電源を連係して構築し、かつその直流電源に関連付けて系統内に配線用遮断器を階層的に接続した直流電力システムにおいて、その配線用遮断器に前記したコンデンサ素子内蔵形の配線用遮断器を適用する(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
上記のように直流配線路のケーブル断線,端子外れに伴うアーク発生の抑制対策として、その配線路に接続して使用する配線用遮断器にはその負荷側端子の+極端子と−極端子の間にコンデンサ素子を接続しておくことにより、この配線用遮断器を適用する直流電力システムの上流側で配線路に不測なケーブルの断線事故などが発生した場合でも、その断線箇所にアークが発生するのを防ぐことできる。また、このコンデンサ素子を配線用遮断器の負荷側端子に接続しておくことで、配線用遮断器の本来の遮断性能が損なわれることもない。
【0013】
そして、太陽光発電システム(図2参照)などの直流電力システムに対し、本発明によるコンデンサ素子内蔵形の配線用遮断器をその系統に階層をなして接続することにより、系統内の配線路に不測なケーブル断線事故などが生じた場合でも、特許文献1の電流遮断支援回路と同じ原理でその断線箇所近くの下流側に接続されている配線用遮断器のコンデンサ素子が機能して断線箇所にアークが発生するのを防止することができ、これにより直流電力システムの安全性,信頼性を高めることができる。しかも、コンデンサ素子内蔵形の配線用遮断器を適用することで、直流電力システムを構築する際には、配線用遮断器とは別に特許文献1の電流遮断支援回路を系統内に分散して多数接続するなどの作業も必要なくて施工コストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例による配線用遮断器を表す図であり、(a)は等価回路図、(b)は組立構造を表す分解斜視図である。
【図2】直流電力システムの例である太陽光発電システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1,図2に示す実施例に基づいて説明する。まず、図1(a),(b)に示す配線用遮断器4において、7はフレーム7aとカバー7bからなる分割構造の外郭ケースであり、該外郭ケース7には電源側端子8,負荷側端子9,主回路の接点機構10,開閉機構11,消弧装置12,過電流引外し装置13,開閉操作ハンドル14などに加えて、負荷側端子9の近傍にはアーク抑制回路15が組み込まれ、該アーク抑制回路15が負荷側端子の+極端子9aと−極端子9bの端子導体間に接続されている。
【0016】
このアーク抑制回路15は、図1(a)のようにコンデンサ素子16,抵抗素子(充電抵抗)17,整流素子であるダイオード18を図示のように直並列に接続した構成であり、ここでダイオード18は+極端子9aに対して逆極性に接続している。なお、図示例の回路ではコンデンサ素子16に抵抗素子17を直列に接続して充電初期のラッシュ電流を抑制するようにしているが、太陽光発電システムなどのようにインピーダンスの低い負荷を接続した場合でも太陽電池の電圧/電流特性から大電流が流れるおそれの無い系統では、抵抗素子17を省略してコンデンサ素子16を端子間に直接接続してもよい。
【0017】
そして、図2に示した太陽光発電システムに対して、その系統内で階層的に配置した接続箱2,集電箱3には前記したコンデンサ内蔵形の配線用遮断器4を設置して各基の太陽電池パネル1を連係接続するようにしている。
【0018】
上記の直流電力システムで、その各階層の配電路に接続した配線用遮断器4に通電すると、コンデンサ素子16が配電路の線間電圧とほぼ同電位まで充電される。したがって、この状態で配電路のケーブル6が不測に断線したり、あるいは接続端子から外れたりして配線路の一部がオープンした場合でも、そのオープン箇所の上位と下位の間に電位差が生じないために、断線箇所におけるアークの発生を防ぐことができる。しかも、図2の系統図で示すよう配線用遮断器4は系統内の要所に分散して接続箱2,集電箱3に設置されているので、どの地点でケーブル断線事故が発生しても、線路インピーダンスの影響を大きく受けることなく断路箇所の近くに位置するコンデンサ素子内蔵形の配線用遮断器が対応してアークの発生を有効に防止できる。
【0019】
なお、図1のコンデンサ素子内蔵形の配線用遮断器を適用する直流電力システムは、図2に示した太陽光発電システムに限定されるものではなく、例えば太陽電池パネルと燃料電池を組み合わせた多様な分散型直流電源システムにも同様に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0020】
1 太陽電池パネル
2 接続箱
3 集電箱
4 配線用遮断器
6 ケーブル
7 配線用遮断器の外郭ケース
9 負荷側端子
9a +極端子
9b −極端子
10 接点機構
11 開閉機構
13 過電流引外し装置
15 アーク抑制回路
16 コンデンサ素子
17 抵抗素子
18 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭ケースに複数極の接点機構,接点開閉機構,過電流引外し装置、および電源側端子,負荷側端子を搭載した直流回路用の配線用遮断器において、
負荷側端子の+極端子と−極端子との間にコンデンサ素子を接続して外郭ケースに内装したことを特徴とする配線用遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の配線用遮断器において、コンデンサ素子が、整流素子と抵抗素子の並列回路を介して負荷側端子の+極端子と−極端子との間に直列接続されていることを特徴とする配線用遮断器。
【請求項3】
複数の分散型直流電源を連係して構築した直流電力システムで、その直流電源に関連付けてシステム内に配線用遮断器が階層的に接続されているものにおいて、その配線用遮断器に請求項1に記載のコンデンサ素子内蔵形の配線用遮断器を適用したことを特徴とする直流電力システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−156043(P2012−156043A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15001(P2011−15001)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)
【Fターム(参考)】