説明

配電盤キャビネットのフレーム構造

【課題】少ない材料費で軽量,高強度な脚フレームを簡単に製作でき、しかも配電盤の現地据付け後でも必要に応じて補強部材を追加して脚フレームの剛性を高めたり、キャビネットの共振点をずらす防振対策が講じたりすることの容易な配電盤キャビネットのフレーム構造を提供する。
【解決手段】天井枠部1と底面枠部2の間に跨がってその四隅コーナーに脚フレーム3を立設した配電盤キャビネットのフレーム構造において、脚フレーム3が板金加工品になる2枚の長尺フレーム部材4をL型アングル状に継ぎ合わせた上で、その上下両端に補強ブラケット5を結合した組立体で構成し、かつ前記フレーム部材4はその長手方向に沿ってその側縁フランジ4cに形成したハゼ折り部4dに相手側フレーム部材の側縁フランジ4bを差し込んで継合し、補強ブラケット5は外形が直角三角形でその頂角を挟む斜辺を前記フレーム部材4の板面に対面させて結合してトラス構造の脚フレーム3を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御盤,開閉装置盤などの配電盤を対象に、配電盤のキャビネットを構築するフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
頭記の配電盤は通常自立形のキャビネットで構成されており、そのキャビネットは底面枠部と天井枠の間に跨がってその四隅コーナーに脚フレームを立設してなるフレーム構造を枠組として、その枠組の周面を外壁板,扉板で覆い、キャビネットの内部に収容機器を搭載する棚板などを配した構造になる。
【0003】
次に、従来における配電盤の一般的なフレーム構造を図8(a),(b)に示す。図において、1は配電盤の天井枠部、2は底面枠部、3は天井枠部1と底面枠部2の間に跨がってその四隅コーナーに立設した脚フレームであり、図示例の構造では脚フレーム3に断面四角の中空パイプを採用し、その上下両端を天井枠部1,底面枠部2にねじ止め,ないし溶接接合して配電盤の枠組を構成しているが、L形のアングル鋼材を採用する場合もある。
【0004】
この配電盤はJIS規格などで強度,隔壁などに関して具備すべき条件が制定されており、配電盤のメーカーはこの規格に準拠して構造設計,製作しているが、キャビネットの枠組を構成するフレーム部材にできるだけ肉厚の薄い鋼材を採用してキャビネットの軽量化,材料費の低減化を図るには、キャビネットの耐震性,盤内に収容する機器類の搭載荷重,搭載機器などを振動源とする防振対策に十分配慮した構造設計が必要となる。
【0005】
かかる点、先記の中空パイプ,L形アングル材は、脚フレーム3としての要求強度を確保する鋼材の肉厚,重量が大きくなる。そこで、少ない鋼材の使用量で高い強度、ねじり剛性を確保するために、フレーム材の断面形状を工夫して剛性を高めるようにした構造の脚フレーム3が提案されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−340663号公報
【特許文献2】特開平3−22593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、先記の特許文献1および2に示された従来のフレーム構造は、脚フレームの断面形状が複雑で製作費が嵩む上に、その断面形状が盤のコーナーから内方に突き出すためにこの部分がデッドスペースとなって搭載機器に対する盤内のスペース効率が低下し、また盤内の充電部との間の絶縁距離確保の面でも問題がある。
【0008】
そのほか、規格に準拠して構造設計,製作した配電盤であっても、盤内に収容する搭載機器の変更,増設などにより搭載荷重が変わるとフレーム構造が強度不足となる場合もあるし、また配電盤の据付け現場の環境などによっては、搭載機器,ないし配電盤に近い他の機械設備が振動源(主として低周波振動)となって予測しない共振振動が発生することがあるが、従来のフレーム構造では脚フレームの強度がその断面形状で決まるため、配電盤の据付け後にフレーム構造の剛性を簡単に高めるように補強したり、共振点をずらすなどの補強,防振対策を講じたりするには大がかりな改修工事が必要となる。
【0009】
