説明

配電機器

【課題】パッキング等のシール材を使用しなくても防水信頼性を高くし、組立における工数・材料を低減をする。
【解決手段】計器内蔵物を収容し、封印ねじ9が取り付けられるケース1と、端子部5とを有する配電機器において、ケースの内部空間は、計器内蔵物及び端子部の一部を収容する浸水禁止空間6と、水の浸入の可能性がある浸水許容空間7とに区分され、ケースの浸水禁止空間に、端子部の一部であり、計器内蔵物を支持する支持部分11が挿入され、ケースの浸水許容空間に、端子部の一部である水導出部分12が挿入され、水導出部分には、封印ねじを伝わって漏入する水をケースから外部に排水する案内通路15,16が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封印構造を有する、電子式を含む電力量計、タイムスイッチなどの配電機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力量計の内部構造は、計器内蔵物を固定するベース部とそれを覆うカバー部とで構成されており、内部に第3者が手を加えられないように両者は封印ねじで締結され、封印(検定者による封印)が施されるようになっている(特許文献1)。一方、電子式電力量計の軽量小形化に伴い、プラスチック化も容易に実現できるようになった。
【0003】
プラスチックは軽量、絶縁体であること、デザイン自由度などのメリットがある反面、従来のベース部とカバー部を封印ねじで締結する方法では、プラスチックの性質上、パッキングを介したその分割面の長期間にわたる強度維持がより不安定になるとの課題があった。
【0004】
また、別の構造では通信機器にみられるようにベース部とカバー部を一体にしてケースとし、下方から計器内蔵物を入れ込み、ケースと端子部を封印ねじにより固定(検定封印)する構造がある。防水という観点からするとこの構造の方が分割面がないので、より信頼性が高い構造といえる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−40871号公報
【特許文献2】特開2004−245704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力量計等の配電機器では内部に第3者より手を加えられないように封印が必要で、特許文献2に示された構造においても封印構造でケースと内蔵物を固定支持する必要があるのは同じである。封印構造の2次的条件としては、外部より容易に視認する必要性があり、さらに組立性を考慮すると、機器底部に設けるより機器前面に位置する方が好ましい。
【0007】
しかし、この場合には、封印ねじでケースと端子部を結合すると、結合面からの水が浸入する可能性がある。これは両者を強く締結してもプラスチックが熱や時間経過とともに変形するので、いずれは締結力が低下することがある。このため、封印ねじ部分を軟質のパッキング材で接着するか、プラスチックが容易に変形しないように応力分散を目的に、面積の大きな座金等を使用する必要があり、より工数が増え、コスト高になる。
【0008】
(発明の目的)
本発明の目的は、パッキング等のシール材を使用しなくても防水信頼性を高くし、組立における工数・材料を低減をすることができる配電機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の配電機器は、計器内蔵物を収容し、封印ねじが取り付けられるケースと、端子部とを有する配電機器において、前記ケースの内部空間が、前記計器内蔵物及び前記端子部の一部を収容する浸水禁止空間と、水の浸入の可能性がある浸水許容空間とに区分され、前記ケースの浸水禁止空間に、前記端子部の一部であり、前記計器内蔵物を支持する支持部分が挿入され、前記ケースの浸水許容空間に、前記端子部の一部である水導出部分が挿入され、前記水導出部分には、前記封印ねじを伝わって漏入する水を前記ケースから外部に排水する案内通路が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パッキング等のシール材を使用しなくても防水信頼性を高くし、組立における工数・材料を低減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例である電子式電力量計を示す一部破断正面図である。
【図2】実施例の側面側を示す断面図である。
【図3】実施例のケースと端子部の分解斜視図である。
【図4】実施例のケースと端子部の組立状態を示す斜視図である。
【図5】図1のA部の詳細図である。
【図6】図2のB部およびC部の詳細図である。
【図7】封印カバーの詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に示す通りである。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の一実施例である電子式電力量計を示す一部破断正面図、図2は側面側を示す断面図、図3はケースと端子部の分解斜視図、図4はケースと端子部の組立状態を示す斜視図をそれぞれ示す。
【0014】
1は弾性を有するプラスチック製のケースであり、底面側が開かれ、それ以外の面は閉じられている。ケース1は正面側に表示窓2を有する。また、正面の両側には封印キャップ3(詳細は後述)が嵌め込まれる凹部4を有する。
【0015】
