説明

配電機器

【課題】より大きな電流に対応することができる遮断器、開閉器等の配電機器を提供する。
【解決手段】開閉器は、固定電極22に対応して可動電極33を回動可能に支持し、可動電極33を投入方向へ回動させたときに両電極22,33を接触させるとともに、開放方向へ回動させたときに両電極22,33を離間させる。固定電極22における可動電極33の開放方向と反対側には、放熱部25が突出して設けられる。放熱部25を通じて開閉器の内部空間への放熱が行われるので、固定電極22の放熱効率が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮断器、開閉器等の配電機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遮断器、開閉器等の配電機器は、固定電極と、該固定電極と接触することで通電する可動電極とを備えている。該可動電極は、回動可能に支持されている。そして、投入方向への回動に伴い両電極を接触させ、開放方向への回動に伴い両電極を離間させる。これにより、配電機器としての遮断器、開閉器等は、電路の開閉を行う。近年、配電機器においては、小型化及び軽量化が求められており、これを固定電極と可動電極とからなる電極部の構造を変更することにより実現するようにした配電機器が提案されている(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】特開平9−326214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、可動電極及び固定電極が接触する部分(接触部位)においては、そこを流れる電流によって接触抵抗によるジュール熱が発生し、この発熱によって接触部位が過熱されると、酸化皮膜が形成される。そして、該酸化皮膜が原因となって更に過熱されると、接触不良等の故障の原因となる。そのため、固定電極における可動電極との接触部位の表面の温度を酸化皮膜が形成される温度(酸化限度温度)以下に保つ必要がある。
【0004】
そこで、電路を流れる電流の大きさに応じて、両電極の通電面積を確保することにより通電面積を大きくする必要がある。例えば、固定電極を太くすることにより通電面積を確保することが考えられる。しかし、この場合、固定電極が設けられるブッシングも大きくしなければならず、ひいては配電機器の大型化を招く。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より大きな電流に対応することができる配電機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、固定電極に対応してブレード状可動電極を回動可能に支持し、同可動電極を投入方向へ回動させたときに両電極を接触させるとともに、開放方向へ回動させたときに両電極を離間させるようにした開閉器において、前記固定電極における前記可動電極の開放方向と反対側には、放熱部が突出して設けられることをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、固定電極の本体のみならず、放熱部を通じて配電機器の内部空間への放熱が行われるので、固定電極の放熱効率が高められる。このため、固定電極の表面温度の上昇が抑制される。したがって、固定電極の表面(正確には、その形成材料)の酸化限度温度を超えることがなくなる。この結果、固定電極と可動電極との通電面積を大きくすることなく、より大きな電流を流せるようになる。したがって、通電面積を大きくするために固定電極を太くする必要がなくなり、固定電極が設けられるブッシング、ひいては配電機器の大型化を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の開閉器において、前記放熱部は、前記可動電極に対して常に非接触状態であることをその要旨としている。
同構成によれば、放熱部は可動電極と接触しないため、接触抵抗によるジュール熱は発生せず、放熱部を設けることによる発熱量の増大はない。このため、接触部分で発生した熱を放熱することにのみ機能することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の開閉器において、前記放熱部は、前記固定電極の前記可動電極との接触部位の近傍に設けることをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、放熱部が固定電極と可動電極との接触部位の近傍に位置することにより、放熱を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大型化することなく、より大きな電流に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図1〜4を参照して説明する。図1は、開閉器の電極部の側面図である。図2は、開閉器の電極部の平面図である。図3は、固定電極のA−A断面図である。図4は、開閉器の電極部の側面図である。
【0013】
図1及び図2に示されるように、開閉器は、本体ケース10の互いに対向する両側壁に対しそれぞれ電源側ブッシング21及び負荷側ブッシング31が互いに対向するように貫通支持されている。電源側ブッシング21の内端部には棒状の固定電極22が突設されるとともに、固定電極22の先端上部には耐弧メタル23が固定されている。固定電極22の両側面の先端下部には、複数の凹部からなるグリス留め26が形成されている。固定電極22の下部(後述する可動電極33の開放方向とは反対側)には、放熱部25が突出形成されている。負荷側ブッシング31の内端部には導電棒32が突設されており、その先端部には軸ピン61を介して可動電極33が回動可能に支持されている。可動電極33の先端下部には耐弧メタル34が固定されている。可動電極33は、平行平板状の一対の接触刃33a,33bからなるブレード状可動電極である。可動電極33には、軸ピン62を介して操作ハンドル(図示略)の操作に連動して駆動される作動リンク51が設けられている。作動リンク51が駆動されると、可動電極33は軸ピン61を中心に上方又は下方に回動する。これにより、可動電極33の開放及び投入が行われる。軸ピン61の両端部には、ねじ61aがそれぞれ螺着されている。各ねじ61aの頭部と各接触刃33a,33bの外面との間の軸ピン61の外周面上にはスプリング63が介装されている。同様に、軸ピン62の両端部には、ねじ62aがそれぞれ螺着されている。各ねじ62aの頭部と各接触刃33a,33bの外面との間の軸ピン62の外周面上にはスプリング64が介装されている。従って、可動電極33は、投入時には、スプリング63,64の付勢力に基づき所定の接触圧で固定電極22を両側から接触状態で狭圧する。