この発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は少ない材料費で軽量,高強度なトラス構造の脚フレームを簡単に製作でき、しかも配電盤の現地据付け後でも必要に応じて補強部材を追加して脚フレームの剛性を高めたり、キャビネットの共振点をずらす防振対策を講じたりすることの容易な配電盤キャビネットのフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、この発明によれば、底面枠部と天井枠部の間に跨がってその四隅コーナーに脚フレームを立設した配電盤キャビネットのフレーム構造において、
前記脚フレームが板金加工品になる2枚の長尺フレーム部材をL型アングル状に継ぎ合わせた上で、その上下両端に補強ブラケットを結合した組立体で構成し、かつ前記フレーム部材はその長手方向に沿ってその側縁フランジに形成したハゼ折り部に相手側フレーム部材の側縁フランジを差し込んでフレーム部材を継合し、補強ブラケットは外形が直角三角形でその頂角を挟む斜辺を前記フレーム部材の板面に対面させて結合した構造とする(請求項1)。
【0011】
また、この発明によれば、前記のフレーム構造は次記のような具体的態様で構成することができる。
(1)板金加工品になる前記フレーム部材は、その左右側縁に45度の鋭角に折り曲げて側縁フランジを形成するとともに、その片方の側縁フランジには外側に折り返えしてハゼ折り部を形成する(請求項2)。
(2)前記の補強ブラケットは、その外形が直角二等辺三角形になり、かつその周囲3辺にリブ状の側壁を起立形成する(請求項3)。
(3)前記補強ブラケットを脚フレームの上下中間位置に追加結合する(請求項4)。
(4)前記補強ブラケットの結合手段として、フレーム部材の長手方向に沿って側縁フランジの複数箇所に補強ブラケットを掛止してねじ締結する取付部を設ける(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、次記の効果を奏することができる。
【0013】
2枚のフレーム部材の側縁をハゼ折り結合して断面L形に継合し、これに直角二等辺三角形の補強ブラケットを結合することにより、肉厚の薄い鋼材を使って軽量化を図りつつ、盤キャビネットの搭載荷重に対して曲げ剛性が高く、かつデッドスペースの少ないトラス構造の脚フレームを簡単,かつ安価に製作できる。
【0014】
しかも、前記フレーム部材はその左右側縁に45度の鋭角に折り曲げて側縁フランジを形成するとともに、その片方の側縁フランジを外側に折り返えしてハゼ折り部を形成することで、その継合部の強度を高めることができる。また、補強ブラケットについても、外形を直角二等辺三角形としてその周囲3辺にリブ状の側壁を起立形成することで、その強度を高めることができる。
【0015】
また、フレーム部材の側縁フランジには長手方向に沿って複数箇所に追加する補強ブラケットの取付部を形成しておくことにより、配電盤の組立段階、現地据付けの後でも必要に応じて補強ブラケットを簡単に追加してフレーム構造の強度を増強できるほか、振動源から伝播する振動(低周波振動)に対して盤キャビネットの共振点をずらして簡単に振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施例による配電盤キャビネットのフレーム構造図であり、(a)は全体の外形斜視図、(b)は(a)におけるA部の詳細構造を表す拡大図である。
【図2】図1における脚フレームのフレーム部材の構造図であり、(a)はフレーム部材の外形斜視図、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図3】図2に示した2枚のフレーム部材をハゼ折り結合してL形アングル状に継合する組立手順の説明図であり、(a)は全体の外形斜視図、(b)は部分拡大図である。
【図4】図3に示したフレーム部材の継合状態を表す図であり、(a)は全体の外形斜視図、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図5】図4のフレーム部材組立体に結合する補強ブラケットの構造,組立手順を表す図であり、(a)は補強ブラケットの外形斜視図、(b)は結合前の斜視図、(c)は結合状態の拡大図、(d)は結合手順の説明図である。
【図6】この発明の第2実施例によるフレーム構造の外形斜視図である。
【図7】図6における脚フレームに追加結合した補助ブラケットの結合手順を表す図であり、(a)は結合前の斜視図、(b)は結合後の斜視図、(c)は(a)のB部拡大図である。