ケース1の内部空間は、図3に示されるように、電力量計測部や表示部などの計器内蔵物(不図示)および端子部5の一部を収容する浸水禁止空間6と、水の浸入の可能性がある浸水許容空間7とに区分され、浸水許容空間7から浸水禁止空間6への水の漏出は防止されている。浸水許容空間7は、凹部4に設けられた封印ねじ挿通穴8により外部と連通する空間である。封印ねじ挿通穴8には、図3に示されるように、ケース1の正面を向いて封印ねじ9が挿通される穴である。
【0016】
10は端子カバーで、電線(不図示)が接続される端子部5の正面及び両側面を着脱可能に覆うものである。端子部5は、ケース1の浸水禁止空間6に収容される計器内蔵物を支持する支持部分11と、ケース1の浸水許容空間7に挿入される水導出部分12を有する。水導出部分12には、封印ねじ9に締結されるナット13を保持するナット保持部14と、封印ねじ9を伝わって漏入した水をケース1の側面から排水しやすいように案内する案内通路としての水案内溝15及び水案内斜面16が設けられている。図5のA部詳細に示されているように、水案内溝15を伝わって落ちる水は水案内斜面16で受けられ、横方向に案内されてケース1の側面から排水される。ナット保持部14は水案内溝15につながっている。
【0017】
また、ケース1と端子部5の組立においては、ケース1にナット13を保持した端子部5を組み込むが、両者はプラスチック製であるから、弾性を利用したスナップフィットが可能であり、これが両者の主結合になっている。このスナップフィットは、ケース1の正面側のB部と、ケース1の背面側のC部に2個所ずつ設けられる。B部詳細は図6(a)に、C部詳細は図6(b)に、それぞれ示される。スナップフィットは、端子部5の突起17,19とこれらに係合する係合穴18,20とからなる。組立時にはケース1の開いた下方から、端子部5の一部である支持部分11をケース1の浸水禁止空間6に、同じく端子部5の一部である水導出部分12を浸水許容空間7に、それぞれ挿入する。その際、ケース1側が弾性変形により拡がり、端子部5側の突起17,19がケース1側の係合穴18,20にそれぞれ係合し、スナップフィットが完了する。
【0018】
次に封印ねじ9をケース1の封印ねじ挿通穴8から挿入し、ナット13に締結する。通常、プラスチックを挟んだ締結構造は、プラスチックが熱や時間とともに変形して締結力が低下し、ガタつきが発生したり、隙間の発生により雨水がより浸入し易くなる。しかし、本構造は締結力が低下してもスナップフィットでケース1の外周を固定するので、ガタつくことは無い。また、雨水の浸入に関しては、通常行われるパッキング等で封印ねじ部分のシール性を確保する方策は、応力緩和のために面積が大きい座金を介する必要もでてくる。これに比較して本構造は、水が浸入しても機能には支障が無いため、より安価に実現できる。
【0019】
図7は封印ねじ9及び封印キャップ3の詳細を示す図である。封印ねじ9の頭部には溝21が加工されている。一方、封印キャップ3には内側に金属のCリング22を有する。封印ねじ9をナット13にねじ込んだ後、封印キャップ3を封印ねじ9に被せて押し込むと、溝21にCリング22が嵌り込み、封印キャップ3は抜けなくなる。この状態が図4に示される状態である。封印を解除するときは、封印キャップ3を破壊して、封印ねじ9をナット13から外す。
【0020】
上述した実施例によれば、パッキング等のシール材を使用しなくても防水信頼性が高く、組立における工数・材料の低減が可能である。また、もともと水の浸入を許可しているので、組立による浸水に対する品質のバラツキがない。また、外観にねじ等の機能部品が露出しないので、美観を損なわない外観デザインが可能である。さらには、封印ねじが正面を向いて取り付けられているので、封印を視認しやすい。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース
3 封印キャップ
5 端子部
6 浸水禁止空間
7 浸水許容空間
9 封印ねじ
11 支持部分
12 水導出部分
15 水案内溝
16 水案内斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器内蔵物を収容し、封印ねじが取り付けられるケースと、
端子部とを有する配電機器において、
前記ケースの内部空間は、前記計器内蔵物及び前記端子部の一部を収容する浸水禁止空間と、水の浸入の可能性がある浸水許容空間とに区分され、
前記ケースの浸水禁止空間に、前記端子部の一部であり、前記計器内蔵物を支持する支持部分が挿入され、前記ケースの浸水許容空間に、前記端子部の一部である水導出部分が挿入され、
前記水導出部分には、前記封印ねじを伝わって漏入する水を前記ケースから外部に排水する案内通路が形成されていることを特徴とする配電機器。
【請求項2】
前記封印ねじは、前記ケースの正面を向いて取り付けられ、前記ケースの封印ねじ挿通穴を通り、前記水導出部分に保持されたナットに締結することを特徴とする請求項1に記載の配電機器。
【請求項3】
前記ナットを保持するナット保持部が前記水導出部分に形成され、該ナット保持部が前記案内通路につながっていることを特徴とする請求項2に記載の配電機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−128039(P2011−128039A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287376(P2009−287376)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000205661)大崎電気工業株式会社 (61)