【0014】
次に、固定電極22について図3の断面図を参照して説明する。固定電極22の上部に設けられる耐弧メタル23の両側面は、八の字状のテーパ面とする案内部23aとなっている。固定電極22の両側面の耐弧メタル23の近傍、すなわち上部は、投入状態における可動電極33との通電接触面22a(接触部)となっている。また、グリス留め26は、半球状の凹部となっている。そして、固定電極22の下部には、放熱部25が形成されている。該放熱部25の短手方向の幅L2は、固定電極22の幅L1より小さく形成されている。これにより、放熱部25は、通電接触面22aの近傍でありながら、可動電極33と接触することはない。
【0015】
図4に示されるように、固定電極22は、側面上方の斜線部分の通電接触面22aにおいて可動電極33と接触する。固定電極22の通電接触面22aの下部に形成されたグリス留め26にはグリスが塗布されている。
【0016】
次に、開閉器の動作について説明する。図4に示される投入状態において、固定電極22はその通電接触面22aを可動電極33の接触刃33a,33bにより接触状態で狭圧されている。この投入状態から図示しない操作ハンドルの駆動に連動して作動リンク51が上方に駆動されると、可動電極33は開放方向へ回動する。すると、可動電極33は固定電極22の通電接触面22aに摺接しながら、固定電極22から離間し、図1に示される開放状態となる。
【0017】
一方、図1に示される開放状態から図示しない操作ハンドルの操作に連動して作動リンク51が下方に駆動されると、可動電極33は投入方向へ回動する。すると、可動電極33は固定電極22の案内部23aとの摺接に基づきスプリングの弾性力に抗して拡開され、可動電極33が更に通電方向へ回動されると、可動電極33の接触刃33a,33bは固定電極22の通電接触面22aにそれぞれ両側から所定の接触圧でもって接触する。
【0018】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)固定電極22の下側に放熱部25が突出形成されるため、固定電極22の本体のみならず、放熱部25を通じて開閉器の内部空間への放熱が行われるので、固定電極22の放熱効率が高められる。このため、固定電極22の表面温度の上昇が抑制される。したがって、固定電極22の表面(正確には、その形成材料)の酸化限度温度を超えることがなくなる。この結果、固定電極22と可動電極33との通電面積を大きくするために固定電極22を太くする必要がなくなる。ひいては開閉器の大型化を抑制することができる。
【0019】
(2)放熱部25が可動電極と接触しないため、接触抵抗によるジュール熱は発生せず、放熱部25を設けることによる発熱量の増大はない。このため、通電接触面22aで発生した熱を放熱することにのみ機能することができる。
【0020】
(3)放熱部25が固定電極22と可動電極33との接触部位である通電接触面22aの近傍に位置することにより、放熱を効率的に行うことができる。
(4)放熱部25の短手方向の幅L2が固定電極22の幅L1より小さく形成されるため、可動電極33と接触することを抑制することができる。また、内部に熱が滞留することを抑制し、放熱を促進することができる。
【0021】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、放熱部25の短手方向の幅L2を固定電極22の幅L1より小さくしたが、放熱部25を突出形成することで放熱の効果が得られるならば、等しくしてもよい。
【0022】
・上記実施形態では、放熱部25を通電接触面22a近傍にもうけるようにしたが、放熱の効果が得られるならば、必ずしも近傍に設けなくてもよい。
・上記実施形態では、可動電極33は放熱部25に接触しないようにしたが、放熱の効果が得られるならば、接触するようにしてもよい。
【0023】
・上記実施形態では、放熱部25を固定電極22の一部分としたが、放熱部25を熱伝達効率の高い材料にて形成し、別途固定電極22に設けるようにしてもよい。
・上記実施形態では、開閉器に具体化したが、遮断器等に適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】開閉器の電極部の側面図(開放時)。
【図2】開閉器の電極部の平面図。
【図3】固定電極のA−A断面図。
【図4】開閉器の電極部の側面図(通電時)。
【符号の説明】
【0025】
10…本体ケース、21…電源側ブッシング、22…固定電極、25…放熱部、31…負荷側ブッシング、32…導電棒、33…可動電極、51…作動リンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極に対応してブレード状可動電極を回動可能に支持し、同可動電極を投入方向へ回動させたときに両電極を接触させるとともに、開放方向へ回動させたときに両電極を離間させるようにした開閉器において、
前記固定電極における前記可動電極の開放方向と反対側には、放熱部が突出して設けられることを特徴とする配電機器。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉器において、
前記放熱部は、前記可動電極に対して常に非接触状態であることを特徴とする配電機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の開閉器において、
前記放熱部は、前記固定電極の前記可動電極との接触部位の近傍に設けることを特徴とする配電機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−71595(P2008−71595A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248418(P2006−248418)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)