【図8】配電盤キャビネットの従来のフレーム構造図であり、(a)は全体の外形斜視図、(b)は(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明によるフレーム構造の実施の形態を図1〜図5、および図6,図7に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、この発明の請求項1〜3に係わる実施例のフレーム構造,およびその組立手順を図1〜図5により説明する。この実施例による配電盤キャビネットのフレーム構造は基本的に図8に示した従来構造と基本的に同じであるが、脚フレーム3に関しては以下述べるような構造で構成されている。
【0019】
すなわち、脚フレーム3は鋼板の板金加工品になる2枚のフレーム部材4の側縁をハゼ折り結合してL形アングル状に継合した上で、その上下端部に鋼板の板金加工品になる補強ブラケット5を結合した組立体で構成されている。ここで、フレーム部材4は、図2で示すように長尺鋼板の上下両端を内側に曲げ起こしてしてフランジ4aを形成し、さらに左右側縁を内側に向け45度の鋭角に折り曲げて側縁フランジ4b,4cを形成した上で、その片方の側縁フランジ4cの端縁を外側に折り返えしてハゼ折り部4dを形成した構造になる。なお、4a−1はフランジ4aに穿孔したねじ通し穴、4b−1は後記する補強ブラケット5の係合爪部と係合する角穴、4b−2は補強ブラケット5を固定するねじ穴であり、側縁フランジ4cにも前記角穴4b−1,ねじ穴4b−2と同様な角穴,ねじ穴が形成されている。また、この角穴,ねじ穴はフレーム部材4の長手方向に沿って複数箇所に形成し、後述する実施例2で述べる補強ブラケット5の追加結合に対応するようにしている。
【0020】
一方、補強ブラケット5は、図5(a)で示すように外形が直角二等辺三角形で、その底辺(前面),斜辺(後面)に沿ってリブ状の側壁5a,5bを起立形成した上で、斜辺の側壁5bにはハゼ折り部5cを形成して二重壁にしている。また、補強ブラケット5の底面にはねじ通し穴5dを穿孔し、前面側の側壁5aの両端部には係合爪ブラケット5e,およびねじ穴5fを形成するとともに、底板の後端コーナーには長溝5gを切込み形成している。
【0021】
次に、脚フレーム3の組立手順について述べる。まず、2枚のフレーム部材4Aと4Bを図3(a)で表すように上下の向きを互いに反転させて左右に並べ、次に図3(b)で示すように片方(左側)のフレーム部材4Aの側縁フランジ4cに形成したハゼ折り部4dの溝に他方(右側)のフレーム部材4Bの側縁フランジ4bを矢印P方向から差し込んでフレーム部材4Aと4Bの側縁を継ぎ合わせる。これにより、図4(a),(b)で示すようにフレーム部材4Aと4BとでL形アングルが構成される。
【0022】
次に、前記フレーム部材4の組立体に対して、その上下両端部に補強ブラケット5を図5(b)のように前方から差し込み、補強ブラケット5の頂角部に形成した長溝5gをフレーム部材4Aと4Bを継合するハゼ折り結合部に嵌合するとともに、前面の側壁5aに形成した係合爪5eをフレーム部材4の側縁フランジ4b,4cに形成した角穴4b-1に嵌め合わせて掛止した上で、フレーム部材4にねじ締結する。これで、脚フレーム3の1本分の組立体が完成する。この脚フレーム3は、図1(a)で示すように配電盤キャビネットの天井枠部1と底面枠部2との間に跨がって四隅コーナーに介装し、この位置で補強ブラケット5を天井枠部1,底面枠部2にボルト6で固定する(図1(b)参照)。
【0023】
上記構成によれば、肉厚の薄い鋼材を使って軽量化を図りつつ、盤キャビネットの搭載荷重に対して曲げ剛性が高く、かつデッドスペースの少ない脚フレーム3を簡単,かつ安価に製作できる。しかも、脚フレーム3の構成部品であるフレーム部材4は、その左右側縁に45度の鋭角に折り曲げて側縁フランジ4b,4cを形成するとともに、その片方の側縁フランジ4cを外側に折り返えしてハゼ折り部4dを形成することで、2枚のフレーム部材4を簡単に継ぎ合わせてL形アングル状に構成できる。また、補強ブラケット5についても、外形を直角二等辺三角形としてその周囲3辺にリブ状の側壁5a,5bを起立形成し、この補強ブラケット5を前記フレーム部材4の組立体に結合することで脚フレーム3を高強度なトラス構造で構成できる。なお、前記の側縁フランジ4b,4c、およびハゼ折り部4dはロール成形機を使うことで簡単に成形できる。
【実施例2】
【0024】
次に、この発明の請求項4,5に係わる第2の実施例を図6,図7に基づいて説明する。この実施例は先記した実施例1のフレーム構造を基本として、その脚フレーム3の上下端部に結合した補強ブラケット5と同じ形状,構造のブラケットを、必要に応じて脚フレーム3の上下中間位置にも簡単に追加結合して機械的な強度を増強し、また振動源から伝播する振動に対する共振点をずらして盤キャビネットの防振性を高めることができるようにしたものである。
【0025】
すなわち、配電盤に収容する搭載機器の変更,増設などにより当初に想定した搭載荷重が増加するとフレーム構造が強度不足となる場合がある。また、配電盤の据付け現場の環境などによっては、搭載機器,ないし配電盤に近い他の機械設備が振動源(主として低周波振動)となってキャビネットに予測しない共振振動が発生することがある。
【0026】
かかる問題に対する対応策として、この実施例では図6のように脚フレーム3の長手方向に沿った上下中間位置に図5と同様な構造の補強ブラケット5を後付けして追加結合するようにしている。また、追加する補助ブラケット5の取付け手段としてフレーム部材4の側縁フランジ4bには、図7(a)〜(c)で示すように補強ブラケット5の前面側壁5aに形成した係合爪5e,およびねじ穴5f(図5参照)に対応する角穴4b−1,ねじ穴4b−2、および補強ブラケット5を下支えする突起状の支持片4b−3を上下複数箇所に設けて補強ブラケット5の追加取付部を形成している。
【0027】
上記構成により、配電盤の組立段階でも、現地に据付けた状態であっても、必要に応じて追加する補強ブラケット5の個数,取付位置を選択して簡単に後付けすることが可能となる。これにより、配電盤に収容する機器の搭載荷重との関係でフレーム構造が強度不足となるおそれがある場合でも、補強ブラケット5を追加して簡単に強度を高めることができる。また、配電盤の実使用状態で振動源から伝播する振動(主として低周波振動)によりキャビネットに予測しない共振振動が生じた場合でも、補強ブラケット5を選択的に後付け追加することにより、共振点を簡単に高周波数側にずらしてキャビネットの振動を抑制できる。
【符号の説明】
【0028】
1 天井枠部
2 底面枠部
3 脚フレーム
4 フレーム部材
4b,4c 側縁フランジ
4d ハゼ折り部
5 補強ブラケット
6 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面枠部と天井枠部の間に跨がってその四隅コーナーに脚フレームを立設した配電盤キャビネットのフレーム構造において、前記脚フレームが板金加工品になる2枚の長尺フレーム部材をL型アングル状に継ぎ合わせた上で、その上下両端に補強ブラケットを結合した組立体になり、かつ前記フレーム部材はその長手方向に沿ってその側縁フランジに形成したハゼ折り部に相手側フレーム部材の側縁フランジを差し込んでフレーム部材を継合し、補強ブラケットは外形が直角三角形でその頂角を挟む斜辺を前記フレーム部材の板面に対面させて結合したことを特徴とする配電盤キャビネットのフレーム構造。
【請求項2】
請求項1に記載のフレーム構造において、板金加工品になるフレーム部材は、その左右側縁に45度の鋭角に折り曲げて側縁フランジを形成するとともに、その片方の側縁フランジには外側に折り返えしてハゼ折り部を形成したことを特徴とする配電盤キャビネットのフレーム構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフレーム構造において、補強ブラケットの外形が直角二等辺三角形になり、かつその周囲3辺にリブ状の側壁を起立形成したことを特徴とする配電盤キャビネットのフレーム構造。
【請求項4】
請求項1に記載のフレーム構造において、補強ブラケットを脚フレームの上下中間位置に追加結合したことを特徴とする配電盤キャビネットのフレーム構造。
【請求項5】
請求項4記載のフレーム構造において、補強ブラケットの結合手段として、フレーム部材の長手方向に沿って側縁フランジの複数箇所に補強ブラケットを掛止してねじ締結する取付部を設けたことを特徴とする配電盤キャビネットのフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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